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明細書 :ワクチン及びプライムブーストワクチン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-094379 (P2016-094379A)
公開日 平成28年5月26日(2016.5.26)
発明の名称または考案の名称 ワクチン及びプライムブーストワクチン
国際特許分類 A61K  39/04        (2006.01)
A61P  31/06        (2006.01)
A61P  37/04        (2006.01)
A61K  39/00        (2006.01)
C12N   1/20        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/35        (2006.01)
FI A61K 39/04
A61P 31/06
A61P 37/04
A61K 39/00 H
C12N 1/20 E
C12N 1/21
C12N 15/00 A
C07K 14/35
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2014-232837 (P2014-232837)
出願日 平成26年11月17日(2014.11.17)
発明者または考案者 【氏名】相澤 志保子
【氏名】本多 三男
【氏名】早川 智
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100126882、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 光永
【識別番号】100175824、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 淳一
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B065
4C085
4H045
Fターム 4B024AA01
4B024CA02
4B024DA05
4B024EA04
4B024GA14
4B024HA17
4B065AA15X
4B065AA32Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C085AA03
4C085AA04
4C085BA09
4C085BB23
4C085CC07
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG05
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA11
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
要約 【課題】病原微生物由来抗原特異的CD8陽性T細胞を活性化することができるワクチンを提供することを目的とする。
【解決手段】病原微生物由来のタンパク質を発現させたBCG菌を有効成分とするCD8T細胞活性化用ワクチン、及び上記ワクチンと、上記BCG菌に発現させたタンパク質の発現ベクターを有効成分とするDNAワクチンとの組み合わせからなり、上記ワクチンで初回免疫を行い、上記DNAワクチンで追加免疫を行うように用いられることを特徴とする、プライムブーストワクチン。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
病原微生物由来のタンパク質を発現させたカルメット・ゲラン桿菌(BCG菌)を有効成分とするCD8T細胞活性化用ワクチン。
【請求項2】
前記BCG菌が、前記タンパク質をコードする遺伝子の発現ベクターを導入したBCG菌である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記発現ベクターが、BCG菌及び哺乳動物細胞の双方で発現が可能な発現ベクターである、請求項1又は2に記載のワクチン。
【請求項4】
結核ワクチンである、請求項1~3のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項5】
前記タンパク質が、マイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)のAg85Bタンパク質である、請求項1~4のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のワクチンと、
前記ワクチンの有効成分であるBCG菌に発現させたタンパク質の発現ベクターを有効成分とするDNAワクチンとの組み合わせからなり、
請求項1~5のいずれか一項に記載のワクチンで初回免疫を行い、前記DNAワクチンで追加免疫を行うように用いられることを特徴とする、プライムブーストワクチン。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチン及びプライムブーストワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
結核をはじめとして、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ熱、南米出血熱、マールブルグ病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、マラリア等の様々な重症感染症が知られている。
【0003】
これらの重症感染症には、有効なワクチンが存在しないものも多い。また、結核ワクチンとして広く用いられている、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)ワクチンについても、乳幼児結核と結核性髄膜炎の予防効果は認められているものの、成人の肺結核予防に関しては否定的な見解が存在する(例えば、非特許文献1を参照)。
【0004】
したがって、感染症に対するより効果的なワクチンが求められている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Andersen P., Tuberculosis vaccines - an update., Nat. Rev. Microbiol., 5(7), 484-7, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば結核菌のような細胞内寄生菌に対する感染防御には、細胞性免疫が重要である。これに対し、発明者らは、BCGワクチンによる免疫によって活性化される抗原特異的T細胞は、主にCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)であり、細胞性免疫に重要なCD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞)はほとんど活性化されないことを見出した。
【0007】
そこで、本発明は、病原微生物由来抗原特異的CD8陽性T細胞を活性化することができるワクチンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の通りである。
(1)病原微生物由来のタンパク質を発現させたBCG菌を有効成分とするCD8T細胞活性化用ワクチン。
(2)前記BCG菌が、前記タンパク質をコードする遺伝子の発現ベクターを導入したBCG菌である、(1)に記載のワクチン。
(3)前記発現ベクターが、BCG菌及び哺乳動物細胞の双方で発現が可能な発現ベクターである、(1)又は(2)に記載のワクチン。
(4)結核ワクチンである、(1)~(3)のいずれかに記載のワクチン。
(5)前記タンパク質が、マイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)のAg85Bタンパク質である、(1)~(4)のいずれかに記載のワクチン。
(6)(1)~(5)のいずれかに記載のワクチンと、前記ワクチンの有効成分であるBCG菌に発現させたタンパク質の発現ベクターを有効成分とするDNAワクチンとの組み合わせからなり、(1)~(5)のいずれかに記載のワクチンで初回免疫を行い、前記DNAワクチンで追加免疫を行うように用いられることを特徴とする、プライムブーストワクチン。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、病原微生物由来抗原特異的CD8陽性T細胞を活性化することができるワクチンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)全単核細胞群、(b)CD4陽性T細胞除去群及びCD8陽性T細胞除去群、並びに(c)CD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞除去群における、インターフェロン-γ産生細胞の存在割合を示すグラフである。
【図2】(a)は、p3HA85Bベクターの構造を示す図である。(b)は、pDNA85Bベクターの構造を示す図である。
【図3】Ag85Bタンパク質の発現を検討したウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。
【図4】(a)は、BCG菌のウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。(b)は、293T細胞のウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。
【図5】フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
【図6】各サイトカインを産生するCD4陽性T細胞の存在割合を示すグラフである。
【図7】(a)は、各サイトカインを産生するCD4陽性T細胞を更に詳細に解析した結果を示すグラフである。(b)は、(a)の結果を円グラフにしたものである。
【図8】各サイトカインを産生するCD8陽性T細胞の存在割合を示すグラフである。
【図9】細胞内サイトカイン解析の結果をまとめたグラフである。
【図10】(a)、(b)は、細胞内サイトカイン解析の結果をまとめたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1実施形態において、本発明は、病原微生物由来のタンパク質を発現させたBCG菌を有効成分とするCD8T細胞活性化用ワクチンを提供する。

