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明細書 :リバーシブル衣服及びリバーシブル衣服材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-216880 (P2016-216880A)
公開日 平成28年12月22日(2016.12.22)
発明の名称または考案の名称 リバーシブル衣服及びリバーシブル衣服材料
国際特許分類 A41D  13/002       (2006.01)
A41D   1/04        (2006.01)
A41D  31/02        (2006.01)
FI A41D 13/002
A41D 1/04 C
A41D 31/02 Z
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2016-094289 (P2016-094289)
出願日 平成28年5月10日(2016.5.10)
優先権出願番号 2015101545
優先日 平成27年5月19日(2015.5.19)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】佐古井 智紀
【氏名】藏澄 美仁
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 3B011
3B031
Fターム 3B011AB01
3B011AC13
3B011AC18
3B031AB06
3B031AB10
3B031AC01
要約 【課題】表と裏とを入れ替えて着用したときの伝熱特性の差を利用して、寒暖差、温度差に対応して着用できるリバーシブル衣服及びリバーシブル衣服材料を提供する。
【解決手段】本発明に係るリバーシブル衣服材料は、空気層を形成するための通気抵抗素材10と、該通気抵抗素材を厚さ方向に挟む一方の外面に配置される、通気性を有する第1の素材12と、前記通気抵抗素材を厚さ方向に挟む他方の外面に配置される、空気の流通を実質的に遮断する非通気性の第2の素材14と、を備えることを特徴とする。リバーシブル衣服の表と裏を入れ替えて着用することにより、通気抵抗素材によって構成される空気層の空気の流動性が制御され、高温環境と低温環境に対応した着用形態を選択することができる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
空気層を形成するための通気抵抗素材と、
該通気抵抗素材を厚さ方向に挟む一方の外面に配置される、通気性を有する第1の素材と、
前記通気抵抗素材を厚さ方向に挟む他方の外面に配置される、空気の流通を実質的に遮断する非通気性の第2の素材と、
を備えることを特徴とするリバーシブル衣服材料。
【請求項2】
前記通気抵抗素材は、空気の流通性が異なる複数の通気抵抗素材が、厚さ方向に積層して配置され、
前記積層された複数の通気抵抗素材は、前記第1の素材から前記第2の素材に向け、空気の流通性がより高い素材からなるものから、より低い素材からなるものの順に配置されていることを特徴とする請求項1記載のリバーシブル衣服材料。
【請求項3】
前記通気抵抗素材は、2層に積層された通気抵抗素材からなることを特徴とする請求項2記載のリバーシブル衣服材料。
【請求項4】
請求項1~4のいずれか一項記載のリバーシブル衣服材料を用いて作製されたリバーシブル衣服。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、表と裏を入れ替えて着用することにより寒暖差に対応することができるリバーシブル衣服及びリバーシブル衣服材料に関する。
【背景技術】
【0002】
朝晩と日中で大きな寒暖差があるような場合や、温度差のある戸外と屋内との間を移動するような場合には、コートや上着の着脱により温度差に対処している。また、冷暖房の温調設備がある室内であっても、保温機能を有する衣服の着用は欠かせない。
リバーシブル衣服は、1枚の衣服で二通りの着こなしができることから、ファッションの世界ではいろいろな製品が提案されている。しかしながら、従来のリバーシブル衣服は、ほとんどがファッション性を主体とする商品である。表と裏を入れ替えたときの衣服の伝熱特性の変化に着目し、この伝熱特性の差を利用して寒暖差に対処しようとする商品はほとんど見当たらない。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、ジャケットなどの保温性を保つ衣服として、衣服の内面にアルミニウムやマイラーなどの熱反射ライニングを取り付けた衣服について記載されている。熱反射材は体温を反射して着用者を暖かく保つが、水蒸気や空気を透過させないことから、衣服の内側が湿り、不快感をひき起こす。この課題を解決する方法として、ベース材料の一方の面にパターン化された熱管理要素を配置する例が記載されている。ベース材料の一方の側面を部分的に熱管理要素で被覆することにより、体の方に熱を反射させ、またベース材料の通気性により、寒冷な環境、暖かい環境での使用に適するとされている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-237919号公報
【特許文献2】特表2012-526008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したベース材料と熱管理要素とを組み合わせた衣服は、さまざまな環境(気候)下において着用できる衣服として提供される。しかしながら、この衣服は、リバーシブル衣服のリバーシブル性を利用して、保温性や着用時の快適性を得ることを目的として構成されたものではなく、単に着用時の通気性を得ることを目的として熱管理要素の配置を提案しているに過ぎない。
本発明は、表と裏とを入れ替えて着用したときのリバーシブル衣服の伝熱特性の差を利用して、寒暖差、温度差に好適に対応して着用することができるリバーシブル衣服及びリバーシブル衣服材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
