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明細書 :細胞破砕装置および細胞破砕方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-082879 (P2016-082879A)
公開日 平成28年5月19日(2016.5.19)
発明の名称または考案の名称 細胞破砕装置および細胞破砕方法
国際特許分類 C12M   1/33        (2006.01)
B02C  19/00        (2006.01)
FI C12M 1/33
B02C 19/00 101Z
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2014-215910 (P2014-215910)
出願日 平成26年10月23日(2014.10.23)
発明者または考案者 【氏名】祖山 均
【氏名】黄 基旭
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095359、【弁理士】、【氏名又は名称】須田 篤
【識別番号】100143834、【弁理士】、【氏名又は名称】楠 修二
審査請求 未請求
テーマコード 4B029
4D067
Fターム 4B029AA15
4B029BB01
4B029CC01
4B029DG06
4D067CG06
4D067GA20
要約 【課題】キャビテーションを利用して、温度上昇を抑えつつ、比較的少量の液体中の細胞を高効率で破砕することができる細胞破砕装置および細胞破砕方法を提供する。
【解決手段】破砕処理管11が、細胞を含む液体を流すための流路21と、それぞれ流路21の両端に接続された1対の管状の残留気泡除去部22とを有している。流路21は、両端から中央に向かって徐々に内径が小さくなるよう形成されている。各残留気泡除去部22は、流路21との接続位置での流路21の断面形状と同じ断面形状で、流路21とは反対側に伸びている。駆動手段13が、流路21を一方に向かって流れる液体中、および、流路21を他方に向かって流れる液体中にキャビテーション気泡が発生するよう、液体を破砕処理管11の内部で往復移動させるよう構成されている。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
両端から中央に向かって徐々に内径が小さくなるよう形成された、細胞を含む液体を流すための流路と、
前記流路を一方に向かって流れる前記液体中、および、前記流路を他方に向かって流れる前記液体中にキャビテーション気泡が発生するよう、前記液体を前記流路中で往復移動させる駆動手段とを、
有することを特徴とする細胞破砕装置。
【請求項2】
前記液体を前記流路に供給可能に、前記流路に連通した供給部と、
前記流路に供給される前記液体を加圧するよう、前記供給部と前記流路との間に設けられた加圧手段とを、
有することを特徴とする請求項1記載の細胞破砕装置。
【請求項3】
前記加圧手段は、所定の長さを有し、前記流路の両端の内径より大きい内径を有するパイプから成り、前記流路に連通していることを特徴とする請求項2記載の細胞破砕装置。
【請求項4】
それぞれ前記流路の両端に接続され、前記流路との接続位置での前記流路の断面形状と同じ断面形状で、前記流路とは反対側に伸びる1対の管状の残留気泡除去部を有し、
前記駆動手段は、前記液体を前記流路および各残留気泡除去部の内部で往復移動させるよう構成されていることを
特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の細胞破砕装置。
【請求項5】
前記流路は、中央の最も内径が小さい小径部に対して、一端側と他端側とが対称形状を成していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の細胞破砕装置。
【請求項6】
両端から中央に向かって徐々に内径が小さくなるよう形成された流路に、細胞を含む液体を供給し、
前記流路を一方に向かって流れる前記液体中、および、前記流路を他方に向かって流れる前記液体中にキャビテーション気泡が発生するよう、前記液体を前記流路中で往復移動させることを
特徴とする細胞破砕方法。
【請求項7】
前記液体を前記流路に供給する前に、前記液体を加圧することを特徴とする請求項6記載の細胞破砕方法。
【請求項8】
それぞれ前記流路の両端に接続され、前記流路との接続位置での前記流路の断面形状と同じ断面形状で、前記流路とは反対側に伸びる1対の管状の残留気泡除去部の内部、および前記流路の内部で、前記液体を往復移動させることを特徴とする請求項6または7記載の細胞破砕方法。
【請求項9】
