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明細書 :電磁波による非破壊検査装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第4002982号 (P4002982)
登録日 平成19年8月31日(2007.8.31)
発行日 平成19年11月7日(2007.11.7)
発明の名称または考案の名称 電磁波による非破壊検査装置及び方法
国際特許分類 G01N  22/00        (2006.01)
FI G01N 22/00 Y
G01N 22/00 S
請求項の数または発明の数 6
全頁数 8
出願番号 特願2006-307008 (P2006-307008)
出願日 平成18年11月13日(2006.11.13)
優先権出願番号 2006210277
優先日 平成18年8月1日(2006.8.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年4月3日(2007.4.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】田中 正吾
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 特公平02-014801(JP,B2)
特公平03-075087(JP,B2)
特開2004-212367(JP,A)
特開2001-147221(JP,A)
特開平10-221465(JP,A)
田中正吾,電磁波レーダを用いたトンネルの高精度リアルタイム非破壊検査,検査技術,2006年 2月,VOl.11 No.2,pp.66-72
調査した分野 G01N 22/00-22/04
G01V 3/12
G01S 13/00-13/95
要約 【課題】 電磁波による非破壊検査において、移動検査装置本体と検査対象物との間にすき間があっても、検査対象物内部に効果的に電磁波を入射させることができる。
【解決手段】 検査対象物6の表面上を移動する検査装置本体1と、検査装置本体1に搭載され、検査対象物6に向けて電磁波を照射する電磁波照射手段2と、検査装置本体1に搭載され、電磁波照射手段2から照射された電磁波の反射波信号を取得する受波手段3と、受波手段3によって取得された反射波信号を信号処理することによって検査対象物6の欠陥を検出する信号処理手段4と、を有する検査装置であって、検査装置本体1は、検査対象物表面6での電磁波反射を抑えるため、少なくとも電磁波照射手段2と検査対象物表面6との間に、空気よりも高い誘電率を有する電磁カップリング手段10を有する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
検査対象物の表面上を移動する検査装置本体と、
前記検査装置本体に搭載され、前記検査対象物に向けて電磁波を照射する電磁波照射手段と、
前記検査装置本体に搭載され、前記電磁波照射手段から照射された電磁波の反射波信号を取得する受波手段と、
前記受波手段によって取得された反射波信号を信号処理することによって前記検査対象物の欠陥を検出する信号処理手段と、
を有する検査装置であって、
前記検査装置本体は、前記検査対象物表面での電磁波反射を抑えるため、少なくとも前記電磁波照射手段と前記検査対象物表面との間に、空気よりも高い誘電率を有する電磁カップリング手段を有し、
前記電磁カップリング手段は、前記検査装置本体の底面から垂下がった、空気よりも高い誘電率を有する複数のひも状体であることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記ひも状体は、空気よりも高い誘電率を有する液体を浸透させたものであることを特徴とする請求項記載の検査装置。
【請求項3】
前記ひも状体は、空気よりも高い誘電率を有する液体を封入したチューブ状体であることを特徴とする請求項記載の検査装置。
【請求項4】
前記ひも状体は、前記検査装置本体の底面からの距離に応じて誘電率が異なるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至いずれか記載の検査装置。
【請求項5】
前記ひも状体は、前記検査対象物表面とは接触又は非接触であることを特徴とする請求項1乃至いずれか記載の検査装置。
【請求項6】
検査装置本体を、検査対象物の表面上で移動させる検査装置本体移動工程と、
前記検査装置本体に搭載された電磁波照射手段により、前記検査対象物に向けて電磁波を照射する電磁波照射工程と、
前記検査対象物表面での電磁波反射を抑えるため、少なくとも前記電磁波照射手段と前記検査対象物表面との間で、空気よりも高い誘電率を有する電磁カップリング手段により電磁カップリングを行う電磁カップリング工程と、