衣服は個々人の周囲に微気候を形成する。特に屋外など、暖冷房による温熱環境調節を期待できない場合、衣服は温熱環境調節において特に重要となる。
生地の含気率及び厚さが大きくなると衣服の保温性は増加し、また、衣服内空間の厚さが増すと衣服の保温性は増加する。ただし、衣服内空間の厚さが厚過ぎると衣服内に対流が生じ、衣服の保温性は減少する。衣服の保温性は、衣服が身体の周囲にどれだけの静止空気層を保持できるかに大きく依存する。逆に言うなら、静止空気層を制御できれば、保温性の制御が可能になる。
【0007】
本発明に係るリバーシブル衣服は、表と裏を入れ替えて着用することにより、身体の周囲に形成される空気層の流動性が制御され、空気層の流動性が制御されることによって、衣服の保温性の調節を可能にしたものである。すなわち、本発明に係るリバーシブル衣服材料は、空気層を形成するための通気抵抗素材と、該通気抵抗素材を厚さ方向に挟む一方の外面に配置される、通気性を有する第1の素材と、前記通気抵抗素材を厚さ方向に挟む他方の外面に配置される、空気の流通を実質的に遮断する非通気性の第2の素材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
屋外では気流が完全に無くなることは無い。リバーシブル衣服材料の通気性を表裏非対称とし、表裏を入れ替えることにより、屋外の風の空気層(通気抵抗素材)への流入し易さを変え、通気抵抗素材によって形成される空気層内における空気の流動特性を変化させる。非通気性の第2の素材が外界環境側に来るときには、内側の通気抵抗素材層への空気の流入が抑制され、通気抵抗素材層内に静止空気層が形成され保温性が高くなる。逆に、通気性の第1の素材が外界環境側に来るときは、厚さを持つ通気抵抗素材層内に静止空気層が形成されず、保温性が低くなる。
【0009】
通気抵抗素材は空気層を形成するためのものである。通気抵抗素材の厚さはとくに限定されないが、空気層を形成するため、ある程度の厚さが確保できるものである必要がある。通気抵抗素材によって形成される空気層は、リバーシブル衣服の表と裏を入れ替えて着用することで、空気が流通する空間になったり、空気が静止する空間(静止空気層)になったりする。抵抗素材というのは、空気を流通させる特性を備えることを前提とすると同時に、静止空気層として作用させる際に、空気の対流をある程度抑制する空気の流通抵抗を備えることを意味している。
【0010】
通気性を備える第1の素材とは、空気が素材の厚さ方向に流通する素材であり、第1の素材を介して通気抵抗素材との間で空気が相互に流通する作用を有するものである。第1の素材の通気性は高ければ高いほど良い。第1の素材には織布、不織布が使用でき、素材が限定されるものではない。
【0011】
非通気性の第2の素材とは、空気の流通を実質的に遮断する機能を備える素材の意である。空気の流通を実質的に遮断するとは、第2の素材に気流があたった際に、第2の素材と通気抵抗素材との間で相互に空気が流通することを阻止する作用を備える意味である。したがって、第2の素材は樹脂シートのような完全に空気の流通を遮断する素材であっても良いし、ウインドブレーカに用いられているような気流の遮断性を備えている素材で、通気抵抗素材によって形成される空気層内の空気の流動を生じさせないものであってもよい。
【0012】
本発明に係るリバーシブル衣服材料を構成する通気抵抗素材は、必ずしも単一層として形成するものに限るものではなく、複数層に通気抵抗素材を積層して用いることもできる。
通気抵抗素材を複数層に積層して用いる場合には、空気の流通性が異なる複数の通気抵抗素材を厚さ方向に積層して配置し、積層された複数の通気抵抗素材は、前記第1の素材から前記第2の素材に向け、空気の流通性がより高い素材からなるものから、より低い素材からなるものの順に配置することにより、リバーシブル衣服の表裏を反転したときの熱抵抗の差を大きくすることができ、寒暖差、温度差により好適に対応することができるリバーシブル衣服材料として提供することができる。
通気抵抗素材を2層構造とすることももちろん可能であり、その場合は、第1の素材に近い側の一方の通気抵抗素材を他方の通気抵抗素材よりも空気の流通性の高い素材からなるものとすればよい。
【0013】
本発明に係るリバーシブル衣服材料を用いてリバーシブル衣服を調製することにより、表裏を反転して着用することで、寒暖差、温度差に好適に対応することができるリバーシブル衣服として提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るリバーシブル衣服及びリバーシブル衣服材料によれば、表と裏とを入れ替えて着用することにより、高温環境と低温環境に好適に対応して着用することができるリバーシブル衣服を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】リバーシブル衣服の構成と使用例を示す説明図である。
【図2】試料1~5について、表裏を入れ替えたときの熱抵抗を測定した結果を示すグラフである。
【図3】試料1~5について、熱抵抗の測定結果を熱抵抗の増加率として示したグラフである。
【図4】条件5(試料5)について測定例1と測定例2での条件で熱抵抗の増加率を測定した結果を示すグラフである。
【図5】条件5~8(試料5~8)について、表裏を入れ替えたときの熱抵抗を測定した結果を示すグラフである。
【図6】条件5~8(試料5~8)について、熱抵抗の測定結果を熱抵抗の増加率として示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(リバーシブル衣服の構成例)
図1は、本発明に係るリバーシブル衣服材料の構成と、リバーシブル衣服の使用例を示す。図1(a)は、高温環境でリバーシブル衣服を着用する例、図1(b)は、低温環境でリバーシブル衣服を着用する例である。図1(a)、(b)は、着用環境によってリバーシブル衣服の表と裏を入れ替えて着用することを示す。

