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明細書 :DNA断片の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5061346号 (P5061346)
公開番号 特開2008-154557 (P2008-154557A)
登録日 平成24年8月17日(2012.8.17)
発行日 平成24年10月31日(2012.10.31)
公開日 平成20年7月10日(2008.7.10)
発明の名称または考案の名称 DNA断片の製造方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 13
全頁数 18
出願番号 特願2006-349873 (P2006-349873)
出願日 平成18年12月26日(2006.12.26)
審査請求日 平成21年7月7日(2009.7.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】藤島 政博
【氏名】水上 洋一
【氏名】殿岡 裕樹
審査官 【審査官】小川 明日香
参考文献・文献 Nucleic Acids Res.,1997年,Vol.25,p.1854-1858
調査した分野 C12N 15/09
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
被検細胞のゲノムDNAから、既知配列からなるオリゴDNAアダプターを結合したDNA断片を製造する方法であって、下記工程を含むことを特徴とする、アダプター結合DNA断片製造方法。
(1)ゲノムDNAを、5’突出末端を形成する制限酵素で切断し、制限酵素断片を得る工程
(2)前記制限酵素が形成する突出末端と相補的な塩基配列を有する突出末端を持ち、更にその突出先端に前記制限酵素断片の切欠き部に存在する塩基と同一種の塩基が1つ付加され、該塩基がリン酸化された1組の2本鎖オリゴDNAからなるアダプターを、DNAリガーゼを用いて工程(1)で得られた制限酵素断片に結合させる工程
【請求項2】
下記工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載のアダプター結合DNA断片製造方法。
(3)工程(1)で得られた制限酵素断片の5’突出末端を、アルカリフォスファターゼで脱リン酸化する工程
【請求項3】
工程(2)が下記工程で置き換えられることを特徴とする、請求項1に記載のアダプター結合DNA断片製造方法。
(2’)前記制限酵素が形成する突出末端と相補的な塩基配列を有する突出末端を持ち、更にその切欠き部に前記制限酵素断片の突出先端に存在する塩基と同一種の塩基が1つ付加され、該塩基がリン酸化された1組の2本鎖オリゴDNAからなるアダプターを、DNAリガーゼを用いて工程(1)で得られた制限酵素断片に結合させる工程
【請求項4】
被検細胞のゲノムDNAから、既知配列からなるオリゴDNAアダプターを結合したDNA断片を製造する方法であって、下記工程を含むこと特徴とする、アダプター結合DNA断片製造方法。
(A)ゲノムDNAを、3’突出末端を形成する制限酵素で切断し、制限酵素断片を得る工程
(B)前記制限酵素が形成する3’突出末端と相補的な塩基配列を有する突出末端を持ち、更にその切欠き部に前記制限酵素断片の突出末端に存在する塩基と同一種の塩基が1つ付加され、前記付加された塩基がリン酸化された1組の2本鎖オリゴDNAからなるアダプターを、DNAリガーゼを用いて工程(A)で得られた制限酵素断片に結合させる工程
【請求項5】
制限酵素が、AccI,AflIII,Alw44I,AsnI,AvaI,AvaII,BamHI,BclI,BglII,BlnI,BssHII,BstEII,ClaI,DdeI,EclXI,EcoRI,EcoRII,HindIII,HinfI,HpaII,MluI,MseI,MspI,MvaI,NarI,NciI,NeoI,NdeI,NheI,NotI,PinAI,SalI,ScrFI,SpeI,StyI,TaqI,XbaI,XhoIのうちいずれかより選択される、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のアダプター結合DNA断片製造方法。
【請求項6】
制限酵素が、ApaI,BanII,BglI,BsmI,CfoI,HaeII,HhaI,KpnI,KspI,NsiI,PstI,PvuI,SacI,SphI,SstI,SstIIのうちいずれかより選択される、請求項4に記載のアダプター結合DNA断片製造方法。
【請求項7】
DNAリガーゼがATP要求性のDNAリガーゼである、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載のアダプター結合DNA断片製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の方法でアダプター結合DNA断片を得た後、該アダプター結合DNA断片を鋳型にし、DNA断片を増幅させることを特徴とする、アダプター結合DNA断片の製造方法。
【請求項9】
被検細胞のゲノムDNAにおける既知配列の5’上流または3’下流に存在する未知配列を含むアダプター結合DNA断片を製造する方法であって、請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の方法でアダプター結合DNA断片を得た後、該アダプター結合DNA断片を鋳型とし、既知配列から設計されたプライマーXと、アダプター上に設計されたプライマーYとを用い、両プライマーに挟まれた領域を増幅することを特徴とする、未知配列を含んだアダプター結合DNA断片の製造方法。
【請求項10】
