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明細書 :測距装置、及び測距方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-161484 (P2017-161484A)
公開日 平成29年9月14日(2017.9.14)
発明の名称または考案の名称 測距装置、及び測距方法
国際特許分類 G01B   9/02        (2006.01)
G01S  17/32        (2006.01)
G01C   3/06        (2006.01)
FI G01B 9/02
G01S 17/32
G01C 3/06 120Q
G01C 3/06 140
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2016-048959 (P2016-048959)
出願日 平成28年3月11日(2016.3.11)
発明者または考案者 【氏名】飯山 宏一
【氏名】五十嵐 彬宏
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100109210、【弁理士】、【氏名又は名称】新居 広守
審査請求 未請求
テーマコード 2F064
2F112
5J084
Fターム 2F064AA01
2F064AA09
2F064CC04
2F064EE01
2F064FF01
2F064FF08
2F064GG12
2F064GG22
2F064GG44
2F064GG55
2F064GG64
2F064HH01
2F064HH03
2F064HH05
2F064HH08
2F064JJ05
2F064JJ06
2F064JJ15
2F112AD01
2F112BA05
2F112CA05
2F112CA12
2F112DA21
2F112DA25
2F112FA03
2F112FA07
2F112FA45
2F112GA01
5J084AA05
5J084AA13
5J084AD02
5J084AD03
5J084BA04
5J084BA36
5J084BB02
5J084BB04
5J084CA08
5J084CA31
5J084CA48
5J084CA49
5J084CA67
5J084EA05
要約 【課題】より高速な測距装置、及び測距方法を提供する。
【解決手段】FMCW方式によって距離を測定する測距装置であって、周波数掃引された電磁波を送信波として生成する信号源2と、送信波を対象物6に向けて出射し、対象物6での反射によって得られる反射波と送信波とを干渉させてビート信号を生成する干渉部3と、ビート信号が入射する領域内に配置され、ビート信号の強度を検出する複数の検出器4aと、複数の検出器4aから出力されるビート信号の強度を示す複数の検出信号のそれぞれに対して信号処理を施すことで、(1)当該測距装置から、複数の検出器4aに対応する対象物6の表面における複数の箇所までの距離、及び(2)当該測距装置から複数の箇所までの距離における差分の少なくとも一方を算出する信号処理部5とを備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって対象物までの距離を測定する測距装置であって、
周波数が掃引された電磁波を送信波として生成する信号源と、
前記信号源で生成された前記送信波を前記対象物に向けて出射し、前記対象物での反射によって得られる反射波を受信し、前記送信波と前記反射波とを干渉させることでビート信号を生成する干渉部と、
前記干渉部で生成された前記ビート信号が入射する領域内に配置され、入射した前記ビート信号の強度を検出する複数の検出器と、
前記複数の検出器から出力される前記ビート信号の強度を示す複数の検出信号のそれぞれに対して信号処理を施すことで、(1)当該測距装置から前記複数の検出器に対応する前記対象物の表面における複数の箇所までの距離、及び(2)当該測距装置から前記複数の箇所までの距離における差分の少なくとも一方を算出する信号処理部と
を備える測距装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記複数の検出信号のそれぞれの周波数を特定し、特定した前記周波数に基づいて、当該測距装置から前記複数の箇所までの距離を算出する
請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、前記複数の検出信号における位相差を特定し、特定した前記位相差に基づいて、当該測距装置から前記複数の箇所までの距離における差分を算出する
請求項1に記載の測距装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、
前記複数の検出信号のうちの第1検出信号の周波数を特定し、特定した前記周波数に基づいて、当該測距装置から、前記第1検出信号に対応する前記対象物の表面における第1箇所までの距離である第1距離を算出し、
前記複数の検出信号のうちの前記第1検出信号を除く第2検出信号について、前記第1検出信号との位相差を特定し、特定した前記位相差に基づいて、前記第1距離と、前記第2検出信号に対応する前記対象物の表面における第2箇所までの距離である第2距離との差分を算出し、前記第1距離に前記差分を加算することで、前記第2距離を算出する
請求項1に記載の測距装置。
【請求項5】
前記複数の検出器は、前記領域内に直線状に並んで配置されている
請求項1~4のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項6】
前記電磁波はレーザー光である
請求項1~5のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項7】
FMCW方式によって対象物までの距離を測定する測距方法であって、
送信波として周波数が掃引された電磁波を生成するステップと、
前記送信波と前記対象物の反射によって得られる反射波とを干渉させることでビート信号を生成するステップと、
生成された前記ビート信号が入射する領域内に配置され、入射した前記ビート信号の強度を検出する複数の検出器を用いて複数の検出信号を生成するステップと、
前記複数の検出信号のそれぞれに対して信号処理を施すことで、(1)測距装置から前記複数の検出器に対応する前記対象物の表面における複数の箇所までの距離、及び(2)前記測距装置から前記複数の箇所までの距離における差分の少なくとも一方を算出するステップと、を含む、
測距方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって対象物までの距離を測定する測距装置、及び測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物までの距離を測定する方式として、FMCW方式が用いられている。FMCWレーダでは、対象物に対し連続的な電波に周波数掃引を加えた送信波を送信し、送信波の一部と、対象物から反射してきた反射波とを干渉させることでビート信号を生成し、このビート信号に対し周波数分析を行い、対象物までの距離を算出している(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によると、測定分解能を向上させるために、バンドパスフィルタを用い、バンドパスフィルタの選択度を高く(バンドパスフィルタのバンド幅を狭く)している。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2016-003870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、複数箇所を測定する場合、それぞれの箇所を別々に測定するので、測定箇所が多いと測定箇所の数だけ測定時間が長くなる。そのため、自動車用の測距装置など高速処理が必要な用途、または、対象物の表面形状を確認するなど測定箇所が多い用途への適用が難しい。
