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明細書 :ロドコッカス属微生物用構成型発現ベクター

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-054652 (P2016-054652A)
公開日 平成28年4月21日(2016.4.21)
発明の名称または考案の名称 ロドコッカス属微生物用構成型発現ベクター
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 1/21
C12P 21/02 C
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2014-180853 (P2014-180853)
出願日 平成26年9月5日(2014.9.5)
新規性喪失の例外の表示 申請有り
発明者または考案者 【氏名】小林 達彦
【氏名】橋本 義輝
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100112874、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 薫
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B064
4B065
Fターム 4B024AA20
4B024BA07
4B024CA02
4B024DA05
4B024EA04
4B024FA02
4B024GA14
4B064AG01
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B065AA44Y
4B065AA45X
4B065AA45Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB40
4B065CA24
要約 【課題】H-NHase代謝能力を保持しないロドコッカス属微生物でも、誘導剤を添加しない条件下で目的タンパク質を発現することを可能にするベクターの提供。
【解決手段】以下の(a)~(c)のいずれかのDNAを含むベクター。(a)特定の塩基配列からなるDNA(b)特定の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつロドコッカス属微生物を宿主として培養時に誘導剤を添加せずに目的タンパク質を発現させ得るDNA(c)特定の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつロドコッカス属微生物を宿主として培養時に誘導剤を添加せずに目的タンパク質を発現させ得るDNA
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)~(c)のいずれかのDNAを含むベクター。
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつロドコッカス属微生物を宿主として培養時に誘導剤を添加せずに目的タンパク質を発現させ得るDNA
(c)配列番号1に示される塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつロドコッカス属微生物を宿主として培養時に誘導剤を添加せずに目的タンパク質を発現させ得るDNA
【請求項2】
受領番号がNITE AP-01928であるベクター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のベクターによりロドコッカス属微生物を形質転換した形質転換体。
【請求項4】
請求項3に記載の形質転換体を、誘導剤を含まない培地で培養し、得られる培養物から目的タンパク質を採取することを含む、目的タンパク質の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ロドコッカス属微生物用構成型発現ベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ニトリル代謝酵素遺伝子プロモーターを用いた、ロドコッカス属微生物用誘導型発現ベクターが構築されている。このベクターは、ロドコッカス属微生物を宿主とし、培養時にイソバレロニトリルやε-カプロラクタム等の誘導剤を添加してタンパク質を異種発現させることができるものである(特許文献1)。
【0003】
しかし、ニトリル代謝酵素遺伝子プロモーターを用いて、ロドコッカス属微生物を宿主とし、培養時に誘導剤を添加せずタンパク質を発現させるベクターの報告例は未だ無い。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-180843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、H-NHase代謝能力を保持しないロドコッカス属微生物でも、誘導剤を添加しない条件下で目的タンパク質を発現することを可能にするベクターを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ロドコッカス属微生物由来のニトリル代謝酵素遺伝子クラスターを、ニトリル代謝能力を保持しない他のロドコッカス属微生物に導入すると、誘導剤無添加条件でも目的タンパク質が発現することから、ニトリル代謝酵素遺伝子クラスターにマルチクローニングサイトを付与し、大腸菌とロドコッカス属微生物で複製可能なシャトルベクターに連結することで、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつロドコッカス属微生物を宿主として培養時に誘導剤を添加せずに目的タンパク質を発現させ得るDNA、又は
(c)配列番号1に示される塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつロドコッカス属微生物を宿主として培養時に誘導剤を添加せずに目的タンパク質を発現させ得るDNA
を含むベクターである。
【0008】
あるいは、本発明は、受領番号がNITE AP-01928であるベクターである。
【0009】
また、本発明は、上記(a)~(c)のいずれかのDNAを含むベクターにより、ロドコッカス属微生物を形質転換した形質転換体である。
【0010】
また、本発明は、上記形質転換体を、誘導剤を含まない培地で培養し、得られる培養物から目的タンパク質を採取することを含む、目的タンパク質の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロドコッカス属微生物を宿主として培養時に誘導剤を添加せず目的タンパク質を発現させることができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プラスミドpUC-RhodoConstの構築を示す図である。
【図2】プラスミドpREHSG298ΔNBS及びベクターpREYH81の構築を示す図である。
【図3】ベクターpREYH81を示す図である。
【図4】ベクターpREYH81へのレポーター遺伝子の挿入とロドコッカス属微生物への形質転換を示す図である。
【図5】ベクターpREYH81により発現されたタンパク質の電気泳動を示す図である。
【図6】ベクターpREYH81により発現されたタンパク質の電気泳動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)ベクター(pREYH81)に含まれるDNA
以下、本発明に係るベクターをpREYH81と称することがある。
本発明のベクターは、代表的には、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAを含む。
配列番号1に示される塩基配列は、プラスミドpHJK19とpHJK20に共通する、H-NHaseの構成的発現に関与する領域を改変したDNA配列である。H-NHaseの構成的発現に関与する領域とは、プラスミドpHJK19のScaI-StuI間で、NcoI-SalI間を欠失した領域である。

