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明細書 :動的バランス能力評価装置及びそれを用いた歩行訓練システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-073525 (P2016-073525A)
公開日 平成28年5月12日(2016.5.12)
発明の名称または考案の名称 動的バランス能力評価装置及びそれを用いた歩行訓練システム
国際特許分類 A61H   1/02        (2006.01)
A63B  22/02        (2006.01)
A63B  22/06        (2006.01)
A63B  23/04        (2006.01)
A63B  24/00        (2006.01)
A63B  69/00        (2006.01)
A61B   5/11        (2006.01)
FI A61H 1/02 R
A63B 22/02
A63B 22/06 M
A63B 23/04 P
A63B 24/00
A63B 69/00 C
A61B 5/10 310B
A61B 5/10 310G
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-206948 (P2014-206948)
出願日 平成26年10月8日(2014.10.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人 日本ロボット学会,第32回日本ロボット学会 学術講演会 DVD-ROM,RSJ2014AC2Q2-01,平成26年9月4日
発明者または考案者 【氏名】藤江 正克
【氏名】小林 洋
【氏名】滝澤 和弥
【氏名】中島 康貴
【氏名】望月 孝太
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114524、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 英俊
審査請求 未請求
テーマコード 4C038
Fターム 4C038VA04
4C038VA11
4C038VA12
4C038VB14
4C038VB15
4C038VC20
要約 【課題】使用者の動的バランス能力の定量化を適正に行い、使用者の動的バランス能力を効果的に向上させることに寄与すること。
【解決手段】動的バランス能力評価装置12は、使用者の歩行動作時における身体部分の複数箇所の経時的変化を計測する計測部15と、計測部15による計測結果から動的バランス能力の評価値を求める演算部16とを備えている。演算部16は、計測部15での計測結果から、動的バランス能力に関係する複数の評価パラメータそれぞれについて、解析した結果となる解析値を求める解析値算出手段22と、各評価パラメータの解析値から、所定の統計処理により評価値を算出する評価値算出手段24とを備えている。評価値算出手段24では、使用者毎に、解析値に基づいて、各評価パラメータの中から動的バランス能力の評価に影響を与える評価パラメータを抽出して、当該抽出された各評価パラメータの解析値から評価値を算出する。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
使用者の歩行による所定の身体部位の経時的変化に基づき、前記使用者の動的バランス能力を評価するための装置であって、
前記使用者の歩行動作時における前記身体部分の複数箇所の経時的変化を計測する計測部と、当該計測部による計測結果を用い、前記動的バランス能力の評価値を求める演算部とを備え、
前記演算部は、前記計測部での計測結果から、前記動的バランス能力に関係する複数の評価パラメータそれぞれについて、解析した結果となる解析値を求める解析値算出手段と、前記各評価パラメータの解析値から、所定の統計処理により、前記評価値を算出する評価値算出手段とを備え、
前記評価値算出手段では、前記使用者毎に、前記解析値に基づいて、前記各評価パラメータの中から、前記動的バランス能力の評価に影響を与える前記評価パラメータを抽出して、当該抽出された前記評価パラメータの集合をパラメータ群として特定し、当該パラメータ群に含まれる前記各評価パラメータの解析値から前記評価値を算出することを特徴とする動的バランス能力評価装置。
【請求項2】
前記評価値算出手段では、予め特定した1つの評価パラメータが含まれる前記パラメータ群により、前記評価値を算出することを特徴とする請求項1記載の動的バランス能力評価装置。
【請求項3】
前記評価値算出手段では、因子分析が用いられ、前記解析値から前記各評価パラメータ同士の関連性を表す相関行列を求め、当該相関行列に基づいて、前記パラメータ群に対する前記各評価パラメータの影響度を表す因子負荷量を前記評価パラメータ毎に求め、当該因子負荷量の大きさに応じて、前記パラメータ群を構成する前記評価パラメータを決定し、当該決定された前記評価パラメータの各解析値を用いて求めた因子得点を前記評価値とすることを特徴とする請求項1又は2記載の動的バランス能力評価装置。
【請求項4】
前記解析値算出手段では、前記使用者に所定の歩行動作を複数セット行って貰った際に、当該セット毎に前記解析値が求められ、
前記評価値算出手段では、所定のセットで得られた前記解析値が前記相関行列及び前記因子負荷量を求める際に用いられる一方、前記所定のセットと別のセットで得られた前記解析値が前記因子得点を求める際に用いられることを特徴とする請求項3記載の動的バランス能力評価装置。
【請求項5】
請求項1に記載の動的バランス能力評価装置と、前記使用者が歩行訓練を行うためのトレッドミルとを備えた歩行訓練システムであって、
前記トレッドミルは、前記使用者が乗ってその場で歩行可能に動作する歩行面を含む装置本体と、前記歩行面の動作制御を行う制御部とを備え、
前記制御部では、前記動的バランス能力評価装置で求められた前記評価値と、予め記憶された動的バランス能力の目標値との差分を減らすように、前記歩行面の動作制御を行うことを特徴とする歩行訓練システム。
【請求項6】