【0017】
図1(a)、(b)に示すリバーシブル衣服材料は、通気抵抗素材10と、通気抵抗素材10の厚さ方向の一方の面に配した通気性を有する第1の素材12と、通気抵抗素材10の他方の面に配した非通気性である第2の素材14とを備える。

【0018】
通気抵抗素材10は空気(気体)の流通に対して通気抵抗として作用する厚みを備えた層であり、外部から通気抵抗素材10に流入する空気の速度を通気抵抗素材10の内部において低減させる作用を持つものである。通気抵抗素材10を構成する素材、材料、織り方、厚さ、作製方法は任意に選択することができる。通気抵抗素材10を構成する素材は、単一素材に限らず、複数の素材を組み合わせた複合素材であってもよい。
通気抵抗素材10は、ある程度の通気性が確保できる空気層として作用する。
通気性を有する通気抵抗素材10としては、例えば、綿(ワタ)、キルト芯、通気性クッション材等の製品が利用できる。

【0019】
通気性を有する第1の素材12とは、空気(気体)が生地の厚さ方向に通過する生地であり、第1の素材12を通して空気(気体)が通気抵抗素材10との間で相互に流通する機能を有し、かつ、通気抵抗素材の形状を維持するために保護する素材をいう。
第1の素材12には織布、不織布が使用でき、使用する素材や生地の厚さが限定されるものではない。第1の素材12は、その作用として通気性が高ければ高いほど良いと考えられる。第1の素材12には夏季の下着やスポーツウェアに使われるメッシュ生地、カーテンに用いられるレース生地等の製品が利用できる。これらは何れも通気性が高い素材である。

