TOP > 国内特許検索 > 発光剤、発光装置、遺伝子発現の検知方法、及び、発光酵素 > 明細書

明細書 :発光剤、発光装置、遺伝子発現の検知方法、及び、発光酵素

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-114995 (P2017-114995A)
公開日 平成29年6月29日(2017.6.29)
発明の名称または考案の名称 発光剤、発光装置、遺伝子発現の検知方法、及び、発光酵素
国際特許分類 C09K  11/07        (2006.01)
C12M   1/34        (2006.01)
C12Q   1/25        (2006.01)
C12N   9/00        (2006.01)
C07C  59/52        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C09K 11/07
C12M 1/34 E
C12Q 1/25
C12N 9/00
C07C 59/52
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-250732 (P2015-250732)
出願日 平成27年12月23日(2015.12.23)
発明者または考案者 【氏名】寺西 克倫
出願人 【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100081776、【弁理士】、【氏名又は名称】大川 宏
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B029
4B050
4B063
4H006
Fターム 4B024AA11
4B024CA01
4B024CA09
4B024CA11
4B024DA11
4B024EA04
4B024GA11
4B024HA01
4B029AA07
4B029BB06
4B029BB16
4B029FA15
4B050CC03
4B050DD03
4B050KK06
4B050LL03
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ07
4B063QR01
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR41
4B063QS02
4B063QX02
4H006AA03
4H006AB92
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BN30
4H006BS10
要約 【課題】発光性真菌の発光機構に関連する発光剤を提供することを解決すべき課題とする。
【解決手段】本発明の発光剤は、トランス-p-ヒドロキシケイ皮酸及び/又はトランス-3,4-ジヒドロキシケイ皮酸を含む。特に発光性真菌としてはMycena chlorophos、Filoboletus manipularis (Berkeley) Singer、Armillaria mellea、Neonothopanus nambi、Mycena citricolor、Panellus stipticus、及び、Armillria borealisのうちの何れか1つである。発光性真菌は近縁種であると考えられるため発光に関与する基質が共通することが予想される。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
発光性真菌から抽出可能な発光酵素に作用して発光反応を生起するか、及び/又は発光反応を増強する発光剤であって、
トランス-p-ヒドロキシケイ皮酸及び/又はトランス-3,4-ジヒドロキシケイ皮酸を含む発光剤。
【請求項2】
前記発光性真菌はMycena chlorophos、Filoboletus manipularis (Berkeley) Singer、Armillaria mellea、Neonothopanus nambi、Mycena citricolor、Panellus stipticus、及び、Armillria borealisのうちの何れか1つである請求項1に記載の発光剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光剤と、
前記発光剤に必要時に混合できるように配設された前記発光性真菌に含まれる発光酵素と、
を有する発光装置。
【請求項4】
前記発光性真菌に含まれる発光酵素の遺伝子を生物に導入・発現させる工程と、
請求項1又は2に記載の発光剤を前記生物に投与する工程と、
前記生体において前記導入した遺伝子の発現を発光の観察により検知する工程と、
を有する遺伝子発現の検知方法。
【請求項5】
Mycena chlorophosの菌糸体又は子実体から得ることができ、トランス-4-ヒドロキシケイ皮酸及び/又はトランス-3,4-ジヒドロキシケイ皮酸を基質とする発光酵素。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性真菌の発光反応を参考にして知得した発明であり、発光剤、発光装置、遺伝子発現の検知方法、及び、発光酵素に関する。
【背景技術】
【0002】
発光性真菌は、現在77種が確認されている。それらの発光機構に関する研究は、長年行われているにもかかわらず、2015年に学術雑誌Angewandte Chem (2015, 8124-8128)に発光性真菌N. nambi, M.citricolor, P. stipticus, A.borealisの菌糸体の発光に関わる物質がhispidinおよびhydroxyhispidinであると報告されるまでは、一つも特定されていなかった。
【0003】
発光性真菌Mycena chlorophosは菌糸体と子実体の傘が緑色に光り、傘の発光輝度は発光性真菌の中でも最高クラスである。Mycena chlorophosの発光物質および発光機構も不明であったが、2015年にM.chlorophosの冷水抽出液にhispidinを加えると10分間の積算値で45,000,000rluの強度で発光することが報告された(非特許文献1)。この強度は、後述の実施例の発光活性試験と同様の測定条件で追試すると約320a.u.(1秒間の積算値での最高値)であった(図11)。
【0004】
ところで、生物の発光原理は、バイオサイエンス、医学、薬学、農学、工学等の広範な分野で応用されており、例えば、生体のイメージング技術や遺伝子工学におけるアッセイ技術として現代科学において不可欠な先端技術である。これまでのこれらの技術は、ホタル、ウミホタル、発光性クラゲ、発光性エビ等の解明された発光原理が用いられており、それらの発光技術には、それらの発光原理に対応する特定の発光物質あるいはその類縁体しか使用できない。
【0005】
発光性真菌の発光は、他の生物発光にはない長時間の持続発光と高発光輝度等の特徴があり、今後、新規な発光技術の開発では発光性真菌の発光原理の応用が有望と考えられている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Purtov KV, Petushkov VN, Baranov MS, Mineev KS, Rodionova NS, Kaskova ZM, Tsarkova AS, Petunin AI, Bondar VS, Rodicheva EK, Medvedeva S., Oba Y, Oba Y, Arseniev AS, Lukyanov S, Gitelson JI, Yampolsky IV. The chemical basis of fungal bioluminescence. Angew Chem Int Ed 2015;54:8124-28.
