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明細書 :癌早期検出のためのmiRNAマーカー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-086738 (P2016-086738A)
公開日 平成28年5月23日(2016.5.23)
発明の名称または考案の名称 癌早期検出のためのmiRNAマーカー
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N  15/113       (2010.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
G01N 33/50 P
C12N 15/00 A
C12N 15/00 G
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-225333 (P2014-225333)
出願日 平成26年11月5日(2014.11.5)
発明者または考案者 【氏名】石渡 俊行
【氏名】松田 陽子
出願人 【識別番号】500557048
【氏名又は名称】学校法人日本医科大学
【識別番号】509111744
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100111741、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 夏夫
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4B024
4B063
Fターム 2G045AA26
2G045CA26
2G045DA14
4B024AA11
4B024CA01
4B024CA09
4B024CA11
4B024CA12
4B024CA20
4B024DA02
4B024HA11
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR77
4B063QS02
4B063QS32
4B063QX01
要約 【課題】miRNAバイオマーカーを用いた癌を検出するための方法の提供。
【解決手段】被験体より採取した生体試料中のmiR-4710の発現量を測定することを含む、癌を検出し、又は癌の予後を評価する方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
被験体より採取した生体試料中のmiR-4710の発現量を測定することを含む、癌を検出し、又は癌の予後を評価する方法。
【請求項2】
癌が膵癌である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
生体試料が血清又は血漿である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
被験体のmiR-4710の発現量が健常人のmiR-4710の発現量よりも高い場合に、癌に罹患しているか、あるいは癌の予後が不良であると判断する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
miR-4710からなる、癌検出又は癌の予後評価のためのマーカー。
【請求項6】
癌が膵癌である、請求項5記載のマーカー。
【請求項7】
免疫不全非ヒト動物にヒト癌細胞を移植し、該動物中の生体試料中のヒト由来miRNAを測定することを含む、生体試料中に存在するmiRNAをヒト癌マーカーとして用い得ると判断する、ヒトmiRNA癌マーカーのスクリーニング方法。
【請求項8】
免疫不全非ヒト動物が、ヌードマウス又はSCIDマウスである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
生体試料が血清である、請求項7又は8に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、miRNAである癌マーカーに関し、該マーカーを用いた癌の早期検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマーカーには、目的に応じて診断マーカーや予後マーカー、薬力学マーカー、モニタリングマーカーなどがあり、これらのバイオマーカーの測定には、遺伝子(DNA、RNA)、タンパク、ペプチド、イメージング(CT、PET、MRI等)が使われる。
【0003】
癌領域では、腫瘍マーカー48種、遺伝子検査9種、免疫検査4種などが保険診療で利用可能となっており、タンパクのバイオマーカーが多い(非特許文献1参照)。
【0004】
これまで知られている癌のバイオマーカーの多くはタンパクのマーカーであるが、感度に乏しいものが多く、更に複数の種類の癌で同様の増減を示すため、特定の癌を同定する特異性に欠ける場合が多い。
【0005】
また、タンパクは大きいため壊れやすく、ELISA(抗原抗体反応)を使った検査のため、時間がかかる(2時間程度)といった課題があった。他にもバイオマーカーを調べるためには、血液の採取が必要であり、侵襲性を伴うため、患者への負担があった。
【0006】
そこで、現在では、マイクロRNA(miRNA)がタンパクに替わる有力な因子として注目されており、診断や治療のための研究が世界中で進められている。
【0007】
miRNAは、18~25塩基からなるRNAで、複数の遺伝子の転写や翻訳を制御することにより調節機能を発現し、細胞の発生、分化、増殖、癌化及びアポトーシスなどの細胞機能の根幹に関わっている。特に、細胞の癌化に深く関与していることが指摘されている。また、miRNAはこの分泌小胞やタンパク質複合体として細胞外に放出され、安定な形で体液中に存在することから、様々な疾患の病態を同時に把握できる画期的な診断指標になると期待されている。
【0008】
また、miRNAは血液だけではなく、唾液や汗などのあらゆる体液の中に存在しているため、低侵襲による検査が可能であり、PCRによる検査のため、検査時間も30分程度で済むといった利点がある。
【0009】
これまでヒトでは約2500分子のmiRNAが確認されており、癌のバイオマーカーとしてもいくつかの報告がある(非特許文献2及び3を参照)。
【0010】
しかし、これらのmiRNAバイオマーカーは、いずれも癌患者から採取された膨大な数の血液を調べた結果見つかったものであり、こうした方法以外に感度や特異性の高いバイオマーカーを検出する方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【0011】