【0020】
非通気性である第2の素材14とは空気(気体)の流通を実質的に遮断する機能を備える素材をいう。第2の素材14は、通気性が低ければ低いほど好ましく、かつ、熱伝導性が低ければ低いほど好ましい。第2の素材14としてはウィンドブレーカに用いられる高密度タフタ、樹脂フィルム、アルミニウムフィルム等が使用できる。

【0021】
本実施形態のリバーシブル衣服は、表と裏を入れ替えて着用することにより、着用環境が高温で放熱したい場合と、着用環境が低温で保温、断熱したい場合に対応できるようにしたものである。
本発明に係るリバーシブル衣服の作用において特徴とする点は、外界環境には空気の流れ(風)があることを前提とし、リバーシブル衣服の表と裏を入れ替えて着用したときの気流の作用を利用して、所望の特性が得られるようにする点にある。すなわち、通気抵抗素材10によって構成される空気層の空気の流れ(流動性)を制御することにより、温熱環境の調節作用を備えるリバーシブル衣服を提供する。

【0022】
図1(a)、(b)に、表と裏を入れ替えてリバーシブル衣服を着たときの空気の流れ(矢印)を示した。
図1(a)に示す着用例は、身体に接触する側(内面側)が空気の流通を実質的に遮断する第2の素材14となるようにリバーシブル衣服を着用した場合である。この場合は、リバーシブル衣服の外面側が通気性を有する第1の素材12となるから、気流は第1の素材12を通して通気抵抗素材10の内部に進入する。通気抵抗素材10は通気性があるから、通気抵抗素材10に進入した空気は通気抵抗素材10の内部を流通して通気抵抗素材10の内面の第2の素材14の近傍まで進入する。すなわち、通気抵抗素材10によって構成される層空間(空気層)は外部空気が流通する空間になる。

【0023】
図1(a)において、第2の素材14について着目すると、身体側と通気抵抗素材10を流通する空気とは、第2の素材14を介して熱的に相互作用する状態になる。この相互作用は、通気抵抗素材10中の流通空気が身体との近傍においてなされる作用であり、身体の体熱が流通空気側へ伝達される作用、身体から外部へ放熱される作用である。第2の素材14の熱伝導性が大きいほどこの相互作用は促進される。通気抵抗素材10によって形成される空気層は、保温性を備える静止空気層ではなく、流通空気層となっている。したがって、図1(a)は高温環境で身体から放熱させる場合に適した着用例となる。

【0024】
一方、図1(b)の着用例は、身体に接触する側を通気性の第1の素材12とした場合である。この場合は、リバーシブル衣服の外面側が実質的に非通気性である第2の素材14になるから、外部環境の気流は、第2の素材14により通気抵抗素材10に進入することが抑制される。したがって、通気抵抗素材10によって形成される空気層は空気を滞留させる静止空気層となる。

【0025】
図1(b)では、身体に接触する内面側には通気性の第1の素材12が配されているから、身体と通気抵抗素材10との間には空気、水分、水蒸気の移動が生じる。ただし、通気抵抗素材10の内部は空気が滞留する静止空気層であるので、通気抵抗素材10を通じての外側への空気、水分、水蒸気の移動が抑えられる。身体から放散される熱、水分、水蒸気と、通気抵抗素材10を通じて外側へ放出される熱、水分、水蒸気の平衡の結果、身体から放散される熱、水分、水蒸気は抑制され、通気抵抗素材10の内側の空間は保温領域となる。したがって、図1(b)の場合は、低温環境下において体熱を保温する着用例となる。