前記電磁波照射工程で照射された電磁波の反射波信号を、前記検査装置本体に搭載された受波手段により取得する受波工程と、
前記受波工程によって取得された反射波信号を信号処理することによって前記検査対象物の欠陥を検出する信号処理工程と、を有し、
前記電磁カップリング工程における電磁カップリング手段は、前記検査装置本体の底面から垂下がった、空気よりも高い誘電率を有する複数のひも状体であることを特徴とする検査方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波による非破壊検査装置及び方法における、移動検査装置本体と検査対象物との間の電磁カップリングに関する。検査対象は電磁波による非破壊検査が可能なものなら何でもよく、鉄筋コンクリート構造物の検査、鉄筋を有さないコンクリート構造物の検査、鉄道線路下の空洞探査、高速道路等の道路下の欠陥検査などがある。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリート構造物の劣化による事故が多発する中、これらの早急な検査及び補修が叫ばれている。このようなコンクリート構造物には、トンネル壁のように基本的には鉄筋が含まれない構造物と、ビルディング、橋梁を始めとする鉄筋コンクリート構造物がある。
【0003】
これらコンクリート構造物の検査の他、鉄道線路や道路の下の空洞探査の必要性も高い。なぜなら、鉄道線路下に空洞があると線路が陥没する恐れがあり、最悪の場合は脱線事故を起こしてしまう。このため線路下の空洞探査を行う必要があるが、現時点では効率的な空洞探査手法は開発されていない。同様に、高速道路等の道路下の欠陥についても検査の必要性が高いが、広範囲にわたる道路の内部を効率的に検査する手法は開発されていない。
【0004】
レーダ(電磁波)を使用した非破壊検査手法の研究開発も最近では進んで来ている。このレーダ法は打音法、超音波法、赤外線法など他の非破壊検査手法と異なり、稼働性が良いという利点がある。しかし、従来の移動型電磁波レーダにおいては、移動の際(特に高速走行時)にレーダと検査対象物との接触を避けるために、レーダを検査対象物からリフトオフする必要があるが、30~50mm以上リフトオフすると電磁波が検査対象物の表面でほとんど反射してしまい、検査対象物内部に入りにくくなってしまう。
【0005】
特許文献1には、本発明の従来技術である電磁波を用いた鉄筋コンクリート構造物の非破壊検査技術が記載されている。測定された反射波のピークパターンを健全データのピークパターンと比較することにより鉄筋周辺のクラックを検出するものである。また、特許文献2にも同様に本発明の従来技術が記載されている。実際の受波信号と予測受波信号波形とをパターンマッチングすることによりコンクリート構造物を非破壊検査するものである。いずれの文献にも、電磁カップリング手段については記載されていない。

【特許文献1】特開2005-331404号公報
【特許文献2】特開2003-207463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電磁波による非破壊検査において、移動検査装置本体と検査対象物との間にすき間があっても、検査対象物内部に効果的に電磁波を入射させることができる装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0008】
検査対象物の表面上を移動する検査装置本体と、前記検査装置本体に搭載され、前記検査対象物に向けて電磁波を照射する電磁波照射手段と、前記検査装置本体に搭載され、前記電磁波照射手段から照射された電磁波の反射波信号を取得する受波手段と、前記受波手段によって取得された反射波信号を信号処理することによって前記検査対象物の欠陥を検出する信号処理手段と、を有する検査装置であって、前記検査装置本体は、前記検査対象物表面での電磁波反射を抑えるため、少なくとも前記電磁波照射手段と前記検査対象物表面との間に、空気よりも高い誘電率を有する電磁カップリング手段を有し、前記電磁カップリング手段は、前記検査装置本体の底面から垂下がった、空気よりも高い誘電率を有する複数のひも状体であることを特徴とする検査装置。
【0009】
検査装置本体を、検査対象物の表面上で移動させる検査装置本体移動工程と、前記検査装置本体に搭載された電磁波照射手段により、前記検査対象物に向けて電磁波を照射する電磁波照射工程と、前記検査対象物表面での電磁波反射を抑えるため、少なくとも前記電磁波照射手段と前記検査対象物表面との間で、空気よりも高い誘電率を有する電磁カップリング手段により電磁カップリングを行う電磁カップリング工程と、前記電磁波照射工程で照射された電磁波の反射波信号を、前記検査装置本体に搭載された受波手段により取得する受波工程と、前記受波工程によって取得された反射波信号を信号処理することによって前記検査対象物の欠陥を検出する信号処理工程と、を有し、前記電磁カップリング工程における電磁カップリング手段は、前記検査装置本体の底面から垂下がった、空気よりも高い誘電率を有する複数のひも状体であることを特徴とする検査方法。