【非特許文献1】医療産業政策研究所リサーチペーパー・シリーズNo.57
【非特許文献2】Yi W Kong et al., Lancet Oncol 2012; 13: e249-58
【非特許文献3】Jim Wang et al., Molecules 2014, 19, 1912-1938
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、新規のmiRNAバイオマーカーを検出するための新たな方法を提供する。さらに、その方法によって得られた癌を検出するためのmiRNAバイオマーカーに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは、癌診断のためのバイオマーカーを探索するために、ヌードマウスにヒト膵癌培養細胞(PANC-1)を移植し、ヌードマウス血清中で増加しているヒト型のmiRNAを探索したところ、miR-4710が最も増加し、PANC-1はmiR-4710を培地中に分泌していた。
【0014】
そこで、miR-4710と既存の膵癌のバイオマーカー(CA19-9、CEA)との比較試験を行ったところ、既存バイオマーカーと比較して、感度が高く、診断精度が高い結果となった。
また、現在報告されているその他の膵癌のmiRNAバイオマーカーと比較して、感度が高い結果となった。
【0015】
これらの結果から、ヌードマウスを使ったバイオマーカーの検出方法がより有効なバイオマーカーを発見する方法として優れたものであることが明らかになったとともに、既存の膵癌miRNAバイオマーカーと比較して感度の優れたバイオマーカーを発見することができた。
【0016】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 被験体より採取した生体試料中のmiR-4710の発現量を測定することを含む、癌を検出し、又は癌の予後を評価する方法。
[2] 癌が膵癌である、[1]の方法。
[3] 生体試料が血清又は血漿である、[1]又は[2]の方法。
[4] 被験体のmiR-4710の発現量が健常人のmiR-4710の発現量よりも高い場合に、癌に罹患しているか、あるいは癌の予後が不良であると判断する、[1]~[3]のいずれかの方法。
[5] miR-4710からなる、癌検出又は癌の予後評価のためのマーカー。
[6] 癌が膵癌である、[5]のマーカー。
[7] 免疫不全非ヒト動物にヒト癌細胞を移植し、該動物中の生体試料中のヒト由来miRNAを測定することを含む、生体試料中に存在するmiRNAをヒト癌マーカーとして用い得ると判断する、ヒトmiRNA癌マーカーのスクリーニング方法。
[8] 免疫不全非ヒト動物が、ヌードマウス又はSCIDマウスである、[7]の方法。
[9] 生体試料が血清である、[7]又は[8]の方法。
【発明の効果】
【0017】
膵癌は5年生存率が約5%の極めて予後の悪い癌として知られ、また早期発見が難しい。そのため、感度の高い、新たなバイオマーカーが利用できれば、早期発見につながる有用なものとなり、また再発や転移などを予測するための予後マーカーとしても利用できるものと考えられる。
【0018】
現在、CA19-9は胆道系の癌、CEAは大腸癌などのマーカーとしても使用されている。また、miRNAの研究でも、一つのmiRNAが複数の癌のマーカーになるという報告がある。膵臓癌は腺癌なので、同じ組織型の胆道系の癌や、胃癌、大腸癌などで、膵癌で見出されたマーカーを癌マーカーとして用いられると考えられる。
【0019】
通常、ヌードマウスにヒトの癌細胞を移植して実験をする場合、癌の増殖程度や転移の様子を観察することができるので、薬剤などを投与して、その効果判定に使用されている。
【0020】
本発明による、ヌードマウスを使ったバイオマーカーの探索方法では、多くの臨床検体数と正常検体を比較する必要がなく、費用が少なくて済む、実験方法も簡単で時間がかからない、様々な癌に応用可能(様々な癌をヌードマウスに植えて検討可能)といった利点が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ヒト膵癌患者と正常人血清におけるmiR-4710の発現量を示す図である。
【図2】ヒト膵癌患者と正常人血清におけるCA19-9の定量結果を示す図である。
【図3】ヒト膵癌患者と正常人血清におけるCEAの定量結果を示す図である。
【図4】ヒト膵癌患者と正常人血清におけるmiR-4710とCA19-9, CEAの相関を示す図である。図4AがmiR-4710とCEAの相関を、図4BがmiR-4710とCA19-9の相関を、図4CがCEAとCA19-9の相関を示す。
【図5】診断精度評価結果(ROC曲線)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.miR-4710をマーカーとして用いた膵癌の検出
本発明は、microRNAであるmiR-4710をマーカーとして用いて、癌、好ましくは膵癌を検出するための検査を行う方法、及び癌、好ましくは膵癌を検出するためのマーカーであるmiR-4710である。

