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明細書 :成膜装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-088802 (P2016-088802A)
公開日 平成28年5月23日(2016.5.23)
発明の名称または考案の名称 成膜装置
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
FI C01B 31/02 101Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-224440 (P2014-224440)
出願日 平成26年11月4日(2014.11.4)
発明者または考案者 【氏名】竹内 希
【氏名】中谷内 裕徳
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100105924、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 賢樹
【識別番号】100109047、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 雄祐
【識別番号】100109081、【弁理士】、【氏名又は名称】三木 友由
【識別番号】100133215、【弁理士】、【氏名又は名称】真家 大樹
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
Fターム 4G146AA05
4G146AB07
4G146BA11
4G146BA12
4G146BA49
4G146BC16
4G146BC18
要約 【課題】DLC等をはじめとする薄膜を高速に形成可能な成膜装置を提供する。
【解決手段】成膜装置1は、ターゲット4上に薄膜を形成する。容器10は、有機溶媒4を収容するとともに、有機溶媒2中にターゲット4を支持する。アノード電極20は、容器10内の有機溶媒4中に設けられる。電源30は、アノード電極20とターゲット4の間に、アノード電極側を正とする直流成分を含む高電圧を印加する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
有機溶媒を収容するとともに、前記有機溶媒中にターゲットを支持する容器と、
前記容器内の前記有機溶媒中に設けられたアノード電極と、
前記アノード電極と前記ターゲットの間に、前記アノード電極側を正とする直流成分を含む高電圧を印加する電源と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記有機溶媒はエタノールを含み、ダイヤモンドライクカーボン膜が形成されることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記エタノールの濃度は、75%~85%であることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記有機溶媒はベンゼンを含み、ダイヤモンドライクカーボン膜が形成されることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記アノード電極は、その先端が前記ターゲットと対向して配置される針状電極であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記アノード電極は、メッシュ電極であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の成膜装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを利用した成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
耐摩擦性、耐腐食性、高硬度、ガスバリア性を具備する材料として、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)が注目されており、機械部品、電子部品、医療機器などへの応用が期待されている。
【0003】
炭素系薄膜を形成する技術として、当初、低気圧放電プラズマを用いた技術が開発されたが、真空装置が必要であることから、装置が大型、高コストであるという問題があった。近年、真空装置が不要な大気圧放電プラズマを用いた成膜技術の開発が進められている(非特許文献1、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2004-152523号公報
【特許文献2】特開2014-152095号公報
【0005】

【非特許文献1】Yoshimasa KONDO et al 、J.J.A.P. 44.52 (2005)
【非特許文献2】寺山暢之,巽由佳,中曽根正美著:真空,Vol.38,No.7,p.653(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1には、DLC膜合成技術が開示される。この技術では、キャリアガスであるヘリウムと原料ガスであるメタンの混合基体を、チャンバーに収容し、SIサイリスタを用いてプラズマを発生し、基板上にDLC膜を生成するものである。この技術では、真空装置が不要であるが、原料ガスの濃度が低いため、成膜速度が遅いという問題がある。
【0007】
特許文献1の技術では、薄膜の材料(主に炭素)を含む溶液中(ドデカン)に、加熱手段あるいは真空手段を用いて気泡を発生させ、電磁波発生装置により気泡内に電磁波を照射し、プラズマを発生させ、ターゲット基板の上に、ダイヤモンド状のアモルファス炭素膜を形成する。この技術では、気泡発生手段とプラズマ発生手段を個別に要するため、気泡発生および放電のタイミングのアライメントや、メンテナンスの容易性の観点で改善の余地がある。
【0008】
そのほか、プラズマを利用した炭素系材料の生成技術として、特許文献2には、水または水溶液中に一対の炭素電極を浸漬させ、炭素電極間にパルス状の高電圧を印加し、グロー放電プラズマの作用により、グラフェンを生成する技術が開示される。
【0009】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、DLC等をはじめとする薄膜を高速に形成可能な成膜装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は成膜装置に関する。成膜装置は、有機溶媒を収容するとともに、有機溶媒中にターゲットを支持する容器と、容器内の有機溶媒中に設けられたアノード電極と、アノード電極側を正とする直流成分を含む高電圧を印加する電源と、を備える。
【0011】
この態様では、アノード電極とターゲットの間に電流が流れ、この電流にともない発生するジュール熱により気泡が生成される。そして気泡内の放電によりプラズマが生成される。このサイクルを繰り返すことにより、プラズマで生成されたイオン、分子、ラジカルなどがターゲットに堆積し、ターゲット上に成膜できる。加えて、高電圧は、アノード電極側を正とする直流成分を含むため、アノード電極からターゲットに向かう方向の定常的な電界が発生しており、プラズマ内に形成されるイオンは、この電界によってターゲットに引き寄せられる。これにより、成膜を促進することができ、薄膜の高速形成が可能となる。
【0012】
有機溶媒はエタノールを含み、ダイヤモンドライクカーボン膜が形成されてもよい。
【0013】
エタノールの濃度は、75%~85%であってもよい。ある条件下では、この範囲において、良好な組成を有するDLC膜を形成できる。
【0014】
アノード電極は、その先端がターゲットと対向して配置される針状電極であってもよい。
【0015】
アノード電極は、メッシュ電極であってもよい。これにより、広範囲に同時に、薄膜を形成できる。
【0016】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のある態様によれば、DLC等をはじめとする薄膜を高速に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係る成膜装置の構成を示す断面図である。
【図2】図2(a)~(c)は、成膜装置の動作を説明する模式図である。
【図3】図3(a)~(c)は、成膜装置の動作中におけるアノード電極の周辺の写真である。
【図4】図4(a)は、成膜装置の電極間電圧と電流の波形図であり、図4(b)は、プラズマ発光のスペクトル図である。
【図5】図5(a)~(d)は、濃度の異なるエタノール溶液を用いてターゲット上に形成された薄膜のラマンスペクトルを示す図である。
【図6】ターゲット上に形成された薄膜を示す写真である。
【図7】図7(a)は、成膜装置の電極間電圧と電流の波形図であり、図7(b)は、形成された薄膜のラマンスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。

