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明細書 :アルデヒド製造用触媒及びアルデヒドの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4675170号 (P4675170)
公開番号 特開2007-007520 (P2007-007520A)
登録日 平成23年2月4日(2011.2.4)
発行日 平成23年4月20日(2011.4.20)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
発明の名称または考案の名称 アルデヒド製造用触媒及びアルデヒドの製造方法
国際特許分類 B01J  23/78        (2006.01)
C07C  45/41        (2006.01)
C07C  47/06        (2006.01)
B01J  35/10        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 23/78 M
C07C 45/41
C07C 47/06 Z
B01J 35/10 301J
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 9
全頁数 10
出願番号 特願2005-189306 (P2005-189306)
出願日 平成17年6月29日(2005.6.29)
審査請求日 平成20年3月11日(2008.3.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
発明者または考案者 【氏名】今村 速夫
【氏名】酒多 喜久
【氏名】田中 秀二
個別代理人の代理人 【識別番号】100092820、【弁理士】、【氏名又は名称】伊丹 勝
【識別番号】100103274、【弁理士】、【氏名又は名称】千且 和也
審査官 【審査官】岡田 隆介
参考文献・文献 特開平08-027055(JP,A)
特開昭58-134040(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00-38/74
特許請求の範囲 【請求項1】
カルボン酸エステルを水素化してアルデヒドを製造する際に用いられ、
銅及び周期律表第8族金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属が珪酸カルシウムに担持されていることを特徴とするアルデヒド製造用触媒。
【請求項2】
銅及び周期律表第8族金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属が0.1~15質量%珪酸カルシウムに担持されていることを特徴とする請求項1記載のアルデヒド製造用触媒。
【請求項3】
ランタニド元素の金属がさらに担持されていることを特徴とする請求項1又は2記載のアルデヒド製造用触媒。
【請求項4】
前記ランタニド元素の金属が、サマリウム、ランタン、セリウム、ネオジム、イッテルビウム及びユーロピウムのうち少なくとも一つの金属であることを特徴とする請求項3記載のアルデヒド製造用触媒。
【請求項5】
銅及び周期律表第8族金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属1モルに対し、ランタニド元素の金属が0.01~0.3モルの割合で存在することを特徴とする請求項3又は4記載のアルデヒド製造用触媒。
【請求項6】
前記珪酸カルシウムは、BET比表面積が50~500m/gであり、吸油量が50~500ml/100gの多孔質珪酸カルシウムであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のアルデヒド製造用触媒。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のアルデヒド製造用触媒の存在下でカルボン酸エステルを水素化してアルデヒドを製造することを特徴とするアルデヒドの製造方法。
【請求項8】
珪酸カルシウムに銅及び周期律表第8族金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属を担持して前記アルデヒド製造用触媒を製造し、製造した前記アルデヒド製造用触媒を単離せずにその反応槽に前記カルボン酸エステルを加えてその水素化を行なうことを特徴とする請求項7記載のアルデヒドの製造方法。