耐熱性DNAポリメラーゼを用いることを特徴とする、請求項9に記載の未知配列を含んだDNA断片の製造方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の方法によりDNA断片を増幅した後、これを鋳型とし、既知配列から設計されたプライマーXの更に下流の配列より設計されたプライマーX’と、アダプター上に設計されたプライマーYの更に下流の配列より設計されたプライマーY’とを用い、両プライマーに挟まれた領域を増幅することを特徴とする、未知配列を含んだDNA断片の製造方法。
【請求項12】
制限酵素がEcoRIである、請求項5に記載のアダプター結合DNA断片製造方法。
【請求項13】
配列番号1及び配列番号2に記載の配列からなるアダプターを用いることを特徴とする、請求項12に記載のアダプター結合DNA断片製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、制限酵素とオリゴDNAからなるアダプターを用いたDNA断片の製造方法に関し、より詳しくは、突出末端を形成する制限酵素と、前記突出末端と相補的な突出末端を持ちかつ突出先端または切欠き部に重複した1塩基が存在する2本鎖のオリゴDNAアダプターとを用いたDNA断片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物の機能や性質の解析において、DNAやRNAなどの遺伝子情報を利用した分子遺伝学的解析は、極めて有用な手段として様々な場面で用いられている。それらの最も基礎的な技術として、目的とする遺伝子がコードする塩基配列の情報を明らかにすることが必要である。ヒトやシロイヌナズナ、大腸菌など、すでにゲノムの全塩基配列が決定された生物であれば、これらの配列のデータベースを用いることができるが、地球上のほとんどの生物は未だ断片的な遺伝情報しか明らかにされておらず、新規な有用微生物や特定の生命現象を示すモデル生物など、これらの生物の解析には未知の遺伝子情報を明らかにする必要がある。
【0003】
ゲノム情報が明らかではないこれらの生物から遺伝情報を得る手段として、現在PCRを介した技術が広く用いられている。同一の機能を有する酵素タンパク質では生物種間で特定のアミノ酸配列が保存されていることに着目し、これらのアミノ酸配列をそのアミノ酸配列をコードする塩基配列に変換し、これをプライマーとして、この配列の上流または下流に位置する別の保存されたアミノ酸配列から同様にプライマーを作成し、両プライマーで挟まれた領域を増幅するというものである。しかしながらこの方法は、保存性の高い2以上の領域に挟まれた配列を明らかにするためには利用できるが、保存性の低い領域、特に遺伝子の5’側上流域や3’側下流域などを明らかにするためには使えないという問題点があった。
【0004】
上記の問題点を解決するため、ゲノムDNAから転写されるmRNAがpoly A tailを持つことを利用し、poly Tプライマーを用いた逆転写を行ったり、逆転写で得られたcDNAの末端にアダプターと呼ばれるオリゴDNAを結合させ、この配列上に設計したプライマーを用いて増幅反応を行う「RACE(Rapid amplification of cDNA ends)」と呼ばれる手法が開発されてきている(非特許文献1)。しかしRACE法はmRNAを増幅の出発点としているため、転写調節因子など非アミノ酸配列領域や繰り返し配列等のモチーフの解析には用いることができず、またpoly Tプライマーを用いる場合には、全てのmRNAがpoly A tailを有するため特異性に問題があった。
【0005】
一方でmRNAやcDNAを出発点とせず、ゲノムDNAから未知配列を検出するための様々な手法も、開発されてきている。RACE法をゲノムDNAに応用したRAGE(Rapid amplification of genomic ends)法(非特許文献2,7)、Inverse PCR法(非特許文献3)、カセットPCR法(非特許文献4-6)などがそれであり、特にカセットPCR法は任意のオリゴDNAアダプターを切断したゲノムDNAに結合させることから、設計が容易であるため多数の改良がなされている(特許文献1-3)。

しかしながら、カセットPCR法においては、制限酵素で切断したゲノムDNA全てに対してアダプターを結合させるため、標的配列を増幅させる際の特異性に大きな問題点があった。突出末端を形成する様に設計されたアダプターは、アダプター同士も相補的な配列を有しているため結合可能であり、アダプター同士の結合が標的配列とアダプターとの結合を著しく低下させるおそれがあるのと同時に、例えばPCRなどで標的配列を増幅させようとする場合に非特異的産物として増幅され、解析を妨げるおそれがあった。この問題点を回避するためには複数の制限酵素による処理や複雑な形状のアダプター設計、多数の工程を経る必要があるなど、未だ十分な正確さと利便性を有しているとは言えないのが現状であった。

【特許文献1】特開平8-242897 遺伝子の複製及び増幅方法
【特許文献2】特開平11-196874 DNA断片分析法
【特許文献3】特開2001-061486 選択的な制限断片増幅:一般的なDNAフィンガプリント法
【非特許文献1】Ohara O.et al.1989.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5673-5677.
【非特許文献2】Cormack R.S.&Somssich.I.E.1997.Gene 194:273-276.
【非特許文献3】Ochman H.et al.1988.Genetics 120:621-623.
【非特許文献4】Rosental A.&Jones D.S.C.1990.Nucleic Acids Res.18(10):3095-3096.
【非特許文献5】Siebert P.D.et al.1995.Nucleic Acids Res.23(6):1087-1088.
【非特許文献6】Laging M.et al.2001.Nucleic Acids Res.29(2)e8.
【非特許文献7】Park D.J.2005.Electronic J.Biotech.8 No.2.
