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明細書 :膨潤度測定システムとその方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4370405号 (P4370405)
公開番号 特開2006-322791 (P2006-322791A)
登録日 平成21年9月11日(2009.9.11)
発行日 平成21年11月25日(2009.11.25)
公開日 平成18年11月30日(2006.11.30)
発明の名称または考案の名称 膨潤度測定システムとその方法
国際特許分類 G01H  11/08        (2006.01)
H01L  41/08        (2006.01)
FI G01H 11/08
H01L 41/08 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 23
出願番号 特願2005-145725 (P2005-145725)
出願日 平成17年5月18日(2005.5.18)
審査請求日 平成20年1月25日(2008.1.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】江 鐘偉
個別代理人の代理人 【識別番号】100111132、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 浩
審査官 【審査官】▲高▼見 重雄
参考文献・文献 特開2005-061871(JP,A)
特開2001-343314(JP,A)
特開平08-193825(JP,A)
特開2002-071697(JP,A)
特開2004-251845(JP,A)
調査した分野 G01H 11/08
H01L 41/08
特許請求の範囲 【請求項1】
端部を固定され測定対象の高分子ゲルを固定可能なビーム部とこのビーム部の一部に設けられる圧電素子を備える圧電トランスデューサと、前記高分子ゲルを浸漬する溶液を貯留した浸漬槽と、前記圧電素子を振動させる電源部と、前記圧電素子のアドミタンスを測定するアドミタンス測定部と、このアドミタンス測定部によって測定されたアドミタンス測定データに基づいて前記高分子ゲルの膨潤度を解析する膨潤度解析部と、この膨潤度解析部によって得られた前記高分子ゲルの膨潤度解析データを出力する出力部とを有することを特徴とする高分子ゲルの膨潤度測定システム。
【請求項2】
前記高分子ゲルは、前記ビーム部に代えてビーム部に着脱可能に設けられたプローブに固定することを特徴とする請求項1記載の膨潤度測定システム。
【請求項3】
前記ビーム部は並列に少なくとも2つ設けられ、そのうち1つのビーム部にはその特性が既知である高分子ゲルを固定可能であることを特徴とする請求項1記載の膨潤度測定システム。
【請求項4】
前記浸漬槽の溶液温度を測定可能な温度測定部と、その溶液温度を調整可能な温度調整部とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の膨潤度測定システム。
【請求項5】
前記高分子ゲルを膨潤させるために浸漬する溶液の特性に関する溶液データ,高分子ゲルの特性に関する高分子ゲルデータ,ビーム部及び/又は圧電素子の特性に関する測定系データを読み出し可能に格納する入力用データベースと、この入力用データベースに予め前記溶液データ、高分子ゲルデータ及び測定系データを入力する入力部と、前記アドミタンス測定データ及び/又は膨潤度解析データを読み出し可能に格納する出力用データベースとを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の膨潤度測定システム。
【請求項6】
交流電源によって振動する圧電素子を備えた圧電トランスデューサに高分子ゲルを固定して溶液に浸漬させ、前記圧電素子のアドミタンスを前記高分子ゲルの膨潤前後で測定してアドミタンス変化量を演算し、予め測定された膨潤前後における前記圧電素子のアドミタンス変化量と前記高分子ゲルの質量変化量の関係に基づいて高分子ゲルの質量変化量を演算して前記高分子ゲルの膨潤度を演算することを特徴とする高分子ゲルの膨潤度測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を備えた圧電トランスデューサに高分子ゲルを固定して溶液に浸漬し、圧電素子のアドミタンスを測定することで、高分子ゲルの膨潤度を高精度でリアルタイムに測定する膨潤度測定システムとその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子ゲルの中でも外部刺激応答性高分子ゲルは、外部刺激によりその特性が大きく変化することから次世代デバイスの材料として非常に期待されている。特に、温度応答性高分子ゲルは膨潤度が温度により変化するという興味深い特性を有する。この特性を利用してゲル中の物質透過性の温度制御を行なうことでドラッグデリバリーシステムやマイクロ化学チップ用ケミカルバルブ、ゲルの親水性を温度制御することで細胞培養シートや水処理用分離膜への応用などが考えられている。
このような温度応答性ゲルを種々の応用分野に最適化した材料設計を行なう上で、ゲルの温度変化に対する膨潤度を正確かつリアルタイムに測定することが強く求められている。
ところが、温度応答性高分子ゲルの膨潤度測定においては、調製した高分子膜の親水性を計測・評価するために電子天秤を用いることが多い。具体的な測定方法としては調整した高分子膜を一定の大きさに切り、温度を一定にした溶液に所定時間浸漬させた後、取り出して天秤でその重さを量る。その重さと膜並びに水の密度から膜の膨潤度を算出する。
一方、圧電素子はライターなどの点火装置からスピーカ、マイク、発振回路、駆動装置などに広く用いられる素子である。例えば、特許文献1には、振動特性の変化を用いて、その圧電素子を装着した屋外構造物の表面の付着汚損物量を測定する汚損物の測定装置が開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された発明は、屋外構造物の表面に圧電素子を装着し、その圧電素子に複数の振動用の電極を設け、それらの電極間に電圧を印加して圧電素子を振動させ、圧電素子の振動特性を検出し、その振動特性の変化に基づいて屋外構造物の表面の付着汚損物量を求め、さらに電極のうち少なくとも1つに加熱用の電流を通電して水分を蒸発させるものである。
このように構成された汚損物の測定装置においては、屋外構造物の表面に付着した汚損物量を経時変化として直接求めることができる。
また、圧電素子を用いた装置としては、特許文献2には、音波により被攪拌物を攪拌する手段を有する自動分析装置において、音波発生源として圧電素子が加振されて発生する振動を用いている。
さらに、特許文献3では音圧測定装置が開示されており、その中で圧電素子はセンサユニットに組み込まれており、超音波振動子から発信された超音波を純水を介して受信する受信棒において、受信された超音波振動を圧電変換するために用いられている。
【0004】
しかしながら、前述の高分子ゲルの膨潤度の測定方法においては、(1)リアルタイム測定が不可能、(2)計測精度は天秤の精度に依存、(3)ゲルを溶液から一旦取り出す必要があり、測定誤差が大きい、(4)薄膜と小さいサイズのゲルの測定に不向きなどという課題があった。この他、溶液に膜を浸漬させた状態で、ゲルサイズの変化から膨潤度を算出する方法や浮力を利用した計測方法もあるが、前者はゲルサイズの測定の精度が低いため正確な測定が困難であり、後者はリアルタイムでの測定が困難であるという課題があった。
また、特許文献1に開示された発明においては、屋外構造物の表面に付着した汚損物量をリアルタイムで求めることはできるが、高分子ゲルを溶液に浸漬させて、その溶液に対する膨潤度を測定することができないという課題があった。
特許文献2に開示される発明においては、音波の発生源として圧電素子を用いるものであって、圧電素子の振動周波数の変化を用いて何らかの量を測定するというものではなく、高分子ゲルの膨潤度を測定することはできないという課題があった。
特許文献3に開示された発明においても、圧電素子は超音波振動を圧電変換するために用いられるもので、高分子ゲルの膨潤度を測定することはできないという課題があった。