【請求項9】
カルボン酸エステルと水素の混合物を前記アルデヒド製造用触媒と接触させることを特徴とする請求項7又は8記載のアルデヒドの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸エステルを水素化して主生成物としてアルデヒドを製造する場合に用いられるアルデヒド製造用触媒、及びそのアルデヒド製造用触媒を用いてカルボン酸エステルを水素化してアルデヒドを製造するアルデヒドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸エステルを水素化して主生成物としてアルデヒドを製造する場合に用いられるアルデヒド製造用触媒としては、例えば、酸化ジルコニウムとランタニド元素からなる触媒(特許文献1)、酸化ハフニウム触媒(特許文献2)、酸化ランタン触媒(特許文献3)、及び高純度酸化クロム触媒(特許文献4)などが知られている。
【0003】
また、カルボン酸エステルの水素化反応におけるアルデヒド製造用触媒として、コバルトと酸化ジルコニウムからなる触媒(特許文献5)、鉄カルボニルから製造された鉄触媒(特許文献6)、チタンの酸化物質と一種以上の共存金属(銅、コバルト、ニッケルなど)からなる触媒(特許文献7)、及びルテニウム/スズ型バイメタル触媒(特許文献8)なども知られている。その他、酸化亜鉛-酸化クロム触媒により、酢酸及びn-酪酸などの低級カルボン酸のエステルを水素化する方法(特許文献9)も知られている。
【0004】

【特許文献1】特開平8-231458号公報
【特許文献2】特公平6-37419号公報
【特許文献3】特開2002-3431号公報
【特許文献4】特開平5-310630号公報
【特許文献5】特開昭61-115043号公報
【特許文献6】特開昭64-83040号公報
【特許文献7】特開平3-118344号公報
【特許文献8】特開平5-294882号公報
【特許文献9】特公昭47-38410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1乃至4に記載された触媒は、有毒な重金属を用いるものであったり、高価な希少金属や汎用的でない金属を用いるものであり、カルボン酸エステルを水素化して主生成物としてアルコールを製造する際に用いられるアルコール製造用触媒において多用される金属をそのまま活性成分として用いることができないので、簡便に調製又は使用できる触媒ではない。また、これら触媒は、いずれもアセトアルデヒドなどの脂肪族低級アルデヒドの製造に適しているものではない。
【0006】
また、特許文献5に記載された触媒は、芳香族アルデヒドの製造にのみ使用されるものである。さらに、特許文献6乃至8に記載された触媒は、芳香族アルデヒドや脂環式アルデヒドの製造に用いられるが、アセトアルデヒドなどの脂肪族低級アルデヒドの製造に適しているものではない。またさらに、これら特許文献5乃至8に記載されたアルデヒド製造用触媒は、担体などの触媒原料を容易に入手することができず、簡便に触媒調製できる一般的なものではない。さらにまた、特許文献9に記載された触媒は、アセトアルデヒドなどの脂肪族低級アルデヒドを製造することができるが、アセトアルデヒド、n-ブチルアルデヒドなどの選択率は14~33%程度と低い。
【0007】
そこで、本発明は、カルボン酸エステルを水素化して主生成物としてアルコールを製造する際に用いられるアルコール製造用触媒において多用される金属を活性成分とし、容易に入手可能な一般的な原料を用いて簡便に調製又は使用でき、アセトアルデヒドなどの脂肪族低級アルデヒドを効率よく製造できる、カルボン酸エステルを水素化して主生成物としてアルデヒドを製造する場合に用いられるアルデヒド製造用触媒、及びそのアルデヒド製造用触媒を用いてカルボン酸エステルを水素化してアルデヒドを製造するアルデヒドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、珪酸カルシウムを担体として用いることにより、上述した目的を達成することができるアルデヒド製造用触媒が得られることを見出して本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、銅及び周期律表第8族金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属が珪酸カルシウムに担持されていることを特徴とするアルデヒド製造用触媒である。
【0009】
