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明細書 :異常組織検出装置及び信号送受信方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-083036 (P2016-083036A)
公開日 平成28年5月19日(2016.5.19)
発明の名称または考案の名称 異常組織検出装置及び信号送受信方法
国際特許分類 A61B  10/00        (2006.01)
G01N  22/02        (2006.01)
G01N  22/00        (2006.01)
FI A61B 10/00 B
G01N 22/02 C
G01N 22/00 F
G01N 22/00 S
G01N 22/00 X
A61B 10/00 T
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 24
出願番号 特願2014-216491 (P2014-216491)
出願日 平成26年10月23日(2014.10.23)
発明者または考案者 【氏名】吉川 公麿
【氏名】アズハリ アフリーン
出願人 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100138955、【弁理士】、【氏名又は名称】末次 渉
【識別番号】100109449、【弁理士】、【氏名又は名称】毛受 隆典
審査請求 未請求
要約 【課題】マイクロ波のインパルス信号の受信効率を向上し、検出精度を向上することができる異常組織検出装置及び信号送受信方法を提供する。
【解決手段】CMOSスイッチ12の複数の出力端それぞれと、送信アンテナSA1~SA8のそれぞれとを結ぶ配線部13の配線の長さを同じにする。CMOSスイッチ16の複数の入力端それぞれと、受信アンテナRA1~RA8のそれぞれとを結ぶ配線部15の配線の長さを同じにする。制御部10,送信部11、受信部17は、CMOSスイッチ12、16を制御して、送信アンテナSA1~SA8及び受信アンテナRA1~RA8の組み合わせを切り替えながら、電気信号をCMOSスイッチ12に出力し、受信アンテナRA1~RA8から出力された電気信号を、CMOSスイッチ16を介して入力し、入力した電気信号に対する信号処理を行う。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
マイクロ波のインパルス信号を送信する複数の送信アンテナと、
前記マイクロ波を受信する複数の受信アンテナと、
入力端から入力した前記マイクロ波に対応する電気信号を前記複数の送信アンテナのいずれかに出力するために複数の出力端それぞれが前記複数の送信アンテナと接続された単極多投の第1のCMOSスイッチと、
前記受信アンテナで受信した前記マイクロ波に対応する電気信号を出力するために複数の入力端それぞれが前記複数の受信アンテナと接続された単極多投の第2のCMOSスイッチと、
前記第1のCMOSスイッチの複数の出力端それぞれと、前記複数の送信アンテナのそれぞれとを配線で結ぶ第1の配線部と、
前記第2のCMOSスイッチの複数の入力端それぞれと、前記複数の受信アンテナのそれぞれとを配線で結ぶ第2の配線部と、
前記第1のCMOSスイッチ及び前記第2のCMOSスイッチを制御して、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの組み合わせを切り替えながら、前記電気信号を前記第1のCMOSスイッチに出力し、前記受信アンテナから出力された電気信号を前記第2のCMOSスイッチを介して入力し、入力した電気信号に対する信号処理を行う信号処理部と、
を備える異常組織検出装置。
【請求項2】
前記第1の配線部は、
前記第1のCMOSスイッチの複数の出力端それぞれと、前記複数の送信アンテナのそれぞれとを同じ長さの配線で結び、
前記第2の配線部は、
前記第2のCMOSスイッチの複数の入力端それぞれと、前記複数の受信アンテナのそれぞれとを同じ長さの配線で結ぶ、
請求項1に記載の異常組織検出装置。
【請求項3】
前記第1の配線部は、
前記第1のCMOSスイッチが実装された基板を有し、
前記第2の配線部は、
前記第2のCMOSスイッチが実装された基板を有し、
前記各基板上には、前記第1のCMOSスイッチ又は前記第2のCMOSスイッチを中心に放射状に実装された同軸ケーブルの複数の接続ポートと、
前記第1のCMOSスイッチ又は前記第2のCMOSスイッチの複数の出力端のいずれかと、前記複数の接続ポートのいずれかとを接続するために放射状に延びる長さが同じ複数のマイクロストリップラインと、
が実装されている、
請求項2に記載の異常組織検出装置。
【請求項4】
前記複数の接続ポートのいずれかと、前記複数の送信アンテナ又は前記複数の受信アンテナのいずれか1つのアンテナとを結ぶ複数の同軸ケーブルの長さが同じである、
請求項3に記載の異常組織検出装置。
【請求項5】
前記第1のCMOSスイッチ及び前記第2のCMOSスイッチは、
単極8投のCMOSスイッチである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の異常組織検出装置。
【請求項6】
前記単極8投のCMOSスイッチは、
前記送信アンテナ又は前記受信アンテナである8つのアンテナと接続され、
前記8つのアンテナのうちのいずれか1つのアンテナを選択するために各アンテナに接続され、それぞれ4ずつのアンテナから成る2つのグループにグループ分けされた8つの選択回路と、
前記選択回路のグループの一方を選択する単極双投のCMOSスイッチと、
を備える、
請求項5に記載の異常組織検出装置。
【請求項7】
前記複数のマイクロストリップラインのそれぞれには、
前記マイクロ波の中心波長をλとしたときにλ/4の長さを有し、前記各接続ポートのインピーダンスをZ1とし、前記第1、第2のCMOSスイッチの出力端のインピーダンスをZ2としたときに、√(Z1×Z2)の中間インピーダンスを有する伝送線路が挿入されている、
請求項3に記載の異常組織検出装置。
【請求項8】
前記各送信アンテナ及び前記各受信アンテナは、
前記各同軸ケーブルの内部導体と接続された裏側導体線と、前記裏側導体線と絶縁層を介して配置された前記各同軸ケーブルの外部導体と接続された表面導体と、を有し、
前記複数の送信アンテナ及び前記複数の受信アンテナのそれぞれが、前記裏側導体線で電流の流れる方向が同じとなるように1次元配列され、
前記複数の送信アンテナの配列と、前記複数の受信アンテナの配列とが、前記裏側導体線で電流が流れる方向に交互に配列されている、
請求項4に記載の異常組織検出装置。
【請求項9】
前記信号処理部は、
位置関係が同じ複数の異なる前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの組み合わせで前記マイクロ波の送受信を行い、
前記送受信の結果得られた受信信号を平均化した信号を基準信号とし、
前記受信信号と前記基準信号との差分に基づいて、異常組織を検出する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の異常組織検出装置。
【請求項10】
単極多投の第1のCMOSスイッチと複数の送信アンテナとをそれぞれ結ぶ複数の第1の配線の長さを同じとし、
単極多投の第2のCMOSスイッチと複数の受信アンテナとをそれぞれ結ぶ複数の第1の配線の長さを同じとし、
前記第1のCMOSスイッチ及び前記第2のCMOSスイッチを制御して、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの組み合わせを切り替えながら、電気信号を前記第1のCMOSスイッチに出力し、前記受信アンテナから出力された電気信号を前記第2のCMOSスイッチを介して入力し、入力した電気信号に対する信号処理を行う、
信号送受信方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、異常組織検出装置及び信号送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の診断は、例えば、X線や核磁気共鳴装置(MRI(Magnetic Resonance Imaging))により対象部位の画像を撮像し、撮像した画像を分析することにより行われるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、X線の生体への悪影響が懸念されるうえ、X線装置、MRI装置は、小型化が困難である。さらに、これらの装置を用いて診断を行うためには、専門機関での受診が必須になる。
【0003】
そこで、X線装置やMRI装置を用いずに、簡易な構成で簡単に異常組織を検出することが可能な異常組織検出装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この異常組織検出装置には、アンテナがマトリクス状に配置されたアンテナアレイが設けられている。この異常組織検出装置は、アンテナアレイの一のアンテナから生体にマイクロ波のインパルス信号を放射し、アンテナアレイの他のアンテナで、放射したインパルス信号の反射波を受信する。この異常組織検出装置は、マイクロ波のインパルス信号を送信するアンテナと、マイクロ波を受信するアンテナとの組み合わせを変えながら、インパルス信号の反射波の送受信を行い、各アンテナの組み合わせで得られた複数の受信信号に基づいて、生体内の異常組織を検出する。
【0004】
特許文献2に開示された異常組織検出装置において生体内の異常組織を精度良く検出するためには、送受信を行うアンテナの組み合わせが変わっても、両アンテナの相対距離が同一であり、かつ、生体に異常組織がないのであれば、同じ受信信号(インパルス信号の反射波)を受信できるようになっている必要がある。アンテナの組み合わせが変わるだけで受信信号が変わってしまうのであれば、信号変動が極めて小さい生体内の異常組織を示す信号成分を検出するのが困難になるからである。
【0005】