【特許文献1】特開平8-193825号公報
【特許文献2】特開2002-71697号公報
【特許文献3】特開2004-251845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、高分子ゲルの膨潤度を溶液中で正確かつリアルタイムで測定可能な膨潤度測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である膨潤度測定システムは、端部を固定され測定対象の高分子ゲルを固定可能なビーム部とこのビーム部の一部に設けられる圧電素子を備える圧電トランスデューサと、高分子ゲルを浸漬する溶液を貯留した浸漬槽と、圧電素子を振動させる電源部と、圧電素子のアドミタンスを測定するアドミタンス測定部と、このアドミタンス測定部によって測定されたアドミタンス測定データに基づいて高分子ゲルの膨潤度を解析する膨潤度解析部と、この膨潤度解析部によって得られた高分子ゲルの膨潤度解析データを出力する出力部を備えるものである。
上記構成の膨潤度測定システムでは、高分子ゲルを固定可能なビーム部を浸漬槽へ浸しながら、圧電素子を振動させながらそのアドミタンスをアドミタンス測定部で測定し、アドミタンスの変化量に基づいて膨潤度解析部が高分子ゲルの膨潤度を解析するという作用を有する。
なお、特許文献1に開示された発明においても圧電素子としての水晶振動板を振動させてその検知面に付着した汚損物の量を検出するが、高分子ゲルの膨潤度を測定するためには溶液に浸漬する必要があり、特許文献1に開示されるような構成は膨潤に係る作用を発揮し得ないものである。
また、ビーム部に圧電素子を設ける構成として、圧電素子の振動をビーム部を介して高分子ゲルに伝達させて、機械的なインピーダンスの変化を発生させ、その変化を再度ビーム部を介して圧電素子のアドミタンスとして測定して、そのアドミタンスの変化に基づいて高分子ゲルの膨潤度を解析するという作用は、特許文献1に開示された発明の作用とは異なるものである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明である膨潤度測定システムは、請求項1に記載の膨潤度測定システムにおいて、高分子ゲルがビーム部に代えてビーム部に着脱可能に設けられたプローブに固定されるものである。
このような構成に係る膨潤度測定システムの作用は請求項1に記載の発明の作用とほぼ同様であるが、高分子ゲルは、ビーム部とは別個のプローブに取り付けられて個別に管理されるという作用を有する。
【0008】
請求項3に記載の発明である膨潤度測定システムは、請求項1に記載の膨潤度測定システムにおいて、ビーム部は並列に少なくとも2つ設けられ、そのうち1つのビーム部にはその特性が既知である高分子ゲルを固定可能であるものである。
このような構成に係る膨潤度測定システムでは、並列に少なくとも2つのビーム部が設けられ、そのうち1つのビーム部に特性既知の高分子ゲルが固定され、また別のビーム部に測定対象の高分子ゲルを固定して、同時に圧電素子によって振動させることが可能でありリアルタイムな測定対照区を設けることが可能となる作用を有する。
【0009】
さらに、請求項4の発明である膨潤度測定システムは、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の膨潤度測定システムにおいて、浸漬槽の溶液温度を測定可能な温度測定部と、その溶液温度を調整可能な温度調整部とを備えるものである。
このような膨潤度測定システムでは、浸漬槽の溶液温度を測定・調整しながら膨潤度を測定するという作用を有する。
【0010】
さらに、請求項5の発明である膨潤度測定システムは、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の膨潤度測定システムにおいて、高分子ゲルを膨潤させるために浸漬する溶液の特性に関する溶液データ,高分子ゲルの特性に関する高分子ゲルデータ,ビーム部及び/又は圧電素子の特性に関する測定系データを読み出し可能に格納する入力用データベースと、この入力用データベースに予め溶液データ、高分子ゲルデータ及び測定系データを入力する入力部と、アドミタンス測定データ及び/又は膨潤度解析データを読み出し可能に格納する出力用データベースを備えるものである。
このような膨潤度測定システムでは、予め入力部を介して入力用データベースにそれぞれのデータを格納しておくことで、膨潤度解析部は入力用データベースからこれらのデータを読み出して膨潤度を解析し、また、測定結果や解析結果は出力用データベースに格納されて、出力部で読み出されるという作用を有する。
【0011】
さらに、請求項6に記載された発明である膨潤度測定方法は、請求項1に記載された発明を方法発明として捉えたものであり、交流電源によって振動する圧電素子を備えた圧電トランスデューサに高分子ゲルを固定して溶液に浸漬させ、圧電素子のアドミタンスを高分子ゲルの膨潤前後で測定してアドミタンス変化量を演算し、予め測定された膨潤前後における圧電素子のアドミタンス変化量と高分子ゲルの質量変化量の関係に基づいて高分子ゲルの質量変化量を演算して高分子ゲルの膨潤度を演算するものである。
このような膨潤度測定方法では、請求項1に記載された発明と同様の作用を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1乃至請求項5に記載の膨潤度測定システム及び請求項6に記載の膨潤度測定方法においては、浸漬槽に溶液を貯留してその溶液中に高分子ゲルを浸漬させ、圧電素子でビーム部を介して振動させるため、常に一定の振動条件の下、膨潤状態にある高分子ゲルを正確にリアルタイムで測定することが可能である。
【0013】