【0005】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より高速な測距装置、及び測距方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る測距装置は、FMCW方式によって対象物までの距離を測定する測距装置であって、周波数が掃引された電磁波を送信波として生成する信号源と、信号源で生成された前記送信波を前記対象物に向けて出射し、前記対象物での反射によって得られる反射波を受信し、前記送信波と前記反射波とを干渉させることでビート信号を生成する干渉部と、前記干渉部で生成された前記ビート信号が入射する領域内に配置され、入射した前記ビート信号の強度を検出する複数の検出器と、前記複数の検出器から出力される前記ビート信号の強度を示す複数の検出信号のそれぞれに対して信号処理を施すことで、(1)当該測距装置から、前記複数の検出器に対応する前記対象物の表面における複数の箇所までの距離、及び(2)当該測距装置から前記複数の箇所までの距離における差分の少なくとも一方を算出する信号処理部とを備える。
【0007】
これにより、ビート信号が入射する領域内に複数の検出器が配置されるので、複数の検出器のそれぞれは、同時にそれぞれの検出器に応じたビート信号を受信する。それにより、複数の検出器に対応した対象物までの距離、あるいは、複数の箇所までの距離の差分が1回の測定で可能となる。よって、測定箇所が複数ある場合でも、対象物までの距離あるいは複数の箇所までの距離の差分の測定を高速に行うことができる。
【0008】
ここで、前記信号処理部は、前記複数の検出信号のそれぞれの周波数を特定し、特定した前記周波数に基づいて、当該測距装置から前記複数の箇所までの距離を算出してもよい。
【0009】
これにより、当該測距装置は、ビート周波数を用いて複数の箇所までの距離を算出できる。
【0010】
また、前記信号処理部は、前記複数の検出信号における位相差を特定し、特定した前記位相差に基づいて、当該測距装置から前記複数の箇所までの距離における差分を算出してもよい。
【0011】
これにより、複数の箇所までの距離の差分が微少(例えば、信号源の電磁波の1波長以下)であるためにビート周波数を用いて距離を算出することができない場合であっても、位相差を用いることで複数の箇所までの距離における差分を算出でき、測定分解能を向上させることができる。あるいは、顕微鏡のように対象物までの距離ではなく対象物の表面形状を測定したい場合に当該測距装置を使用することができるようになり、従来のFMCW方式による測距装置よりも利用できる分野が増える。
【0012】
また、前記信号処理部は、前記複数の検出信号のうちの第1検出信号の周波数を特定し、特定した前記周波数に基づいて、当該測距装置から、前記第1検出信号に対応する前記対象物の表面における第1箇所までの距離である第1距離を算出し、前記複数の検出信号のうちの前記第1検出信号を除く第2検出信号について、前記第1検出信号との位相差を特定し、特定した前記位相差に基づいて、前記第1距離と、前記第2検出信号に対応する前記対象物の表面における第2箇所までの距離である第2距離との差分を算出し、前記第1距離に前記差分を加算することで、前記第2距離を算出してもよい。
【0013】
これにより、複数の箇所までの距離の差分が微少な場合であっても、複数の測定箇所それぞれまでの距離を算出することができ、ビート周波数だけを用いて距離を算出する場合に比べ測定分解能を向上させることができる。
【0014】
また、前記複数の検出器は、前記領域内に直線状に並んで配置されていてもよい。
【0015】
これにより、対象物の表面形状の測定が容易になる。具体的には、基板など複数の部品が実装されている被検査物がコンベアなどで流れている場合である。コンベアから一定距離の位置に当該測距装置を設置し、コンベア上の被検査物までの複数の距離を連続して測定することにより、対象物の2次元表面形状が測定できるので、部品の実装間違いや実装忘れなどを検査する検査装置として使用することができる。
【0016】
また、前記電磁波はレーザー光であってもよい。レーザー光は指向性や収束性に優れており、また発生する電磁波の波長を一定に保つことができる特徴がある。
【0017】
これにより、安定した光を対象物に送信できるので、距離計測を容易に行える。
【0018】
また、上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る測距方法は、FMCW方式によって対象物までの距離を測定する測距方法であって、送信波として周波数が掃引された電磁波を生成するステップと、前記送信波と前記対象物の反射によって得られる反射波とを干渉させ、前記対象物の箇所に対応するビート信号を生成するステップと、生成された前記ビート信号が入射する領域内に配置され、入射した前記ビート信号の強度を検出する複数の検出器を用いて複数の検出信号を生成するステップと、前記複数の検出信号のそれぞれに対して(1)前記複数の検出信号から複数のビート周波数を特定し、特定した前記複数のビート周波数を用いて前記対象物までの複数の距離を算出する、(2)前記複数の検出信号から検出信号間の位相差を特定し、特定した前記位相差を用いて前記対象物までの距離の差分を算出する、の少なくとも一方を用いて距離を算出するステップとを含む。
【0019】
これにより、ビート信号が入射する領域内に複数の検出器が配置されるので、複数の検出器のそれぞれは、同時にそれぞれの検出器に応じたビート信号を受信する。それにより、複数の検出器に対応する対象物の表面における複数の箇所までの距離、あるいは、複数の箇所までの距離の差分が1回の測定で可能となる。よって、測定箇所が複数ある場合でも、複数の検出器に対応する対象物の表面における複数の箇所までの距離、あるいは複数の箇所までの距離の差分の測定を高速に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によって、より高速な測距装置、及び測距方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る測距装置の構成を示す図
【図2】送信波、及び反射波の周波数と時間の関係を示す図
【図3】実施の形態に係るビート周波数から距離を算出するフローチャート
【図4A】ビート周波数を用いて距離測定を行ったサンプルの外観を示す図
【図4B】ビート周波数を用いて距離測定を行った結果を示す図
【図4C】ビート周波数を用いて距離測定を行った検出器ごとの距離測定結果を示す図
【図5】測定に用いた検出器の構成を示す図
【図6A】対象物の表面が平らである場合の測定系を示す図
【図6B】図6Aの測定系における位相差の測定結果を示す図
【図7A】対象物の表面に微少な凹凸がある場合の測定系を示す図
【図7B】図7Aの測定系における位相差の測定結果を示す図
【図8】実施の形態に係る位相差から距離の差分を算出するフローチャート
【図9】検出器間の位相差を測定した結果を示す図
【図10】実施の形態に係るビート周波数と位相差から距離を算出するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。