【0014】
配列番号1に示される塩基配列は、以下に示す部位を含む。
15bp/homology/pREHSG298dNBS(XhoI)misc_feature 1..15
mutation for StuIsitemisc_feature 18..19
nhhC misc_feature 437..1522
mutation for SacIdeletionmisc_feature 544..544
mutation for SalIdeletionmisc_feature 694..694
mutation for EcoRIdeletionmisc_feature 913..913
mutation for XhoIdeletionmisc_feature 1417..1417
nhhD misc_feature 1573..2019
mutation for NdeIsitemisc_feature 3719..3719
mutation for NdeIsitemisc_feature 3721..3721
MCS derived from pET-24a(+)misc_feature 3722..3935
mutation for StuIsitemisc_feature 4229..4230
mutation for StuIsitemisc_feature 4233..4234
15bp/homology/pRHSG298dNBS(EcoRI)misc_feature 4235..4249

【0015】
また、本発明のベクターは、配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつロドコッカス属微生物を宿主として培養時に誘導剤を添加せずに目的タンパク質を発現させ得るDNAを含んでもよい。

【0016】
ここで、「1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列」とは、例えば、特定の塩基配列の1~5個、好ましくは3個、より好ましくは2個のDNAが欠失してもよく、特定の塩基配列の1~5個、好ましくは3個、より好ましくは2個のDNAが他のDNAに置換してもよく、あるいは特定の塩基酸配列に1~5個、好ましくは3個、より好ましくは2個のDNAが付加してもよいことを意味する。

【0017】
また、本発明のベクターは、配列番号1に示される塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつロドコッカス属微生物を宿主として培養時に誘導剤を添加せずに目的タンパク質を発現させ得るDNAを含んでもよい。

【0018】
ここで、「塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列」の「同一性」は、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上である。

【0019】
更に、本発明のベクターには、目的タンパク質をコードするDNAが含まれていてもよい。当該DNAは、本発明のベクター中に存在するMCSに挿入することができる。本発明において、目的タンパク質は、特に限定されるものではなく、酵素、ホルモン、サイトカイン、調節タンパク質などを任意に挙げることができる。

【0020】
(2)ベクター(pREYH81)の構築
本発明のベクターpREYH81の構築方法を以下に述べる。なお、ベクターpREYH81は、平成26(2014)年9月4日付けで、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に寄託されたものである(受領番号:NITE AP-01928)。

【0021】
ニトリル代謝能力を保持しないロドコッカス属微生物内では、誘導剤を添加しない条件でもH-NHaseを著量に発現し(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93(9),4267-4272(1996)参照)、ニトリルヒドラターゼ遺伝子を含むプラスミドpHJK19(特開2005-151999号公報参照)とプラスミドpHJK20(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93(9),4267-4272(1996)参照)はともに、誘導剤を添加しない条件下で、H-NHaseを過剰発現する。このことから、プラスミドpHJK19とpHJK20とにおける、H-NHaseの構成的発現に関与する領域は、これらプラスミドに共通に含まれる領域であることが示唆される。
そこで、その領域を遺伝子合成した改変型プロモーターDNA断片(配列番号1)を含むプラスミドpUC-RhodoConstを作製する(図1)。

【0022】
一方で、大腸菌とロドコッカスのシャトルベクターpREHSG298(特許文献1の段落番号[0051]及び図7参照)のNdeI、BamHI、SalIの各制限酵素サイトを破壊したプラスミドpREHSG298ΔNBSを作製する(図2)。

