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明細書 :柔軟な光ファイバーを関節内に挿入可能な関節内軟骨評価プローブ及び関節内軟骨評価装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4691657号 (P4691657)
公開番号 特開2007-029520 (P2007-029520A)
登録日 平成23年3月4日(2011.3.4)
発行日 平成23年6月1日(2011.6.1)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
発明の名称または考案の名称 柔軟な光ファイバーを関節内に挿入可能な関節内軟骨評価プローブ及び関節内軟骨評価装置
国際特許分類 A61B   1/00        (2006.01)
FI A61B 1/00 300Z
請求項の数または発明の数 9
全頁数 15
出願番号 特願2005-218832 (P2005-218832)
出願日 平成17年7月28日(2005.7.28)
審査請求日 平成20年4月2日(2008.4.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】森 浩二
【氏名】安田 利貴
審査官 【審査官】井上 香緒梨
参考文献・文献 特開2004-24855(JP,A)
実開昭63-169101(JP,U)
調査した分野 A61B 1/00
A61B 10/00
A61B 17/56
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも1本の送光伝送部材及び少なくとも1本の受光伝送部材を有する関節軟骨に接触させる入射光穴、検出光穴を具備した接触部と、把持部と、前記把持部先端から延び前記送光伝送部材及び受光伝送部材を案内する案内部材と、前記接触部と前記案内部材を接続する可撓性部材と、前記接触部及び前記可撓性部材を覆い、前記接触部を覆う位置と露出させる位置との間を前記案内部材に沿って摺動可能な挿入シースとから構成されることを特徴とする関節内軟骨評価プローブ。
【請求項2】
前記可撓性部材を前記送光伝送部材及び受光伝送部材に沿って設けたことを特徴とする請求項1に記載の関節内軟骨評価プローブ。
【請求項3】
前記可撓性部材がバネ部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の関節内軟骨評価プローブ。
【請求項4】
前記可撓性部材が弾性チューブであり、その内部に前記送光伝送部材及び受光伝送部材を配したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の関節内軟骨評価プローブ。
【請求項5】
前記接触部、前記送光伝送部材及び受光伝送部材を含む先端部領域が湾曲可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の関節内軟骨評価プローブ。
【請求項6】
少なくとも前記接触部、前記挿入シース及び該挿入シースに覆われた部位の前記送光伝送部材及び受光伝送部材、前記可撓性部材を一体的に取り替え可能に構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の関節内軟骨評価プローブ。
【請求項7】
参照光用の送光伝送部材及び受光伝送部材を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の関節内軟骨評価プローブ。
【請求項8】
前記送光伝送部材及び受光伝送部材が光ファイバーであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の関節内軟骨評価プローブ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の関節内軟骨評価プローブ、光源、受光部、演算部、表示部から構成されることを特徴とする関節内軟骨評価装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、関節軟骨に含まれるコラーゲン線維、プロテオグリカンを測定するための関節内軟骨評価プローブ及び該関節内光プローブを使用した関節内軟骨評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、関節軟骨の診断には、