前記制御部では、前記歩行面を手動操作により動作させる手動訓練モードと、前記動的バランス能力評価装置で求めた前記評価値に基づいて自動的に前記歩行面を動作させる自動訓練モードとが任意に選択可能に設けられ、これら各モードにより前記歩行面の動作制御を行うことを特徴とする請求項5記載の歩行訓練システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、動的バランス能力評価装置及びそれを用いた歩行訓練システムに係り、更に詳しくは、使用者の動的バランス能力を適正に評価するための定量的な指標を求めることができ、使用者の動的バランス能力の向上に資する動的バランス能力評価装置及びそれを用いた歩行訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、高齢化社会や先進国化に伴い、成人の体力低下が問題になっており、特に、高齢者にあっては、転倒による骨折や膝の故障により、要介護状態に陥るリスクがある。ここで、高齢者の歩行時に転倒が生じる要因としては、バランス能力の低下が挙げられる。このバランス能力は、静止時に姿勢を維持する能力である静的バランス能力と、重心移動時に姿勢を維持する能力である動的バランス能力とに大別され、特に、後者の動的バランス能力の低下が、高齢者の歩行時の転倒の大きな要因となっている。加えて、健康維持においても動的バランス能力の重要性は高いと言われている。そこで、日常生活における動的バランス能力の訓練は有用であり、当該訓練を適正に行うためには、訓練者自身の現状の動的バランス能力の適正評価が必要となる。ところが、ここまで、動的バランス能力自体を定量的に評価する手法が明確になっておらず、動的バランス能力を効果的に訓練するには、必ずしも十分とは言えないものが存在するのみであった。
【0003】
ところで、特許文献1には、使用者の歩行動作における床反力の測定に基づき、つまずきリスクを評価するつまずきリスク評価装置が開示されている。当該つまずきリスク評価装置では、床反力の変化から推定されるつま先クリアランスに基づき、つまずきリスクの評価がなされる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2013-138783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1のつまずきリスク評価装置では、つまずきリスクの評価時において、全ての使用者に同一となる1つの評価パラメータ(つま先クリアランス)のみしか用いられていないことから、個々の使用者それぞれについて、必ずしも正確な評価が得られるとは言えない。つまり、例えば、つま先クリアランスが小さくても、性別、筋力の大小、骨格、バランス感覚等の使用者個々の特性により、つまずきリスクの大小が分かれることになる。従って、つまずきリスクは、使用者個々の特性に左右される動的バランス能力を総合判断しなければ適正に評価できず、特許文献1のつまずきリスク評価装置では、動的バランス能力自体の総合判断がなされないため、つまずきリスクの評価を適正に行えない場合が生じる。
【0006】
ところで、動的バランス能力の評価対象者について、当該動的バランス能力の評価を左右する歩行動作時の要素としては、歩行時における評価対象者の身体部分の複数箇所の経時的変化が考えられる。そこで、動的バランス能力を評価するためのパラメータ(評価パラメータ)として、使用者の身体部分の複数箇所の動きに関する評価パラメータを設定し、全評価対象者で一律の全ての評価パラメータを用いて動的バランス能力自体を数値化することが想定される。しかしながら、本発明者らの研究結果によれば、評価対象者間での前述した個々の特性の相違により、各評価パラメータについて、動的バランス能力の評価における影響度は、各評価対象者で相違すると考えられる。従って、評価対象者毎に、全ての前記評価パラメータの中から動的バランス能力に大きな影響を与えると思われる評価パラメータを選別した上で、当該選別された群の各評価パラメータに関する解析値に基づき、動的バランス能力を数値化することが、動的バランス能力を適格に表す指標となり得ることを知見した。
【0007】
本発明は、このような本発明者らの研究結果に基づいて案出されたものであり、その目的は、使用者の動的バランス能力の定量化を適正に行い、使用者の動的バランス能力を効果的に向上させることに寄与する動的バランス能力評価装置及びそれを用いた歩行訓練システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、使用者の歩行による所定の身体部位の経時的変化に基づき、前記使用者の動的バランス能力を評価するための装置であって、前記使用者の歩行動作時における前記身体部分の複数箇所の経時的変化を計測する計測部と、当該計測部による計測結果を用い、前記動的バランス能力の評価値を求める演算部とを備え、前記演算部は、前記計測部での計測結果から、前記動的バランス能力に関係する複数の評価パラメータそれぞれについて、解析した結果となる解析値を求める解析値算出手段と、前記各評価パラメータの解析値から、所定の統計処理により、前記評価値を算出する評価値算出手段とを備え、前記評価値算出手段では、前記使用者毎に、前記解析値に基づいて、前記各評価パラメータの中から、前記動的バランス能力の評価に影響を与える前記評価パラメータを抽出して、当該抽出された前記評価パラメータの集合をパラメータ群として特定し、当該パラメータ群に含まれる前記各評価パラメータの解析値から前記評価値を算出する、という構成を採っている。
【0009】
また、本発明は、前記動的バランス能力評価装置と、前記使用者が歩行訓練を行うためのトレッドミルとを備えた歩行訓練システムであって、前記トレッドミルは、前記使用者が乗ってその場で歩行可能に動作する歩行面を含む装置本体と、前記歩行面の動作制御を行う制御部とを備え、前記制御部では、前記動的バランス能力評価装置で求められた前記評価値と、予め記憶された動的バランス能力の目標値との差分を減らすように、前記歩行面の動作制御を行う、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各使用者それぞれについて、使用者の身体部分の経時的変化の計測結果に基づき、動的バランス能力に大きな影響を与える評価パラメータが選定され、使用者毎に特定されたパラメータ群内の評価パラメータの各解析値に基づいて、各評価パラメータの動的バランス能力における重要度の相違を加味しながら、動的バランス能力の評価値が求められる。このため、使用者個々の特性の相違が考慮された定量的な動的バランス能力の評価指標を得ることができ、当該評価指標である評価値を用いることにより、当該使用者における動的バランス能力向上のための効果的な歩行訓練に資することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る歩行訓練システムの概念図。
【図2】動的バランス能力評価装置の概略構成を表すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。