【0023】
図1は、実施の形態に係る測距装置の構成を示す図である。測距装置1は、後述するように、測定箇所が複数ある場合でも、対象物6までの距離あるいは複数の箇所までの距離の差分の測定を高速に行うことができる特徴を有する。

【0024】
測距装置1は、信号源2、干渉部3、検出部4、及び信号処理部5を備える。

【0025】
信号源2は、周波数が掃引された電磁波を送信波として生成する。信号源2は、例えば半導体レーザーや電圧制御発振器などである。半導体レーザーは、注入電流を変えることによって容易に発振周波数を変えることができる。具体的には、半導体レーザーの発振周波数の調整方法は、半導体レーザーの注入電流を三角波で変調することにより、周波数掃引を行うなどである。よって、半導体レーザーは、FMCW方式の測距装置に使用する光源として適している。また、電圧制御発振器は、制御電圧により発振周波数を制御する発振器である。電圧制御発振器を使用する場合は、送信用のアンテナが必要となる(図1では省略)。なお、信号源2は、半導体レーザーまたは電圧制御発振器に限定されることはなく、周波数掃引された電磁波を発生させることができるものであればよい。電磁波を発生させる機器と変調信号を発生させる機器を別々に用意し、電磁波、及び変調信号を干渉させることで周波数掃引してもよい。

【0026】
干渉部3は、信号源2から送信された送信波の出射範囲を調整して対象物6に向けて出射し、また対象物6での反射によって得られる反射波を受信する。そして、干渉部3は、送信波と反射波とを干渉させることでビート信号を生成し、生成したビート信号を検出部4へ送信する。干渉部3は、レンズ3a、分配器3b、及び参照鏡3cを備える。

【0027】
レンズ3aは、信号源2から送信された送信波を、対象物6の測定を行う範囲全てを覆うように出射範囲を調整し、平行光線として出射する役割を持つ。レンズ3aは、例えばコリメータレンズである。当該測距装置は、レンズ3aを用いることで複数の測定箇所全てに同時に送信波を出射できる。例えば、対象物6の複数の測定箇所の最外となる2箇所の距離が1.6mmであれば、直径2~3mm程度の範囲に出射できるような平行光線となるようレンズ3aの選定を行う。ここで、複数の測定箇所の最外となる2箇所の距離より出射される平行光線の直径を広くしているのは、より安定している中心付近の平行光線を用い距離測定を行うためである。なお、レンズ3aは、コリメータレンズに限定されることはなく、信号源2から送信された送信波を、対象物6のそれぞれの測定箇所全てに出射できるような平行光線とすることが出来ればよい。また、レンズは1つに限らず、複数個使用してもよい。また、信号源2から送信された送信波が、対象物6の複数の測定箇所の最外となる2箇所の長さより十分に広い場合、レンズ3aは送信波を集光させるレンズを使用する、あるいはレンズ3aを使用しなくてもよい。

【0028】
分配器3bは、レンズ3aを通過し所定の出射範囲を持った送信波を、対象物6と参照鏡3cに分配して出射し、対象物6での反射によって得られる反射波と参照鏡3cで反射された送信波とを受信し、反射波と送信波とを干渉させることでビート信号を生成する。そして、分配器3bは、生成したビート信号を検出部4へ送信する。また、分配器3bは、レンズ3aと対象物6との間に設置される。

【0029】
参照鏡3cは、分配器3bによって分配された送信波が入射する領域に配置され、入射した送信波を分配器3bへ反射する役割を持つ。参照鏡3cで反射された送信波は、分配器3bでビート信号を生成するために用いられる。

【0030】
検出部4は、干渉部3で生成された複数のビート信号が入射する領域内に配置され、入射した複数のビート信号の強度を検出し、ビート信号の強度を示す複数の検出信号を信号処理部5へ送信する。検出部4は複数の検出器4aを備える。

【0031】
検出器4aは、受光素子であり、干渉部3で生成された複数のビート信号を受信し、受信したビート信号ごとにビート信号の強度を示す検出信号(電気信号)に変換し、信号処理部5へ送信する。検出器4aは、例えばフォトダイオードである。フォトダイオードは応答速度が速く、連続して測定する場合(対象物6の2次元形状など)に適している。なお、検出器4aはフォトダイオードに限定されることはない。ビート信号を検出信号に変換できればよいので、イメージセンサや、送信波の波長によってはCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などでもよく、その他の受光素子でもよい。

【0032】
信号処理部5は、検出部4から出力される複数のビート信号の強度を示す複数の検出信号のそれぞれに対して信号処理を施すことで、(1)測距装置1から、複数の検出器4aに対応する対象物6の表面における複数の箇所までの距離、及び(2)測距装置1から複数の箇所までの距離における差分の少なくとも一方(本実施の形態では、両方)を算出する。信号処理部5は、A/D(Analog-to-digital)変換器5a、及び演算部5bを備える。