しかしながら、電波の送受信を行うアンテナの組み合わせによって、受信信号が異なる場合がある。送受信用のアンテナがアンテナアレイの外周側にあるのか内周側にあるのかなど、各アンテナの周囲の環境の違いによって受信信号のレベルの変化が発生するためである。そこで、ダミーアンテナなどを設けて電波の送受信状態を、異なるアンテナの組み合わせで同じ状態とするアンテナアレイ装置が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、異常組織を検出する装置は、スイッチングをCMOSスイッチで行うようにして、装置の小型化が試みられている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特表2007-071873号公報
【特許文献2】特開2010-69158号公報
【特許文献3】特開2014-131199号公報
【特許文献4】特開2014-036411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のアンテナアレイ装置のように、異なるアンテナの組み合わせで電波の送受信状態を同じにしても、受信信号の遅れなどがアンテナの組み合わせによって異なる場合がある。この受信信号の遅れの違いにより、検出精度が低下するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、マイクロ波のインパルス信号の受信効率を向上し、検出精度を向上することができる異常組織検出装置及び信号送受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る異常組織検出装置は、
マイクロ波のインパルス信号を送信する複数の送信アンテナと、
前記マイクロ波を受信する複数の受信アンテナと、
入力端から入力した前記マイクロ波に対応する電気信号を前記複数の送信アンテナのいずれかに出力するために複数の出力端それぞれが前記複数の送信アンテナと接続された単極多投の第1のCMOSスイッチと、
前記受信アンテナで受信した前記マイクロ波に対応する電気信号を出力するために複数の入力端それぞれが前記複数の受信アンテナと接続された単極多投の第2のCMOSスイッチと、
前記第1のCMOSスイッチの複数の出力端それぞれと、前記複数の送信アンテナのそれぞれとを配線で結ぶ第1の配線部と、
前記第2のCMOSスイッチの複数の入力端それぞれと、前記複数の受信アンテナのそれぞれとを配線で結ぶ第2の配線部と、
前記第1のCMOSスイッチ及び前記第2のCMOSスイッチを制御して、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの組み合わせを切り替えながら、前記電気信号を前記第1のCMOSスイッチに出力し、前記受信アンテナから出力された電気信号を前記第2のCMOSスイッチを介して入力し、入力した電気信号に対する信号処理を行う信号処理部と、
を備える。
【0011】
前記第1の配線部は、
前記第1のCMOSスイッチの複数の出力端それぞれと、前記複数の送信アンテナのそれぞれとを同じ長さの配線で結び、
前記第2の配線部は、
前記第2のCMOSスイッチの複数の入力端それぞれと、前記複数の受信アンテナのそれぞれとを同じ長さの配線で結ぶ、
こととしてもよい。
【0012】
前記第1の配線部は、
前記第1のCMOSスイッチが実装された基板を有し、
前記第2の配線部は、
前記第2のCMOSスイッチが実装された基板を有し、
前記各基板上には、前記第1のCMOSスイッチ又は前記第2のCMOSスイッチを中心に放射状に実装された同軸ケーブルの複数の接続ポートと、
前記第1のCMOSスイッチ又は前記第2のCMOSスイッチの複数の出力端のいずれかと、前記複数の接続ポートのいずれかとを接続するために放射状に延びる長さが同じ複数のマイクロストリップラインと、
が実装されている、
こととしてもよい。
【0013】
前記複数の接続ポートのいずれかと、前記複数の送信アンテナ又は前記複数の受信アンテナのいずれか1つのアンテナとを結ぶ複数の同軸ケーブルの長さが同じである、
こととしてもよい。
【0014】
前記第1のCMOSスイッチ及び前記第2のCMOSスイッチは、
単極8投のCMOSスイッチである、
こととしてもよい。
【0015】
前記単極8投のCMOSスイッチは、
前記送信アンテナ又は前記受信アンテナである8つのアンテナと接続され、
前記8つのアンテナのうちのいずれか1つのアンテナを選択するために各アンテナに接続され、それぞれ4ずつのアンテナから成る2つのグループにグループ分けされた8つの選択回路と、
前記選択回路のグループの一方を選択する単極双投のCMOSスイッチと、
を備える、
こととしてもよい。
【0016】
前記複数のマイクロストリップラインのそれぞれには、
前記マイクロ波の中心波長をλとしたときにλ/4の長さを有し、前記各接続ポートのインピーダンスをZ1とし、前記第1、第2のCMOSスイッチの出力端のインピーダンスをZ2としたときに、√(Z1×Z2)の中間インピーダンスを有する伝送線路が挿入されている、
こととしてもよい。
【0017】
前記各送信アンテナ及び前記各受信アンテナは、
前記各同軸ケーブルの内部導体と接続された裏側導体線と、前記裏側導体線と絶縁層を介して配置された前記各同軸ケーブルの外部導体と接続された表面導体と、を有し、
前記複数の送信アンテナ及び前記複数の受信アンテナのそれぞれが、前記裏側導体線で電流の流れる方向が同じとなるように1次元配列され、
前記複数の送信アンテナの配列と、前記複数の受信アンテナの配列とが、前記裏側導体線で電流が流れる方向に交互に配列されている、
こととしてもよい。
【0018】
前記信号処理部は、
位置関係が同じ複数の異なる前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの組み合わせで前記マイクロ波の送受信を行い、
前記送受信の結果得られた受信信号を平均化した信号を基準信号とし、
前記受信信号と前記基準信号との差分に基づいて、異常組織を検出する、
こととしてもよい。
【0019】
本発明の第2の観点に係る信号送受信方法は、
単極多投の第1のCMOSスイッチと複数の送信アンテナとをそれぞれ結ぶ複数の第1の配線の長さを同じとし、
単極多投の第2のCMOSスイッチと複数の受信アンテナとをそれぞれ結ぶ複数の第1の配線の長さを同じとし、
前記第1のCMOSスイッチ及び前記第2のCMOSスイッチを制御して、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの組み合わせを切り替えながら、電気信号を前記第1のCMOSスイッチに出力し、前記受信アンテナから出力された電気信号を前記第2のCMOSスイッチを介して入力し、入力した電気信号に対する信号処理を行う。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1のCMOSスイッチの複数の出力端と複数の送信アンテナとの間の配線と、複数の受信アンテナと第2のCMOSスイッチの複数の入力端との間の配線とを分けることで、配線を単純化することができるので、その間の信号の遅れやノイズ成分の混入状態を揃え易くすることができる。このため、マイクロ波のインパルス信号の受信効率を向上し、検出精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る異常組織検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】送信部から出力されるインパルス信号の一例を示す図である。
【図3】図3(A)及び図3(B)は、CMOSスイッチの一部の回路図である。
【図4】CMOSスイッチの全体の回路図である。
【図5】CMOSスイッチ、配線部、アンテナアレイ、配線部、CMOSスイッチの具体例を模式的に示す図である。
【図6】基板の斜視図である。
【図7】基板上のマイクロストリップラインの具体例を模式的に示す図である。
【図8】基板上のマイクロストリップラインのインピーダンスを示す図である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は、中間インピーダンスを示す図である。
【図10】図10(A)及び図10(B)は、アンテナアレイの詳細な構成を示す図である。
【図11】図11(A)、図11(B)及び図11(C)は、個々のアンテナにおいて生じる電界と磁界を模式的に示す図である。
【図12】異常組織の検出原理を示す図である。
【図13】図13(A)は、従来の受信信号の波形データの一例を示すグラフである。図13(B)は、本発明の第1の実施の形態に係る異常組織検出装置における受信信号の波形データの一例を示すグラフである。
【図14】信号処理のフローチャートである。
【図15】図15(A)は、いくつかのアンテナの組み合わせでの異常組織CAがあったときの受信信号を示す図である。図15(B)は、いくつかのアンテナの組み合わせでの異常組織CAがなかったときの受信信号を示す図である。図15(C)は、いくつかのアンテナの組み合わせでの受信信号と基準信号との差分信号の一例を示す図である。
【図16】図16(A)は、XY面の検出画像の一例を示す図である。図16(B)は、XZ面の検出画像の一例を示す図である。図16(C)は、それらを組み合わせた3次元画像の一例を示す図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る異常組織検出装置における信号処理のフローチャートである。
【図18】図18(A)は、本発明の第2の実施の形態に係る異常組織検出装置におけるアンテナの組み合わせでの受信信号の平均の波形データを示すグラフである。図18(B)は、従来の異常組織検出装置におけるアンテナの組み合わせでの受信信号の平均の波形データを示すグラフである。
【図19】図19(A)は、本発明の第2の実施の形態に係る異常組織検出装置におけるアンテナの組み合わせでの検出画像の一例を示す図である。図19(B)は、従来の異常組織検出装置におけるアンテナの組み合わせでの検出画像の一例を示す図である。
【図20】出力ポートを2つのグループに分けた場合と1つのグループにまとめた場合の挿入損失及び反射損失の違いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る異常組織検出装置及び信号送受信方法について、乳癌を検出する乳癌センサを例に、図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態では、送受信用のアンテナがアンテナアレイの外周側にあるのか内周側にあるのかなど、各アンテナの周囲の環境の違いによる受信信号の違いを考慮しないものとする。

