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明細書 :心肺機能計測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4998896号 (P4998896)
登録日 平成24年5月25日(2012.5.25)
発行日 平成24年8月15日(2012.8.15)
発明の名称または考案の名称 心肺機能計測装置
国際特許分類 A61B   5/00        (2006.01)
A61B   5/08        (2006.01)
FI A61B 5/00 101R
A61B 5/08
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2008-500568 (P2008-500568)
出願日 平成19年2月16日(2007.2.16)
国際出願番号 PCT/JP2007/052876
国際公開番号 WO2007/094464
国際公開日 平成19年8月23日(2007.8.23)
優先権出願番号 2006039126
優先日 平成18年2月16日(2006.2.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年1月21日(2010.1.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】江 鐘偉
【氏名】崔 三晋
個別代理人の代理人 【識別番号】100093687、【弁理士】、【氏名又は名称】富崎 元成
【識別番号】100106770、【弁理士】、【氏名又は名称】円城寺 貞夫
【識別番号】100139789、【弁理士】、【氏名又は名称】町田 光信
審査官 【審査官】上田 正樹
参考文献・文献 特開平06-319712(JP,A)
特開2003-284697(JP,A)
特表昭62-502819(JP,A)
特開昭64-037933(JP,A)
特開2002-224051(JP,A)
特開2004-275563(JP,A)
特開昭62-290442(JP,A)
調査した分野 A61B 5/00
A61B 5/08
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリマー圧電体フィルムを2枚の薄層状の生体電極で挟んで構成された圧電フィルムセンサと、該圧電フィルムセンサで取得された呼吸信号と心拍信号との圧力変動を示す信号に対し高周波ノイズをカットするローパスフィルタと、該ローパスフィルタを通った後に増幅された信号に対しベースライン変動及び高周波数ノイズをカットするバンドパスフィルタと、前記圧電フィルムセンサにおける飽和状態を解消するように接続されたコンパレータ回路及びショート回路と、前記圧電フィルムセンサで取得された信号に対しベースライン変動に影響する低周波数成分と呼吸信号に必要のない高周波数成分をカットしデジタルローパスフィルタにより呼吸信号を抽出し時間遅れ補償を行った後にゼロクロース点を求め該ゼロクロース点の間隔から吸気間隔及び呼気間隔を算出する信号処理部とを備え、圧電フィルムセンサで取得された信号から呼吸情報を抽出できるようにしたことを特徴とする心肺機能計測装置。
【請求項2】
ポリマー圧電体フィルムを2枚の薄層状の生体電極で挟んで構成された圧電フィルムセンサと、該圧電フィルムセンサで取得された呼吸信号と心拍信号との圧力変動を示す信号に対し高周波ノイズをカットするローパスフィルタと、該ローパスフィルタを通った後に増幅された信号に対しベースライン変動及び高周波数ノイズをカットするバンドパスフィルタと、前記圧電フィルムセンサにおける飽和状態を解消するように接続されたコンパレータ回路及びショート回路と、前記圧電フィルムセンサで取得された信号に対し呼吸信号の影響と心拍信号に必要のない高周波数成分をカットして心拍信号を抽出しローパスフィルタによりピーク信号を検出しやすくしてからピーク間隔を求める信号処理部を備え、圧電フィルムセンサで取得された信号から心拍情報を抽出できるようにしたことを特徴とする心肺機能計測装置。
【請求項3】
前記ローパスフィルタのカットオフ周波数を500Hz以下、前記バンドパスフィルタのカットオフ周波数を0.01Hzから30Hzとしたことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の圧電フィルムセンサを用いた心肺機能計測装置。
