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明細書 :薄膜型水素ガスセンサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5936087号 (P5936087)
公開番号 特開2016-075597 (P2016-075597A)
登録日 平成28年5月20日(2016.5.20)
発行日 平成28年6月15日(2016.6.15)
公開日 平成28年5月12日(2016.5.12)
発明の名称または考案の名称 薄膜型水素ガスセンサ
国際特許分類 G01N  27/12        (2006.01)
FI G01N 27/12 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2014-206664 (P2014-206664)
出願日 平成26年10月7日(2014.10.7)
審査請求日 平成26年12月18日(2014.12.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】塚田 啓二
【氏名】紀和 利彦
【氏名】堺 健司
審査官 【審査官】佐々木 龍
参考文献・文献 特開2006-133191(JP,A)
特開平10-267874(JP,A)
特開2002-075783(JP,A)
特開2010-008122(JP,A)
奥井 貴博 他,薄膜抵抗型水素センサの開発,電気学会全国大会講演論文集,2012年 3月 5日,[3],p.207
Keiji TSUKADA et al.,Changes in Work Function and Electrical Resistanse of Pt Thin Films in the Presence of Hydrogen Gas,Japanese Journal of Applied Physics,2011年12月16日,Vol. 51,p. 015701
牛田 祐貴 他,白金薄膜抵抗を用いたブリッジ回路型水素センサの開発,第30回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム論文集,2013年11月 5日,6PM3-PSS-74
調査した分野 G01N 27/00-27/24
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
絶縁体基板の上面に白金薄膜で形成した抵抗体を設けて、この抵抗体の抵抗の変動を検出することで水素ガスの濃度変化を検出する薄膜型水素ガスセンサにおいて、
水素ガスとの接触によって抵抗が変化する第1の抵抗体と、
水素ガスとの接触によって第1の抵抗体よりも小さく抵抗が変化する第2の抵抗体と
を備え、
第1の抵抗体と第2の抵抗体は、それぞれ絶縁体基板の上面に設けた金属薄膜から成る金属接着層上に形成することで、第1の抵抗体と絶縁体基板との間に第1の金属接着層を設けるとともに、第2の抵抗体と絶縁体基板との間に第2の金属接着層を設け、
第1の抵抗体と第1の金属接着層とによる第1の複合抵抗体の抵抗の温度係数と、第2の抵抗体と第2の金属接着層とによる第2の複合抵抗体の抵抗の温度係数を、第1の金属接着層の膜厚と第2の金属接着層の膜厚とを調整することで一致させ、
第1の抵抗体と第2の抵抗体と直列に接続して、互いの抵抗値の差によって出力される電圧に基づいて水素ガスの濃度変化を検出する薄膜型水素ガスセンサ。
【請求項2】
第2の抵抗体の膜厚は40nm以下とし、第1の抵抗体の膜厚は第2の抵抗体の膜厚よりも
薄くしている請求項1に記載の薄膜型水素ガスセンサ。
【請求項3】
第1の複合抵抗体と第2の複合抵抗体とでブリッジ回路を構成して電圧を検出している請求項に記載の薄膜型水素ガスセンサ。
【請求項4】
