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明細書 :細胞培養システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-067232 (P2016-067232A)
公開日 平成28年5月9日(2016.5.9)
発明の名称または考案の名称 細胞培養システム
国際特許分類 C12M   1/00        (2006.01)
FI C12M 1/00 G
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-197443 (P2014-197443)
出願日 平成26年9月26日(2014.9.26)
発明者または考案者 【氏名】谷口 英樹
【氏名】武部 貴則
【氏名】関根 圭輔
【氏名】中尾 敦
【氏名】廣松 崇史
【氏名】砂山 裕信
【氏名】西村 哲也
出願人 【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
【識別番号】514245281
【氏名又は名称】バイオメディカ・ソリューション株式会社
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100090169、【弁理士】、【氏名又は名称】松浦 孝
【識別番号】100086852、【弁理士】、【氏名又は名称】相川 守
【識別番号】100124497、【弁理士】、【氏名又は名称】小倉 洋樹
審査請求 未請求
テーマコード 4B029
Fターム 4B029AA01
4B029AA14
4B029AA17
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029CC08
4B029DG01
要約 【課題】作業用アイソレータにおける細胞の培養に必要な作業を効率的に、また処理される細胞に雑菌が混入することなく、短時間で速やかに実行できるようにする。
【解決手段】作業用アイソレータ21は無菌空間を形成する。インキュベータ33は作業用アイソレータ21に接続され、細胞を収容して培養する。収納庫52は作業用アイソレータ21で使用する物品を収納する。収納庫52に外部から物品を搬入するため、パスボックス51を設ける。収納庫52と作業用アイソレータ21とを直接的または間接的に連結する。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
無菌空間を形成する作業用アイソレータと、前記作業用アイソレータに接続されて細胞を収容して培養するインキュベータとを備えた細胞培養システムにおいて、
前記作業用アイソレータで使用する物品を収納する収納庫と、この収納庫に外部から物品を搬入するためのパスボックスとを備え、
前記収納庫と作業用アイソレータとを直接的または間接的に連結して構成したことを特徴とする細胞培養システム。
【請求項2】
内部に形成した無菌空間に移送手段を配置した移送用アイソレータを設けるとともに、前記作業用アイソレータとインキュベータを複数備え、
前記移送用アイソレータの搬送経路に沿って前記複数の作業用アイソレータを連結し、この移送用アイソレータを介して前記収納庫と作業用アイソレータを連結したことを特徴とする請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項3】
前記物品を収容する複数の収容体を備え、前記物品を前記収容体に収容した状態で前記収納庫に物品を収容するとともに、前記移送手段で移送することを特徴とする請求項2に記載の細胞培養システム。
【請求項4】
前記移送手段の移送経路は直線的に形成されており、前記移送手段は前記収容体を往復動可能に移送することを特徴とする請求項3に記載の細胞培養システム。
【請求項5】
前記収納庫が着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の細胞培養システム。
【請求項6】
前記複数のインキュベータで種類の異なる細胞を培養し、相互に異なるインキュベータで培養された細胞をいずれかの作業用アイソレータで混合することを特徴とする請求項2に記載の細胞培養システム。
【請求項7】
前記複数のインキュベータで種類の同じ細胞を培養し、相互に異なるインキュベータで培養された細胞をいずれかの作業用アイソレータで混合することを特徴とする請求項2に記載の細胞培養システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷を受けた生体機能に対して、幹細胞などを用いて復元させる再生医療において使用される細胞培養システムに関し、より詳しくは、細胞を調製するための作業用アイソレータに、細胞を収容して培養するインキュベータを接続して構成した細胞培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、iPS細胞等の多機能性幹細胞から得られる臓器細胞と、血管内皮を構成する血管内皮細胞と、組織で機能する細胞の支持構造を形成する間葉系細胞とをそれぞれ培養した後、最適な混合比率で共培養することにより、微小血管構造を有する立体的な器官芽を試験管内で誘導することができ、さらに、これを生体内に移植することで臓器を作製することができる。
【0003】
このような細胞や組織の培養を行うために、無菌空間を形成するアイソレータと、アイソレータに着脱自在に接続され、細胞を収容して培養するインキュベータとを備え、アイソレータ内で培養に必要な作業を行うように構成されたシステムが知られている。例えば特許文献2に開示されたシステムでは、インキュベータが接続された2つのアイソレータを、滅菌庫を介して連結しており、各インキュベータにおいて、異なる細胞の培養を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2013/047639号