【請求項4】
ポリマー圧電体フィルムを2枚の薄層状の生体電極で挟んで構成された圧電フィルムセンサと、該圧電フィルムセンサで取得された信号を収集し処理する圧電フィルムセンサ用信号収集回路と、2枚の導電性繊維からなる生体電極で構成される導電性繊維センサと、該導電性繊維センサで取得された信号を収集し処理する導電性繊維センサ用信号収集回路とを備えてなり、前記圧電フィルムセンサ用信号収集回路は高周波ノイズをカットするローパスフィルタと、該ローパスフィルタを通った後に増幅された信号に対しベースライン変動及び高周波数ノイズをカットするバンドパスフィルタと、前記圧電フィルムセンサにおける飽和状態を解消するように接続されたコンパレータ回路及びショート回路とを含んで構成され、前記導電性繊維センサ用信号収集回路は高周波ノイズをカットするローパスフィルタと、該ローパスフィルタを通った後に増幅された信号に対しベースライン変動及び高周波数ノイズをカットする第1のバンドパスフィルタと、電源のノイズをカットするノッチフィルタと、第2のバンドパスフィルタとを含んで構成されていることを特徴とする併用型の心肺機能計測装置。
【請求項5】
心肺機能の計測を行えるように身体に装着するための装着手段を備えてなることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の心肺機能計測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、心肺機能計測装置に関し、特に、圧電フィルムセンサ及び/または導電性繊維センサを用い、長時間にわたって高精度の信号を得られるようにする信号処理回路及びアルゴリズムを備えた心肺機能計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、飛行機、高速列車、長距離高速バス等で、運転者の操作ミスにより多くの事故が発生している。これらの事故の多くは、運転者の高い精神的ストレスや居眠り運転がその原因とされ、そのうちいくつかは睡眠時無呼吸症候群によるものと診断されている。また、幼児の突然死、睡眠時無呼吸症候群は、大部分が睡眠中もしくは無意識の状態で発生している。
【0003】
これらの病気に対しては、医者が診察する際に患者が健康状態にあるか否かを同定する助けとなる正確で継続的な観察手法が切望されている。また、このような健康状態にあるか否かを同定するための手法は、医療技術の発達によって人間の寿命が延びるという状況において、家庭での健康管理に対する新たな要求ともなっている。
【0004】
特許文献1には、第1のポリマー圧電体フィルムを2枚の電気伝導性布帛で挟んで構成された第1の生体電極と、第2のポリマー圧電体フィルムを2枚の電気伝導性布帛で挟んで構成された第2の生体電極と、圧力変動と生体電気とを計測するようにした電気信号線を有する生体信号計測センサからの信号を受ける圧力変動計測部、生体電気計測部、生体信号処理部を備えた生体信号計測装置について記載されている。

【特許文献1】特開2003-284697号公報
【0005】
しかしながら、このような生体信号計測センサを人体に付けてデータを採集する際に、センサ回路に絶対のアースが取れないこと、体温や生体微弱電流によって圧電フィルムセンサに電荷が溜まっていくことによる出力電圧の上昇、さらに体の動きや筋電などによりノイズが発生する。
【0006】
一方、電気伝導性布帛を電極として心拍情報の計測、心電図作成などを行う場合には3電極が用いられることが普通であるが、装着性などを考慮して特許文献1では2電極法を用いている。しかも、電気伝導性布帛によるセンサが参照電極をとっていないため、採集した信号が微弱であると同時に、人体の影響(例えば、体温や静電気など)によるノイズが生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、圧電体フィルムと電気伝導性布帛とで構成された圧力変動計測センサ、電気伝導性布帛で構成された生体電気センサにより得られた信号を処理する従来の計測装置において、採集した信号が微弱であり、センサ回路に絶対のアースが取れないという事情や、体温や静電気など人体からの影響で圧電フィルムセンサに電荷が溜まっていくことによる出力電圧の上昇、さらに体の動きや筋電などによりノイズが発生することが避けられないため、計測精度を高めることができないものであった。