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明細書 :手術器具及び血管拡張器具

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-064130 (P2016-064130A)
公開日 平成28年4月28日(2016.4.28)
発明の名称または考案の名称 手術器具及び血管拡張器具
国際特許分類 A61B  17/00        (2006.01)
A61M  25/00        (2006.01)
FI A61B 17/00 320
A61M 25/00 552
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2015-187425 (P2015-187425)
出願日 平成27年9月24日(2015.9.24)
優先権出願番号 2014194062
優先日 平成26年9月24日(2014.9.24)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】伊藤 学
出願人 【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100145713、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 竜太
【識別番号】100165157、【弁理士】、【氏名又は名称】芝 哲央
審査請求 未請求
テーマコード 4C160
4C167
Fターム 4C160MM33
4C160MM34
4C167AA02
4C167BB02
4C167BB03
4C167BB04
4C167BB26
4C167CC08
要約 【課題】血管拡張の手術において、血管を損傷させることなく安全で確実に加圧による液体の漏れを防ぐことができる手術器具、並びに手術器具及び挿入管からなる血管拡張器具を提供すること。
【解決手段】挿入管10と手術器具20とを備える血管拡張器具であって、挿入管10は、挿入先端部11側の外径よりも接続部15側の外径が小さく形成された段差部を備え、手術器具20は、第1挟持部材26に形成される円弧状に凹んだ第1凹部26aと、第2挟持部材27における第1凹部26aに対応する位置に形成される円弧状に凹んだ第2凹部27aと、第1挟持部材26及び第2挟持部材27の閉状態を保持する保持機構24と、を備え、第1挟持部材26及び第2挟持部材27の閉状態において第1凹部26a及び第2凹部27aにより形成される血管挟持部23の径は、段差部における接続部15側の外径と略等しく形成される。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
血管の内部に挿入される挿入先端部、及び液体注入器具が接続される接続部を有する筒状の挿入管と、
第1挟持部材、第2挟持部材、及び該第1挟持部材と該第2挟持部材とを開閉可能に連結する連結部を有し、血管に挿入された前記挿入先端部を挟持する手術器具と、を備える血管拡張器具であって、
前記挿入管は、前記挿入先端部の外面に設けられ、該挿入先端部側の外径よりも前記接続部側の外径が小さく形成された段差部を備え、
前記手術器具は、
前記第1挟持部材における前記第2挟持部材に対向する面に形成される円弧状に凹んだ第1凹部と、
前記第2挟持部材における前記第1挟持部材に対向する面の前記第1凹部に対応する位置に形成される円弧状に凹んだ第2凹部と、
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の閉状態を保持する保持機構と、を備え、
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の閉状態において前記第1凹部及び前記第2凹部により形成される血管挟持部の径は、前記段差部における前記接続部側の外径と略等しく形成される血管拡張器具。
【請求項2】
第1挟持部材、第2挟持部材、及び前記第1挟持部材と第2挟持部材とを開閉可能に連結する連結部を有し、先端部が血管の内部に挿入された挿入管を挟持する手術器具であって、
前記第1挟持部材における前記第2挟持部材に対向する面に複数形成され、それぞれ異なる径で円弧状に凹んだ複数の第1凹部と、
前記第2挟持部材における前記第1挟持部材に対向する面の複数の前記第1凹部それぞれに対応する位置に形成され、円弧状に凹んだ複数の第2凹部と、をさらに備える手術器具。
【請求項3】
前記第1挟持部材における複数の前記第1凹部が形成される面と複数の該第1凹部との境界部分、及び前記第2挟持部材における複数の前記第2凹部が形成される面と複数の該第2凹部との境界部分は、曲面により構成される請求項2に記載の手術器具。
【請求項4】
複数の前記第1凹部の円弧の中心角は、複数の前記第2凹部の円弧の中心角よりも大きく構成される請求項2又は3に記載の手術器具。
【請求項5】
弾性変形可能な樹脂部材により構成される第1挟持部材及び第2挟持部材と、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の先端側を開閉可能に該第1挟持部材及び前記第2挟持部材の基端側を連結する連結部と、を有し、血管の内部に挿入された挿入管を挟持する手術器具であって、
前記第1挟持部材における前記第2挟持部材に対向する面に形成される円弧状に凹んだ第1凹部と、
前記第2挟持部材における前記第1挟持部材に対向する面の前記第1凹部に対応する位置に形成される円弧状に凹んだ第2凹部と、