【非特許文献2】Srivastava V, Darokar MP, Fatima A, Kumar JK, Chowdhury C, Saxena HO, Dwivedi GR, Shrivastava, K, Gupta V, Chattopadhyay SK, Luqman S, Gupta MM, Negi AS, Khanuja SPS. Synthesis of diverse analogues of oenostacin and their antibacterial activities. Bioorg Med Chem 2007;15:518-25.
【非特許文献3】Nie S, Li W, Yu B. Total synthesis of nucleoside antibiotics A201A. J Am Chem Soc 2014;136:4157-60.
【非特許文献4】Mori K, Kojima S, Maki S, Hirano T, Niwa H. Bioluminescence characteristics of the fruiting body of Mycena chlorophos. Luminescence 2011;26:604-10.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は上記実情に鑑み鋭意検討を行った結果、発光性真菌の発光に関与する化合物を発見した。具体的には非特許文献と比べて約47倍以上強い発光性真菌のM.chlorophosの発光を生起及び/又は増強できる発光化合物としてトランス-p-ヒドロキシケイ皮酸(trans-p-hydroxycinnamic acid)を見出し、さらにはトランス-3,4-ジヒドロキシケイ皮酸(trans-3,4-dihydroxycinnamic acid)も発光化合物となることを見出した。
【0008】
本発明は上記知見に基づき発光性真菌の発光機構に関連する発光剤、発光装置、遺伝子発現の検知方法、及びそれらに関する発光酵素を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の発光剤は、発光性真菌から抽出可能な発光酵素に作用して発光反応を生起するか、及び/又は発光反応を増強する発光剤であって、トランス-p-ヒドロキシケイ皮酸及び/又はトランス-3,4-ジヒドロキシケイ皮酸を含む。この発光剤は発光性真菌がもつ発光酵素の発光反応を生起するものであるか、及び/又は増強するものである。この発光酵素は発光性真菌から抽出できるほか、発光性真菌が有する遺伝子情報を利用して細菌・酵母などを用いた生物学的方法にて製造することができる。この生物学的方法にて製造される発光酵素も同じ遺伝子情報から製造されているため発光性真菌から抽出可能な酵素である。
【0010】
特に発光性真菌としてはMycena chlorophos(M. chlorophos)、Filoboletus manipularis (Berkeley) Singer、Armillaria mellea、Neonothopanus nambi(N. nambi)、Mycena citricolor(M. citricolor)、Panellus stipticus(P. stipticus)、及び、Armillria borealis(A. borealis)のうちの何れか1つである。
【0011】
発光性真菌は近縁種であると考えられるため発光に関与する基質が共通することが予想される。特に非特許文献1では4種の発光性真菌がすべて同じ基質にて発光することが開示されており、発光性真菌の発光に関与する酵素の起源が非常に近しいことを強力に裏付けている。
【0012】
そして上記課題を解決する発光装置は上述の発光剤と、前記発光剤に必要時に混合できるように配設された前記発光性真菌に含まれる発光酵素とを有する。
【0013】
発光性真菌の発光は高効率で進行するため外部からのエネルギー供給無しで長時間にわたり発光を維持することが可能である。
【0014】
更に上記課題を解決する本発明の遺伝子発現の検知方法は、前記発光性真菌に含まれる発光酵素の遺伝子を生物に導入・発現させる工程と、
上述の発光剤を前記生物に投与する工程と、
前記生体において前記導入した遺伝子の発現を発光の観察により検知する工程とを有する。
【0015】
腫瘍細胞などの目的とする細胞・組織などに発光に関する遺伝子を導入し発現することにより腫瘍細胞の分布を可視化できる。また、腫瘍細胞などで活発に発現する遺伝子に連動して発現するように発光酵素の遺伝子を導入することによっても目的の細胞などを可視化することができる。