【0023】
マイクロRNA(miRNA)は、通常、18~25塩基からなる非コード領域に由来する小RNA(small RNA)である。一般に、miRNAは、miRNA前駆体に転写される遺伝子から生成される。すなわち、遺伝子から一次転写産物であるpri-miRNAが転写され、次いで、pri-miRNAから特徴的なヘアピン構造を有する約70~約80ヌクレオチドのpre-miRNAが生成し、さらに、Dicerによりpre-miRNAから成熟型miRNAが生成される。

【0024】
本発明においては、癌マーカーとしてmiRNA前駆体の発現量を測定してもよいが、好ましくは成熟型miRNAの発現量を検出する。

【0025】
本発明の癌検出のマーカーに用いるmiRNAは、配列番号1にRNA配列(GGGUGAGGGCAGGUGGUU)を示す成熟型miR-4710である。マーカーに用いるmiR-4710は1又は2個の塩基の欠失、置換、付加、挿入等の変異を有していてもよい。

【0026】
miR-4710を用いて検出し得る癌として、膵癌、大腸癌、胃癌、胆道癌、結腸癌、肛門・直腸癌、食道癌、肺癌、膀胱癌、乳癌、肝癌、子宮癌、腎癌、前立腺癌、甲状腺癌、卵巣癌、脳・神経腫瘍、リンパ腫骨肉腫、平滑筋腫、横紋筋腫等が挙げられる。この中でも膵癌の検出に有用である。

【0027】
本発明において、被験体から採取した生体試料中のmiR-4710を測定する。生体試料としては、miRNAが存在し得る、血液、唾液、汗、尿等が挙げられる。好ましくは血液であり、血清、血漿を採取し、miR-4710を測定すればよい。これらの生体試料を用いてmiR-4710を測定し得るため本発明の検査は低侵襲で行うことができる。

【0028】
上記の生体試料からmiRNAを抽出して測定すればよい。miRNAの抽出は公知の方法で行うことができ、市販のmicroRNA Extractor (R) SP kit (和光純薬工業株式会社)等の抽出キットを用いて行うことができる。

【0029】
生体試料中のmiR-4710の測定は、例えばプローブを用いるハイブリダイゼーションを利用した方法やプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用した方法で行うことができる。プローブを用いるハイブリダイゼーションを利用した方法として、ノーザンブロット分析、マイクロアレイを用いた解析法等が挙げられ、プライマーを用いるPCRを利用した方法として、リアルタイムRT-PCR法等が挙げられる。

【0030】
プローブ、プライマーとしては、(a) 配列番号1に表される塩基配列を含むRNA、(b) 配列番号1に表される塩基配列において1若しくは2個の塩基が欠失、置換、付加、挿入された塩基配列からなるRNA、(c) (a)若しくは(b)のRNAの塩基配列においてuがtに置換した塩基配列からなるDNA、(d) (a)若しくは(b)のRNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNA、(e) (c)のDNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNA等が挙げられる。これらのプローブ及びプライマーは配列情報に基づいて適宜設計することができる。