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の先端側において該第1挟持部材及び前記第2挟持部材を係合させて閉状態を保持する係合部と、
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材それぞれの基端側の外面が凹んで形成される係合解除部と、を備える手術器具。
【請求項6】
血管の内部に挿入される挿入先端部、及び液体注入器具が接続される接続部を有する筒状の挿入管と、請求項5に記載の手術器具と、を備える血管拡張器具であって、
前記挿入管は、前記挿入先端部の外面に設けられ、該挿入先端部側の外径よりも前記接続部側の外径が小さく形成された段差部を備え、
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の閉状態において前記第1凹部及び前記第2凹部により形成される血管挟持部の径は、前記段差部における前記接続部側の外径と略等しく形成される血管拡張器具。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離採取した血管を血管拡張する場合に用いられる手術器具、並びにこの手術器具及び挿入管からなる血管拡張器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、末期腎不全患者における透析用ブラッドアクセス作製術において、血行再建のために剥離採取した自己血管(自家静脈)を拡張させる必要がある、この場合、剥離した自家静脈(橈側皮静脈や尺側皮静脈)の吻合部位から、それより中枢の剥離していない前腕部から上腕部にかけての広範囲の静脈を確実且つ損傷なく安全に拡張させる必要がある。
【0003】
同様に、虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス手術、下肢閉塞性動脈硬化症に対する下肢血行再建術、頭頸部領域の血行再建術等でも、剥離採取した血管(大伏在静脈や橈骨動脈)の分枝の処理や損傷部の確認、修復の際に血管を拡張させる必要がある。
【0004】
上記のような血管拡張は、具体的には先端がテーパ状の挿入管(カニューレ)又は球状になったカニューレを挿入し、ヘパリン入り生理食塩水等を内腔に注入し、血管を内側から加圧して拡張させる。カニューレ挿入部からの液体の漏れをコントロールする際には、ストレート型の鉗子を利用する場合があるが、鉗子とカニューレが接する部分が限局しており、それ以外の部分からの漏れが生じて血管拡張作業が不十分になってしまう。このような問題点があるため、臨床現場では、漏れを制御するために細い絹糸で血管の外側から結紮することを余儀なくされていることが多い。結紮する作業は人手と時間を要するだけでなく、血管拡張後に結紮糸を取り除く際にも手間が生じる。また外側からの結紮により血管結紮部分が破損したり、結紮糸を取り除く際に血管が破損する危険がある。血管の破損部分は切除せざるを得なくなり、結果的にバイパスグラフト(特に透析用ブラッドアクセス作成術の際)としての適正な長さを維持できなくなってしまうという欠点がある。
【0005】
また、手術中に被把持対象物を安定して把持するための技術として、例えば特許文献1、2に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、管状シャフト11先端に可動ジョー12と固定ジョー13から構成したクリップ保持部18を有するクリップ操作用鉗子10と、管状シャフト21先端に可動ジョー22と固定ジョー23から構成したクリップ挟持部28を有するクリップ着脱用鉗子20と、クリップ30から構成される内視鏡下外科手術器具セットであって、クリップ操作用鉗子は、クリップを保持したときに常に管状シャフトの軸方向に対し一定の向きで保持されるように保持用凹部16,17が形成され、クリップ着脱用鉗子は、クリップを挟持したときに常に管状シャフトの軸方向に対し同一の角度で挟持されるように挟持用凹部26,27が形成され、前記クリップは、クリップ操作用鉗子の可動ジョーと固定ジョーで保持される被保持部と、クリップ着脱用鉗子の可動ジョーと固定ジョーで挟持される被挟持部が形成されているものである。
【0006】
特許文献2に示す技術は、体腔内に導入した内視鏡を体腔内の切込み開口部に誘導するための誘導補助器具1において、挿入部用シース2に進退自在に装着された操作ロッド5の先端に鉤状の把持部材6を連接し、前記シース2の先端位置には前記把持部材6内に取り込んだ前記内視鏡の被把持部分を受けて前記鉤状部6との間に前記内視鏡の被把持部分を挟み込む弾性部材7を設け、前記シース2の基端側には前記操作ロッド5を介して前記把持部材6を進退操作する操作部3とを具備するものである。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2012-232066号公報
【特許文献2】特開平10-272139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記各特許文献に示す技術は、あくまで被把持対象物を安定して把持するものであり、加圧された液体を漏れを発生させることなく強固に且つ安全に挟持して保持できるものではない。すなわち、上記に示したような血管拡張における問題点を解決できる技術ではない。
【0009】
