TOP > 国内特許検索 > 水中推進装置および水中探査装置 > 明細書

明細書 :水中推進装置および水中探査装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-074277 (P2016-074277A)
公開日 平成28年5月12日(2016.5.12)
発明の名称または考案の名称 水中推進装置および水中探査装置
国際特許分類 B63H  11/08        (2006.01)
B63H  11/103       (2006.01)
B63H  11/107       (2006.01)
B63C  11/48        (2006.01)
FI B63H 11/08
B63H 11/103
B63H 11/107
B63C 11/48 D
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2014-205122 (P2014-205122)
出願日 平成26年10月3日(2014.10.3)
発明者または考案者 【氏名】近 藤 逸 人
【氏名】刑 部 真 弘
出願人 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100117787、【弁理士】、【氏名又は名称】勝沼 宏仁
【識別番号】100082991、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 泰和
【識別番号】100103263、【弁理士】、【氏名又は名称】川崎 康
【識別番号】100107582、【弁理士】、【氏名又は名称】関根 毅
【識別番号】100152205、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 昌司
審査請求 未請求
要約 【課題】振動が少なく、低速運転時にも必要な推進力を確保できるとともに、細かな姿勢制御を行うことが可能な水中推進装置および水中探査装置を提供する。
【解決手段】実施形態による水中推進装置1は、後尾部分が円錐状の本体2と、本体2の外周面に吸入口6を有し、吸入口6の下流側における後尾部分に吐出口を有する流路と、流路中に設けられたインペラとを有する少なくとも一つのポンプと、吐出口の外周を取り巻くように本体2に取り付けられた円筒状のディフューザ8と、吐出口の下流近傍における本体2の外面に環状に取り付けられ、上流端で本体2に枢支された複数の方向制御翼9とを備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
本体と、
前記本体の外周面に吸入口を有し、前記吸入口の下流側における前記本体の後尾部分に吐出口を有する流路と、前記流路中に設けられたインペラとを有する少なくとも一つのポンプと、
前記吐出口の下流近傍における前記本体の外面に取り付けられ、上流端で前記本体に枢支された複数の方向制御翼と、
を備える水中推進装置。
【請求項2】
前記吐出口の外周を取り巻くように前記本体に取り付けられたディフューザをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の水中推進装置。
【請求項3】
前記ディフューザには、前記ディフューザの外側を流れる水流を、前記ディフューザと前記方向制御翼で挟まれた推進流路に導入する第1の随伴流導入流路が貫設されていることを特徴とする請求項2に記載の水中推進装置。
【請求項4】
前記ディフューザの下流端部における外面には、上流側から下流側に向かって延びるとともに、下流側に向かうにつれて溝の深さが深くなる複数本の第1の随伴流導入溝が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の水中推進装置。
【請求項5】
前記吐出口の上流側の縁部には、前記本体の外側を流れる水流を、前記流路に導入する第2の随伴流導入流路が貫設されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の水中推進装置。
【請求項6】
前記吐出口の上流側の縁部における外面には、上流側から下流側に向かって延びるとともに、下流側に向かうにつれて溝の深さが深くなる複数本の第2の随伴流導入溝が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の水中推進装置。
【請求項7】
前記本体の後尾部分は、切頭円錐状であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の水中推進装置。
【請求項8】
船尾部を有する船体と、