そのため、圧力変動、生体電気を計測するセンサからの信号を処理する計測装置において発生するノイズを抑制し、長時間にわたって高精度の計測信号を得られるようにすることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述した課題を解決すべくなしたものであり、請求項1に係る発明は、ポリマー圧電体フィルムを2枚の薄層状の生体電極で挟んで構成された圧電フィルムセンサと、該圧電フィルムセンサで取得された信号を処理する信号処理回路とからなり、前記信号処理理回路は前記圧電フィルムセンサで取得された圧力変動を示す信号に対し低周波ノイズをカットするローパスフィルタと、該ローパスフィルタを通った後に増幅された信号に対しベースライン変動及び高周波数ノイズをカットするバンドパスフィルタと、前記圧電フィルムセンサにおける飽和状態を解消するように接続されたコンパレータ回路及びショート回路とを含んで構成されていることを特徴とする圧電フィルムセンサを用いた心肺機能計測装置である。
【0009】
請求項1に係る発明を引用する請求項2に係る発明は、前記ローパスフィルタのカットオフ周波数を500Hz以下、前記バンドパスフィルタのカットオフ周波数を0.01Hzから30Hzとしたことを特徴とする圧電フィルムセンサを用いた心肺機能計測装置である。
【0010】
請求項1または請求項2のいずれか1項に係る発明を引用する請求項3に係る発明は、前記圧電フィルムセンサで取得される圧力変動を示す信号は呼吸信号と心拍信号であることを特徴とする圧電フィルムセンサを用いた心肺機能計測装置である。
【0011】
請求項3に係る発明を引用する請求項4に係る発明は、前記圧電フィルムセンサで取得された信号をベースライン変動に影響する低周波数と呼吸信号に必要のない高周波成分をカットするバンドパスフィルタに通し、ローパスフィルタにより呼吸信号を抽出し、時間遅れ補償を行い、ゼロクロース点を算出し、吸気間隔及び呼気間隔を算出する処理を行う信号処理部をさらに備え、圧電フィルムセンサで得られた信号から呼吸情報を抽出できるようにしたことを特徴とする心肺機能計測装置である。
【0012】
請求項3に係る発明を引用する請求項5に係る発明は、前記圧電フィルムセンサで取得された信号を呼吸信号の影響と心拍信号に必要のない高周波成分をカットするバンドパスフィルタに通し、バンドパスフィルタにより心拍信号を抽出し、ピークを検出しやすくするためにローパスフィルタに通し、ピーク間隔を算出する処理を行う信号処理部をさらに備え、圧電フィルムセンサで得られた信号から心拍情報を抽出できるようにしたことを特徴とする心肺機能計測装置である。
【0015】
請求項6または請求項7のいずれか1項に係る発明を引用する請求項8に係る発明は、前記導電性線維センサで取得される生体電気を示す信号は心電信号と心拍信号であることを特徴とする導電性繊維センサを用いた心肺機能計測装置である。
【0016】
請求項8に係る発明を引用する請求項9に係る発明は、導電性繊維センで取得された信号を呼吸信号の影響と心拍信号に必要のない高周波成分をカットするバンドパスフィルタに通し、電源ノイズを取り除くノッチフィルタを通し、バンドパスフィルタにより心拍信号を抽出し、ピークを検出しやすくするためにローパスフィルタを通し、ピーク間隔を算出する処理を行う信号処理部をさらに備え、導電性線維センサで得られた信号から心拍情報を抽出できるようにしたことを特徴とする心肺機能計測装置である。
【0017】
請求項に係る発明は、ポリマー圧電体フィルムを2枚の薄層状の生体電極で挟んで構成された圧電フィルムセンサと、該圧電フィルムセンサで取得された信号を収集し処理する圧電フィルムセンサ用信号収集回路と、2枚の導電性繊維からなる生体電極で構成される導電性繊維センサと、該導電性繊維センサで取得された信号を収集し処理する導電性繊維センサ用信号収集回路とを備えてなり、前記圧電フィルムセンサ用信号収集回路は高周波ノイズをカットするローパスフィルタと、該ローパスフィルタを通った後に増幅された信号に対しベースライン変動及び高周波数ノイズをカットするバンドパスフィルタと、前記圧電フィルムセンサにおける飽和状態を解消するように接続されたコンパレータ回路及びショート回路とを含んで構成され、前記導電性繊維センサ用信号収集回路は高周波ノイズをカットするローパスフィルタと、該ローパスフィルタを通った後に増幅された信号に対しベースライン変動及び高周波数ノイズをカットする第1のバンドパスフィルタと、電源のノイズをカットするノッチフィルタと、第2のバンドパスフィルタとを含んで構成されていることを特徴とする併用型の心肺機能計測装置である。