前記流路は、中央の最も内径が小さい小径部に対して、一端側と他端側とが対称形状を成していることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の細胞破砕方法。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞破砕装置および細胞破砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャビテーションを利用して液体中の細胞を破砕したり、汚泥やバラスト水の殺菌処理を行ったりする装置として、超音波振動子によりキャビテーションを発生させるもの(例えば、特許文献1または2参照)や、プランジャポンプやホースポンプを利用して流動キャビテーションを発生させるものがある(例えば、特許文献3乃至5参照)。これらの装置は、キャビテーション気泡の消滅の際に生じる機械的な衝撃により、微生物や細菌を破砕するよう構成されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2008-264739号公報
【特許文献2】特開2008-36555号公報
【特許文献3】特開2008-173628号公報
【特許文献4】特開2001-17956号公報
【特許文献5】特開2004-202417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞内のたんぱく質を抽出する目的等で細胞を破砕する場合には、大量の汚泥やバラスト水の殺菌処理を行う場合とは異なり、少量の液体中でキャビテーションを発生させる必要がある。特許文献1および2に記載のような超音波振動子を使用する装置では、少量の液体を処理する場合、振動子で発生する熱により液体の温度が上昇しやすくなるため、液体中の細胞や、細胞から抽出されるたんぱく質が変質してしまうという課題があった。
【0005】
特許文献3乃至5に記載のようなプランジャポンプやホースポンプを使用する装置では、ポンプの内部も液体で充填する必要があるため、所定量以上の液体が必要となり、それより少量の液体中の細胞を破砕するのは困難であるという課題があった。また、特許文献3乃至5の装置では、細胞の破砕効率を上げるために、液体を循環させて何度もキャビテーションを発生させたり、多段でキャビテーションを発生させたりしている。このため、液体を流す流路が長くなり、それを充填するために所定量以上の液体が必要となり、やはり少量の液体中の細胞を破砕するのは困難であるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、キャビテーションを利用して、温度上昇を抑えつつ、比較的少量の液体中の細胞を高効率で破砕することができる細胞破砕装置および細胞破砕方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る細胞破砕装置は、両端から中央に向かって徐々に内径が小さくなるよう形成された、細胞を含む液体を流すための流路と、前記流路を一方に向かって流れる前記液体中、および、前記流路を他方に向かって流れる前記液体中にキャビテーション気泡が発生するよう、前記液体を前記流路中で往復移動させる駆動手段とを、有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る細胞破砕方法は、両端から中央に向かって徐々に内径が小さくなるよう形成された流路に、細胞を含む液体を供給し、前記流路を一方に向かって流れる前記液体中、および、前記流路を他方に向かって流れる前記液体中にキャビテーション気泡が発生するよう、前記液体を前記流路中で往復移動させることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る細胞破砕装置および細胞破砕方法は、両端から中央に向かって徐々に内径が小さくなるよう流路が形成されているため、内径が小さい中央の小径部を、所定の圧力および流速で液体が通過する際に、液体中にキャビテーション気泡を発生させることができる。このため、液体を流路中で往復移動させることにより、流路を一方に向かって流れるとき、および、流路を他方に向かって流れるときに、液体中にキャビテーション気泡を発生させることができ、そのキャビテーション気泡を利用して液体中の細胞を破砕することができる。液体を往復移動させるたびに、細胞を破砕することができるため、液体の量を増やさなくとも、往復移動の回数を増やすことにより、細胞の破砕率を高めることができる。このように、本発明に係る細胞破砕装置および細胞破砕方法は、比較的少量の液体中の細胞を高効率で破砕することができる
【0010】
本発明に係る細胞破砕装置および細胞破砕方法は、比較的少量の液体中の細胞を破砕できるため、例えば、細胞内のたんぱく質を抽出するために好適に使用することができる。本発明に係る細胞破砕装置および細胞破砕方法は、液体を往復移動してキャビテーション気泡を発生させるため、機械的な熱の発生源となる超音波振動子等が不要である。このため、液体の温度上昇を抑えることができ、熱により液体中の細胞等が変質するのを防ぐことができる。
【0011】