ブリッジ回路は、2組の直列に接続した第1の複合抵抗体と第2の複合抵抗体とを並列接続することで構成している請求項に記載の薄膜型水素ガスセンサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、白金薄膜を利用して水素ガス濃度を検知する薄膜型水素ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスを検知する水素センサには、触媒金属の仕事関数変化や、金属酸化物半導体での電気伝導度変化、触媒反応熱による温度変化の応答原理を用いたものなど、多くのセンサ原理と構造が報告されている。例えば半導体特性をもつ金属酸化体(SnO2)は、水素ガスに触れると金属酸化体の酸素が還元されるため、抵抗値が変化する。この抵抗値変化により水素濃度を検出する半導体式の水素センサがある。また、同様の原理を用いたもので、ヒーターの役割をする白金線に金属酸化物半導体を焼結して、ブリッジ回路で素子の抵抗値変化をとらえる熱線型半導体式の水素センサもある。
【0003】
量産性が良く室温近くで動作する水素センサとして、電界効果型トランジスタを使った水素センサが知られている。このような水素センサでは、電界効果型トランジスタの絶縁膜の上にゲート金属として触媒金属のPd(パラジウム)を用いたものや、本発明者らが報告した白金を用いたものが報告されている(非特許文献1)。このような水素センサでは、抵抗変化や起電力変化を測定するものでなく、測定対象の水素ガスが触媒金属と解離吸着、脱着反応を起こし、その結果として触媒金属の仕事関数が変化する反応を、電界効果型トランジスタによって計測するものである。この場合の電界効果型トランジスタは、ゲートの入力インピーダンスが非常に高く、出力であるドレイン・ソース間での出力インピーダンスが低い、つまりインピーダンス変換素子である。この機能により、水素ガスの濃度によって変化した触媒金属の微弱な電位変化を計測することができる。さらに自己診断機能が可能な水素センサとして、本発明者らは、水素ガスに感応するPt-FETと、水素ガスに感応しないTi-FETの2つのFETの差動を取る水素ガスセンサを報告した(特許文献1)。
【0004】
また、水素ガスに対する触媒金属の発熱反応による温度変化を検出する水素センサとして、熱電対上に白金を形成したものが報告されている(非特許文献2)。また、この場合の発熱による抵抗変化をブリッジ回路で検出する方法も報告されている(特許文献2)。
【0005】
発熱による抵抗変化ではなく、金属格子中に水素が安定化される金属水素化物の形成による抵抗変化をみる水素センサとして、水素を非常に良く吸蔵することができるパラジウムを使った水素センサもある(非特許文献3)。この場合の水素センサでは、水素化物の形成により、抵抗は水素ガスの濃度とともに高くなる特性がある。
【0006】
ところが、触媒作用がもっとも高い白金では安定性が高いため、このような構造変化による抵抗変化の現象がおこらなかった。しかし、発明者らは、数10nm程度の非常に薄い白金薄膜において、水素による抵抗変化があることを知見した。しかもこの場合の抵抗変化は、構造変化が起こることで抵抗が高くなる特性ではなく、水素の解離反応が起こることでキャリアが増加して抵抗が減少する特性であることを報告した(非特許文献4)。
【0007】
また、このような抵抗変化式の水素センサにおいて、ブリッジ回路により電圧出力させる方法を発表した(非特許文献5)。この場合のブリッジ回路構成は、白金薄膜の同一形状とした4つの抵抗体を、ブリッジの4辺にそれぞれ形成するとともに、1つの抵抗体を残し他の3つの抵抗体はガラスで被覆することで水素ガスに触れないようにしている。これにより、水素ガスに触れる1つの抵抗体のみで水素ガスに応答して、水素ガスの濃度を検知可能となっている。なお、4つの抵抗体はいずれも同じ形状・構造とすることで、同じ抵抗値とするとともに温度特性も同等であり、温度に起因して抵抗値が変化しても全ての抵抗体で同様に変化するので、温度により変化しない電圧出力が得られた。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2010-66234号公報
【特許文献2】特開2007-64865号公報
【0009】

【非特許文献1】K. Tsukada, et al., Sensors and Actuators, B114, pp.158-163 (2006)
【非特許文献2】Woosuck Shin et al, Japanese Journal of Applied Physics 40, pp L1232-1234 (2001)
