TOP > 国内特許検索 > マイクロカプセル化金属触媒 > 明細書

明細書 :マイクロカプセル化金属触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3593317号 (P3593317)
公開番号 特開2002-253972 (P2002-253972A)
登録日 平成16年9月3日(2004.9.3)
発行日 平成16年11月24日(2004.11.24)
公開日 平成14年9月10日(2002.9.10)
発明の名称または考案の名称 マイクロカプセル化金属触媒
国際特許分類 B01J 31/24      
B01J 35/08      
C07C 15/14      
C07C 67/343     
C07C 69/618     
C07C 69/738     
C07C 69/757     
C07C319/20      
C07C321/22      
C07D333/08      
C07B 61/00      
FI B01J 31/24 Z
B01J 35/08 B
C07C 15/14
C07C 67/343
C07C 69/618
C07C 69/738 Z
C07C 69/757 Z
C07C 319/20
C07C 321/22
C07D 333/08
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2001-059742 (P2001-059742)
出願日 平成13年3月5日(2001.3.5)
審査請求日 平成13年3月5日(2001.3.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】繁田 えい子
参考文献・文献 欧州特許出願公開第00940170(EP,A1)
特開昭61-133202(JP,A)
欧州特許出願公開第00300643(EP,A1)
Shu Kobayashi,Catalytic Asymmetric Dihydroxylation of Olefins Using a Recoverable and Reusable Polymer-Supported O,J. Am.Chem. Soc,1999年,121,p.11229-11230
調査した分野 B01J 21/00-37/36
C07B 61/00
特許請求の範囲 【請求項1】
側鎖に芳香族置換基を有する高分子中に、
M(PPh3
(ただし、Mは第VIII族金属を示す)
で表されるトリフェニルホスフィン金属触媒が内包されていることを特徴とするマイクロカプセル化金属触媒。
【請求項2】
側鎖に芳香族置換基を有する高分子が、スチレン単位を有する高分子である請求項1のマイクロカプセル化金属触媒。
【請求項3】
Mがパラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよび白金のうちの少なくとも1種である請求項1または2のいずれかのマイクロカプセル化金属触媒。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかのマイクロカプセル化金属触媒と外部配位子の存在下でC-求核剤とアリルカーボネートを反応することを特徴とするアリル化反応方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかのマイクロカプセル化金属触媒と外部配位子の存在下でC-求核剤とアリルアセテートを反応することを特徴とするアリル化反応方法。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかのマイクロカプセル化金属触媒と外部配位子の存在下でホウ酸化合物とアリールブロミドを反応することを特徴とするカップリング反応方法。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれかのマイクロカプセル化金属触媒とキラルな外部配位子の存在下でC-求核剤とアリルカーボネートを反応することを特徴とする不斉合成反応方法。
【請求項8】
外部配位子は、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィンまたは2-(o-ジフェニルホスフィノフェニル)-(4R)-イソプロピルオキサゾリンであることを特徴とする請求項4ないし7のいずれかの反応方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、マイクロカプセル化金属触媒に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、様々な有機合成反応に用いられる触媒であって、空気中で安定で、再利用可能なマイクロカプセル化金属触媒に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