【0012】
後述するように、本実施形態のワクチンによれば、病原微生物由来抗原特異的CD8陽性T細胞を活性化する(誘導する)ことができる。CD8陽性T細胞の活性化とは、ワクチンを投与した(免疫した)生体に、上記の病原微生物由来のタンパク質に暴露すると特定のサイトカインを産生するCD8陽性T細胞を形成させることを意味する。したがって、本実施形態のワクチンは、CD8陽性T細胞活性化剤であるともいえる。上記サイトカインとしては、例えば、インターフェロン-γ、インターロイキン-2、TNF-α、MIP-1α等が挙げられる。

【0013】
(病原微生物)
本実施形態のワクチンが対象とする病原微生物には特に制限はない。本実施形態のワクチンは、病原微生物由来抗原特異的CD8陽性T細胞を活性化することができるため、効果的なワクチンを得ることが困難とされる病原微生物にも適用することができる。

【0014】
したがって、病原微生物は、効果的なワクチンを得ることが困難とされる病原微生物であってもよく、例えば、結核の原因菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、エボラ出血熱の原因ウイルスであるエボラ出血熱ウイルス、クリミア・コンゴ熱の原因ウイルスであるクリミア・コンゴウイルス、南米出血熱の原因ウイルスであるフニンウイルス、サビアウイルス、ガナリトウイルス、マチュポウイルス等のアレナウイルス科のウイルス、マールブルグ病の原因ウイルスであるマールブルグウイルス、マラリアの原因微生物であるマラリア原虫、及び、例えば弱毒株等の、上記の病原微生物の類縁微生物等が挙げられる。