【非特許文献3】Ensongyi et al, International Journal of Hydrogen Energy 35,pp.6984-6991(2010)
【非特許文献4】K. Tsukada, et al., Japanese Journal of Applied Physics 51,pp. 015701-1-8 (2012)
【非特許文献5】奥井他,薄膜抵抗型水素センサの開発,平成24年電気学会全国大会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、上述したように白金薄膜で4つの同一形状の抵抗体を形成するとともに、これらの抵抗体でブリッジ回路を構成した水素ガスセンサを製品化すべく開発を行っていたが、実際にこのような水素ガスセンサが設置されることが想定されている水素ガスステーションでは、水素ガスの漏洩が生じた場合に水素ガスが比較的低温の気体であることから、水素ガスの拡散にともなって急激な温度変化が生じる可能性があった。
【0011】
このような急激な気温の変化が生じた場合に、水素ガスセンサの4つの抵抗体のうち、ガラスで被覆された3つの抵抗体と、ガラスで被覆されていない1つの抵抗体との間で、ガラスの熱伝導率が低いことに起因した温度差が生じるおそれが想定された。
【0012】
抵抗体は必ず温度係数を持っていて温度に対して抵抗値が変化する。このため、ブリッジ回路を構成した抵抗体間で温度差が生じていると、温度差に起因した電圧出力が発生してしまい、この電圧出力を水素ガスに対する応答と間違え、正しい水素ガス濃度を検出できないおそれがあった。
【0013】
そこで、本発明は、この課題を解決し、簡単なセンサ構成でさらに信頼性の高い水素センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の薄膜型水素ガスセンサでは、絶縁体基板の上面に白金薄膜で形成した抵抗体を設けて、この抵抗体の抵抗の変動を検出することで水素ガスの濃度変化を検出する薄膜型水素ガスセンサにおいて、水素ガスとの接触によって抵抗が変化する第1の抵抗体と、水素ガスとの接触によって第1の抵抗体よりも小さく抵抗が変化する第2の抵抗体とを備え、第1の抵抗体と第2の抵抗体は、それぞれ絶縁体基板の上面に設けた金属薄膜から成る金属接着層上に形成することで、第1の抵抗体と絶縁体基板との間に第1の金属接着層を設けるとともに、第2の抵抗体と絶縁体基板との間に第2の金属接着層を設け、第1の抵抗体と第1の金属接着層とによる第1の複合抵抗体の抵抗の温度係数と、第2の抵抗体と第2の金属接着層とによる第2の複合抵抗体の抵抗の温度係数を、第1の金属接着層の膜厚と第2の金属接着層の膜厚とを調整することで一致させ、第1の抵抗体と第2の抵抗体とを直列に接続して、互いの抵抗値の差によって出力される電圧に基づいて水素ガスの濃度変化を検出することとした。
【0015】
また、本発明の薄膜型水素ガスセンサでは、以下の点にも特徴を有するものである。
(1)第2の抵抗体の膜厚は40nm以下とし、第1の抵抗体の膜厚は第2の抵抗体の膜厚よりも薄くしていること。
)第1の複合抵抗体と第2の複合抵抗体とでブリッジ回路を構成して電圧を検出していること。
)ブリッジ回路は、2組の直列に接続した第1の複合抵抗体と第2の複合抵抗体とを並列接続することで構成していること。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水素ガスに対して感度が異なる抵抗体を直列接続しているので、水素ガスの接触に対して電圧変化が必ず出力されるとともに、抵抗体を被覆するガラスを不要とすることができ、抵抗体間で温度差が生じることがなく、水素ガスの濃度を正確に検出可能な薄膜型水素ガスセンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の薄膜型水素ガスセンサの一実施形態の構成図である。
【図2】薄膜型水素センサを構成する複合抵抗体の説明図である。
【図3】金属接着層である膜厚3nmのチタン(Ti)膜上に白金薄膜を形成して成る複合抵抗体の抵抗変化率の白金(Pt)膜厚依存性を示すグラフである。
