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明細書 :土石流の停止堆積構造物及び土石流堆積物の除去方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4779116号 (P4779116)
公開番号 特開2007-277842 (P2007-277842A)
登録日 平成23年7月15日(2011.7.15)
発行日 平成23年9月28日(2011.9.28)
公開日 平成19年10月25日(2007.10.25)
発明の名称または考案の名称 土石流の停止堆積構造物及び土石流堆積物の除去方法
国際特許分類 E02B   7/02        (2006.01)
FI E02B 7/02 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2006-102654 (P2006-102654)
出願日 平成18年4月4日(2006.4.4)
審査請求日 平成21年4月1日(2009.4.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】羽田野 袈裟義
個別代理人の代理人 【識別番号】100158702、【弁理士】、【氏名又は名称】岡野 卓也
審査官 【審査官】田畑 覚士
参考文献・文献 実開昭63-112529(JP,U)
特開平03-066816(JP,A)
斉藤,鋼構造底面水抜きスクリーンダムの施工,建設技報-建設技術管理業務報告-,日本,1991年 3月28日,第5号,P37-40
真野,底面水抜きスクリーンダムの機能に関する一考察,第34回技術報告会資料河川編,日本,建設省中部地方建設局,1985年 8月26日,P141-148
栗原、福沢、岩田,富士山大沢川で発生した土砂流とスクリーンダムの機能について(速報),新砂防,日本,砂防学会,1987年 9月20日,Vol.40、No.3,P23-28
調査した分野 E02B 7/02
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
土石流が発生しうる流路に設置される土石流の停止堆積構造物であって、
流下してきた土石流を停止堆積させる、水抜き機能を有する板状構造物と、
前記板状構造物がほぼ水平状態になるように前記板状構造物を支持する支持体とを有し、
前記板状構造物はその上で重機が移動できる強度及び構造を有しており、
さらに前記板状構造物は側端及び下流端の少なくとも一方に壁が設けられ、前記壁の一部には土砂や礫を搬出するための搬出口が設けられていることを特徴とする土石流の停止堆積構造物。
【請求項2】
前記板状構造物は有孔板であることを特徴とする請求項1記載の土石流の停止堆積構造物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の土石流の停止堆積構造物上に堆積した土砂や礫を除去することを特徴とする土石流堆積物の除去方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、山間部の渓流など土石流が発生しやすい場所に設置し、土石流を停止堆積させる土石流の停止堆積構造物、及び、停止堆積した土砂や礫を除去する土石流堆積物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土石流は、豪雨等に伴い突発的に発生する巨礫を含んだ水と土砂の集合体の流動で、その破壊力は強力であり、ひとたび発生して集落に至ると甚大な災害を起こす。土石流の発生を理論的に予測することは困難であるので、土石流が発生しそうな場所に砂防ダム等を設置しておくしかない。
【0003】
一般的な砂防ダムは、略鉛直なコンクリート壁で土石流を堰き止めるものである。この方式の砂防ダムは土石流を堰き止めるのには有効であるが、出水時に流れてくる土砂や礫をも堰き止めるので年数が経過するとダムに土砂や礫が溜ってしまい、砂防ダム本来の機能を果たさなくなる。また、砂防ダムに溜まった土砂や礫を除去するには掘り起こすしかなく、作業に手間とコストが掛かる。
【0004】
特許文献1には、従来技術として水平方向に設置した簀の子によって土石流を停止堆積させる技術が記載されている。しかしながら、明確な構造が記載されておらず、堆積した土砂や礫の除去を容易にするための構造について記載も示唆もされていない。

【特許文献1】特開2000-328547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
砂防ダムは、長年経過すると土石流や出水で流出した土砂や礫が溜まってしまい、本来の機能を果たさなくなる。従来の砂防ダムは、溜まった土砂や礫を除去することを想定して造られておらず、将来にわたって本来の機能を果たせるかどうか甚だ疑問である。そのため、土砂や礫が溜まることを見越して砂防ダムを大きめに作ったり多数作ったりすることも考えられるが、コストが掛かる上に景観や下流の河川の水質など環境上も好ましくない。
【0006】
本発明の目的は、停止堆積した土砂や礫の除去を容易にするための構造を有する土石流の停止堆積構造物及び土石流堆積物の除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の構成となっている。
【0008】
土石流が発生しうる流路に設置される土石流の停止堆積構造物であって、流下してきた土石流を停止堆積させる、水抜き機能を有する板状構造物と、前記板状構造物がほぼ水平状態になるように前記板状構造物を支持する支持体とを有し、前記板状構造物はその上で重機が移動できる強度及び構造を有しており、さらに前記板状構造物は側端及び下流端の少なくとも一方に壁が設けられ、前記壁の一部には土砂や礫を搬出するための搬出口が設けられることを特徴とする土石流の停止堆積構造物。

