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明細書 :スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-094549 (P2016-094549A)
公開日 平成28年5月26日(2016.5.26)
発明の名称または考案の名称 スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体
国際特許分類 C08B  37/00        (2006.01)
A61L  15/58        (2006.01)
A61L  31/00        (2006.01)
C07K  14/78        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
FI C08B 37/00 Q
A61L 15/06
A61L 31/00 T
C07K 14/78
C12M 1/00 A
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2014-231754 (P2014-231754)
出願日 平成26年11月14日(2014.11.14)
発明者または考案者 【氏名】金子 達雄
【氏名】岡島 麻衣子
【氏名】桶葭 興資
【氏名】小室 明日翔
【氏名】松村 和明
出願人 【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100141472、【弁理士】、【氏名又は名称】赤松 善弘
審査請求 未請求
テーマコード 4B029
4C081
4C090
4H045
Fターム 4B029AA21
4B029BB11
4B029BB15
4B029BB20
4B029CC02
4B029GA08
4B029GB09
4C081AA03
4C081AA12
4C081AA14
4C081BB01
4C081BB04
4C081BB07
4C081CD051
4C081CD121
4C081CD31
4C081CF21
4C081DA02
4C081DB08
4C081EA12
4C090AA02
4C090AA04
4C090BA91
4C090BB11
4C090BB21
4C090BC04
4C090CA07
4C090CA19
4C090DA10
4C090DA22
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA53
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA34
4H045FA81
要約 【課題】細胞を培養させる際の培地として使用したときに細胞に対する接着性に優れ、細胞が伸展しやすく、細胞培養シートをはじめ、例えば、手術の際の臓器などが癒着することを防止するための臓器癒着防止膜、創傷治療用絆創膏、創傷被覆膜、冷却用シート、臓器保存用クッションシート、体液吸い取りシートなどの用途に使用することが期待されるスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体を提供する。
【解決手段】原料としてスイゼンジノリ多糖体およびコラーゲンが用いられてなる複合体であって、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが化学結合によって結合されていることを特徴とする。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
原料としてスイゼンジノリ多糖体およびコラーゲンが用いられてなる複合体であって、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが化学結合によって結合されていることを特徴とするスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体。
【請求項2】
請求項1に記載のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体からなる細胞培養シート。
【請求項3】
スイゼンジノリ多糖体水溶液とコラーゲン水溶液とを混合し、得られた混合溶液を0~40℃の温度で乾燥させることを特徴とする請求項1に記載のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の製造方法。
【請求項4】
前記混合溶液が無機塩を含有する請求項3に記載のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の製造方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、細胞培養シートをはじめ、手術の際の臓器などが癒着することを防止するための臓器癒着防止膜、創傷治療用絆創膏、創傷被覆膜、冷却用シート、臓器保存用クッションシート、体液吸い取りシートなどの用途に使用することが期待されるスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ゲルは、水膨潤性を有し、柔軟であることから、生体関連材料として注目されている。水性ゲルのなかでも体液を吸収しながら膨潤する性質を有する水性ゲルは、手術痕癒着防止膜、創傷を被覆するための膜として使用することが検討されている。
【0003】
接着性および生体適合性に優れ、多量の水溶液を吸収する親水性ゲルのシートとして、線状水溶性ポリエチレンオキシドからなる液体フィルムに高エネルギー線を照射することによって得られる親水性ゲルのシートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、前記親水性ゲルのシートは、引張強度が低いため、例えば、創傷被覆膜などの用途に適しているとはいえない。
【0005】
前記親水性ゲルのシートの欠点を解消し、引張強度に優れたゲルシートとして、ポリエチレンオキシドおよびポリビニルアルコールを含有する水溶液に電離性放射線を照射することによって得られる医用材料用ゲルシートが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開昭63-29649号公報
【特許文献2】特開2000-210375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年、細胞を培養させる際の培地として使用したときに細胞に対する接着性に優れ、細胞が伸展しやすい水膨潤性材料の開発が望まれている。
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、細胞を培養させる際の培地として使用したときに細胞に対する接着性に優れ、細胞が伸展しやすく、細胞培養シートをはじめ、例えば、手術の際の臓器などが癒着することを防止するための臓器癒着防止膜、創傷治療用絆創膏、創傷被覆膜、冷却用シート、臓器保存用クッションシート、体液吸い取りシートなどの用途に使用することが期待されるスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体およびその製造方法ならびに当該スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体からなる細胞培養シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1) 原料としてスイゼンジノリ多糖体およびコラーゲンが用いられてなる複合体であって、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが化学結合によって結合されていることを特徴とするスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体、
(2) 前記(1)に記載のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体からなる細胞培養シート、
(3) スイゼンジノリ多糖体水溶液とコラーゲン水溶液とを混合し、得られた混合溶液を0~40℃の温度で乾燥させることを特徴とする前記(1)に記載のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の製造方法、および
(4) 前記混合溶液が無機塩を含有する前記(3)に記載のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、細胞を培養させる際の培地として使用したときに細胞に対する接着性に優れ、細胞が伸展しやすく、細胞培養シートをはじめ、例えば、手術の際の臓器などが癒着することを防止するための臓器癒着防止膜、創傷治療用絆創膏、創傷被覆膜、冷却用シート、臓器保存用クッションシート、体液吸い取りシートなどの用途に使用することが期待されるスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体およびその製造方法ならびに当該スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体からなる細胞培養シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実験例1において、実施例2で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体、実施例3で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体、比較例1で用いられたスイゼンジノリ多糖体、比較例2で用いられたアテロコラーゲン、および比較例3で用いられたネイティブコラーゲンの各赤外吸収(IR)スペクトルの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】実験例2において、実施例3で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体、実施例5で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体および比較例2で用いられたアテロコラーゲンの各赤外吸収(IR)スペクトルを示すグラフである。
【図3】実験例3において、実施例2で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体、実施例4で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体および比較例3で用いられたネイティブコラーゲンの各赤外吸収(IR)スペクトルを示すグラフである。
【図4】実験例5において、実施例2で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムを用いて細胞を24時間培養させた結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体は、原料としてスイゼンジノリ多糖体およびコラーゲンが用いられており、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが化学結合によって結合されていることを特徴とする。