本発明は、血管拡張の手術において、血管を損傷させることなく安全で確実に加圧による液体の漏れを防ぐことができる手術器具、並びにこの手術器具及び挿入管からなる血管拡張器具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、血管の内部に挿入される挿入先端部、及び液体注入器具(注射器)が接続される接続部を有する筒状の挿入管と、第1挟持部材、第2挟持部材、及び該第1挟持部材と該第2挟持部材とを開閉可能に連結する連結部を有し、血管に挿入された前記挿入先端部を挟持する手術器具と、を備える血管拡張器具であって、前記挿入管は、前記挿入先端部の外面に設けられ、該挿入先端部側の外径よりも前記接続部側の外径が小さく形成された段差部を備え、前記手術器具は、前記第1挟持部材における前記第2挟持部材に対向する面に形成される円弧状に凹んだ第1凹部と、前記第2挟持部材における前記第1挟持部材に対向する面の前記第1凹部に対応する位置に形成される円弧状に凹んだ第2凹部と、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の閉状態を保持する保持機構と、を備え、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の閉状態において前記第1凹部及び前記第2凹部により形成される血管挟持部の径は、前記段差部における前記接続部側の外径と略等しく形成される血管拡張器具に関する。
【0011】
また、本発明は、第1挟持部材、第2挟持部材、及び前記第1挟持部材と第2挟持部材とを開閉可能に連結する連結部を有し、先端部が血管の内部に挿入された挿入管を挟持する手術器具であって、前記第1挟持部材における前記第2挟持部材に対向する面に複数形成され、それぞれ異なる径で円弧状に凹んだ複数の第1凹部と、前記第2挟持部材における前記第1挟持部材に対向する面の複数の前記第1凹部それぞれに対応する位置に形成され、円弧状に凹んだ複数の第2凹部と、をさらに備える手術器具に関する。
【0012】
また、前記第1挟持部材における複数の前記第1凹部が形成される面と複数の該第1凹部との境界部分、及び前記第2挟持部材における複数の前記第2凹部が形成される面と複数の該第2凹部との境界部分は、曲面により構成されることが好ましい。
【0013】
また、複数の前記第1凹部の円弧の中心角は、複数の前記第2凹部の円弧の中心角よりも大きく構成されることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、弾性変形可能な樹脂部材により構成される第1挟持部材及び第2挟持部材と、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の先端側を開閉可能に該第1挟持部材及び前記第2挟持部材の基端側を連結する連結部と、を有し、血管の内部に挿入された挿入管を挟持する手術器具であって、前記第1挟持部材における前記第2挟持部材に対向する面に形成される円弧状に凹んだ第1凹部と、前記第2挟持部材における前記第1挟持部材に対向する面の前記第1凹部に対応する位置に形成される円弧状に凹んだ第2凹部と、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の先端側において該第1挟持部材及び前記第2挟持部材を係合させて閉状態を保持する係合部と、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材それぞれの基端側の外面が凹んで形成される係合解除部と、を備える手術器具に関する。
【0015】
また、本発明は、血管の内部に挿入される挿入先端部、及び液体注入器具が接続される接続部を有する筒状の挿入管と、上述のいずれかに記載の手術器具と、を備える血管拡張器具であって、前記挿入管は、前記挿入先端部の外面に設けられ、該挿入先端部側の外径よりも前記接続部側の外径が小さく形成された段差部を備え、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の閉状態において前記第1凹部及び前記第2凹部により形成される血管挟持部の径は、前記段差部における前記接続部側の外径と略等しく形成される血管拡張器具に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、血管拡張の手術において、血管を損傷させることなく、血管に挿入された挿入管の抜去を防止し、安全で確実に加圧による液体の漏れを防ぐことができる手術器具及びこの手術器具及び挿入管からなる血管拡張器具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の血管拡張器具を構成する、血管内に挿入する挿入管の構造を示す図である。
【図2】血管内に挿入先端部が挿入された場合の断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る手術器具の外観図である。
【図4】実際の手術において挿入管及び手術器具(血管拡張器具)を利用する場合の利用形態を示す図である。
【図5】血管、手術器具の内壁部材及び挿入管の外周部材の硬度の関係を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係る手術器具の第1の応用例を示す図である。
【図7】第1の実施形態に係る手術器具の第2の応用例を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る手術器具の構成を示す第1の図である。
【図9】第2の実施形態に係る手術器具の構成を示す第2の図である。
【図10】第2の実施形態に係る手術器具の構成を示す第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は多くの異なる形態で実施可能である。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。