【0031】
ハイブリダイゼーションを利用した方法では、プローブと生体試料中の被検出物であるmiRNAをハイブリダイゼーションし、miRNAを測定する。マイクロアレイを用いる場合、プローブは、一端を基板に固定して用いる。プローブを固定化する基板としては、スライドガラス、ニトロセルロース膜、マイクロビーズ等が挙げられる。プローブは基板上で合成してもよいし、また合成したプローブを基板上に固定化しても良い。基板上への固定化は、例えば市販のスポッターやアレイヤーを用いて行えばよく、プローブは吸着や共有結合を利用して固定化することができる。共有結合を介した結合により固定化する場合は、基板表面及びオリゴヌクレオチドに共有結合用のアミノ基、SH基等の官能基を導入すればよい。プローブを固定化した固定化基板を用いるマイクロアレイを利用した方法は公知の方法で行うことができる。プローブは、検出のために蛍光物質、酵素、放射性同位体、化学発光物質等で標識されている標識物でもよい。標識に用いる標識物質は、公知のものを用い、公知の方法で標識することができる。蛍光物質としては、例えば、Cy3、Cy5、ローダミン、フルオレセイン等が挙げられる。この方法で用いるプローブの塩基長は、限定されないが、例えば15~60、好ましくは19~50、さらに好ましくは20~30塩基である。

【0032】
ハイブリダイゼーションの条件は、miR-4710を他のmiRNAと区別し得る条件であり、例えばストリンジェントな条件であり、このような条件は当業者ならば適宜設定することができる。一例として、ストリンジェントな条件としては、約5~6×SSC中において、約60℃以上、好ましくは約65℃以上、更に好ましくは約70℃以上でハイブリダイゼーションを行う条件をいう。また、ストリンジェントな条件は、約0.1~1×SSC中において、約40~70℃、好ましくは約50~67℃、更に好ましくは約60~65℃で洗浄処理を行うことを含むものであってもよい。

【0033】
プライマーを用いたPCR法は、プライマーを用いてmiRNAを増幅させて行う。プライマーを用いたPCR法として、定量PCR及びリアルタイムPCRを利用することができる。リアルタイムPCRとしては、例えばTaqMan(登録商標)プローブを用いた方法が挙げられる。PCR法は公知の手法で行うことができる。用いるプライマーの塩基長は、5~50、好ましくは10~30、さらに好ましくは15~25である。通常、標的miRNAの塩基配列に基づいてフォワードプライマー及びリバースプライマーが設計される。

【0034】
本発明は、生体試料中のmiR-4710を測定するためのプローブ又はプライマーを含むmiR-4710検出キットも包含する。

【0035】
本発明においては、健常人から採取した生体試料を陰性対象として同時に測定してもよく、この場合、被験体が上記の癌に罹患している場合、被験体の血液中のmiR-4710濃度が健常人に比べて上昇するので、被験体におけるmiR-4710の量が健常人よりも多い場合、miR-4710は陽性と判断され、被験体が癌に罹患していると判断することができる。例えば、1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2.0倍以上の場合にmiR-4710が陽性であると決定することができる。

【0036】
また、あらかじめ健常人から得た生体試料中のmiR-4710を測定しておき、該測定値に基づいてmiR-4710の測定についてカットオフ値(閾値)を定めておいてもよい。該カットオフ値を基準としカットオフ値を超えた場合に、陽性であると判断することができる。

【0037】
カットオフ値は、例えば、ROC(receiver operating characteristic curve:受信者動作特性曲線)解析により定めることができる。また、ROC解析により本発明の方法による診断精度(感度及び特異性)を決定することができる。ROC解析は、試料として癌患者から採取した試料と健常人から採取した試料についてmiR-4710を測定し、各カットオフ値での感度(sensitivity)及び特異性(specificity)を算出し、横軸を特異性とし、縦軸を感度とした座標上にプロットする。本発明の方法で測定した測定値のROC曲線の一例を図5に示す。本発明の方法の測定結果についてROC解析により診断精度を解析した場合の、曲線下面積(AUC:area under the curve)は0.9以上と高く、感度は80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上であり、特異性は75%以上、好ましくは80%以上である。本発明の方法により、非常に高い精度で癌を検出することができる。