【0018】
請求項1~のいずれか1項に係る発明を引用する請求項に係る発明は、心肺機能の計測を行えるように身体に装着するための装着手段を備えてなることを特徴とする心肺機能計測装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、圧電フィルムセンサ及び/または導電性繊維センサを用いた心肺機能計測装置において、圧電フィルムセンサで取得された信号に対してはローパスフィルタ、バンドパスフィルタによりノイズをカットするとともにコンパレータ及びショート回路によりセンサにおける飽和状態を解消し、また、導電性繊維センサで取得された信号に対してはローパスフィルタ、第1及び第2のバンドパスフィルタ、ノッチフィルタによりノイズをカットするようにしたので、長時間にわたって高精度の信号を得ることができ、また一般の者が睡眠中等日常生活において利用可能な形態の心肺機能計測装置とすることができる。
【発明の実施に最良の形態】
【0020】
本発明による心肺機能計測においては、生体センサとして、呼吸と心拍などの生体信号を取得する圧電フィルムセンサを用いる形態、圧電フィルムセンサ及び導電性繊維センサを用いる形態がある。
【符号の説明】
【0021】
そこでまず、圧電フィルムセンサを用いた圧電フィルムセンサ型心肺機能計測装置について説明する。図1に圧電フィルムセンサ型心肺機能計測装置の構成を示す。圧電フィルムセンサ1は、圧電体であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムを挟む第1の薄層状の生体電極及び第2の薄層状の生体電極で構成されたものであり、各電極からの信号は、RCローパスフィルタ2,3を通り、アンプ4で増幅されバンドパスフィルタ5を経て出力され、また並列的にショート回路6、コンパレータ7が設けられている。圧電フィルムセンサ型心肺機能検出装置は、図1のような圧電フィルムセンサ1、RCローパスフィルタ2、アンプ4、バンドパスフィルタ5、ショート回路6、コンパレータ7からなる圧電フィルムセンサ型ユニットを含んで構成される。
【0022】
図2に、RCローパスフィルタの一例を示すが、生体信号計測時に必ず発生する高周波数ノイズをカットしてからアンプで増幅するために設けるもので、より高品質の信号を得ることが出来る。前記RCローパスフィルタのカットオフ周波数は500Hz以下でよい。
【0023】
ショート回路6及びコンパレータ7は、長時間の計測をするときに圧電フィルムセンサに溜まっている電荷を放電させ、センサのオーバーフローを防ぐためのものである。バンドパスフィルタ5は、より高質な呼吸信号と心拍信号を出力するために設けられるものである。呼吸と心拍信号を採集することを例に取れば、バンドパスフィルタのカットオフ周波数は0.01~30Hzでよい。また、前記バンドパスフィルタの次数は2次以上が好ましい。
【0024】
図3に圧電フィルムセンサで得られた信号から抽出された呼吸情報を示す。図3(a)は圧電フィルムセンサから得られた本来の信号を示し、呼吸情報及び心拍情報を同時に含んでいる。図3(b)は、後述する図5に示すアルゴリズムにより抽出された結果として得られた信号を示す。比較のために、図3(c)には市販の呼吸曲線記録センサから得られた信号を示す。いずれのグラフも横軸は時間である。なお、図3(b)中、隣接の白丸の時間-黒丸の時間=吸気の時間間隔、隣接の黒丸の時間-白丸の時間=呼気の時間間隔である。
【0025】
図4に圧電フィルムセンサで得られた信号から抽出された心拍情報を示す。図4(a)は圧電フィルムセンサから得られた本来の信号を示し、図3(a)と同様に呼吸情報及び心拍情報を同時に含んでいる。図4(b)は、後述するアルゴリズムにより抽出された結果として得られた信号を示す。比較のために、図4(c)には3電極型ECG(心電図:Electrocardiogram)から得られた信号を示す。なお、図4(b)中、白丸間の時間間隔は心拍R-R間隔である。