【0019】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る手術器具及び血管拡張器具について、図1ないし図7を用いて説明する。本実施形態に係る手術器具は、血行再建において剥離採取した血管(自家静脈又は自家動脈)を拡張する際に利用するものであり、血管内に挿入する挿入管と当該挿入管が挿入された血管とを同時に挟み込んで固定するものである。また、本実施形態に係る血管拡張器具は、挿入管と手術器具とがセットになって構成されるものである。

【0020】
図1は、血管内に挿入する挿入管の構造を示す図である。挿入管10は、挿入先端部11を血管内に挿入され、中心を貫通し血管内に液体を流入するための流路12が形成された導管部13と、血管内に流入する液体を貯留する貯留部14と、挿入管10を介して血管の内部に液体を注入するための液体注入器具としての注射器17の先端部16が挿入されることで、注射器17と挿入管10を接続する接続部15とを備える。注射器17から排出された液体は、その先端部16、接続部15、貯留部14、流路12、挿入先端部11を介して血管内に流入される。この挿入管10は、血管の太さに応じて異なる規格で用意されており、例えば、挿入先端部11の凸部の径が2mm、3mm、4mmといった規格のものがある。
また、挿入管10は、挿入先端部11の外面に設けられ、挿入先端部11側の外径よりも接続部15側の外径が小さく形成された段差部を有して構成される。

【0021】
図2は、血管内に挿入先端部11が挿入された場合の断面図である。剥離採取された血管Sに挿入先端部11より少し深い位置(導管部13が太くなる方を深い位置とする)までの部分が挿入される。すなわち、挿入先端部11+αの領域が血管Sで覆われる状態となる。この+αの領域は、後述する本実施形態の手術器具20により血管Sを締め付けて固定する領域として利用される。なお、図2(B)に示すように、挿入先端部11と導管部13との間に形成されている段差部を利用し、この段差部による凸部18と手術器具20とが血管Sを介して嵌合するように、手術器具20の締め込み部分に凹部19を形成するようにしてもよい。図2(A)、(B)のいずれの場合であっても、挿入先端部11と導管部13との問の段差を利用して、挿入管10と手術器具20とのズレを防止することができる。

【0022】
また、図1において、注射器17の先端部16は、例えば弾性体等の弾性力を利用して接続部15に密着固定されており、注射器17内の液体を導管部13に注入する。注入された液体は、導管部13を通り抜けて血管S内に流入される。挿入管10と血管Sは、図2に示したように、手術器具(詳細は後述する)により締め付けて固定されているため隙間なく密閉され、注射器17内の液体を加圧状態で血管内に送り込むことができる。加圧状態で液体が流入されることで血管Sが十分に拡張される。