また、特に請求項2に記載された膨潤度測定システムにおいては、高分子ゲルを固定するプローブを備えているため、膨潤度の被測定対象である高分子ゲルを複数のプローブに取り付けて管理することが可能である。また、高分子ゲルは乾燥させてしまうと温度特性が変化する場合があるため、水中で保管することが望ましいが、その場合においてもプローブに固定して、圧電トランスデューサと分離させて管理することができる。
【0014】
さらに、特に請求項3に記載の膨潤度測定システムでは、特性が既知の高分子ゲルが少なくとも1本のビーム部に固定されるため、リアルタイムで測定対象となる高分子ゲルに対する圧電素子のアドミタンス変化量や膨潤度の測定結果について比較したり、較正したりすることが可能であり、測定精度を向上させることができる。
【0015】
特に、請求項4に記載された膨潤度測定システムにおいては、浸漬槽の溶液温度を測定・調整しながら膨潤度を測定することができるので、温度依存性がある高分子ゲルの膨潤度の測定をより高精度で実施することができる。
【0016】
請求項5に記載の膨潤度測定システムにおいては、入力用データベースにそれぞれのデータを格納しておくことで、逐次膨潤度の解析用データを入力する必要がなく、膨潤度解析部はこれらのデータを読み出して膨潤度を容易に解析することができる。また、測定結果や解析結果は出力用データベースに格納されて管理も容易である。さらに、データを出力用データベースに蓄積させてから出力部を介して読み出し出力させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る膨潤度測定システムの実施の形態を図1を参照しながら説明する。(特に、請求項1,2,4,5に対応)
図1は、本実施の形態に係る膨潤度測定システムの構成図である。膨潤度測定システム1は、トラスデューサ支持部12から垂設されたビーム部2とこのビーム部2に装着された圧電素子3から成る圧電トランスデューサ4と、ビーム部2の端部に貼設された高分子ゲル膜プローブ5を備えている。
高分子ゲル膜プローブ5は、板状でその両面に高分子ゲル膜6が固定されており、浸漬槽7に貯留される溶液8に浸漬されている。図中Aで示される点線内の部分は図中矢印Bの方向からビーム部2に貼設された高分子ゲル膜プローブ5と、この高分子ゲル膜プローブ5に固定される高分子ゲル膜6の関係を模式的に示すものである。
浸漬槽7には温度調整部9が設けられており、溶液8の温度を一定に維持することができる。
圧電素子3に印加される電圧を供給する交流電源11が圧電素子3に接続され、入力電圧Vinに対する出力電圧Voutがアドミタンス測定部14に入力されており、圧電素子3のアドミタンスが測定される。なお、アドミタンスとはインピーダンスの逆数である。
また、浸漬槽7内の溶液8の温度は検温部10を介して温度測定部15によって測定されている。アドミタンス測定部14は測定結果をアドミタンス測定データ23として、温度測定部15は測定結果を温度測定データ24として、それぞれ出力用データベース19に読み出し可能に格納する。
【0018】
膨潤度解析部16は、溶液8によって膨潤状態となった高分子ゲル膜6の膨潤度を解析し、その解析結果を出力用データベース19に膨潤度解析データ25として読み出し可能に格納する。
膨潤度解析部16における解析には、予め、膨潤させている溶液8に関する溶液データ20、膨潤状態にある高分子ゲル膜6の高分子ゲル膜データ21、さらに、圧電トランスデューサ4や交流電源11の特性に基づく測定系データ22が必要となるため、予め入力部13を介して入力用データベース18にそれぞれ読み出し可能に格納しておく。
【0019】
溶液データ20としては、具体的には溶液の成分や種類、溶液の密度などが含まれ、高分子ゲル膜データ21としては、高分子ゲル膜の種類、乾燥時の高分子ゲル膜の質量、密度、寸法、ヤング率、ポアソン比、さらには後ほど説明する温度をパラメータとした乾燥時のアドミタンス応答ピーク周波数などが含まれる。また、測定系データ22としては、圧電トランスデューサ4のビーム部2のヤング率、ポアソン比、密度などや圧電素子3の密度、弾性係数、比誘電率、圧電定数などが含まれるが、後ほど説明するアドミタンス応答のピーク周波数のシフト量Δfと高分子ゲル膜6の質量変化Δmの関係を表す係数kも含まれる。
【0020】
なお、温度調整部9は検温部10及び温度測定部15によって測定される溶液8の水温に関する信号を受信しながら、予め設定される溶液8の水温となるように温度調整部9において調整されるようにしておくとよい。また、本実施の形態においては、トラスデューサ支持部12に圧電トランスデューサ4を支持させているが、このトラスデューサ支持部12は特に設けなくとも例えば浸漬槽7の周囲を高く設け、これに圧電トランスデューサ4を固定するようにしてもよい。すなわち、トラスデューサ支持部12は特に独立した要素として設けなくともよく、圧電トランスデューサ4の支持が可能であれば何を用いてもよい。
【0021】
次に、図2乃至5を参照しながら、本実施の形態に係る膨潤度測定システムの膨潤度測定の原理について説明する。
図2(a)は本実施の形態に係る膨潤度測定システムの圧電トランスデューサ4、高分子ゲル膜プローブ5及び高分子ゲル膜6を抽出してその寸法を示す側面図であり、(b)は正面図である。
圧電トランスデューサ4は、長さl=75mmのアルミニウム製の片持ちのビーム部2に大きさ10×5×0.3mmのセラミック製の圧電素子3を固定する構造となっている。また、高分子ゲル膜プローブ5は、30×5×0.5mmのアルミ板に10×5mmの高分子ゲル膜6を固定化するものである。本膨潤度測定システム1における寸法は、解析モデルとして用い、さらに実験室で試作可能なサイズとしており、特にこれらの寸法に限定するものではない。
まず、有限要素法を用いて、図2に示される圧電トランスデューサ4の数値シミュレーションを行なう。解析における物性値を表1に示す。
【0022】
【表1】
JP0004370405B2_000002t.gif

