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明細書 :負透磁率または負誘電率メタマテリアルおよび表面波導波路

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3928055号 (P3928055)
公開番号 特開2006-245926 (P2006-245926A)
登録日 平成19年3月16日(2007.3.16)
発行日 平成19年6月13日(2007.6.13)
公開日 平成18年9月14日(2006.9.14)
発明の名称または考案の名称 負透磁率または負誘電率メタマテリアルおよび表面波導波路
国際特許分類 H01P   3/00        (2006.01)
FI H01P 3/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2005-057763 (P2005-057763)
出願日 平成17年3月2日(2005.3.2)
審査請求日 平成18年10月6日(2006.10.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】真田 篤志
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
審査官 【審査官】儀同 孝信
参考文献・文献 国際公開第2004/025783(WO,A1)
米国特許第5728346(US,A)
特表2003-526423(JP,A)
特表2002-534883(JP,A)
調査した分野 H01P 1/20- 1/219、 3/00- 7/10、
H01Q 13/00-19/32
特許請求の範囲 【請求項1】
誘電体基板(3)と、
前記誘電体基板(3)の裏面全面に形成された接地導体(5)と、
前記誘電体基板(3)の表面に周期的に配列され、方形形状に形成された複数の導体パターン(4)とを有し、
前記導体パターン(4)は、他の導体パターン(4)および接地導体(5)とは直流的に絶縁されて設けられたものであり、
伝播する電磁波に対して負の透磁率を示す負透磁率メタマテリアル
【請求項2】
請求項1に記載した負透磁率メタマテリアルであって、
前記導体パターン(4)の縦横の長さを異なるものとして、透磁率に関する異方性を具備させるようにした負透磁率メタマテリアル
【請求項3】
誘電体基板(3)と、
前記誘電体基板(3)の裏面全面に形成された接地導体(5)と、
前記誘電体基板(3)の表面に周期的に配列され、六角形形状に形成された複数の導体パターン(4)とを有し、
前記導体パターン(4)は、他の導体パターン(4)および接地導体(5)とは直流的に絶縁されて設けられたものであり、
伝播する電磁波に対して負の透磁率を示す負透磁率メタマテリアル
【請求項4】
誘電体基板(13)と、
前記誘電体基板(13)の裏面全面に形成された接地導体(15)と、
前記誘電体基板(3)の表面上の第1の方向に形成され周期的に配列された第1の導体ストリップ(16)と、
前記誘電体基板(3)の表面上の前記第1の方向と交差する第2の方向に形成され周期的に配列された第2の導体ストリップ(16)と、
前記第1の導体ストリップ(16)および前記第2の導体ストリップ(16)の交差位置のそれぞれに対応して配置され、前記第1の導体ストリップ(16)および前記第2の導体ストリップ(16)の少なくとも一方と前記接地導体(15)とを接続する導体ビア(14)とを有し、
伝播する電磁波に対して負の誘電率を示す負誘電率メタマテリアル
【請求項5】
誘電体基板(13)と、
前記誘電体基板(13)の裏面全面に形成された接地導体(15)と、
前記誘電体基板(3)の表面上の第1の方向に形成され周期的に配列された第1の導体ストリップ(16)と、
前記誘電体基板(3)の表面上の前記第1の方向と交差する第2の方向に形成され周期的に配列された第2の導体ストリップ(16)と、
前記誘電体基板(3)の表面上の第3の方向に形成され、前記第1の導体ストリップ(16)と前記第2の導体ストリップ(16)との交差位置において前記第1の導体ストリップ(16)および前記第2の導体ストリップ(16)に交差するように形成され、周期的に配列された第3の導体ストリップ(16)と、