【0013】
本発明者らは、前記技術的課題に鑑みて、細胞培養シートなどとして好適に使用することができる材料を開発するべく鋭意研究を重ねたところ、原料としてスイゼンジノリ多糖体およびコラーゲンを用い、両者を水溶液の状態で混合し、得られた混合物を乾燥させたとき、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとの静電相互作用が効率よく起こり、両者が化学結合によって結合し、得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体は、細胞に対する接着性に優れ、しかも細胞が伸展しやすいという優れた効果を奏することが見出された。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。

【0014】
本発明のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体は、前記したように、原料としてスイゼンジノリ多糖体およびコラーゲンが用いられた複合体であり、スイゼンジノリ多糖体水溶液とコラーゲン水溶液とを混合し、得られた混合溶液を0~40℃の温度で乾燥させることによって得ることができる。

【0015】
スイゼンジノリ多糖体は、例えば、スイゼンジノリから抽出することによって得られる。スイゼンジノリからスイゼンジノリ多糖体を抽出する方法としては、例えば、国際公開第2008/062574号パンフレットに記載の方法などが挙げられる。より具体的には、スイゼンジノリ多糖体は、例えば、80℃程度の温度の0.1N水酸化ナトリウム水溶液にスイゼンジノリを添加し、数時間程度攪拌することにより、スイゼンジノリから抽出する方法、スイゼンジノリの水分散液を121℃程度の温度で3時間程度加熱することにより、スイゼンジノリから抽出する方法などにより、得ることができる。抽出されたスイゼンジノリ多糖体は、例えば、遠心分離、濾過、アルコール洗浄などによって精製してもよい。また、スイゼンジノリからスイゼンジノリ多糖体を抽出する前に、スイゼンジノリを凍結させた後に融解させ、さらに色素を除去することによって精製してもよい。

【0016】
スイゼンジノリ多糖体は、硫酸化ムラミン酸、ヘキソース、ウロン酸などの単糖を構成単位として含む多糖類である。スイゼンジノリ多糖体を構成する単糖の割合および平均分子量は、スイゼンジノリの採取時期、採取場所などによって異なるが、通常、スイゼンジノリ多糖体は、通常、硫酸化ムラミン酸1~30モル%、ヘキソース30~80モル%およびウロン酸を1~50モル%を含有し、400万~6000万の重量平均分子量を有する。