【0038】
miR-4710の発現量が高く陽性の場合、癌に罹患しているか否かを判定するための補助的データを取得し、該データに基づいて、miR-4710が陽性の場合、癌に罹患していると評価することができる。また、miR-4710の量により、癌が悪性か否かを判定するための補助的データを取得し、miR-4710が陽性の場合、癌が悪性であると評価することができる。さらに、miR-4710の量により癌の予後を判定するための補助的データを取得し、該データに基づいて、予後不良であると評価することができる。ここで、評価、判定とは予測ともいう。

【0039】
2.癌検出用のmiRNAマーカーのスクリーニング
本発明は、さらに免疫不全非ヒト動物を用いた癌マーカーのスクリーニング方法を含む。

【0040】
該方法においては、免疫不全非ヒト動物にヒト癌細胞を移植し、免疫不全非ヒト動物中でヒト癌細胞を増殖させ、免疫不全非ヒト動物から血液、血清又は血漿等の生体試料を採取し、該試料中で発現しているヒト由来のmiRNAをスクリーニングすればよい。

【0041】
免疫不全非ヒト動物としては、一般的に入手可能なヌードマウスやSCIDマウス、あるいはそれらのマウスにアシアロGM1抗体やTMβ1を投与したマウス、さらにX線照射マウスなどが挙げられる。本発明において、SCIDマウスに物質を投与したマウスやSCIDマウスを他の遺伝子欠損マウス等と交配してえられたマウスもSCIDマウスと呼ぶ。

【0042】
癌細胞は、皮下や腹腔に移植すればよく、好ましくは皮下に移植する。移植されるヒトの癌細胞の細胞数は102から2x106細胞程度である。

【0043】
移植する癌細胞は、ヒト癌細胞である限り限定されないが、PANC-1、Capan-1、AsPC-1、MIA PaCa-2、BXPC-3、Capan-2、PL45等のヒト膵癌細胞、HCC-2998、COLO-205、HCT-15、HCT-116、SW480等のヒト大腸癌細胞、MKN45、MKN28、St-4、MKN-1、MKN-7、MKN-74等の胃癌細胞、HCI-H23、HCI-H225、A549、Ma-1等の肺癌細胞、RXF-631L、ACHN、786-O等の腎臓癌細胞、BT-474、MDA-MB-231等の乳癌細胞、ES-2等の卵巣癌細胞、U266等のヒト骨髄腫細胞等を用いることができる。これらの細胞は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC;住所 12301 Parklawn Drive, Rockville Maryland 20852, United States of America)などから入手することができる。