【非特許文献8】Hiwatashi K.1968.Genetics 58:373-386.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の現状に鑑み、本発明は、制限酵素で切断されたゲノムDNAとオリゴDNAアダプターを用い、少ない工程と簡単な構成からなり、かつ精度の高い未知配列の増幅を可能にする、DNA断片の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決のため、本発明者らは、突出末端(Cohesive end)を形成する制限酵素を用い、この制限酵素が形成する末端と相補的な突出末端を形成する2本鎖のオリゴDNAアダプターを設計し、DNAリガーゼによる結合を行って、アダプター結合DNA断片の製造を試みた。この過程において、従来の様に制限酵素切断による突出末端とアダプターが形成する末端が完全に相補的な形状ではなく、アダプターの突出末端の突出先端に、ゲノムDNAの制限酵素断片の切欠き部に存在する1塩基が重複して存在するよう設計した場合、リガーゼが条件特異的エキソヌクレアーゼ活性を示して重複する塩基を削除し、突出末端同士の結合を行ってアダプター結合DNA断片を形成すること、更にこの様に設計されたアダプター同士はリガーゼによっても結合せず、特異的に標的とする遺伝子断片を増幅可能であるという事実を見いだし、この概念をアダプターの突出末端の突出先端または切欠き部にゲノムDNAの制限酵素断片の切欠き部または突出末端の突出先端に存在する塩基と同一種の塩基を1塩基重複して存在させておく場合にまで拡張し、実際に原生動物の一種ミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)からの新規なカタラーゼ遺伝子及びその上下流に存在する調節領域の単離を行って、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明の第の態様は、被検細胞のゲノムDNAから、既知配列からなるオリゴDNAアダプターを結合したDNA断片を製造する方法であって、下記工程を含むことを特徴とする、アダプター結合DNA断片製造方法を提供する。
(1)ゲノムDNAを、5’突出末端を形成する制限酵素で切断し、制限酵素断片を得る工程
(2)前記制限酵素が形成する突出末端と相補的な塩基配列を有する突出末端を持ち、更にその突出先端に前記制限酵素断片の切欠き部に存在する塩基と同一種の塩基が1つ付加され、該塩基がリン酸化された1組の2本鎖オリゴDNAからなるアダプターを、DNAリガーゼを用いて工程(1)で得られた制限酵素断片に結合させる工程
【0010】
本発明の第の態様は、下記工程を含むことを特徴とする、第1の態様に記載のアダプター結合DNA断片製造方法を提供する。
(3)工程(1)で得られた制限酵素断片の5’突出末端を、アルカリフォスファターゼで脱リン酸化する工程
【0011】
本発明の第の態様は、工程(2)が下記工程で置き換えられることを特徴とする、第1の態様に記載のアダプター結合DNA断片製造方法を提供する。
(2’)前記制限酵素が形成する突出末端と相補的な塩基配列を有する突出末端を持ち、更にその切欠き部に前記制限酵素断片の突出先端に存在する塩基と同一種の塩基が1つ付加され、該塩基がリン酸化された1組の2本鎖オリゴDNAからなるアダプターを、DNAリガーゼを用いて工程(1)で得られた制限酵素断片に結合させる工程
【0012】
本発明の第の態様は、被検細胞のゲノムDNAから、既知配列からなるオリゴDNAアダプターを結合したDNA断片を製造する方法であって、下記工程を含むこと特徴とする、アダプター結合DNA断片製造方法を提供する。
(A)ゲノムDNAを、3’突出末端を形成する制限酵素で切断し、制限酵素断片を得る工程
(B)前記制限酵素が形成する3’突出末端と相補的な塩基配列を有する突出末端を持ち、更にその切欠き部に前記制限酵素断片の突出末端に存在する塩基と同一種の塩基が1つ付加され、前記付加された塩基がリン酸化された1組の2本鎖オリゴDNAからなるアダプターを、DNAリガーゼを用いて工程(A)で得られた制限酵素断片に結合させる工程
【0014】
本発明の第の態様は、制限酵素が、AccI,AflIII,Alw44I,AsnI,AvaI,AvaII,BamHI,BclI,BglII,BlnI,BssHII,BstEII,ClaI,DdeI,EclXI,EcoRI,EcoRII,HindIII,HinfI,HpaII,MluI,MseI,MspI,MvaI,NarI,NciI,NeoI,NdeI,NheI,NotI,PinAI,SalI,ScrFI,SpeI,StyI,TaqI,XbaI,XhoIのうちいずれかより選択される、第1から第3の態様のうちいずれか1つに記載のアダプター結合DNA断片製造方法を提供する。
【0015】
本発明の第の態様は、制限酵素が、ApaI,BanII,BglI,BsmI,CfoI,HaeII,HhaI,KpnI,KspI,NsiI,PstI,PvuI,SacI,SphI,SstI,SstIIのうちいずれかより選択される、第の態様に記載のアダプター結合DNA断片製造方法を提供する。
【0016】
本発明の第の態様は、DNAリガーゼがATP要求性のDNAリガーゼである、第1から第の態様のうちいずれか1つに記載のアダプター結合DNA断片製造方法を提供する。
【0017】