【0017】
本発明において、スイゼンジノリ多糖体は、コラーゲンとの均一分散性を向上させる観点から、通常、水溶液の状態で用いることが好ましい。

【0018】
スイゼンジノリ多糖体水溶液におけるスイゼンジノリ多糖体の濃度は、コラーゲンと効率よく反応させる観点から、好ましくは0.001(質量/体積)%以上、より好ましくは0.05(質量/体積)%以上、さらに好ましくは0.1(質量/体積)%以上、さらに一層好ましくは0.3(質量/体積)%以上であり、スイゼンジノリ多糖体の分散性を向上させる観点から、好ましくは10(質量/体積)%以下、より好ましくは8(質量/体積)%以下、さらに好ましくは5(質量/体積)%以下である。

【0019】
スイゼンジノリ多糖体水溶液の溶媒は水であるが、本発明の目的が阻害されない範囲内で、水溶性有機溶媒が含まれていてもよい。

【0020】
水溶性有機溶媒としては、例えば、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコールなどの脂肪族1価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、ジエチルエーテルなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンなどのカーボネート、酢酸などのカルボン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水溶性有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。

【0021】
コラーゲンは、例えば、ウシ、ブタ、サメなどの組織から抽出することによって得ることができるものであり、例えば、(株)高研製、製品番号:MIC-00(ウシ真皮由来アテロコラーゲン)などとして商業的に容易に入手することができる。コラーゲンとしては、例えば、I型コラーゲン、ネイティブコラーゲン、アテロコラーゲンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのコラーゲンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。

【0022】
本発明において、コラーゲンは、スイゼンジノリ多糖体との均一分散性を向上させる観点から、通常、水溶液の状態で用いることが好ましい。

【0023】
コラーゲン水溶液におけるコラーゲンの濃度は、スイゼンジノリ多糖体と効率よく反応させる観点から、好ましくは0.001(質量/体積)%以上、より好ましくは0.05(質量/体積)%以上、さらに好ましくは0.1(質量/体積)%以上、さらに一層好ましくは0.3(質量/体積)%以上であり、コラーゲンの分散性を向上させる観点から、好ましくは30(質量/体積)%以下、より好ましくは25(質量/体積)%以下、さらに好ましくは20(質量/体積)%以下である。

【0024】
コラーゲン水溶液の溶媒は水であるが、本発明の目的が阻害されない範囲内で、水溶性有機溶媒が含まれていてもよい。水溶性有機溶媒は、前記スイゼンジノリ多糖体水溶液に用いることができる水溶性有機溶媒と同様のものを例示することができる。

【0025】
スイゼンジノリ多糖体100質量部あたりのコラーゲンの量は、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとを効率よく複合させる観点から、好ましくは5~500質量部、より好ましくは10~400質量部、さらに好ましくは30~300質量部、さらに一層好ましくは50~200質量部である。

【0026】
スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとの混合は、あらかじめ両者を均一な組成となるように混合した後、得られた混合物と水とを混合することによって行なってもよいが、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとを均一に分散させる観点から、スイゼンジノリ多糖体水溶液とコラーゲン水溶液とを混合することによって行なうことが好ましい。

【0027】
スイゼンジノリ多糖体水溶液とコラーゲン水溶液とを混合する際、スイゼンジノリ多糖体水溶液の液温およびコラーゲン水溶液の液温は、いずれも、水溶液の凍結を防止し、コラーゲンの変性を抑制する観点から、好ましくは0~40℃、より好ましくは5~35℃である。

【0028】
なお、スイゼンジノリ多糖体水溶液とコラーゲン水溶液とを混合することによって得られた混合溶液には、無機塩が溶解していてもよい。無機塩を前記混合溶液に溶解させることにより、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の膨潤度および機械的強度を適宜調整することができる。

【0029】
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物;塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウムなどのアルカリ土類金属ハロゲン化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの無機塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの無機塩のなかでは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムが好ましく、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムが好ましく、塩化ナトリウムがさらに好ましい。

【0030】
前記混合溶液における無機塩の濃度は、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の機械的強度を向上させる観点から、好ましくは0.01M以上、より好ましくは0.05M以上、さらに好ましくは0.1M以上であり、前記と同様にスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の機械的強度を向上させる観点から、好ましくは0.4M以下、より好ましくは0.3M以下、さらに好ましくは0.2M以下である。