【図4】第1の複合抵抗体(Pt(5nm)/Ti(3nm))と第2の複合抵抗体(Pt(30nm)/Ti(3nm))を直列接続して成る薄膜型水素センサの出力電圧の温度変化を示すグラフである。
【図5】第1の複合抵抗体(Pt(5nm)/Ti(3nm))と第2の複合抵抗体(Pt(10nm)/Ti(20nm))を直列接続して成る薄膜型水素センサの出力電圧の温度変化を示すグラフである。
【図6】1辺に高感度の複合抵抗体を配置したブリッジ回路構成の薄膜型水素センサの構成模式図である。
【図7】1辺に高感度の複合抵抗体を配置したブリッジ回路構成の薄膜型水素センサの水素応答特性、パルス電圧加熱の有無による比較のグラフである。
【図8】2辺に高感度の複合抵抗体を配置したブリッジ回路構成の薄膜型水素センサの構成模式図である。
【図9】2辺に高感度の複合抵抗体を配置したブリッジ回路構成の薄膜型水素センサの水素応答特性、パルス電圧加熱の有無による比較のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の薄膜型水素ガスセンサでは、白金薄膜が水素ガスに対して抵抗変化を示す特性を利用するものであり、特に、水素ガスとの接触によって抵抗が変化する第1の抵抗体と、水素ガスとの接触によって第1の抵抗体よりも小さく抵抗が変化する第2の抵抗体とを用いることで、抵抗体をガラス等によって水素ガスから遮蔽することなく抵抗変化を検出するものである。

【0019】
したがって、第1の抵抗体と第2の抵抗体との間において、温度差が生じるおそれをほとんど解消でき、温度の影響を極めて受けにくい薄膜型水素ガスセンサを提供することができる。

【0020】
以下、本発明の実施形態を、添付する図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の薄膜型水素ガスセンサでは、抵抗変化を電圧出力に変換している。すなわち、本発明の薄膜型水素ガスセンサでは、図1のように、水素ガスに対して感度が異なる第1の抵抗体1-1と第2の抵抗体1-2を直列に接続し、直列接続した第1の抵抗体1-1と第2の抵抗体1-2を電圧源2より電圧駆動して、第1の抵抗体1-1と第2の抵抗体1-2の接続部からの電圧出力を検出部3に設けた電圧計で読み取ることで、電圧出力によって抵抗変化を検出することとしている。この場合の抵抗変化は、第1の抵抗体1-1と第2の抵抗体1-2に接触する水素ガスの濃度に対応したものとなっており、水素ガスセンサとして機能するものとなっている。
【実施例1】
【0022】
水素ガスに対して抵抗変化する第1の抵抗体1-1及び第2の抵抗体1-2は、図2に模式的に示すように、上面に金属接着層6としてのチタン膜が形成されたガラス基板等の絶縁体基板5の上面に形成した白金薄膜4で構成することが望ましい。
【実施例1】
【0023】
絶縁体基板5は、絶縁性を有していればよく、ガラス基板に限らず適宜の絶縁性の基板を用いてもよい。
【実施例1】
【0024】
金属接着層6としてのチタン膜は、絶縁体基板5であるガラス基板に対する白金薄膜4の接着性が低いことを改善するために用いており、金属接着層6には、チタン膜の代わりにクロム等の金属薄膜や、チタンの窒化物である窒化チタン薄膜等を用いることができる。
【実施例1】
【0025】
金属接着層6及び白金薄膜4は、絶縁体基板5の上面にスパッタリングで順次形成しており、適宜のレジスト膜を用いたり、あるいは成膜後にエッチング作業を行ったりすることで、所望の形状にパターンニングしている。なお、金属接着層6が形成される絶縁体基板5の表面は、平坦面となっているよりも多少の凹凸を有していることが望ましく、絶縁体基板5の上面に多孔質ガラス層等を設けてもよい。このように絶縁体基板5の表面に凹凸を設けておくことで、絶縁体基板5の上面に形成した白金薄膜4の表面積を大きくすることができるので、白金薄膜4の水素に対する応答性を向上させることができる。
【実施例1】
【0026】
白金薄膜4は、図3に示すように、膜厚によって水素ガスに接触した際の抵抗変化率(ΔR/R)が変化する。ここで、白金薄膜4は、膜厚を3nmとしたチタン膜から成る金属接着層6の上面に形成しており、水素濃度1%とした水素ガスを白金薄膜4に接触させた際の抵抗変化率を示している。