【0015】
本実施形態のワクチンにおいて、BCG菌に発現させる病原微生物由来のタンパク質としては、例えば、上記の病原微生物が感染した場合に発現量の高いタンパク質が挙げられる。より具体的には、結核菌のAg85Bタンパク質、結核菌と同じ抗酸菌であるマイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質、エボラ出血熱ウイルスのエンベロープ糖タンパク質、HIVウイルスのgp140タンパク質、マラリア原虫のマラリア抗原タンパク質等が挙げられる。

【0016】
本実施形態のワクチンによれば、BCG菌で発現させる病原微生物由来のタンパク質を変更することにより、多種多様な病原微生物に対するワクチンを容易に提供することができる。例えば、マイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質を発現させたBCG菌は、CD8T細胞の活性化が可能な結核ワクチンとして使用することができる。

【0017】
本実施形態のワクチンでは、病原微生物由来のタンパク質を発現させる宿主としてBCG菌を使用する。BCG菌はワクチンとして長年ヒトに接種されてきた実績があり、安全性も確立されているため、本実施形態のワクチンにより、安全なワクチンを簡便に提供することができる。

【0018】
また、本実施形態のワクチンでは、病原微生物由来のタンパク質を発現させたBCG菌を用いることにより、病原微生物由来抗原特異的CD8陽性T細胞を活性化することができる。これに対し、単に病原微生物由来のタンパク質をワクチンとして投与しても、抗原特異的CD8陽性T細胞を効果的に活性化することは困難である。

【0019】
発明者らは、本実施形態のワクチンの投与によりCD8陽性T細胞を活性化することができる理由について、CD8陽性T細胞の活性化には、病原微生物由来のタンパク質を発現させたBCG菌が生体内でマクロファージ等の食細胞に貪食され、病原微生物由来タンパク質が細胞中で適切なプロセッシングを受けたうえで抗原提示されることが重要であるためではないかと推測している。

【0020】
更に、後述するように、本実施形態のワクチンにより、1個の細胞が複数種類のサイトカインを産生する能力、すなわち多機能性を有する、CD8陽性T細胞を誘導することができる。多機能性を有するT細胞は感染防御能に優れているため、本実施形態のワクチンにより、高い感染防御能を付与することができる。

【0021】
(発現ベクター)
BCG菌を宿主とした病原微生物由来のタンパク質の発現は、BCG菌に、病原微生物由来のタンパク質をコードする遺伝子の発現ベクターを導入することにより行うことが好ましい。これにより、BCG菌を宿主として病原微生物由来のタンパク質の発現を容易に行うことができる。また、適切なプロモーターを選択したり、エンハンサーを組み合わせたりすることにより、病原微生物由来のタンパク質の発現量を増加させることができる。

【0022】
また、発現ベクターは、BCG菌のゲノムに導入されるのではなく、BCG菌内でプラスミドの形態で維持されるものであることが好ましい。これにより、病原微生物由来のタンパク質を発現させたBCG菌の品質が安定するため、本実施形態のワクチンの品質管理が容易になる。

【0023】
BCG菌でタンパク質を発現させるためのプロモーターとしては、例えばマイコバクテリウムフォーチュイタム(Mycobacterium fortuitum)由来のpAL5000等が挙げられる。

【0024】
上記の発現ベクターは、BCG菌及び哺乳動物細胞の双方で発現が可能な発現ベクターであることが更に好ましい。生体内に投与されたBCG菌は、マクロファージ等の食細胞に貪食され破壊される。そこで、BCG菌の破壊により放出された発現ベクターが、BCG菌及び哺乳動物細胞の双方で発現が可能なものであると、マクロファージ等の細胞内においても病原微生物由来のタンパク質の発現が継続される。この結果、より多くの病原微生物由来のタンパク質が生体内に供給されることとなり、より効果的に免疫を確立することができる。

【0025】
本実施形態のワクチンは皮内投与することが好ましい。また、投与量は、投与対象により適宜調整すればよいが、例えばマウスの場合には、1頭あたり2×10コロニー形成単位(CFU)程度でよい。