【0044】
これらの細胞を移植した免疫不全非ヒト動物の血清からmiRNAを抽出し、マイクロアレイやリアルタイムPCRにより測定すればよい。

【0045】
ヒトの特定の癌種由来の癌細胞を移植した動物の生体試料中で発現するヒト由来miRNAは前記癌腫の検出マーカーとして用いることができる。

【0046】
本発明は、miRNA癌マーカーのスクリーニング方法を包含する。
【実施例】
【0047】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
本実施例は以下の材料を用い、以下の方法で行った。
ヌードマウス(6週齢、雄、BALB/cA Jcl-nu/nu, クレア社、日本) 9匹
正常人血清(ボランティア10名:男4名、女6名、24~56歳、平均年齢36.8歳)。膵臓癌患者血清(日本医科大学および、東大医科学研究所より供与された26名:男16名、女10名、42~84歳、平均年齢70.0歳)。
【実施例】
【0049】
ヌードマウスへのヒト膵癌細胞の移植とDNA microarray解析
ヌードマウスの背部皮下組織に、1,000,000個のヒト膵癌培養細胞のPANC-1細胞を移植した。移植28日後に皮下腫瘍の形成を確認し、ヌードマウスを屠殺、血液を採取した。ヒト膵癌細胞を皮下移植したヌードマウスと、癌細胞を移植していないヌードマウスの血液より血清を分離し、microRNA Extractor (R) SP kit (和光純薬工業株式会社、日本)を用いてプロトコールに従いmicroRNA を抽出した。これらのmicroRNAをhuman miRNAキット (Ver.17.0, 3D-Gene, 東レ、日本)を用いて microRNA array解析を行い、対照のヌードマウスに比較し増加しているmicroRNAを選択した。さらに増加しているmicroRNAのなかで4倍以上増加していて、マウスと共通性のないヒトに特異的な遺伝子配列を有する3種類のmicroRNAを選んだ(miR-3142-5p, miR-4761-3p, miR-4710)。これらのmicroRNAについてApplied Biosystems社のTaqMan MicroRNA Assay キットを用いて、逆転写とTaqman PCRを行った(StepOne Plus, Software v2.1)。その結果、miR-4710 (AB assay ID: 463602_mat, target sequence; GGGUGAGGGCAGGUGGUU) のみがヒト膵癌移植マウスの血清で有意に増加していることを確認した。
【実施例】
【0050】
PANC-1細胞におけるmiR-4710の産生と分泌の確認
PANC-1細胞を10%胎児ウシ血清を加えたRPMI 1640培地で3日間培養し、培地を回収して上記と同様にmicroRNAを抽出、TaqMan MicroRNA Assayキットを用いて逆転写とTaqman PCRを行いmiR-4710の発現を確認したところ、培地内にヒト型のmiR-4710の発現が確認された。
【実施例】
【0051】
ヒト膵癌患者と正常人血清におけるmiR-4710の発現の検討
ヒト膵癌患者と正常人の血清200μlからmicroRNA Extractor (R) SP kit(Wako)を用いて、プロトコールに従いmicroRNAを抽出し、TaqMan MicroRNA Assayキットを用いて逆転写とTaqman PCRを行い、miR-4710の発現量を比較検討した。発現量はCt値(Threshold Cycle)をもとに算出したΔΔCt値で表した。図1に結果を示す。図1の縦軸は症例2012-1のΔΔCt値を1とした場合の各症例の値を示してある。図1に示すように、血清中のmiR-4710は、癌症例で、正常人に比べ有意に増加していた。
【実施例】
【0052】
ヒト膵癌患者と正常人血清におけるCA19-9とCEAの定量
ヒト膵癌患者と正常人血清を50μl 用いて、ELISAキット (Immunospec Corp.カリフォルニア州、米国)のプロトコールに従って血清中のCA19-9 (Cat. No. E29-210)とCEA (Cat. No. E29-207)をOD450の吸光度計にて計測し標準曲線をもとに定量した。図2にCA19-9の結果を、図3にCEAの結果を示す。図2に示すように、血清中のCA19-9は癌症例で、正常人に比べ有意に増加していた。また、図3に示すように、血清中のCEAは癌症例で、正常人と有意差がなかった。
【実施例】
【0053】
統計学的検討
miR-4710とCA19-9, CEAの相関については、StatView J version 5.0 ソフトウエア(SAS Institute, ノースカロライナ州、米国)を用い、ROC曲線, 感度, 特異度、AUC値についてはEZRソフトウエア(自治医大埼玉医療センター、日本)を用いて統計解析を行った。図4に結果を示す。図4AはmiR-4710とCEAの相関を示し、図4BはmiR-4710とCA19-9の相関を示し、図4CはCA19-9とCEAの相関を示す。
【実施例】
【0054】
図4に示すように、miR-4710とCEAの値には有意な相関が認められた。一方、miR-4710とCA19-9の値には有意な相関は認められなかった。また、CEAとCA19-9には有意な相関は認められなかった。
【実施例】
【0055】
上記の膵癌患者と健常者の血清を用いて、miR-4710測定による膵癌の診断精度をROC解析により評価した。結果を図5に示す。図5に示すように、感度は0.885、特異性は1.000(カットオフ値(閾値) = 0.098)、曲線下面積(AUC)は0.9308 (95%信頼区間:0.8432-1.018)と算出され、高い診断精度を持つことが示された。
【実施例】
【0056】
血清中のmiR-4710量は正常人に比べ、膵癌症例で増加しており、現在膵癌診断に利用されている、CA19-9およびCEAよりも感度が高く、より鋭敏なバイオマーカーであることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
miR-4710をマーカーとして用いることにより癌、好ましくは膵癌を検出することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4