【0023】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。

【0024】
図1に示すように、異常組織検出装置1は、制御部10と、送信部11、CMOSスイッチ12と、配線部13と、アンテナアレイ14と、配線部15と、CMOSスイッチ16と、受信部17と、を備える。

【0025】
信号処理部としての制御部10は、CPU、メモリ、外部記憶装置、入出力I/O等を備えるコンピュータである。CPUが外部記憶装置にインストールされ、メモリに読み込まれたプログラムを実行することにより、制御部10の機能が実現される。

【0026】
例えば、制御部10は、プログラムの実行により、送信信号SSを出力させるタイミングを示すタイミング信号を送信部11に出力するとともに、CMOSスイッチ12の制御信号CS1を出力する。制御部10は、CMOSスイッチ16の制御信号CS2を出力するとともに、受信部17から受信信号RSの波形データを入力する。

【0027】
信号処理部としての送信部11は、制御部10から入力されたタイミング信号に従って、例えば、図2に示すようなインパルス状の電気信号である送信信号SSを出力するハードウエア回路である。図2に示すように、この電気信号のレベルは、短時間で正の値から負の値に変動するインパルス信号である。

【0028】
第1のCMOSスイッチとしてのCMOSスイッチ12は、送信信号SSを入力する。CMOSスイッチ12は、単極8投のスイッチである。CMOSスイッチ12は、入力端から送信信号SSを入力する。CMOSスイッチ12では、複数の出力端それぞれが複数の送信アンテナSA1、SA2、…、SA8と接続されている。CMOSスイッチ12は、制御信号CS1に従って、入力した送信信号SSを出力するアンテナを、複数の送信アンテナSA1、SA2、…、SA8のいずれかに切り替える。