【0033】
A/D変換器5aは、検出部4から送信された複数の検出信号をデジタル信号に変換し、演算部5bへ送信する。この際、検出信号の周波数成分の2倍より高い周波数でサンプリングを行い、デジタル信号に変換する必要がある。

【0034】
演算部5bは、A/D変換器5aから送信されたデジタル信号に信号処理を施すことで、(1)測距装置1から、複数の検出器4aに対応する対象物6の表面における複数の箇所までの距離、及び(2)測距装置1から、複数の検出器4aに対応する対象物6の表面における複数の箇所までの距離における差分の少なくとも一方(本実施の形態では、両方)を算出する。本実施の形態では、使用者による選択指示に応じて、(1)ビート周波数を用いて、測距装置1から対象物6の表面における複数の箇所までの距離測定を行う、(2)位相差を用いて、測距装置1から対象物6の表面における複数の箇所までの距離における差分測定を行う、(3)ビート周波数と位相差の両方を用いて、測距装置1から対象物6の表面における複数の箇所までの距離測定を行う、の測定モードのいずれかを選択的に行う。

【0035】
また、演算部5bは、具体的にはコンピュータ(パーソナルコンピュータなど)であり、記憶部、入力部、制御部及び出力部を備える。記憶部は、A/D変換器5aから送信されたデジタル信号、または信号処理後のデータを記憶したり、制御部が実行するプログラムを保持する記憶装置である。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)により構成されている。なお、本発明の実施の形態では、記憶部は演算部5bに内蔵されている例を示したが、それに限らず、記憶部は外付けハードディスクによる記憶装置として構成されていてもよい。入力部は、使用者による測定モードの選択指示などを受け付ける。入力部は、キーボード、マウス、あるいはタッチパネルなどである。制御部は、入力部で入力された測定モードに応じた測定プログラムを記憶部から読み出し、A/D変換器5aから送信されたデジタル信号を処理し、測定モードに応じた測定結果を算出する。また、制御部は、入力部より入力された情報などに応じて、各機器の制御を行う。制御部は、CPU(Central Processing Unit)などにより構成されている。出力部は、制御部によって算出された複数の箇所までの距離、あるいは複数の箇所までの距離における差分を表示する。出力部は、例えば液晶ディスプレイなどの表示媒体である。

【0036】
次に、以上のように構成された本実施の形態の測距装置のそれぞれの動作について、説明を行う。

【0037】
まず、図2を用いて、当該測距装置に用いているFMCW方式による距離測定の原理を説明する。図2は、送信波(図2では、破線で示す)、及び反射波(図2では、実線で示す)の周波数と時間の関係を示す図である。対象物6によって反射された反射波は、送信波と比べ、対象物6までの距離の往復に必要な時間だけ、波形が遅れる方向(図2では、右方向)に時間差T(T=2nL/c)が生じている波である。ここで、nは屈折率(空気中であれば、おおよそ1)、Lは対象物6までの距離、cは光速(おおよそ3×10m/s)であり、屈折率nと光速cは定数である。その時間差Tが生じるため、同一時刻で送信波と反射波の周波数を見た場合、その周波数に差が生じている。この周波数の差が、ビート周波数となる。送信波と反射波との時間差Tは、対象物6までの距離によって変化する。よって、生成されるビート周波数も対象物6までの距離によって変化する。

【0038】
周波数掃引の繰り返し周波数をfm、周波数掃引幅の最大値を△F、ビート周波数をfbとすると干渉部3から対象物6までの距離Lは、
L=c*fb/(4*n*fm*△F) ・・・式1
で表される。また、周波数掃引の繰り返し周波数fm、周波数掃引幅の最大値△Fは、使用者が信号源2で設定する送信波条件である。つまり、式1において未知なパラメータはビート周波数のみである。よって、ビート周波数を求め、他の送信波条件と合わせて式1に代入し計算することで、対象物6までの距離が求まる。

【0039】
一例として、周波数掃引の繰り返し周波数fmが100Hz、周波数掃引幅の最大値△Fが200MHzの信号源、及びビート周波数fbが10KHzであった場合、対象物6までの距離は式1より、L=37.5mとなる。

【0040】
また、ビート周波数を用いた場合における測定距離の最大値(以降、最大測定距離)について、説明を行う。最大測定距離は、信号源2の電磁波の可干渉距離、すなわち、スペクトル線幅で決まる。スペクトル線幅を△vとすると、最大測定距離Lmaxは、
Lmax=c/(2*n*π*△v) ・・・式2
で表される。ここで、πは円周率であり、定数である。電磁波の往復の伝搬を考慮し、式2の係数は1/2としている。例えば、信号源2に半導体レーザーを使用している場合、半導体レーザーのスペクトル線幅は通常100KHz~10MHz程度であるので、最大測定距離Lmaxは5~500m程度となる。