【実施例1】
【0027】
すなわち、図3では、白金薄膜4の膜厚を調整することで、白金薄膜4は水素ガスに対する感度を調整可能であることを示しており、白金薄膜4の膜厚が薄くなるにつれて抵抗変化率が大きくなっているのが分かる。したがって、水素ガスとの接触によって抵抗が第1の抵抗体1-1よりも小さく変化する第2の抵抗体1-2では、白金薄膜4の膜厚を第1の抵抗体1-1の白金薄膜4の膜厚よりも厚くしている。また、図3から明らかなように、水素ガスに対して応答するために、第2の抵抗体の膜厚は40nm以下であることが望ましく、第1の抵抗体の膜厚は第2の抵抗体の膜厚よりもさらに薄くしている。
【実施例1】
【0028】
第1の抵抗体1-1と絶縁体基板5との間の金属接着層6は、便宜上、第1の金属接着層と呼び、第2の抵抗体1-2と絶縁体基板5との間の金属接着層6は、便宜上、第2の金属接着層と呼ぶ。
【実施例1】
【0029】
第1の金属接着層及び第2の金属接着層はそれぞれチタン膜等の金属膜で構成するため、それぞれ導電性を有している。したがって、第1の抵抗体1-1と第1の金属接着層はお互いで1つの抵抗体となっており、便宜上、第1の複合抵抗体と呼ぶ。同様に、第2抵抗体1-2と第2の金属接着層もお互いで1つの抵抗体となっており、便宜上、第2の複合抵抗体と呼ぶ。
【実施例1】
【0030】
一般的に、抵抗体は温度係数を持っており温度により抵抗値が変化する。すなわち、温度係数は
【数1】
JP0005936087B2_000002t.gif
で表せ、ここで温度T1および温度T2の時の抵抗値をそれぞれRT1とRT2とする。例えば、同じ温度係数の抵抗体どうしを図1のように直列接続した場合には、電圧出力は温度変化に対して変化しない安定な出力を得ることができる。
【実施例1】
【0031】
しかしながら、上述したように第1の抵抗体1-1と第2の抵抗体1-2とで白金薄膜4の膜厚を異ならせた場合には、第1の複合抵抗体と第2の複合抵抗体で温度係数が異なる。したがって、膜厚の異なる第1の抵抗体1-1と第2の抵抗体1-2とを図1のように直列接続した場合には、温度変化に対して電圧出力が変化することとなる。
【実施例1】
【0032】
そこで、第1の金属接着層と第2の金属接着層の膜厚を調整することで、第2の複合抵抗体の温度係数を第1の複合抵抗体の温度係数に一致させ、温度変化に対して電圧出力が変化することを抑制している。
【実施例1】
【0033】
すなわち、下表に示すように白金(Pt)薄膜4と、金属接着層6を構成するチタン(Ti)膜のそれぞれについて複数の膜厚として、各組み合わせでの温度係数を計測した。
【表1】
JP0005936087B2_000003t.gif
【実施例1】
【0034】
上表より、例えば白金薄膜4とチタン膜の組み合わせとして、白金薄膜4とチタン膜の膜厚Pt/Tiが5nm/3nmのものと、白金薄膜4とチタン膜の膜厚Pt/Tiが10nm/20nmのものでは温度係数は約0.001とほぼ等しくなっている。このように膜厚の組み合わせを最適化すれば温度係数をそろえることができる。
【実施例1】
【0035】
なお、第2の複合抵抗体の温度係数を第1の複合抵抗体の温度係数に完全に一致させることは、現実的には不可能である。特に、製造工程でのバラツキの影響等もあるため、常に想定通りの膜厚とした白金薄膜4及び金属接着層6が形成できるとは限らない。そこで、本発明では、第2の複合抵抗体の温度係数が、第1の複合抵抗体の温度係数の±10%の範囲内であれば、一致しているとみなしてよいと考えている。
【実施例1】
【0036】
図4において、第1の抵抗体1-1の白金薄膜4の膜厚を5nmとし、第1の金属接着層の膜厚を3nmとし、第2の抵抗体1-2の白金薄膜4の膜厚を30nmとし、第2の金属接着層の膜厚を3nmとして、図1の構成の薄膜水素ガスセンサとし、出力電圧の温度変化を計測した結果を示す。この場合、第1の複合抵抗体と第2の複合抵抗体とで温度係数が大きく異なるために、温度によって出力電圧が変動していることがわかる。
【実施例1】
【0037】