【0023】
次に、プラスミドpUC-RhodoConstをXbaIで切断した後に生じる、外側にpREHSG298ΔNBSと15bp一致するDNA配列を持つ改変型プロモーターDNA断片を含む断片と、pREHSG298ΔNBSをEcoRIとXhoIで切断した後に生じる大きいDNA断片とを連結し、pREYH81を構築する(図3)。

【0024】
本発明のベクターpREYH81は、EcoRI、XhoIで切断することが不可能であるため、当該ベクターのマルチクローニングサイト内にあるEcoRI、XhoIサイトがユニークサイトとなる。また、上記プラスミドpREHSG298ΔNBS構築時にNdeI、BamHI、SalIの遺伝子破壊を行っているため、これらの制限酵素サイトもユニークサイトとなる。

【0025】
(3)形質転換体
本発明の形質転換体は、宿主を本発明のベクターで形質転換することで作製できる。宿主はロドコッカス属微生物である。形質転換を行うには、常法を用いればよく、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法を用いることができる。

【0026】
(3)目的タンパク質の製造方法
本発明は、目的タンパク質の製造方法も提供することができる。すなわち、上記(3)の形質転換体を培養し、得られる培養物から目的タンパク質を採取することにより、目的タンパク質を製造することができる。形質転換体の培養方法は、宿主に用いるロドコッカス属微生物に適した方法を適宜選択すればよい。

【0027】
また、本発明において「培養物」とは、菌体、培養液、無細胞抽出液、細胞膜などの培養により得られるものを意味する。無細胞抽出液は、培養後の菌体を、例えばリン酸ナトリウム緩衝液を加えてホモジナイザーなどで物理的に破砕した後、遠心(例えば15,000rpm,10min,4℃)し、破砕できない菌体(細胞)が存在しないように上清を回収して得ることができる。細胞膜は、上記遠心で得られたペレットを溶解バッファーで懸濁することにより得ることができる。