【0029】
図3(A)、図3(B)には、CMOSスイッチ12の一部の回路構成が示されている。図3(A)、図3(B)に示すように、CMOSスイッチ12は、半導体スイッチング素子21と、半導体スイッチング素子22と、インバータ25と、インダクタLとを備える。

【0030】
半導体スイッチング素子21のソースは、送信信号SSの信号ポート(Tx/Rx Port;CMOSスイッチ16ではRx Port)に接続されている。また、半導体スイッチング素子21のドレインは、インダクタLを介してCMOSスイッチ12の出力端Tn(n=1、2、3、4、・・・)と接続されている。出力端Tnは、送信アンテナSAnと接続されている。すなわち、半導体スイッチング素子21は、送信アンテナSA1~SA8のいずれかと、送信部11と接続された送信信号ポート(Tx/Rx Port)との間に挿入されている。また、半導体スイッチング素子21のゲートは、制御信号の信号ポートに接続されている。制御信号の信号ポートからは制御信号CTn(n=1、2、3、4、・・・)が出力される。

【0031】
半導体スイッチング素子22のソースは、半導体スイッチング素子21のドレインに接続されている。また、半導体スイッチング素子22のドレインは、接地されている。すなわち、半導体スイッチング素子22は、半導体スイッチング素子21のドレイン側と出力端Tnとの間と、グラウンドとの間にそれぞれ挿入されている。また、半導体スイッチング素子22のゲートは、インバータ25を介して、制御信号の信号ポートに接続されている。したがって、半導体スイッチング素子22のゲートには、制御信号CTnの反転信号が入力される。

【0032】
図3(A)に示すように、制御信号CTnがハイレベル(1)となると、半導体スイッチング素子21はオンとなり、半導体スイッチング素子22はオフとなる。この状態であれば、送信部11の送信ポート(Tx Port)から出力されたマイクロ波の電気信号は、出力端Tnから送信アンテナSAnに出力され、送信アンテナSAnからマイクロ波が放射される。

【0033】
図3(B)に示すように、送信部11から出力される制御信号CTnがローレベル(0)となると、半導体スイッチング素子21はオフとなり、半導体スイッチング素子22はオンとなる。この状態であれば、送受信ポート(Tx/Rx Port)と、出力端Tnとは非接続となり、送信アンテナSAnではマイクロ波の送受信は行われない。仮に、送信部11から半導体スイッチング素子21を通して送信アンテナSAnの方へリーク電流が流れたとしても、そのリーク電流は、半導体スイッチング素子22を通ってグラウンドに流れるようになる。これにより、リーク電流に起因する諸問題、例えばノイズの混入などを防ぐことができる。

【0034】
CMOSスイッチ12は図3(A)、図3(B)に示されるような送信アンテナSAnに接続される回路を基本回路としている。以下では、この回路構成を基本回路30とする。

【0035】
図4には、CMOSスイッチ12の全体回路の回路構成が示されている。図4に示すように、CMOSスイッチ12は、送信アンテナSA1~SA8に接続する8個の基本回路30を有している。8個の基本回路30は2つのグループに分かれている。

【0036】
CMOSスイッチ12は、1P2Tスイッチ31をさらに備えている。1P2Tスイッチ31は、インダクタ23を介して送信部11の送信ポート(Tx Port)と接続されている。

【0037】
1P2Tスイッチ31は、送信ポートから出力された送信信号SSを入力する。1P2Tスイッチ31は、2つの送信ポートA、Bを有しており、送信するアンテナに接続された基本回路30が属するグループにインダクタ23を介して接続された送信ポートA、Bから、入力した送信信号SSを出力する。

【0038】
1P2Tスイッチ31の送信ポートの2つの出力は、インダクタを介して対応するグループを構成する4つの基本回路30にそれぞれ接続されている。例えば、送信ポートの出力Aから送信信号SSが出力された場合には、図4の左側のグループAの各基本回路30に送信信号SSが入力される。

【0039】
CMOSスイッチ12は、2つのデマルチプレクサ33をさらに備える。デマルチプレクサ33は、基本回路30のグループ毎に設けられている。2つのデマルチプレクサ33には、制御部10から出力される制御信号CS1が入力されている。制御信号CS1には、どの送信アンテナSA1~SA8を送信用として選択すべきか否かを示す情報が含まれている。各マルチプレクサ33は、この制御信号CS1に基づいて、送信用として選択されたアンテナに接続された基本回路30が、接続するグループに含まれているか否かを判定し、制御信号CTnを出力する。

【0040】
デマルチプレクサ33は、送信用として選択された送信アンテナSAnに接続された基本回路30が、接続するグループに含まれている場合には、その送信アンテナSAnに接続された基本回路30に出力する制御信号CTnをハイレベルとし、他の基本回路30に出力される制御信号CTnについてはローレベルとする。図4では、送信アンテナSA1に対応する制御信号がハイレベルとなり、他の制御信号がローレベルとなって、送信アンテナSA1に接続される出力端T1が選択される様子が示されている。

【0041】
また、デマルチプレクサ33は、送信用として選択された送信アンテナSA1~SA8に接続された基本回路30が、接続するグループに含まれていない場合には、すべての基本回路30に出力される制御信号CTnをローレベルとする。

【0042】
図4の場合、送信部11から出力された送信信号SSはインダクタ23を介してグループAの各基本回路30に入力される。ここで、送信アンテナSA1に接続された各基本回路30がハイレベルの制御信号を入力している。この結果、送信信号SSに基づくマイクロ波は、出力端T1から出力され、送信アンテナSA1から放射される。

【0043】
このように、単極8投のCMOSスイッチ12は、8つの送信アンテナSA1~SA8と接続されている。CMOSスイッチ12は、8つの基本回路30を備えている。基本回路30は、8つの送信アンテナSA1~SA8のうちのいずれか1つのアンテナを選択するために各アンテナに接続され、それぞれ4ずつの2つのグループにグループ分けされた8つの選択回路である。さらに、CMOSスイッチ12は、基本回路30のグループの一方を選択する1P2TのCMOSスイッチを備えている。

【0044】
第1の配線部としての配線部13は、CMOSスイッチの8つの出力端T1~T8のいずれかと、送信アンテナSA1~SA8のいずれかとを同じ長さの配線で結ぶ8つの伝送線路を備えている。

【0045】
アンテナアレイ14は、複数の送信アンテナSA1、SA2、…、SA8を備える。複数の送信アンテナSA1、SA2、…、SA8は、入力した送信信号SSに従ってマイクロ波のインパルス信号MWを送信する。インパルス信号MWは、被検者の体内の異常組織CAで反射し、反射信号RWとなる。