【0023】
次に、挿入管10と血管Sとを固定する本実施形態に係る手術器具について説明する。図3は、本実施形態に係る手術器具の外観図である。図3(A)は締め込み部分が閉じた状態(挿入管10と血管Sとを締め付けた状態)、図3(B)は締め込み部分が開いた状態(挿入管10と血管Sとを締め付けていない状態)を示している。

【0024】
手術器具20は、第1挟持部材としての第1締込部材26と第2挟持部材としての第2締込部材27とが連結部24において連結されたクリップ構造となっており、手元での開閉操作部21の操作に応じて締込部22の開閉状態を制御して血管Sを締め付ける。つまり、開閉操作部21の幅を狭めると締込部22の幅が広がり、開閉操作部21の幅を広げると締込部22の幅が狭まる。開閉操作部21には、その開閉方向に弾性力が作用するようにバネ状の弾性部29を有しており、外部からの力が加わっていない状態では、弾性部29の作用により開閉操作部21が開いた状態、すなわち締込部22が閉じた状態で保持される。すなわち、弾性部29は、締込部22(第1締込部材26及び第2挟持部材27)の閉状態を保持する保持機構として機能する。また、血管Sを挟み込んで締め付ける際には、外側から矢印Aの方向に応力をかけて開閉操作部21を閉じ、同時に締込部22を開く。そして、所望の締込孔23aないし23cに血管Sが嵌入されると、矢印Aの方向にかけていた応力を解放することで締込部22を閉じて血管Sが固定される。上述したように、例えば挿入管10に3つの規格がある場合は、その規格に合わせて締込孔23a(2mmφ)、23b(3mmφ)、23c(4mmφ)が形成される。

【0025】
各締込孔23a~23cは、第1締込部材26と第2締込部材27とが合わさることで円形状に形成されるようになっている。すなわち、第1締込部材26には、第2締込部材27に対向する面に形成され円弧状に凹んだ複数の第1凹部としての半円形状の切欠部26a~26cが配置される。また、第2締込部材27には、第1挟持部材26に対向する面の複数の切欠部26a~26cそれぞれに対応する位置に形成され円弧状に凹んだ複数の第2凹部としての半円形状の切欠部27a~27cが配置される。そして、第1締込部材26及び第2締込部材27の閉状態において、切欠部26a~26cと、切欠部27a~27cとが合わさることで、円形の血管挟持部としての締込孔23a~23cが形成される。そして、図2に示したように、これら締込孔23a~23cにより断面が円形状の血管Sを周方向から包み込むように締め込むことができる。本実施形態では、複数の切欠部26a~26cはそれぞれ異なる径に形成され、複数の切欠部27a~27cもそれぞれ異なる径に形成される。また、対応する切欠部26aと切欠部27a、切欠部26bと切欠部27b、切欠部26cと切欠部27cは、同じ径に形成される。

【0026】
図4は、実際の手術において挿入管10及び手術器具20を利用する場合の利用形態を示す図である。腕の先端部分から剥離採取した血管Sに挿入管10が挿入され、その挿入部分を手術器具20で締め込んで、注射器17からヘパリン入り生理食塩水等の液体を加圧状態で注入する。注入された液体は、血管S内を高圧で流通し血管拡張がなされる。

【0027】
なお、本実施形態においては、血管Sの硬度に対して、手術器具20における血管Sと接触する内壁部材、及び、挿入管10における血管Sと接触する外周部材の硬度が適正に調整されていることが望ましい。図5は、血管、手術器具の内壁部材51及び挿入管10の外周部材52の硬度の関係を示す図である。図5において、各部位の硬度が、(1)手術器具20における血管Sと接触する内壁部材51の硬度>血管Sの硬度>挿入管10における血管Sと接触する外周部材52の硬度、又は、(2)外周部材52の硬度>血管Sの硬度>内壁部材51の硬度という関係を保って形成されていることが望ましい。すなわち、血管Sを硬い部材と柔らかい部材で挟むことにより、硬い部材により強固な締め付けと柔らかい部材による血管損傷の防止を同時に実現することができる。