(1)X線やMRIより得られた画像から関節裂隙などを診る形態学的診断
(2)医師が関節鏡を用いて関節軟骨の形態(色・表面状態など)を直接診る肉眼的診断
(3)関節鏡視下で医師が関節軟骨にプローブを押し当て、その押し込み深さから関節軟骨の軟化具合(剛性)を検査するプロービングという定性的な評価・診断
が主に行われている。
【0003】
そして、従来、関節内で、関節軟骨を評価するプローブについては超音波を用いる方法が、特許文献1、特許文献2に開示されている。これは関節内に超音波送受信機を挿入する方法である。超音波を関節軟骨に垂直に照射し、関節軟骨表面から得られる反射エコーをウェーブレット解析して、関節軟骨の定量評価を行うものである。この方法には2つの問題点がある。一つは大きさの問題である。超音波は超音波探触子とよばれる素子を振動させて発生させる。そして受信は、超音波を受信したその素子が振動し、その振動を電気信号に変えることによって行われる。つまり超音波探触子は自身で振動して超音波を発生させて、その反射エコーによって自分が振動することによって受信する。そのために受信時に自身の振動も受信している。これによって図2に示すように反射エコーは主に関節軟骨40および軟骨下骨41から得られるが、不感帯と呼ばれる領域が存在し、超音波探触子と関節軟骨40表面の間に一定の間隔を設ける必要がある。即ち、超音波探触子の近傍約1.0mm程度の領域は測定不能である。
【0004】
また特許文献1による測定法は非常に角度依存性が強いという問題がある。超音波が垂直に照射されている状態からの角度のずれと反射エコーの強さとの関係を図4に示す。超音波を測定対象物の関節軟骨40表面に対して垂直に照射すると、最も強い反射エコーが帰ってくる性質があり、超音波が垂直に照射されている状態からの角度がずれると反射エコーの強さが次第に減少する。このため、図3に示すように、超音波探触子31から関節軟骨40表面に超音波を照射する際に、最も強く帰ってくる角度を探索し、測定部位に対して超音波が垂直に照射できる角度を決定する必要があり、1度程度の超音波照射角度のずれで測定が不能となり、臨床での使いにくさと共に、高度の熟練技術を必要とする。
そのために特許文献2に関節腔内で超音波の照射角度を変更できる関節内軟骨評価プローブが提案された。
【0005】
しかしながら、そのような角度調節機構を設けたために小型化に限界が生じており、適応可能な関節は、人体で最大の関節といわれる膝関節に事実上限定されている。
【0006】
さらに特許文献1、特許文献2による関節軟骨評価法は、関節軟骨表面からの反射エコーを利用しているために、情報を取得できる領域は超音波の1波長分である約0.1mmの領域の情報を取得しているに過ぎない。
【0007】
特許文献1、特許文献2による関節軟骨評価法の角度依存性の強さを解決するために、特許文献3で、光とプリズムを利用した関節軟骨評価法が発明された。この方法は先端部分にプリズムを備えており、そのプリズムを関節軟骨に接触させる。そのプリズムに光を導入してやり、プリズム-関節軟骨表面での光の反射を利用して、反射光を得る。この反射光をスペクトル解析することにより関節軟骨の内部成分を調べ、関節軟骨の評価を行うものである。この方法は関節軟骨にプリズムを接触させれば測定できるために、特許文献1、特許文献2で問題となった測定時の角度依存性の問題は克服した。
【0008】