【0023】
また、高分子ゲル膜6の質量や体積の変化を圧電素子3のインピーダンス変化で計測するため、図3に示すように抵抗を介して圧電素子3に入力電圧(vin)を印加するようにした。ここで、入力電圧を式(1)とすると、圧電素子3のアドミタンスYは、式(2)で表される。なお、本願明細書においては、入力電圧が時間の関数の場合は小文字(イタリック体を含む)、周波数の関数または常数(たとえば振幅など)の場合は大文字(イタリック体を含む)となっている。
【0024】
【数1】
JP0004370405B2_000003t.gif
【数2】
JP0004370405B2_000004t.gif

【0025】
本実施の形態に係る膨潤度測定システムにおける数値シミュレーションでは、入力電圧振幅をA=1V、抵抗値をR=1000Ωとした。
また、高分子ゲル膜6は温水中に浸漬すると水分を吸収して膨潤する。その場合、高分子ゲル膜6の質量と体積が共に変化する。そこで、高分子ゲル膜6が吸収した水分の質量変化をΔm、水の密度をdw、体積変化をΔV=Δm/dwとすると、高分子ゲル膜6の厚さは式(3)で表される。
【0026】
【数3】
JP0004370405B2_000005t.gif

【0027】
式(3)において、Sは高分子ゲル膜6の面積である。一方、数値解析においては、高分子ゲル膜6の物性値を膜の厚さと密度で与えているため、水分による質量変化Δmを膜の等価密度に換算して与える方法を採用している。もし、乾燥時の高分子ゲル膜6の質量をm、密度をdmとすると、その高分子ゲル膜6の等価密度dΔmは、式(4)で与えられる。
【0028】
【数4】
JP0004370405B2_000006t.gif

【0029】
高分子ゲル膜6の質量変化Δmを0~10mgまで変化させながら、圧電トランスデューサ4の周波数応答をシミュレーションした。得られた圧電アドミタンス応答を図4に示す。図4に示されるとおり、高分子ゲル膜6の質量変化によって、ピーク周波数が左側へシフトすると共に、振幅が低下する傾向が見られる。
さらに、図5にピーク周波数のシフト量Δfと高分子ゲル膜6の質量変化Δmの関係について示す。図6によれば、高分子ゲル膜6に浸潤した水分量が圧電トランスデューサ4のピーク周波数のシフト量と比例し、ほぼ線形関係にあることが理解される。また、線形近似によりその係数は、
【0030】
【数5】
JP0004370405B2_000007t.gif