【0028】
また、図2(B)において示したように、内壁部材51及び外周部材52に凹凸部を形成することで、手術中の挿入管10及び手術器具20のズレを防止することができるが、血管損傷の可能性がある揚合には、図2(A)のように、内壁部材51及び外周部材52における血管Sと接触する表面が平滑であることが望ましい。

【0029】
また、第1締込部材26及び第2締込部材27の閉状態において切欠部26a~26c及び切欠部27a~27cにより形成される締込孔23a~23cの径は、挿入管10の段差部における接続部15側の外径と略等しく形成されることが好ましい。すなわち、手術器具20と挿入管10とをセットにして血管拡張器具を構成する場合、挿入管10の段差部における小径部分の径が、締込孔23a~23cのいずれかの径と略等しく構成された挿入管10と手術器具20とをセットにすることで、血管を好適に締め込むことができ、また、締め込んだ血管を外れにくくできる。

【0030】
さらに、挿入管10の外周寸法に対する手術器具20の締込孔23aないし23cの内径が、血管Sの塑性変形率に応じて形成されていることが望ましい。すなわち、血管Sが変形する際の許容量を考慮した締め付けの力になるように、挿入管10の外周寸法と締込孔23aないし23cの内径が形成されていることが望ましい。

【0031】
さらにまた、図6に示すように、切欠部26a,26b、27a,27bから平坦部61a~61c、62a~62cに連接する箇所におけるエッジ部分63a~63d、64a~64d(第1締込部材26における複数の切欠部26a,26bが形成される面61a~61cと複数の切欠部26a,26bとの境界部分及び第2締込部材27における複数の切欠部27a,27bが形成される面62a~62cと複数の切欠部27a,27bとの境界部分)が曲面に形成されることが望ましい。そうすることで、エッジ部分63a~63d、64a~64dが血管Sを挟み込んで損傷させてしまうことを防止することができる。なお、このとき、手術器具20による締め付けが不十分にならないように、血管の塑性変形率を考慮したエッジ部の曲面のアールが設定されているものとする。

【0032】
さらにまた、図7に示すように、切欠部26a,26b,27a,27bを半円形状に切り欠く必要はなく、中心角が異なる扇形の円弧状に切り欠くようにしてもよい。こうすることで、血管Sを大きい切欠部27a,27b(切り欠きの円弧が大きい側、つまり中心角が大きい側)に安定して固定することができると共に、挟み込む際のエッジ部63a~63d(血管Sが設置されていない挟み込みに向かう側のエッジ部)におけるエッジ角を大きくすることができ、血管の損傷を防止することができる。

【0033】
このように、本実施形態に係る手術器具20及び血管拡張器具においては、手術器具20を挿入管10の外周にフィットさせて加圧による液体の漏れを防止することができ、結紮等を行うことなく安全で確実に血管拡張を行うことが可能になる。

【0034】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る手術器具について、図8ないし図10を用いて説明する。本実施形態に係る手術器具は、1つの締込孔23のみを有し、半円形状の締込部材を先端部で係合させて固定することで円形状の血管の締め込みを行う。締込孔を1つにしたことと、締込部材を係合させて固定することで、サイズや質量を軽量化させることができ手術作業への影響を最小限に抑えることができる。

【0035】
図8ないし図10は、本実施形態に係る手術器具の構成を示す図である。図8に示す手術器具20は、血管Sを挟み込む前の状態を示したものであり、図9に示す手術器具20は、血管Sを挟み込んで固定した状態を示したものであり、図10(A)に示す手術器具20は、血管Sを挟み込んだ状態から手術器具を解放する際の状態を示したものである。

【0036】
図8に示すように、本実施形態に係る手術器具20は、前記第1の実施形態の場合と同様に血管Sを挟み込んで挿入管10と共に固定するものであり、血管拡張器具は、この手術器具20と挿入管10とのセットにより構成されるが、図3に示したような開閉操作部21を備えておらず、また、1つの締込孔23しか備えていない。すなわち、図3の構造に比べて汎用性は低下するものの、小型化及び軽量化を図ることができ、手術の邪魔にもならない。また、合成樹脂等の素材を用いて大量生産を図ることで、使い捨ての手術器具20として使用することができ、衛生面でも向上を図ることができる。