即ち、図5に示すように、プリズム32を関節軟骨40に押し当てて、そこに光ファイバー20によって光をプリズム32に導入する。プリズム32-関節軟骨40の表面での反射光を光ファイバー20で関節外に導出してやり、その光をスペクトル解析する。プリズム32-関節軟骨40の表面で光が反射する際に、関節軟骨40の性状によって吸収される光のスペクトルが変わるために、その吸収される波長を調べる。しかしながらこの方法では、プリズム32からわずかにもれ出る光(近接場光33)が関節軟骨40に吸収されて上述のスペクトルの変化が起こる。近接場光33が関節軟骨40にもれ出る深さは数10nm程度である。これは超音波による評価法が、表面から1波長分(約0.1mm)の情報を反映していることに比べると非常に小さい領域のみで評価していることになる。したがってこの方法では関節軟骨40のごく表層部分の性状しか測定できず、測定信頼性が低いという欠点があった。さらに関節軟骨の厚さを計測できないという問題がある。
【0009】
またプリズム32部分に、別のたんぱく質などが付着すると、その成分によっても光の吸収が変化し、得られるスペクトルが変わり、測定結果が変わってしまう可能性がある。関節腔内への挿入時に皮膚を通過させるが、皮下にある脂肪などの成分が付着するおそれがあり、挿入時の関節内関節評価プローブの取り扱いに注意が必要である。

【特許文献1】特開2002-345821号公報
【特許文献2】特願2004-167410号公報
【特許文献3】特願2004-301066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように、従来の関節内軟骨評価プローブには以下のような問題点があった。
(ア)超音波を利用した関節内軟骨評価プローブは、超音波を送受信する超音波探触子近傍に発生する不感帯の存在により、関節軟骨より2mm程度距離を開ける必要があった。そのために狭い関節腔内でその2mmというスペースを確保しなければならず、膝関節のような大きな関節にしか使用できなかった。
【0011】
正確な測定を行うためには、超音波を±1度以下の精度で、関節軟骨に垂直に照射しなければならず、超音波の正確な照射が困難であった。
【0012】
即ち、(1)不感帯の存在によるプローブ小型化の物理的限界、(2)角度依存性の強さ(それの克服のための機構付与によるプローブの大型化)の問題点が存在する。
【0013】
(イ)光を用いた関節内軟骨評価プローブは先端部にプリズムを取り付け、それによって光を屈曲させなければならず、プリズムのぶんプローブが大きくなり、狭い関節腔内での取り回しに問題があった。またプリズムを露出させ状態で皮膚から挿入するために、挿入時にプリズムに脂肪などの汚れが付着し、測定精度の確保が困難であった。
【0014】
プリズムからの近接場光により関節軟骨の評価を行うが、近接場光は関節軟骨表面から数10nmしか進入せず、関節軟骨のごく近傍のみを評価しているに過ぎない。
そのため関節軟骨の厚さを測定できないという問題があった。
【0015】
即ち、(1)近接場光による評価のために関節軟骨のごく表面の情報しか得られないことによる測定信頼性の低さ、(2)プリズムに付着したわずかの汚れで、測定結果が変化する、という問題点が存在する。
【0016】
これらに対して、本発明では以下のようにして課題を解決した。
【0017】
(ア)に対して、関節内軟骨評価プローブ先端部分まで光を導入し、その光を関節軟骨に直接導入する。関節軟骨内部を伝播した光を先端部で受光する。このプローブを用いれば先端部分を関節軟骨表面に直接押し付ければよく、無駄なスペースを省略できる。そのために肘、足、股関節など隙間の小さい関節の診断に用いることができる。また押し付ければよいので、角度依存性が小さく、測定時の測定精度が高く、容易に測定が可能になる。
【0018】
(イ)については、プリズムが存在しないために先端部の小型化が可能である。また近接場光を利用せずに、直接関節軟骨内に光を照射するので、1から2mmある関節軟骨に対して充分な深部領域からの散乱光をえるために、深さ方向に関して関節軟骨全域の正確な情報を取得できる。
【0019】
関節内軟骨評価プローブとして機能するための、必須条件は以下の2点である。
(1)関節腔内への挿入時に、皮膚を通過する際の挿入抵抗に負けない強度
(2)関節腔内で移動できるだけの小さい体積