【0041】
次に、本実施の形態の測距装置のそれぞれの測定モードについて、図3~10を用いて説明を行う。

【0042】
[(1)ビート周波数を用いて、複数の箇所までの距離測定を行う方法]
(ビート周波数を用いて距離を求める流れ)
図3は、実施の形態に係るビート周波数から距離を算出するフローチャートである。まず、分配器3bは、信号源2から送信された送信波と対象物6で反射された反射波とを干渉させ、ビート信号を生成し、検出部4へ送信する。検出部4は、分配器3bで生成されたビート信号が入射する領域内に配置されるので、複数の検出器4aのそれぞれは、同時にそれぞれの検出器4aに応じたビート信号を受信する(S1)。反射波は、送信波に比べ対象物6までの往復距離に応じた時間差T(T=2nL/c)が生じている。その結果、送信波と反射波とから生成されたビート信号も、対象物6までの距離に応じて変化する。検出部4は、受信したビート信号を電気信号である検出信号に変換し(S2)、その検出信号をA/D変換器5aへ送信する。A/D変換器5aは、検出部4で検出された検出信号を、デジタル信号へ変換する(S3)。A/D変換器5aは、複数の検出器4aごとに検出信号をデジタル信号へ変換し、変換したデジタル信号を演算部5bへ送信する。演算部5bは、デジタル信号に対しFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)解析を行うことで、ビート周波数を算出する(S4)。演算部5bは、算出したビート周波数と信号源2で設定した送信波条件を式1に代入し計算することで、対象物6までの距離を算出する(S5)。そして、演算部5bは、複数の検出器4aごとに、ステップS3~S5を繰り返し、複数の検出器4aに対応した対象物6までの距離を算出する。出力部は、全ての検出器4aごとに距離が算出された後、その算出結果を表示する(S6)。

【0043】
これにより、本実施の形態の測距装置は、ビート信号が入射する領域内に複数の検出器4aが配置されているので、複数の検出器4aのそれぞれは、同時にそれぞれの検出器に応じたビート信号を受信できる。つまり、複数の検出器4aに対応した対象物6までの距離を1回の測定で算出できる。よって、測定箇所が複数ある場合でも、本実施の形態の測距装置は、対象物6までの距離の測定を高速に行うことができる。

【0044】
また、当該測距装置は、対象物6の表面の凹凸が比較的大きい場合、隣り合う検出器4aそれぞれの対象物6までの距離を比較することで、対象物6の表面形状を測定できる。図4A~Cを用いて、表面形状を測定する一例を説明する。

【0045】
(ビート周波数を用いた距離測定結果)
次に、本実施の形態の測距装置を使用し、ビート周波数を用いて距離を測定した結果を説明する。図4Aは、ビート周波数を用いて距離測定を行った際に使用した測定サンプル10の外観を示す図である。測定サンプル10は、凸部10aと平面部10bから成るサンプルである。凸部10aの厚みは、平面部10bを基準とし3mmである。つまり、凸部10aは平面部10bから3mm突き出ている。測定に使用した送信波の波長は1310nmの近赤外線光、周波数掃引の繰り返し周波数fmは100Hzである。また、検出部4は16個の検出器4a(ch0からch15の16個)を直線状に等間隔に配置したものを用いる。図5は、今回の測定に用いた検出部4の構成を示す図(分配器3bで生成されたビート信号が入射する方向から見た図)である。また、検出部4は、複数の検出器4aを備える。本実施の形態では、検出器4aの幅は80μmであり、検出器4a間のギャップ4bは20μmである。なお、図5は検出部4の一例であり、検出器4aの配置及び個数などは、これに限定されるものではない。

【0046】
図4Bは、検出器4aごとにビート周波数を用いて距離測定を行った結果を示す図である。図4Bの横軸は測定サンプル10までの距離、縦軸は波形の強度を表している。対象物6までの距離は、図4Bの波形のピーク強度(最も高い強度であり、それぞれの検出器4aごと(ch0~ch15ごと)のグラフの山の頂部)に対応する距離から求められる。検出器4aのch3~ch13までには波形の山が2つあるが、これはch3~ch13の検出器4aが対象物6の段差のある箇所(凸部10aと平面部10bの境)に対応するビート信号を受信しているからである。演算部5bは、検出器4aのch3~ch13に対し、波形の強度の大きい方をその検出器4aに対応する測定サンプル10までの距離と判断する。

【0047】
図4Cは、図4Bの対象物6までの距離を検出器4aごとに並べた図である。図4Cの横軸は検出器4aごとの識別(ch0~ch15)を、縦軸は測定サンプル10までの距離を表している。図4Cの結果より、測定サンプル10の凸部10aまでの距離は、ch0~ch6に示されており、およそ33.5mmである。測定サンプル10の平面部10bまでの距離はch7~ch15に示されており、およそ30.5mmである。よって、凸部10aの厚みは平面部10bを基準とし3mmとなり、測定サンプル10の寸法と一致する。これにより、本実施の形態の測距装置は、測定サンプル10の表面形状が測定できる。

【0048】
[(2)位相差を用いて、測距装置1から複数の箇所までの距離における差分測定を行う方法]
(位相差を用いて距離の差分を求める概要)
次に、隣り合う検出器4a間のビート信号の位相差から、隣り合う検出器4aに対応する対象物6の箇所までの距離の差分を算出する原理について説明する。上述では、本実施の形態の測距装置により、ビート周波数を用いて対象物6までの距離の算出を説明したが、対象物6の表面の凹凸が微少である(例えば、信号源2から送信される送信波の1波長以下である)場合には、ビート周波数を用いても距離測定ができない。その理由は、ビート信号の測定時間が周波数掃引の繰り返し周波数で制限される(信号源2から送信される送信波が対称三角波の場合、測定時間は1/(2fm)である)ので、当該測距装置は、検出器4a間のビート周波数の違いを測定できないからである。つまり、ビート周波数の測定分解能は対称三角波の場合は2fmで決まり、当該測距装置は、2fmより小さいビート周波数の差を測定できない。例えば、対象物6の表面の凹凸が信号源2から送信される電磁波の1波長である場合にビート周波数を用いて測定すると、当該測距装置は、複数の検出器4a間でのビート周波数の差が測定できないので、複数の検出器4aに対応する対象物6の箇所までの距離が全て等しい距離であると算出してしまう。そこで、本実施の形態の測距装置は、複数の検出器4a間のビート周波数の差を測定できない場合であっても、測定可能であり、かつ対象物6までの距離によって変化する検出器4a間のビート信号の位相差を用いて距離の差分の測定を行うことで、後述するように微少な凹凸でも測定ができる。また、ビート信号の位相差は信号源2から送信される送信波の波長に対して周期的である(位相変化2π(rad)は送信波の半波長λ/2の長さに相当する)ため、本実施の形態の測距装置は、その波長以下の精度で、対象物6の微少な凹凸の測定ができる。