【0031】
で表現され、その結果k=45[Hz/mg]と算出された。
この係数kを用いて、アドミタンス測定部14によって測定されたアドミタンス応答(Δf)から膨潤度変化を引き起こした質量変化(Δm)を求め、最終的に膨潤度を求めるのである。
ここで、図6及び図7を参照しながら、アドミタンス測定部14によって測定される圧電素子3のアドミタンスの導出方法について説明する。
一般に正弦波電圧v(t)は振幅Va,位相θ,角周波数ω,及びオフセット電圧Voffを用いて次式で表せる。
【0032】
【数6】
JP0004370405B2_000008t.gif

【0033】
さらに、
【0034】
【数7】
JP0004370405B2_000009t.gif

【0035】
とおくと、式(6)は
【0036】
【数8】
JP0004370405B2_000010t.gif

【0037】
と線形化できる。式(8)に最小二乗法を適用することでA,B,Cの最確値A0,B0,C0が得られ、振幅VaはA0,B0を用いて次式のように表せる。
【0038】
【数9】
JP0004370405B2_000011t.gif

【0039】
上記手法をAD変換器によって得られる離散データVF (n),VZ (n)及び、PZT(圧電素子)の両端にかかるVP (n)=VF (n)-VZ (n), n=1,2,3,…,Xに適用することで、それぞれの振幅値VFa,VZa,VPaが求められる。次に、これらの振幅値を用いてPZTのアドミタンス値の実部Re(Y)を算出する方法を考える。図7に示すように電圧信号VF,VZおよびVPをベクトルで表記し、位相角βとVPを用いてRe (VP)を求めると、
【0040】
【数10】
JP0004370405B2_000012t.gif

【0041】
となる.図6に示す回路の付加インピーダンスZを抵抗R[Ω]とすると、回路に流れる電流Iは、
【0042】
【数11】
JP0004370405B2_000013t.gif

【0043】
であり、PZTのアドミタンス実部Re(Y)は、
【0044】
【数12】
JP0004370405B2_000014t.gif

【0045】
となる。これに式(10)、式(11)を代入して
【0046】
【数13】
JP0004370405B2_000015t.gif

【0047】
となる。さらに図7の関係から
【0048】
【数14】
JP0004370405B2_000016t.gif

【0049】
を、式(13)に代入すると圧電素子アドミタンス実部Re(Y)は次式のように求まる。これらの演算はアドミタンス測定部14にて実行されるものである。
【0050】
【数15】
JP0004370405B2_000017t.gif