本発明は、超音波による評価法で問題となる不感帯の存在によるプローブ小型化の限界と角度依存性、そして光プリズム法で問題となった極表層部のみでの評価による測定精度の限界を克服することを目的としている。さらに関節腔内で小さい体積でありながら、挿入時の挿入抵抗に負けない硬構造な関節内軟骨評価プローブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に係る発明は、少なくとも1本の送光伝送部材及び少なくとも1本の受光伝送部材を有する関節軟骨に接触させる入射光穴、検出光穴を具備した接触部と、把持部と、前記把持部先端から延び前記送光伝送部材及び受光伝送部材を案内する案内部材と、前記接触部と前記案内部材を接続する可撓性部材と、前記接触部及び前記可撓性部材を覆い、前記接触部を覆う位置と露出させる位置との間を前記案内部材に沿って摺動可能な挿入シースとから構成されることを特徴とする関節内軟骨評価プローブである。
【0021】
また、請求項2に係る発明は、前記可撓性部材を前記送光伝送部材及び受光伝送部材に沿って設けたことを特徴とする請求項1に記載の関節内軟骨評価プローブである。
【0022】
請求項3に係る発明は、前記可撓性部材がバネ部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の関節内軟骨評価プローブである。
【0023】
請求項4に係る発明は、前記可撓性部材が弾性チューブであり、その内部に前記送光伝送部材及び受光伝送部材を配したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の関節内軟骨評価プローブである。
【0024】
請求項5に係る発明は、前記接触部、前記送光伝送部材及び受光伝送部材を含む先端部領域が湾曲可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の関節内軟骨評価プローブである。
【0025】
請求項6に係る発明は、少なくとも前記接触部、前記挿入シース及び該挿入シースに覆われた部位の前記送光伝送部材及び受光伝送部材、前記可撓性部材を一体的に取り替え自在に構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の関節内軟骨評価プローブである。
【0026】
請求項7に係る発明は、参照光用の送光伝送部材及び受光伝送部材を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の関節内軟骨評価プローブである。
【0027】
請求項8に係る発明は、前記送光伝送部材及び受光伝送部材が光ファイバーであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の関節内軟骨評価プローブ。
【0028】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の関節内軟骨評価プローブと、光源、受光部、演算部、表示部から構成されることを特徴とする関節内軟骨評価装置である。
【発明の効果】
【0029】
本発明による関節内軟骨評価プローブによって、得られる効果は以下のとおりである。
【0030】
関節内軟骨評価プローブにおける関節腔内への挿入部を光ファイバーからなり、細径で比較的柔軟な構造の光送受信部を硬い材料からなる挿入シースで覆うことにより、挿入時には挿入抵抗に負けない硬構造でありながら、関節腔内に挿入されたら、挿入シースを把持部側に引き寄せることにより光送受信部を露出する。光送受信部は細径であるために、関節腔内で自由に移動できる。
【0031】
光ファイバーによって先端部に光を導入し、関節軟骨内に直接的に光を入射する。関節軟骨深部で散乱した光を受光する。そのために関節軟骨表面領域だけではなく、深部領域に光を到達させることができるので、関節軟骨深部の情報取得が可能であり、測定信頼性が従来法に比べて大幅に向上する。
【0032】
光ファイバーによって関節軟骨内に光を導入し、その内部からの散乱光を取得するので、超音波による評価法で問題となった不感帯の問題が存在せず、プローブの小型化に関して物理的な制約をなくすことができる。これによりプローブの小型化が可能になり、肘、手首、足関節などの小さな関節にも適応できるプローブを実現できる。
【0033】