【特許文献2】特開2013-135858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
異なる細胞を培養して共培養を実行するに際し、培養した細胞を他の細胞と混合できるように各細胞毎に調製する必要がある。この調製作業は短時間で速やかに行う必要があるが、従来のシステムではアイソレータ内に多数の物品を収納しておくことができないため、各細胞毎に培養に必要な資材、器具、培養容器等の物品を、必要に応じて滅菌庫で滅菌を行って外部から搬入しなければならず、効率的に細胞の培養に必要な作業を実行することができない。
【0006】
特許文献2に開示されたシステムでは、2つのアイソレータを滅菌庫を介して連結しているため、同時に並行して培養された異なる細胞の調製作業を行うことができる。この場合、各アイソレータ間において細胞を受け渡すときに、外部からの雑菌の混入やコンタミネーションが生じてはならない。アイソレータから搬出された細胞は滅菌庫を介して他のアイソレータに移送されるが、滅菌庫は外部に曝露される部分であるので、細胞に雑菌が混入することを防止するために、移送の度に滅菌庫を滅菌する必要があり、アイソレータにおける調製作業を短時間で行うことは困難である。
【0007】
本発明は、作業用アイソレータにおける細胞の培養に必要な作業を効率的に、また処理される細胞に雑菌が混入することなく、短時間で速やかに実行することができる細胞培養システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る細胞培養システムは、無菌空間を形成する作業用アイソレータと、作業用アイソレータに接続されて細胞を収容して培養するインキュベータとを備えた構成システムにおいて、作業用アイソレータで使用する物品を収納する収納庫と、この収納庫に外部から物品を搬入するためのパスボックスとを備え、収納庫と作業用アイソレータとを直接的または間接的に連結して構成したことを特徴としている。
【0009】
細胞培養システムは、内部に形成した無菌空間に移送手段を配置した移送用アイソレータを設けるとともに、前記作業用アイソレータとインキュベータを複数備えていてもよく、この場合、移送用アイソレータの搬送経路に沿って複数の作業用アイソレータを連結し、この移送用アイソレータを介して収納庫と作業用アイソレータを連結することが好ましい。また、このような構成において、物品を収容する複数の収容体を備え、物品を収容体に収容した状態で収納庫に物品を収容するとともに、移送手段で移送するようにしてもよい。移送手段の移送経路が直線的に形成されて、移送手段が収容体を往復動可能に移送してもよい。
【0010】
好ましくは、収納庫は着脱可能に設けられる。
さらに、複数のインキュベータで種類の異なる細胞を培養し、相互に異なるインキュベータで培養された細胞をいずれかの作業用アイソレータで混合するようにしてもよく、あるいは、複数のインキュベータで種類の同じ細胞を培養し、相互に異なるインキュベータで培養された細胞をいずれかの作業用アイソレータで混合するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業用アイソレータにおける細胞の培養に必要な作業を効率的に、さらに、処理される細胞に雑菌が混入することなく、短時間で速やかに実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態を適用した細胞培養システムの概略的な構成を示す平面図である。
【図2】収納庫の内部の構成を示す平面図である。
【図3】収納庫の内部の構成を示す側面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を適用した細胞培養システムの概略的な構成を示す平面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態を適用した細胞培養システムの概略的な構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示された実施形態を参照して本発明を説明する。
図1は本発明の第1の実施形態を適用した細胞培養システムの概略的な構成を示している。移送用アイソレータ11は細長い箱状に形成されたケーシングであり、図1において上下方向に直線的に延びている。移送用アイソレータ11の内部は陽圧に維持され、細胞培養システムの外部に連通することはなく、無菌空間を形成する。移送用アイソレータ11内にはベルトコンベヤ(移送手段)12が配置され、ベルトコンベヤ12は移送用アイソレータ11の長手方向に沿って搬送経路が直線的に形成されており、物品を収容する収容体としてのケージCを往復動可能に移送する。ケージCには、細胞培養システムの外部から搬入される細胞の培養に必要な資材、器具、培養容器等の物品が収容される。このように直線的に形成した搬送経路に沿って、後述する第1~第3作業用アイソレータ21~23や収納庫52を連結し、ベルトコンベヤ12を往復動可能に設けることでケージCを速やかに移送させることができるとともに、移送を自動化する上で移送速度の制御が容易になっている。また、移送経路を覆うように設けた移送用アイソレータ11は、複雑な形状を有することなく細長い箱状に形成されているため、死角が生じることなく内部空間の除染を確実かつ容易に行うことができる。なお、ケージCはベルトコンベヤ12上に直接載置してもよいし、トレイ等に収容させて載置してもよい。