本発明に係る細胞破砕装置および細胞破砕方法では、液体を流路中で往復移動させる駆動手段として、例えば、シリンジや圧送ポンプなどを用いることができる。シリンジを用いる場合、シリンジを流路の一端側に配置し、シリンジを押したとき、流路の一方から他方に液体を流し、シリンジを引いたとき、流路の他方から一方に液体を流すことができる。また、圧送ポンプを用いた場合、圧送ポンプを流路の両端に配置し、一端側の圧送ポンプを駆動して流路の一方から他方に液体を流し、他端側の圧送ポンプを駆動して流路の他方から一方に液体を流すことができる。
【0012】
本発明に係る細胞破砕装置は、前記液体を前記流路に供給可能に、前記流路に連通した供給部と、前記流路に供給される前記液体を加圧するよう、前記供給部と前記流路との間に設けられた加圧手段とを、有することが好ましい。本発明に係る細胞破砕方法は、前記液体を前記流路に供給する前に、前記液体を加圧することが好ましい。この場合、加圧により細胞内に多量の空気を溶け込ませることができ、その状態でキャビテーション気泡を発生させることにより、細胞内でのキャビテーション気泡の発生確率を高めることができる。このため、液体中で発生したキャビテーション気泡の消滅の際に生じる機械的な衝撃により細胞を破砕する場合と比べて、細胞の破砕効率を高めることができる。また、液体を往復移動させる際に、より低い圧力および速度で、細胞を破砕することができる。
【0013】
本発明に係る細胞破砕装置で、前記加圧手段は、所定の長さを有し、前記流路の両端の内径より大きい内径を有するパイプから成り、前記流路に連通していてもよい。この場合、内径が大きいパイプからそれより内径が小さい流路に液体が流入する際に、液体の圧力および流速が高くなるため、液体を容易に加圧することができる。
【0014】
本発明に係る細胞破砕装置は、それぞれ前記流路の両端に接続され、前記流路との接続位置での前記流路の断面形状と同じ断面形状で、前記流路とは反対側に伸びる1対の管状の残留気泡除去部を有し、前記駆動手段は、前記液体を前記流路および各残留気泡除去部の内部で往復移動させるよう構成されていてもよい。本発明に係る細胞破砕方法は、それぞれ前記流路の両端に接続され、前記流路との接続位置での前記流路の断面形状と同じ断面形状で、前記流路とは反対側に伸びる1対の管状の残留気泡除去部の内部、および前記流路の内部で、前記液体を往復移動させてもよい。この場合、往復移動させるたびに、残留気泡除去部で液体中に残留するキャビテーション気泡を除去することができるため、液体中ではなく、細胞内でキャビテーション気泡が発生するのを促進することができ、細胞の破砕効率を高めることができる。特に、液体を流路に供給する前に加圧する構成と組み合わせることにより、細胞の破砕効率を飛躍的に高めることができる。
【0015】
本発明に係る細胞破砕装置および細胞破砕方法で、前記流路は、中央の最も内径が小さい小径部に対して、一端側と他端側とが対称形状を成していることが好ましい。この場合、液体を流路中で往復移動させるとき、往路と復路とで同じ条件でキャビテーション気泡を発生させることができる。このため、効率良く細胞を破砕することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、キャビテーションを利用して、温度上昇を抑えつつ、比較的少量の液体中の細胞を高効率で破砕することができる細胞破砕装置および細胞破砕方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の細胞破砕装置を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態の細胞破砕装置の(a)加圧タンクから成る加圧手段を有する変形例を示す正面図、(b)パイプから成る加圧手段を有する変形例を示す正面図である。
【図3】図1に示す細胞破砕装置による細胞破砕実験の実験結果を示すグラフである。
【図4】図1に示す細胞破砕装置による細胞破砕実験の、原料液体の往復回数ごとの、液体中の細胞の様子を示す顕微鏡写真である。
【図5】図1に示す細胞破砕装置による細胞破砕実験の、破砕処理管の小径部付近でキャビテーション気泡が発生する様子を示す拡大正面図である。
【図6】図2(a)に示す細胞破砕装置による細胞破砕実験で使用した(a)加圧装置を示す概略構成図、(b)減圧装置を示す概略構成図である。
【図7】図2(a)に示す細胞破砕装置による細胞破砕実験の、細胞死滅を評価する際の、アルコール発酵により二酸化炭素が発生している一例を示す正面図である。
【図8】図2(a)に示す細胞破砕装置による細胞破砕実験の、条件Aによる実験結果を示すグラフである。
【図9】図2(a)に示す細胞破砕装置による細胞破砕実験の、条件Bによる実験結果を示すグラフである。
【図10】図2(a)に示す細胞破砕装置による細胞破砕実験の、条件Cによる実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図10は、本発明の実施の形態の細胞破砕装置および細胞破砕方法を示している。
図1に示すように、細胞破砕装置10は、破砕処理管11と供給部12と駆動手段13と回収タンク14とを有している。