本発明に係るアルデヒド製造用触媒は、ランタニド元素の金属がさらに担持されていることが好ましく、この場合、前記ランタニド元素の金属は、サマリウム、ランタン、セリウム、ネオジム、イッテルビウム及ぶユーロピウムのうち少なくとも一つの金属であることが好ましい。また、本発明に係るアルデヒド製造用触媒において、珪酸カルシウムは、BET比表面積が50~500m/gであり、吸油量が50~500ml/100gの多孔質珪酸カルシウムであることが好ましい。さらに、本発明は、これらアルデヒド製造用触媒の存在下でカルボン酸エステルを水素化してアルデヒドを製造することを特徴とするアルデヒドの製造方法である。本発明に係るアルデヒドを製造する方法は、カルボン酸エステルと水素の混合物を前記本発明に係るアルデヒド製造用触媒と接触させても良く、また、珪酸カルシウムに銅及び周期律表第8族金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属を担持して前記アルデヒド製造用触媒を製造し、製造した前記アルデヒド製造用触媒を単離せずにその反応槽に前記カルボン酸エステルを加えてその水素化を行なっても良い。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明に係るアルデヒド製造用触媒は、アルコール製造用触媒として多用される銅などの金属を活性成分とする上に珪酸カルシウムを担体とするものであり、さらにアセトアルデヒドなどの脂肪族低級アルデヒドを製造できるものであるので、容易に入手可能な一般的な原料を用いて簡便に調製及び使用でき、かつアルデヒドを選択率よく製造できる、非常に優れたアルデヒド製造用触媒である。また、本発明に係るアルデヒド製造用触媒を用いることにより、カルボン酸エステルから効率よくアルデヒドを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るアルデヒド製造用触媒及びアルデヒドの製造方法について詳細に説明する。本発明に係るアルデヒド製造用触媒は、珪酸カルシウムを触媒担体として用いることを特徴の一つとする。珪酸カルシウムは、断熱材や建築材料、或いは土壌改良剤などに用いられており、種々のグレードの珪酸カルシウムが既に市販されている。本発明においては、これら市販の珪酸カルシウムを何ら制限なく使用することができるが、一般に表面積の大きい珪酸カルシウムを用いることが好ましい。通常BET比表面積で50m/g以上の比表面積を持つ珪酸カルシウムが好適に使用される。中でも多孔質であって、BET比表面積が50~500m/gであること、さらに吸油量(JIS K622により規定される)が50~550ml/100gであることが特に好ましい。
【0012】
珪酸カルシウムの製造方法は、既に公知であり、本発明に用いられる珪酸カルシウムの製造方法は、特に限定されないが、本発明において触媒担体として好適な多孔質の珪酸カルシウムは、例えば、珪酸原料と石灰原料を大気圧下で加温して反応させることにより製造することができる。すなわち、多孔質珪酸カルシウムは、珪酸原料と石灰原料の配合物に水を加えてスラリーを調製するスラリー調製工程と、該スラリーを攪拌・粉砕してメカノケミカル反応を生じさせるメカノケミカル反応工程と、該メカノケミカル反応の生成物を加熱養生する養生工程と、により製造することができる。
【0013】
前記スラリー調製工程における珪酸原料としては、ホワイトカーボン、珪藻土、シリカヒュームなど非晶質珪酸原料があり、石灰原料としては、消石灰(水酸化カルシウム)がある。
【0014】
また、スラリー調製工程において、水の添加量は、次工程のメカノケミカル反応を妨げない限り特に制限されないが、珪酸原料と石灰原料の配合に対して10~200質量倍の水を加えることが好ましい。スラリー調製用の装置は、このようなスラリーを調製できるものであればどのような装置でもよく、例えば、ホモゲナイザーなどの公知の装置が使用できる。スラリー調製の温度は、所望のスラリーを調製できる限り特に制限されず、例えば室温などで行なわれる。
【0015】
前記メカノケミカル反応工程において、メカノケミカル反応とは、固体物質が、粉砕、摩擦、滑り、切削、延伸、衝撃などの手段で加えられた機械的エネルギーの一部を固体内部に保有することにより、その物理化学的性状に変化を起こし、拡散、相転移、化学反応などの諸性質に影響を及ぼすことを利用して反応させることをいい、本発明においては、スラリー調製工程によって得られたスラリーを湿式粉砕機を用いて攪拌・粉砕することにより、このメカノケミカル反応を生じさせることができる。湿式粉砕機としては、衝撃、摩擦の作用で原料を粉砕できるものが好ましく、例えば、ボールミル、ロッドミルなどがある。攪拌・粉砕の操作は、連続式でもバッチ式でもいずれでも良い。