【0014】
図1において移送用アイソレータ11の左側には搬送経路に沿って第1~第3作業用アイソレータ21~23が連結される。第1~第3作業用アイソレータ21~23は移送用アイソレータ11の長手方向に垂直な方向に延び、相互に平行である。またこれらの作業用アイソレータ21~23はそれぞれ内部が陽圧に維持され、細胞培養システムの外部に連通することはなく、無菌空間を形成する。

【0015】
第1作業用アイソレータ21には、後述するドア32、35の開閉や種々の作業を行うためのグローブ24が設けられる。第1作業用アイソレータ21は開口部31を介して移送用アイソレータ11に連結され、開口部31はドア32によって開閉される。ドア32が閉塞されたとき、第1作業用アイソレータ21は移送用アイソレータ11から気密を保って遮断され、ドア32が開放されたとき、第1作業用アイソレータ21内と移送用アイソレータ11内の間においてケージCを受け渡し可能である。

【0016】
第1作業用アイソレータ21には、細胞を収容して培養するためのインキュベータ33が連結装置34を介して接続される。第1作業用アイソレータ21の連結装置34側の開口はドア35により開閉され、連結装置34は第1作業用アイソレータ21の外壁面にドア35を取り囲むようにして設けられる。第1作業用アイソレータ21はドア35により連結装置34の内側空間から気密を保って遮断される。またインキュベータ33の連結装置34側の開口はドア36により開閉され、連結装置34はドア36の周囲を取り囲むようにして設けられる。インキュベータ33の内部はドア36により気密を保って閉塞される。インキュベータ33は、ドア35、36を閉塞した状態で第1作業用アイソレータ21から分離可能である。

【0017】
第1作業用アイソレータ21と連結装置34には、例えば過酸化水素蒸気等の除染ガスを供給する除染ガス供給装置37が接続される。すなわち、ドア32を閉鎖し、ドア35、36を開放した状態で、第1作業用アイソレータ21とインキュベータ33の内部の除染作業が行われ、またインキュベータ33を接続、分離する際には、ドア35、36を閉塞した状態で、連結装置34の内部に除染ガスが供給されて、ドア35、36の外部に露出される部分の除染作業が行われる。

【0018】
第2および第3作業用アイソレータ22、23も第1作業用アイソレータ21と同様な構成を有する。すなわち第2作業用アイソレータ22にはインキュベータ41が連結装置42を介して接続され、第2作業用アイソレータ22と連結装置42には、除染ガス供給装置43が接続される。また第3作業用アイソレータ23にはインキュベータ44が連結装置45を介して接続され、第3作業用アイソレータ23と連結装置45には、除染ガス供給装置46が接続される。なお図1において、開口部31ならびにドア32、35、36およびグローブ24については、第1作業用アイソレータ21と共通の番号を付している。

【0019】
図1において移送用アイソレータ11の右側には、除染パスボックス51が設けられる。除染パスボックス51は、細胞の培養に必要な資材、器具、培養容器等の物品を外部から移送用アイソレータ11に搬入するために設けられる。すなわち除染パスボックス51では、物品とケージCに対する除染が行われ、物品がケージCの中に取り込まれる。また、培養される細胞も、この除染パスボックス51を介して搬入されるようになっている。

【0020】
除染パスボックス51は、収納庫52を介して移送用アイソレータ11に接続される。すなわち収納庫52は除染パスボックス51と移送用アイソレータ11の間に配置され、収納庫52には、物品が収容されたケージCが一時的に収納される。除染パスボックス51には、後述するドア56の開閉や種々の作業を行うためのグローブ61が設けられる。

【0021】
除染パスボックス51と収納庫52は第1作業用アイソレータ21に対向した位置に設けられ、第1作業用アイソレータ21とは反対方向に延びて配置されている。収納庫52は開口部53を介して移送用アイソレータ11に連結され、収納庫52内と移送用アイソレータ11内の間においてケージCを受け渡し可能である。これにより、収納庫52内は、移送用アイソレータ11の内部と同じく陽圧に維持され無菌空間を形成している。また、この移送用アイソレータ11を介して、収納庫52と第1作業用アイソレータ21とを間接的に連結している。