一方、図5において、第1の抵抗体1-1の白金薄膜4の膜厚を5nmとし、第1の金属接着層の膜厚を3nmとし、第2の抵抗体1-2の白金薄膜4の膜厚を10nmとし、第2の金属接着層の膜厚を20nmとして、図1の構成の薄膜水素ガスセンサとし、出力電圧の温度変化を計測した結果を示す。この場合には、第1の複合抵抗体と第2の複合抵抗体の温度係数がほぼ一致するために、温度によって出力電圧が変動することが抑制されていることがわかる。
【実施例1】
【0038】
このように、第1の金属接着層と第2の金属接着層は、各白金薄膜の密着性向上に寄与するだけでなく、それぞれの膜厚を調整することで、第1の複合抵抗体と第2の複合抵抗体の温度係数を一致させて、温度の影響を受けにくい薄膜型水素ガスセンサとすることができる。
【実施例2】
【0039】
本実施例は、上述した第1の複合抵抗体と第2の複合抵抗体とでブリッジ回路を構成して電圧を検出する薄膜型水素ガスセンサである。すなわち、図6に示すように、薄膜型水素ガスセンサは、絶縁基板Nに、1つの第1の複合抵抗体1-3と、3つの第2の複合抵抗体1-4,1-5,1-6とでブリッジ回路を構成したセンサ部Sと、このセンサ部Sを電圧駆動させるための電圧源2’と、ブリッジ回路からの電圧出力を読み取って抵抗変化を検出する検出部3’で構成している。
【実施例2】
【0040】
ここで、第1の複合抵抗体1-3は、白金薄膜の膜厚を5nmとし、第1の金属接着層となるチタン薄膜の膜厚を3nmとしており、第2の複合抵抗体1-4,1-5,1-6は、白金薄膜の膜厚を20nmとし、第2の金属接着層となるチタン薄膜の膜厚を3nmとしており、第1の複合抵抗体1-3を水素ガス高感度抵抗体、第2の複合抵抗体1-4,1-5,1-6を水素ガス低感度抵抗体として、水素に対して電圧出力変化を得ることとしている。
【実施例2】
【0041】
第1の複合抵抗体1-3及び第2の複合抵抗体1-4,1-5,1-6を形成するための白金薄膜及びチタン薄膜は、それぞれスパッタリングにより成膜して、リフトオフによりパターンニング形成することで所望の形状とし、さらにチタン薄膜を利用して適宜の引出配線を形成している。引出配線はチタン薄膜で形成する場合に限定するものではなく、アルミニウムや銅、あるいは金などの適宜の導電性金属を用いて形成してよい。
【実施例2】
【0042】
本実施例では、実験の都合上、第1の金属接着層と第2の金属接着層とを同一として、温度係数を考慮していないが、第1の金属接着層の膜厚と第2の金属接着層の膜厚をそれぞれ最適化することで、第1の複合抵抗体1-3と第2の複合抵抗体1-4,1-5,1-6の温度係数をそろえることで、さらに温度に対して安定な出力を得ることができる。
【実施例2】
【0043】
本実施例の薄膜型水素ガスセンサでは、ブリッジ回路の第1端子7-1と第3端子7-3に駆動電圧をかけ、第2端子7-2と第4端子7-4の間からセンサ出力電圧と得ることとしており、駆動電圧は直流あるいは交流でもどちらでも選ぶことができる。
【実施例2】
【0044】
本実施例の薄膜型水素ガスセンサの水素応答特性を図7に示す。ここでは、空気雰囲気から空気中1%の水素濃度とした水素ガスを吹き付けた時と、さらに空気雰囲気に戻した時の時間応答を示している。感度としては水素濃度1%に対して1.7mV程度の出力が得られている。
【実施例2】
【0045】
一定バイアス電圧では水素当てた時の応答が若干遅く、さらに空気に戻した後では、その戻り速度が特に遅いことが分かる。このため、水素を当てた直後と戻した時にパルス電圧を加えて瞬間的に加熱することで、水素ガスに対して応答と回復時間が早く改善できていることが分かる。
【実施例3】
【0046】
本実施例は、上記の実施例2の改良型であって、上記の実施例2では、1つの第1の複合抵抗体1-3と、3つの第2の複合抵抗体1-4,1-5,1-6とでブリッジ回路を構成したが、本実施例では、図8に示すように、2つの第1の複合抵抗体1-7,1-9と、2つの第2の複合抵抗体1-8,1-10とでブリッジ回路を構成したものであり、特に、2組の直列に接続した第1の複合抵抗体と第2の複合抵抗体とを並列接続することで、ブリッジ回路を構成しているものである。
【実施例3】
【0047】