前記第1~3の導体ストリップ(16)の交差位置のそれぞれに対応して配置され、前記第1~3の導体ストリップ(16)の少なくともいずれか1つと前記接地導体(15)とを接続する導体ビア(14)とを有し、
伝播する電磁波に対して負の誘電率を示す負誘電率メタマテリアル
【請求項6】
請求項4,5のいずれか1項に記載した負誘電率メタマテリアルであって、
前記導体ストリップ(16)の方向の対称性を崩すことにより、誘電率に関する異方性を具備させるようにした負誘電率メタマテリアル
【請求項7】
請求項4,5のいずれか1項に記載した負誘電率メタマテリアルであって、
前記導体ビア(14)の位置を変更することにより、誘電率に関する異方性を具備させるようにした負誘電率メタマテリアル
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載した負透磁率メタマテリアルと、正の透磁率を有する正透磁率媒質とを隣接させ、
前記負透磁率メタマテリアルと前記正透磁率媒質との境界に表面波を伝播可能とした表面波導波路
【請求項9】
請求項4~7のいずれか1項に記載した負誘電率メタマテリアルと、正の誘電率を有する正誘電率媒質とを隣接させ、
前記負誘電率メタマテリアルと前記正誘電率媒質との境界に表面波を伝播可能とした表面波導波路
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はメタマテリアルでなる正負誘電率媒質あるいは正負透磁率媒質と、それらを用いた表面波を伝播する導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、誘電体、磁性体、超伝導体などの小片を、波長に対して十分短い間隔(波長の20分の1程度以下)で並べることで自然にはない性質を待った媒質を人工的に構成することができる。この媒質を自然にある媒質を超えると言う意味でメタマテリアル(metamaterials)と呼んでいる。メタマテリアルの性質は、単位粒子の形状、材質およびそれらの配置により様々に変化するが、中でも、等価的な誘電率εと透磁率μとが同時に負となるメタマテリアルは、その電界と磁界と波数ベクトルが左手系をなすことから「左手系媒質」(Left-Handed Materials)と名づけられた。これに対して、等価的な誘電率εと透磁率μとが同時に正となる通常の媒質は「右手系媒質(Left-Handed Materials」と呼ばれる。これら誘電率ε、透磁率μと媒質との関係領域は、図1に示すように、誘電率εの正負及び透磁率μの正負に応じた第1象限~第4象限の媒質に分類できる。
【0003】
特に、「左手系媒質」は、バックワード波と呼ばれる、波の群速度(エネルギーの伝播する速度)と位相速度(位相の進む速度)の符号が逆転している波の存在や、また、非伝播領域で指数関数的に減衰する波であるエバネセント波の増幅、等の特異な性質を持つものである。
【0004】
メタマテリアルではない媒質(自然連続媒質)であるが、誘電率εの符号が負の媒質(負誘電率媒質)と、誘電率εの符号が正の媒質(正誘電率媒質)との境界面においては表面波が伝播することが知られている。例えば、光の領域における金属の誘電率は負となり、これと誘電率が正である空気や誘電体との境界面では表面プラズモンと呼ばれる表面波が存在することは知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
これと対称的に、透磁率μの符号が負の媒質(負透磁率媒質)と透磁率μの符号が正の媒質(正透磁率媒質)との境界面においても表面波は存在する。例えば、磁化されたフェライトの等価透磁率は高周波域において負となり、これと透磁率が正なる空気や誘電体との境界において表面波は伝播することも知られている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0006】
このように、誘電率εまたは透磁率μのどちらか一方が負である媒質と、誘電率εおよび透磁率μが共に正である媒質との境界には表面波が伝播する。特に、透磁率μが負である媒質と、透磁率μが正である媒質との境界に表面波が伝播する状態を図2に示している。

【非特許文献1】H.Raether,“Surface plasmons on smooth and rough surfaces and on gratings,”Springer-Verlang,1988.