【0022】
除染パスボックス51は開口部55を介して収納庫52に連結され、開口部55はドア56によって開閉される。ドア56が閉塞されたとき、除染パスボックス51は収納庫52から気密を保って遮断され、ドア56が開放されたとき、除染パスボックス51内と収納庫52内の間においてケージCを受け渡し可能である。

【0023】
除染パスボックス51の収納庫52とは反対側には、搬入用開口57が形成され、搬入用開口57はドア58により開閉される。ドア58は細胞培養システムの外部に露出しており、ドア58を開放することにより除染パスボックス51に対して物品を出し入れすることができる。ドア58の開放時、ドア56は閉塞しており、収納庫52や移送用アイソレータ11が外部に連通することはない。すなわち、収納庫52や移送用アイソレータ11は無菌空間を形成する。

【0024】
除染パスボックス51と移送用アイソレータ11には、除染ガス供給装置59が接続される。ドア56、58を閉塞した状態で除染パスボックス51の内部および外部から搬入した資材、器具、培養容器等の物品の除染作業が行われる。移送用アイソレータ11の内部の除染作業は、移送用アイソレータ11と第1~第3作業用アイソレータ21~23の間のドア32等を閉塞した状態で行われ、同時に収納庫52の内部も除染される。

【0025】
図2、3を参照して収納庫52の構成を説明する。
収納庫52には、モータローラコンベヤ71と3つのベルトコンベヤ81が設けられる。モータローラコンベヤ71は、正面窓63側に配置され細胞の培養に必要な資材、器具、培養容器等の物品を収容したケージCを開口部53、55の間において、すなわち図2において左右方向に搬送する。各ベルトコンベヤ81はケージCを図2において、モータローラコンベヤ71の搬送方向と直交する上下方向に移送し、ケージCをモータローラコンベヤ71上から保管領域Aへ受け渡し、あるいは保管領域Aからモータローラコンベヤ71上へ受け渡す。

【0026】
図2の例では、モータローラコンベヤ71の上には3つのケージCが載置され、また各ベルトコンベヤ81の上には3つのケージCが載置されて示されているが、保管領域Aには最大で6個のケージCが載置可能であり、保管領域Aに6個のケージCが保管されているとき、モータローラコンベヤ71上にケージCは存在しない。なお図2に示された、保管領域Aに保管可能なケージCの数は一例に過ぎず、またベルトコンベヤ81の数も一例であり、目的に応じて自由に設定することができる。

【0027】
モータローラコンベヤ71は平行に配設された複数本(図示例では9本)のローラ72を有する。各ローラ72は支持機構73によって軸心周りに回転自在に支持され、図示しない駆動機構によって同期的に正逆に回転し、ケージCを開口部55から開口部53に向けて、あるいはその反対方向に移送する。支持機構73はエアシリンダ74のピストンにより昇降駆動され、各ローラ72は各ベルトコンベヤ81の搬送面から突出する上昇位置と、各ベルトコンベヤ81の搬送面よりも凹陥する下降位置のいずれかに定められる。すなわちモータローラコンベヤ71の搬送面は、ケージCを搬送するときは上昇位置にあり、搬送しないときは下降位置にある。

【0028】
モータローラコンベヤ71の9本のローラ72は3本一組で作動・停止可能である。すなわち図2において、開口部55側に位置する3本のローラ72と中央に位置する3本のローラ72と開口部53側に位置する3本のローラ72とは、相互に独立に制御され、例えば開口部55側の3本のローラ72のみを停止させた状態で、中央と開口部53側の6本のローラ72を作動させることができる。

【0029】
各ベルトコンベヤ81は同一の構成であり、それぞれ一対のベルト82、83を有する。これらのベルト82、83は、モータローラコンベヤ71のローラ72の長手方向に延び、隣り合うローラ72の間に位置する。これらのベルト82、83の一端は支持軸84の両端に設けられたプーリ85、86に掛け回され、他端は支持軸87の両端に設けられたプーリ88、89に掛け回される。ベルト82、83は支持軸84、87の間において、支持軸84、87よりも下側に設けられた駆動モータ91の駆動軸92とアイドラプーリ93、94に掛け回され、駆動モータ91を駆動することにより正逆に回動し、ケージCをモータローラコンベヤ71上と保管領域Aの間において移送可能である。