【0020】
図1は、実施の形態に係る成膜装置1の構成を示す断面図である。成膜装置1は、容器10、アノード電極20、電源30を備える。容器10は、有機溶媒2を収容するとともに、有機溶媒2中にターゲット4を支持・固定する。有機溶媒2は、形成すべき薄膜の種類に応じて選択され、たとえばDLC膜を形成する場合、有機溶媒2はエタノール(COH)溶液を選択できる。ターゲット4としては、金属基板や半導体基板が選択可能であり、本実施の形態ではシリコン基板が用いられる。容器10には、排気口12が設けられる。

【0021】
アノード電極20は、容器10の内部の有機溶媒2中に設けられる。たとえばアノード電極20は、その先端がターゲット4と対向して配置される針状電極である。

【0022】
電源30は、アノード電極20とターゲット4の間に、高電圧VHIGHを印加する。高電圧VHIGHは、アノード電極20側を正とする直流成分を含む。たとえば電源30は、数百Vから数kVの高電圧VHIGHを発生する直流電源である。アノード電極20と電源30の間にはバラスト抵抗32を挿入することが望ましい。この実施の形態では、金属基板あるいは半導体基板であるターゲット4がカソード電極となる。

【0023】
以上が成膜装置1の構成である。続いてその動作を説明する。
図2(a)~(c)は、成膜装置1の動作を説明する模式図である。図2(a)に示すように、アノード電極20とターゲット4間に高電圧VHIGHが印加されることにより、アノード電極20からターゲット4の間の有機溶媒2に電流Iが流れる。図2(b)に示すように、この電流Iのジュール熱により周囲の有機溶媒2が蒸発し、無数の気泡6が発生する。

【0024】
そして気泡6が形成された有機溶媒2中に高電圧VHIGHが印加されることで、気泡6内でプラズマが形成される。この気泡6内では、CHイオン、CHイオン、C、C、CHラジカルが生成される。そして形成されたイオンやラジカルがターゲット4上に堆積し、薄膜が形成される。

【0025】
図3(a)~(c)は、成膜装置1の動作中におけるアノード電極20の周辺の写真である。図4(a)は、成膜装置1の電極間電圧と電流の波形図であり、図4(b)は、プラズマ発光のスペクトル図である。VHIGH=5.5kV、Rb=200kΩ、有機溶媒2は、99%、85%、75%、65%のエタノール溶液を用いた。

【0026】
図3(a)は、高電圧VHIGHを印加する前の、したがって気泡も放電も発生しない状態を示す。図3(b)は、高電圧VHIGHを印加した後のアノード電極20の周辺を示す。高電圧VHIGHを印加することにより、アノード電極20とターゲットの間に電流が流れ、この電流によって発生するジュール熱により無数の気泡6が生成される。

【0027】
図3(c)には、放電により、気泡内でプラズマが生成される様子が示される。アノード電極20からターゲット4の間の閃光がプラズマを示す。図4(b)には、Cのスペクトルが強く示される。

【0028】
図3(b)、(c)のサイクルを繰り返すことにより、プラズマで生成されたイオン、分子、ラジカルなどがターゲット4に堆積し、ターゲット4上にDLC膜が形成される。

【0029】
図4に示すように、放電は0.7μs周期で発生する。電極間電圧は、主としてバラスト抵抗32に放電電流が流れることにより生ずる電圧降下に起因して脈流するが、電源30が生成する高電圧VHIGHは一定の直流電圧であり、パルスなどの周期電圧でないことに留意されたい。60秒程度の放電時間を経て、ターゲット4上に薄膜が形成される。