【非特許文献2】B.Lax and KJ Button,“Microwave Ferrite and Ferrimagnetics,”McGraw-Hill,1962.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光の領域における金属の負誘電率特性や、磁化されたフェライトの負透磁率特性は、自然に存在する材料そのものの持つ性質であり、誘電率εや透磁率μの値を自由に設計することはできない。従って、その値で決まる表面波伝播周波数帯域を自由に決定あるいは設計することはできない。例えば、金属の負誘プラズモンよる表面プラズモンは光の領域の現象であり、また、フェライトの表面波静磁波の伝送帯域は、印加する直流磁界の方向や大きさによって決定されるが、現実的な数T(テスラ)の直流磁界を加えてもマイクロ波領域が上限となる。また、これらの表面プラズモンや表面静磁波を励振する方法も容易ではなかった。そこで、本発明は、金属、誘電体、磁性体、超伝導体、半導体等を、使用する波長に比べて短い間隔で並べることで実効的に必要な性質を持つ媒質を構成するというメタマテリアルの概念を用いて、正負誘電体媒質あるいは正負透磁率媒質を構成し、その表面波を伝送する導波路を構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る負透磁率メタマテリアルは、誘電体基板と、前記誘電体基板の裏面全面に形成された接地導体と、前記誘電体基板の表面に周期的に配列され、方形形状に形成された複数の導体パターンとを有し、前記導体パターンは、他の導体パターンおよび接地導体とは直流的に絶縁されて設けられたものであり、伝播する電磁波に対して負の透磁率を示すものである
【0009】
これにより、メタマテリアルでなる負透磁率媒質であるので、透磁率μの値を自由に設計することはできるので、導波路に適用した場合、その値で決まる表面波伝播周波数帯域を自由に決定あるいは設計することができる。
【0010】
本発明の請求項2に係る負透磁率メタマテリアルでは、上記の負透磁率メタマテリアルにおいて、前記導体パターンの縦横の長さを異なるものとして、透磁率に関する異方性を具備させることができる
【0011】
これにより、単位セルを設計することで異方性のコントロールも可能となる。異方性のコントロールにより、異なる方向に対して異なる透磁率持たせることが可能となり、この媒質を使ったより自由度の高いデバイス設計が可能となる。
【0012】
本発明の請求項3に係る負透磁率メタマテリアルは、誘電体基板と、前記誘電体基板の裏面全面に形成された接地導体と、前記誘電体基板の表面に周期的に配列され、六角形形状に形成された複数の導体パターンとを有し、前記導体パターンは、他の導体パターンおよび接地導体とは直流的に絶縁されて設けられたものであり、伝播する電磁波に対して負の透磁率を示すものである
【0013】
これにより、異方性の小さいメタマテリアルでなる負透磁率媒質を得ることができ、透磁率μの値を自由に設計することはできるので、導波路に適用した場合、その値で決まる表面波伝播周波数帯域を自由に決定あるいは設計することができる。
【0014】
本発明の請求項4に係る負誘電率メタマテリアルは、誘電体基板と、前記誘電体基板の裏面全面に形成された接地導体と、前記誘電体基板の表面上の第1の方向に形成され周期的に配列された第1の導体ストリップと、前記誘電体基板の表面上の前記第1の方向と交差する第2の方向に形成され周期的に配列された第2の導体ストリップと、前記第1の導体ストリップおよび前記第2の導体ストリップの交差位置のそれぞれに対応して配置され、前記第1の導体ストリップおよび前記第2の導体ストリップの少なくとも一方と前記接地導体とを接続する導体ビアとを有し、伝播する電磁波に対して負の誘電率を示すものである
【0015】
これにより、メタマテリアルでなる負誘電率媒質であるので、誘電率εの値を自由に設計することはできるので、導波路に適用した場合、その値で決まる表面波伝播周波数帯域を自由に決定あるいは設計することができる。
【0016】
本発明の請求項5に係る負誘電率メタマテリアルは、誘電体基板と、前記誘電体基板の裏面全面に形成された接地導体と、前記誘電体基板の表面上の第1の方向に形成され周期的に配列された第1の導体ストリップと、前記誘電体基板の表面上の前記第1の方向と交差する第2の方向に形成され周期的に配列された第2の導体ストリップと、前記誘電体基板の表面上の第3の方向に形成され、前記第1の導体ストリップと前記第2の導体ストリップとの交差位置において前記第1の導体ストリップおよび前記第2の導体ストリップに交差するように形成され、周期的に配列された第3の導体ストリップと、前記第1~3の導体ストリップの交差位置のそれぞれに対応して配置され、前記第1~3の導体ストリップの少なくともいずれか1つと前記接地導体とを接続する導体ビアとを有し、伝播する電磁波に対して負の誘電率を示すものである