【0010】
前記電磁カップリング手段は、少なくとも電磁波照射手段と検査対象物表面との間に設けられているが、受波手段と検査対象物表面との間にも設けることが好ましい。前記電磁カップリング手段は、検査装置本体の底面の少なくとも電磁波の伝播経路に沿った部分に設ける必要があるが、それ以外の底面部分に電磁カップリング手段があっても差し支えない。
【0011】
また、以下の実施態様を有する。
【0014】
前記ひも状体は、空気よりも高い誘電率を有する液体を浸透させたものである。
【0015】
前記ひも状体は、空気よりも高い誘電率を有する液体を封入したチューブ状体である。
【0018】
前記電磁カップリング手段は、少なくとも前記電磁波照射手段と前記検査対象物表面との間に、空気よりも高い誘電率を有する液体を浸透させた物質を介在させる。
【0019】
前記電磁カップリング手段は、前記検査装置本体の底面からの距離に応じて誘電率が異なるように構成されている。
【0020】
前記電磁カップリング手段は、前記検査対象物表面とは接触又は非接触である。
【0021】
前記液体としては「水」が良いが、「水」以外の液体でも良い。
【0022】
前記ひも状体を付勢するには、枠体を用いることができる。また、ひも状体自体に付勢力を持たせて、ブラシ状にしても良い。
【0023】
前記電磁カップリング手段を前記検査対象物表面に接触させて使用する場合は、前記検査装置本体から前記検査対象物表面に近づくにつれて前記電磁カップリング手段の誘電率を前記検査対象物の誘電率に近づくよう大きくすると良い。前記電磁カップリング手段として液体を浸透させた物質を用いれば、液体が重力により下部に集まるようになるので前記構成を得ることができる。また、前記電磁カップリング手段を前記検査対象物表面に非接触にする場合は、前記電磁カップリング手段の中間部分の誘電率を高くし、上下の誘電率を低くすることが望ましい。なお、このとき誘電率の異なる層を複数設けても良いし、誘電率を連続的に変化させても良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明は電磁カップリングにより、移動検査装置本体と検査対象物との間にすき間があっても検査対象物内部に効果的に電磁波を入射させることができる。検査装置本体は高速で移動することが多く、電磁カップリングが検査対象物表面にある障害物に接触すると破損してしまう恐れがあるが、本発明の構成を採用すれば電磁カップリングの破損を防ぐことができ、スムーズな高速検査が可能となる。前記電磁カップリングは、検査対象物表面に対して接触状態でも非接触状態でも利用できるが、非接触にすることで電磁カップリングを長寿命化したり、あるいは破損を防ぐことができる。仮に破損したとしても本発明の電磁カップリングは比較的安価な材料で構成できるので、交換が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<実施形態>
本発明の実施形態について、図1及び図2により説明する。図1は本実施形態の装置の概略図である。検査装置本体1に、電磁波照射手段2と受波手段3が搭載されている。検査装置本体1は、検査対象物6の表面上をリフトオフを有して走行するようになっている。検査対象物6は、電磁波による非破壊検査ができるものであれば何でも良く、コンクリート構造物、鉄筋コンクリート構造物、アスファルト道路、鉄道線路などが挙げられる。検査装置本体1の移動にともなって電磁波照射手段2と受波手段3を駆動して、反射波信号を取得する。信号処理手段4は、反射波信号を処理し、クラックや空洞等の欠陥を検出して、検出結果を表示手段5で表示する。信号処理手段4の信号処理アルゴリズムについては特に限定されないが、特許文献1、特許文献2、特願2006-210270号などに記載されたアルゴリズムを用いることができる。
【0026】
検査装置本体1と検査対象物6との間には、電磁カップリング10がある。電磁カップリング10の具体例を図2に示す。図2は、ひも垂下式の電磁カップリングに関するものである。図2は、本発明の検査装置を鉄道線路下の空洞検査に適用した場合の例であるが、検査対象はこれに限定されない。検査装置本体1から数多くのひもや布等を垂らし、このひもや布等に空気よりも誘電率が高い水分を含ませることで検査装置本体1直下の誘電率を高めることができる。もしくは、ひも状体自体を誘電率が高い物質で構成すれば、水分を含ませる必要が無い。ひも状体に水分を含有させるのに代えて、ひも状体をゴムチューブ等で構成し、そのチューブの内部に水分を封入しても良い。検査対象物6が水平でない場合は検査装置本体1も傾斜させる必要があるが、この場合、ひも状体を垂下させると斜めにずれてしまう恐れがある。これを防ぐためには、ひも状体を枠体などで付勢させる。もしくは、ひも状体そのものにある程度の硬さをもたせて、ブラシ状に構成しても良い。電磁カップリング10と検査対象物6との間にはエアーギャップが無いのが理想的であるが、少しのエアーギャップであれば存在しても構わない。