【0046】
アンテナアレイ14は、複数の受信アンテナRA1、RA2、…、RA8を備える。複数の受信アンテナRA1、RA2、…、RA8は、マイクロ波を受信する。

【0047】
第2の配線部としての配線部15は、CMOSスイッチ16の8つの入力端T1~T8のいずれかと、受信アンテナRA1~RA8のいずれかとを、同じ長さの配線で結ぶ8つの伝送線路を備えている。

【0048】
第2のCMOSスイッチとしてのCMOSスイッチ16は、単極8投のスイッチである。CMOSスイッチ16も図3(A)、図3(B)及び図4に示す構成と同様の構成を有する。CMOSスイッチ12の出力端T1~T8であったものが、CMOSスイッチ16では、入力端T1~T8となる。CMOSスイッチ16は、8つの入力端T1~T8を有し、複数の受信アンテナRA1~RA8で受信した信号を入力する。CMOSスイッチ16では、1つの出力端が受信部17と接続されている。CMOSスイッチ16は、制御信号CS2に従って受信した信号を、受信信号RSとして受信部17に送信する複数の受信アンテナRA1、RA2、…、RA8のいずれかに切り替える。CMOSスイッチ16では、制御信号CS2によって選択された入力端T1~T8から入力された受信信号が、Rx Portに伝えられる。

【0049】
受信部17は、CMOSスイッチ16から入力した受信信号RSを制御部10に出力するハードウエア回路である。

【0050】
制御部10は、入力した受信信号RSに基づいて、信号処理を行って、異常組織CAを検出する。

【0051】
図1に示すように、制御信号CS1により、送信アンテナSA2が選択された場合には、CMOSスイッチ12は、送信信号SSを送信アンテナSA2に出力するように切り変わる。制御信号CS2により、受信アンテナRA2が選択された場合には、CMOSスイッチ16は、受信アンテナRA2で受信された受信信号RSを受信部17に出力するように切り変わる。この場合、送信アンテナSA2、受信アンテナRA2の組み合わせでマイクロ波のインパルス信号MWの送受信が行われる。

【0052】
信号処理部としての制御部10、送信部11、受信部17は、制御信号CS1、CS2によりCMOSスイッチ12、16を制御して、送信アンテナSA1~SA8及び受信アンテナRA1~RA8の組み合わせを切り替えながら、送信信号SSをCMOSスイッチ12に出力し、受信アンテナRA1~RA8から出力された受信信号RSを、CMOSスイッチ16を介して入力し、入力した電気信号に対する信号処理を行う。

【0053】
図5には、図1のCMOSスイッチ12、配線部13、アンテナアレイ14、配線部15、CMOSスイッチ16の具体的な構成が模式的に示されている。図5に示すように、配線部13は、CMOSスイッチ12が実装された基板18Aを有する。配線部15は、CMOSスイッチ16が実装された基板18Bを有する。基板18Aの大きさは、34mm×44mmである。

【0054】
図6に示すように、基板18A上には、送信部11から同軸ケーブルAX20を介して送信信号SSを受信する接続ポートSMP9が設けられている。接続ポートSMP9とCMOSスイッチ12との間には、図7、図8に示すように、送信信号SSを送信するためのマイクロストリップラインMS0が設けられている。

【0055】
また、基板18A上には、CMOSスイッチ12を中心に放射状に実装された同軸ケーブルAX1~AX8の複数の接続ポートSMP1~SMP8が設けられている。CMOSスイッチ12は、線幅65nmのCMOSスイッチである。CMOSスイッチ12のチップ領域は、例えば3mm×3mmである。図7、図8に示すように、基板18A上には、マイクロストリップラインMS1~MS8が実装されている。マイクロストリップラインMS1~MS8は、CMOSスイッチ12を中心に放射状に延びている。マイクロストラップラインMS1~MS8は、CMOSスイッチ12の複数の出力端T1~T8(図4参照)のいずれかと、端子o/p Port1~o/p Port8との間を接続する。端子o/p Port1~o/p Port8が、複数の接続ポートSMP1~SMP8に対応する。マイクロストリップラインMS1~MS8は、CMOSスイッチ12を中心に放射状に延びているので、マイクロストリップラインMS1~MS8の長さが無理なく等しくなるように、かつ、長くなりすぎないように設計することができる。基板18Bも基板18Aと同様の構成を有する。

【0056】
図8に示すように、マイクロストリップラインMS1~MS8は同じ長さであり、幅も同じである。CMOSスイッチ12の各パッドの間隔は200μmであるため、マイクロストリップラインの幅も200μmより小さくなる。ライン間の最小ギャップは75μmであるため、マイクロストリップラインMS1~MS8のライン幅は125μmとなっている。CMOSスイッチ12の複数の出力端T1~T8でのインピーダンスは、同じZ2となっている。各接続ポートSMP1~SMP8のインピーダンスは、Z1である。マイクロストリップラインMS1~MS8のインピーダンスは、Z1とZ2との間のZ4となるような中間インピーダンスが挿入されている。

【0057】
より具体的には、図9(A)に示すように、複数のマイクロストリップラインMS1~MS8のそれぞれには、マイクロ波の中心波長をλとしたときにλ/4の長さを有し、各接続ポートSMP1~SMP8のインピーダンスをZ1とし、CMOSスイッチ12、16の出力端T1~T8のインピーダンスをZ2としたときに、√(Z1×Z2)=Z4の中間インピーダンスを有する伝送線路が挿入されている。これにより、各マイクロストリップラインMS1~MS8の反射係数を低減することができる。例えば、図9(A)に示すように、Z1=50Ω、Z2=64Ωの場合には、中間インピーダンスZ4は、56.5Ωとなる。

【0058】
また、図9(B)に示すように、マイクロストリップラインMS0にも、マイクロ波の中心波長をλとしたときにλ/4の長さを有する中間インピーダンスが挿入されている。接続ポートSMP9のインピーダンスをZ1とし、CMOSスイッチ12の入力端のインピーダンスをZ3としたときに、√(Z1×Z3)=Z5の中間インピーダンスを有する伝送線路が挿入されている。例えば、図9(B)に示すように、Z1=50Ω、Z3=44Ωの場合には、中間インピーダンスZ5は、47Ωとなる。

【0059】
なお、マイクロストリップラインMS1~MS8の長さは同一であることが望ましいが、それらの長さを完全に同一にするのが困難な場合もある。この場合には、マイクロストリップラインMS1~MS8の長さの差は、生体組織中の電波の伝播速度、異常組織の位置検出精度等を考慮して、許容される範囲内とするのが望ましい。好ましくは、長さの差は、全体の長さに対して10%以下とするのがよい。また、マイクロストリップラインMS1~MS8の幅についても、信号伝送路のインピーダンスのばらつきを考慮して、許容される範囲内とするのが望ましい。好ましくは、幅の差は、全体の幅に対して10%以下とするのがよい。