前記船体の外周面に吸入口を有し、前記吸入口の下流側における前記船尾部に吐出口を有する流路と、前記流路中に設けられたインペラとを有する少なくとも一つのポンプと、
前記吐出口の下流近傍における前記船体の外面に取り付けられ、上流端で前記船体に枢支された複数の方向制御翼と、
を備える水中探査装置。
【請求項9】
前記吐出口の外周を取り巻くように前記船体に取り付けられたディフューザをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の水中探査装置。
【請求項10】
前記ディフューザには、前記ディフューザの外側を流れる水流を、前記ディフューザと前記方向制御翼で挟まれた推進流路に導入する随伴流導入流路が貫設されていることを特徴とする請求項9に記載の水中探査装置。
【請求項11】
前記ディフューザの下流端部における外面には、上流側から下流側に向かって延びるとともに、下流側に向かうにつれて溝の深さが深くなる複数本の随伴流導入溝が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の水中探査装置。
【請求項12】
前記吐出口の上流側の縁部には、前記船体の外側を流れる水流を、前記流路の吐出口近傍に導入する第2の随伴流導入流路が貫設されていることを特徴とする請求項8~11のいずれかに記載の水中探査装置。
【請求項13】
前記吐出口の上流側の縁部における外面には、上流側から下流側に向かって延びるとともに、下流側に向かうにつれて溝の深さが深くなる複数本の第2の随伴流導入溝が設けられていることを特徴とする請求項8~11のいずれかに記載の水中探査装置。
【請求項14】
前記船体の船尾部は、切頭円錐状であることを特徴とする請求項8~13のいずれかに記載の水中探査装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水中推進装置および水中探査装置、より詳しくは、ポンプジェット推進方式の水中推進装置、および当該水中推進装置を利用した水中探査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中ロボットとして、自律型無人潜水機(Autonomous Underwater Vehicle:AUV)等の水中探査装置が知られている。この水中探査装置には、種々の小型センサが搭載されている。この水中探査装置は、例えば、プランクトンの分布等の海洋生態系の観察等への使用が想定されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平-48295号公報
【特許文献2】特開2010-115971号公報
【特許文献3】特開平7-179196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の水中探査装置では、以下の課題があった。
【0005】
まず、プロペラ推進方式を採る水中探査装置の場合、装置本体の外部に取り付けられたプロペラが回転することに伴い、装置本体に振動が発生したり、周囲の水を撹拌してしまう。このため、プランクトン等の観測対象を乱してしまい、観測に不向きであった。
【0006】
一方、ポンプジェット推進方式を採る水中探査装置の場合には、上記の振動に伴う問題は軽減される。しかしながら、従来のポンプジェット推進の場合、インペラの回転数が低下すると噴流の圧力が下がり、低速運転時において必要な推進力を得ることが困難という課題があった。
【0007】
また、水中探査装置は水中においては、前進や旋回の他、後進や急旋回、減速等の制御を行えることが好ましい。しかしながら、従来の水中探査装置では、細かな姿勢制御を行うことは困難であった。
【0008】
本発明は、上記の技術的課題に基づいてなされたものであり、その目的は、振動が少なく、細かな姿勢制御を行うことが可能な水中推進装置および水中探査装置を提供することである。
【0009】
また、本発明は、低速運転時において必要な推進力を確保することが可能な水中推進装置および水中探査装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る水中推進装置は、
本体と、
前記本体の外周面に吸入口を有し、前記吸入口の下流側における前記本体の後尾部分に吐出口を有する流路と、前記流路中に設けられたインペラとを有する少なくとも一つのポンプと、
前記吐出口の下流近傍における前記本体の外面に取り付けられ、上流端で前記本体に枢支された複数の方向制御翼と、
を備える。
【0011】
前記水中推進装置において、