【0017】
これにより、正方形のものに比して異方性の小さいメタマテリアルでなる負誘電率媒質を得ることができ、誘電率εの値を自由に設計することはできるので、導波路に適用した場合、その値で決まる表面波伝播周波数帯域を自由に決定あるいは設計することができる。
【0018】
本発明の請求項6に係る負誘電率メタマテリアルでは、上記の負誘電率メタマテリアルにおいて、前記導体ストリップの方向の対称性を崩すことにより、誘電率に関する異方性を具備させることができる。また、この発明の請求項7に係る負誘電率メタマテリアルでは、上記の負誘電率メタマテリアルにおいて、前記導体ビアの位置を変更することにより、誘電率に関する異方性を具備させることができる
【0019】
これにより、単位セルを設計することで異方性のコントロールも可能となる。異方性のコントロールにより、異なる方向に対して異なる誘電率持たせることが可能となり、この媒質を使ったより自由度の高いデバイス設計が可能となる。
【0020】
また、本発明の表面波導波路における、正透磁率および正誘電率をもつ媒質は、誘電体基板の表面に金属ストリップを四方に接続した二次元構造とし、誘電体基板の裏面には全面にわたって接地導体が配置される単位セルを構成し、該単位セルの複数個を集合体として構成した。
【0021】
これにより、メタマテリアルでなる正透磁率媒質あるいは正誘電率媒質であるので、透磁率μ、誘電率εの値を自由に設計することができるので、導波路に適用した場合、その値で決まる表面波伝播周波数帯域を自由に決定あるいは設計することができる。
【0022】
本発明の請求項8に係る表面波導波路は、上記の負透磁率メタマテリアルと、正の透磁率を有する正透磁率媒質とを隣接させ、前記負透磁率メタマテリアルと前記正透磁率媒質との境界に表面波を伝播可能としたものである
【0023】
本発明の請求項9に係る表面波導波路は、上記の負誘電率メタマテリアルと、正の誘電率を有する正誘電率媒質とを隣接させ、前記負誘電率メタマテリアルと前記正誘電率媒質との境界に表面波を伝播可能としたものである
【0024】
これにより、導波路中の波長はこれらの媒質の等価的な誘電率および透磁率によって決まるが、これらの値を設計することで導波路中の波長を真空中の波長に比べて小さくすることができる。この波長短縮効果を利用して、小型共振器や小型遅延線を作製することが可能である。また、単位セルを設計することで異方性のコントロールも可能となる。異方性のコントロールにより、この媒質を使ったより自由度の高いデバイス設計が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明により、理論的に直流に近い低周波からTHz以上の様々な周波数においても動作する表面波を伝送する導波路を作ることができる。この導波路中の波長はこれらの媒質の等価的な誘電率および透磁率によって決まるが、これらの値を設計することで導波路中の波長を真空中の波長に比べて小さくすることができる。この波長短縮効果を利用して、小型共振器や小型遅延線を作製することが可能である。また、単位セルを設計することで異方性のコントロールも可能となる。異方性のコントロールにより、この媒質を使ったより自由度の高いデバイス設計が可能となる。
【0026】
一方、光領域の表面プラズモンの励振は、誘電体プリズムやグレーティングを用いて波数の大きな励振波を作り出さなければならない。また、表面静磁波の励振にもトランスデューサ等のマイクロ波帯の電磁波から静磁波への変換デバイスが必要であるが、本発明の媒質の表面波モードは、平面回路との親和性がよく、マイクロストリップ線路等の通常の平面回路から簡単に励振できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の基本構成は、図3の2次元伝送線路モデルに示すように、負透磁率媒質を対象例とするもので、負透磁率媒質(μ-負媒質)と正透磁率媒質(μ-正媒質)との組合せの境界に表面波が伝播するものである。各媒質の単位セルの等価回路は右方に示し、この等価回路の回路要素は表のような回路構成となる。以下に、負透磁率媒質、負誘電率媒質のそれぞれについて実施形態を説明する。
【実施例1】
【0028】
図4は本発明の第1の実施例であり、透磁率媒質(メタマテリアル)を対象とし、負の透磁率をもつ媒質(μ-負媒質)でなる周期構造負透磁率媒質1の概略図である。
【0029】
図5(A)は図4の負透磁率媒質1を構成する単位セル2である。これは、誘電体基板3の表面に方形の金属パッチ4を周囲に誘電体を残して形成し、基板3の裏面には全面に接地導体5を持つ構造となっている。ここで、金属パッチとは、図示のように薄板小片状の金属パターンである。
