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明細書 :河川感潮域のヘドロ及び土砂礫堆積用凹部

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4041902号 (P4041902)
公開番号 特開2007-277850 (P2007-277850A)
登録日 平成19年11月22日(2007.11.22)
発行日 平成20年2月6日(2008.2.6)
公開日 平成19年10月25日(2007.10.25)
発明の名称または考案の名称 河川感潮域のヘドロ及び土砂礫堆積用凹部
国際特許分類 E02B   3/00        (2006.01)
FI E02B 3/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2006-103024 (P2006-103024)
出願日 平成18年4月4日(2006.4.4)
審査請求日 平成19年4月17日(2007.4.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】羽田野 袈裟義
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
審査官 【審査官】深田 高義
参考文献・文献 特開2002-038465(JP,A)
特開昭60-059214(JP,A)
特開平09-013341(JP,A)
調査した分野 E02B 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
河川感潮域の河床に、河川を横断する方向に少なくとも2列の人工的な凹部を近接設置し、該凹部の上端を河床高にほぼ一致するようにした、ヘドロ及び土砂礫堆積用凹部であって、
少なくとも2列の人工的な凹部のうち、下流側の凹部はヘドロ堆積用凹部で、上流側の凹部は土砂礫堆積用凹部であり、
前記ヘドロ堆積用凹部と前記土砂礫堆積用凹部とは略鉛直な壁で隔てられており、
前記ヘドロ堆積用凹部の下流側端部には、凹部底面が上流に向かって下がるように傾斜している下流端傾斜部が設けられており、
前記土砂礫堆積用凹部の上流側端部には、凹部底面が下流に向かって下がるように傾斜している上流端傾斜部が設けられていることを特徴とするヘドロ及び土砂礫堆積用凹部。
【請求項2】
前記ヘドロ堆積用凹部の底部に、ヘドロ堆積用凹部内での乱流成分を抑える構造体を設けることを特徴とする請求項1記載のヘドロ及び土砂礫堆積用凹部。
【請求項3】
請求項1または2記載のヘドロ及び土砂礫堆積用凹部に堆積したヘドロ及び土砂礫の少なくとも一方を除去するヘドロ及び土砂礫除去方法。
【請求項4】
除去したヘドロ又は土砂礫を、バイオマス又は建築材料などの再利用材料として利用することを特徴とする請求項3記載のヘドロ及び土砂礫除去方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、河川感潮域において、効果的にヘドロを堆積させるとともに、上流から流下してくる土砂礫を、ヘドロと分離して堆積させることができる河川感潮域のヘドロ及び土砂礫堆積用凹部、及び、前記ヘドロ及び土砂礫堆積用凹部に堆積したヘドロ及び土砂礫を除去するヘドロ及び土砂礫除去方法に関する。ここで、河川感潮域とは、河川の河口域で潮の干満により逆流が発生する領域のことを言う。
【背景技術】
【0002】
従来から河川や湖沼におけるヘドロの堆積は大きな社会問題になっている。ヘドロは微粒子から成る泥であり、流れが遅い場所に堆積しやすい。特に、河川の河口域は、もともと流れが穏やかな上に、潮の干満により流れが順流と逆流を繰り返すのでヘドロが堆積しやすい場所である。一般に、ヘドロは汚染物質や有害物質を含んでおり、堆積すると汚染物質や有害物質の溶出により河川の水質を悪化させたり硫化水素の発生により悪臭を発生させたりして周囲の環境に悪影響を及ぼす。そのため、定期的にヘドロを除去する必要があるが、河川の河口域はその区間が長く河床面積が広いので、その全域にわたってヘドロの除去作業をするのは非効率的である。河川の河口域において、特定の場所に集中的にヘドロを堆積させることができれば、その部分のヘドロを集中的に除去すれば良いので、河口域全域でヘドロの除去作業をするのに比べて格段に効率的である。
【0003】
特許文献1には、河川感潮域において、両岸付近などの流速が遅い部分に筒状容器などのヘドロトラップを設置して、該ヘドロトラップにヘドロを堆積させて除去する方法が記載されている。