関節軟骨内に光を導入し、その内部からの散乱光を取得するために、情報取得に関して角度依存性がない。そのためにプローブの構成を簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
関節周辺の組織は図1のような構成になっている。関節表面から関節軟骨40、軟骨下骨41、海面骨42というように層状に配置されている。
【0035】
関節軟骨40には血管、リンパ管、神経が存在しないため、力学的刺激ならびに液性刺激によって基質成分の代謝調整を行っている。成熟した軟骨細胞は絶えずコラーゲン線維43とプロテオグリカンの合成と分解を行い、それらを更新している。
【0036】
コラーゲン線維43は関節軟骨40内で特徴的な配勾を示す。関節軟骨40表層ではコラーゲン線維43が密集し、軟骨表面に対して平行に走行している。中層領域では不規則な配列を組んでおり、軟骨細胞の小窩を取り囲むように配列している。深層領域では軟骨表面に対して垂直に走行している。石灰化領域では軟骨を骨に継ぎ止める役割を果たしている。
【0037】
このコラーゲン線維43は網目構造を有しており、網目の中にプロテオグリカンを拘束することで一定の浸透圧が維持され、コラーゲン線維43のもつ引張特性を活かすことができる。
【0038】
関節疾患にかかるとまず関節軟骨40が損傷する。表面部から損傷が進行し、最終的には関節軟骨40が消失してしまう。関節軟骨40は、荷重を支えるクッションの役割や、関節が滑らかに可動するための機能を有しているために、関節軟骨40が損傷すると、関節痛の発生とともに運動が困難になり、日常生活に大きな支障が発生する。このような理由で関節疾患の早期診断としての関節軟骨40の評価は非常に重要である。
【0039】
このような評価は、関節鏡と呼ばれる道具を利用して行われる。関節にカメラが取り付けられた金属製の筒を関節内に挿入し、それによって得られるカメラ画像を元に、関節内の様子を調べる。関節鏡で関節内の様子を見ながら、関節内軟骨評価プローブ1を関節腔内に挿入することによって関節軟骨40の評価ができる。しかしながら、関節腔内は非常にスペースが限られるために、診断を行う関節内軟骨評価プローブ1には小型であることが必須条件である。またカメラ画像を見ながら関節内軟骨評価プローブ1を操作するために操作性のよさ、あるいは測定時の関節内軟骨評価プローブ1の操作が容易であることが重要である。
【0040】
本発明は、関節内軟骨評価プローブに求められる必須条件を満たしつつ、これら従来法の問題点を克服するために図6に示す関節内軟骨評価プローブを提供するものである。
【実施例】
【0041】
本発明の関節内軟骨評価装置を図6(a)に示す。図6(a)において関節内軟骨評価プローブ1、光源2、受光部3、演算部4、表示部5からなり、前記関節内軟骨評価プローブ1は把持部11、硬円筒部12、光送受信部13、挿入シース14からなる。図6(b)において前記送信・受信用光ファイバー20は、送信・受信用光ファイバー20、接触部21、バネ部22からなる。前記接触部21は、光ファイバー20からの光の角度を適切な角度に屈折させる鏡23もしくはプリズムが備えられており、入射光穴25に導かれ、関節軟骨40に光を導入する。関節軟骨40からの検出光27は、検出光穴26を通じて接触部21に導かれる。その際に送信用光ファイバー20に適切な角度で光を導くために、接触部21内に設けられた鏡23またはプリズムで検出光27を屈曲させてもよい。
【0042】
硬円筒部12は把持部11の先端部から延び、その内部に送信・受信用光ファイバー20を案内し、該送信・受信用光ファイバー20は光送受信部13に導かれる。また、硬円筒部12は挿入シース14の摺動ガイド部材としても機能している。
【0043】
関節内軟骨評価プローブ1を関節腔内に挿入する際に、図7に示すように挿入シース14は把持部11から離れた位置に固定して、光送受信部13を完全に覆う。この状態で関節腔内に挿入する(図8参照)。この際に関節内軟骨評価プローブ1には挿入抵抗が加わるが、この挿入抵抗を挿入シース14と硬円筒部12で負担し、光送受信部13に負荷が加わらないようにする。
【0044】