【0026】
図5に、図3(a)に示す如き圧電フィルムセンサで得られた信号から呼吸情報を抽出するアルゴリズムを示す。圧電フィルムセンサで得られた信号はセンサ信号x(n)として出力され(ステップ1)、次に、ウェーブレット(wavelet)・フィルタなど、ベースライン変動に影響する低周波数と呼吸信号に必要のない高周波成分を有効に取り除くためのソフトウエアフィルタ(0.01~4Hz)を通す(ステップ2)。次に、デジタルローパスフィルタ(0.3Hz)を利用して呼吸信号を抽出する(ステップ3)。その後時間遅れ補償(ステップ4)を行った後、ゼロクロース点を算出する(ステップ5)。その結果は先に図3(b)に示したとおりである。得られたゼロクロース点の間隔を測定することで、吸気間隔及び呼気間隔が算出できる(ステップ6)。
【0027】
このように圧電フィルムセンサで得られた信号から呼吸情報を抽出できるようにする心肺機能計測装置は、ステップ1~6の処理を行うための信号処理回路を備えるものとすればよく、そのための専用回路を備える形態としてもよいが、そのためのソフトウエアを有するコンピュータにより信号処理を行う形態としてもよい。
【0028】
図6に、図4(a)に示す如き圧電フィルムセンサで得られた信号から心拍情報を抽出するアルゴリズムを示す。圧電フィルムセンサで得られた信号はセンサ信号x(n)として出力され(ステップ1)、次に、ウェーブレット・フィルタなど、呼吸信号の影響と心拍信号に必要のない高周波成分を有効に取り除くためのソフトウエアフィルタ(8~120Hz)を通す(ステップ2)。次に、デジタルバンドパスフィルタ(13~25Hz)を利用して、心拍情報を抽出する(ステップ3)。そしてピーク値を検出しやすくするためにステップ3で得られたデータの絶対値を取った後ローパスフィルタ(5Hz)を通し(ステップ4)、ピーク値を検出する(ステップ5)。得られたピーク値間の間隔が心拍R-R間隔である(ステップ6)。
【0029】
このように圧電フィルムセンサで得られた信号から心拍情報を抽出できるようにする心肺機能計測装置は、ステップ1~6の処理を行うための信号処理回路を備えるものとすればよく、そのための専用回路を備える形態としてもよいが、そのためのソフトウエアを有するコンピュータにより信号処理を行う形態としてもよい。
【0030】
次に、導電性繊維センサ型心肺機能計測装置について説明する。図7に導電性繊維センサ型心肺機能計測装置の構成を示す。導電性繊維センサ11は導電性繊維からなる第1の生体電極及び第2の生体電極で構成され、各電極からの信号は電源や筋電、静電気などによるノイズ信号を除去するRCローパスフィルタ12,13を通り、アンプ14で増幅され、ベースライン変動と高周波数ノイズを防ぐための第1のバンドパスフィルタ15を通り、電源のノイズをカットするノッチフィルタ16を経て、さらに第2のバンドパスフィルタ17を経て出力される。前記RCローパスフィルタ12,13のカットオフ周波数は500Hz以下でよい。また、前記バンドパスフィルタ15,17の次数はいずれも2次以上が好ましい。そして、前記第1のバンドパスフィルタ15は、0.01~150Hz、前記第2のバンドパスフィルタ17は、0.01~120Hzのカットオフ周波数とすることが好ましい。60Hzまたは50Hzの交流ノイズはノッチフィルタ16を用いて除去される。導電性繊維センサ11から適切な出力信号を得るためには、前記第1のバンドパスフィルタ15、ノッチフィルタ16、前記第2のバンドパスフィルタ17というように、この順序で配置したものとすることが重要である。導電性繊維センサ型心肺機能検出装置は、図7のような導電性繊維センサ11、RCローパスフィルタ12,13、アンプ14、第1のバンドパスフィルタ15、ノッチフィルタ16、第2のバンドパスフィルタ17からなる導電性繊維センサ型ユニットを含んで構成される。
【0031】
図8に、導電性繊維センサ型心肺機能計測装置から抽出された心拍情報を示す。左側のグラフは正常に信号が得られた場合であり、右側のグラフは筋肉ノイズが入った場合である。最上段は導電繊維センサ型心肺機能計測装置で得られた本来の信号を示し、中段は抽出された心拍情報を示す。比較のために、下段には市販の3電極型ECGで得られた信号を示す。
【0032】