【0031】
次に、前記で得られた混合溶液を0~40℃の温度で乾燥させる。前記混合溶液の乾燥は、例えば、前記混合溶液を基材に塗布することにより、被膜を形成させ、形成された被膜から水分を除去することによって行なうことができる。

【0032】
前記混合溶液を基材に塗布する際に用いられる基材としては、例えば、ステンレス鋼板などの金属板、ガラス板、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン66などに代表されるポリアミド;ポリメチル(メタ)アクリレートなどに代表されるアクリル樹脂などの樹脂からなる樹脂板、繊維強化樹脂(FRP)板、炭素板などの無機板などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。

【0033】
前記混合溶液を基材に塗布する方法としては、例えば、スプレーコート法、ロールコート法、はけ塗り法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、浸漬(ディッピング)法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。

【0034】
前記混合溶液を基材に塗布することによって形成される被膜の厚さは、特に限定されないが、本発明のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の機械的強度を向上させるとともに塗工性を向上させる観点から、好ましくは30~300μm、より好ましくは50~200μmである。なお、形成された被膜を乾燥させた後、形成された被膜上にさらに前記混合溶液を重ね塗りすることにより、被膜の厚さを大きくすることができる。

【0035】
次に、以上のようにして前記混合溶液から形成された被膜を0~40℃の温度で乾燥させる。一般に、形成された被膜を乾燥させる方法として、加熱乾燥法、赤外線などの電子線照射による乾燥法などが知られている。これに対して、本発明では、これらの乾燥法と相違し、積極的に高温に加熱するのではなく、前記温度で乾燥させるという操作が採られているので、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが化学結合によって結合しているスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体を得ることができる。

【0036】
本発明のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体では、このようにスイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが化学結合によって結合している理由は、確かではないが、おそらく前記混合溶液を乾燥させているときに、被膜の厚さが徐々に減少するにしたがい、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが徐々に錯体を形成することに基づくものと考えられる。したがって、本発明において、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが化学結合によって結合していることは、実質的にスイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが錯体を形成していることを意味する。

【0037】
前記混合溶液を乾燥させる際の当該混合溶液の液温は、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとを化学結合によって結合させるとともに、当該混合溶液の凍結を防止し、コラーゲンの変性を抑制する観点から、0~40℃、好ましくは3~40℃、より好ましくは5~40℃、さらに好ましくは5~35℃に調整する。前記混合溶液を乾燥させる際の雰囲気は、特に限定されないが、通常、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の製造効率の向上の観点から、大気であることが好ましい。また、前記雰囲気は、常圧であってもよく、必要により、減圧または加圧されていてもよい。また、混合溶液を乾燥させるときの雰囲気の相対湿度についても特に限定がなく、通常の相対湿度、例えば、30~80%程度であればよい。

【0038】
前記混合溶液を乾燥させるのに要する時間は、当該混合溶液の液量、乾燥温度などによって異なるので一概には決定することができないことから、前記混合溶液の乾燥は、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが十分に化学結合によって結合するまで行なうことが好ましい。前記混合溶液を乾燥させるのに要する時間は、通常、コラーゲンの析出を防止し、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとを十分に化学結合によって結合させる観点から、好ましくは15時間以上、より好ましくは20時間以上、さらに好ましくは25時間以上、さらに一層好ましくは30時間以上であり、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の製造効率を向上させる観点から、好ましくは100時間以下、より好ましくは80時間以下、さらに好ましくは60時間以下である。

【0039】
前記混合溶液を基材に塗布し、乾燥させることによって本発明のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体を製造した場合には、本発明のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体は、基材から剥離することにより、使用に供することができる。

【0040】
本発明のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の乾燥後の厚さは、当該スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の用途などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、10~100μm程度である。

【0041】
また、本発明のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の大きさは、任意であり、本発明のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の用途に応じて適宜調整することが好ましい。

【0042】
以上のようにしてスイゼンジノリ多糖体水溶液とコラーゲン水溶液とを混合し、得られた混合溶液を0~40℃の温度で乾燥させることにより、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが化学結合によって結合したスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体を得ることができる。スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体において、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが化学結合によって結合していることは、例えば、赤外吸光分析(IR)において、コラーゲンが有するアミド基に由来するピークが波数の大きいほうにシフトしていることによって確認することができる。