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の方法でアダプター結合DNA断片を得た後、該アダプター結合DNA断片を鋳型にし、DNA断片を増幅させることを特徴とする、アダプター結合DNA断片の製造方法を提供する。
【0018】
被検細胞のゲノムDNAにおける既知配列の5’上流または3’下流に存在する未知配列を含むアダプター結合DNA断片を製造する方法であって、請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の方法でアダプター結合DNA断片を得た後、該アダプター結合DNA断片を鋳型とし、既知配列から設計されたプライマーXと、アダプター上に設計されたプライマーYとを用い、両プライマーに挟まれた領域を増幅することを特徴とする、未知配列を含んだアダプター結合DNA断片の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の第10の態様は、耐熱性DNAポリメラーゼを用いることを特徴とする、第の態様に記載の未知配列を含んだDNA断片の製造方法を提供する。
【0020】
請求項9または請求項10に記載の方法によりDNA断片を増幅した後、これを鋳型とし、既知配列から設計されたプライマーXの更に下流の配列より設計されたプライマーX’と、アダプター上に設計されたプライマーYの更に下流の配列より設計されたプライマーY’とを用い、両プライマーに挟まれた領域を増幅することを特徴とする、未知配列を含んだDNA断片の製造方法を提供する。

【0021】
本発明の第12の態様は、制限酵素がEcoRIである、第の態様に記載のアダプター結合DNA断片製造方法を提供する。
【0022】
本発明の第13の態様は、配列番号1及び配列番号2に記載の配列からなるアダプターを用いることを特徴とする、第12の態様に記載のアダプター結合DNA断片製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明を利用することにより、種々の生物のゲノム上に存在する既知配列から、未知の配列を効率よく、しかも簡便に単離することが可能となる。これにより、新しい遺伝子の全長決定、遺伝子の上下流に位置する調節配列の探索、くり返しモチーフなど遺伝子をコードしない領域の探索など、これまで困難であった未知領域の塩基配列の解析が容易になると期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明を実施するための最良の形態を述べる。本発明の第1の態様は、被検細胞のゲノムDNAから、既知配列からなるオリゴDNAアダプターを結合したDNA断片を製造する方法であって、(i)ゲノムDNAを、突出末端を形成する制限酵素で切断し、制限酵素断片を得る工程、(ii)前記制限酵素が形成する突出末端と相補的な塩基配列を有する突出末端を持ち、前記突出末端の突出先端または切欠き部に、前記制限酵素断片の切欠き部または突出単に存在する塩基と同一種の塩基が1つ付加された1組の2本鎖オリゴDNAからなるアダプターを、DNAリガーゼを用いて工程(i)で得られた制限酵素断片に結合させる工程からなる、アダプター結合DNA製造方法を提供する。本発明の最も基本的な構成は、制限酵素によって形成された相補的な突出末端同士のDNAリガーゼを用いた結合であって、1塩基過多の(One-base-excess)2本鎖オリゴDNAアダプターを用いるというものである。DNAリガーゼは突出末端、平滑末端の両方を、5’側のリン酸基と3’側の水酸基をリン酸結合を介して結合させる酵素であるが、突出末端同士が相補的な配列からなる場合、DNAリガーゼによる結合前に相補鎖同士がゆるやかな結合状態(Annealing)にあると考えられ、ここにDNAリガーゼが結合して末端同士を結合させるときに余分な(重複する)塩基がある場合、DNAリガーゼがこの重複する1塩基を削除するという条件特異的なエキソヌクレアーゼ活性を示すという新たな知見を利用するものである。アダプターの配列、制限酵素の種類、DNAリガーゼの種類やそれぞれの反応溶液、反応条件等は、必要に応じて適宜利用可能なものの中から選択すれば良く、本発明を限定するものではない。
【0027】
本発明の第2から第4の態様は、5’突出末端を形成する制限酵素を用いたアダプター結合DNA製造方法を提供する。図1に本態様の模式図を示す。図1aは制限酵素で切断したDNA断片の一方(右側)と、これと同じ突出末端を有するオリゴDNAアダプター(左側)を表す。DNA鎖の上下流は5’、3’で表している。アダプターには突出末端の更に先端に、切欠き部側に存在する塩基と同一種の塩基(○で示す)が重複して存在しており、アダプター側の重複塩基はリン酸化(Pで表す)されている。5’リン酸化は制限酵素断片、アダプターどちらであっても良いが、調製の容易さからアダプター側がリン酸化されているのが好ましい。ここにDNAリガーゼが作用することにより、相補鎖同士が結合しつつ、重複した塩基が1つ削除されて末端同士も結合する(図1b)。一方、アダプター同士は、○で示した塩基のため相補的な結合が形成されず、DNAリガーゼによっても結合しない(図1c)。この様な原理に基づいて、本発明は2本鎖オリゴDNAアダプターと制限酵素断片とを結合させる方法を提供するものである。