【0026】
(リバーシブル衣服の伝熱特性)
通気性抵抗素材10の一方と他方の面に、通気性の第1の素材12と空気の流通を実質的に遮断する第2の素材14をそれぞれ配した構成を有するリバーシブル衣服材料の特性は、外界に露出する面を通気性の第1の素材12とする場合と、空気の流通を実質的に遮断する第2の素材14とする場合とで、伝熱特性(熱抵抗)が大きく異なるほど、大きな寒暖差に適応できる衣服材料になる。すなわち、リバーシブル衣服の表と裏とを入れ替えることで、リバーシブル衣服材料は大きな環境変化に対応できる。

【0027】
以下では、リバーシブル衣服材料を模した試料について熱抵抗を測定した結果について説明する。
熱抵抗の測定には精密迅速熱物性測定装置を使用し、模擬皮膚と環境との間の熱伝達係数hとその逆数である熱抵抗Rtを測定した。熱抵抗Rtは次式(1)により求められる。
Rt = 1/h =(Ts-Ta) / Q ・・・(1)
Rt:模擬皮膚と環境との間の熱抵抗[m2・℃/W]、h:模擬皮膚と環境の間の熱伝達係数[W/m2・℃]、Q:模擬皮膚の放熱量[W/m2]、Ts:模擬皮膚温度[℃]、Ta:外気温度[℃]
なお、熱抵抗Rtはリバーシブル衣服材料自体の熱抵抗に加えて、リバーシブル衣服材料の外表面と環境との間での伝熱による抵抗も含む。したがって、リバーシブル衣服材料自体の熱抵抗Rは、リバーシブル衣服材料の外表面と環境との間の熱抵抗(R0=0.09m2・℃/W)を差し引いた値とした。

【0028】
(測定例1)
熱抵抗を測定するため、通気抵抗素材、通気性の素材(第1の素材12に相当する)、非通気性の素材(第2の素材14に相当する)を選択し、これらの素材を組み合わせて測定用の資料を作製した。
通気抵抗素材には、熱可塑性樹脂のファイバーを3次元に編んだ疎なクッション材(s5:厚さ10mm、650g/m2)と、密なクッション材(s9:厚さ10cm、1015g/m2)の2種類を用いた。
通気性の素材(生地I)として、ランニングウェア用のポリエステル100%のメッシュ(110g/m2)を使用し、非通気性の素材(生地II)として、テーブルクロス用の密に編み込まれた綿(180g/m2)を使用した。

【0029】
熱抵抗を測定した試料は以下の5種類である。以下に各試料の素材の配置を示す。
試料(条件)1:生地I/疎なクッション材(s5)/生地II
試料(条件)2:生地I/密なクッション材(s9)/生地II
試料(条件)3:生地I/疎なクッション材(s5):2枚重ね/生地II
試料(条件)4:生地I/密なクッション材(s9):2枚重ね/生地II
試料(条件)5:生地I/疎なクッション材(s5)/密なクッション材(s9)/生地II

【0030】
図2は試料1~5について、熱抵抗を測定した結果を示す。
熱抵抗の計測は、外気温度(Ta)が20℃、風速0.5m/s、模擬皮膚温度(Ts)33℃の条件で、気流を当てる面を切り替えて測定した。
図2の各々の試料(条件)の棒グラフで、左側のグラフが、気流が当たる面に通気性の素材(生地I)を配置した場合の熱抵抗、右側のグラフが、気流が当たる面に非通気性の素材(生地II)を配置した場合の熱抵抗を示す。

【0031】
図2の測定結果は、試料に対して気流を当てる面を通気性の素材とするか非通気性の素材とするかによって熱抵抗値(伝熱特性)が変わること、非通気性の素材に気流を当てた場合の熱抵抗は、通気性の素材に気流を当てた場合の熱抵抗と比較して明らかに熱抵抗が大きくなることを示している。
図3は、気流を試料の通気性の素材に向けて当てた場合に対する、非通気性の素材に向けて当てた場合の、熱抵抗の変化率(増加率)をそれぞれの試料について示したものである。試料4と試料5について、表と裏を入れ替えたときの熱抵抗の増加分が顕著に大きくなっている。