【0030】
図5(B)はこの単位セル2の等価回路である。この単位セル2は、隣り合う金属パッチ4に対して直列の容量Cを持ち、同時に誘電体基板3の裏面にある接地面に対して並列の容量Cを有する。厳密には直列には寄生インダクタンスLも考慮しなければならないが、通常これは小さく無視できる。直列のインダクタンスLが無視できる範囲でこの様な直列容量Cと並列容量Cとを持つ媒質は、等価的に負の透磁率を持つ媒質となることが証明されている。
【0031】
図6は、これに対し正の透磁率および正の誘電率を合わせもつ媒質(μ-正媒質、ε-正媒質)の単位セル6の構成を示す。これは既存のマイクロストリップ線路であり、誘電体基板3の表面に金属ストリップ7を四方に接続した二次元構造とする。図5と同様、基板3の裏面には全面にわたって接地導体5が配置される。これら単位セル6の複数個を集合体として構成することにより、図示していないが、正透磁率媒質あるいは正誘電率媒質を得ることができる。
【0032】
図7は、上記図4の負透磁率媒質1と、図6の単位セル6からなる正透磁率媒質7とを左右に隣接して組合せた媒質の境界を表す概念図である。簡単のため、負透磁率媒質1および正透磁率媒質7の周期は等しいとすれば、この境界自体も周期構造となる。
【0033】
図8は、図7の1周期分の周期構造の境界に対して有限要素法に基づく三次元電磁界シミュレーションを行って求めた、この境界を伝播する表面波の分散関係の計算結果である。横軸は、この表面波の波数βをπ/aで規格化した値(aは単位セルの1辺の長さ、πは円周率)であり、縦軸は伝播表面波の周波数である。この構造の場合、周波数が3.2GHzに近づくに従って、βa/πが1に近くなる分散特性をもった伝播波が存在することがわかる。
【0034】
図9は、図7の周期構造の8周期分の境界に対して、両端に金属壁を置き短絡して構成した両端短絡型表面波モード共振器の基板表面上の電界分布の三次元有限要素法電磁界シミュレーション結果である。図にはモード番号について、n=1,2,および3の各共振モードに対する電磁界分布を示している。いずれの場合も、電界が境界に集中する表面波が存在することがわかる。また、この様にして求めたn=1~7までの共振モードに対する波数と周波数の関係を図8のグラフ上にプロットすると図中の点の様になる。各共振に対応する点が表面波モードの分散関係と一致することから、確かにこれが表面波モードの共振であることが確認できる。
【0035】
表面パッチは正方形である必要はなく、直列の容量が付きさえすればどの様な形状であっても構わない。パッチ形状の対称性が崩れれば崩れるほど異方性が強くなる。例えば、長方形パッチの場合、縦と横の辺の長さの比が大きくなればなるほど、縦方向の波の透磁率と横方向の透磁率とがより大きく異なることになる。また、単位セル自体も同様に正方形である必要はない。単位セル形状の対称性が崩れれば崩れるほど異方性が強くなる。このようにして異方性をコントロールすることもできる。
【実施例2】
【0036】
次に他の実施例につき説明する。図10は本発明の第2の実施例の負透磁率媒質概略図を示している。図10(A)は六角形形状の負透磁率媒質の単位セル2の構造例である。これは、六角形形状の誘電体基板5の表面に六角形形状の金属パッチ4を周囲に誘電体を残して形成し、基板3の裏面には全面に接地導体5を持つ構造となっている。図10(B)は図10(A)の六角形形状の単位セル2を集合して構成された負透磁率媒質1である。このような構成とすることにより、単位セル2と負透磁率媒質1のそれぞれの異方性を小さくすることができる。
【0037】
こうして得られた図10(A)の負透磁率媒質1と、形状は六角形形状であるが、図6と同じ構成の単位セル6からなる正透磁率媒質7とを、図7のように左右に隣接して組合せた媒質により、該両媒質の境界に表面波を伝播する導波路を得ることができる。
【0038】
上記実施例では負透磁率媒質の構成と負透磁率媒質と正透磁率媒質との組合せについて説明したが、同様にして、負誘電率媒質と正誘電率媒質との組合せ構成とすることによっても、両媒質により、該両媒質の境界に表面波を伝播する導波路を得ることができる。そこで、次に負誘電率媒質と正誘電率媒質との組合せによる実施例につき説明する。
【実施例3】
【0039】
図11は本発明の第3の実施例で、負誘電率媒質11の概略図を示し、負誘電率媒質11は複数の単位セル12の集合により構成される。図12(A)は、図11の負誘電率媒質11を構成する方形の単位セル12である。誘電体基板13の表面に金属ストリップ16を形成し、誘電体基板13の裏面には全面に接地導体5を持つ構造とする。この金属ストリップ16と、それを真ん中あるいは真ん中以外から基板裏側の接地導体15に結ぶ金属のビア(スルーホール)14で構成される。負誘電率媒質を構成する際、基板表面の金属ストリップ16は隣接するセル間の金属ストリップと接続される。