【0037】
図8において、手術器具20は可擁性且つ弾性力を有する(弾性変形可能な)例えば合成樹脂等で形成されており、半円状の開口を有する第1締込部材26及び第2締込部材27を連結部としての基部81で連結して構成されている。各第1締込部材26及び第2締込部材27は基部81を基点として開閉自在に固定されており、血管Sを挟み込んだり、血管Sから取り外す際には各第1締込部材26及び第2締込部材27を図8及び図9の矢印A方向に動作させる。第1締込部材26及び第2締込部材27の先端部(基部81と対向する位置)には、一方の係合凸部82と他方の係合凹部83からなる係合部が設けられており、図9に示すように、係合凸部82と係合凹部83とが係合して円形の締込孔23が形成される。

【0038】
また、図10(A)に示すように、第1締込部材26及び第2締込部材27における基部81近傍にはそれぞれ、第1締込部材26及び第2締込部材27の外面が凹んで形成される係止凹部84,85からなる係合解除部が配置されており、この係止凹部84,85の配置部分における第1締込部材26及び第2締込部材27の肉厚が薄く形成されることで大きな可擁性を生じる。この各係止凹部84,85に押圧力を加えると締込孔23の円形が崩れ、係合凹部83から係合凸部82が離脱して手術器具20を開放状態にすることができる。

【0039】
なお、係止凹部84,85に押圧力を加える際は指で行ってもよいが、締込孔23の径は2~4mmと非常に小さく指ではうまく押圧力を加えることができない場合がある。そのような揚合は、例えば、図10(B)に示すようなペンチ状の専用器具89により係止凹部84,85に押圧力を加えるようにしてもよい。すなわち、専用器具89の先端部86,87を係止凹部84,85に当接させ、矢印Bの方向に加力することで係合凹部83から係合凸部82を離脱させるようにしてもよい。また、必ずしも係止凹部84,85に押圧力を加えなくても、爪等で係合凹部83を外側方向に引っ掻くように変形させることで、係合凹部83から係合凸部82を離脱させるようにしてもよい。

【0040】
このように、本実施形態に係る手術器具においては、血管を加圧状態で確実に締め込んで血管拡張を安全且つ確実に実施することを可能にすると同時に、小型で量産可能な構造とすることで衛生面での向上を図ると共に、手術の阻害を最小限に抑えることを可能としている。

【0041】
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、第1締込部材26及び第2締込部材27の閉状態において締込孔23の径は、挿入管10の段差部における接続部15側の外径と略等しく形成されることが好ましい。すなわち、手術器具20と挿入管10とをセットにして血管拡張器具を構成する場合、挿入管10の段差部における小径部分の径が、締込孔23の径と略等しく構成された挿入管10と手術器具20とをセットにすることで、血管を好適に締め込むことができ、また、締め込んだ血管を外れにくくできる。

【0042】
以上、本発明の好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、以下のような特徴を有するとも言える。

【0043】
(1)本発明に係る手術器具は、剥離採取した血管内に挿入管を挿入し、当該挿入管が挿入された血管を挟んで血管拡張する手術器具であって、前記挿入管の外周径に略等しい開口孔を有し、当該開口孔の外周の一部を支点として週方向に開閉自在に形成され、前記挿入管が挿入された血管を外側から前記開口孔の内壁で挟み込む血管挟持部からなるものである。

【0044】
このように、本発明に係る手術器具においては、剥離採取した血管内に挿入した挿入管の外周径に略等しい開口孔を有し、当該開口孔の外周の一部を支点として周方向に開閉自在に形成され、前記挿入管が挿入された血管を外側から前記開口孔の内壁で挟み込む血管挟持部からなるため、血管挟持部を挿入管の外周にフィットさせて加圧による液体の漏れを防止することができ、結紮等を行うことなく安全で確実に血管拡張を行うことが可能になるという効果を奏する。