【0043】
本発明では、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の原料として、自然界に存在しており、食用として利用されているスイゼンジノリから抽出することによって得られるスイゼンジノリ多糖体および食用として利用されているコラーゲンが用いられているので、本発明のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体は、ヒトをはじめとする動物に対する安全性が高いことから、例えば、細胞培養シート、手術の際の臓器などが癒着することを防止するための臓器癒着防止膜、創傷治療用絆創膏、創傷被覆膜、冷却用シート、臓器保存用クッションシート、体液吸い取りシートなどの用途に使用することが期待されるものである。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
調製例
スイゼンジノリ(Aphanothece sacrum)の原試料を凍結させた後、解凍することにより、スイゼンジノリ細胞体を破壊し、当該スイゼンジノリ細胞体に含まれている蛍光性色素であるフィコビリプロテインなどを溶出させ、水洗することによって除去した。
【実施例】
【0046】
次に、前記で水洗したスイゼンジノリ原試料をイソプロパノールで洗浄することにより、当該スイゼンジノリ原試料に含まれている脂溶性色素、クロロフィル、カロテノイド系色素などを除去した。前記でイソプロパノールを用いて洗浄したスイゼンジノリ試料を0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、当該溶液の液温を80℃に保ちながら5時間撹拌することにより、スイゼンジノリ細胞体を完全に破壊し、かつスイゼンジノリ試料に含まれているタンパク質やDNAなどの生体高分子を分解させ、これらの破壊残渣、解残渣およびスイゼンジノリ多糖体を含む溶液を得た。
【実施例】
【0047】
前記で得られた溶液をガーゼで濾過し、不純物を除去した後、当該溶液のpHがおよそ7~8程度となるまで塩酸で中和した。その後、この溶液にイソプロパノールと水の混合溶媒(イソプロパノールと水の容量比:70:30)を添加し、撹拌することにより、スイゼンジノリ多糖体を精製し、回収した。
【実施例】
【0048】
前記で回収されたスイゼンジノリ多糖体を再度、水中溶解させ、得られたスイゼンジノリ多糖体水溶液をイソプロピルアルコールに添加することによってスイゼンジノリ多糖体を脱水させ、繊維化させた。繊維化されたスイゼンジノリ多糖体の収率は、スイゼンジノリ原試料乾燥重量に対し約50~80質量%であった。
【実施例】
【0049】
以上のようにして精製されたスイゼンジノリ多糖体の重量平均分子量を多角度静的光散乱法(MALLS)にて以下の測定条件で測定した。その結果、当該スイゼンジノリ多糖体の重量平均分子量は、2000万であることが確認された。前記で精製されたスイゼンジノリ多糖体を以下の実施例で用いた。
【実施例】
【0050】
〔測定条件〕
・装置:Wyatt Technology社製、商品名:Dawn Heleos II
・注入時の濃度:0.01質量%
・注入量:100μL
・流速:1mL/min
・溶媒:0.1M硝酸ナトリウム水溶液
・カラム:昭和電工(株)製、商品名:Shodex OHpak SB-807 HQおよび商品名:Shodex OHpak SB-804 HQ
・カラムの温度:40℃
・測定温度:25℃
・レーザーの波長:665.2nm
・測定角:13.0°、20.7°、29.6°、37.5°、44.8°、53.1°、61.1°
・セルのタイプ:溶融シリカ
・RI検出器:Wyatt Technology社製、商品名:Optilab T-rEX、レーザーの波長:658.0nm
【実施例】
【0051】
実施例1
スイゼンジノリ多糖体0.5(質量/体積)%水溶液17mLおよびネイティブコラーゲン〔(株)高研製〕の0.5(質量/体積)%水溶液33mLを十分に撹拌することにより、スイゼンジノリ多糖体およびコラーゲンを含む混合溶液を調製した。前記で得られた混合溶液を表面が平坦なポリプロピレン製のプレート上にスプレーコートした。前記プレートを35℃の雰囲気中で2日間乾燥させることにより、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートを得た。前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートをプレートから剥がし、その厚さを測定したところ、当該スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートの厚さは、約40μmであった。
【実施例】
【0052】
次に、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートを縦5mm、横5mmの正方形状に裁断し、得られた試験片を約15℃の純水中に24時間浸漬した後、浸漬前の質量および浸漬後の質量から式:
〔膨潤度(-)〕=〔(浸漬後の質量-浸漬前の質量)÷(浸漬前の質量)〕
に基づいて膨潤度を求めた。その結果、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートの膨潤度は、6.0であった。
【実施例】
【0053】
また、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートを15℃の純水中に1時間した後、水中から取り出し、偏光顕微鏡で観察したところ、スイゼンジノリ多糖体分子およびコラーゲン分子が微細な配向ドメインがランダムに存在していることが確認された。
【実施例】
【0054】
実施例2