関節腔内に光送受信部13が完全に挿入されると、挿入シース14を把持部11側に引き寄せる。この操作によって図9に示すように光送受信部13が関節腔内に露出する。露出後、測定部位の先端部を押し付ける。この際に図10のようにバネ部22がたわむことによって発生する反力によって、接触部を関節軟骨40に圧着し、確実に関節軟骨40部に光を入射できるようにする。
【0045】
本発明の関節内軟骨評価プローブ1では、接触部21の入射光穴25と検出光穴26を関節軟骨40に密着させて、入射光穴25から光を関節軟骨40内に入射し、そして内部からの散乱光を検出光穴26を通じて受光しなければならない。光送受信部13にバネ部22が存在していることによって、関節内軟骨評価プローブ1を関節軟骨40に押し付けると、バネのたわみによって生じる反力によって接触部21の入射光穴25と検出光穴26を関節軟骨40に密着させることができる。
【0046】
また、バネの弾性で関節軟骨40に押し付けることで、光送受信部13が曲がり、どのような角度でも対応することができる。
【0047】
またバネ部のバネ定数を適切に設定することによって、関節軟骨40への過度の接触圧の発生を抑制できる。関節軟骨40に局所的な力が加わると関節軟骨40が損傷する可能性があるが、それを防ぐために接触部の入射光穴25と検出光穴26が存在する面は、接触圧力が分散するように平面であることが望ましい。
【0048】
光ファイバー20は一般に極度に屈曲させると破損の危険性がある。しかし本発明では光送受信部13にバネ部22を設けることによって、屈曲させるにつれてバネの反力が強まるので、光ファイバー20が極度に曲げられるのをバネ部22が防止する。光ファイバー20の破損防止の役割をバネ部22が果たしている。
【0049】
光送受信部13において光ファイバー20とバネ部22があるが、バネ部22を弾性チューブ28に置き換えても良い。バネ部22を弾性チューブ28に置き換え、その内部に図11(b)に示す光ファイバー20を配置すると光ファイバー20が関節腔内に露出しないので、光ファイバー20が破損しても関節腔内に破片が飛び散らず、安全性を向上できる。弾性チューブ28なので接触部21を関節軟骨40に押し当てると弾性チューブ28がたわみ、その反力によって接触部21を関節軟骨40に圧着する。
【0050】
バネ部22が適度にたわむために、光送受信部13は光ファイバー20が破損しない程度の屈曲を有することができる。これによって肩関節・股関節などの球状の関節でも、光を関節軟骨40に入射・検出を行う接触部21を関節内軟骨評価プローブ1の挿入部から、離れた位置に移動させることができ、図18のように挿入部から離れた位置でも関節軟骨40の評価が可能になる。このような狭い関節腔内を有する関節の関節軟骨評価を行う場合には、図6(b)に示すようにプローブ1の長軸方向と45度の角度をなすような方向で光を送受光するのではなく、90度の方向で光を送受光したほうがよい。
【0051】
また、関節軟骨40への光の導入を能動的にするために、図12に示すように接触部21にワイヤー29等の棒状の部材を取り付け(図12(a))、それを把持部11側に引き寄せたり、遠ざけたりすることによって接触部11と硬円筒部12の角度を変化させることも測定を効果的に進めるために有効である(図12(b))。
【0052】
また、内視鏡等で使用されている体腔内への挿入部材における湾曲部を湾曲させる公知の湾曲構造を用いることで、接触部21と硬円筒部12の角度を変化させることも有用である。
【0053】
本発明による関節内関節評価プローブ1は以下のようにして関節軟骨40の性状を評価する。光ファイバー20などによって光を関節軟骨40内に導入する。関節軟骨40は半透明の乳白色状の組織なので導入された光は図13に示すように深部にまで到達する。その過程で関節軟骨40中に存在するコラーゲン線維43、プロテオグリカン等によって入射光24が散乱される。この散乱光は受光部分により検知される。この散乱光は関節軟骨40中のコラーゲン線維量などによって変わるために関節軟骨40の性状を評価することができる。
【0054】
関節軟骨40に光を導入し、関節軟骨40内部からの散乱光を受光すればよいので、原理上関節軟骨40への光導入の角度には依存しない。そのため接触部が関節軟骨40に確実に密着すれば測定することが可能であり、超音波による関節軟骨評価で問題となった角度依存性を克服することができる。