図9に、導電性繊維センサで得られた信号から心拍情報を抽出するアルゴリズムを示す。導電性繊維センサで得られた信号がセンサ信号x(n)として出力され(ステップ1)、次に、ウェーブレット・フィルタなど、呼吸信号の影響と心拍信号に必要のない高周波成分を有効に取り除くためのソフトウエアフィルタ(0.03~125Hz)を通す(ステップ2)。次に、ノッチフィルタを用いて電源ノイズ(60Hzまたは50Hz)を取り除く(ステップ3)。次に、デジタルバンドパスフィルタ(13~25Hz)を利用して、心拍情報を抽出する(ステップ4)。そしてピーク値を検出しやすくするためにステップ4で得られたデータの絶対値を取った後ローパスフィルタ(5Hz)を通し(ステップ5)、ピーク値を検出する(ステップ6)。得られたピーク値間の間隔が心拍R-R間隔である(ステップ7)。
【0033】
この導電性繊維センサで得られた信号から心拍情報を抽出できるようにする心肺機能計測装置は、ステップ1~7の処理を行うための信号処理回路を備えるものとすればよく、そのための専用回路を備える形態としてもよいが、そのためのソフトウエアを有するコンピュータにより信号処理を行う形態としてもよい。
【0034】
次に、圧電フィルムセンサ及び導電性繊維センサを組み合わせた併用型の心肺機能計測装置について説明する。導電性繊維センサは、圧電フィルムセンサに比べ、心電・心拍信号の計測に適している。しかし、普通の睡眠状況と日常生活下で用いた場合、導電性繊維センサが体とうまく接触できない状況は頻繁に発生することが考えられる。その場合、導電性繊維センサから心電・心拍信号を計測することができなくなる。
【0035】
一方、圧電フィルムセンサは、センサ自信が体と接触しなくても、呼吸や心拍による体動が該圧電フィルムセンサに伸び縮みを与えれば、圧電フィルムセンサからその信号を検出することは可能である。しかし、圧電フィルムセンサの信号からよりも導電性繊維センサの信号からの方が心拍情報をより正確に抽出できる。したがって、より精度の高い心肺機能計測装置とする場合には、導電性繊維センサと圧電フィルムセンサとの両方を備えるのがよく、このような両方のセンサを備える併用型の心肺機能計測装置では、両センサを同時に使用し互いに補間することでより高性能の心肺機能計測装置を実現できる。
【0036】
図10に導電性繊維センサと圧電フィルムセンサとを備える併用型の心肺機能計測装置の構成を示しており、この心肺機能計測装置においては、導電性繊維センサ21からの信号を先に述べた導電性繊維センサ型ユニットを含んで構成される導電繊維センサ信号収集回路23を通して収集し、A/D変換後マイコン25で処理する。同時に圧電フィルムセンサ22からの信号も先に述べた圧電フィルムセンサ型ユニットを含んで構成される圧電フィルムセンサ信号収集回路24を通して収集し、A/D変換後マイコン25で処理する。さらに、収集された信号、あるいはそれを処理して得られたデータを例えばUSB26で接続されたコンピュータ27に給送しデータの表示・保存・解析を行う。
【0037】
導電性繊維センサと圧電フィルムセンサとの両方を備えた心肺機能計測装置の形態として、これをベルトタイプ等、身体に装着可能な装置形態とすることが考えられる。図11にベルトタイプの心肺機能計測装置31の構成の例を示す。ベルトタイプの心肺機能計測装置31は2枚の導電性繊維シート34,35と圧電フィルムセンサ36とをクッション材または可撓性板材に取り付けて構成されるセンサヘッド32にベルト33が取り付けられ、ウエストの周りに着用されるようにしてある。センサヘッド32は例えば90mmの幅、185.5mmの長さで、2枚の導電性繊維シート34,35は心拍情報を抽出するためECGを測定するために用いられる。また、圧電フィルムセンサ36は腹部の上下動から呼吸のサイクルを測定すると共に心拍も測定する。
【0038】
図12に、導電性繊維センサの出力波形と心拍信号を示す。図中(a)は導電性繊維センサが体と接触不良か乾燥している場合に測定された波形で、(b)は図9のアルゴリズムを適用して抽出した心拍信号であり、うまく抽出できなかったことが分かる。
【0039】
図13に、図12に示した導電性繊維センサの測定時と同時刻における圧電フィルムセンサの出力信号と抽出した心拍信号を示す。図中(c)は圧電フィルムセンサからの出力信号、(d)は図6のアルゴリズムを適用して得られた心拍信号であり、心拍情報がうまく抽出されたことが分かる。