一方、制限酵素で切断されたゲノムDNAは、両側の末端が同じ突出末端を有しており、DNAリガーゼはこの両端同士の結合(Inverse PCRにはこの結合が利用される)や切断されたDNA断片同士の結合も同様に触媒することが可能である。そこで、制限酵素断片同士を結合させず、アダプターと制限酵素断片とを確実に結合するための方法として、制限酵素断片の末端をアルカリフォスファターゼで処理する工程を含むことが有効である。アルカリフォスファターゼはDNAの5’側に露出したリン酸基を切断するため、この処理を受けた断片同士はリガーゼによるリン酸結合を受けなくなり、アダプターの5’側リン酸基と制限酵素断片のみが結合できるようになる。アルカリフォスファターゼ処理工程は、制限酵素断片を得た後に適当な緩衝液中で行っても良いし、また制限酵素に比べて塩類溶液の条件が緩やかであることから、制限酵素処理と同時に制限酵素用反応溶液中で行っても良い。酵素処理の反応時間、反応条件などは利用可能なものの中から適宜選択すれば良く、本発明を限定するものではない。
【0028】
アダプター上に設ける重複する塩基としては、前記の様に5’突出末端の更に先に切欠き部に存在する1塩基を重複させても良いし、反対にアダプターの切欠き部に制限酵素断片の突出先端に存在する1塩基を重複させても良い。
【0029】
上記態様における5’突出末端を形成する制限酵素としては、AccI,AflIII,Alw44I,AsnI,AvaI,AvaII,BamHI,BclI,BglII,BlnI,BssHII,BstEII,ClaI,DdeI,EclXI,EcoRI,EcoRII,HindIII,HinfI,HpaII,MluI,MseI,MspI,MvaI,NarI,NciI,NeoI,NdeI,NheI,NotI,PinAI,SalI,ScrFI,SpeI,StyI,TaqI,XbaI,XhoIのうちいずれかより選択される制限酵素が好適である。これらは1~5塩基の5’突出末端を形成する制限酵素であるが、突出部(Overhang)が多い方が相補的結合が強くなることが期待されるため、この中でも特にAflII,Alw44I,AvaI,AvaII,BamHI,BclI,BglII,BlnI,BssHII,BstEII,EclXI,EcoRI,HindIII,HinfI,MluI,NcoI,NheI,NotI,PinAI,SalI,SpeI,StyI,XbaI,XhoIが好適であり、更に入手のしやすさからEcoRI,BamHI,HindIII,NotI,XbaI,XhoIが好適であって、特にEcoRIは最も一般的な制限酵素の1種であり好適である。
【0030】
上記に示した制限酵素を用いる際には、その認識する配列(制限酵素サイト)のゲノム中での出現頻度に注意する必要がある。EcoRIなど配列の出現頻度の高い制限酵素で切断した場合、相対的に短い制限酵素断片が多数形成され、逆に出現頻度の低い制限酵素(Rare cut)では相対的に長い制限酵素断片が小数形成される。この点を考慮し、製造しようとするアダプター結合DNA断片に合わせて制限酵素は適宜選択すれば良い。
【0031】
本発明の第5の態様は、3’突出末端を形成する制限酵素を用いたアダプター結合DNA断片の製造方法を提供する。図2aに本態様の模式図を示す。3’突出末端を形成する制限酵素で切断されたゲノムDNA制限酵素断片(右側)と、前記突出末端に相補的な突出末端を持つアダプター(左側)とをDNAリガーゼを用いて結合させる反応において、アダプターの3’突出末端に制限酵素断片の5’側切欠き部に存在する塩基(○で表す)が重複して存在している場合、DNAリガーゼがエキソヌクレアーゼ活性を示してこの重複塩基を削除し、突出末端同士を結合させる。アダプター同士が結合しないのは図1と同様である。
【0032】
本発明の第6の態様は、3’突出末端を形成する制限酵素を用いたアダプター結合DNA断片の製造方法の別態様を提供する。図2bに本態様の模式図を示す。第5の態様においては、アダプターにある重複する塩基(○で表す)が3’側の突出末端ではなく切欠き部に存在する。DNAリガーゼがエキソヌクレアーゼ活性を示して重複塩基を削除し、突出末端同士を結合させるのは第5の態様に同様である。
【0033】
第5、第6の態様における3’突出末端を形成する制限酵素としては、ApaI,BanII,BglI,BsmI,CfoI,HaeII,HhaI,KpnI,KspI,NsiI,PstI,PvuI,SacI,SphI,SstI,SstIIから選択される制限酵素があげられる。この中でも、突出末端の突出部が長い制限酵素であるApaI,BanII,HaeII,KpnI,NsiI,PstI,SacI,SphI,SstIが好適であり、入手の容易さなどからPstI,SacIなどが好適である。
【0034】
本発明におけるDNAリガーゼは、突出末端同士のDNAを結合させる能力があればどの様なものでも良く、その由来などが本発明を限定するものではないが、ATP要求性のDNAリガーゼが好ましく、特に分子生物学分野で広く用いられているT4 DNAリガーゼが好適である。
【0035】