【0030】
ベルトコンベヤ81のモータローラコンベヤ71とは反対側であって、一対のベルト82、83の外側にはストッパ95が設けられる。ストッパ95はエアシリンダ96のピストンにより昇降駆動され、ベルトコンベヤ81の搬送面よりも高い上昇位置と搬送面よりも低い下降位置との間において昇降する。ストッパ95が上昇位置にあるとき、ストッパ95に支持されたケージCはベルトコンベヤ81から上方に解放され、またモータローラコンベヤ71側から保管領域Aに向けて移送されてくるケージCはストッパ95に当接して停止する。

【0031】
図3に示されるように、モータローラコンベヤ71の正面窓63側のベルトコンベヤ81の端部には第1案内部材64が設けられ、第1案内部材64はモータローラコンベヤ71の搬送方向に沿って開口部53の近傍から開口部55の近傍まで延びる。またベルトコンベヤ81のモータローラコンベヤ71とは反対側の端部には、第1案内部材64と平行に延びる第2案内部材65が設けられる。第1および第2案内部材64、65にはケージCが係合可能であり、第1案内部材64はケージCがモータローラコンベヤ71によって移送されるとき、ケージCを案内し、また第2案内部材65とともにベルトコンベヤ81の両端でケージCに対するストッパとして機能する。

【0032】
移送用アイソレータ11のベルトコンベヤ12と、収納庫52のモータローラコンベヤ71およびベルトコンベヤ81とは、作業者の手動操作によって電源がオンオフされて駆動される。またモータローラコンベヤ71とストッパ95の昇降動作も、作業者の手動操作によりエアシリンダ74、96が起動されて駆動される。

【0033】
次に本実施形態の作用について説明する。
細胞の培養に先立ち、除染パスボックス51、収納庫52、移送用アイソレータ11、作業用アイソレータ21、22、23およびインキュベータ33、41、44の内部が除染される。細胞の培養に必要な資材、器具、培養容器等の物品は除染パスボックス51に搬入され、除染されてケージC内に収納される。モータローラコンベヤ71は上昇位置にあってケージCは1つずつ収納庫52に搬入され、モータローラコンベヤ71の上には最大で3個のケージCが載置される。

【0034】
この状態でさらにケージCが除染パスボックス51から搬入される場合、すぐに作業用アイソレータに受け渡す必要のないケージCはモータローラコンベヤ71から保管領域Aに移送される。この場合は、モータローラコンベヤ71が下降してベルトコンベヤ81によってケージCが移送される。このとき保管領域Aにおいてストッパ95の位置にケージCがない場合、ストッパ95は下降位置にあり、ケージCはストッパ95の上まで移送され、第2案内部材65に当接して停止する。これに対し、ストッパ95の上にケージCが移送されてくると、図3に示されるようにストッパ95は上昇位置に定められ、これにより、ベルトコンベヤ81で移送されてくる次のケージCはストッパ95に当接して停止する。

【0035】
保管領域Aに保管されているケージCを移送用アイソレータ11に受け渡すとき、そのケージCはベルトコンベヤ81で移送され第1案内部材64に当接して停止し、次いでモータローラコンベヤ71が上昇して作動し、移送用アイソレータ11側に移送される。ストッパ95の位置にあるケージCをモータローラコンベヤ71に移送するときは、まずストッパ95が下降位置に定められて、そのケージCがベルトコンベヤ81上に載置され、モータローラコンベヤ71の上方に移送される。

【0036】
モータローラコンベヤ71上の3個のケージCは移送用アイソレータ11へ移され、移送用アイソレータ11のベルトコンベヤ12により第1、第2および第3作業用アイソレータ21、22、23へ移送される。すなわち、1つ目のケージCは移送用アイソレータ11のベルトコンベヤ12上に一旦載置されるが、そのまま第1作業用アイソレータ21に搬入され、2つ目のケージCはベルトコンベヤ12によって第2作業用アイソレータ22まで移送され、第2作業用アイソレータ22内に搬入される。3つ目のケージCはベルトコンベヤ12によって第3作業用アイソレータ23まで移送され、第3作業用アイソレータ23内に搬入される。このとき、同時に培養される細胞をケージCに収容させて、各作業用アイソレータ21、22、23に搬入することができる。