【0030】
以上が成膜装置1の動作である。続いて成膜装置1により形成された薄膜を評価した結果を説明する。

【0031】
図5(a)~(d)は、濃度の異なるエタノール溶液を用いてターゲット4上に形成された薄膜のラマンスペクトルを示す図である。図5(a)~(c)には、右肩上がりのスペクトルが測定されており、これは形成される薄膜がポリマー状炭素膜であることを示す(非特許文献2参照)。さらに図5(b)、(c)に示すように、85%および75%のエタノール溶液を用いて形成された薄膜からは、sp2結合の存在を示すGバンド(1580cm-1)、sp3結合の存在を示すDバンド(1360cm-1)が測定されており、典型的なDLC薄膜のスペクトルが確認された。この結果から、有機溶媒2としてエタノール溶液を用いる場合、DLC薄膜の形成には、75~85%の濃度が好ましいことがわかる。

【0032】
図6は、ターゲット4上に形成された薄膜を示す写真である。薄膜の直径は約2mmである。膜圧は均一ではないが、最も厚い箇所において4μm程度の成膜が確認された。

【0033】
このように、実施の形態に係る成膜装置1によれば、有機溶媒中に気泡を生成し、気泡内でプラズマを生成することにより、ターゲット4上に薄膜を形成することができる。成膜装置1は、気泡を発生するための装置が不要であり、有機溶媒2中を流れる電流によるジュール熱により気泡が自動的に生成されるため、装置を簡素化できるという利点がある。また電源30が生成する高電圧VHIGHは、アノード電極20側を正とするDC電圧であることから、タイミング制御なども不要であり、メンテナンス性に優れている。

【0034】
さらに高電圧VHIGHは、アノード電極20側を正とする直流成分を含むため、アノード電極20からターゲットに向かう方向の定常的な電界が発生しており、プラズマ内に形成されるイオンは、この電界によってターゲット4に引き寄せられる。これにより、成膜を促進することができ、薄膜の高速形成が可能となる。上述のように、放電時間(処理時間)わずか60秒で、数ミクロンの薄膜を形成可能であり、これは数分を要する従来技術にくらべて短いと言える。

【0035】
また有機溶媒2として安価、入手、容易で安全なエタノールが利用可能であることも、利点のひとつと言える。

【0036】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。

【0037】
(第1変形例)
実施の形態では、有機溶媒2としてエタノールを用いたが、本発明はそれに限定されない。第1変形例では、有機溶媒2として99.5%のベンゼン(C)を用いる。図7(a)は、成膜装置1の電極間電圧と電流の波形図であり、図7(b)は、形成された薄膜のラマンスペクトルを示す図である。放電周期は約2μsであり、エタノールよりも長くなっている。また電源30が発生する直流電圧VHIGHは、8.2kVである。この変形例によれば、処理時間は10秒とさらに短くてよい。

【0038】
当業者によれば、DLC薄膜を形成するために利用可能な有機溶媒2がエタノールやベンゼンに限定されず、その他の有機溶媒、たとえば、メタノール、プロパノール、グルコース、トルエン等を利用可能であることが理解される。また放電条件、電極間距離、有機溶媒の選択に応じて、DLC膜以外の薄膜が形成しうること、またこのような用途も本発明の範囲に含まれる。

【0039】
(第2変形例)
実施の形態では、針状のアノード電極20を用いたが、本発明はそれには限定されない。アノード電極20に代えて、メッシュ電極を用いてもよい。この場合、広い面積に同時に成膜できる。あるいは、アノード電極20として、ターゲット4と平行な線状電極を用い、アノード電極20をターゲット4と平行な面でスキャンしてもよい。これにより大面積の成膜が可能となる。当然ながら実施の形態においても、針状のアノード電極20とターゲット4を相対的に変位させてもよい。

【0040】
(第3変形例)
実施の形態では、ターゲット4として金属基板や半導体基板を例示したが、ターゲット4は誘電体であってもよい。この場合、ターゲット4の裏面に金属のカソード電極を配置し、電源30によってアノード電極20とカソード電極の間に高電圧を印加すればよい。

【0041】
(第4変形例)
実施の形態では、電源30が発生する高電圧VHIGHがDC電圧である場合を説明したが、本発明はそれに限定されない。たとえば高電圧VHIGHは、DC成分と、DC成分に重畳されたパルス成分を含んでもよい。この場合、アーク放電に移行するのを抑制しつつ、パルス成分により放電を誘起することができる。

【0042】
(第5変形例)
実施の形態では、成膜装置1を用いてターゲット4上に成膜する場合を説明したが、成果物を粉体として回収してもよい。

【0043】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0044】
1…成膜装置、2…有機溶媒、4…ターゲット、6…気泡、10…容器、12…排気口、20…アノード電極、30…電源、32…バラスト抵抗。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図5】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図6】
5
【図7】
6