【0026】
(プライムブーストワクチン)
1実施形態において、本発明は、上記ワクチンと、上記ワクチンの有効成分であるBCG菌に発現させたタンパク質の発現ベクターを有効成分とするDNAワクチンとの組み合わせからなり、上記ワクチンで初回免疫を行い、上記DNAワクチンで追加免疫を行うように用いられることを特徴とする、プライムブーストワクチンを提供する。

【0027】
プライムブーストワクチンとは、初回免疫に用いたワクチンとは別のワクチンで1回以上の追加免疫を行うワクチンの組み合わせ、又はこのようなワクチン投与方法を意味する。

【0028】
また、DNAワクチンとは、生体内に投与するとタンパク質に翻訳され、そのタンパク質が免疫の成立に寄与するワクチンである。

【0029】
本実施形態のプライムブーストワクチンは、Ag85Bタンパク質を発現させた組換えBCG菌で初回免疫を行い、Ag85Bタンパク質の発現ベクターを有効成分とするDNAワクチンで追加免疫を行うものである。

【0030】
組換えBCG菌は皮内投与することが好ましい。また、投与量は、投与対象により適宜調整すればよいが、例えばマウスの場合には、1頭あたり2×10CFU程度が挙げられる。

【0031】
また、DNAワクチンは筋肉注射することが好ましい。また、投与量は、投与対象により適宜調整すればよいが、例えばマウスの場合には、1頭あたり100μg程度が挙げられる。