【0037】
各作業用アイソレータ21、22、23内において、ケージC内の資材、器具、培養容器等の包装が取り除かれ、細胞が培養容器内に播種される。本実施形態においては、例えば作業用アイソレータ21においてヒトiPS細胞から得られる臓器細胞を播種し、作業用アイソレータ22において血管内皮細胞を播種し、作業用アイソレータ23において間葉系細胞を播種するようにしている。これらの培養容器はそれぞれインキュベータ33、41、44内に受け渡され、インキュベータは作業用アイソレータから切り離されて、所定期間の間、培養が行われる。この培養期間中、インキュベータ33、41、44は必要に応じて作業用アイソレータ21、22、23に接続され、培地交換あるいは継代が実施される。

【0038】
各細胞の培養が完了すると、インキュベータ33、41、44はそれぞれ作業用アイソレータ21、22、23に接続され、これら3種類の細胞が収容された培養容器はそれぞれの作業用アイソレータ21、22、23に取り出され、培養容器から細胞を回収する所定の処理が施される。回収された細胞は専用の容器に収容されてケージCに収容され、移送用アイソレータ11に移されてベルトコンベヤ12によって、異なる作業用アイソレータ21、22、23のいずれかに集められる。3種類の細胞は、集められた作業用アイソレータ内において所定の混合比率で混合される。そして混合された細胞が収容された培養容器は、その作業用アイソレータに接続されたインキュベータ内に移され、さらに所定期間の間、離脱されたインキュベータで共培養が行われ、例えば、人体の肝臓の原基が作製される。共培養が終了した細胞はインキュベータから、接続された作業用アイソレータに取り出され、培養容器から細胞を回収する所定の処理が施されて専用の容器に収容された後、移送用アイソレータ11、収納庫52内を移送されて、除染パスボックス51を介して外部へ搬出される。なお、混合する細胞は全て異なる種類のものである必要はなく、同種の細胞を個々に培養して混合してもよい。また、必ずしも混合した後に共培養する必要はなく、混合した状態で外部に搬出してもよい。

【0039】
このように本実施形態では、インキュベータ33、41、44において培養された細胞は、移送用アイソレータ11を介して第1~第3作業用アイソレータ21、22、23間で受け渡される。移送用アイソレータ11は無菌空間を形成し、作業用アイソレータ21、22、23間における細胞の受け渡しの度に除染する必要はない。したがって、複数のインキュベータを用いて行う細胞の培養に必要な作業を、処理される細胞に雑菌が混入することなく、短時間で速やかに実行することができる。

【0040】
なお上記実施形態においては、3台の第1~第3作業用アイソレータ21、22、23およびインキュベータ33、41、44が設けられているが、図1に破線Bにより示すように、さらに増設して移送用アイソレータ11に連結してもよい。このような増設に備えて、実線で示すように開口部31、ドア32を予め設けておいてもよい。また、このような開口部31に対して、破線Dで示すように、収納庫52や除染パスボックス51を接続してもよく、除染パスボックス51については搬出用として用途を分けて設置することもできる。また、これら作業用アイソレータや収納庫および除染パスボックスは、着脱可能に構成することで必要に応じて増減させるようにしてもよい。

【0041】
また上記実施形態において収納庫52は、保管領域Aに6個のケージCを平面的に配置して保管するよう構成しているが、保管スペースを上下に多段状に設けて複数個のケージCを立体的に配置して保管するよう構成することもできる。この場合には、開口部53と55の間に各段の保管スペースにケージCを昇降移動させるエレベータを設け、このエレベータと開口部53、55との間でケージCを移動させ、またエレベータと各段の保管スペースの間でケージCを移動させるモータローラコンベヤやベルトコンベヤ等からなる移動手段を設けて構成する。また、ベルトコンベヤ12は直線的に形成する場合に限らず、設置場所のレイアウトに従って適宜カーブを設けたり、循環させて形成することもできる。さらに、ケージCをベルトコンベヤ12上に載置させておくことで、移送用アイソレータ11の内部で培養に必要な資材、器具、培養容器等の物品を一時的に保管することもできる。なお、移動手段としてはベルトコンベヤ12の他、ロッドレスシリンダや電動リニアアクチュエータまたはガイドレールに沿って移動するリニアモータや搬送車等、ケージCやトレイを載置させて移送するよう構成したものを採用することができ、またロボット等、ケージCやトレイを保持して移送するよう構成したものであってもよい。ただし、移送手段の構造が複雑になると除染がしにくくなるため、できるだけシンプルな構造の移動手段を採用する。