【0013】
図1には、本実施形態に係る歩行訓練システムの概略図が示されている。この図において、前記歩行訓練システム10は、歩行訓練を行う訓練者である使用者Tの重心移動時の姿勢維持能力すなわち動的バランス能力を評価するための動的バランス能力評価装置12と、動的バランス能力評価装置12による動的バランス能力の評価結果に基づいて、使用者Tに歩行訓練をさせるためのトレッドミル13とにより構成される。

【0014】
前記動的バランス能力評価装置12は、予め、使用者Tに対して所定のタスクを行って貰い、当該タスクに基づいて、使用者Tの動的バランス能力を定量的に評価するための評価値を算出する装置である。すなわち、前記タスクとして、使用者Tに、トレッドミル13のベルトV上で所定の歩行動作をして貰い、動的バランス能力評価装置12において、当該歩行動作時における使用者Tの所定の身体部位の経時的変化に基づき、使用者Tの動的バランス能力の評価値が求められる。本実施形態では、特に限定されるものではないが、使用者Tに対し、片足当たり10歩で両足合計20歩の歩行動作(タスク)を1セットとして合計3セットして貰い、これらの歩行動作に基づいて、当該使用者Tの動的バランス能力の評価値が求められる。なお、以下の説明において、各歩数それぞれにおける状態を「各歩行状態」と称する。