【0049】
まず、対象物6の表面が平ら(微少な凹凸がない)であり、かつ送信波に対し垂直に配置される場合に、検出器4a間のビート信号に位相差は発生しないことを説明する。図6Aは、対象物6の表面が平らである場合の測定系を示す図であり、分配器3b、検出部4、及び対象物6を表している。対象物6としては、鏡を用いている。鏡は、分配器3bから出射された送信波の出射方向に対し、垂直に配置されている。つまり、複数の検出器4aに対応する対象物6の箇所までの距離は、全て等しくなる。図6Bの(a)及び(b)は、図6Aの測定系における2つの検出器4a間のビート信号の位相差を示す図である。図6Bの(a)及び(b)の横軸は時間、縦軸は振幅を表している。図6Bの(a)及び(b)の結果から、検出器4a間でビート信号に位相差が発生していないことがわかる。

【0050】
次に、対象物6の表面に微少な凹凸がある場合に、検出器4a間のビート信号に位相差が生じ、その位相差から検出器4aに対応する対象物6までの距離における差分が算出できることを説明する。図7Aは、対象物6の表面に微少な凹凸がある場合の測定系を示す図であり、分配器3b、検出部4、及び対象物6を表している。対象物6としては、鏡を用いている。鏡は、分配器3bから出射された送信波の出射方向に対し、わずかに傾けて配置されている。つまり、図7Aの測定系は、鏡を傾けて配置することで、対象物6の表面に微少な凹凸がある場合を模擬している。なお、図7Aでは、わかりやすいように鏡の傾き角度を実際の傾き角度より大きく示している。

【0051】
対象物6である鏡を傾けているため、複数の検出器4aのそれぞれに対応する対象物6の箇所までの距離は、それぞれ異なり、微少な距離の分だけ距離の差分(光路長の差分であり、図7A中の△Lに相当)が生じている。検出器4aごとに距離の差分があるため、分配器3bが受信する反射波には、距離の差分△Lに対応する時間差△T(△T=2n△L/cで表され、距離の差分△Lだけ長い方の反射波は、その往復に対応する時間差だけ反射波が遅れる。つまり、図2であれば、反射波は距離の差分に応じた時間差だけ、横軸の右方向にシフトする。)が生じている。そのため、分配器3bで生成されたビート信号には、この時間差に相当する検出器4a間の位相差が生じている。図7Bの(a)及び(b)は、図7Aの測定系における2つの検出器4a間のビート信号の位相差を示す図である。図7Bの(a)及び(b)の横軸は時間、縦軸は振幅を表わしている。図7Bの(a)及び(b)の結果から、距離の差分に対応した位相差(図中の△θ)が生じている。位相差は、距離の差分が大きくなると、つまり時間差が大きくなると、大きくなる。すなわち、位相差は、距離の差分に応じて変化する。そのことから、演算部5bは、距離の差分を、ビート信号の位相差を特定することで算出する。信号源2の送信波の波長をλ、隣り合う検出器4a間の位相差を△θとすると、検出器4aごとに対応する対象物6の箇所までの距離の差分△Lは、
△L=(λ/2)*(360/△θ) ・・・式3
で表される。また、式3より、距離の差分△Lの測定分解能は、信号源2から送信される送信波の波長λを短くすることで、容易に高められることがわかる。

【0052】
(位相差を用いて距離の差分を求める流れ)
次に、位相差から距離の差分を算出する手順に関し、説明を行う。図8は、本実施の形態に係る位相差から距離の差分を算出するフローチャートである。まず、分配器3bは、信号源2から送信された送信波と対象物6で反射された反射波とを干渉させ、ビート信号を生成し、検出部4へ送信する。検出部4は、分配器3bで生成されたビート信号が入射する領域内に配置されるので、複数の検出器4aのそれぞれは、同時にそれぞれの検出器4aに応じたビート信号を受信する(S11)。

【0053】
検出部4は、受信したビート信号を電気信号である検出信号に変換し(S12)、その検出信号をA/D変換器5aへ送信する。A/D変換器5aは、隣り合う検出器4aの同一期間における検出信号をデジタル信号へ変換する(S13)。そして、A/D変換器5aは、変換した隣り合う検出器4aに対応した2つのデジタル信号を演算部5bへ送信する。演算部5bは、2つのデジタル信号を信号処理し(2つのデジタル信号の位相差を比較し)、隣り合う検出器4a間のビート信号の位相差を特定する(S14)。演算部5bは、特定した位相差と、信号源2から送信される送信波の波長を式3に代入し計算することで、隣り合う検出器4aに対応する対象物6の箇所までの距離の差分を算出する(S15)。そして、演算部5bは、複数の検出器4aごとに、ステップS13~S15を繰り返す。演算部5bによって複数の検出器4a間ごとの距離の差分が算出されたら、出力部はその算出結果を表示する(S16)。