【0016】
上記課題を解決する新規な発光酵素は、Mycena chlorophosの菌糸体又は子実体から得ることができ、トランス-4-ヒドロキシケイ皮酸及び/又はトランス-3,4-ジヒドロキシケイ皮酸を基質とする発光酵素である。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では非特許文献1にて報告されたよりも高強度での発光(1秒間の積算値の最高値が化合物Aで約15,000a.u.、化合物Bで約20,000a.u.)を生起できる発光剤が提供できる。その高い発光強度と発光時間の長さを活かして発光装置や遺伝子発現の検知方法に応用したときに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】種々の濃度の化合物A(トランス-4-ヒドロキシケイ皮酸)をM. chlorophos子実体のヒダに接触させたときの経時変化を示すグラフである。
【図2】濃度0.3mMの化合物AをM. chlorophos子実体のヒダに接触させたときの可視光スペクトルの経時変化を示すグラフである。
【図3】種々の濃度の化合物B(トランス-3,4-ジヒドロキシケイ皮酸)をM. chlorophos子実体のヒダに接触させたときの経時変化を示すグラフである。
【図4】濃度0.3mMの化合物BをM. chlorophos子実体のヒダに接触させたときの可視光スペクトルの経時変化を示すグラフである。
【図5】種々の濃度の化合物1~4をM. chlorophos子実体のヒダに接触させたときの経時変化を示すグラフである。
【図6】種々の濃度の化合物5~8をM. chlorophos子実体のヒダに接触させたときの経時変化を示すグラフである。
【図7】種々の濃度の化合物9~12をM. chlorophos子実体のヒダに接触させたときの経時変化を示すグラフである。
【図8】種々の濃度の化合物13、14をM. chlorophos子実体のヒダに接触させたときの経時変化を示すグラフである。
【図9】M. chlorophos子実体から単離された発光化合物の、1H NMRスペクトル(上)と13C NMR(下)スペクトルである。化学構造式中の番号はスペクトル中のピークの番号に対応している。アセトン(Acetone)は内部標準である。
【図10】M. chlorophos子実体から単離された発光化合物のESIネガティブ質量スペクトルである。質量163.08が[M-1]-である。
【図11】M. chlorophosの冷水抽出液にhispidinを加えたときの経時変化を示すグラフである(非特許文献1に相当)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の発光剤、発光装置、遺伝子発現の検知方法並びにそれらの発光反応に関与する発光酵素について実施形態に基づき以下詳細に説明を行う。

【0020】
本実施形態の発光剤は発光性真菌がもつ発光に関与する発光酵素に作用して発光させることができる。発光性真菌は発光に関与する発光酵素を持っており、本実施形態の発光剤はこの発光酵素に作用して発光する。発光性真菌の菌糸体や子実体からの抽出などにより取り出した発光酵素や、遺伝子組み換え技術により発光酵素の遺伝子を微生物中に導入するなどして製造された発光酵素に対して本実施形態の発光剤を接触させることにより効果的に発光させることができる。例えば本実施形態の発光装置の一例として粉末状の発光酵素や溶液化した発光酵素、その酵素を含む組成物と本実施形態の発光性真菌の発光剤の溶液とを用意し、必要に応じて混合することにより長時間の発光を行うことができる。

【0021】
発光性真菌の遺伝子情報の中に存在する発光酵素に関する遺伝子を他の生体に導入することができる。他の生体内にて発光酵素の遺伝子が発現することにより発光酵素が生成される。生成された発光酵素は本実施形態の発光剤を供給することで発光する。その結果、発光酵素が発現した部位を発光の有無により検知することができる。例えば特定の組織などの細胞や腫瘍細胞に発光酵素の遺伝子を導入することによりそれらの細胞の位置を発光により検知することができる。また、それらの細胞中における特定の遺伝子と共に発現できるように発光酵素の遺伝子を導入することで特定の遺伝子の発現を検知することができる。遺伝子の導入は常法により行うことができる。生体内での遺伝子発現を検知するためには目的とする部位に発光剤を直接接触させたり、血管中に投与したりすることができる。