【0019】
破砕処理管11は、ベンチュリ管から成っており、円形の断面形状を有している。破砕処理管11は、両端から中央に向かって徐々に内径が小さくなるよう形成された流路21と、流路21の両端に接続された1対の残留気泡除去部22とを有している。流路21は、中央の最も内径が小さい小径部21aに対して、一端側と他端側とが対称形状を成している。各残留気泡除去部22は、流路21の両端の内径と同じ内径を有する円筒形状を成し、流路21と一体的に形成されている。残留気泡除去部22は、流路21と滑らかに連通している。

【0020】
供給部12は、貯留タンクから成り、破砕したい細胞を含む液体から成る原料液体が収納されている。供給部12は、破砕処理管11の一方の端部側に接続され、収納する原料液体を破砕処理管11の内部に供給可能に設けられている。

【0021】
駆動手段13は、シリンジを有し、供給部12と破砕処理管11との間に配置されている。駆動手段13は、供給部12から破砕処理管11に供給される原料液体を、破砕処理管11の内部で往復移動させるよう構成されている。すなわち、駆動手段13は、シリンジを押したとき、破砕処理管11の一方から他方に原料液体を流し、シリンジを引いたとき、破砕処理管11の他方から一方に原料液体を流すようになっている。これにより、細胞破砕装置10は、流路21を一方に向かって流れる原料液体中、および、流路21を他方に向かって流れる原料液体中にキャビテーション気泡が発生するようになっている。

【0022】
回収タンク14は、破砕処理管11の内部を往復移動して処理された後の原料液体を回収可能に、破砕処理管11の他方の端部側に接続されている。

【0023】
本発明の実施の形態の細胞破砕方法は、細胞破砕装置10により好適に実施される。すなわち、まず、破砕したい細胞を含む液体から成る原料液体を供給部12に収納し、その原料液体を破砕処理管11の内部に供給する。次に、駆動手段13により、破砕処理管11の内部の原料液体を、破砕処理管11の流路21および残留気泡除去部22の内部で往復移動させる。このとき、破砕処理管11の流路21を一方に向かって流れる原料液体中、および、流路21を他方に向かって流れる原料液体中に、それぞれ流路21の小径部21aの下流側でキャビテーション気泡が発生するよう、所定の圧力および流速で原料液体を往復移動させる。これにより、原料液体中で発生したキャビテーション気泡を利用して、原料液体中の細胞を破砕することができる。

【0024】
原料液体を、破砕処理管11の内部で所望の回数(1回~複数回)、往復移動させたならば、回収タンク14まで移動させて回収する。これにより、内部の細胞が高効率で破砕された液体を得ることができる。

【0025】
本発明の実施の形態の細胞破砕装置10および細胞破砕方法は、原料液体を往復移動させるたびに、細胞を破砕することができるため、プランジャポンプやホースポンプを使用するときのように液体の量を増やさなくとも、往復移動の回数を増やすことにより、細胞の破砕率を高めることができる。また、残留気泡が原料液体中に存在する場合、その残留気泡がキャビテーション核となって、原料液体中でキャビテーション気泡が発生しやすくなるため、相対的に細胞内でキャビテーション気泡が発生しにくくなる。しかし、本発明の実施の形態の細胞破砕装置10および細胞破砕方法は、往復移動させるたびに、残留気泡除去部22で原料液体中に残留するキャビテーション気泡を除去することができるため、細胞内でキャビテーション気泡が発生するのを促進することができ、細胞の破砕効率を高めることができる。このように、本発明の実施の形態の細胞破砕装置10および細胞破砕方法は、比較的少量の液体中の細胞を高効率で破砕することができる。