本発明の提供する方法で製造されるアダプター結合DNA断片は、これを鋳型にしてDNA増幅を行うことにより、既知配列の情報から未知配列を含んだDNA断片を増幅させ、この配列コードする塩基配列を明らかにすることが可能である。図3aには、本発明における1塩基過多(One-base-excess)2本鎖オリゴDNAアダプターの構成例を示した。アダプターは任意のプライマーの配列を含むプライマー部分と、制限酵素によって形成される突出末端に相補的な配列を持つ制限酵素サイト、更に突出末端の切欠き部に存在する塩基と同種の5’リン酸化塩基(”余分な”塩基)からなる2本鎖オリゴDNAである。図3bにはゲノムDNAの制限酵素断片と1塩基過多アダプターを結合させたDNA断片と、これを鋳型にしたDNA断片の増幅方法の模式図を示した。アダプター上に設計されたプライマーXと、既知配列から未知配列の方向に向かって設計されたプライマーYとを用いることによって、この両プライマーに挟まれた領域のDNA、例えば未知領域を含んだDNA断片を増幅・製造することが可能である。DNAの増幅にはPCRをはじめとする耐熱性ポリメラーゼを用いた方法が適している。

【0036】
増幅されるDNA断片の特異性を更に高めるため、アダプター上に予め2種類のプライマーを設計しておき、1回目のPCRで増幅したDNA断片を鋳型にした2ndPCR(Nested PCR)を行うことも有効である。図4にNested PCRの例を模式的に示した。アダプター上に予めプライマーX,その下流にX’を設計しておき、また既知配列からプライマーY,その下流にY’を設計しておき、XとYを用いて1stPCRを行う。こうして得られたDNA断片を鋳型に、プライマーX’とY’を用いて2ndPCRを行う。たとえ1stPCRによって標的配列以外の非特異的な産物が増幅されることがあったとしても、2ndPCRを行うことにより特異性の高い領域を選択することが可能となり、未知配列(□で囲んだ領域)を含むDNA断片をより精度良く増幅することが可能である。
【0037】
アダプターの配列、その上に設計するプライマー、制限酵素サイトなどは目的に応じて適宜設計すれば良く、何ら本発明を限定するものではないが、例えばプライマーは分子生物学分野において「ユニバーサルプライマー」と呼ばれる一連のプライマー、特に分子遺伝学で広く用いられているプラスミドの配列に対応したプライマーなどが好適である。このとき、増幅した断片をクローニングしてシークエンスなどを行う場合には、クローニングに用いるプラスミドには含まれない配列をプライマーとして設計する必要がある。アダプターの設計例として、ユニバーサルプライマーGL1、EcoRIサイト、”余分な”1塩基を含んだ配列番号1及び配列番号2に記載の配列からなるアダプターを、図5に示した。プライマーの上流及びEcoRIサイトとの間にある配列はいわば緩衝地帯ともいうべき任意の塩基配列であり、ある作用を示す塩基配列と塩基配列の間にはこうした緩衝部がある方が良いという分子生物学分野における経験則から設計・挿入されるものである。
制限酵素断片とアダプターとの結合における両者の比率などについても、材料に応じて適宜調製すればよく、本発明を限定するものではないが、例えば制限酵素断片をアルカリフォスファターゼ処理しない場合には、1μgの制限酵素断片を含む5μlの溶液に対して、0.001-0.1pmol、好適には0.004-0.04pmolのアダプターを加えて結合させるのが良い。
【0038】
本発明は、突出末端同士の結合に関与するDNAリガーゼについて、条件特異的なエキソヌクレアーゼ活性、すなわち、1塩基以上10塩基以下の突出末端を有する2本鎖DNA(a)と、前記突出末端と相補的な突出末端を有する2本鎖DNA(b)の、突出末端どうしの結合反応において、(a)の突出末端または切欠き部に(b)の切欠き部または突出末端に存在する1塩基と同一種の塩基が重複して存在するとき、前記重複した塩基を削除する活性を有する、エキソヌクレアーゼをも提供する。理論的には突出末端は何塩基であっても相補的ならば結合可能であるが、一般的には制限酵素が作り出す範囲付近の突出数、すなわち1塩基以上10塩基以下の突出末端同士の結合に適用可能であり、より好ましくは2塩基以上5塩基以下の突出末端同士の結合に適用可能である。こうしたエキソヌクレアーゼの例としてはATP要求性のDNAリガーゼがあげられ、代表例はT4 DNAリガーゼである。以下に本発明の実施例を述べるが、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
(ミドリゾウリムシからのゲノムDNAの抽出)本実施例の材料として、淡水中に生息し細胞内にクロレラ属藻類を共生させる原生動物の一種、ミドリゾウリムシParamecium bursariaを用い、ゲノムDNAの抽出には、共生藻のゲノムの混入を防ぐため、暗所培養により細胞内から共生藻を取り除いた株であるMiw2w株(採集地:宮城県亘理町)を用いた。Hiwatashiの方法(非特許文献8)により試験管培養されたミドリゾウリムシ約数万細胞を、手回し遠心器で集めて1.5mlチューブに移し、これを更に10000rpm、1分間遠心して上清を除き、DNA抽出バッファー(100mM NaCl,10mM Tris,25mM EDTA,0.5% SDS)を400μl加えて静かに懸濁させ、細胞を溶解した。ここに400μlのフェノール-クロロホルム(1:1)を加えて5分間静かに混合し、14000rpmで10分間、4℃で遠心し、水相を新しい1.5mlチューブに移して前記フェノール-クロロホルムを加え、更に5分間静かに混合して遠心(14000rpm、10分間、4℃)した。水相を新しい1.5mlチューブに移し、エタノール沈澱を行ってDNAペレットを得、これを乾燥させた後、30μlのTE(Tris-EDTA buffer)に溶かして10℃にて保存した。十分にDNAが溶解した後、溶液中のDNA濃度を分光光度計を用いて測定した。
【0040】