【0016】
このメカノケミカル工程の反応温度や反応時間は、メカノケミカル反応を生じさせて高表面積の多孔質珪酸カルシウムが得られる限り特に制限されないが、例えば、生産性を考慮すれば、反応温度は、室温であることが好ましく、反応時間は、30秒~100分、さらには3~60分の範囲で適宜設定されることが好ましい。反応圧力は、常圧であることが好ましい。
【0017】
前記養生工程において、加熱養生は、メカノケミカル反応工程によって得られた生成物を攪拌しながら加熱することにより行われ、加熱温度は、60℃以上、さらには60~150℃であることが好ましい。また、加熱養生時間は、一般的には1~300分程度であればよいが、特に制限されるものではない。加熱養生手段も特に制限されず、公知の装置を適宜使用することができる。
【0018】
本発明に係るアルデヒド製造用触媒に好適に用いられる多孔質珪酸カルシウムの製造においては、養生工程の次に乾燥工程をさらに備えることが好ましい。すなわち、養生工程において生成された多孔質珪酸カルシウムは、水分を含んだスラリーの状態になっているため、乾燥工程において、これを濾過などの公知の手段で分離した後にスプレードライヤーなどの公知の手段で乾燥することが好ましい。このとき、乾燥温度は、水分を除去することができかつ多孔質珪酸カルシウムの特性を損なわない温度であれば制限されず、例えば、80~200℃であればよい。乾燥雰囲気や乾燥時間も目的を損なわない限り特に制限されない。以上のようにして、本発明に係るアルデヒド製造用触媒に好適に用いられる多孔質珪酸カルシウムを得ることができる。
【0019】
本発明に係るアルデヒド製造用触媒は、上述した珪酸カルシウムに銅及び周期律表第8族金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属が担持されているものである。この周期律表第8族金属としては、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム及び白金などがあるが、珪酸カルシウムに担持される金属としては、銅が特に好ましい。銅及び周期律表第8族金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属の担持量は、触媒担体に対して0.1~15質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明に係るアルデヒド製造用触媒の調製は、イオン交換法によることが好ましい。例えば、前記金属のカチオンを含む水溶液と珪酸カルシウムを接触させることにより、担体表面のカルシウムイオンが前記金属カチオンにイオン交換されたカチオン交換型珪酸カルシウムを得てこれを還元処理することにより、前記金属が高分散状態で担持された本発明のアルデヒド製造用触媒を得ることができる。前記金属のカチオンを含む水溶液と珪酸カルシウムとの接触は、浸漬などの常法によるが、必要に応じて蒸発乾固を行ってもよい。また、カチオン交換型珪酸カルシウムは、還元処理の前に焼成しておくことが好ましく、その場合、焼成温度は250~600℃、焼成時間は1~10時間程度であればよい。
【0021】
触媒調製において、金属カチオンを含む水溶液は、水中で金属カチオンを発生させることができる前記金属の化合物の水溶液であればよく、その金属濃度は所望のイオン交換が可能であれば特に制限されない。このとき、前記金属の化合物としては、硝酸第二銅、塩化第二銅及び硫酸銅などの銅の化合物、硝酸第二鉄及び塩化第二鉄などの鉄の化合物、硝酸コバルト及び塩化コバルトなどのコバルトの化合物、並びに硝酸ニッケル及び塩化ニッケルなどのニッケルの化合物がある。さらに、パラジウム及び白金などの硝酸塩や塩化物も使用される。
【0022】
また、カチオン交換型珪酸カルシウムの還元処理は、カチオン交換型珪酸カルシウムを水素などの還元剤と接触させて該金属カチオンを金属に還元すればよく、例えば、カチオン交換型珪酸カルシウムを反応器に充填して反応開始前に水素と接触させることが好ましい。還元処理の温度や時間は目的を損なわない限り特に制限されず、例えば、150~300℃、1~10時間程度であればよい。
【0023】