【0032】
ワクチン投与のスケジュールも適宜調整すればよいが、例えば、組換えBCG菌による初回免疫から3週間後にDNAワクチンによる1回目の追加免疫を行い、更に3週間後にDNAワクチンによる2回目の追加免疫を行い、更に2週間後にDNAワクチンによる3回目の追加免疫を行うスケジュール等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
次に実験例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
[実験例1]
モルモットをBCG菌で免疫し、精製ツベルクリン(Purified Protein Derivative、以下「PPD」という場合がある。)特異的なCD4陽性T細胞及びPPD特異的なCD8陽性T細胞が誘導されるか否かを検討した。
【実施例】
【0035】
(免疫)
モルモット(日本エスエルシー株式会社)に、2×10CFU/匹のBCG菌を皮内投与した。免疫から12週間後に採血して検討を行った。
【実施例】
【0036】
(ELISPOT法によるインターフェロン-γ産生細胞の検出)
採血した血液を、血球分離溶液(商品名「リンホセパール」、タカラバイオ株式会社)を用いた密度勾配遠心により遠心し、末梢血単核細胞を回収した。続いて、細胞ベースの酵素免疫スポット測定法(ELISPOT)により、回収した末梢血単核細胞中のインターフェロン-γ産生細胞の割合を測定した。
【実施例】
【0037】
具体的には、まず、回収した末梢血単核細胞を4つの群に分けた。第1の群(全単核細胞群)はそのまま次の操作に用いた。第2の群(CD4陽性T細胞除去群)からは、CD4陽性T細胞を除去して次の操作に用いた。第3の群(CD8陽性T細胞除去群)からは、CD8陽性T細胞を除去して次の操作に用いた。第4の群(CD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞除去群)からは、CD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞を除去して次の操作に用いた。CD4陽性T細胞の除去又はCD8陽性T細胞の除去は、セルソーターを用いて行った。
【実施例】
【0038】
続いて、各群の細胞の培地にPPD 1μg/mLを添加して刺激し、20時間後に次の操作に用いた。陰性対照として、PPDの代わりにリン酸緩衝液(PBS)を添加した群も準備した。また、陽性対照として、PPDの代わりにコンカナバリンA(ConA)1μg/mLを添加した群も準備した。
【実施例】
【0039】
続いて、抗インターフェロン-γ抗体を結合させたPVDF膜底の96ウェルマイクロタイタープレートに培地及び上記の各群の細胞を添加し、5時間インキュベートした。この結果、細胞がインターフェロン-γを分泌すると、分泌されたインターフェロン-γが細胞近傍に存在する抗インターフェロン-γ抗体と結合する。その後、細胞を洗い流し、メンブレン上に結合したインターフェロン-γを免疫染色により検出した。その結果、インターフェロン-γ産生細胞が存在していたメンブレン上の部分には、インターフェロン-γの存在を示すスポットが形成された。1つのスポットが1個のインターフェロン-γ産生細胞に対応する。そこで、スポットの数を測定することにより、インターフェロン-γ産生細胞の存在割合を測定することができる。
【実施例】
【0040】
図1は、全単核細胞群(図1(a))、CD4陽性T細胞除去群及びCD8陽性T細胞除去群(図1(b))、並びにCD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞除去群(図1(c))のインターフェロン-γ産生細胞の存在割合を示すグラフである。
【実施例】
【0041】
図1(a)に示すように、全単核細胞群では、PPDで刺激するとインターフェロン-γを産生する細胞が誘導されたことが示された。また、図1(b)に示すように、CD4陽性T細胞を除去すると、PPD刺激によりインターフェロン-γを産生する細胞が大幅に減少することが示された。また、CD8陽性T細胞を除去しても、PPD刺激によりインターフェロン-γを産生する細胞の数はほとんど変わらなかった。また、図1(b)に示すように、CD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞を除去すると、PPD刺激によりインターフェロン-γを産生する細胞が大幅に減少することが示された。
【実施例】
【0042】
以上の結果から、BCG菌による免疫の結果誘導されるPPD特異的なインターフェロン-γ産生細胞は主にCD4陽性T細胞であり、PPD特異的なインターフェロン-γ産生CD8陽性T細胞はあまり誘導されていないことが明らかとなった。
【実施例】
【0043】
[実験例2]
マイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質の発現ベクターを作製した。
【実施例】
【0044】
(p3HA85Bベクター)