【特許文献1】特開2005-194803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のヘドロ除去方法は、確かに河川感潮域において効果的にヘドロを堆積させて除去することができるが、堆積させることができるヘドロの量が少ないという欠点がある。本発明の発明者は、より簡単な構造でより多くのヘドロを堆積させることができる構造を見出した。
【0005】
本発明の目的は、河川の河口域において、簡単な構造で多くのヘドロを集中的に堆積させることができ、さらに上流から流下してくる土砂礫を、ヘドロと分離して堆積させることができるヘドロ及び土砂礫堆積用凹部、及び、ヘドロ及び土砂礫除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の構成となっている。
【0007】
河川感潮域の河床に、河川を横断する方向に少なくとも2列の人工的な凹部を近接設置し、該凹部の上端を河床高にほぼ一致するようにした、ヘドロ及び土砂礫堆積用凹部であって、
少なくとも2列の人工的な凹部のうち、下流側の凹部はヘドロ堆積用凹部で、上流側の凹部は土砂礫堆積用凹部であり、
前記ヘドロ堆積用凹部と前記土砂礫堆積用凹部とは略鉛直な壁で隔てられており、
前記ヘドロ堆積用凹部の下流側端部には、凹部底面が上流に向かって下がるように傾斜している下流端傾斜部が設けられており、
前記土砂礫堆積用凹部の上流側端部には、凹部底面が下流に向かって下がるように傾斜している上流端傾斜部が設けられていることを特徴とするヘドロ及び土砂礫堆積用凹部。
【0008】
また、以下の実施態様を有する。
【0014】
前記ヘドロ堆積用凹部の底部に、ヘドロ堆積用凹部内での乱流成分を抑える構造体を設ける。
【0015】
前記ヘドロ及び土砂礫堆積用凹部に堆積したヘドロ及び土砂礫の少なくとも一方を除去するヘドロ及び土砂礫除去方法。
【0016】
除去したヘドロ又は土砂礫を、バイオマス又は建築材料などの再利用材料として利用するヘドロ及び土砂礫除去方法。
【発明の効果】
【0017】
河川感潮域においては、河川底部で遡上流が発生する。ヘドロの粒子は小さいので、河口付近で堆積したヘドロはこの遡上流によって巻き上げられると共にこの流れに乗って、河川底部を下流側から上流側へと移動する。そうして、ヘドロ堆積用凹部に流れ込みそこで堆積する。ヘドロ堆積用凹部の中は流れが遅いため、一度堆積したヘドロは巻き上げられて凹部の外に出ることは洪水時以外には殆ど無い。ヘドロ堆積用凹部の下流端部を斜面にし、上流端部を略鉛直な隔壁にすることで、ヘドロ堆積効果をさらに高めることができる。また、ヘドロ堆積用凹部の底部に乱流成分を抑える構造体を設けることでもヘドロ堆積効果を高められる。ヘドロ堆積用凹部の下流端部を略鉛直にした場合には、下流から底面に沿って運ばれてきたヘドロを高濃度に懸濁する相対的に重い水がヘドロ堆積用凹部の下流端部から落下してヘドロ堆積用凹部の底に衝突する形となり、ヘドロがヘドロ堆積用凹部内で拡散する状況が生じる。一方、ヘドロ堆積用凹部の下流端部を斜面にした場合には、下流から底面に沿って運ばれてきたヘドロを高濃度に懸濁する相対的に重い水が斜面に沿って穏やかにヘドロ堆積用凹部に流入するため、ヘドロが前記のようにヘドロ堆積用凹部内で拡散する状況が生じにくく、効果的に堆積する。さらに、上流端部を略鉛直な隔壁にすることで、ヘドロ堆積用凹部内で下流側から底面に沿って上流向きに流れる高濁度のヘドロ懸濁水の動きを効果的に止めることができる。
【0018】
単に河床に凹部を設けただけでは河川の増水時などに上流から流下してくる土砂礫なども堆積してしまい、ヘドロのみを堆積させることができない。本発明では、ヘドロ堆積用凹部の上流側に土砂礫堆積用凹部を別途設けることで、ヘドロ堆積用凹部に土砂礫が混入することを防ぐ。ヘドロ堆積用凹部と土砂礫堆積用凹部との間を略鉛直な隔壁にすることでさらに効果を高めることができる。本発明のヘドロ及び土砂礫堆積用凹部によれば、ヘドロと土砂礫とを効果的に分離して堆積させることができ、それぞれを独立して除去することができる。ヘドロは最近、バイオマスのエネルギーや建築材料への再利用が注目されており、土砂礫はコンクリートなどの骨材として利用可能である。
【0019】
港湾内の航路埋没が大きな問題となっている。航路埋没を起こす粒子はヘドロだけでなく、より大きな粒径の粒子が混入するため、航路埋没物の除去が容易でなく複数の除去方法を併用しなければならず高コストが避けられない。本発明により、上流から運ばれてきた土砂礫が海に流出することを効果的に抑えることができ、航路埋没物の除去作業が従来に比べて格段に容易で低コストとなる。
【0020】