【0055】
関節軟骨40内に導入された光は、関節軟骨40内部まで導入されて散乱するために、得られる散乱光は比較的関節軟骨40の深部の状態を反映している。したがって光とプリズムを使用した特許文献3で問題視された表面から数10ナノメートルの領域しか光が伝播しないという問題を克服することができる。
【0056】
散乱光は検出光穴26を通じて光ファイバー20で光検出器に導かれ、光の強度は電圧またはフォトンに変換される。これを演算部4に送ることにより、散乱光の情報を、あらかじめ調べておいた関節軟骨40の性状との関連にもとづき、関節軟骨40の性状に置き換える。その結果を表示部5に表示する。
【0057】
関節軟骨40中の主な成分は、コラーゲン線維43とプロテオグリカンである。これらの分量を調べることによって関節軟骨40の損傷度を知ることができる。一般に関節軟骨40が損傷を受けると関節軟骨40中のコラーゲン線維量は減少することが知られている。図14に示すのは関節軟骨40に光を入射した場合の吸光度である。波数が1595~1710cm-1付近の領域は、関節軟骨40のコラーゲン線維量に比例して、スペクトル曲線で囲まれた面積が増加することが知られている。また890~1185cm-1の領域は関節軟骨40中のプロテオグリカン量に比例して、スペクトル曲線で囲まれる面積が増加することが知られている。
【0058】
つまりこの2つの領域の波長(波数の逆数で求められる)の領域の光を関節軟骨40に入射し、それの散乱光の強度を求めれば関節軟骨40中のコラーゲン線維43やプロテオグリカンの量を測定することができる。図15にコラーゲンゲル(コラーゲン線維43を寒天中に溶かしたもの)を用いてコラーゲン線維濃度と波数1595~1710cm-1領域におけるスペクトル曲線で囲まれた面積(コラーゲン線維の吸光度)との関係を示す。濃度に比例してコラーゲン線維43の吸光度が増加していることがわかる。このようにコラーゲン線維43の吸光度を調べれば関節軟骨40中のコラーゲン線維量が推定でき、その損傷度を調べることができる。
【0059】
コラーゲン線維43やプロテオグリカンは、図14にしめす領域とは異なる領域でも特徴的なスペクトルを有しているので、図14以外の光の波長領域でもコラーゲン線維43やプロテオグリカンの特定が可能である。
【0060】
関節軟骨40にはコラーゲン線維43やプロテオグリカンが存在するが、これらはある程度の規則性を持って分布している。この分布の状況は光の散乱係数や吸収係数に影響をおよぼしている。関節軟骨40が損傷するとコラーゲン線維43やプロテオグリカンの分布状況が変化してくることが知られている。したがって光の散乱係数や吸収係数を測定すれば、関節軟骨40の損傷状況を評価することが可能である。
【0061】
このようにコラーゲン線維量やプロテオグリカンの吸光度や関節軟骨40中の散乱係数や吸収係数を受光素子にて計測される光の強度から測定し、それを演算部4で、吸光度や散乱係数や吸収係数から関節軟骨40の損傷度に変換し、その結果を表示部5で表示する。
【0062】
強度変調光と呼ばれる光を生体内に入射すると、光が通過した距離に応じて位相が変化した光が検出される。入射する強度変調光の周波数をF、入射する強度変調光と検出光の位相差をφ、組織中の光速をCとすると、光が伝播する平均光路Lは次式で表される。
L=C×φ/(2×3.14156×F)
光を関節軟骨40に入射する位置と、光を検出する位置の間隔が大きくなると関節軟骨40中を伝播する距離が長くなり、位相差φが大きくなることが知られている。また関節軟骨40の厚さとともに位相差の入射-検出間隔に対する変化率が大きくなることが知られている。したがって図16に示すように、光を入射する位置に対して、間隔を変えた2箇所に検出光穴26を設ける。この2つの検出光穴26で検出された光の位相差φの大きさ、および2点間の距離(L2-L1)と2点での位相差φの変化(φ2-φ1)から厚さを推定することが可能である。
【0063】