本発明に係るアルデヒド製造用触媒は、前記銅及び周期律表第8族金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属の他にランタニド元素の金属が珪酸カルシウムにさらに担持されていることが好ましく、担持されるランタニド元素の金属の種類は、一種であっても、二種以上であっても良い。担持されるランタニド元素としては、サマリウム、ランタン、セリウム、ネオジム、イッテルビウム及びユーロピウムなどがあるが、特にサマリウムが好ましい。ランタニド元素の金属の担持量は、銅及び周期律表第8族金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属1モルに対して0.01~0.3モルであることが好ましく、0.05~0.15モルの範囲であることがさらに好ましい。
【0024】
ランタニド元素の金属を担持するには、銅及び周期律表第8族金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属を担持する場合と同様にイオン交換法によることが好ましい。例えば、上述した触媒の調製において、金属カチオンを含む溶液にランタニド元素の金属カチオンも共存させてその溶液と珪酸カルシウムを接触させればよい。イオン交換後の焼成や還元処理は同様である。
【0025】
以上のようにして得られるアルデヒド製造用触媒により、カルボン酸エステルを水素化して対応するアルデヒドを主生成物として製造することができる。ここで、カルボン酸エステルとしては、脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式のカルボン酸のエステルがあるが、その中では、脂肪族カルボン酸エステル及び脂環式カルボン酸エステルが好ましい。
【0026】
前記脂肪族カルボン酸エステルとしては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ピバリン酸、吉草酸、ヘキサン酸、へプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、デカン酸、ウンデカン酸などの炭素数2~12の脂肪族カルボン酸のアルキルエステルがあり、そのエステル部分のアルキル基は、炭素数1~4のものが好ましい。また、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、デカン二酸などの脂肪族多価カルボン酸のアルキルエステルも挙げることができる(エステル部分のアルキル基は同様である)。
【0027】
脂肪族カルボン酸エステルとして、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、ピバリン酸メチル、吉草酸メチル、ヘキサン酸メチル、へプタン酸メチル、オクタン酸メチル、2-エチルヘキサン酸メチル、デカン酸メチル、ウンデカン酸メチルなどがあり、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、デカン二酸ジメチルなどもある。このように、本発明のアルデヒド製造用触媒は、炭素数2~4の低級脂肪族カルボン酸のエステルの水素化においても有効である。
【0028】
前記脂環式カルボン酸エステルとしては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロアルカンカルボン酸のアルキルエステルがあり、このエステル部分のアルキル基は、炭素数1~4のものが好ましい。脂環式カルボン酸エステルとして、具体的には、シクロペンタンカルボン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸メチル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルなどが挙げられる。なお、脂肪族カルボン酸エステル及び脂環式カルボン酸エステルにおいて、そのカルボン酸部分を構成する炭化水素基は反応に不活性な置換基(アリール基、アルコキシ基など)を有していてもよい。
【0029】
前記芳香族カルボン酸エステルとしては、安息香酸、トルイル酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル安息香酸、ナフトエ酸、フタル酸などの芳香環にカルボキシル基が結合したカルボン酸のアルキルエステルがあり、このエステル部分のアルキル基は、炭素数1~4のものが好ましい。芳香族カルボン酸エステルとして、具体的には、安息香酸メチル、トルイル酸メチル、シクロヘキサン安息香酸メチル、フェニル安息香酸メチル、ナフトエ酸メチル、フタル酸ジメチルなどがある。
