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明細書 :集積化可能な非可逆回路素子及びその取付け方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4815608号 (P4815608)
公開番号 特開2008-244680 (P2008-244680A)
登録日 平成23年9月9日(2011.9.9)
発行日 平成23年11月16日(2011.11.16)
公開日 平成20年10月9日(2008.10.9)
発明の名称または考案の名称 集積化可能な非可逆回路素子及びその取付け方法
国際特許分類 H01P   1/387       (2006.01)
H01P   1/36        (2006.01)
FI H01P 1/387
H01P 1/36 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2007-080427 (P2007-080427)
出願日 平成19年3月27日(2007.3.27)
審査請求日 平成21年10月14日(2009.10.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】山本 節夫
【氏名】栗巣 普揮
【氏名】田中 輝光
審査官 【審査官】佐藤 当秀
参考文献・文献 特開昭54-051761(JP,A)
特開2004-336709(JP,A)
特開2005-057696(JP,A)
特開2006-262260(JP,A)
特開昭56-032802(JP,A)
特開平05-259303(JP,A)
特開昭60-223201(JP,A)
調査した分野 H01P 1/387
H01P 1/36
特許請求の範囲 【請求項1】
一方の面に伝送線路、反対面に接地面を有する誘電体の回路基板と、
前記回路基板の接地面側に配置された平板状フェライトと、
前記平板状フェライトの、前記回路基板とは反対側の面に配置された平板状永久磁石と、
前記平板状永久磁石の、前記平板状フェライトとは反対側の面に配置され、前記平板状永久磁石および前記平板状フェライトを囲うように配置されたヨークと、を有し、
前記回路基板の接地面における接地導体は前記平板状フェライトに面する部分において一部が取除かれており、
前記ヨークは、少なくとも一部が前記回路基板の接地面に接続されているとともに、
前記ヨークの少なくとも回路基板側の面は開放されていることを特徴とする、非可逆回路素子。
【請求項2】
前記平板状フェライトはYIG単結晶体である、請求項1に記載の非可逆回路素子。
【請求項3】
誘電体の回路基板の一方の面に伝送線路、反対面に接地面を形成する回路基板形成工程と、
前記回路基板の接地面側に平板状フェライトを配置し、該平板状フェライトの前記回路基板とは反対側に平板状永久磁石を配置し、該平板状フェライト及び平板状永久磁石を囲うようにヨークを配置し前記回路基板の接地面側に取付けるヨーク取付け工程と、
前記ヨークを前記接地面の接地導体に接続する接地工程と、を含み、
前記接地面における接地導体は前記平板状フェライトに面する部分において一部が取除かれており、前記ヨーク取付け工程において、前記平板状フェライトは前記回路基板の接地導体が取除かれた部分に配置されることを特徴とする非可逆回路素子の取付け方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャイロ磁気効果を利用した非可逆回路素子であるアイソレータ/サーキュレータのフェライト部分に、伝送線路を誘電体基板に作製した場合でもマイクロ波を十分に誘導でき、さらにバイアス磁場を効率的にフェライトに印加するヨークの構造および、その構造を適用することで可能となるアイソレータ/サーキュレータの集積化に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電子機器には小型化が要求されており、これに伴って、それらに実装される電子部品も小型化・薄型化が要求されている。電子部品の1つである非可逆回路素子(アイソレータ/サーキュレータ)も小型化・薄型化が徐々に進んではいるが、十分なバイアス磁場を印加するために全体をヨークで囲んでおり他の電子部品に比べて比較的大きい。また、素子を回路基板上に形成し集積化するような構造にもなっていない。