【0051】
次に、本実施の形態に係る膨潤度測定システムのアドミタンス測定部14、温度測定部15及び膨潤度解析部16における解析の処理方法について説明を加える。(特に、請求項6に対応)
図8は、本実施の形態に係るアドミタンス測定部、温度測定部及び膨潤度解析部の解析の手順を示すフロー図である。本図では、これら3つの測定部、解析部に絞って説明するため、それ以前のステップとして、交流電源によって振動する圧電素子3を備えた圧電トランスデューサ4に直接あるいは高分子ゲル膜プローブ5を介して高分子ゲル膜6を固定し、膨潤させる溶液に浸漬させて、温度を一定値に安定させるステップが含まれる。
図8において、アドミタンス測定部14では、ステップS1で圧電トランスデューサ4に備えられた圧電素子3のアドミタンス応答波形を測定し、そのピーク周波数を測定する。測定されたピーク周波数は、アドミタンス測定データ23として出力用データベース19に格納される。
【0052】
次に、温度測定部15ではステップS3として高分子ゲル膜6が浸漬されている溶液の温度を測定し、ステップS4で測定された温度を温度測定データ24として出力用データベース19に格納する。図8では、温度測定部15におけるステップをアドミタンス測定部14の後のステップとしているが、同時でもよいし、ステップS1,2の前の工程として実施してもよい。ここまでで、膨潤度の解析のためのアドミタンス測定と温度測定が実行されたことになる。
膨潤度解析部16では、得られたアドミタンス測定データ23を出力用データベース19から読み出して(ステップS5)、乾燥した高分子ゲル膜6の応答ピーク周波数からの変化量を演算する(ステップS6)。乾燥した高分子ゲル膜6の応答ピーク周波数は、予め高分子ゲル膜データ21として入力用データベース18に格納しておき、アドミタンス測定データ23と同時に入力用データベース18から読み出すとよい。
【0053】
アドミタンス変化量が演算されると、次にステップS7で高分子ゲル膜の質量変化量が前述の式(5)で表される係数kを用いて演算される。この式(5)は、予め入力用データベース18に測定系データ22の一部として格納されているので、入力用データベース18から読み出して用いるとよい。
その後、ステップS8で、ステップS7で得られた高分子ゲル膜の質量の変化から式(5)を用いて膨潤度の演算を行い、ステップS9ではその膨潤度演算値を膨潤度解析データ25として出力用データベース19に格納する。
もちろん、出力用データベース19に格納しなくとも直接図1に示される出力部17に出力してもよいし、出力用データベース19を介して出力部17から出力させてもよい。
【0054】
次に、図2に示されるような圧電トランスデューサ4等を備えた膨潤度測定システムの作成とそれを用いて行なった実験結果について図9乃至図13を参照しながら説明する。
本実施の形態においては、温度応答性の高分子ゲル膜プローブ5は、前述の寸法のアルミ板に、高分子ゲル膜6としてN-イソプロピルアクリルアミドを用いて固定した。
高分子ゲル膜6の固定方法には、2通りの方法を用いた。一つは、ポリマー溶液をキャスト後、乾燥させて固体膜にした後に、アルミ板に貼り付ける方法であり、この膜を接着高分子ゲル膜6とした。もう一つは、作製したポリマー溶液をアルミ板へ塗布し、乾燥させる方法であり、この膜をコーティングゲル膜としたものである。後者の場合は、コーティングゲル膜をアルミ板に固定化した後にアルミ板ごと160℃で20分熱処理し、0.025vol%グルタミンアルデヒド水溶液で1日架橋処理を行った。前者の場合は、接着ゲル膜を同様な架橋処理を行った後にアルミ板へポリビニルアルコール(PVA)水溶液を接着剤として用いて貼り付けた。
これらの高分子ゲル膜6を高分子ゲル膜プローブ5に接着する際には、高分子ゲル膜プローブ5の先端10mmの範囲に、直径1mmの孔を6個開けることで高分子ゲル膜6がこれらの孔を通じてつながり、高分子ゲル膜6の高分子ゲル膜プローブ5への固着力が強化されるように工夫されている。
【0055】
図9(a)、(b)は、本実施の形態に係る高分子ゲル膜プローブに固定された高分子ゲル膜の状態を前述の2通りの方法に分けて示すものであり、(a)が固体膜とした後に貼り付けたもの(pasted gel membrane)、(b)が塗布して乾燥させて固定化させたもの(coating gel membrane)である。また、図9(c)は、本実施の形態に係る圧電トランスデューサを示すものである。高分子ゲル膜プローブ5の先端10mmの範囲に穿設された孔は、特に図9(b)に示されるとおりである。
本実施の形態においては、高分子ゲル膜プローブ5の圧電トランスデューサ4への固定は、両面テープで接着する方法を取っており、高分子ゲル膜プローブ5を簡単に取り外し可能となっている。もちろん、両面テープ以外、例えば、ボルトとナットなどで固定するようにすると位置決めも容易で強固に固定されるため望ましいが、溶接してしまうと高分子ゲル膜プローブ5の交換が容易ではないので、留意する必要がある。
このように構成される圧電トランスデューサ4を用いて高分子ゲル膜の膨潤度を測定するのである。以下、その測定方法について説明する。
高分子ゲル膜を例えば水中に浸漬すると膜が膨潤し、それに浸潤した水分により膜の質量が変化する。この質量変化が圧電トランスデューサ4の機械的インピーダンスの変化をもたらすので、その機械的インピーダンス変化を圧電素子の電気的インピーダンスを測定することで、高分子ゲル膜の質量変化を高精度で計測できるのである。
【0056】
具体的に行なった方法を実施例として図1を参照しながら説明する。
高分子ゲル膜プローブ5の高分子ゲル膜6を水中に浸け、水温を変化させながら高分子ゲル膜6の膨潤による膜の質量変化を圧電トランスデューサ4に取り付けた圧電素子3の電気的アドミタンス(インピーダンスの逆数)の変化で計測して、高分子ゲル膜6の含水量の温度変化を調べるものである。
アドミタンス測定部14としてアドミタンスアナライザーを用い、圧電素子3に一定電圧の正弦波を掃引しながら圧電トランスデューサ4のアドミタンス応答を計測する。
はじめに、高分子ゲル膜プローブ5のアルミ基板のみを圧電トランスデューサ4に設置した場合及び高分子ゲル膜6を高分子ゲル膜プローブ5に固定した場合の両方についてアドミタンスの周波数応答を測定し、圧電トランスデューサ4の動作特性を調べた。
【0057】
図10は、その圧電トランスデューサ4の動作特性を示すグラフである。図中、点線で示されるスペクトルは高分子ゲル膜プローブ5のみの結果で、実線で示されるスペクトルは高分子ゲル膜プローブ5に高分子ゲル膜6を固定した場合の結果を示している。
全体の特性を把握するために掃引周波数範囲を0~40kHz、掃引周波数ステップを50Hzとしている。図より、高分子ゲル膜6が固定された場合は固定されていない場合に比較して、アドミタンス周波数応答波形が左側、すなわち低周波数側へシフトしていることがわかる。この差は、高分子ゲル膜6が固定されたことによる高分子ゲル膜プローブ5の質量増加によるものと考えられる。
0~40kHzの全領域のアドミタンス波形を用いてゲルの質量評価を行なうことは可能であるが、計測には長時間を要するため、1のピーク波形を用いて膜の質量変化を評価する。
1自由度系の応答を考えると、質量の増加によって共振周波数と最大振幅が共に低下するが、この特徴が顕著に現れている波形は、25kHz付近の波形であるため、計測はこの25kHz近傍で行なうこととした。
高分子ゲル膜6の特性を計測する前に、まず、温度が圧電トランスデューサ4自身に与える影響について調べる必要があるため、高分子ゲル膜6を固定しない高分子ゲル膜プローブ5のアルミ基板のみの状態で圧電トランスデューサ4に設けて高分子ゲル膜プローブ5の先端部を水に浸漬させたまま、水温を変化させて圧電トランスデューサ4のアドミタンス応答を測定した。前述のように共振周波数と最大振幅の特性から25kHz近傍の波形が望ましいことがわかっているので、その周辺の23kHz~27kHzを測定周波数範囲とし、掃引周波数ステップは5Hzとした。水温は15℃から50℃まで変化させた。
【0058】
この測定結果を図11に示す。図11に示されるとおり、水温の変化は圧電トランスデューサ4のアドミタンス周波数応答にはほぼ影響のないことが確認された。
次に、本実施例における高分子ゲル膜6の膨潤度の測定について説明する。
高分子ゲル膜6の膨潤度Heは、式(5)によって表現される。
【0059】
【数16】
JP0004370405B2_000018t.gif