【0054】
これにより、本実施の形態の測距装置は、ビート信号が入射する領域内に複数の検出器4aが配置されているので、複数の検出器4aのそれぞれは、同時にそれぞれの検出器4aに応じたビート信号を受信できる。つまり、複数の検出器4aに対応した対象物6までの距離の差分を1回の測定で算出できる。よって、測定箇所が複数ある場合でも、本実施の形態の測距装置は、対象物6までの距離の差分の測定を高速に行うことができる。なお、上記説明では、隣り合う検出器4aとのビート信号の位相差から距離の差分を算出したが、これに限定されるものではない。例えば、第1検出器を基準とし、その第1検出器と他の検出器とのビート信号の位相差を求め、距離の差分を算出してもよい。また、A/D変換器5aは隣り合う検出器4a間に対応した検出信号をデジタル信号に変換したが、これに限定されるものではない。例えば、デジタル信号に変換する検出器4aは隣り合っていなくてもよい。あるいは、2つの検出器4aだけではなく3つ以上の検出器4aの検出信号を一度にデジタル信号に変換してもよい。ただし、その場合は、変換する検出信号は、全て同一期間に受信したものである必要がある。

【0055】
(実施の形態に係る位相差を用いた距離の差分の測定結果)
次に、本実施の形態の測距装置を使用し、位相差を用いて距離の差分を測定した結果を説明する。図9は、検出器4a間の位相差を測定した結果を示す図である。図9の縦軸は検出器4aのch0を基準(位相差360°)とした検出器4aごとの位相差、横軸は検出器4aごとの識別(ch0~ch15)を表している。

【0056】
対象物6は、分配器3bから出射された送信波の出射方向に対し、鏡をわずかに傾けて配置されている(図7Aの測定系)。検出部4は、16個の検出器4a(ch0からch15の16個)を直線状に等間隔に配置したもの(図5の検出部4)を用いる。なお、検出器4aの配置及び個数などは一例であり、これに限定されるものではない。位相差から距離の差分を算出するためには、検出器4aの配置に制限はなく、検出器4aの個数は2つ以上あればよい。また、信号源2から送信された送信波の波長λは、1310nmとする。なお、送信波の波長λも一例であり、これに限定されるものではなく、電磁波であればよい。

【0057】
対象物6は表面が平らである鏡をわずかに傾けたものであり、また検出器4aも等間隔で配置されているので、隣り合う検出器4aに対応する対象物6までの距離の差分は、全て等しい距離となる。そのため、隣り合う検出器4a間のビート信号の位相差は、全て同じ位相差となるはずである。つまり、図9で示すと、検出器4a間の位相差を測定した結果は、検出器4a間ごとの位相差を結ぶと右下がりの直線となるはずである(図9の破線)。実際の測定結果は、おおよそ右下がりの直線となっている。(図9の実線)そのことから、当該測距装置は、位相差から距離の差分を算出することで、鏡をわずかに傾けたことによる微少な距離の差分を測定できていることがわかる。図9から、位相差はおおよそ57°である。式3に送信波の波長λに1310nm、位相差△θに57°を代入すると、△L=103.7nmとなる。よって、隣り合う検出器4aに対応する対象物6の箇所の距離の差分は、およそ103.7nmである。また、送信波の波長λが1310nmであるのに対し、距離の差分の測定結果は103.7nmであることから、本実施の形態の測距装置は送信波の波長以下の精度で距離の差分を測定出来ている。このように、位相差を用いて距離の差分を測定する場合には、本実施の形態の測距装置はナノメートルオーダーでの測定ができる。

【0058】
これにより、顕微鏡などのように対象物6までの距離ではなく対象物6の微少な表面形状を測定したい場合にも当該測距装置を使用することができるようになり、当該測距装置は従来のFMCW方式による測距装置よりも利用できる分野が増える。

【0059】
[(3)ビート周波数と位相差の両方を用いて、複数の箇所までの距離測定を行う方法]
(ビート周波数と位相差の両方を用いて距離を求める流れ)
上述では、微少な距離の差分を算出する方法を説明したが、対象物6の表面形状に微少な凹凸(例えば、信号源2が送信する送信波の1波長以下の距離の凹凸)があり、微少な凹凸の形状と微少な凹凸までの距離の両方を測定したい場合がある。しかし、上述の通り、ビート周波数のみを用いた測定では、検出器4a間のビート周波数の差が測定できず、精度のよい距離が算出できない。また位相差のみを用いた測定では微少な凹凸の距離の差分は測定できるが、対象物6までの距離が算出できない。そこで、本実施の形態の測距装置は、ビート周波数と位相差の両方を用いて、検出器4aが受信するビート信号のビート周波数から距離を算出し、検出器4a間のビート信号の位相差から距離の差分を算出し、それぞれを加算することで、対象物6の微少な凹凸の形状と微少な凹凸までの距離を算出する。

【0060】
図10は、実施の形態に係るビート周波数と位相差とから距離を算出するフローを示すフローチャートである。まず、干渉部3は、信号源2から送信された送信波と対象物6で反射された反射波とを干渉させ、ビート信号を生成し、検出部4へ送信する。検出部4は、分配器3bで生成されたビート信号が入射する領域内に配置されるので、複数の検出器4aのそれぞれは、同時にそれぞれの検出器4aに応じたビート信号を受信する(S21)。検出部4は、受信したビート信号を電気信号である検出信号に変換し(S22)、その検出信号をA/D変換器5aへ送信する。まず、A/D変換器5aは、第1検出器4aから送信されてきた第1検出信号を第1デジタル信号へ変換し、演算部5bへ送信する。そして、演算部5bは、第1デジタル信号に対しFFT解析を行うことで、第1ビート周波数を算出し、算出したビート周波数と信号源2で設定した送信波条件を式1に代入し計算することで、第1検出器4aに対応した対象物6までの距離である第1距離を算出する(S23)。次に、A/D変換器5aは、第1検出器4aを含む2つの検出器4a(以降、2つの検出器4aは、第1検出器4aと第2検出器4aとする)の同一期間における検出信号をデジタル信号へ変換し(S24)、変換した2つの検出器4aに対応した2つのデジタル信号を演算部5bへ送信する。演算部5bは、2つのデジタル信号を信号処理し(2つのデジタル信号の位相差を比較し)、2つの検出器4a間のビート信号の位相差を特定する(S25)。次に、演算部5bは、特定した位相差と、信号源2から送信される送信波の波長を式3に代入し計算することで、2つの検出器4aに対応する対象物6の箇所までの距離の差分を算出し(S26)、第1距離と距離の差分とから、第2検出器4aに対応した対象物6の箇所までの距離である第2距離を算出する(S27)。そして、演算部5bは、複数の検出器4aごとに、ステップS24~S27を繰り返し行うことで、複数ある検出器4aそれぞれに対応した対象物6の箇所までの距離を算出する。出力部は、演算部5bで算出された距離を表示する(S28)。