【0026】
本発明の実施の形態の細胞破砕装置10および細胞破砕方法は、液体を往復移動してキャビテーション気泡を発生させるため、機械的な熱の発生源となる超音波振動子等が不要である。このため、液体の温度上昇を抑えることができ、熱により液体中の細胞等が変質するのを防ぐことができる。また、破砕処理管11や駆動手段13のシリンジ、供給部12、回収タンク14は、比較的簡単な構造のものを使用することができ、使用のたびに行う洗浄が容易である。駆動手段13のシリンジとして安価なものを使用することができ、シリンジを使い捨てにすることもできる。

【0027】
本発明の実施の形態の細胞破砕装置10および細胞破砕方法は、比較的少量の液体中の細胞を破砕できるため、例えば、細胞内のたんぱく質を抽出するために好適に使用することができる。また、液体中の大腸菌などの細胞を破砕して殺菌するのにも使用することができる。

【0028】
なお、駆動手段13は、破砕処理管11の両端に配置された1対の圧送ポンプから成っていてもよい。この場合、破砕処理管11の一端側の圧送ポンプを駆動して流路21の一方から他方に原料液体を流し、他端側の圧送ポンプを駆動して流路21の他方から一方に原料液体を流すことができる。

【0029】
また、図2(a)に示すように、細胞破砕装置10は、破砕処理管11に供給される原料液体を加圧するよう、供給部12と破砕処理管11との間に設けられた加圧手段を有していてもよい。図2(a)に示す構成では、加圧手段は加圧タンク31から成り、供給部12と駆動手段13との間に配置されている。また、供給部12と加圧タンク31とを接続する管、および、加圧タンク31と駆動手段13とを接続する管に、それぞれバルブ32が設けられ、加圧タンク31に原料液体を収納したとき、バルブ32を閉めて加圧タンク31の内部で原料液体を加圧し、加圧後、バルブ32を開けて原料液体を破砕処理管11に供給するようになっている。

【0030】
この場合、加圧により原料液体中の細胞内に多量の空気を溶け込ませることができ、その状態でキャビテーション気泡を発生させることにより、細胞内でのキャビテーション気泡の発生確率を高めることができ、細胞の破砕効率を飛躍的に高めることができる。また、原料液体を往復移動させる際に、より低い圧力および速度で、細胞を破砕することができる。