【0028】
目的タンパク質は、培養物をそのまま用いてもよいし、透析や硫安沈殿などの公知の方法、電気泳動、あるいはゲルろ過、イオン交換、アフィニティー等の各種クロマトグラフィーなどの公知の方法を単独又は適宜組み合わせることによって、濃縮、精製したものを用いてもよい。
【実施例1】
【0029】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【実施例1】
【0030】
<ベクターpREYH81の構築>
(1)プラスミドpUC-RhodoConstの構築
プラスミドpHJK19のScaI-StuI間で、NcoI-SalI間を欠失した領域を遺伝子合成した改変型プロモーターDNA断片(配列番号1)を含むプラスミドpUC-RhodoConstを作製した(図1参照)。
その遺伝子合成の際に、以下の変更を追加した。
(i) 当該領域に含まれるSacI(配列番号1の544番目)、SalI(配列番号1の694番目)、EcoRI(配列番号1の913番目)、XhoI制限酵素サイト(配列番号1の1417番目)をNhhCのアミノ酸配列を変更せずに、かつ各制限酵素サイトを保持しなくなるようにDNA配列を変更した。
(ii) nhhBAG(H-NHase及びその翻訳後修飾に関わるNhhGをコードする)をpET24a(+)のマルチクローニングサイトに変更(配列番号1の3722-3935番目)した。
(iii) マルチクローニングサイトの最初の配列(配列番号1の3722-3724番目)がNdeIサイトの一部になるように、すぐ上流のDNA配列を変更した(配列番号1の3719番目と3721番目)。
(iv) 改変型プロモーターDNA断片の末端の制限酵素サイト(pHJK19のScaI及びStuI部分)をStuIサイトに変更した。(配列番号1の16-21番目と4229-4234番目)
(v) 改変型プロモーターDNA断片の末端の更に外側にpREHSG298ΔNBSと15bp一致するDNA配列をそれぞれ付与した(配列番号1の1-15番目:pREHSG298ΔNBSのXhoIサイト周辺)(配列番号1の4235-4249番目:pREHSG298ΔNBSのXhoIサイト周辺)。
(vi) 外側にpREHSG298ΔNBSと15bp一致するDNA配列を持つ改変型プロモーターDNAをpUC-RhodoConstから切り出せるように、両末端にXbaIサイトを配置した(配列番号1の5’側端と3’側端に、それぞれ塩基配列TCTAGAを配置)。このXbaIサイトは、最終的に、ベクターpREYH81を構築する段階で欠失する。
従って、改変型プロモーターDNA内にはXbaIサイトは存在しないので、改変型プロモーターDNA全体を本酵素で切り出せる。
【実施例1】
【0031】
(2)プラスミドpREHSG298ΔNBSの構築
大腸菌とロドコッカスのシャトルベクターpREHSG298(特許文献1の段落番号[0051]及び図7参照)のNdeI、BamHI、SalIの各制限酵素サイトを破壊したプラスミドpREHSG298ΔNBSを作製した(図2参照)。
各制限酵素の破壊方法は以下のとおりである。
NdeIサイトの破壊には、pREHSG298をNdeIで切断し、一般的な反応条件下でDNA polymerase反応を行い(KOD plus DNA polymeraseを使用)、切断後の1本鎖DNA部分を2本鎖にし、その後DNA ligaseにより両末端を連結することで当該プラスミドを作成した。
BamHI、SalIの破壊には、一般的な部位特異的変異法により、pREHSG298の複製に関わるタンパク質のアミノ酸配列を変更せずに、かつ各制限酵素サイトを破壊するようにプライマーを設計した。
【実施例1】
【0032】
(3)ベクターpREYH81の構築
上記pUC-RhodoConstをXbaIで切断した後に生じる、外側に上記pREHSG298ΔNBSと15bp一致するDNA配列を持つ改変型プロモーターDNA断片を含む断片と、上記pREHSG298ΔNBSをEcoRIとXhoIで切断した後に生じる大きいDNA断片とを、ギブソンアセンブリ法(タカラバイオ社のキットIn-Fusion(登録商標)又はLife Technologies社のキットGeneArt(登録商標)を使用)により連結し、ベクターpREYH81を構築した(図3参照)。
【実施例1】
【0033】
ベクターpREYH81は、連結部分がEcoRIでもXhoIでも切断することが不可能である。そのため、当該ベクターのマルチクローニングサイト内にあるEcoRI、XhoIサイトがユニークサイトとなる。pREHSG298ΔNBS構築時にNdeI、BamHI、SalIの遺伝子破壊を行っているため、これらの制限酵素サイトもユニークサイトとなる。当該ベクターのマルチクローニングサイトはpET24a(+)と一緒であり、NdeI、NheI、BamHI、EcoRI、SacI、SalI、NotI、XhoIがユニークサイトとして利用可能である。本プラスミドのマルチクローニングサイト内のNdeIサイトのATGはnhhB遺伝子のATGと同じ位置になるように設計し、nhhB遺伝子上流のSD配列は変更していないため、NdeIサイトを使用して目的タンパク質遺伝子のATGコドンから導入した場合にはNhhB(H-NHaseのβサブユニット)と同様の高発現が期待できる。pET24a(+)のマルチクローニングサイトに含まれるHisタグ領域を持つため、本Hisタグ領域にインフレームで目的タンパク質遺伝子を導入すれば、Hisタグ付与の目的タンパク質を発現可能である。更に、マルチクローニングサイト下流にT7ターミネーター配列が存在するため、マルチクローニングサイト内に目的タンパク質遺伝子が導入できたかどうかを確認(コロニーPCR)したり、導入した目的タンパク質遺伝子の塩基配列を決定する際に、T7ターミネータープライマーが使用可能である。