従来のアイソレータ/サーキュレータでは、良好な非可逆動作特性を得るために、フェライトを伝送線路と接地面で挟んだ構造をしており、一般にフェライトの表面に伝送線路を形成している。また、強いバイアス磁場をフェライト部分に印加するため、素子全体を鉄などのヨークで囲む構造にして磁気回路を形成している。しかし、素子全体をヨークで囲んでいるため、他の電気素子と同じ基板に伝送線路を形成できないという理由からアイソレータ/サーキュレータは一つのチップとなり、集積化することが難しいという問題がある。つまり、従来の非可逆回路素子(アイソレータ/サーキュレータ)は、伝送線路をフェライト表面上に形成し、ヨーク又はアースで囲う構造になっているため、非可逆回路素子を回路基板上に形成することは困難であった。図4は、従来の非可逆回路素子の一例である。
【0003】
従来技術としては以下のものが挙げられる。
特許文献1には、SiO2の基板に伝送線路を設け、前記基板の上部に平板状フェライトを配置するとともに、前記基板および前記平板状フェライトを接地導体で囲う非可逆回路素子が記載されている。しかしながら、特許文献1では、非可逆回路素子を回路基板上に形成することは考慮されていない。
特許文献2には、非可逆回路素子本体10と、永久磁石20と、ヨーク30とからなり、ヨーク30の少なくとも1つの面は開放されている非可逆回路素子が記載されている。非可逆回路素子本体10は、内部に伝送線路を埋設したもので、伝送線路を誘電体基板上に形成するものではない。特許文献2の構成では、実際には非可逆回路素子としての性能を十分に発揮できないと考えられる。

【特許文献1】特開2006-262260号公報
【特許文献2】特開平8-78911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイアス磁場が電磁波の進行方向および電磁波の磁場の振幅方向の両方に垂直となるように印加されたフェライト中を電磁波が進行する際、その電磁波の伝播方向はジャイロ磁気効果により回転する。アイソレータ/サーキュレータは、このジャイロ磁気効果を利用したマイクロ波用非可逆回転素子であり、その周波数特性はフェライトに印加されるバイアス磁場に大きく依存する。GHz以上の周波数でアイソレータ/サーキュレータを動作させるには一般に300 Oe程度以上のバイアス磁場が必要となる。フェライト板の反磁界係数を考慮すると、通常は1000 Oe以上の磁場をフェライトに印加する必要がある。しかし、従来の小型アイソレータ/サーキュレータに内蔵されるような小さな永久磁石(mmサイズ)では、ヨークで素子全体を覆うことで磁気回路を構成しなければ、このような大きな磁場を印加することは難しいという問題点があった。
本発明は上記問題点を解決し、誘電体基板上、特に回路基板上に形成することができる、集積化可能な非可逆回路素子(アイソレータ/サーキュレータ)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を有する。本発明による非可逆回路素子は、一方の面に伝送線路、反対面に接地面を有する誘電体の回路基板と、
前記回路基板の接地面側に配置された平板状フェライトと、
前記平板状フェライトの、前記回路基板とは反対側の面に配置された平板状永久磁石と、
前記平板状永久磁石の、前記平板状フェライトとは反対側の面に配置され、前記平板状永久磁石および前記平板状フェライトを囲うように配置されたヨークと、を有し、
前記回路基板の接地面における接地導体は前記平板状フェライトに面する部分において一部が取除かれており、
前記ヨークは、少なくとも一部が前記回路基板の接地面に接続されているとともに、
前記ヨークの少なくとも回路基板側の面は開放されていることを特徴とするものである。
前記平板状フェライトはYIG単結晶体としてもよい。
また、本発明による非可逆回路素子の取付け方法は、
誘電体の回路基板の一方の面に伝送線路、反対面に接地面を形成する回路基板形成工程と、
前記回路基板の接地面側に平板状フェライトを配置し、該平板状フェライトの前記回路基板とは反対側に平板状永久磁石を配置し、該平板状フェライト及び平板状永久磁石を囲うようにヨークを設置し前記回路基板の接地面側に取付けるヨーク取付け工程と、
前記ヨークを前記接地面の接地導体に接続する接地工程と、を含み、
前記接地面における接地導体は前記平板状フェライトに面する部分において一部が取除かれており、前記ヨーク取付け工程において、前記平板状フェライトは前記回路基板の接地導体が取除かれた部分に配置されることを特徴とするものである。

【発明の効果】
【0007】