【0031】
図2(b)に示すように、加圧手段は、所定の長さを有し、破砕処理管11の両端の内径より大きい内径を有するパイプ33から成り、破砕処理管11に連通していてもよい。この場合、内径が大きいパイプ33からそれより内径が小さい破砕処理管11に原料液体が流入する際に、原料液体の圧力および流速が高くなるため、原料液体を容易に加圧することができる。加圧の効果を高めるために、パイプ33の内径は、流路21の小径部21aの内径の10倍以上であることが好ましい。
【実施例1】
【0032】
図1に示す細胞破砕装置10を用いて、液体中の細胞を破砕する実験を行った。実験では、細胞の数の測定に、ベックマンコールター社製の「Cell Viability Analyzer」を使用した。細胞には293細胞を用い、ベックマンコールター社製「Cell Viability Analyzer」の測定範囲の5×104 ~ 1×107 cells/mLとなるように、培養した293細胞を培養液で希釈して原料液体とした。また、破砕処理管11として、流路21の小径部21aの内径が0.8 mm、各残留気泡除去部22の内径が4 mmのものを使用し、駆動手段13のシリンジとして、2.5 mlシリンジを使用した。原料液体を往復移動させる際には、原料液体を2.5 mlずつ吸い上げ、シリンジ出口部での圧力が0.2 MPa、流速が20 m/秒となるよう、手動でシリンジを往復させた。
【実施例1】
【0033】
実験では、当初の原料液体中の細胞の数、および、原料液体を破砕処理管11の内部で1往復、2往復、4往復、8往復させたときの細胞の数を測定した。測定結果を、表1および図3に示す。なお、表1中の「細胞の総数」は、画像処理で細胞と認識された細胞の個数、「生存する細胞の数」は、「細胞の総数」からトレパンブルーで染色された細胞の数(死滅した細胞の数)を差し引いた数、「平均直径」は、画像処理で認識された細胞の直径を表している。また、各測定時の液体中の細胞の様子を示す顕微鏡写真を図4に、破砕処理管11の小径部21a付近でキャビテーション気泡が発生する様子を図5に示す。
【実施例1】
【0034】
【表1】
JP2016082879A_000003t.gif
【実施例1】
【0035】
図3中の近似曲線は、1往復で全体のa%の細胞が処理されると仮定し、n往復目にはn-1往復で残っていた細胞がa%の確率で処理される、と仮定して求めたものである。図3に示す実験では、a=46.2(%)であり、破砕確率が非常に高いことが確認された。表1および図3に示すように、往復移動の回数を増やすことにより、より多くの細胞を破砕することができ、破砕率を高めることができることが確認された。また、図4からも、往復移動の回数を増やすことにより、細胞(図4中の黒い点状のもの)が減少していくのを確認することができる。なお、図5に示すように、小径部21aより下流側でキャビテーション気泡が発生しているのが確認できる。
【実施例2】
【0036】
図2(a)に示す細胞破砕装置10を用いて、液体中の細胞を破砕する実験を行った。細胞は、単細胞の乾燥出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用い、25℃の蒸留水40 mlに、乾燥酵母0.5 gを投入して原料液体とした。また、破砕処理管11として、流路21の小径部21aの内径が約0.96 mmのものを使用し、駆動手段13のシリンジとして、20 mlシリンジを使用した。
【実施例2】
【0037】
実験では、細胞破砕の機構解明を行うために、原料液体に対して、未処理のもの(Contorol)、減圧のみを行うもの(Vacuum)、加圧のみを行うもの(Pressure)、加圧後に減圧を行うもの(Pre.→Vac.)、キャビテーション処理のみを行うもの(Cavitation)、加圧後にキャビテーション処理を行うもの(Pre.→Cavi.)の6種類の処理を行った。
【実施例2】
【0038】
図6(a)に示すように、加圧処理は、容器(Container)に入れた原料液体を、圧力計(Pressure gage)で圧力を確認しながら、ポンプ(Pump)で加圧することにより行った。また、図6(b)に示すように、減圧処理は、容器(Container)に入れた原料液体を、圧力計(Pressure gage)で圧力を確認しながら、吸入器(Aspirator)で減圧することにより行った。キャビテーション処理は、原料液体を20 mlずつ吸い上げて、シリンジ出口部での圧力が0.2 MPa、流速が20 m/秒となるよう、キャビテーションを発生させる操作(破砕処理管11の内部を往復させる操作)を繰り返した。キャビテーション処理は、室温が23℃の室内で行った。
【実施例2】
【0039】
実験は、それぞれ以下の条件A、条件B、条件Cの元で、それぞれ6種類の処理を行った。条件Aでは、加圧は0.3 MPaで1時間行い、キャビテーション処理は100回繰り返した(100往復)。条件Bでは、加圧は0.3 MPaで30分間行い、キャビテーション処理は100回繰り返した(100往復)。条件Cでは、加圧は0.3 MPaで30分間行い、キャビテーション処理は50回繰り返した(50往復)。また、減圧は、全ての条件で、-0.098 MPaで10分間行った。
【実施例2】
【0040】
破砕された細胞(細胞死滅)を評価するために、出芽酵母によるアルコール発酵を利用した。アルコール発酵の化学反応式は、以下のように表される。

C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2↑ (1)