【0015】
動的バランス能力評価装置12は、図2に示されるように、前述のタスクによる使用者Tの歩行動作時における複数箇所の身体部分の経時的変化を計測する計測部15と、計測部15の計測結果に基づいて、動的バランス能力の評価値を求める演算部16とを備えている。

【0016】
前記計測部15は、使用者Tの足圧分布を計測する足圧計測手段18と、使用者Tの各身体部位の位置及び姿勢(角度)を計測する位置姿勢計測手段19と、使用者Tの歩行時の床反力を計測する床反力計測手段20とを備えている。これら足圧計測手段18、位置姿勢計測手段19及び床反力計測手段20は、公知の計測手法を用いた公知の機器やシステムにより構成されており、本発明の本質部分ではないため、装置構成等の構造の説明を省略し、以下にて要点のみを簡略に説明する。

【0017】
前記足圧計測手段18では、使用者Tの左右両側の足裏に取り付けられた圧力センサ(図示省略)により、左右両側の足底圧力の分布を計測し、足裏における圧力中心の時間推移データとなる足圧中心軌跡を左右の足裏毎に求めることが可能になっている。なお、図示省略しているが、足裏内での圧力中心の位置を特定する座標系として、足裏の左右方向となる幅方向をx軸とし、足裏の踵から爪先に向かう長さ方向をy軸としたxy座標系が設定されている。

【0018】
前記位置姿勢計測手段19としては、所定の基準位置を原点とする三次元の位置計測を可能にする三次元位置計測装置(図示省略)が用いられ、使用者Tのつま先、足関節、膝関節、股関節の身体部位の他に、体幹を特定可能な身体部位に取り付けられたマーカ(図示省略)を追跡検知することで、当該各マーカの三次元位置、すなわち、前記体幹を含む各身体部位の三次元位置を検出するようになっている。そして、当該三次元位置の経時的変化から、前記体幹を含む各身体部位の角度も求められるようになっている。なお、この位置姿勢計測手段19としては、前記三次元位置計測装置に限らず、図示しない加速度センサによって求めた前記各身体部位の加速度に基づいてその位置や姿勢を求める等、他のセンサや測定機器に代替することも可能である。

【0019】
前記床反力計測手段20では、使用者Tが前記ベルトV上を歩行する際に、当該ベルトVを蹴る力を検出することで、床反力を求めるようになっている。ここでのベルトVを蹴る力は、ベルトVを駆動する後述のモータMの負荷の変化をセンサ(図示省略)で検出することで求められるようになっている。また、床反力計測手段20としては、ベルトVに圧力センサ(図示省略)を設けて、当該圧力センサの計測値から床反力を求める構成にしても良い。

【0020】
前記演算部16は、CPU等の演算処理装置及びメモリやハードディスク等の記憶装置等からなるコンピュータによって構成され、当該コンピュータを以下の各手段として機能させるためのプログラムがインストールされている。

【0021】
この演算部16は、計測部15での計測結果から、動的バランス能力に関係する複数の評価パラメータそれぞれについて、解析した結果となる解析値を求める解析値算出手段22と、各評価パラメータの解析値から、所定の統計処理により、動的バランス能力の評価値を算出する評価値算出手段24とを備えている。

【0022】
本実施形態では、特に限定されるものではないが、前記評価パラメータとして、使用者Tの足底圧力の軌跡の平均を表す足底圧軌跡平均(パラメータ1)と、当該足底圧力の軌跡の標準偏差(パラメータ2)と、使用者Tの足関節の軌跡の平均を表す足関節軌跡平均(パラメータ3)と、当該足関節の軌跡の標準偏差(パラメータ4)と、爪先位置と地面との高さであるクリアランスの平均であるクリアランス平均(パラメータ5)と、当該クリアランスの標準偏差(パラメータ6)と、使用者Tの歩行時における床反力(パラメータ7)と、使用者Tの股関節の角度である股関節角度(パラメータ8)と、使用者Tの体幹の角度である体幹角度(パラメータ9)とが予め設定されている。

【0023】
なお、前記評価パラメータとしては、前述のパラメータ1~9に限定されず、一部を他のパラメータに代替し、或いは、他のパラメータを併用することも可能である。例えば、使用者Tの頭部の位置、姿勢、加速度や、使用者の目線の位置等のパラメータも採用することもできる。