BCG菌及び哺乳動物細胞の双方でAg85Bタンパク質を発現することが可能な発現ベクターであるp3HA85Bを作製した。p3HA85Bは、マイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質をコードする遺伝子(配列番号1)の上流に、BCG菌で作動可能であるpAL5000プロモーターを有しており、pAL5000プロモーターの上流に、哺乳動物細胞で作動可能であるサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターとHTLV-1プロモーターを有している。さらに、Ag85Bタンパク質をコードする遺伝子の下流にpolyAシグナル遺伝子を組み込んだ。図2(a)にp3HA85Bベクターの構造を示す。
【実施例】
【0045】
(pDNA85Bベクター)
哺乳動物細胞でAg85Bタンパク質を発現することが可能な発現ベクターである、pDNA85Bを作製した。pDNA85Bは、Ag85Bタンパク質をコードする遺伝子(配列番号1)の上流に、哺乳動物細胞で作動可能であるサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを有している。図2(b)にpDNA85Bベクターの構造を示す。
【実施例】
【0046】
[実験例3]
発現ベクターp3HA85BをBCG菌に導入し、マイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質を発現させたBCG菌を作製した。続いて、ウエスタンブロッティングによりAg85Bタンパク質の発現を確認した。
【実施例】
【0047】
(p3HA85BのBCG菌への導入)
エレクトロポレーション法により、発現ベクターp3HA85BをBCG菌に導入した。続いて、カナマイシン耐性を指標として、p3HA85Bが導入されたBCG菌を選択し、クローニングして、Ag85Bタンパク質を発現させたBCG菌を作製した。
【実施例】
【0048】
(ウエスタンブロッティング)
Ag85Bタンパク質を発現させたBCG菌及び対照である通常のBCG菌をそれぞれCell Lysis Buffer(Cell Signaling Technology社)を用いて溶解した。
【実施例】
【0049】
続いて、RC DC プロテインアッセイ (Bio-rad社)を用いてタンパク量を定量し、同量のタンパクを4-12% Bis-Tris gel(life technologies社)にて電気泳動した。
【実施例】
【0050】
続いて、電気泳動したタンパク質をPVDFメンブレン(life technologies社)に転写し、抗Ag85B抗体で免疫染色した。二次抗体にはセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG抗体(Cell Signaling Technology社)を用いた。シグナルの検出にはAmersham ECL Western Blotting Analysis System(GE Healthcare社)を用いた。
【実施例】
【0051】
図3は、ウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。レーン1は対照のBCG菌の結果であり、レーン2は、Ag85Bタンパク質を発現させたBCG菌の結果である。なお、ここで使用した抗Ag85B抗体は、BCG菌のAg85Bタンパク質及びマイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質の双方に結合するものである。
【実施例】
【0052】
その結果、発現ベクターp3HA85Bの導入により、BCG菌によるAg85Bタンパク質の発現が50~100倍増強したことが確認された。
【実施例】
【0053】
[実験例4]
発現ベクターp3HA85Bにより、哺乳動物細胞でAg85Bタンパク質の発現が可能か否かを検討した。
【実施例】
【0054】
ヒト胎児由来腎臓上皮細胞である293T細胞に、遺伝子導入試薬(商品名「Lipofectamin 2000」、Life Technologies社)を用いてp3HA85Bを導入して発現させた。
【実施例】
【0055】
続いて、実験例3と同様にしてウエスタンブロッティングによりAg85Bタンパク質の発現を確認した。陽性対照として、実験例3でAg85Bタンパク質を発現させたBCG菌のウエスタンブロッティングも行った。
【実施例】
【0056】
図4(a)は、陽性対照であるBCG菌のウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。レーン1は陽性対照であるBCG菌の結果である。また、レーン2は、リコンビナントAg85Bタンパク質をウエスタンブロッティングに供した結果である。また、レーン3は、広く交差反応することが知られているリコンビナントMPB59タンパク質をウエスタンブロッティングに供した結果である。
【実施例】
【0057】
図4(b)は、293T細胞のウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。レーン3は、発現ベクターp3HA85Bを導入した293T細胞の結果である。レーン4は、陰性対照として空のベクターp3H8.3のみを導入した293T細胞の結果である。レーン5は、陰性対照としてPBSのみをウエスタンブロッティングに供した結果である。また、レーン1及びレーン2は、実験例2で作製したpDNA85Bを導入した293T細胞の結果である。