【0032】
図2、3に示した測定結果は、今回の実験試料で用いた通気抵抗素材について、密度の高いクッション材を用いる場合(試料2)の方が、疎なクッション材を用いる場合(試料1)よりも熱抵抗の差が大きくなることを示す。また、クッション材を組み合わせた場合、1枚よりも2枚重ねとした方が熱抵抗の差が大きくなり、特に、密なクッション材を2枚重ねにした場合に表と裏を入れ替えたときの熱抵抗の差が大きくなることを示す。
また、試料5は、疎なクッション材の内面に通気性の素材、密なクッション材の外面に非通気性の素材を配した構成である。この試料5は、表と裏を入れ替えたときの熱抵抗の差が測定した試料中で最も大きくなった。

【0033】
(測定例2)
測定例1では風速0.5m/sの条件で測定したが、風速をより強くした風速1.0m/sの条件で熱抵抗を計測した。この計測では、測定例1において、表と裏を入れ替えたときの熱抵抗の差が最も大きくなった試料5を用いた
試料(条件)5:生地I/疎なクッション材(s5)/密なクッション材(s9)/生地II
なお、計測条件は、外気温度(Ta)が20℃、風速1.0m/s、模擬皮膚温度(Ts)35℃で、生地の内側(模擬皮膚側)には約1cm程度の衣服内空間を設ける設定とした。

【0034】
図4に、熱抵抗の増加率についての測定結果を示す。図4では、測定例1で試料5について測定した熱抵抗の増加率をあわせて示す。
図4に示すように、試料5について、風速1.0m/sとした測定例2では、気流を当てる面を表裏で入れ替えたときの熱抵抗の差がほとんど見られない結果となった、これは、風を通さない素材として使用した生地IIが、風速が強くなったため、風を通すようになってしまったこと、また、模擬皮膚と生地との間に衣服内空間を設ける設定としたことにより、試料の表裏にかかわりなく試料が風を通しやすくなってしまったためと考えられる。また、通気抵抗素材として使用したクッション材の目が粗く、風速が強い場合に簡単に空気が入れ替わってしまうことも原因であると考えられる。

【0035】
上記実験結果より、実際の環境を想定した場合、保温性の高い側における「風を通さないこと」と、「静止空気層を保つこと」が重要であると考えられる。
そこで、非通気性の素材として、生地IIよりも気流を遮断する能力の高い、ウインドブレーカーなどに用いられるナイロン製の風を通さない素材(生地IIa)を新たに使用し、通気抵抗素材として、綿わた状で疎な素材(c)と、綿わた状で密な素材(d)を新たに使用した試料を作製して実験を行った。素材(c)の単位面積当たりの質量は56g/m2、素材(d)の単位面積当たりの質量は84g/m2である。

【0036】
熱抵抗を測定した試料は以下の4種類である。
試料(条件)5:生地I/疎なクッション材(s5)/密なクッション材(s9)/生地II
試料(条件)6:生地I/疎なクッション材(s5)/密なクッション材(s9)/生地IIa
試料(条件)7:生地I/綿わた状で疎な素材(c)/綿わた状で密な素材(d)/生地II
試料(条件)8:生地I/疎なクッション材(s5)/綿わた状で密な素材(d)/生地IIa

【0037】
図5に、上記試料5、6、7、8について熱抵抗を測定した結果を示す。計測条件は、外気温度(Ta)20℃、風速1.0m/s、模擬皮膚温度(Ts)35℃である。図5で「通気性高」とあるのは、通気性が高い生地Iに気流を当てたときの熱抵抗、「通気性低」とあるのは通気性が低い生地IIaに気流を当てたときの熱抵抗である。
図6に、試料の表裏で気流の当て方を変えたときの熱抵抗の増加率を示す。