【0030】
前記複素環式カルボン酸エステルとしては、ピロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピラン環、ピリジン環、キノリン環、ピリミジン環などの複素環にカルボキシル基が結合したカルボン酸のアルキルエステルがあり、このエステル部分のアルキル基は、炭素数1~4のものが好ましい。複素環式カルボン酸エステルとして、具体的には、これら複素環式カルボン酸エステルのメチルエステルがそれぞれ挙げられる。
【0031】
カルボン酸エステルの水素化(アルデヒドの製造)は、前記触媒の存在下、カルボン酸エステルを水素と気相又は液相で接触させることにより行われる。このとき、水素は単独或いは窒素などの不活性ガスで希釈されて使用され、反応温度は、気相反応であれば、250~500℃、さらには300~400℃で、液相反応であれば、100~300℃程度であることが好ましい。反応圧力は、常圧、加圧、減圧のいずれでもよく、反応形式などにより適宜選択される。例えば、気相反応であれば、反応圧力(全圧)は0.5~2atm程度、水素分圧は全圧の1/20以上であればよい。
【0032】
また、気相反応の場合、ガス空間速度(GHSV)は好ましくは500~8000hr-1であり、液相反応の場合、触媒使用量はカルボン酸エステルに対して銅及び周期律表第8族金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属換算で好ましくは0.001~0.2倍モルである。触媒の形状や粒径などは反応形式に適合したものであれば特に制限されず、反応装置も気相又は液相で反応させることができるものであればよく、例えば、通常の固定床流通式反応器や懸濁床回分式反応器が挙げられる。
【0033】
なお、水素化は無溶媒下で可能であるが、必要に応じてカルボン酸エステルと溶媒を混合して気相又は液相で反応器に供給又は仕込むことにより溶媒存在下で行ってもよい。溶媒はそれ自身が水素化されるものでなければ特に制約されることはなく、例えば、アルコール類、エーテル類、炭化水素類(トルエン、キシレンなど)が使用される。溶媒の使用量は生産性や経済性に影響を与えない範囲であれば特に制限されない。反応終了後、アルデヒドは蒸留により分離精製できる。また、本発明に係るアルデヒド製造用触媒は、それを製造した反応槽から単離精製する必要はなく、その反応槽にカルボン酸エステルを加えて、その水素化処理を行なっても良い。
【実施例】
【0034】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明に係るアルデヒド製造用触媒及びアルデヒドの製造方法を具体的に説明する。なお、反応装置は、反応管の一端(ガス入口)が流量制御バルブを介して水素配管に接続され、他端(ガス出口)が反応ガス分析用のガスクロマトグラフに接続されていて、反応管のガス入口と流量制御バルブとの間には切替えコック付きのコールドトラップが接続され、これにカルボン酸エステルを入れて水素ガスを流すことにより該エステルが反応管へ導入されるようにしたガラス製U字反応管を電気炉に装着して使用した。
【0035】
実施例1
〔多孔質珪酸カルシウムの製造〕
先ず、実施例に係るアルデヒド製造用触媒に用いられる多孔質珪酸カルシウムを既知の方法により製造した。すなわち、珪酸原料としてホワイトカーボン(ゼオシール77ローディア(株)製)、及び石灰原料として生石灰(ロータリーキルン焼成生石灰JIS特号:足立石灰工業(株)製)を湿式で消化した消石灰を用いた。この珪酸材料と石灰原料を、CaO/SiOモル比が0.4となるように配合した後、珪酸原料と石灰原料を配合したものに重量比で25倍の水を加えて懸濁・混合させて攪拌しながらスラリーを得た(スラリー生成工程)。次に、湿式の連続式ボールミル(DYNO-MILL:KDLパイロット製、(φ1.0mmガラスビーズ使用:シンマルエンタープライゼス(株)製))を用いて、前記のスラリー生成工程で生成したスラリーに対して撹拌及び粉砕を同時に行い、メカノケミカル反応を生じさせた(メカノケミカル反応工程)。この時の連続式ボールミルでのスラリー滞留時間(メカノケミカル反応時間)は3分であった。メカノケミカル反応後のスラリーを90℃に加熱養生し、30分間温度を維持した(加熱養生工程)。そして、このスラリーをろ過した後、得られた固形物を120℃で乾燥した(乾燥工程)。乾燥後、生成物を粗粉砕して、多孔質珪酸カルシウム粉末(BET比表面積260m/g、吸油量300ml/100g)を得た。