鉄(Fe)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)等の第VIII族金属を有する金属触媒は、有機合成において様々な変換反応を起こすことから、有用性の高い触媒系として知られている。しかし、これらの第VIII族金属触媒は、いずれも高価である上、空気との接触により劣化する、再生が不可能である等の様々な問題点を有するのが実情である。そこで、これらの問題を解決するものとして、触媒を固定化することが検討され、様々な高分子固定化金属触媒に関して多くの報告がなされている。具体的には、アリル置換反応(J.Am.Chem.Soc. 1978, 100, 7779; J.Org.Chem. 1983, 48, 4179他)、オリゴメリゼーション(J.Org.Chem. 1989, 54, 2726; J.Catal. 1976 44, 87; J. Organomet. Chem. 1978, 153, 85他)、脱カルボキシル化反応(J.Mol.Catal. 1992, 74, 409)、水素化反応(Inorg.Chem. 1973, 12, 1465他)、異性化反応(J.Org.Chem. 1978, 43, 2958他)、テロメリゼーション(J.Org.Chem. 1981, 46, 2356)、およびMizoroki-Heck反応(Fundam.Res.Homogeneous Catal. 1973, 3, 671; J.Organomet.Chem. 1978, 162, 403他)等に有効に作用する高分子固定化金属触媒が報告されている。
【0003】
しかし、これまでに知られている種々の触媒系では、高分子に固定化することにより、触媒の安定性は向上したものの、高分子固定化金属触媒の回収率および再利用性は十分とは言い難かったのが実情である。
【0004】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、空気中でも安定であり、回収が容易で再利用も可能な、新しい第VIII族金属触媒系を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、側鎖に芳香族置換基を有する高分子中に、
M(PPh3
(ただし、Mは第VIII族金属を示す)で表されるトリフェニルホスフィン金属触媒が内包されていることを特徴とするマイクロカプセル化金属触媒を提供する。
【0006】
第2には、この出願の発明は、側鎖に芳香族置換基を有する高分子が、スチレン単位を有する高分子である請求項1のマイクロカプセル化金属触媒を提供する
【0007】
さらに、第には、この出願の発明は、第VIII族金属がパラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよび白金のうちの少なくとも1種である前記のいずれかのマイクロカプセル化金属触媒を提供する。
【0008】
この出願の発明は、第には、前記のいずれかのマイクロカプセル化金属触媒と外部配位子の存在下でC-求核剤とアリルカーボネートを反応するアリル化反応方法を、また、第には、前記のいずれかのマイクロカプセル化金属触媒と外部配位子の存在下でC-求核剤とアリルアセテートを反応するアリル化反応方法を提供する。
【0009】
さらに、この出願の発明は、第には、前記のいずれかのマイクロカプセル化金属触媒と外部配位子の存在下でホウ酸化合物とアリールブロミドを反応するカップリング反応方法を、第7には、前記のいずれかのマイクロカプセル化金属触媒とキラルな配位子の存在下でC-求核剤とアリルカーボネートを反応する不斉合成反応方法を提供する。
【0010】
そして、第には、この出願の発明は、外部配位子がトリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィンまたは2-(o-ジフェニルホスフィノフェニル)-(4R)-イソプロピルオキサゾリンである前記いずれかの反応方法をも提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
発明者らは、これまでに、従来報告されているものとは全く異なる高分子固定化金属触媒として、マイクロカプセル化スカンジウムメタンスルホン酸塩(MC Sc(OTf))(J.Am.Chem.Soc. 1998, 120,2985)とマイクロカプセル化オスミウムテトラオキシド(MC OsO)(J.Org.Chem. 1998, 63, 6094; J.Am.Chem.Soc. 1999, 121, 11229)を報告している。これらの触媒系は、高分子側鎖の芳香族置換基のπ電子と触媒の空の電子軌道が相互作用することにより、触媒を高分子に固定化するというものであった。発明者らは、これらScやOsとは原子構造や酸化状態の全く異なる金属を有する触媒、とくに第VIII族金属触媒について、同様の機構で高分子に固定化させることを目標としてさらなる鋭意研究を進め、本願発明に至ったものである。