【0038】
図5、6に示すように、試料5と比べ、試料6、試料7、試料8については、いずれも試料の通気性の低い面に気流を当てた場合の熱抵抗の増加率が大きくなっている。これらの試料で、増加率が最も大きくなったのは試料8(条件8)である。
通気性の低い生地のみが異なる試料5と試料6の測定結果の比較から、風の強い状況下では、保温性の高い側における「風を通さないこと」と「静止空気層を保つこと」が重要であることが分かる。
また、内部のクッション材のみが異なる試料5と試料7の比較から、風の強い条件では通気抵抗素材の通気性もリバーシブル生地の性能に大きな影響を及ぼすことが分かる。

【0039】
上述した測定例1及び測定例2の測定結果は、リバーシブル衣服材料として、通気抵抗素材の両面に通気性の素材と空気の流通を実質的に遮断する非通気性の素材を配した衣服材料は、通気性の素材と非通気性の素材のいずれを気流(空気)が当たる面側にするか、いいかえれば通気性の素材と非通気性の素材のいずれを外部に露出する面として着用するかによって、衣服材料の熱抵抗(伝熱特性)を変えることができることを示している。
すなわち、通気性の素材が外部に露出する側としてリバーシブル衣服を着用すると熱抵抗が小さくなり、放熱作用が優勢となる着用形態(環境が高温のときの着用形態)になる。一方、非通気性の素材が外部に露出する側としてリバーシブル衣服を着用すると熱抵抗が大きくなり、保温作用が優勢となる着用形態(環境が低温のときの着用形態)になる。

【0040】
本発明に係るリバーシブル衣服は、衣服を着用したときの外界の空気の流れ(気流)が存在することを前提とし、リバーシブル衣服の表と裏を入れ替えたときに熱抵抗が相違する特性を利用して寒暖差に対応して着用できる衣服として提供するものである。外界環境の空気の流れの速さ(風速)はさまざまであり、風速の程度によってリバーシブル衣服の熱抵抗は変化するから、実際には、いろいろな気流の条件下で、用途に応じて適切なリバーシブル衣服材料を設計する必要がある。
風速が異なる条件下における測定例1、2の実験結果は、同じリバーシブル生地であっても、風の強弱、そして、衣服内空間の厚さにより、リバーシブル生地の性能に違いが生じること、リバーシブル衣服を設計する際には風速等の外部環境を考慮して、通気性素材や非通気性素材、通気抵抗素材を選択することにより適切な熱抵抗の差が生じるようにリバーシブル衣服材料を設計することができることを示している。

【0041】
また、上記測定結果は、通気抵抗素材として、疎な素材と密な素材とを使用した場合に、リバーシブル衣服材料の表と裏を入れ替えたときの熱抵抗の差は、密な素材を使用する場合の方が大きくなることを示している。密な素材と疎な素材とを比較すると、密な素材の方が疎な素材よりも通気性は低いと考えられるから、この測定結果は通気抵抗素材の通気性が低い方が熱抵抗の差が大きく表れることを示唆している。しかしながら、疎な素材と密な素材とを組み合わせた試料5、試料8の測定結果は、単に密な素材のみを使用した場合と比較して熱抵抗の差が大きくなることを示しており、通気抵抗素材中の空気の流れが熱抵抗の差を生む上で重要な寄与をなすことを示している。

【0042】
リバーシブル衣服材料では、通気抵抗素材に加えて、通気抵抗素材の両面に配置する通気性の素材と非通気性の素材自体の特性もリバーシブルとしたときの伝熱特性を決める重要な要因である。通気性の素材の通気性と、非通気性の素材の空気の遮蔽性も通気抵抗素材中の空気の流動性に影響を与えるからである。
非通気性の素材は、放熱時の着用形態では、身体側と通気抵抗素材側との間で熱交換する際の遮蔽体となるから、非通気性の素材の熱伝導性もリバーシブル衣服材料の伝熱特性に影響する。
【符号の説明】
【0043】
10 通気抵抗素材
12 第1の素材
14 第2の素材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5