前記吐出口の外周を取り巻くように前記本体に取り付けられたディフューザをさらに備えてもよい。
【0012】
前記水中推進装置において、
前記ディフューザには、前記ディフューザの外側を流れる水流を、前記ディフューザと前記方向制御翼で挟まれた推進流路に導入する第1の随伴流導入流路が貫設されていてもよい。
【0013】
前記水中推進装置において、
前記ディフューザの下流端部における外面には、上流側から下流側に向かって延びるとともに、下流側に向かうにつれて溝の深さが深くなる複数本の第1の随伴流導入溝が設けられていてもよい。
【0014】
前記水中推進装置において、
前記吐出口の上流側の縁部には、前記本体の外側を流れる水流を、前記流路の吐出口近傍に導入する第2の随伴流導入流路が貫設されていてもよい。
【0015】
前記水中推進装置において、
前記吐出口の上流側の縁部における外面には、上流側から下流側に向かって延びるとともに、下流側に向かうにつれて溝の深さが深くなる複数本の第2の随伴流導入溝が設けられていてもよい。
【0016】
前記水中推進装置において、
前記本体の後尾部分は、切頭円錐状であるようにしてもよい。
【0017】
本発明に係る水中探査装置は、
船尾部を有する船体と、
前記船体の外周面に吸入口を有し、前記吸入口の下流側における前記船尾部に吐出口を有する流路と、前記流路中に設けられたインペラとを有する少なくとも一つのポンプと、
前記吐出口の下流近傍における前記船体の外面に取り付けられ、上流端で前記船体に枢支された複数の方向制御翼と、
を備える。
【0018】
前記水中探査装置において、
前記吐出口の外周を取り巻くように前記船体に取り付けられたディフューザをさらに備えてもよい。
【0019】
前記水中探査装置において、
前記ディフューザには、前記ディフューザの外側を流れる水流を、前記ディフューザと前記方向制御翼で挟まれた推進流路に導入する第1の随伴流導入流路が貫設されていてもよい。
【0020】
前記水中探査装置において、
前記ディフューザの下流端部における外面には、上流側から下流側に向かって延びるとともに、下流側に向かうにつれて溝の深さが深くなる複数本の第1の随伴流導入溝が設けられていてもよい。
【0021】
前記水中探査装置において、
前記吐出口の上流側の縁部には、前記船体の外側を流れる水流を、前記流路に導入する第2の随伴流導入流路が貫設されていてもよい。
【0022】
前記水中探査装置において、
前記吐出口の上流側の縁部における外面には、上流側から下流側に向かって延びるとともに、下流側に向かうにつれて溝の深さが深くなる複数本の第2の随伴流導入溝が設けられていてもよい。
【0023】
前記水中探査装置において、
前記船体の船尾部は、切頭円錐状であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、振動が少なく、低速運転時にも必要な推進力を確保できるとともに、細かな姿勢制御を行うことが可能な水中推進装置および水中探査装置を提供することができる。
【0025】
また、本発明によれば、低速運転時において必要な推進力を確保することが可能な水中推進装置および水中探査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、実施形態に係る水中推進装置1の側面図であり、(b)は、水中推進装置1を後ろ側から見た図である。
【図2】水中推進装置1の一部拡大断面図である。
【図3】(a)は、随伴流導入流路10が貫設されたディフューザ8の側面図であり、(b)は、随伴流導入溝11が設けられたディフューザ8の側面図である。
【図4】(a)は、前進する場合における、ディフューザ8、方向制御翼9および水流の流れを示す図であり、(b)は、旋回する場合における、ディフューザ8、方向制御翼9および水流の流れを示す図である。
【図5】前進する場合における、ディフューザ8、方向制御翼9および水流の流れを示す拡大図である。
【図6】旋回する場合における、ディフューザ8、一方の方向制御翼9および水流の流れを示す拡大図である。
【図7】旋回する場合における、ディフューザ8、他方の方向制御翼9および水流の流れを示す拡大図である。
【図8】(a)は、急旋回する場合における、ディフューザ8、方向制御翼9および水流の流れを示す図であり、(b)は、後進する場合における、ディフューザ8、方向制御翼9および水流の流れを示す図である。
【図9】急旋回または後進する場合における、ディフューザ8、方向制御翼9および水流の流れを示す拡大図である。
【図10】実施形態に係る水中探査装置30の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。