【0045】
(2)本発明に係る手術器具は、前記血管挟持部が、半円状の第1部材及び第2部材からなり、当該第1部材及び第2部材が合わさった状態で円形の前記開口孔が形成されるものである。

【0046】
このように、本発明に係る手術器具においては、血管挟持部が、半円状の第1部材及び第2部材からなり、当該第1部材及び第2部材が合わさった状態で円形の前記開口孔が形成されるため、血管に挿入された挿入管を外側から挟み込むことができ、血管を傷つけることなく安全で確実に血管拡張を行うことができるという効果を奏する。

【0047】
(3)本発明に係る手術器具は、前記血管挟持部の少なくとも内壁が、平滑に形成されているものである。

【0048】
このように、本発明に係る手術器具においては、血管挟持部の少なくとも内壁が、平滑に形成されているため、血管を損傷することなく安全で確実に血管拡張を行うことができるという効果を奏する。

【0049】
(4)本発明に係る手術器具は、前記血管の硬度に対して、前記血管挟持部における前記血管と接触する内壁部材の硬度が小さく、且つ、前記挿入管における前記血管と接触する外周部材の硬度が大きい、又は、前記血管挟持部における前記血管と接触する内壁部材の硬度が大きく、且つ、前記挿入管における前記血管と接触する外周部材の硬度が小さいものである。

【0050】
このように、本発明に係る手術器具においては、血管の硬度に対して、血管挟持部における血管と接触する内壁部材の硬度が小さく、且つ、挿入管における血管と接触する外周部材の硬度が大きい、又は、血管挟持部における血管と接触する内壁部材の硬度が大きく、且つ、挿入管における血管と接触する外周部材の硬度が小さいため、血管を損傷させることなく安全で確実に血管拡張を行うことができるという効果を奏する。すなわち、血管を内側と外側から挟み込む場合に、血管の硬度に対して内側又は外側のいずれか一方の硬度が小さく、いずれか他方の硬度が大きくなっているため、血管に掛かる圧力を硬度が小さい方の素材が吸収し、強めに挟み込んでも血管を損傷することなく確実に血管拡張を行うことができるという効果を奏する。

【0051】
(5)本発明に係る手術器具は、前記血管挟持部の内壁形状が、前記挿入管の外周辺に形成された凹部及び/又は凸部に嵌合する凸部及び/又は凹部で形成されるものである。

【0052】
このように、本発明に係る手術器具においては、血管挟持部の内壁形状が、前記挿入管の外周辺に形成された凹部及び/又は凸部に嵌合する凸部及び/又は凹部で形成されるため、挿入管と血管挟持部とがずれるのを防止して強固に固定することができるという効果を奏する。

【0053】
(6)本発明に係る手術器具は、前記挿入管の外周寸法に対する前記血管挟持部の開口孔における内周寸法が、前記血管の塑性変形率に基づいた寸法差で形成されるものである。

【0054】
このように、本発明に係る手術器具においては、挿入管の外周寸法に対する前記血管挟持部の開口孔における内周寸法が、前記血管の塑性変形率に基づいた寸法差で形成されるため、血管の塑性変形率に基づいて血管を損傷させることなく、加圧による液体の漏れを防止した血管拡張が可能になるという効果を奏する。

【0055】
以上、本発明の手術器具及び血管拡張器具の好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、第1の実施形態では、手術器具20を、3つの締込孔23a~23cを含んで構成したが、これに限らない。すなわち、第1の実施形態の手術器具を1つの締込孔により構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 挿入管
11 挿入先端部
12 流路
13 導管部
14 貯留部
15 接続部
16 先端部
17 注射器(液体注入器具)
20 手術器具
21 開閉操作部
22 締込部
23(23a~23c) 締込孔
26 第1締込部材(第1挟持部材)
26a~26c 切欠部(第1凹部)
27 第2締込部材(第2挟持部材)
27a~27c 切欠部(第2凹部)
29 弾性部
51 内壁部材
52 外周部材
61a~61d 平坦部
62a~62d 平坦部
63a~63f エッジ部
64a~64f エッジ部
81 基部
82 係合凸部
83 係合凹部
84,85 係止凹部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9