(1)式に示すように、ショ糖を加水分解することにより生じるグルコースC6H12O6 を出芽酵母が分解することにより、エタノールと二酸化炭素が発生する。この二酸化炭素は泡として発生するため、その泡の高さを比較することにより、出芽酵母の死滅具合を評価することができる。すなわち、泡の高さが低いほど、多くの細胞が破砕されて死滅していると評価できる。
【実施例2】
【0041】
評価の際には、まず、出芽酵母を凝縮するために、処理後の液体を遠心分離機にかけ、上澄み液を30 ml取り除き、そこに100 g/lの砂糖水10 mlを加え、よく撹拌した。これらを40℃に保った恒温槽に浸け、取り出して撮影した。40℃に保つのは、アルコール発酵を促すのに適した温度だからである。撮影した写真から、画像解析ソフトにより泡の高さを計測した。泡の高さの基準面は、砂糖水を加えた後の液面である20 mlの目盛りとした。また、泡の積み上がり方に差があるため、泡の頂点から、泡の最も高い水平面までの間の中央値を測定値とし、その幅を誤差として表した。
【実施例2】
【0042】
図7に、実際にアルコール発酵により二酸化炭素が発生している一例を示す。恒温槽に浸けて5分程度で泡が発生し始め、40分経過後に、図7に示すような高さにまで到達する。泡の上に膜が形成され、山のように積み上がっているものもある。
【実施例2】
【0043】
条件Aによる実験結果を、図8に示す。図8に示すように、6種類とも全て、泡の高さhは恒温槽に浸けた時間tとともに上昇しているが、キャビテーション処理を行った「Cavitation」と「Pre.→Cavi.」の2種類は、明らかに泡の高さhが他のものと比べて低く、多くの出芽酵母が死滅していることがわかる。また、「Pre.→Cavi.」は、「Cavitation」よりも泡の高さhが低くなっており、より多くの出芽酵母が死滅していることがわかる。また、残りの4種類の中でも、加圧を行ったもの(「Pressure」と「Pre.→Vac.」)は、他のもの(「Contorol」と「Vacuum」)よりも泡の高さhが低くなっていることがわかる。
【実施例2】
【0044】
条件Bによる実験結果を、図9に示す。図9に示すように、6種類とも全て、泡の高さhは恒温槽に浸けた時間tとともに上昇しているが、条件Aと同様に、キャビテーション処理を行った「Cavitation」と「Pre.→Cavi.」の2種類は、明らかに泡の高さhが他のものと比べて低く、多くの出芽酵母が死滅していることがわかる。また、「Pre.→Cavi.」は、「Cavitation」よりも泡の高さhが低くなっており、より多くの出芽酵母が死滅していることがわかる。条件Bでは、加圧時間を条件Aの半分の30分にして実験を行ったが、条件Aの場合と同様の結果が得られている。このことから、細胞死滅の因子が加圧によるものではないと考えられる。
【実施例2】
【0045】
条件Cによる実験結果を、図10に示す。図10に示すように、6種類とも全て、泡の高さhは恒温槽に浸けた時間tとともに上昇しているが、条件Aおよび条件Bと同様に、キャビテーション処理を行った「Cavitation」と「Pre.→Cavi.」の2種類は、明らかに泡の高さhが他のものと比べて低く、多くの出芽酵母が死滅していることがわかる。また、「Pre.→Cavi.」と「Cavitation」は、泡の高さhにほとんど差は認められない。また、他の4種類の泡の高さhについても、ほとんど差は認められない。
【実施例2】
【0046】
図8~図10に示すように、すべての実験において、「Pre.→Cavi.」と「Cavitation」の泡の高さhが、他の4種類よりも明らかに低い結果が得られた。これは、キャビテーション処理を行うことによって出芽酵母が死滅し、グルコースを分解する能力が弱まって他の4種類よりも泡の高さhが低くなったものと考えられる。また、「Pre.→Cavi.」は、「Cavitation」よりも泡の高さhが低くなる傾向が得られた。これは、キャビテーション処理を行う前に加圧することによって、細胞内に多量の空気が溶け込んだ状態でキャビテーション処理を行うため、細胞内でキャビテーションが発生して細胞が膨張し易くなり、死滅効率が上がったためであると考えられる。以上の実験結果から、キャビテーションの処理回数や加圧時間、破砕処理管11の形状などを変えることにより、細胞の破砕効率を上げることができると考えられる。
【符号の説明】
【0047】
10 細胞破砕装置
11 破砕処理管
21 流路
21a 小径部
22 残留気泡除去部
12 供給部
13 駆動手段
14 回収タンク

31 加圧タンク
32 バルブ
33 パイプ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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