【0022】
本実施形態の発光性真菌の発光剤としてはトランス-p-ヒドロキシケイ皮酸及び/又はトランス-3,4-ジヒドロキシケイ皮酸を含む。これらの化合物は発光性真菌における発光反応の基質として作用しているものと推測され、僅かな含有量であっても発光性真菌を効果的に発光させることができる。

【0023】
発光性真菌とは可視光にて発光する真菌である。前述したように現在の所、77種類が確認されている。これらは非常に近い種類で有り同様の発光機構により発光していることが推測される。特に発光性真菌としてはM. chlorophos、Filoboletus manipularis (Berkeley) Singer、Armillaria mellea、N. nambi、M. citricolor、P. stipticus、及び、A. borealisのうちの何れか1つである。

【0024】
・発光酵素
本発明の新規な酵素は、M. chlorophosの菌糸体又は子実体から得ることができるものである。本発明の新規な酵素は、M. chlorophos子実体を超音波などの手段により破砕して得られる可溶化されたタンパクを常法、例えば硫安などを添加することや凍結乾燥すること、により沈殿させることにより得ることができる。発光酵素は単離されることなく子実体(好ましくはヒダ)の切片、子実体(好ましくはヒダ)から単離した細胞、子実体から作製したプロトプラスト、子実体破砕物、子実体抽出物などの組成物として用いられることがある。
【実施例】
【0025】
本発明の発光性真菌の発光剤について実施例に基づき詳細を説明する。
【実施例】
【0026】
(1)用いた発光性真菌
発光性真菌としては独立行政法人製品評価技術基盤機構(NBRC)より以下の3種類を購入した。発光性真菌Aは子実体に成長するまで培養した。他は菌糸体のみ培養した。
発光性真菌A:NBRC番号31858、Mycena chlorophos(日本名:ヤコウタケ)(由来:八丈島)
・その他の発光性真菌(独立行政法人製品評価技術基盤機構から購入。下記のカッコ内の記載番号は独立行政法人製品評価技術基盤機構の菌管理番号)
・Mycena chlorophos(独立行政法人製品評価技術基盤機構31858)の菌糸体
・Mycena chlorophos(独立行政法人製品評価技術基盤機構31858)の柄
・Mycena polygramma(独立行政法人製品評価技術基盤機構33011)の菌糸体
・Panellus stipticus(独立行政法人製品評価技術基盤機構9354)の菌糸体
・Panellus stipticus(独立行政法人製品評価技術基盤機構31168)の菌糸体
・Filoboletus manipularis(独立行政法人製品評価技術基盤機構6897)の菌糸体
・Armillaria mellea(独立行政法人製品評価技術基盤機構31166)の菌糸体
・Armillaria mellea(独立行政法人製品評価技術基盤機構31618)の菌糸体
・Armillaria mellea(独立行政法人製品評価技術基盤機構32060)の菌糸体
【実施例】
【0027】
(2)発光性真菌Aを用いた発光剤の探索
発光性真菌(M. chlorophos)に対して種々の化合物を接触させたときの発光の強度を測定した。
【実施例】
【0028】
(2-1)トランス-p-ヒドロキシケイ皮酸(化合物A)の発光活性試験
トランス-p-ヒドロキシケイ皮酸(東京化成)を種々の濃度の溶液を発光性真菌Aのヒダに接触させたときのヒダの発光強度の経時変化を測定した(図1)。0.01mMから0.3mMまで濃度の上昇に伴って発光強度も上昇することが分かった。1mMでは0.3mMと同程度の発光強度を示した。0mMでも一定強度の発光が観測されるのは発光性真菌A自身がもつ基質により定常的に発光が生起しているからである。
【実施例】
【0029】
具体的な測定方法としては以下の通りである(試験1)。96ウェルのプレートに10mMリン酸緩衝液(pH7.0)0.003mLを加え、ヤコウタケの生のヒダ(2mm x 2mm)を置き、発光強度測定装置Berthold LB 960 Microplate Luminometer Centro (Berthold Technologies GmbH & Co KG, Bad Wildbad, Germany)で25℃で約20分間、発光が安定するまで発光測定を行った。このヒダに所定の濃度の化合物の10mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液0.01mLを加え、同装置で1分毎に1秒間積算で発光強度を測定した。この時の20分間の発光強度の推移をグラフに示した。