特許文献1にも河川感潮域においてヘドロを堆積させて除去する技術が記載されているが、本発明の構成の方が簡単な構成で遥かに多量のヘドロを堆積させて除去することができる。特許文献1の従来技術として、河床に、河川を横断する方向に複数列の凹部を設けることが示唆されているが、これらは河床に突起部を設けてその間に凹部を設けるものであり、この構造では河川底部の遡上流および遡上流に乗って底部を移動するヘドロの動きをさえぎってしまうので、河川底部の遡上流に乗って移動するヘドロを効果的に堆積させることができない。また、特許文献1のヘドロ除去技術では、上流から流下してくる土砂礫を堆積させることは全く考慮されていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1には本発明の実施例の縦断図、図2には本発明の実施例の全体平面図が記載されている。河川感潮域の河床3に、河川を横断する方向にヘドロ堆積用凹部1及び土砂礫堆積用凹部2が設置されていて、ヘドロ堆積用凹部1は下流側に、土砂礫堆積用凹部2は上流側に設置されている。ヘドロ堆積用凹部1及び土砂礫堆積用凹部2の上端は、河床高にほぼ一致している。ヘドロ堆積用凹部1及び土砂礫堆積用凹部2の間は略鉛直な壁5で隔てられており、ヘドロ堆積用凹部1の下流端及び土砂礫堆積用凹部2の上流端は斜面になっている。本実施例では凹部は2列であるが、3列以上であっても構わない。さらに、ヘドロ堆積用凹部1の底部にハニカム構造体などの乱流抑制構造体を設けることで、ヘドロ堆積用凹部1内の乱流成分を抑え、ヘドロの堆積をより効果的に行うことができる。
【0022】
図3は、河川感潮域における流れ及び濁度の概念図である。
【0023】
図3(A)は、下げ潮時における流速分布と濁度分布の概念図である。下げ潮時においては、流れは下流向きである。下げ潮に先行する満潮時には水位が上がり、相対的に流速が小さくなるので、ヘドロ等の巻き上げ効果が小さく懸濁粒子は沈降する。このため下げ潮時においては図3(A)に示すように全体として濁度は低い。
【0024】
図3(B)は、上げ潮時における流速分布と濁度分布の概念図である。上げ潮時においては、流れは上流向きであり、特に底部付近の遡上流は速い。これは、潮位の上昇により比重の大きい海水が海から継続して供給され、淡水の下に潜り込むようにして流れるからである。上げ潮に先行する干潮時には水位が下がり、相対的に流速が大きくなるので、その時に底部に堆積したヘドロなどが巻き上げられて濁度が高くなる。その後の上げ潮時においては、底部付近の速い遡上流のためにヘドロが巻き上げられて濁度の高い状態となり河川底部付近の遡上流に乗って上流側へと輸送される。
【0025】
図3(C)は、潮汐の1サイクルにおける流速変化を平均化した恒流の流速分布の図である。この図によれば、潮汐の1サイクルで平均すると河川底部においては遡上流が発生していることがわかる。
【0026】
図3に示されたこれらの現象に基づいて、ヘドロ堆積用凹部1にヘドロが堆積するメカニズムを説明する。なお、個々のヘドロ粒子は巻き上げられては沈降し再び巻き上げられては沈降するということを繰り返しており、巻上げと沈降を繰り返す莫大な数のヘドロ粒子群の存在状態が図3の濁度分布を形成する。まず、干潮時には速い下流向きの流速によりヘドロが巻き上げられてヘドロは一旦下流側に流される。それに続く上げ潮時には、図3(B)に示すように上げ潮時の河川底部付近の速い遡上流によってヘドロが巻き上げられると共に遡上流に乗って上流側に運ばれる。このように、干潮時にはヘドロが一旦は下流側に流されるが、図3(C)に示すように河川底部においては平均すると遡上流の方が優勢であるので、日々の潮汐の繰り返しによりヘドロはいずれ上流側に運ばれていく。上げ潮時の河川底部付近の遡上流に乗って上流側に運ばれるヘドロは、ヘドロ堆積用凹部1の下流端側斜面に沿ってヘドロ堆積用凹部1の底部に導かれて堆積する。ヘドロ堆積用凹部1内では流速が小さいので、ヘドロ堆積用凹部1の底部に堆積したヘドロが巻き上げられて凹部の外に出ることは洪水時以外には殆ど無い。このようにして、河川感潮域におけるヘドロを効果的にヘドロ堆積用凹部1内に堆積させることができる。
【0027】
また、洪水時など河川の増水時には上流側から土砂礫が流下してくるが、ヘドロ堆積用凹部1の上流側に土砂礫堆積用凹部2を設置することで土砂礫がヘドロ堆積用凹部1内に混入することを防ぐことができ、ヘドロと土砂礫を効果的に分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例の縦断図。
【図2】本発明の実施例の全体平面図。
【図3】河川感潮域における流れ及び濁度の概念図。
【符号の説明】
【0029】
1 ヘドロ堆積用凹部
2 土砂礫堆積用凹部
3 河床
4 河岸または護岸
5 壁
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2