【0028】
(水中推進装置)
本発明の実施形態に係る水中推進装置1の構成について、図1~図3を参照して説明する。図1(a)は水中推進装置1の側面図であり、図1(b)は水中推進装置1を後ろ側から見た図である。図2は、ディフューザ8および方向制御翼9を含む水中推進装置1の一部拡大断面図である。図3(a)は随伴流導入流路10が貫設されたディフューザ8の側面図であり、図3(b)は随伴流導入溝11が設けられたディフューザ8の側面図である。

【0029】
水中推進装置1は、図1(a),(b)および図2に示すように、本体2と、少なくとも一つのポンプ3と、ディフューザ8と、複数の方向制御翼9とを備えている。この水中推進装置1は、例えば、水中で活動する水中ロボットに取り付けられ、水中ロボットの移動ないし姿勢制御を行うために使用される。

【0030】
次に、水中推進装置1の各構成要素について詳しく説明する。

【0031】
本体2は、図1(a)および図1(b)に示すように、少なくとも後尾部分が円錐状である。好ましくは、本体2の後尾部分は、図1(a)に示すように、切頭円錐状である。なお、本体2は、円錐状に限らず、例えば円柱状、直方体状、角柱状、角錐状等であってもよい。

【0032】
本体2内には、図2に示すように、吸入された水が流れる流路4が貫設されている。この流路4は、一端に吸入口6を有し、他端に吐出口7を有する。吸入口6は本体の外周面に設けられている。吐出口7は、吸入口6の下流側における本体2の後尾部分に設けられている。例えば本体2の後尾部分が円錐状の場合、吐出口7は後尾部分の周方向に沿って円弧状に開口しており、本体2の後尾部分が直方体形状の場合、吐出口7は後尾部分の4つの側面の各々に周方向に沿って長方形状に開口している。なお、吐出口7の形状は、円弧状や長方形状に限らず、例えば楕円形状や、任意の曲線形状等であってもよい。このように流路4は、本体2の外周面に吸入口6を有し、吸入口6の下流側における本体2の後尾部分に吐出口7を有する。

【0033】
ポンプ3は、図2に示すように、流路4と、この流路4中に設けられたインペラ5とを有する。インペラ5が高速回転することで、吸入口6から水が吸入され、吐出口7からジェット流が吐出(噴射)される。ポンプ3を用いたポンプジェット推進方式を採ることにより、プロペラ推進方式に比べて、本体2の振動(特に1~50Hzの低周波振動)を抑制することができる。

【0034】
ポンプ3は、本体2に、方向制御翼9ごとに複数設けられる。この場合、吸入口6および吐出口7は、ポンプの数に応じて本体2の外周面に複数設けられる。

【0035】
なお、ポンプ3は、本体2に一つだけ設けられてもよい。この場合、流路4は、インペラ5の下流側において、方向制御翼9ごとに設けられた吐出口7に向けて分岐する。

【0036】
ディフューザ8は、図1(a),(b)および図2に示すように、吐出口7の外周を取り巻くように本体2に取り付けられている。ディフューザ8は、本体2の後尾部分の外周形状に合わせて設けられている。例えば本体2の後尾部分が円錐状の場合、ディフューザ8は円筒状であり、本体2の後尾部分が直方体形状の場合、ディフューザ8は角筒状である。なお、ディフューザ8は、本体2とディフューザ8を繋ぐ複数の柱状の接続部(図示せず)により本体2に固定される。

【0037】
ディフューザ8を設けることにより、水中推進装置1の周りを流れる水流(周辺流)の流路が狭まり、周辺流の速度が増加する。速度が増加した周辺流は吐出口7から噴出されたジェット流に引き込まれ易くなるため、推進力を増加させることができる。

【0038】
方向制御翼9は、図1(a),(b)に示すように、複数設けられている。本実施形態では、図1(b)に示すように4枚の方向制御翼9が設けられている。なお、本発明は、これに限らず、2枚、3枚または5枚以上の方向制御翼9が設けられてもよい。

【0039】
各方向制御翼9は、図1(a),(b)および図2に示すように、吐出口7の下流近傍における本体2の外面に、本体2の後尾部分の形状に合わせて取り付けられている。例えば本体2の後尾部分が円錐状の場合、方向制御翼9は環状に取り付けられる。また、本体2の後尾部分が直方体形状の場合、方向制御翼9は四辺にそれぞれ取り付けられる。

【0040】
各方向制御翼9は、上流端で本体2に枢支されている。より詳しくは、方向制御翼9は、図2に示すように、本体2の外周の接線方向に延びる回転軸Lを中心に回動するように本体2に取り付けられている。各方向制御翼9は互いに独立して回動可能である。

【0041】
方向制御翼9が回転軸Lを中心に回動することにより、後ほど詳しく説明するように、ジェット流および当該ジェット流に引き込まれた周辺流(随伴流)の流れの方向を制御することができる。

【0042】
ディフューザ8の下端部には、図2に示すように、随伴流導入流路10が貫設されている。図3(a)は、随伴流導入流路10が設けられたディフューザ8の側面図を示している。随伴流導入流路10は、ディフューザ8の外面8aに設けられた開口10aと、ディフューザ8の内面8bに設けられた開口10bとを有する。図2および図3(a)に示すように、内面8bの開口10bは、外面8aの開口10aよりも下流側に設けられる。

【0043】
随伴流導入流路10は、ディフューザ8の外側を流れる水流を、ディフューザ8と方向制御翼9で挟まれた推進流路Cに導入する。これにより、推進力をさらに増大させることができる。また、後ほど詳しく説明するように、随伴流導入流路10は急旋回や後進の際にも機能する。