【0040】
導電性繊維センサを用いる際は、常時皮膚に接触しており、皮膚が湿っていることが必要である。実際、皮膚が乾燥してくると重要なノイズが発生する。図12に示した例では、R-R間隔は正確に測定できないことは明らかである。
【0041】
これに対して、前記導電性繊維センサを用いた測定と同時期に圧電フィルムセンサから得られる出力信号を図13(c)に示す。図13(d)には図6のアルゴリズムにより抽出した心拍信号を示す。導電性繊維センサを用いた測定ではできないが、圧電フィルムセンサから得られる出力信号からR-R間隔は計算できることは明らかである。それゆえ、導電性繊維センサと圧電フィルムセンサを同時に使用し、互いに補間することで、より高性能の心肺機能センサを実現できる。
【0042】
上述したように、圧電フィルムセンサ及びその信号処理アルゴリズムは有効に呼吸情報の抽出を行うことができるものであり、心拍情報の抽出にも高い潜在力を有するものである。しかしながら、圧電フィルムセンサはいつも有効ではないかもしれない。例えば体の動きで前記ベルトセンサがずれたり、動くことで、睡眠中に一定時間その機能を失ってしまうかも知れない。
【0043】
図14には、圧電フィルムセンサがうまく動作せず、導電性繊維センサがうまく動作した場合の結果を示す。(a)は圧電フィルムセンサからの出力信号であるが、信号が非常に小さく、(b)に図6のアルゴリズムにより抽出した心拍信号を示すが、心拍情報あるいは呼吸情報の抽出が困難である。しかしながら、この時間帯では、(c)に示すように導電性繊維センサは正常に機能しているようであり、心拍信号が抽出できていることは明白である。
それゆえ、導電性繊維センサと圧電フィルムセンサを同時に使用し、互いに補間することで、より高性能の心肺機能センサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の1つの形態としての圧電フィルムセンサ型心肺機能計測装置の構成を示す図である。
【図2】RCローパスフィルタの一例を示す図である。
【図3】圧電フィルムセンサから得られた信号から抽出された呼吸情報を示す図である。
【図4】圧電フィルムセンサから得られた信号から抽出された心拍情報を示す図である。
【図5】圧電フィルムセンサ信号から呼吸情報を抽出するアルゴリズムを示す図である。
【図6】圧電フィルムセンサ信号から心拍情報を抽出するアルゴリズムを示す図である。
【図7】本発明の他の形態としての導電性繊維センサ型心肺機能計測装置の構成を示す図である。
【図8】導電性繊維センサから心拍情報を抽出した2つの場合を示す図であり、 左欄は正常に信号が得られた場合、右欄は筋肉のノイズが入った場合をそれぞれ示す。
【図9】導電性繊維センサ信号から心拍情報を抽出するアルゴリズムである。
【図10】本発明のさらに他の形態としての導電性繊維センサと圧電フィルムセンサとの両方を備える併用型の心肺機能計測装置の構成を示す図である。
【図11】本発明による心肺機能計測装置をベルトタイプとした構成を示す図である。
【図12】導電性繊維センサの出力信号と心拍信号を示す図である。
【図13】圧電フィルムセンサの出力信号と抽出した心拍信号を示す図である。
【図14】圧電フィルムセンサがうまく動作せず、導電性繊維センサがうまく動作した場合の結果を示す図である。
【0045】
1 圧電フィルムセンサ
2 RCローパスフィルタ
3 RCローパスフィルタ
4 アンプ
5 RCローパスフィルタ
6 ショート回路
7 コンパレータ
11 導電性繊維センサ
12 RCローパスフィルタ
13 RCローパスフィルタ
14 アンプ
15 第1のバンドパスフィルタ
16 ノッチフィルタ
17 第2のバンドパスフィルタ
21 導電性繊維センサ
22 圧電フィルムセンサ
23 導電性繊維センサ用信号収集回路
24 圧電フィルムセンサ用信号収集回路
25 マイコン
31 ベルトセンサ
32 センサヘッド
33 ベルト
34、35 導電性繊維シート
36 圧電フィルムセンサ
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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