【0012】
すなわち、この出願の発明のマイクロカプセル化金属触媒では、第VIII族金属を有する金属触媒が、側鎖に芳香族置換基を有する高分子中に内包されており、空気や水分による触媒の劣化が起こり難く、回収や再利用が容易となる。
【0013】
この出願の発明のマイクロカプセル化金属触媒において、側鎖に芳香族置換基を有する高分子は、どのようなものであってもよく、その主鎖骨格、側鎖の構造、立体規則性や分子量等はとくに限定されない。一般に金属触媒の内包を阻害せず、マイクロカプセル構造を形成できるものであればよい。好ましくは、側鎖としてフェニル基を有する高分子、より好ましくは、ポリスチレン単位を有する高分子である。このような高分子は、ポリスチレンのホモポリマーであってもよいし、スチレン単位と1種以上の他のモノマー単位を有するコポリマーであってもよく、さらには、ポリスチレンと他のホモポリマーまたはコポリマーの混合ポリマーであってもよい。もちろん、前記のフェニル基は適宜な有機基を有するものであってもよい。
【0014】
また、この出願の発明のマイクロカプセル化金属触媒において、金属触媒は、第VIII族の金属、すなわち、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)のいずれかを有するものであればよく、とくに限定されない。これらの金属触媒は、金属の化合物として各種のものであってよく、錯体化合物、有機金属化合物、無機塩、あるいは有機塩等であってよい。錯体化合物としては、オレフィンやジオレフィン等と金属とのオレフィン系錯体、ホスフィンやジホスフィンノエタン等と金属とのホスフィン系錯体、アミンやジアミンあるいはピペリジン等と金属のアミン系錯体等が考慮される。好ましくは、次の一般式(I)
M(PPh) (I)
(ただし、Mは第VIII族金属を示す)で表されるトリフェニルホスフィン金属触媒とする。このとき、トリフェニルホスフィンを構成するフェニル基は、許容される各種の有機基を有していてもよい。このようなトリフェニルホスフィン金属触媒が様々な有機合成反応において有効に作用することについては、数多くの報告がなされている。
【0015】
さらに、この出願のマイクロカプセル化金属触媒において、第VIII族金属は前記のいずれのものであってもよいが、とくにルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、および白金(Pt)が好ましい。
【0016】
以上のとおりのマイクロカプセル化金属触媒は、側鎖に芳香族置換基を有する高分子中に第VIII族金属が内包されていればよく、その製造方法はとくに限定されない。医薬品等の分野で研究、報告されている様々な手法を用いることができるが、具体的に、側鎖に芳香族置換基を有する高分子の溶液に金属触媒を溶解し、攪拌、冷却した後、金属触媒が分散導入された高分子の貧溶媒を添加し、膨潤した高分子を硬化してマイクロカプセルとする公知の方法(Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy; CRC Press: Boca Raton, 1992)が適用されることは、発明者等によって既に報告されている(J.Am.Chem.Soc. 1998, 120, 2985)。
【0017】
さらに、この出願の発明のマイクロカプセル化金属触媒は、金属触媒が高分子中にどのような形態で内包されているものであってもよい。例えば、高分子からなるカプセル中に物理的に包埋されていても、高分子の主鎖や側鎖そのもの、あるいはその置換基と金属の電子的相互作用によって固定化されていてもよい。実際には、第VIII族金属触媒は、高分子により物理的に包埋されると同時に、高分子側鎖の芳香族置換基のπ電子と第VIII族金属触媒の空の電子軌道間の相互作用によって固定化されているものと推察される(J.Am.Chem.Soc. 1998, 120, 2985)。
【0018】
さらに、この出願の発明は、以上のとおりのマイクロカプセル化金属触媒を用いることを特徴とする種々の化学反応をも提供する。具体的には、C-求核剤とアリルカーボネートを反応するアリル化反応や不斉合成反応の方法、C-求核剤とアリルアセテートを反応するアリル化反応の方法、ホウ酸化合物とアリールブロミドを反応するカップリング反応の方法が挙げられる。
【0019】
アリル化反応では、例えば次の一般式(II)
【0020】
【化1】
JP0003593317B2_000002t.gif
【0021】
(ただし、Rはアルキル基であり、R~Rは水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基である)で表されるアリルカーボネートとβ-ケトエステルをこの出願の発明のマイクロカプセル化金属触媒の存在下で反応することによりアリル化生成物が得られる。このとき、使用される溶媒の種類は限定されず、種々の有機溶媒から出発物質を溶解できるものが適宜選択できる。また、この反応において、マイクロカプセル化金属触媒の量は出発物質の量や濃度に応じて選択でき、とくに限定されない。好ましくは、マイクロカプセル化金属触媒の量を0.01~0.5mmolとする。