すなわち、本実施例では、図8に示すように、薄膜型水素ガスセンサは、絶縁基板N”に、2つの第1の複合抵抗体1-7,1-9と、2つの第2の複合抵抗体1-8,1-10とでブリッジ回路を構成したセンサ部S”と、このセンサ部S”を電圧駆動させるための電圧源2”と、ブリッジ回路からの電圧出力を読み取って抵抗変化を検出する検出部3”で構成している。
【実施例3】
【0048】
特に、2つの第1の複合抵抗体1-7,1-9と、及び2つの第2の複合抵抗体1-8,1-10は、それぞれブリッジ回路の対辺に位置させており、2組の直列に接続した第1の複合抵抗体と第2の複合抵抗体とを並列接続した状態としている。
【実施例3】
【0049】
ここで、第1の複合抵抗体1-7,1-9は、白金薄膜の膜厚を5nmとし、第1の金属接着層となるチタン薄膜の膜厚を3nmとしており、第2の複合抵抗体1-8,1-10は、白金薄膜の膜厚を20nmとし、第2の金属接着層となるチタン薄膜の膜厚を3nmとしている。
【実施例3】
【0050】
第1の複合抵抗体1-7,1-9及び第2の複合抵抗体1-8,1-10を形成するための白金薄膜及びチタン薄膜は、それぞれスパッタリングにより成膜して、リフトオフによりパターンニング形成することで所望の形状とし、さらにチタン薄膜を利用して適宜の引出配線を形成している。引出配線はチタン薄膜で形成する場合に限定するものではなく、アルミニウムや銅、あるいは金などの適宜の導電性金属を用いて形成してよい。
【実施例3】
【0051】
本実施例では、実験の都合上、第1の金属接着層と第2の金属接着層とを同一として、温度係数を考慮していないが、第1の金属接着層の膜厚と第2の金属接着層の膜厚をそれぞれ最適化することで、第1の複合抵抗体1-7,1-9と第2の複合抵抗体1-8,1-10の温度係数をそろえることで、さらに温度に対して安定な出力を得ることができる。
【実施例3】
【0052】
本実施例の薄膜型水素ガスセンサでは、ブリッジ回路の第1端子7-1”と第3端子7-3”に駆動電圧をかけ、第2端子7-2”と第4端子7-4”の間からセンサ出力電圧と得ることとしており、駆動電圧は直流あるいは交流でもどちらでも選ぶことができる。
【実施例3】
【0053】
本実施例の薄膜型水素ガスセンサの水素応答特性を図9に示す。ここでも、空気雰囲気から空気中1%の水素濃度とした水素ガスを吹き付けた時と、さらに空気雰囲気に戻した時の時間応答を示している。ブリッジ回路の対辺に同じ複合抵抗体を入れているので、感度としては約13mVと実施例2の薄膜型水素ガスセンサと比較して大きな感度を得ることができた。また、パルス加熱により、実施例2と同様に応答及び回復時間が改善できた。
【実施例3】
【0054】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例・設計変更などをその技術的範囲内に包含することは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、水素ガス濃度を測定する水素ガスセンサに関する。上記水素ガスセンサは特に構造が簡単であるにも関わらず信頼性が高いので広く使用することができる。例えば水素ガス生成プラントや、水素ガスステーション、水素自動車や家庭、ビルなどに設置された定置型の燃料電池システムからのガス漏れ検知装置として利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1-1 抵抗体
1-2 抵抗体
1-3 第1の複合抵抗体
1-4 第2の複合抵抗体
1-5 第2の複合抵抗体
1-6 第2の複合抵抗体
1-7 第1の複合抵抗体
1-8 第2の複合抵抗体
1-9 第1の複合抵抗体
1-10 第2の複合抵抗体
2 電圧源
2’ 電圧源
2” 電圧源
3 検出部
3’ 検出部
3” 検出部
4 白金薄膜
5 絶縁体基板
6 金属接着層
7-1 第1端子
7-2 第2端子
7-3 第3端子
7-4 第4端子
7-1” 第1端子
7-2” 第2端子
7-3” 第3端子
7-4” 第4端子
S センサ部
S” センサ部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
7
【図9】
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