【実施例】
【0030】
0.3mMにて添加したときの発光スペクトルの経時変化を測定した(図2)。発光強度が時間の経過と共に低下しているが発光スペクトル自体は変化無く、トランス-p-ヒドロキシケイ皮酸が基質として消費されていくに連れて発光強度が低下していることが推測された。図2の発光スペクトルから発光反応にリボフラビン及び/又はフラビン誘導体が関与していることが推測できる。
【実施例】
【0031】
具体的な測定方法としては以下の通りである(試験2)。ヤコウタケの生のヒダ(2mm x 2mm)を10mMリン酸緩衝液(pH7.0)0.003mLに入れ、0.3mM化合物の10mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液0.01mLを加え、25℃で図に記載の時間でAtto LumiFL-Spectrocapture (Atto Co., Ltd., Tokyo, Japan)を用いスペクトルを取得した。
【実施例】
【0032】
(2-2)トランス-3,4-ジヒドロキシケイ皮酸(化合物B)の発光活性試験
トランス-3,4-ジヒドロキシケイ皮酸(東京化成)の種々の濃度の溶液に対して試験1の方法で発光性真菌Aのヒダに接触させたときのヒダの発光強度の経時変化を測定した(図3)。トランス-p-ヒドロキシケイ皮酸と同様に0.01mMから0.3mMまで濃度の上昇に伴って発光強度も上昇することが分かった。但し、トランス-p-ヒドロキシケイ皮酸よりも2倍以上強い発光が認められた。1mMでは0.3mMと同程度の発光強度を示した。
【実施例】
【0033】
0.3mMにて添加したときの発光スペクトルの経時変化を試験2の方法にて測定した(図4)。発光強度が時間の経過と共に低下しているが発光スペクトル自体は変化無く、トランス-p-ヒドロキシケイ皮酸と同様にトランス-3,4-ジヒドロキシケイ皮酸が基質として消費されていくに連れて発光強度が低下していることが推測された。また、トランス-p-ヒドロキシケイ皮酸と同様の発光スペクトルが観測されたことから同様の機構により発光していることが推測された。
【実施例】
【0034】
(2-3)種々の化合物の発光活性試験(参考例)
以下の化合物についてトランス-p-ヒドロキシケイ皮酸と同様(試験1)に発光性真菌Aに対する発光活性を観測した。各化合物の濃度は0.3mMとした。化合物6は非特許文献2、化合物10は非特許文献3に記載の方法にて合成した。その他の化合物は市販品(東京化成)を用いた。
化合物1:トランス-o-ヒドロキシケイ皮酸(trans-o-hydroxycinnamic acid)
化合物2:トランス-m-ヒドロキシケイ皮酸(trans-m-hydroxycinnamic acid)
化合物3:トランス-ケイ皮酸(trans-cinnamic acid)
化合物4:シス-p-ヒドロキシケイ皮酸(cis-p-hydroxycinnamic acid)
化合物5:トランス-2,4-ジヒドロキシケイ皮酸(trans-2,4-dihydroxycinnamic acid)
化合物6:トランス-3,4,5-トリヒドロキシケイ皮酸(trans-3,4,5-trihydroxycinnamic acid)
化合物7:トランス-フェルラ酸(trans-ferulic acid)
化合物8:トランス-3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸(trans-3,5-dimethoxy-4-hydroxycinnamic acid)
化合物9:トランス-p-メトキシケイ皮酸(trans-p-methoxycinnamic acid)
化合物10:トランス-α-メチル-p-ヒドロキシケイ皮酸(trans-α-methyl-p-hydroxycinnamic acid)
化合物11:p-ヒドロキシフェニルピルビン酸(p-hydroxyphenylpyruvic acid)
化合物12:トランス-p-ヒドロキシケイ皮酸メチルエステル(trans-p-hydroxycinnamic acid methyl ester)
化合物13:p-ヒドロキシ安息香酸(p-hydroxybenzoic acid)