【実施例2】
【0034】
<ベクターpREYH81を利用したタンパク質発現>
(1)ベクターpREYH81の機能解析
構築したpREYH81にRhodococcus rhodocrous J1菌由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子(nhhBAG)、Rhodococcus rhodocrous J1菌由来のニトリラーゼ遺伝子(nitA)、Pseudomonas putida由来のカテコール2,3ジオキシゲナーゼ遺伝子(xylE)、並びにPseudomonas putida N19-2株由来イソニトリルヒドラターゼ遺伝子(inhA)をレポーター遺伝子として組込み、Rhodococcus属における発現をSDS-PAGEで確認することでその機能性の検討を行った(図4参照)。
【実施例2】
【0035】
組込みの方法としては、まずpREYH81をマルチクローニングサイト内のNdeIとEcoRIで切断した後に生じる大きいDNA断片をベクターとして用いた。一方で、レポーター遺伝子をDNA polymerase反応(KOD plus NEO DNA polymeraseを使用)で増幅し、インサート断片を得た。DNA polymerase反応の条件は解離94oC(10秒)、アニーリング 合成68oC(60秒)を1サイクルとし、計30サイクル行った。このとき使用したプライマー配列を以下に示す。得られたベクターとインサートをGeneArt(登録商標)(Life Technologies社のプロトコールに従った)で連結し、大腸菌TOP10を宿主として形質転換した。得られた形質転換体を、カナマイシン(50μg/ml)を含む5mlの2YT培地(ポリペプトン1.6%、酵母エキス1%、NaCl0.5%)に植菌し37℃で一晩振とう培養した。培養後、遠心分離によって集菌した菌体よりMagExtractor-Plasmid-を用いてプラスミド抽出(TOYOBO社のプロトコールに従った)し、シークエンス(ファスマックに委託)によって目的のプラスミドが構築されたことを確認した。
【実施例2】
【0036】
レポーター遺伝子増幅に用いたプライマーは以下のとおり(配列番号2~9)である。
【実施例2】
【0037】
inhA-S(配列番号2)
gatgaaaggaatgagcatATGGCGTTGCAGATCGGTTTTCTGTTGTTTCCC
【実施例2】
【0038】
inhA-AS(配列番号3)
ttgtcgacggagctcgaattcTCAGCGCAGATTGAGCTTCGCCGCAG
【実施例2】
【0039】
nitA-S(配列番号4)
gatgaaaggaatgagcatATGGTCGAATACACAAACACATTCAAAGTTGCTGCGG
【実施例2】
【0040】
nitA-AS(配列番号5)
ttgtcgacggagctcgaattcTCAGATGGAGGCTGTCGCCCGGTC
【実施例2】
【0041】
nhhBAG-S(配列番号6)
gatgaaaggaatgagcatATGGATGGTATCCACGACACAGGCGGC
【実施例2】
【0042】
nhhBAG-AS(配列番号7)
ttgtcgacggagctcgaattcTCAGTCGATGATGGCCATCGATTCCATGCG
【実施例2】
【0043】
xylE-S(配列番号8)
gatgaaaggaatgagcatATGAACAAAGGTGTAATGCGACCGGGCCATG
【実施例2】
【0044】
xylE-AS(配列番号9)
ttgtcgacggagctcgaattcTCAGGTCAGCACGGTCATGAATCGTTCGTTG
【実施例2】
【0045】
次に、pREYH81にそれぞれのレポーター遺伝子を連結したプラスミドを用いてRhodococcus fascians DSM43985、Rhodococcus erythropolis PR4を宿主として、エレクトロポレーション法(2.5kV,25μF,400Ω)により形質転換を行った。得られた形質転換体を、以下の表1に示す抗生物質を含む10mlの2YT培地(ポリペプトン1.6%、酵母エキス1%、NaCl0.5%)に植菌し、28℃で3日間振とう培養した。培養後、遠心分離によって集菌し、リン酸カリウム緩衝液を加え、超音波破砕で菌体を破砕した。破砕液を遠心し、回収した上清(無細胞抽出液)を用いてSDS-PAGEを行い、レポータータンパク質の発現を確認した。更に、同様の方法を用いて、pREYH81にxylEを連結したプラスミドをRhodococcus rhodocrous ATCC12674並びにRhodococcus percolates NBRC100626に導入し、発現を確認した。SDS-PAGEの結果を図5及び図6に示す。
【表1】
JP2016054652A_000003t.gif
【実施例2】
【0046】
図5において、矢印で示したバンドがレポータータンパク質であり、本発明のベクターを用いることで、誘導剤を培地に添加せずにタンパク質を発現することが確認された。
また、図6のXylEのレーンにおいて、分子量マーカーの30kDaから45kDaの間にある太いバンドがレポータータンパク質であり、本発明のベクターを用いることで、誘導剤を培地に添加せずにタンパク質を発現することが確認された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5