【0040】
図12(B)はこの単位セル12の等価回路である。表面の金属ストリップ16は直列のインダクタンスLを持ち、同時にビア14により接地導体15に対して並列のインダクタンスLを持っている。更に並列には接地導体15に対して寄生のキャパシタンスCが存在するが、通常これは小さく無視してよい。並列キャパシタンスCが小さい範囲でこの様な直列インダクタンスLと並列インダクタンスLとを持つ媒質は、等価的に負の誘電率を持つ媒質となることが証明できることも知られている。
【0041】
この構成においても、金属ストリップ16の形状の対称性、単位セル12の対称性、ビア14の位置を変化させることで異方性をコントロールすることができる。即ち、異なる方向に対して異なる誘電率を持たせることが可能である。
【0042】
こうして得られた図11の負誘電率媒質11と、図6と同じ構成の単位セル6からなる正誘電率媒質7とを、図7のように左右に隣接して組合せた媒質により、該両媒質の境界に表面波を伝播する導波路を得ることができる。
【実施例4】
【0043】
次に負誘電率媒質についての他の実施例につき説明する。図13は本発明の第4の実施例である負誘電率媒質11の概略図を示している。図13(A)は、六角形形状の負誘電率媒質の単位セル12の構造の例である。
【0044】
これは、六角形形状の誘電体基板13の表面に、六角形の辺の中間を結ぶ六角形形状の金属ストリップ16を形成し、基板13の裏面には全面に接地導体5を持つ構造となっている。誘電体基板13の表面の金属ストリップ16と、それを真ん中あるいは真ん中以外から基板裏側の接地導体15に結ぶ金属のビア(スルーホール)14で構成される。負誘電率媒質を構成する際、基板表面の金属ストリップ16は隣接するセル間の金属ストリップと接続される。
【0045】
図13(B)は図13(A)の六角形形状の単位セル12を集合して構成された負誘電率媒質11である。このような構成とすることにより、単位セル12と負誘電率媒質11のそれぞれの異方性を正方形のものに比べて小さくすることができる。
【0046】
この構成においても、金属ストリップ16の形状の対称性、単位セル12の対称性、ビア14の位置を変化させることで異方性をコントロールすることができる。即ち、異なる方向に対して異なる誘電率を持たせることが可能である。
【0047】
こうして得られた図13の負誘電率媒質11と、形状は六角形形状であるが、図6と同じ構成の単位セル6からなる正誘電率媒質7とを、図7のように左右に隣接して組合せた媒質により、該両媒質の境界に表面波を伝播する導波路を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明はメタマテリアルでなる負誘電率媒体あるいは負透磁率媒体の特性を必要とする回路要素として広く利用できると共に、それらを用いた表面波を伝播する導波路を形成でき、超小型通信用の共振器、フィルタ、発振器等のデバイスの構成要素として広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】誘電率ε、透磁率μと媒質との関係領域図である。
【図2】表面波の伝播状態図である。
【図3】2次元伝送線路モデル図である。
【図4】本発明の周期構造負透磁率媒質の概略図である。
【図5】本発明の負透磁率媒質を構成する単位セルと等価回路である。
【図6】正の誘電率と透磁率を持つ媒質の単位セルである。
【図7】本発明の負透磁率媒質と正透磁率媒質の境界を表す概念図である。
【図8】本発明の媒質の表面波モードの分散関係図である。
【図9】両端短絡表面波モード共振器の基板表面上の電界強度分布図である。
【図10】六角形形状負透磁率媒質単位セルとその媒質構成図である。
【図11】負誘電率媒質の概略図である。
【図12】負誘電率媒質単位セルとその等価回路である。
【図13】六角形形状負透磁率媒質単位セルとそれによる負透磁率媒質構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1 負透磁率媒質
2 負透磁率媒質の単位セル
3,13 誘電体基板
4 金属方形パッチ
5,15 接地導体(裏面)
6 正透磁率および正誘電率の媒質の単位セル
7,16 金属ストリップ
11 負誘電率媒質
12 負誘電率媒質の単位セル
14 金属のビア(スルーホール)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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