【実施例】
【0058】
その結果、p3HA85Bベクターの導入により、BCG菌及び哺乳動物細胞の双方において、Ag85Bタンパク質を発現させることが可能であることが確認された。また、pDNA85Bベクターによって、哺乳動物細胞でAg85Bタンパク質を発現させることが可能であることが確認された。
【実施例】
【0059】
[実験例5]
マウスをBCG菌で免疫し、抗原特異的なCD8陽性T細胞が誘導されるか否かを検討した。
【実施例】
【0060】
(免疫)
C57BL/6Jマウス(オリエンタル酵母社)に、2×10CFU/匹のBCG菌を皮内投与した。免疫から3週間後に解剖して検討を行った。
【実施例】
【0061】
(細胞内サイトカイン解析)
上記の免疫マウスから脾臓細胞を分離し、ウシ胎児血清10v/v%、2-メルカプトエタノール、DNase 1U/mL、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地中で6時間抗原刺激した。抗原としては、10μg/mLのPPDを使用した。
【実施例】
【0062】
続いて細胞を回収し、APC標識抗CD3抗体(BD biociences社)、PE-cy7標識抗CD4抗体(BioLegend社)、PerCP cy5.5標識抗CD8抗体(BD biociences社)で細胞表面を染色した。更に、BD Cytofix/Cytoperm Fixation/Permeabilization Solution Kit (BD biociences)を用いて細胞を処理し、Alexa Fluor 488標識抗TNF-α抗体(BD biociences社)、PE標識抗インターフェロン-γ抗体(BD biociences社)、APC-Cy7標識抗インターロイキン-2抗体(BD biociences社)、V500標識抗MIP-1α抗体(BD biociences社)で細胞内サイトカインを染色した。染色した細胞はFACSverseソフトウエア(BD biociences社)及びFlowJoソフトウエア(TreeStar社)を用いて解析した。図5は、フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
【実施例】
【0063】
図6は、各サイトカインを産生するCD4陽性T細胞の存在割合を示すグラフである。PPDの代わりにリン酸緩衝液(PBS)で刺激した細胞を陰性対照として使用した。その結果、BCG菌による免疫によって、CD4陽性T細胞が誘導されたことが示された。
【実施例】
【0064】
図7(a)は、各サイトカインを産生するCD4陽性T細胞を更に詳細に解析した結果を示すグラフである。図中、Lはインターロイキン-2を表し、Gはインターフェロン-γを表し、MはMIP-1αを表し、TはTNF-αを表す。また、「+」は陽性であることを表し、「-」は陰性であることを表す。その結果、1個のCD4陽性T細胞が、1~4種類のサイトカインを産生していることが明らかとなった。すなわち、BCG菌による免疫によって多機能性のCD4陽性T細胞が誘導されたことが示された。また、図7(b)は、図7(a)の結果を円グラフにしたものである。
【実施例】
【0065】
図8は、各サイトカインを産生するCD8陽性T細胞の存在割合を示すグラフである。PPDの代わりにリン酸緩衝液(PBS)で刺激した細胞を陰性対照として使用した。その結果、BCG菌による免疫によって、CD8陽性T細胞はほとんど誘導されないことが示された。
【実施例】
【0066】
以上の結果から、BCG菌による免疫によって、CD4陽性T細胞が誘導されるものの、CD8陽性T細胞はほとんど誘導されないことが明らかとなった。また、誘導されたCD4陽性T細胞は多機能性であることが確認された。
【実施例】
【0067】
[実験例6]
マウスをBCG菌、又は発現ベクターp3HA85Bを導入したBCG菌で免疫し、多機能性のCD8陽性T細胞が誘導されるか否かを検討した。
【実施例】
【0068】
(免疫)
BALB/cマウス(オリエンタル酵母社)に、2×10CFU/匹のBCG菌、又は発現ベクターp3HA85Bを導入したBCG菌を皮内投与した。免疫から3週間後に解剖して検討を行った。
【実施例】
【0069】
(細胞内サイトカイン解析)
上記の免疫マウスから脾臓細胞を分離し、ウシ胎児血清10v/v%、2-メルカプトエタノール、DNase 1U/mL、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地中で24時間抗原刺激した。抗原としては、10μg/mLのPPDを使用した。陰性対照として、抗原刺激を行わない細胞を使用した。
【実施例】
【0070】
続いて細胞を回収し、実験例5と同様にしてフローサイトメトリーにより細胞内サイトカイン解析を行った。
【実施例】
【0071】