化合物14:3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(3-(4-hydroxyphenyl)propionic acid)
【実施例】
【0035】
各々の化合物について濃度0.3mMの水溶液とし、発光性真菌Aのヒダに接触させたときの発光強度の経時変化を測定した。結果を図5(化合物1~4)、図6(化合物5~8)、図7(化合物9~12)、図8(化合物13,14)に示す。これらの結果、化合物1~14を接触させても発光強度の有意な上昇は観測できなかった。ここで、各々の化合物を添加したときの初期値(0min)が異なるのは用いた発光性真菌Aの発光強度のバックグラウンドにばらつきがあったためである。時間の経過と共に発光強度が低下していくのはその化合物の添加により発光酵素が関与する発光反応が阻害されていることを意味するものと推定される。
【実施例】
【0036】
(3)その他の発光性真菌について
現状、発光生起作用及び発光増強作用は確認できなかった。更にホタル発光系を用いて上記化合物の発光生起作用及び発光増強作用を評価したがそのような作用は認められなかった。
【実施例】
【0037】
(4)発光性真菌Aの発光に関与する発光酵素の基質の特定
発光性真菌Aに対して、非特許文献4に記載の方法で子実体を培養した。光っているカサ(10g)を凍結・解凍し、水(10mL)を加え、0℃で超音波粉砕し、遠心分離(10000g,10分,5℃)し、上澄みを得た。
【実施例】
【0038】
残渣にさらに水(10mL)加え、同様な操作で上澄み液を得た。再度、残渣に水(10mL)を加え、同様な操作で上澄み液を得た。これらの上澄み液を合わせメタノール(10mL)を加え、0℃で10分間冷却した後、遠心分離(10000g,10分,5℃)を行った。
【実施例】
【0039】
上澄み液を減圧下で濃縮し約10mLとし、凍結・解凍を行い、遠心分離(10000g,10分,5℃)し上澄み液を得た。この溶液を「抽出液」とよぶ。この操作をカサ1kgに対して行った。
【実施例】
【0040】
カサ1kgから得られた抽出液(1L)に0.1Mリン酸水溶液(100mL)を加え、10mMリン酸水溶液で調整したChromatorex DM1020T ODS ゲルカラム(45mm x 170mm)に供し、10mMリン酸水溶液と10mMリン酸メタノール溶液の混合液で溶出した。10mMリン酸水溶液と10mMリン酸メタノール溶液の混合比および容量は、10mMリン酸水溶液:10mMリン酸メタノール溶液=100:0(1L),90:10(1L),80:20(1L),70:30(1L),60:40(1L),50:50(1L)であり、発光化合物は70:30(1L)の溶出液に存在し、溶出液をNaOH水溶液で中和後、この画分を減圧下で約100mLまで濃縮した。
【実施例】
【0041】
この溶液を10mMリン酸緩衝水溶液(pH7)で調整したChromatorex DM1020T ODS ゲルカラム(45mm x 170mm)に供し、10mMリン酸緩衝水溶液(pH7)(1L)で溶出させ、この溶出液を減圧下で濃縮し50mLとした。この濃縮液(2.5mL)をCosmosil 5C18-PAQ column (20mm 250mm)カラムを用いたHPLC分取を行った。
【実施例】
【0042】
溶出液にリン酸緩衝水溶液10mM(pH=7.0)を用い、流速8mL/分で行った。発光化合物の画分を減圧濃縮した。この分取操作をカサ1kgに対し行った。ここで得られた分取液の内カサ333gに対する分取液をCosmosil 5PBr column (20mm 250mm)を用いたHPLC分取を行った。溶出液は0.3mMリン酸ナトリウム緩衝水溶液(pH=7.0)であり、流速8mL/分で行った。この操作をカサ1kg分行い、リン酸ナトリウム塩を含んだ発光化合物を2mg得た。
【実施例】
【0043】
・発光性真菌Aのカサから単離した発光物質の化学構造
上記の方法で単離した発光化合物を、1H,13C,13C-1H COSY,HMBC NMR測定およびHPLC-PDA-mass測定し、化学構造はトランス-p-ヒドロキシケイ皮酸(化合物A)と推定した。次に市販の化合物Aのこれらの測定データと照合した結果、データは完全に一致し(図9,10)、さらに単離した発光化合物の発光活性が市販の化合物Aの発光活性が同じであることから、発光化合物は化合物Aと決定した。なお、化合物Bについては存在しないか検出限界以下であったかの理由にて単離できなかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10