本発明は上記構成を採用したことで、電磁波の磁場と電場を伝送線路と接地面の間に位置する基板とフェライト磁石に集中させることができるため、従来のアイソレータ/サーキュレータのように、フェライト表面に直接、伝送線路を形成する必要がない。したがって、伝送線路を回路基板(誘電体基板)上のフェライトとは反対側に配置することが可能になり、回路基板の設計の自由度が増す。また、従来のアイソレータ/サーキュレータはフェライト磁石に均一にバイアス磁場を印加するために、素子全体をヨークで覆う形態で閉じた磁気回路を形成していたが、フェライト磁石の上または下面のみにヨークを配置することでも十分な強度のバイアス磁場が得られる。したがって、このような構造にしたことにより回路基板上にも配置可能で、集積化も可能な形態となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態の一例について説明する。
図1および図2は、本発明の非可逆回路素子の構造の一例を示す図である。図1の、左図は斜視図、右図は上面からの透視図及び側面図である。図2は、誘電体基板、ヨーク、接地面の関係を表す図である。本非可逆回路素子は、一方の面に伝送線路2、反対面に接地面(接地導体)3を有する誘電体基板1と、誘電体基板1の接地面3側に配置された平板状フェライト4と、平板状フェライト4の、誘電体基板1とは反対側の面に配置された平板状永久磁石5と、平板状永久磁石5の、平板状フェライト4とは反対側の面に配置され、平板状永久磁石5および平板状フェライト4を囲うように配置されたヨーク6と、からなる。誘電体基板1は、例えばプリント基板などであるが、プリント基板に限定されるものではない。また、平板状フェライト4は、例えばYIG単結晶体などであるが、これに限定されずフェライトの性質を有するものであれば何でも良い。ヨーク6は、少なくとも一部が誘電体基板1の接地面3に接続されているとともに、ヨーク6の少なくとも誘電体基板1側の面は開放されている。
【0009】
このような構造にすることで、電磁波の磁場と電場を伝送線路と接地面の間に位置する基板とフェライト磁石に集中させることができるため、従来のアイソレータ/サーキュレータのように、フェライト表面に直接、伝送線路を形成する必要がない。また、従来のアイソレータ/サーキュレータはフェライト磁石に均一にバイアス磁場を印加するために、素子全体をヨークで覆う形態で閉じた磁気回路を形成していたが、フェライト磁石の上または下面のみにヨークを配置することでも十分な強度のバイアス磁場が得られる。さらに、このような構造にすることで集積化も可能である。
本非可逆回路素子の構成により、回路基板上に形成された伝送線路の結合部とは反対の面の接地面における接地導体の一部を取り除き、そこにフェライト単結晶、バイアス用永久磁石およびヨークを配置するだけで、非可逆動作特性が得られる。これにより、従来は他の電気素子との集積化が困難であったアイソレータ/サーキュレータの小型化および集積化が実現可能となる。本非可逆回転素子は基本的には小型非可逆素子の動作原理(特許文献1)に基づいているが、一般の分布定数型非可逆素子に適用することもできる。
【実施例】
【0010】
以下に、実施例を示す。
誘電体基板: 厚さ0.1mm、誘電率12.9のガリウム砒素(GaAs)
フェライト(YIG単結晶体): 4πMs=850G、ΔH=2 Oe、厚み0.15mm
永久磁石: SmCo
ヨーク: 厚さ0.15mmの鉄
とし、有限要素法により伝送特性を計算した結果を図3に示す。
1.92GHz付近で挿入損失0.88dB、アイソレーション24.04dBという良好な伝送特性の結果が得られた。
【0011】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更が可能であることは言うまでもない。

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の非可逆回路素子の構造図である。
【図2】本発明の非可逆回路素子の誘電体基板、ヨーク、接地面の関係を表す図である。
【図3】伝送特性を表すグラフである。
【図4】従来の非可逆回路素子の図である。
【符号の説明】
【0013】
1 誘電体基板(回路基板)
2 伝送線路
3 接地面(接地導体)
4 平板状フェライト(YIG単結晶体)
5 平板状永久磁石
6 ヨーク
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3