【0044】
なお、随伴流導入流路10は、ディフューザ8の下端部に限らず、他の部分に設けられてもよい。

【0045】
また、図3(b)に示すように、ディフューザ8には、複数本の随伴流導入溝11が設けられてもよい。より詳しくは、ディフューザ8の下流端部における外面8aには、複数本の随伴流導入溝11が設けられてもよい。各随伴流導入溝11は、上流側から下流側に向かって延びるとともに、下流側に向かうにつれて溝の深さが深くなるように形成されている。これにより、随伴流導入流路10と同様、ディフューザ8の外側を流れる水流を推進流路Cに導入して推進力を増大させることができる。

【0046】
また、図3(b)に示すように、ディフューザ8の下流端部には、随伴流導入溝11に合わせて切り欠き部12が形成されていてもよい。これにより、急旋回や後進をする際に、方向制御翼9がディフューザ8の下流端部に接触した状態(図9参照)において、推進流路Cの水流を、切り欠き部12を介してディフューザ8の外側に放出させることができる。

【0047】
なお、吐出口7の上流側の縁部に、図2に示すように、ディフューザ8の随伴流導入流路10と同様の形状の随伴流導入流路13を設けてもよい。より詳しくは、吐出口7の上流側の縁部には、本体2の外側を流れる水流を、流路4の吐出口7近傍に導入する随伴流導入流路13が貫設されているようにしてもよい。

【0048】
また、図3(b)に示すディフューザ8の随伴流導入溝11と同様の形状の随伴流導入溝を設けてもよい。より詳しくは、吐出口7の上流側の縁部における外面には、上流側から下流側に向かって延びるとともに、下流側に向かうにつれて溝の深さが深くなる複数本の随伴流導入溝が設けられているようにしてもよい。

【0049】
上記のように吐出口7の上流側の縁部に、随伴流導入流路10と同様の形状の随伴流導入流路や、随伴流導入溝11と同様の形状の随伴流導入溝を設けることにより、吐出口7から噴出するジェット流が本体2の外側を流れる水流を吐出口7の近傍において引き込み易くなり、ジェット流Fによる推進力を増大させることができる。

【0050】
ここで、図5を参照して、水中推進装置1の推進原理について説明する。図5に示すように、吐出口7から噴出されたジェット流Fは、コアンダ効果(ジェット流が壁面に沿って流れる効果)により、方向制御翼9の表面に沿って流れる。ジェット流Fは高速であるため、水中推進装置1の周りを流れる周辺流が引き寄せられて随伴流となる。本実施形態では、ディフューザ8が設けられているため、水中推進装置1の周りを流れる周辺流が狭い推進流路Cを通ることになる。これにより、周辺流の速度が増加し、周辺流はさらにジェット流Fに引き込まれ易くなり、推進力が増加する。

【0051】
図5に示す随伴流G1は、ディフューザ8の上流端から推進流路Cに流れ込んだ周辺流である。随伴流G2は、ディフューザ8の外側から随伴流導入流路10を通って推進流路Cに流れ込んだ周辺流である。ジェット流F、随伴流G1および随伴流G2を合計した水流(以下、単に「合計流」ともいう。)により、水中推進装置1は推進される。

【0052】
この合計流は、方向制御翼9の表面に沿って流れた後、本体2の切頭円錐状の後尾部分の表面に沿って流れる。後尾部分を流れた合計流は、本体2の後方に、流線型の尾形状(即ち、円錐の頭部部分に相当する形状)の淀みを形成する。この淀みが本体2の仮想的なボディ(本体2の後端部分)となる。このため、推進抵抗を増やすことなく、図1(a)に示すように、本体2の後尾部分を切頭型の円錐形状とすることができる。よって、円錐の頭部の長さ分だけ本体2を短くすることができる。このため、水中推進装置1を利用した水中探査装置の船体(後述の船体31)を長くすることが可能となり、船体の容積を増加させることができる。

【0053】
次に、上記構成を有する水中推進装置1の姿勢制御(前進、旋回、急旋回、後進)について詳しく説明する。

【0054】
<前進動作>
水中推進装置1が前進(直進)する場合は、図4(a)に示すように、各方向制御翼9は、本体2の中心軸Mに対して同じ角度をなす。各方向制御翼9を通過した合計流は、中心軸Mに対して対称に本体後方に流れるため、水中推進装置1は直進する。

【0055】
また、方向制御翼9の角度を変化させることで、インペラ5の回転数を一定に保ったまま前進速度を変化させることもできる。

【0056】
<旋回動作>
水中推進装置1が旋回(右旋回)する場合、図4(b)および図6に示すように、一方の方向制御翼9(図4(b)では左側)は下流端がディフューザ8から離れるように(即ち本体2に近づくように)回転軸Lを中心に回動する。これにより、負の回転モーメントが発生する。