【0060】
また、図5に示すように、基板18Aの複数の接続ポートSMP1~SMP8と、アンテナアレイ14における複数の送信アンテナSA1~SA8との間は、それぞれ同軸ケーブルAX1~AX8で接続されている。同軸ケーブルAX1~AX8の長さはそれぞれ同じである。これは、アンテナアレイ14の各受信アンテナRA1~RA8と基板18Bとを結ぶ同軸ケーブルAX1~AX8についても同様である。なお、同軸ケーブルAX1~AX8の長さは同一であることが望ましいが、それらの長さを完全に同一にするのが困難な場合もある。この場合には、同軸ケーブルAX1~AX8の長さの差は、生体組織中の電波の伝播速度、異常組織の位置検出精度等を考慮して、許容される範囲内とするのが望ましい。好ましくは、長さの差は、全体の長さに対して10%以下とするのがよい。

【0061】
図10(A)にはアンテナアレイ14の表面が示され、図10(B)にはアンテナアレイ14の裏面が示されている。アンテナアレイ14では、図10(A)、図10(B)に示すように、複数のアンテナが4×4のマトリクス状に配列されている。アンテナアレイ14の大きさは、例えば、55.4mm×47mmであり、厚みは、0.635mmである。各アンテナは、11mm×13.1mmである。また、アンテナ間のギャップは、1mmに設定されている。アンテナアレイ14では、送信アンテナSA1~SA4がX軸方向に並んで配置され、受信アンテナRA1~RA4がX軸方向に並んで配置され、送信アンテナSA5~SA8がX軸方向に並んで配置され、受信アンテナRA5~RA8がX軸方向に並んで配置されている。受信アンテナRA1~RA4、受信アンテナRA1~RA4、送信アンテナSA5~SA8、受信アンテナRA5~RA8は、Y軸方向にこの順で並んでいる。

【0062】
図11(A)に示すように、送信アンテナSA1には、裏側導体線50と、表面導体51とが設けられている。裏側導体線50と、表面導体51とは、絶縁層を介して向かいあっている。フォーク型の裏側導体線50は、同軸ケーブルAX1の内部導体40と接続されている。表面導体51は、同軸ケーブルAX1の外部導体41と接続されている。送信アンテナSA2~SA8、受信アンテナRA1~RA8についても、同様な構成を有している。複数の送信アンテナSA1~SA4、SA5~SA8及び複数の受信アンテナRA1~RA4、RA5~RA8は、裏側導体線50で電流の流れる方向が同じとなるように1次元配列されている。複数の送信アンテナの配列(SA1~SA4、SA5~SA8)と、複数の受信アンテナの配列(RA1~RA4、RA5~RA8)とは、裏側導体線50で電流が流れる方向(Y軸方向)に交互に配列されている。

【0063】
図11(A)に示すように、同軸ケーブルAX1の内部導体40から送信されるインパルス信号により、裏側導体線50に+Y方向、-Y方向の電流が流れる。一方、誘電体を挟んで表面導体51には、容量結合により、裏側導体線50に流れる電流に対応した電流Iが流れる。表面導体51には矩形のスロットが切ってあり、電流はスロットの周辺を流れる。言い換えると、裏側導体線50の電流の向きに対応して表面導体51のスロットの周辺電極に容量結合で時計回り、反時計回りに電流が生じる。この電流により、スロットの中を貫通するようにスロットの長さに比例する波長の磁界が発生する。磁界Bは、スロットを垂直に通過し、振幅はスロットの長手方向に平行に振動する。電界Eは磁界Bに直交して発生するため、電界Eが矩形スロットの短手方向に平行に振動する。したがって、電磁波はアンテナ面に垂直に、すなわちスロットのある表面導体51の法線方向に放射される。そのとき、電磁波は球状に(等方的に)放射されるのではなく、X方向の角度依存性(90度が最大強度を有する指向性)を有し、Y方向に等方的なドーナツ状の立体を持つ電磁波が広がっていく。すなわち、送信アンテナSA1は、矩形スロットのX方向を磁気ダイポールとするアンテナである。アンテナアレイ14では、図11(B)に示すように、スロットのある表面導体51の法線方向に指向性を持ち、図11(C)に示すように、Y方向に等方性の電磁界が放射される。従って、送信アンテナSA1~SA4、SA5~SA8と、受信アンテナRA1~RA4、RA5~RA8とを等方性のあるY軸方向に配列し、角度依存性を抑制している。

【0064】
アンテナアレイ14では、送信アンテナSAm(m=1~8)と受信アンテナRAn(n=1~8)との相対距離が同じとなる送信アンテナと受信アンテナとの組み合わせ(SAm、RAn)でのマイクロ波のインパルス信号の受信環境が同じになるように形成されている。

【0065】
図12に示すように、送信アンテナSA1からマイクロ波のインパルス信号を放射する。放射されたマイクロ波の一部は、生体内に伝播する。一般に、癌組織等の異常組織CAは、通常の生体組織に比して、5~10倍程度の高い誘電率を有することが知られている。したがって、異常組織CAが存在する場合には、誘電率の異なる領域の界面、即ち、異常組織CAの表面で、マイクロ波が反射され、受信アンテナRA2~RA4で受信される。

【0066】
ここで、マイクロ波のインパルス信号を放射してから受信アンテナRA2が反射波を受信するまでの時間をT12[s]とすると、T12・c(c:生体中の光の速度)が、マイクロ波のインパルス信号の行程距離となる。

【0067】
従って、異常組織CAは、送信アンテナSA1と受信アンテナRA2を焦点とし、アンテナSA1とRA2からの距離の和がT12・cとなる楕円E12上に位置することになる。

【0068】
アンテナRA3RA4が受信したマイクロ波についても同様の処理を行い、複数の楕円E12~E14(E14については不図示)の交点を求めることにより、異常組織CAの位置を求めることができる。

【0069】
さらに、インパルス信号を送信するアンテナを送信アンテナSA2に切り換えて、送信アンテナSA2からマイクロ波を放射し、これを受信アンテナRA2~RA4で受信して、同様の処理を行う。以後、送信アンテナを順次切り換えながら、マイクロ波を放射し、受信アンテナで反射波を受信し、同様の処理を行うことにより、異常組織CAの位置をより正確に特定することが可能となる。