(ゲノムDNAのEcoRI処理)およそ5μgのゲノムDNAを、制限酵素EcoRI(New England Biolabs,Inc.)を5U用い、Customer’s preferenceに従って10μlの系で切断(37℃、overnight)した。処理後、フェノール-クロロホルム抽出及びエタノール沈澱を行ってDNAの制限酵素断片をペレットにし、5μlのTEを加えて溶解させた。
【0041】
(アダプターの調製)EcoRIサイトを持ったオリゴDNAアダプターとして、配列番号1及び配列番号2の配列を持つよう設計された合成オリゴDNA(Fasmac,JPN)を用い、100μMとなるようTEで溶解した。これを原液とし、両溶液20μlずつを混合し、サーマルサイクラー(Gene Amp PCR System 2400,Perkinelmer Inc.)を用い、[95℃,5min;65℃,5min]のプログラムで1本鎖のオリゴDNA2つを2本鎖化した。
【0042】
(カタラーゼ遺伝子の保存領域の探索)ミドリゾウリムシのゲノムDNAからカタラーゼ遺伝子を単離するため、NCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を用い、既に塩基配列及びアミノ酸配列が明らかな複数種の生物、すなわちヒト(Homo sapiens)、マウス(Mus musclus)、ノルウェーラット(Rattus norvegicus)、線虫の一種(Haemonchus contortus)、イネ(Oliza sativa)、酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)のアミノ酸配列情報を参照し、保存性の高い領域としてヒトカタラーゼの第68-79アミノ酸配列及び第363-371アミノ酸からプライマーを設計した(配列番号3,4)このプライマー及びゲノムDNA(未切断)、増幅用としてExTaq(タカラバイオ)を用い、表1aの組成の反応溶液を調製し、サーマルサイクラーを用いて表2bのプログラムでPCRを行った。PCR後の反応溶液を1.5%アガロースゲルを用いて電気泳動し、臭化エチジウムで染色してトランスイルミネーターでバンドを確認した。以後塩基配列情報の解析には、DNAsys(Hitachi Soft)、DNAdynamo(BlueTractorSoftware,Ltd)、SeqConv software(Gsun)を適宜用いた。
【表1】
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【0043】
PCRの結果、900-1000bpのシングルバンドが確認されたため、PCR産物をpGEM-T easy vectorシステム(Promega Corp.)を用いてクローニングし、ABI3100,ABI377,ABI310DNAシークエンサー(Applied Biosystems)を用いてその塩基配列を決定した。ここで明らかになった配列の5’側及び3’側から、上流向きプライマー(配列番号5)及び下流向きプライマー(配列番号6)を設計した。
【0044】
(アダプターのライゲーション)上述の方法で作製したアダプター及びEcoRI切断ゲノムDNA(制限酵素断片)を用いて、アダプターのライゲーション反応を行った。ライゲーション反応は5μlの系で行い、約1μgの制限酵素断片、1.5UのT4 DNA Ligase(Promega Inc.)を含むよう調製した。アダプターの濃度の最適化を行うため、アダプターの終濃度が4μM、0.4μM、0.04μM、0.004μMとなる4種類の反応溶液を調製し、またアダプター0.04μMのみを含むライゲーション溶液も合わせて調製した。ライゲーションは10℃、Overnight(8h~)行った。
【0045】
(カタラーゼ5’上流領域の増幅)ライゲーション反応後のアダプター結合DNA断片を鋳型とし、上述のPCRと同じ系(鋳型のみ異なる)を用い、ユニバーサルプライマーGL1と配列番号5のプライマーを用いて、カタラーゼの5’側既知配列とアダプターとで挟まれた領域のPCRを行った。Negative controlとして、EcoRI未切断ゲノムを鋳型としたものも調製した。PCRのプログラムとしては、下記表2のプログラムを適用した。PCR後の反応溶液は1.5%アガロースゲル電気泳動を行い、臭化エチジウムで染色してトランスイルミネーターでバンドを確認した。
【表2】
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【0046】
図6に、アダプター結合DNA断片を鋳型とし、アダプターと5’上流向きプライマーを用いたPCRの結果を示す。写真はトランスイルミネーターでの階調を反転させたものであり、レーン1,8は分子量マーカーとしてλ/EcoRI/HindIIIを泳動したものであり、レーン8右側の数字は分子量(bp)を示す。レーン2はNegative controlとしてEcoRI未切断ゲノム断片を鋳型にしたPCRの結果を表す。このレーンにバンドなどが見られないことから、アダプター上のプライマーと5’上流向きプライマーで増幅される領域はゲノム上には無いことが確認された。レーン3はアダプターのみをライゲーションさせたものを鋳型にしたものであり、このレーンでバンドが見られないことから、アダプター同士が結合したものを鋳型にして増幅されるDNA断片が無いことが確認された。レーン4-7はアダプターのライゲーション時の終濃度がそれぞれ0.004μM、0.04M、0.4M、4MとしたときのPCRの結果であり、0.004μM及び0.04μMのレーンにおいて、図中矢印で示した部分にバンドが確認された。0.4M、4Mと高濃度のアダプターを結合させたものではスメアーな産物が見られたが、これは低分子断片の両端にアダプターが結合したもの、及び低分子断片同士が結合したことによる影響と考えられた。シングルバンドが観察された0.04μMのPCR産物を上述のpGEM-T easy vectorにクローニングし、前記同様にシークエンスを行って塩基配列を決定した。