【0024】
前記解析値算出手段22では、次のようにして、各評価パラメータの解析値が求められる。

【0025】
前記パラメータ1に関しては、足圧計測手段18で計測された足底圧力の軌跡から、使用者Tの足裏の長さ方向(y軸方向)での各位置(y座標)それぞれについて、10歩の各歩行状態での足裏の幅方向(x軸方向)の圧力中心の位置(x座標)の平均値が、解析値としてタスクのセット毎に算出される。

【0026】
前記パラメータ2に関しては、前記y座標のそれぞれの位置について、各歩行状態での前記x座標における圧力中心のばらつきの程度すなわち標準偏差が、解析値としてタスクのセット毎に算出される。

【0027】
前記パラメータ3に関しては、同一の足が立脚相から次の立脚相になるまでの間の1遊脚相内での各時刻について、位置姿勢計測手段19により計測された足関節の位置すなわち地面からの高さの1歩毎の平均値が、解析値としてタスクのセット毎に算出される。

【0028】
前記パラメータ4に関しては、前記1遊脚相内での各時刻における足関節の位置の1歩毎のばらつきの程度を表す標準偏差が、解析値としてタスクのセット毎に算出される。

【0029】
前記パラメータ5に関しては、前記1遊脚相内での各時刻について、位置姿勢計測手段19で計測された地面からの爪先の高さすなわちクリアランスの1歩毎の平均値が、解析値としてタスクのセット毎に算出される。

【0030】
前記パラメータ6に関しては、前記1遊脚相内での各時刻におけるクリアランスの1歩毎のばらつきの程度を表す標準偏差が、解析値としてタスクのセット毎に算出される。

【0031】
前記パラメータ7に関しては、タスクの各セットそれぞれについて、各歩行状態において床反力計測手段20で計測された床反力が、そのまま解析値として用いられる。

【0032】
前記パラメータ8に関しては、タスクの各セットそれぞれについて、各歩行状態において位置姿勢計測手段19で計測された股関節角度が、そのまま解析値として用いられる。

【0033】
前記パラメータ9に関しては、タスクの各セットそれぞれについて、各歩行状態において位置姿勢計測手段19で計測された体幹角度が、そのまま解析値として用いられる。

【0034】
前記評価値算出手段24では、公知の因子分析を用い、使用者T毎に、前記各解析値に基づいて、評価パラメータの中から、動的バランス能力の評価に大きな影響を与える複数の評価パラメータを抽出し、当該抽出された評価パラメータの集合をパラメータ群として特定し、当該パラメータ群に含まれる各評価パラメータの各解析値から前記評価値を算出するようになっており、具体的には、次の手順で当該評価値が求められる。

【0035】
先ず、3セット行ったタスクのうちランダムに選択した2セットのタスクで得られた各評価パラメータの解析値から、各評価パラメータ同士の関連性を表す相関行列が求められる。そして、当該相関行列から、最尤法による因子の抽出が行われ、仮想的なパラメータ群に対する各評価パラメータの影響度を表す因子負荷量が求められる。更に、前記パラメータ1を含むパラメータ群において、各評価パラメータの因子負荷量が所定の閾値未満(例えば、絶対値で0.4未満)である評価パラメータを除外した評価パラメータのみが、当該パラメータ群を構成する評価パラメータとして抽出される。その後、プロマックス法による因子回転を経て因子得点が算出され、当該因子得点が評価パラメータの評価値とされる。すなわち、以下の式に示されるように、パラメータ群を構成する評価パラメータに基づき、前記相関行列Rが設定されるとともに、因子負荷量を行列化した因子負荷行列Aが設定され、これら相関行列R及び因子負荷行列Aを定数項とし、先に用いた2セットのタスクの測定解析値と別の残りの1セットのタスクについて得られた解析値のうち、パラメータ群を構成する評価パラメータの解析値(解析値ベクトルx)を変数として、因子得点fが算出される。
【数1】
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以上において、定数項を求めるための前記解析値と、変数となる前記解析値とが、別セットのタスクの結果得られた数値が用いられるため、前記定数項と前記変数とを不干渉にすることができ、客観性を保つことができる。