【0042】
図4は第2の実施形態を適用した細胞培養システムの概略的な構成を示している。第1の実施形態との違いは収納庫52と第1作業用アイソレータ21とを直接的に連結していることにある。この実施形態においては、収納庫52と第1作業用アイソレータ21は開口部31を介して連結され、ドア32により開閉されるようになっており、収納庫52内と第1作業用アイソレータ21内の間においてケージCを受け渡し可能である。また収納庫52には、第1実施形態と同様に開口部55を介して除染パスボックス51が連結され、除染ガス供給装置59は除染パスボックス51と収納庫52に接続されている。その他の構成は、第1実施形態と共通しており同じ番号を付している。

【0043】
このような第2の実施形態においてはインキュベータ33を複数備えて第1作業用アイソレータ21に接続、分離可能とし、第1作業用アイソレータ21内で細胞の調製作業を行って、各インキュベータ33で種類の異なる細胞または種類の同じ細胞を培養するようになっている。それぞれ培養した細胞は、順次第1作業用アイソレータ21内で調製されて混合され、接続されたいずれかのインキュベータ33に収容されて共培養されるようになっている。この場合、第1作業用アイソレータ21内で行われる細胞の培養に必要な資材、器具、培養容器等の物品は、使用までに予め収納庫52に搬入されて保管されているので、必要に応じて第1作業用アイソレータ21内に搬入して使用することができる。特に、収納庫52に除染パスボックス51を連結してあり、収納庫52と第1作業用アイソレータ21はドア32により遮断することができるので、第1作業用アイソレータ21と収納庫52を遮断した状態で、第1作業用アイソレータ21内で調製作業を行う間に、順次除染パスボックス51に外部から資材、器具、培養容器等の物品を搬入して除染し、ケージCに収容して収納庫52に保管することも可能である。このような第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、効率的に細胞の培養に必要な作業を実行することができる。

【0044】
さらに、図5に示す第3の実施形態は、第2の実施形態における収納庫52と連結された第1作業用アイソレータ21を、第4作業用アイソレータ25として移送用アイソレータ11に連結している。第4作業用アイソレータ25も第1~第3作業用アイソレータ21~32と同様な構成を有する。すなわち第4作業用アイソレータ25にはインキュベータ47が連結装置48を介して接続され、第4作業用アイソレータ25と連結装置48には、除染ガス供給装置49が接続される。なお図5において、開口部31ならびにドア32、35、36およびグローブ24については、第1~第3作業用アイソレータ21~23と共通の番号を付しており、第4作業用アイソレータ25は開口部31を介して移送用アイソレータ11に連結されている。

【0045】
第4作業用アイソレータ25には収納庫52が連結されている。収納庫52は移送用アイソレータ11に連結する場合と同様に開口部53を介して連結され、収納庫52内と第4作業用アイソレータ25内の間においてケージCを受け渡し可能である。また収納庫52には、第1の実施形態と同様に開口部55を介して除染パスボックス51が連結され、除染パスボックス51と移送用アイソレータ11には除染ガス供給装置59が接続されている。

【0046】
このような構成によれば、第4作業用アイソレータ25は収納庫52と直接的に連結された状態にあり、第1~第3作業用アイソレータ21~23については、第4作業用アイソレータ25および移送用アイソレータ11を介して収納庫52と間接的に連結されている。

【0047】
このような第3の実施形態の細胞培養システムにおいては、第1の実施形態と同様に、細胞の培養に必要な資材、器具、培養容器等の物品を除染パスボックス51に搬入して除染し、ケージCに収納して収納庫52に保管する。これらケージCを第1~第3作業用アイソレータ21~23に搬入するには、ケージCを収納庫52から第4作業用アイソレータ25に移し、移送用アイソレータ11を介して各作業用アイソレータ21、22、23に移送する。また、第4作業用アイソレータ25内でケージC内の資材、器具、培養容器等を使用して培養容器に細胞を播種し、インキュベータ47に収容して培養を行うことも可能である。このような第3の実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
11 移送用アイソレータ
21、22、23 作業用アイソレータ
33、41、44 インキュベータ
51 除染パスボックス
52 収納庫
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4