【0047】
下記表3に、配列番号7に記載の上記シークエンス結果を示す。本配列の5’側には、表中「Primer GL1」及び「Adaptor」で示した配列があり、本配列が確かにアダプターから読まれている事が示された。更にアダプターの末端はEcoRIサイトである「GAATTC」があり、これはミドリゾウリムシのゲノムDNAがEcoRIで切断され、ここに同じ形のサイトを持つアダプターが結合したことを示している。更に、EcoRIサイト「GAATTC」の最後のCが重複していないことから、ライゲーションの際にこの重複する塩基が1つ削除された事が示された。NCBI Blastによる解析の結果、本配列の下流には、193番目の開始コドンATGから始まるカタラーゼがコードされており、これ以降の配列には繊毛虫以外の生物では終止コドンとして用いられるTAA、TAGがグルタミン酸として含まれること、また400番目付近にはGT-AGルールに従った23塩基という繊毛虫特有の短いイントロンが含まれるなど、この配列がミドリゾウリムシのゲノム由来であることが示された。また開始コドンの上流にはATリッチなTATA box様配列、GATA配列などが見られ、本発明により遺伝子の上流に位置する調節領域の単離も行えることが示された。
【表3】
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【実施例2】
【0048】
(カタラーゼ3’下流領域の増幅)5’上流領域の増幅に用いたのと同様のアダプター結合ゲノムDNA断片を新たに製造し、ユニバーサルプライマーGL1と3’下流向きプライマー(配列番号6)とを用いたPCR反応を、上記と同様の条件にて行った。PCRの結果、5’上流の時と同様、Negative control及びアダプターのみライゲーションのサンプルではバンドが見られなかったのに対し、アダプター濃度が0.004μM及び0.04μMのとき800-900bpの付近にシングルバンドが確認され、0.4μM、4μMではスメアーなバンドが見られた。0.04μMのPCR産物をクローニングし、シークエンスを行って塩基配列を決定した。
【0049】
下記表4に、配列番号8に示すシークエンスの結果を示した。5’上流の解析と同様、本配列は設計したアダプターの配列を持っており、またEcoRIサイトを有していることから、この配列が確かにEcoRI切断ゲノムDNA断片とアダプターの結合による配列を増幅したものである事が示された。
【表4】
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【0050】
表4の配列は相補鎖の配列であるため、このうちアダプターを除いた部分をコード鎖に変換したものを配列番号9及び下記表5に示した。この配列において、285番目のTGAが終止コドンであり、終止コドンの下流にはPoly A付加シグナル(AATAAA)が存在していた。終止コドンの約60塩基下流にEcoRIサイトがあり、5’上流同様、遺伝子をコードした領域の下流に含まれる配列を、本発明の方法によって検出できることが示された。
【表5】
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【0051】
本発明を用いたアダプター結合DNA断片の解析結果と、保存性の高い領域の増幅の結果を合わせ、ミドリゾウリムシのゲノム中にコードされたカタラーゼ遺伝子の全長が明らかにされた。配列番号10に、カタラーゼ遺伝子の全長を記す。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明を利用することにより、分子遺伝学分野において有用なゲノム解析手段を提供することが可能となる。有用な新規生物からの遺伝子の単離、遺伝子の調節領域の解析、くり返しモチーフなどの探索などに、広く応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明におけるアダプター結合DNA断片製造方法(5’突出末端を形成する制限酵素を用いた場合)の模式図を示す。
【図2】本発明におけるアダプター結合DNA断片製造方法(3’突出末端を形成する制限酵素を用いた場合)の模式図を示す。
【図3】本発明におけるアダプターの構成と、このアダプターを結合させたDNA断片から未知配列を含んだDNAを増幅させる方法の模式図を示す。
【図4】本発明における”Nested PCR”を用いたDNA断片の増幅方法の模式図を示す。
【図5】本発明の実施例で用いたアダプターの構成と配列を示す。
【図6】本発明のアダプター結合DNA断片製造方法をミドリゾウリムシのゲノムDNAに適用し、カタラーゼ遺伝子の未知配列を増幅した電気泳動像を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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