【0070】
なお、上述の例では、理解を容易にするため、2次元で説明したが、実際は、3次元で上述の処理を行うことになる。

【0071】
図13(A)には、従来の異常組織検出装置における異なる送信アンテナから送信されるインパルス信号の時間変化を示すグラフである。図13(A)に示すように、従来は、異なる送信アンテナへ信号を送信する伝送線路の長さがまちまちであるため、送信される信号には大きな時間差が生じている。

【0072】
これに対して、図13(B)には、本実施の形態に係る異常組織検出装置1の送信アンテナSA1~SA8から送信されるインパルス信号の時間変化を示すグラフである。図13(B)に示すように、配線部13で送信アンテナSA1~SA8に信号を送信する伝送線路の長さが同じであるため、各信号の時間差がほとんどなくなっている。

【0073】
上述のように、異常組織検出装置1では、送信アンテナSA1~SA8と受信アンテナRA1~RA8との間で送受信されるインパルス信号の伝搬時間に基づいて、異常組織CAを検出する。そのため、本実施の形態のように、回路上のインパルス信号の遅れを解消することにより、異常組織CAの位置を精度良く検出することができる。

【0074】
次に、本実施の形態1に係る異常組織検出装置1の動作について説明する。図14には、異常組織検出装置1の動作のフローチャートが示されている。

【0075】
図14に示すように、制御部10は、すべてのアンテナの組み合わせでマイクロ波を送受信し、受信信号を取得する(ステップS1)。続いて、制御部10は、受信信号から基準信号を差分して差分信号を求める(ステップS2)。基準信号は、異常組織CAがないときに、各アンテナで受信される受信信号と同等の信号を用いることができる。続いて、制御部10は、差分信号に基づいて、異常組織CAを検出する(ステップS3)。

【0076】
図15(A)には、送信アンテナSA4、受信アンテナRA4の組み合わせ、送信アンテナSA8、受信アンテナRA4の組み合わせ、送信アンテナSA5、受信アンテナRA5の組み合わせにおいて、異常組織CAがあったときの受信信号がそれぞれ示されている。図15(B)には、これらの組み合わせで異常組織CAがなかったときの受信信号がそれぞれ示されている。基準信号は、図15(B)に示される信号となる。図15(C)には、これらの組み合わせでの差分信号がそれぞれ示されている。異常組織CAの存在により、破線で囲まれた時間帯において、異常組織CAがあったときとなかったときとの間で、信号に変化があらわれており、この変化を示す差分信号に基づいて、異常組織CAが検出される。

【0077】
図16(A)及び図16(B)には、このようにして求められた体内組織のXY画像、ZX画像が示されている。図16(C)には、これらのXY画像、ZX画像によって構成された3次元画像が示されている。図16(A)から図16(C)に示すように、深さ20mmに10mm×10mmの異常組織CAの像(明るい部分)が検出されている。

【0078】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。

【0079】
図17には、制御部10の処理の流れが示されている。図17に示すように、まず、制御部10は、相対距離が同じ送受信用のアンテナの全ての組み合わせ(SAm、RAn)でマイクロ波のインパルス信号を送受信し、受信信号をそれぞれ取得する(ステップS11)。

【0080】
続いて、制御部10は、取得した複数の受信信号の平均信号パターンを基準信号として算出する(ステップS12)。

【0081】
相対距離が同じ送受信用のアンテナの組み合わせとして、(SA1、RA1)、(SA5、RA1)、(SA5、RA5)などと相対距離が同じアンテナの組み合わせでは、異常組織CAがなければ、受信信号のパターンは同じになる。

【0082】
また、生体には、受信信号を変化させる異常組織CAが含まれている場合がある。異常組織CAがあると、各受信アンテナRAnで受信される受信信号の信号パターンは変化する。各受信アンテナRAnで受信される受信信号が、異常組織CAによってどのように変化するかは、受信アンテナRAnと異常組織CAとの位置関係によって決まる。例えば、送信アンテナSA1を送信用とし、受信アンテナRA1を受信用とした場合の受信信号における異常組織CAの成分の出現位置と、送信アンテナSA6を送信用とし受信アンテナRA6を受信用とした場合の受信信号における異常組織CAの成分の出現位置とは、それぞれ異なっている。

【0083】
各受信アンテナRAnで受信される受信信号における異常組織CAの成分の出現位置はそれぞれ異なるため、各受信アンテナRAnで受信された受信信号の平均をとれば、受信信号から、異常組織CAの成分を抑圧することができる。本実施の形態では、異常組織CAの成分が抑圧され、かつ、生体を用いて実際に測定された受信信号を基準信号として、異常組織CAの成分を検出する。

【0084】
図18(A)に示すように、本実施の形態に係る異常組織検出装置1では、送信アンテナSAn、受信アンテナRAnにつながる伝送線路の長さが同じとなっているので、すべての組み合わせでの受信信号の波形が類似しており、平均信号との一致度が高くなっている。これに対し、図18(B)に示すように、従来の異常組織検出装置では、各アンテナにつながる伝送線路の長さがまちまちであるため、受信信号の波形がばらついているので、各受信信号と平均化された信号との乖離が大きく、基準信号を精度良く求めるのが困難になる。

【0085】
図17に戻り、続いて、制御部10は、基準信号とアンテナアレイ14の各受信アンテナRAnで受信されたマイクロ波のインパルス信号との違いに基づいて、生体内の異常組織CAを検出する(ステップS13)。ステップS13終了後、制御部10は、処理を終了する。

【0086】
図19(A)には、本実施の形態に係る異常組織検出装置1で検出された生体の3次元画像が示され、図19(B)には、従来の異常組織検出装置で検出された生体の3次元画像が示されている。図19(A)に示すように、本実施の形態に係る異常組織検出装置では、異常組織CAが検出されたのに対し、図19(B)に示すように、従来の異常組織検出装置では、異常組織CAが検出されなかった。

【0087】
このように、本実施の形態によれば、相対距離が同じ(位置関係が同じ)送信アンテナ、受信アンテナの組み合わせでそれぞれ受信される受信信号の平均パターンを基準とする。このようにすれば、生体内に異常組織CAが有ると無いとに関わらず、その生体で観測される異常組織CAがなく、かつ、生体の特性に沿った受信信号の信号パターンを実質的に得ることができる。この結果、異常組織CAを高精度に検出することができる。