【0036】
〔触媒調製〕
純水200mlに硝酸銅(II)三水和物7.7gを溶解し、この溶液に製造した多孔質珪酸カルシウム20.0gを加えて、室温下でゆるやかに1時間攪拌した。引き続き、ゆるやかに攪拌しながら加熱して溶液を蒸発乾固させ、得られた乾固物(カチオン交換型多孔質珪酸カルシウム)を空気雰囲気下に400℃で2時間焼成した。
【0037】
次いで、内径6mmのガラス製U字反応管に前記焼成物0.3ml(0.03g)を充填し、水素を1NL/hrの流量で流しながら昇温して250℃で2時間還元処理を行なうことによって、実施例1に係るアルデヒド製造用触媒(10%Cu/CaSiO)を得た。この実施例1に係るアルデヒド製造用触媒の銅担持量は、担体である多孔質珪酸カルシウムに対して10質量%であった。
【0038】
〔酢酸メチルの水素化〕
還元処理終了後、前記コールドトラップに酢酸メチルを入れてトラップを氷冷し、内温が0℃になったところで水素ガスがトラップ内を流れるようにコックを切り替えて反応管に酢酸メチルを含んだ水素ガスを流通させた。このとき、水素ガス流量は、20Nml/hr(GHSVは4000hr-1)であり、ガス中の酢酸メチル濃度は、0.92容量%であった。この状態で触媒層の温度(反応温度)を350℃に設定して反応を行なった結果、酢酸メチル転化率は、54%であり、アセトアルデヒド選択率は、53%であった。
【0039】
実施例2
〔触媒調製〕
純水200mlに硝酸銅の他に硝酸サマリウム六水和物1.6gをさらに溶解した以外は、実施例1と同様にして実施例2に係るアルデヒド製造用触媒(10%Cu-Sm/CaSiO)を調整した。この実施例2に係るアルデヒド製造用触媒の銅担持量は、担体である多孔質珪酸カルシウムに対して10質量%、サマリウム担持量は、銅9モルに対して1モルであった。
【0040】
〔酢酸メチルの水素化〕
実施例2に係るアルデヒド製造用触媒を用いた以外は、実施例1と同様にして水素化を行った。その結果、酢酸メチル転化率は、65%であり、アセトアルデヒド選択率は、73%であった。
【0041】
比較例1
多孔質珪酸カルシウムをγ-アルミナ(Al-C;日本アエロジル製)20.0gに代えた以外は、実施例1と同様にして比較例1に係るアルデヒド製造用触媒(10%Cu/Al)を調整した。比較例1に係るアルデヒド製造用触媒の銅担持量は、担体であるγ-アルミナに対して10質量%であった。
【0042】
〔酢酸メチルの水素化〕
比較例1に係るアルデヒド製造用触媒を用いた以外は、実施例1と同様にして水素化を行った。その結果、酢酸メチル転化率は、52%であり、アセトアルデヒド選択率は、15%であった。
【0043】
比較例2
多孔質珪酸カルシウムをシリカ(Aerosil-200;日本アエロジル製)20.0gに代えた以外は、実施例1と同様にして比較例2に係るアルデヒド製造用触媒(10%Cu/SiO)を調整した。この比較例2に係るアルデヒド製造用触媒の銅担持量は、担体であるシリカに対して10質量%であった。
【0044】
〔酢酸メチルの水素化〕
比較例2に係るアルデヒド製造用触媒を用いた以外は、実施例1と同様にして水素化を行った。その結果、酢酸メチル転化率は、7%であり、アセトアルデヒド選択率は、41%であった。
【0045】
比較例3
多孔質珪酸カルシウムをマグネシア(高純度マグネシウム、スターマグHP-30;神島化学製)20.0gに代えた以外は、実施例1と同様にして比較例3に係るアルデヒド製造用触媒(10%Cu/MgO)を調整した。比較例3に係るアルデヒド製造用触媒の銅担持量は、担体であるマグネシアに対して10質量%であった。
【0046】
〔酢酸メチルの水素化〕
比較例3に係るアルデヒド製造用触媒を用いた以外は、実施例1と同様にして水素化を行った。その結果、酢酸メチル転化率は、52%であり、アセトアルデヒド選択率は、15%であった。結果をまとめて表1に示す。
【0047】
【表1】
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【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、容易に入手可能な一般的な原料を用いてアルデヒドを選択率よく製造できるアルデヒド製造用触媒を簡便に調製できる。また、本発明により、カルボン酸エステルから効率よくアルデヒドを製造することができる。