したがって本発明の関節内軟骨評価プローブ1では、1組の送受信光ファイバー20に限られず、送受光用の光ファイバー20はそれぞれ少なくとも1本の光ファイバー20を用いれば、より高精度な評価が可能になる。また送受光用光ファイバー20はそれぞれ同数である必要はない。1本の送光用光ファイバー20で光を関節軟骨40に導入し、それを異なる位置で複数本の受光用光ファイバー20で受光してもよい。逆に、異なる位置から複数本の送光用光ファイバー20で光を関節軟骨40に導入し、それを1本の受光用光ファイバー20で受光してもよい。
【0064】
光ファイバー20は図12のように曲げられると、光ファイバー20から光が漏れ出ることがある。そこでそれを補正するために、関節軟骨測定用とは別に、屈曲による光損失を測定する光ファイバー20を別途用意しておく。図17に示すようにそのような参照光用の送受光用光ファイバー20を別途用意し、参照光送光用光ファイバー20からの光は、直接ミラーやプリズムなどの反射物によって参照光受光用光ファイバー20に返す。こうすることによって、光ファイバー20が屈曲によってどれくらい光損失があるかを測定することができる。この測定値に基づいて関節軟骨40に入射する光の光損失を補正することができる。
【0065】
また、関節内軟骨評価プローブ1の把持部11から先の部分、即ち、少なくとも挿入シース14、光送受信部13等、関節腔内に挿入される部位を取り替え可能に設けることにより、人体の関節腔内に挿入される先端部分がディスポーザブル化され、より衛生的、効率的に関節内軟骨評価プローブ1の利用ができる。
【0066】
更に、光送受信部13を自在に湾曲可能とした場合には、医療用ロボットによる検査、地域較差のない遠隔医療にも資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】関節近傍組織の概略図である。
【図2】超音波で関節軟骨を測定した際の反射エコーである。
【図3】超音波を用いた関節内軟骨評価プローブの概略図である。
【図4】超音波の関節軟骨への照射角度と反射エコー強度図である。
【図5】光とプリズムを用いた関節内軟骨評価プローブの概略図である。
【図6】(a)は関節内軟骨評価装置、(b)は光送受診部の拡大図である。
【図7】挿入前の関節内軟骨評価プローブの概略図である。
【図8】関節腔内への挿入時の関節内軟骨評価プローブの概略図である。
【図9】関節腔内に挿入後にシースを把持部に引き寄せた関節内軟骨評価プローブの概略図である。
【図10】関節腔内で関節内軟骨評価プローブによる測定を行っている際の概略図である。
【図11】関節内軟骨評価プローブの望ましい実施例を示す概略図であって、(a)は光送受診部の拡大図、(b)は(a)のA-Aから見た切断断面拡大図である。
【図12】関節内軟骨評価プローブの望ましい実施例であって、(a)は接触部を能動的に角度を変更させる前の状態図、(b)は接触部を能動的に角度変更させたときの概要図である。
【図13】測定時の関節軟骨内部での光の伝播を示す概略図である。
【図14】関節軟骨から得られた光の吸収スペクトルを表す図である。
【図15】コラーゲン線維量と測定されるスペクトルの強度を表す図である。
【図16】関節軟骨中を伝播する光の位相が変わる様子を示した図である。
【図17】光ファイバーの屈曲による光損失を測定するための光ファイバーの配置を示した概略図である。
【図18】肩関節で関節内軟骨評価プローブによる測定を行っている際の概略図である。
【符号の説明】
【0068】
1 関節内軟骨評価プローブ
2 光源
3 受光部
4 演算部
5 表示部
11 把持部
12 硬円筒部
13 光送受信部
14 挿入シース
20 光ファイバー
21 接触部
22 バネ部
23 鏡
24 入射光
25 入射光穴
26 検出光穴
27 検出光
28 弾性チューブ
29 ワイヤー
31 超音波探触子
32 プリズム
33 近接場光
40 関節軟骨
41 軟骨下骨
42 海面骨
43 コラーゲン線維
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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