【0057】
一方、他方の方向制御翼9(図4(b)では右側)は、図4(b)および図7に示すように、下流端がディフューザ8に近づくように(即ち本体2から離れるように)回転軸Lを中心に回動する。これにより、正の回転モーメントが発生する。

【0058】
いずれの方向制御翼9を通過した合計流(ジェット流F、随伴流G1および随伴流G2)も、図4(b)に示すように、本体2の右後方に流れるため、水中推進装置1は右旋回する。

【0059】
<急旋回動作>
水中推進装置1が急旋回(右急旋回)する場合、図8(a)および図6に示すように、一方の方向制御翼9(図8(a)では左側)は下流端がディフューザ8から離れるように(即ち本体2に近づくように)回転軸Lを中心に回動する。これにより、負の回転モーメントが発生する。

【0060】
一方、他方の方向制御翼9(図8(a)では右側)は、図8(a)および図9に示すように、下流端がディフューザ8の下流端部に接触するように回転軸Lを中心に回動する。これにより、推進流路Cの出口(噴出口)は閉塞され、ジェット流Fおよび随伴流G1は随伴流導入流路10(または随伴流導入溝11の切り欠き部12)を通ってディフューザ8の外側に放出される。随伴流導入流路10の開口10bが開口10aよりも下流側に設けられるため、図9に示すように、ジェット流Fおよび随伴流G1は逆流する。これにより、ブレーキの効果が得られる。よって、図8(a)に示すように、本体2の片側で逆噴流を発生させることで、水中推進装置1は小さい回転半径で急旋回することができる。

【0061】
<後進動作>
水中推進装置1が後進する場合、図8(b)および図9に示すように、各方向制御翼9は、下流端がディフューザ8の下流端部に接触するように回転軸Lを中心に回動する。これにより、各推進流路Cは閉塞され、図9に示すように、ジェット流Fおよび随伴流G1は随伴流導入流路10を通って逆流するため、水中推進装置1は後退する。

【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る水中推進装置1では、ディフューザ8を設けることで周辺流の流路を狭めて速度を増加させ、ジェット流に引き込む。これにより、本実施形態によれば、ジェット流およびジェット流に引き寄せられた随伴流によって推進力を増大させることができる。

【0063】
また、ジェット流およびジェット流に引き寄せられた随伴流により、インペラ5の回転速度を落とした低速運転時においても、必要な推進力を確保することができる。

【0064】
また、本実施形態では、インペラ5を使用したポンプジェット推進方式を採ることにより、プロペラ推進方式に比べて、本体2の振動(特に低周波振動)を抑制することができる。

【0065】
さらに、本実施形態では、複数の方向制御翼9は、吐出口7の下流近傍における本体2の外面に環状に取り付けられ、上流端で本体2に枢支されている。ジェット流およびジェット流に引き寄せられた随伴流は、コアンダ効果により、方向制御翼9の外面に沿って流れることになる。方向制御翼9を回動させることにより、ジェット流および随伴流の流れの方向を効率良く制御することができる。よって、本実施形態によれば、水中推進装置1の前進、旋回、急旋回および後退等の細かな姿勢制御を行うことができる。

【0066】
なお、上記の水中推進装置1においては、ディフューザ8を削除することも可能である。この場合においても、水中推進装置はジェット流および当該ジェット流に引き寄せられた随伴流によって推進可能である。また、方向制御翼9を回動させることにより、方向制御翼9の外面に沿って流れるジェット流の方向を変えて水中推進装置の姿勢制御を行うこともできる。

【0067】
上記の水中推進装置1は、後述の実施形態のように円柱状の船体の船尾部に取り付けてもよいし、あるいは、ボート等の船の船尾部や船底に取り付けてもよい。

【0068】
(水中探査装置)
次に、前述の水中推進装置を用いた水中ロボット(AUV)として、水中探査装置30について図10を参照して説明する。図10は、実施形態に係る水中探査装置30の側面図を示している。

【0069】
水中探査装置30は、図10に示すように、魚雷形状をしており、船尾部に水中推進装置1が取り付けられている。換言すれば、水中探査装置30は、円錐状の船尾部を有する船体31と、少なくとも一つのポンプ3と、ディフューザ8と、複数の方向制御翼9とを備えている。船体31のサイズは、例えば、全長約4.5m、直径約60cmである。