【0022】
このようなアリル化反応は、また、外部配位子の存在下で特に促進され、高収率で生成物を与えるものである。このとき、添加する外部配位子はどのようなものであってもよいが、好ましくは、高分子に内包されている第VIII族金属触媒の配位子と同一のものを用いる。一方、外部配位子がキラルな配位子の場合には、アリルカーボネートとβ-ケトエステルの反応により高いエナンチオマー選択性で不斉合成が進行する。これら、外部配位子の量はとくに限定されないが、マイクロカプセル化金属触媒の1/2~2倍モル程度とすることにより、生成物の収率とマイクロカプセル化金属触媒の回収率が高くなり、好ましい。
【0023】
一方、アリルアセテートのアリル化反応では、例えば次の一般式(III)
【0024】
【化2】
JP0003593317B2_000003t.gif
【0025】
(ただし、R~Rは水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基である)で表されるアリルアセテートとβ-ケトエステルをこの出願の発明のマイクロカプセル化金属触媒の存在下で反応することによりアリル化が起こる。このとき、使用される溶媒の種類やマイクロカプセル化金属触媒の量は前記のとおりである。さらに、このようなアリル化反応では、アリル化反応と同様に、外部配位子が共存することにより、特に高い収率で生成物が得られる。このとき、添加する外部配位子はどのようなものであってもよいが、好ましくは高分子に内包されている第VIII族金属触媒の配位子と同一のものとする。また、外部配位子の量についても、前記のとおりとすることが好ましい。さらに、このようなアリル化反応では、反応をより促進させるために、反応液中に出発物質やマイクロカプセル化金属触媒以外の酸や塩基、あるいは有機塩等の物質を添加してもよい。
【0026】
この出願の発明のマイクロカプセル化金属触媒は、また、カップリング反応を促進するものでもある。次の一般式(IV)
R’B(OH) (IV)
(ただし、R’は置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)に示されるホウ酸化合物とアリールブロミドをこの出願のマイクロカプセル化金属触媒の存在下で反応することにより、カップリングが高い収率で起こる。このようなカップリング反応において、使用される溶媒の種類やマイクロカプセル化金属触媒の量は前記のとおりである。さらに、このようなカップリング反応では、前記のアリル化反応と同様に、外部配位子が共存することによりとくに高い収率で生成物が得られる。このとき、添加する外部配位子はどのようなものであってもよく、例えばトリ-o-トリルホスフィン等が例示される。このような外部配位子の量については、前記の各反応と同様に、とくに限定されないが、マイクロカプセル化金属触媒の1/2~2倍モル程度とすることが好ましい。
【0027】
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0028】
【実施例】
<実施例1> マイクロカプセル化トリフェニルホスフィンパラジウム触媒(MC Pd(PPh))の製造方法
ポリスチレン(1.000g)を40℃のシクロヘキサン(20mL)に溶解し、この溶液にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh, 0.20g)をコアとして添加し、溶解した。この混合液を1時間同温度で溶液の色が褐色から黒色に変化するまで攪拌した。混合液を0℃までゆっくりと冷却したところ、高分子が分散されたコアを包埋し、相分離が生じることが確認された。
【0029】
さらに、ヘキサン(30mL)を加え、カプセル壁を硬化させた。溶液を室温で12時間静置した後、カプセルをアセトニトリルで数回洗浄し、室温で24時間乾燥させた。洗浄によりトリフェニルホスフィン(PPh)3当量が回収され、1当量分がマイクロカプセル中に留まった。
【0030】
触媒含有マイクロカプセルの31P膨潤樹脂マジックアングルスピン(SR-MAS)NMRよりパラジウムに配位したPPhとして、1つのピークのみが確認された。したがって、触媒は、Pd(PPh)としてカプセルに取込まれたことが示唆された。
【0031】
なお、高分子担体から金属を分離することなく直接樹脂の構造を解析できるSR-MAS NMRを用いた解析方法の有効性は、これまでに発明者らによって開発された架橋ポリスチレン系樹脂を用いた各種の固相反応によって既に示されている(Mol.Online 1998, 2, 35; Tetrahedron Lett. 1998, 39, 7345; Tetrahedron Lett. 1998, 39, 9211; Tetrahedron Lett. 1999, 40, 1341; J.Comb.Chem. 1999, 1, 371; Heterocycles 2000, 52, 1143; H.Comb.Chem. 2000, 2, 438)。<実施例2> MC Pd(PPh)を用いたアリル化反応