【0060】
ここで、ΔmとΔfは、それぞれ高分子ゲル膜6の浸潤した水分量と圧電素子3のアドミタンス波形のピーク周波数シフト量であり、Vmとdwはそれぞれ乾燥時の高分子ゲル膜6の体積と水の密度である。
膨潤度の計測は、浸漬槽7に高分子ゲル膜6を固定した高分子ゲル膜プローブ5を浸漬させ、溶液8として水を用いて水温を低温から高温へと変化させながら行なった。
最初は水温を20℃に設定し、以後6℃ずつ最終的には50℃まで温度を上昇させながら圧電素子3のアドミタンス応答をアドミタンス測定部14によって測定した。
なお、本実施例では温度調整部9を備えていない浸漬槽7において行なったので、昇温には高温の温水を追加することで行なったため、水位を一定に保つため注射器で水を排出した。
【0061】
アドミタンス測定部14による測定は、目的の温度に達した後5分間待ち状態が安定してから行なった。20℃から50℃まで繰り返しアドミタンス応答を測定して得られたグラフを図12に示す。
図12において、縦軸はアドミタンスであり横軸はアドミタンス波形の周波数である。水温が高くなるにつれて周波数が高くなっていることがわかる。基準となる周波数(24.5kHz)との差を水温毎に表すと表2のとおりである。
【0062】
【表2】
JP0004370405B2_000019t.gif