図9は、解析結果をまとめたグラフである。図中、「組換えBCG」は、発現ベクターp3HA85Bを導入したBCG菌で免疫した群を意味する。その結果、抗原刺激を行わない場合には、多機能性のCD4陽性T細胞及び多機能性のCD8陽性T細胞の存在は認められなかった。また、抗原刺激を行った結果、BCG菌で免疫した群からは多機能性のCD8陽性T細胞の存在が認められなかったのに対し、発現ベクターp3HA85Bを導入したBCG菌で免疫した群からは多機能性のCD8陽性T細胞の存在が認められた。
【実施例】
【0072】
また、抗原刺激を行った結果、BCG菌で免疫した群、及び発現ベクターp3HA85Bを導入したBCG菌で免疫した群のいずれにおいても多機能性のCD4陽性T細胞の存在が認められた。
【実施例】
【0073】
以上の結果から、発現ベクターp3HA85Bを導入したBCG菌を用いた免疫により、多機能性のCD8陽性T細胞を誘導することができることが明らかとなった。
【実施例】
【0074】
[実験例7]
発現ベクターp3HA85Bを導入したBCG菌で初回免疫を行い、pDNA85Bベクター(DNAワクチン)で追加免疫を行うプライムブーストワクチンによりマウスを免疫し、多機能性のCD8陽性T細胞の誘導を検討した。対照としては、pDNA85Bベクターのみで免疫したマウスを用いた。
【実施例】
【0075】
具体的には、BALB/cマウス(オリエンタル酵母社)及びC57BL/6Jマウス(オリエンタル酵母社)に、発現ベクターp3HA85Bを導入したBCG菌を、それぞれ1頭あたり2×10CFUずつ皮内投与して初回免疫を行った。続いて、3週間後にpDNA85Bベクターを1頭あたり100μgずつ筋肉注射して1回目の追加免疫を行い、更に3週間後にpDNA85Bベクターを1頭あたり100μgずつ筋肉注射して2回目の追加免疫を行い、更に2週間後にpDNA85Bベクターを1頭あたり100μgずつ筋肉注射して3回目の追加免疫を行った。3回目の追加免疫から3週間後に解剖して検討を行った。
【実施例】
【0076】
対象として、pDNA85Bベクターのみで免疫したマウスを用いた。具体的には、pDNA85Bベクターを1頭あたり100μgずつ筋肉注射して初回免疫を行った。続いて、3週間後にpDNA85Bベクターを1頭あたり100μgずつ筋肉注射して1回目の追加免疫を行い、更に3週間後にpDNA85Bベクターを1頭あたり100μgずつ筋肉注射して2回目の追加免疫を行い、更に2週間後にpDNA85Bベクターを1頭あたり100μgずつ筋肉注射して3回目の追加免疫を行った。3回目の追加免疫から3週間後に解剖して検討を行った。
【実施例】
【0077】
(細胞内サイトカイン解析)
上記の免疫マウスから脾臓細胞を分離し、ウシ胎児血清10v/v%、2-メルカプトエタノール、DNase 1U/mL、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地中で24時間抗原刺激した。抗原としては、下記表1に示す、Ag85Bタンパク質のプールペプチド(プール1~プール6)をそれぞれ使用した。抗原刺激にあたり、プールペプチドは2.5μg/mLの濃度で使用した。また、陰性対照として、抗原刺激を行わない細胞を使用した。続いて細胞を回収し、実験例5と同様にしてフローサイトメトリーにより細胞内サイトカイン解析を行った。
【実施例】
【0078】
【表1】
JP2016094379A_000002t.gif
【実施例】
【0079】
図10(a)は、C57BL/6Jマウスの解析結果をまとめたグラフである。図10(b)は、BALB/cマウスの解析結果をまとめたグラフである。図中、「組換えBCG-DNA」は、発現ベクターp3HA85Bを導入したBCG菌で初回免疫し、pDNA85Bベクターで追加免疫した群(プライムブースト免疫した群)を意味する。また、「DNA」は、pDNA85Bベクターのみで免疫した群を意味する。
【実施例】
【0080】
その結果、C57BL/6Jマウス、BALB/cマウスのいずれの脾臓細胞においても、抗原刺激を行わない場合には、多機能性のCD4陽性T細胞及び多機能性のCD8陽性T細胞の存在はほとんど認められなかった。
【実施例】
【0081】
また、C57BL/6Jマウスの脾臓細胞において、抗原刺激を行った場合には、プライムブースト免疫したマウスのほうが、pDNA85Bベクターのみで免疫したマウスよりも多機能性のCD4陽性T細胞の存在割合が高かった(プール2、5、6等)。
【実施例】
【0082】
また、BALB/cマウスの脾臓細胞において、抗原刺激を行った場合には、プライムブースト免疫したマウスのほうが、pDNA85Bベクターのみで免疫したマウスよりも多機能性のCD8陽性T細胞の存在割合が高かった(プール2等)。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、病原微生物由来抗原特異的CD8陽性T細胞を活性化することができるワクチンを提供することができる。
図面
【図1】
0
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
4
【図10】
5
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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