【0070】
なお、船体31の形状は、魚雷形状や円筒形状に限らず、例えば、卵形状、直方体形状、角柱形状、円錐形状もしくは角錐形状等の形状、またはそれらの形状の任意の組み合わせの形状であってもよい。また、船体31の船尾部は、円錐状に限らず、例えば円柱状、直方体状、角柱状、角錐状等であってもよい。

【0071】
船体31には、観測目的・対象に応じた各種のセンサ・測定装置の他、制御部およびバッテリ等が収容される。

【0072】
各種センサ・測定装置として、速度計(Doppler Velocity Log:DVL)35、ジャイロコンパス36、深度計(図示していない)が設けられている。船首に、小型センサ(Microstructure sensor)32、プランクトンを観測するためのプランクトンカメラ(Plankton camera)33およびマルチビームソナー(Multi-beam sonar)34を設けてもよい。

【0073】
制御部39は、コンピュータ等の電子システムを含み、各種センサ・測定装置を制御する。また、制御部39がポンプ3(インペラ5)の回転数の制御や方向制御翼9の角度制御などを行ってもよい。

【0074】
バッテリシステム40は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)または燃料電池等のバッテリ、およびバッテリ管理ユニット(BMU)を有する。バッテリが供給する電力により、上記の各種センサ・測定装置、通信装置および制御部等が動作する。

【0075】
また、船体31内に、通信装置として、音波通信トランスデューサ37および無線通信アンテナ38を設けてもよい。無線通信アンテナ38はGPS信号を受信することも可能である。

【0076】
なお、図10に示すように、船首や船体31の中央の上部に、水中探査装置30の引き上げの際に使用する船首ホイスト(Nose hoist point)41や、ホイスト(Top-middle hoist point)42、船尾に、センサ等を牽引する際に使用される牽引部(towing eye)43を設けてもよい。

【0077】
本実施形態に係る水中探査装置30によれば、水中推進装置1の説明で述べたように、ディフューザ8を設けることにより、推進力を増大させ、低速運転時においても必要な推進力を確保することができる。

【0078】
また、インペラ5による水ジェット推進方式のため、船体31の振動(特に低周波振動)を抑制することができる。船体31の低周波振動を抑制できることから、低周波振動に対して感度の高いセンサ(撹拌を測定するセンサ等)を使用することが可能になる。また、プロペラを使用しないことにより船体31の後ろにらせん状の水流が発生しないため、牽引部43を介してセンサを牽引することが可能になる。また、船体の後尾部分に姿勢を安定化させるためのフィンを設けなくてもよいため、船体31が水中の藻などに引っ掛かることを防止できる。

【0079】
さらに、水中推進装置1の説明で述べたように、複数の方向制御翼9を枢動させることにより、船体31を前進、後進、旋回および急旋回等、細かな姿勢制御を行うことができる。

【0080】
なお、本実施形態では、船体に一つの水中推進装置を取り付けたが、本発明はこれに限らず、複数の水中推進装置を取り付けてもよい。例えば、船体の胴部の左右にそれぞれ水中推進装置1を設けてもよい。

【0081】
また、上記の水中探査装置30においては、ディフューザ8を削除することも可能である。この場合においても、水中探査装置はジェット流および当該ジェット流に引き寄せられた随伴流によって推進可能である。また、方向制御翼9を回動させることにより、方向制御翼9の外面に沿って流れるジェット流の方向を変えて水中探査装置の姿勢制御を行うこともできる。

【0082】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 水中推進装置
2 本体
3 ポンプ
4 流路
5 インペラ
6 吸入口
7 吐出口
8 ディフューザ
8a 外面
8b 内面
9 方向制御翼
10 随伴流導入流路
10a,10b 開口
11 随伴流導入溝
12 切り欠き部
13 随伴流導入流路
30 水中探査装置
31 船体
32 小型センサ
33 プランクトンカメラ
34 マルチビームソナー
35 速度計(DVL)
36 ジャイロコンパス
37 音響通信トランスデューサ
38 無線通信アンテナ
39 制御部
40 バッテリシステム
41,42 ホイスト
43 牽引部
C 推進流路
F ジェット流
G1,G2 随伴流
L (方向制御翼9の)回転軸
M (本体2の)中心軸
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9