【0027】
図3は、電磁カップリングの比誘電率分布の一例である。図3は誘電体層が2層の例であるが、層数はそれ以外であっても構わないし、層に分けずに連続的に誘電率を変化させても良い。電磁カップリング(誘電体)を検査装置本体底面とバラス(検査対象物が鉄道軌道面である場合)の間に挿入する場合は、大気及びバラスの比誘電率がそれぞれ1及び5位であるので、2層であればε1=1.7、ε2=2.9の順に、3層であればε1=1.5、ε2=2.2、ε3=3.3のように、大気中の比誘電率(ε0=1)とバラスの比誘電率(ε=5)の間で等比級数的に値を徐々に大きくとると良い。つまり、2層の場合を例にすると、ε0=1(大気)、ε10×1.7=1.7、ε21×1.7=2.9、ε=ε2×1.7=5のように、ε0(=1)に順次、公比r=1.7を乗じていけば良い。対象がバラスでなくコンクリートであれば、コンクリートの比誘電率が9位なので、ε0=1とε=9の間で等比級数となるよう、ε1、ε2を決めれば良い。具体的には、ε0=1、ε10×2.08=2.08、ε21×2.08=4.33、ε=ε2×2.08=9の、公比がr=2.08の等比級数となる。このように、誘電率を大気中のものから検査対象物のものまで徐々に変えることにより誘電率の異なる各境界面での反射が弱くなり、結局、対象への電磁波透過効率が増す。
【0028】
図4は、電磁カップリングの比誘電率分布の一例であって、電磁カップリングと検査対象物表面との間にエアーギャップが存在する場合の例である。誘電体(3層の場合)の比誘電率がε1=1.5、ε2=2.0、ε3=1.5のように、アンテナ部分(大気中)とエアーギャップの比誘電率(共にε0=1)との差が余り現れないようにする必要がある。これは境界面での反射を小さくし、検査対象物(バラス)への電磁波透過率を高めるためである。この場合は、誘電体はバラスに接触せず、大気と接するものなのでε0=1(大気)より始めて徐々に ε1、ε2を大きく変えつつ、しかも途中からε3をエアーギャップの比誘電率(ε0=1)に近づくよう、今度は逆に値を小さくする。電磁波の対象への透過率を大きくするには、誘電体が大気のそれより必ず大きくなければならない。したがって、ε0=1(大気)<εとなり、かつ
ε230=1(エアーギャップ)となる。つまり、この場合の比誘電率は、ε0=1より増加して、中央より今度はε0=1に向けて減少する増加・減少の特性をもつことになる。
【0029】
図5は、電磁カップリングとして、ひも状体又はスポンジ等に水を浸透させた水浸透物質を用いた場合の含水量分布を示す図である。ひも状体又はスポンジ等に水を含ませると、重力のため時間が経つにつれて下に行くほど水分含有率は増加するので、誘電率は下に行くほど大きくなり、図3のような理論的に最適な誘電率分布を得ることができる。
【0030】
<参考実施形態>
参考実施形態について、図6により説明する。電磁カップリング10以外の構成については、上記実施形態と同じである。図6は、シャワー(スプレー)式の電磁カップリングに関するものである。検査装置本体1と検査対象物との間に、ノズルにより水を噴射し、検査装置本体1直下の比誘電率を1(空気の比誘電率)よりも大きくする。検査装置本体1下部の周辺にビニール等で垂れ幕を作り、噴射された水を外部に漏れにくくしている。検査装置本体直下の誘電率を高めることにより、検査対象物の表面での電磁波反射が低減され、検査対象物内部に効果的に電磁波を照射することができる。本参考実施形態も上記実施形態と同様に、鉄筋コンクリート構造物の検査、鉄筋を有さないコンクリート構造物の検査、アスファルト道路、鉄道線路下の空洞探査等に利用することができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更が可能であることは言うまでもない。

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の概略図
【図2】ひも垂下式の電磁カップリグに関する図
【図3】電磁カップリングの比誘電率分布例(エアーギャップなし)
【図4】電磁カップリングの比誘電率分布例(エアーギャップあり)
【図5】水浸透物質の含水率分布
【図6】シャワー式の電磁カップリングに関する図
【符号の説明】
【0033】
1 検査装置本体
2 電磁波照射手段
3 受波手段
4 信号処理手段
5 表示手段
6 検査対象物
10 電磁カップリング
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5