実施例1で製造されたMC Pd(PPh)を用いて、次の化学式(A)に従ってアリルメチルカーボネート(化合物1)とジメチルフェニルマロネート(化合物2)を反応した。
【0032】
【化3】
JP0003593317B2_000004t.gif
【0033】
MC Pd(PPh)のみを20mol%添加したところ、反応は上手く進行しなかった。そこで、PPhを外部配位子として添加したところ、反応はスムーズに進行した。
【0034】
同様の反応をPPhの添加量を変えて行い、触媒を再利用して繰り返した。結果を表1に示した。
【0035】
【表1】
JP0003593317B2_000005t.gif
【0036】
表より、外部配位子(PPh)の量を20mol%使用した際に、触媒の回収と再利用を5回繰り返した後も、初期と同等の高い収率で生成物が得られることが示された。
<実施例3> MC Pd(PPh)を用いたC-求核試薬とアリルカーボネートのアリル化反応
化合物1(0.55mmol)、化合物(0.5mmol)、PPh(0.1mmol)およびMC Pd(PPh)(0.1mmol, 20mol%)をアセトニトリル(5mL)中で混合し、室温にて12時間攪拌した。エタノールを加え、反応をクェンチした後、MC Pd(PPh)を濾過し、エタノールとアセトニトリルで洗浄し、乾燥した。濾液を減圧下で除去し、粗生成物をTLCにて精製したところ、生成物を83%の収率で得た。また、回収されたMC Pd(PPh)は、活性が低下することなく繰り返し使用できた。(反応番号1)
表2に種々のC-求核試薬とアリルカーボネートの反応をまとめた。
【0037】
【表2】
JP0003593317B2_000006t.gif
【0038】
各種マロン酸塩とβ-ケトエステルはいずれも反応し、対応するアリル化物を高収率で与えた。一方、エチルアセトアセテートと(E)-シンナミルメチルカーボネート(化合物4)の反応により、E/Z立体異性体(E/Z=64/36)が得られた(反応番号6)が、化合物2と化合物4の反応(反応番号5)および化合物2と(Z)-カーボネート(化合物5)の反応(反応番号7)ではE異性体のみが得られた。
【0039】
触媒の回収率は、いずれの場合にも定量的で、回収された触媒は再利用できた。
<実施例4> MC Pd(PPh)を用いたアリルアセテートのアリル化反応
次の化学式(B)に示されるとおり、実施例2で示した化合物2をMC Pd(PPh)、PPh、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)、および触媒量の酢酸カリウムの存在下でアリルアセテートと反応し、対応する生成物を90%の収率で得た。
【0040】
【化4】
JP0003593317B2_000007t.gif
【0041】
<実施例5> MC Pd(PPh)を用いたカップリング反応
種々のホウ酸化合物とアリールブロミドをMC Pd(PPh)の存在下で反応したところ、化学式(C)および(D)に示されるように、高収率で生成物が得られた。
【0042】
【化5】
JP0003593317B2_000008t.gif
【0043】
また、化学式(E)に示されるように、アリールブロミドの代わりの2-ブロモチオフェンを用いた場合にも、反応は進行し、高収率で生成物を与えた。
【0044】
【化6】
JP0003593317B2_000009t.gif
【0045】
これらのカップリング反応では、トリ-o-トリルホスフィン(P(o-Tol))を外部配位子として用いることにより、高い収率とMC Pd(PPh)の回収率が得られた。
<実施例6> MC Pd(PPh)を用いた不斉合成反応
次の化学式(F)に示したとおり、1,3-ジフェニル-2-プロペン-1-イルエチルカーボネート(1.0 equiv)とジメチルマロネート(3.0 equiv.)を、アセトニトリル中MC Pd(PPh)(20mol%)、2-(o-ジフェニルホスフィノフェニル)-(4R)-イソプロピルオキサゾリン(20mol%)、BSA(3.0 equiv.)および酢酸カリウム(0.1 equiv.)存在下で還流し、反応させたところ、87%の収率と83%eeの光学純度で生成物が得られた。
【0046】
【化7】
JP0003593317B2_000010t.gif
【0047】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、種々の有機反応を促進し、高い収率で生成物を与える第VIII族金属触媒を固定化した、空気中での高い安定性と、反応後の回収性および再利用性を有するマイクロカプセル化金属触媒が提供される。