【0088】
以上詳細に説明したように、上記各実施の形態によれば、CMOSスイッチ12の複数の出力端と複数の送信アンテナSA1~SA8との間の配線と、複数の受信アンテナRA1~RA8とCMOSスイッチ16の複数の入力端との間の配線とを分けることで、配線を単純化することができるので、その間の信号の遅れやノイズ成分の混入状態を揃え易くすることができる。このため、マイクロ波のインパルス信号の受信効率を向上し、検出精度を向上することができる。

【0089】
具体的には、CMOSスイッチ12の複数の出力端と複数の送信アンテナSA1~SA8との間の配線の長さを同一にし、複数の受信アンテナRA1~RA8とCMOSスイッチ16の複数の入力端T1~T8との間の配線の長さを同一とするので、その間の信号の遅れやノイズ成分の混入状態を均一にすることができる。このため、マイクロ波のインパルス信号の受信効率を向上し、検出精度を向上することができる。

【0090】
また、上記各実施の形態によれば、CMOSスイッチ12、16が実装された基板では、CMOSスイッチ12、16を中心に放射状に接続ポートSMP1~SMP8が配置されている。このようにすれば、その間のマイクロストリップラインMS1~MS8の長さを同じとすることができるので、その間の信号の遅れやノイズ成分の混入状態を均一にすることができる。このため、マイクロ波のインパルス信号の受信効率を向上し、検出精度を向上することができる。

【0091】
また、同軸ケーブルAX1~AX8、AX9~AX16の長さも同じとするので、その間の信号の遅れやノイズ成分の混入状態を均一にすることができる。このため、マイクロ波のインパルス信号の受信効率を向上し、検出精度を向上することができる。

【0092】
また、上記各実施の形態によれば、CMOSスイッチ12、16は、単極8投のCMOSスイッチである。マイクロストリップラインMS1~MS8が長すぎることのないように、送信ポート等を放射状に配置するのに好都合であるためである。

【0093】
また、上記各実施の形態によれば、マイクロストリップラインMS1~MS8には中間インピーダンスを有する伝送線路が挿入されている。このようにすれば、インピーダンス特性を向上することができる。

【0094】
また、上記各実施の形態によれば、電波の飛ぶ方向に送信アンテナSA1~SA4、SA5~SA8と受信アンテナRA1~RA4、RA5~RA8とが配置されている。このようにすれば、電波の受信効率を向上することができる。

【0095】
また、上記各実施の形態によれば、位置関係が同じ送信アンテナSA1~SA8及び受信アンテナRA1~RA8の組み合わせで送受信された受信信号の平均を、基準信号として異常組織CAを検出する。上記各実施の形態では、送信アンテナSA1~SA8、受信アンテナRA1~RA8とCMOSスイッチ12、16の間の配線の長さが同じであり、受信信号が良く一致しているので、受信信号のばらつきを抑え、基準信号を精度良く求めることができる。

【0096】
なお、送信アンテナSA1~SA8、受信アンテナRA1~RA8とCMOSスイッチ12、16の間の配線の長さを同じとしたが、多少長さが違っていても、位置関係が同じ送信アンテナSA1~SA8及び受信アンテナRA1~RA8の組み合わせで送受信された受信信号に対してキャリブレーションを行って配線の長さの違いによる受信信号の差を調整してもよい。

【0097】
上記各実施の形態では、CMOSスイッチ12として、単極8投(1P8T)スイッチを採用しており、さらに図4に示すように、CMOSスイッチ12では、8つの基本回路30をそれぞれ4つずつの2つのグループにグループ分けし、そのグループの一方を選択する1P2Tスイッチ31で接続している。CMOSスイッチ12をこのような構成とすれば、1P2Tスイッチ31を用いず、グループ分けしていない場合に比べ、挿入損失を改善し、入力と出力とがマッチングする周波数帯域を改善することができる。例えば、図4に示すように、1P2Tスイッチ31において、M’1トランジスタがオンし、M’2トランジスタがオフすると、送信ポートAのグループ1のもれ電流が、送信ポートBに接続するグループ2のもれ電流よりも大きくなるためである。図20には、1P2Tスイッチ31を用いて送信ポートを2つのグループに分けた場合と、グループ分けしない場合とについての挿入損失、反射損失の違いが示されている。図20では、2つのグループに分けた場合の透過係数S21が、S21_2_Groupとして示され、1グループとした場合の透過係数S21が、S21_1_Groupとして示されている。また、2つのグループに分けた場合の反射係数S11、S22が、S11_2_Group、S22_2_Groupとして示され、1つのグループとした場合の反射係数S11、S22が、S11_1_Group、S22_1_Groupとして示されている。図20に示すように、挿入損失は、Tx portから出力ポートまで、15GHzで0.7dB減少した。また、反射係数S11、S22が-10dB以下となる周波数帯域を、それぞれ9GHz、9.5GHz広げることができた。すなわち、入出力がマッチングする周波数帯域を約9GHzだけ増加することができた。

【0098】
上記各実施の形態では、アンテナの数を送信アンテナ8個、受信アンテナ8個としたが、本発明はこれには限られず、アンテナの数は任意でよい。これに合わせて、第1、第2のCMOSスイッチも、単極8投でなくてもよく、他の単極多投のスイッチでよい。その数は、送信アンテナ、受信アンテナの数に合わせることになる。最も、CMOSスイッチ12の出力端、CMOSスイッチ16の出力端は、配線の長さが等しくなるように、かつ長すぎないように、円状に配置できる数とするのが望ましい。

【0099】
その他、制御部10のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。

【0100】
制御部10の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行するコンピュータ2を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで制御部10を構成してもよい。

【0101】
制御部10の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。

【0102】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。

【0103】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、乳癌センサなどに用いられるアンテナアレイ装置に好適である。また、本発明は、乳癌センサに限らず、他の腫瘍等、生体内の誘電率の異なる領域の検出・判別に応用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 異常組織検出装置
10 制御部
11 送信部
12 CMOSスイッチ
13 配線部
14 アンテナアレイ
15 配線部
16 CMOSスイッチ
17 受信部
18A、18B 基板
21、22 半導体スイッチング素子
23 インダクタ
25 インバータ
30 基本回路
31 1P2Tスイッチ
33 デマルチプレクサ
40 内部導体
41 外部導体
50 裏側導体線
51 表面導体
AX1~8、AX20 同軸ケーブル
CA 異常組織
CS1、CS2 制御信号
CTn 制御信号
L インダクタ
MS0~MS8 マイクロストリップライン
MW インパルス信号
RA1、RA2、…、RA8 受信アンテナ
RS 受信信号
RW 反射信号
SA1、SA2、…、SA8 送信アンテナ
SMP0~SMP9 接続ポート
SS 送信信号
Tn 出力端、入力端
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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