【0061】
これにより、本実施の形態の測距装置は、ビート信号が入射する領域内に複数の検出器4aが配置されているので、複数の検出器4aのそれぞれは、同時にそれぞれの検出器4aに応じたビート信号を受信できる。つまり、複数の検出器4aに対応した微少な凹凸を含む対象物6までの距離と距離の差分とを1回の測定で算出できる。よって、測定箇所が複数ある場合でも、本実施の形態の測距装置は、微少な凹凸を含む対象物6までの距離の測定を精度よく、かつ高速に行うことができる。なお、上記説明では、第1距離との距離の差分を算出し、第1距離と距離の差分とを加算することで、対象物6までの距離を算出したが、距離の算出方法はこれに限定されるものではない。例えば、当該測距装置は、第1距離との差分から算出した第2距離を用いて、第3検出信号に対応する第3距離を算出してもよい。具体的には、当該測距装置は、第2検出信号と第3検出信号の位相差を特定し、第2距離と第3距離との差分を算出し、その差分に第2距離を加算し、第3距離を算出してもよい。つまり、検出信号間の位相差を特定し距離を算出する際、一方の検出信号に対する対象物6までの距離がわかっていればよい。また、上記説明では、ビート周波数から第1距離を算出し、第1距離と位相差から算出した距離の差分とを加算することで第2距離を算出したが、これに限定されるものではない。例えば、位相差を用いて隣り合う検出器4aに対応する対象物6の箇所までの距離の差分を算出してから、ビート周波数により第1距離を算出し、距離の差分と第1距離とを加算することで、対象物6までの距離を算出してもよい。また、A/D変換器5aは隣り合う検出器4a間に対応した2つの検出信号をデジタル信号に変換したが、これに限定されるものではない。例えば、3つ以上の検出器4aの検出信号を一度にデジタル信号に変換してもよい。ただし、その場合は、変換する検出信号は、全て同一期間に受信したものである必要がある。

【0062】
以上、本発明の測距装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明に含まれる。例えば、本実施の形態では、A/D変換器5aは1つである場合を示したが、A/D変換器5aは複数あってもよい。例えば、複数の検出器4aと同じ数であってもよい。これにより、複数のビート信号を同時にA/D変換できるので、信号処理部5での信号処理時間を短縮することができる。

【0063】
また、信号源2は演算部5bとLAN(Local Area Network)などで接続され、演算部5bを用いて信号源2の送信波条件を制御してもよい。これにより、演算部5bで信号源2の送信波条件と距離測定結果とを関連づけができるので、出力部で測定結果を表示させる際に信号源2の送信波条件も合わせて表示させる、あるいは測定結果を保存する際、合わせて信号源2の送信波条件も保存させることなどができるので、使用者は信号源2の送信波条件の管理がしやすくなる。

【0064】
また、本実施の形態では、複数の検出器4aは直線状に配置したが、平面上に複数の検出器4aを配置してもよい。これにより、1回の測定で対象物6の平面形状の測定ができるので、対象物6の表面形状を測定する場合に、測定時間の短縮ができる。

【0065】
また、対象物6の表面に微少な凹凸があって、かつ対象物6の第1箇所までの距離である第1距離が既知である場合には、既知である第1距離に対応するビート信号との比較により、他の測定箇所までの距離と第1距離との差分を算出し、距離の差分と第1距離とを加算することで、他の測定箇所までの距離を算出してもよい。これにより、信号処理部5での処理量を減らすことができ、処理時間を短縮できる。

【0066】
また、ビート周波数を用いて距離を測定する場合、特定されたビート周波数を比較し、検出器4a間のビート周波数の差が所定値以下であった場合、自動で測定モードをビート周波数と位相差との両方を用いて距離を算出するモードに切り替えてもよい。これにより、使用者が測定モード指示を誤った場合(対象物6の表面に微少な凹凸があるにも関わらず、ビート周波数のみを用いて距離を算出するモードを選択した場合など)でも、対象物6の形状に合った測定モードに切り替えて測定ができるので、常に精度のよい測定結果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば、対象物の形状、及び微少な表面状態を測定する測距装置として利用することができる。あるいは、製造工程などで対象物までの距離を測定することで部品の実装忘れや部品間違いなどを検査する装置として利用することもできる。
【符号の説明】
【0068】
1 測距装置
2 信号源
3 干渉部
3a レンズ
3b 分配器
3c 参照鏡
4 検出部
4a 検出器
4b ギャップ
5 信号処理部
5a A/D変換器
5b 演算部
6 対象物
10 測定サンプル
10a 凸部
10b 平面部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4A】
3
【図4B】
4
【図4C】
5
【図5】
6
【図6A】
7
【図6B】
8
【図7A】
9
【図7B】
10
【図8】
11
【図9】
12
【図10】
13