【0063】
さらに、高分子ゲル膜6として固体膜とした後に貼り付けたもの(pasted gel membrane)及び塗布して乾燥させて固定化させたもの(coating gel membrane)の両方について式(5)を用いて膨潤度を演算した。その結果を電子秤を用いて計算された膨潤度と比較しながら図13に示す。
図13において、横軸は膨潤に供された水の温度を示しており、縦軸は膨潤度を示すものである。固体膜として後に貼り付けたものと塗布して乾燥させて固定化させたもので少し膨潤度に差が生じているものの、電子秤で得られる高分子ゲル膜の膨潤度とほぼ同一の値が得られていることがわかる。
【0064】
このように構成された本実施の形態においては、高分子ゲル膜の膨潤度を溶液から取り出すことなく、溶液中でリアルタイムで正確に測定することが可能である。
次に、本実施の形態に係る膨潤度測定システムの圧電トランスデューサ及び高分子ゲル膜プローブの組合せに関する実施例について図14を参照しながら説明する。
図14において、(a)は図1乃至図3に記載された圧電トランスデューサ4と高分子ゲル膜6を固定した高分子ゲル膜プローブ5の基本的な組合せの構成を示す図である。この構成に対して、(b)は、高分子ゲル膜プローブ5を設けず直接ビーム部2aに高分子ゲル膜6を固定し、圧電素子3を高分子ゲル膜6を固定した側とは異なる端部に設けて、さらに固定材29a,30aで挟持して位置調整具26で調整可能に固定するものである。
【0065】
この(b)に示す実施例では、圧電素子3が設けられる側のビーム部2aには位置調整具26を挿通可能な孔(図示せず)が穿設されており、位置調整具26を固定材29a,30aとの関係で緩めてビーム部2aの位置を変更して調整し、調整後に再び位置調整具26を締結して固定するという操作が実行される。
このようにすることで、ビーム部2aの長手方向位置を常に一定とすることが可能であり、高分子ゲル膜6との位置関係も調整することが可能となる。高分子ゲル膜6によってビーム部2aに生ずる機械的インピーダンスの変化の効果をビーム部2aの位置調整を行なうことによって調節し、もって、高分子ゲル膜6の膨潤度測定の精度を向上させることが可能となる。さらに、ビーム部2aの交換も容易となり、高分子ゲル膜プローブ5を単位として保存する必要性も薄くなるという効果もある。なお、図14(b)では、圧電素子3が固定材29a,30aによって挟まれるように示されているが、この圧電素子3には必ずしも位置調整具26を挿通させるための孔を穿設する必要はなく、圧電素子3の設けられる位置と孔の位置をずらすなどすればよいことは言うまでもない。
【0066】
次に、図14(c)に示される実施例について説明する。(特に、請求項3に対応)
この(c)に示す実施例では、2本のビーム部2b,2cの端部に、特性が既知である高分子ゲル膜6aと測定対象となる高分子ゲル膜6をそれぞれ固定して圧電素子3を用いて同時に振動させて、既知の特性を備えた高分子ゲル膜6aのデータと測定対象の高分子ゲル膜6のデータを比較することができるものである。
本実施例においても(b)に示される実施例と同様に高分子ゲル膜プローブ5は用いられていない。
本実施例においては、2本のビーム部2b,2cを並列に構成させて、カギ型となった上部の内側にそれぞれ圧電素子3を配しながら、固定材30bを締結具28a,28aで固定し、この固定材30bとビーム部2b,2cの上部に設けられる固定材29bを緩衝材27を介して締結具28bで固定するというものである。2本のビーム部2b,2cはそれぞれ別個独立であり、それらを振動させる圧電素子3,3も別個独立であるので、互いの振動によって共振するようなことは避けられる。
ビーム部2cの下端に直接固定された高分子ゲル膜6aは、膨潤度特性などが既知の膜材であり、これを基準として同じ浸漬槽内の溶液に測定対象となる高分子ゲル膜6を浸漬することで、得られた測定結果について比較することができるのである。
【0067】
さらに、特性既知の膜材を用いることで、膨潤度測定システムの較正に利用することも可能である。
例えば、図1に示される膨潤度測定システム1において、図14(c)に示されるビーム部2b,2cなどを採用し、予め高分子ゲル膜6aを用いて得られた一定条件下における圧電素子3のアドミタンス応答値を基準として、実際に測定対象の高分子ゲル膜6をビーム部2bに固定した後に、ビーム部2cの圧電素子3のアドミタンス応答が、予め求めたアドミタンス応答値となったときに、ビーム部2bの測定を行なうということが考えられる。
このような(c)に係る実施例を膨潤度測定システムに採用することで、より精度の高い膨潤度測定を実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明の請求項1乃至請求項5に記載された発明は、高分子ゲル膜の膨潤度をリアルタイムに正確に測定可能であるため、高分子ゲル膜をドラッグデリバリーシステムやマイクロ化学チップ用ケミカルバルブ、さらに細胞培養シートや水処理用分離膜への応用する際の材料設計のための試験装置や評価試験などにおいて、材料となる膜の膨潤度を測定するための装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態に係る膨潤度測定システムの構成図である。
【図2】(a)は本実施の形態に係る膨潤度測定システムの圧電トランスデューサ、高分子ゲル膜プローブ及び高分子ゲル膜を抽出してその寸法を示す側面図であり、(b)は正面図である。
【図3】本実施の形態に係る膨潤度測定システムの圧電トランスデューサの入力電圧と出力電圧の関係を説明するための概念図である。
【図4】本実施の形態に係る膨潤度測定システムの圧電トランスデューサの周波数応答をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図5】シミュレーションによって得られたピーク周波数のシフト量Δfと高分子ゲル膜6の質量変化Δmの関係を示すグラフである。
【図6】本実施の形態に係る圧電素子のアドミタンス測定回路の概念図である。
【図7】圧電素子の出力電圧をベクトルで表現する概念図である。
【図8】本実施の形態に係るアドミタンス測定部、温度測定部及び膨潤度解析部の解析の手順を示すフロー図である。
【図9】(a)、(b)は、本実施の形態に係る高分子ゲル膜プローブに固定された高分子ゲル膜の状態を2通りの方法に分けて示す写真であり、(a)が固体膜とした後に貼り付けたもの(pasted gel membrane)、(b)が塗布して乾燥させて固定化させたもの(coating gel membrane)であり、(c)は、本実施の形態に係る圧電トランスデューサを示す写真である。
【図10】本実施の形態に係る膨潤度測定システムの圧電トランスデューサの動作特性を示すグラフである。
【図11】本実施の形態に係る膨潤度測定システムの圧電トランスデューサの高分子ゲル膜なしの状態におけるアドミタンス応答を測定した結果を示すグラフである。
【図12】本実施の形態に係る膨潤度測定システムの圧電トランスデューサの高分子ゲル膜ありの状態におけるアドミタンス応答を測定した結果を示すグラフである。
【図13】本実施の形態に係る膨潤度測定システムにおいて測定された膨潤度を、固体膜とした後に貼り付けたもの及び塗布して乾燥させて固定化させたものに分けて、電子秤を用いて求めた値と比較して温度をパラメータとして示すグラフである。
【図14】本実施の形態に係る膨潤度測定システムの圧電トランスデューサと高分子ゲル膜を固定するプローブあるいはビーム部の組合せの実施例を示す概略構造図であり、(a)は図1乃至図3で示す基本的な構造であり、(b)はプローブを設けることなく直接ビーム部に高分子ゲル膜を固定して、ビーム部の位置を調整可能な実施例、(c)もプローブを設けることなくビーム部に高分子ゲル膜を固定し、特性既知の他の膜材を基準とした比較型の実施例を示すものである。
【符号の説明】
【0070】
1…膨潤度測定システム 2,2a~2c…ビーム部 3…圧電素子 4…圧電トランスデューサ 5…高分子ゲル膜プローブ 6…高分子ゲル膜 7…浸漬槽 8…溶液 9…温度調整部 10…検温部 11…交流電源 12…トラスデューサ支持部 13…入力部 14…アドミタンス測定部 15…温度測定部 16…膨潤度解析部 17…出力部 18…入力用データベース 19…出力用データベース 20…溶液データ 21…高分子ゲル膜データ 22…測定系データ 23…アドミタンス測定データ 24…温度測定データ 25…膨潤度解析データ 26…位置調整具 27…緩衝材 28a,28b…締結具 29a,29b…固定材 30a,30b…固定材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
12
【図14】
13