【0036】
なお、前記評価値算出手段24におけるパラメータ群の評価パラメータの決定は、前記解析値から、他の多変量解析等の統計手法を用いることもできる。

【0037】
例えば、前述と同様に、パラメータ群における各評価パラメータの影響度(重要度)を数値化し、当該影響度に応じた重み付け係数をパラメータ群内の各評価パラメータで設定し、当該各評価パラメータの解析値に対応する重み付け係数に乗じて加算等することで、動的バランス能力の評価値を求めるようにしても良い。

【0038】
前記トレッドミル13は、図1に示されるように、使用者Tが乗ってその場で歩行可能に動作する装置本体26と、医師や理学療法士等の付添者Pが各種の条件や指令を入力するための入力部27と、装置本体26に乗った状態の使用者Tの前方に配置されるとともに、動的バランス能力評価装置12による動的バランス能力の評価に基づく種々の情報等を表示可能なモニタ28と、装置本体26の動作制御を行う制御部29とを備えている。

【0039】
前記装置本体26は、前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム31,31と、これらサイドフレーム31,31の間で前後方向に延びるセンターフレーム33と、左側のサイドフレーム31とセンターフレーム33の前後両側で回転可能に支持される丸棒状の左側のシャフト35,35と、右側のサイドフレーム31とセンターフレーム33の前後両側で回転可能に支持される丸棒状の右側のシャフト35,35と、左側のシャフト35に掛け回される左側のベルトVと、右側のシャフト35に掛け回される右側のベルトVと、前側に位置する左右それぞれのシャフト35,35に連なって、当該各シャフト35,35を回転させる左右両側のモータMとを備えている。

【0040】
前記左側のベルトVは、その上面が使用者Tの左脚が乗る歩行面となっている一方、右側のベルトVは、その上面が使用者Tの右脚が乗る歩行面となっている。また、各ベルトVは、各モータMが駆動すると回転し、これによって、各歩行面は後方に向かってスライド動作する。

【0041】
前記モニタ28には、例えば、動的バランス能力評価装置12で求めた使用者Tの現状の動的バランス能力の評価値と、予め記憶された動的バランス能力の目標ラインとが表示され、使用者Tにとって目標となる歩行動作との過不足を視覚的に認識可能になっている。また、モニタ28には、画面の切換や併記等により、評価値の算出に用いた各評価パラメータの解析値がその目標値とともに優先的に提示され、どの評価パラメータに関する能力が劣っているのかについても、使用者Tが視覚的に認識可能となっている。

【0042】
前記制御部29では、付添者Pによる入力部27の入力に応じて各ベルトVを回転動作させる手動訓練モードと、動的バランス能力評価装置12で求めた動的バランス能力の評価値に基づいて自動的に各ベルトVを動作させる自動訓練モードとが任意に選択可能に設けられ、当該各モードに応じて、モータMの駆動制御を行うようになっている。

【0043】
前記手動訓練モードでは、前述の動的バランス能力に関するモニタ28の表示を付添者Pが見ながら、当該付添者Pからの入力部27の入力により、左右の各ベルトV,Vの回転速度の調整を行えるようになっている。すなわち、当該手動訓練モードは、付添者Pの手動操作によって、当該ベルトV,V上を歩行する使用者Tの歩行動作を改善させるためのモードである。

【0044】
前記自動訓練モードでは、モニタ28に提示されている使用者Tの現状の動的バランス能力の評価値と前記目標値との差分を減らすように、左右の各ベルトV,Vの回転状態の調整を自動的に行うようになっている。ここでは、床反力計測手段20によって計測される床反力の前後方向の成分、すなわち、使用者TがベルトV,Vを前後方向に蹴る力に基づいて、各ベルトV,Vの回転速度や回転トルク(抵抗力)が制御される。具体的には、ベルトVを前後方向に蹴る力が、予め設定及び記憶された目標となる値に対して不足していると判断されると、ベルトVの速度及び/又は抵抗力を増大させ、患者が更にベルトVを強く蹴ることを促すように作用する。

【0045】
なお、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 歩行訓練システム
12 動的バランス能力評価装置
13 トレッドミル
15 計測部
16 演算部
22 測定解析値算出手段
24 評価値算出手段
26 装置本体
29 制御部
T 使用者
V ベルト(歩行面)
図面
【図1】
0
【図2】
1