【0009】
また、以下の実施態様を有する。
【0010】
前記板状構造物は有孔板である。
【0012】
前記土石流の停止堆積構造物に堆積した土砂や礫を除去する土石流堆積物の除去方法。
【発明の効果】
【0013】
水平に設置した水抜き機能をもつ板状構造物によって、土石流中の水分を抜いて流動性を消失させることができ、土石流の流れの駆動力を弱めることができるので、土石流を効果的に停止堆積させることができる。また、土石流の流下力を弱めて堆積させるため、略鉛直の砂防ダムに比べて簡単な構造で効果的に土石流を停止堆積させることができる。
【0014】
水平の板状構造物は、その上で重機が移動できる構造及び強度を有しており、さらに側端又は下流端に土砂を搬出するための構造を有することにより、堆積物を効果的に除去することができる。従来の略鉛直壁の砂防ダムは、溜まった土砂や礫を除去するための工夫がなされておらず、土砂や礫が溜まってしまったら本来の機能を発揮できない。従来の略鉛直壁の砂防ダムに溜まった土砂や礫を除去しようとする場合は土砂や礫を掘り起こす必要があり、作業は非常に困難である。従来技術の特許文献1も溜まった土砂や礫を除去することを想定して築造さられておらず、溜まった土砂や礫を除去するための特別な構成がないので、土砂や礫が溜まりきってしまったらもう砂防ダムとしての役割を果たせない。それに対し、本発明の土石流の停止堆積構造物は堆積した土砂や礫を容易に除去しうる構造を有しているので、必要に応じて堆積物を除去することができ、砂防ダムとしての機能を半永久的に維持することができる。また、除去した土砂や礫をコンクリートなどの骨材として利用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1及び図2には、本発明の実施例が記載されている。図1は縦断図、図2は三方図である。本実施例の土石流の停止堆積構造物は、水抜き機能を有しほぼ水平に設置された、土石流を停止堆積させる有孔板2、前記有孔板2をほぼ水平に保つように支持する支持体3とからなる。前記有孔板2は、その上で重機が移動できるような強度及び構造を有している。前記有孔板2の側端及び下流端には壁7が設けられている。前記壁7の一部には、前記有孔板2上に堆積した土砂や礫の搬出をするための開閉口5が設けられている。前記開閉口5の外側には、前記有孔板2上に重機を載せたり、前記有孔板2上から搬出した土砂や礫を積載するための車輌を横付けする車輌横付スペース6が設けられている。
【0016】
流路床4に沿って流下してきた土石流1は、有孔板2に達すると有孔板2の水抜き機能によって流動性を失い、有孔板2上に停止堆積する。既往の調査研究により土石流は水分を失うと流動性を失うことがわかっている。有孔板2は水分を透過させることができ、土石流の流動性を失わせる。本発明の土石流の停止堆積構造物を流下方向の複数の地点に設け多段に設置することで、さらに確実に土石流を停止堆積させることが可能である。
【0017】
有孔板2には、土石流のほか、普通の出水で流下してくる土砂や礫も堆積する。したがって、長期間経過すると有孔板2上には土砂や礫が堆積してしまう。そのまま放置しておくと堆積量の許容範囲を超えてしまい、砂防ダムとしての役割を果たさなくなる恐れがある。この問題を、本発明では堆積した土砂や礫の除去を容易にするための構造を有することで解決する。有孔板2は、その上でブルドーザーやショベルカーなどの重機が移動できる強度及び構造を有している。例えば、重機が移動しやすいように表面が平坦な構造になっている。有孔板2上の重機によって搬出された土砂や礫は、有孔板2の側端又は下流端に設けられた開閉口5から搬出される。開閉口5の外側にある車輌横付スペース6にダンプカーなどを横付けし、有孔板2上の重機によって搬出された土砂や礫をダンプカーに積載して除去する。搬出された土砂や礫は、別の場所に捨てても良いが、コンクリートなどの骨材として利用することもできる。
【0018】
図3には、前記開閉口5の一例が記載されている。有孔板2の側端及び下流端の壁7に、開閉用板9をはめ込む構造になっている。開閉用板9は、壁7にはめ込まれているので水平力に対して強い抵抗力を持ち、強い水平力が作用する土石流に対しても耐えうる構造になっている。堆積した土砂や礫を搬出する際には、はめ込まれた開閉用板9を上方に外す。
【0019】
図4には、前記開閉口5の別の例が記載されている。開閉用板9を図に示さない留め具と蝶番8を用いて開閉する構造になっている。図3の例に比べて水平力に対する強度は劣るが、開閉が容易であり、頻繁に堆積物を除去する必要があるようなケースには有利である。
【0020】
なお、土石流が両側端まで及ぶ場合、土石流は両側端では壁7に沿って流動するため、土石流が開閉用板9に及ぼす水平力は小さい。また、土石流が下流端の壁7に到達した時点では流動性を殆んど失っているため、土石流が下流端の壁7や開閉用板9に対して大きな力を作用することはないはずである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の縦断図。
【図2】本発明の三方図。
【図3】土砂搬出用開閉口の例1。
【図4】土砂搬出用開閉口の例2。
【符号の説明】
【0022】
1 土石流堆積物
2 有孔板
3 支柱
4 流路床
5 開閉口
6 車輌横付スペース
7 壁
8 蝶番
9 開閉用板
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3