スイゼンジノリ多糖体0.5(質量/体積)%および0.3M塩化ナトリウムを含有する水溶液25mLおよびネイティブコラーゲン〔(株)高研製〕の0.5(質量/体積)%および0.3M塩化ナトリウムを含有する水溶液25mLを十分に撹拌することにより、スイゼンジノリ多糖体およびコラーゲンを含む混合溶液を調製した。前記で得られた混合溶液を表面が平坦なポリプロピレン製のプレート上にスプレーコートした。前記プレートを35℃の雰囲気中で2日間乾燥させることにより、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートを得た。前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートをプレートから剥がし、その厚さを測定したところ、当該スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートの厚さは、約40μmであった。
【実施例】
【0055】
その後、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートを大過剰の水中に1日間浸漬することにより、当該乾燥体に含まれている未反応のスイゼンジノリ多糖体、未反応のコラーゲン、ナトリウムイオンおよび塩素イオンを除去し、35℃の雰囲気中で2日間乾燥させることにより、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムを得た。
【実施例】
【0056】
次に、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムの膨潤度を実施例1と同様にして求めた。その結果、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムの膨潤度は、10であった。
【実施例】
【0057】
また、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムを15℃の純水中に1時間した後、水中から取り出し、得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の水膨潤物を偏光顕微鏡で観察したところ、色調の変化からスイゼンジノリ多糖体分子およびコラーゲン分子が配向していることが確認された。
【実施例】
【0058】
実施例3
スイゼンジノリ多糖体0.5(質量/体積)%および0.3M塩化ナトリウムを含有する水溶液25mLおよびアテロコラーゲン〔(株)高研製〕の0.5(質量/体積)%および0.3M塩化ナトリウムを含有する水溶液25mLを十分に撹拌することにより、スイゼンジノリ多糖体およびコラーゲンを含む混合溶液を調製した。前記で得られた混合溶液を表面が平坦なポリプロピレン製のプレート上にスプレーコートした。前記プレートを35℃の雰囲気中で2日間乾燥させることにより、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートを得た。前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートをプレートから剥がし、その厚さを測定したところ、当該スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートの厚さは、約40μmであった。
【実施例】
【0059】
その後、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートを大過剰の水中に1日間浸漬することにより、当該乾燥体に含まれている未反応のスイゼンジノリ多糖体、未反応のコラーゲン、ナトリウムイオンおよび塩素イオンを除去し、35℃の雰囲気中で2日間乾燥させることにより、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムを得た。
【実施例】
【0060】
次に、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムの膨潤度を実施例1と同様にして求めた。その結果、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムの膨潤度は61であった。
【実施例】
【0061】
実施例4
スイゼンジノリ多糖体0.5(質量/体積)%および0.3M塩化ナトリウムを含有する水溶液33mLおよびネイティブコラーゲン〔(株)高研製〕の0.5(質量/体積)%および0.3M塩化ナトリウムを含有する水溶液17mLを十分に撹拌することにより、スイゼンジノリ多糖体およびコラーゲンを含む混合溶液を調製した。前記で得られた混合溶液を表面が平坦なポリプロピレン製のプレート上にスプレーコートした。前記プレートを35℃の雰囲気中で2日間乾燥させることにより、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートを得た。前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートをプレートから剥がし、その厚さを測定したところ、当該スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートの厚さは、約40μmであった。
【実施例】
【0062】
その後、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートを大過剰の水中に1日間浸漬することにより、当該乾燥体に含まれている未反応のスイゼンジノリ多糖体、未反応のコラーゲン、ナトリウムイオンおよび塩素イオンを除去し、35℃の雰囲気中で2日間乾燥させることにより、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムを得た。
【実施例】
【0063】
次に、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムの膨潤度を実施例1と同様にして求めた。その結果、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムの膨潤度は、3.1×102であった。
【実施例】
【0064】
また、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムを15℃の純水中に1時間した後、水中から取り出し、偏光顕微鏡で観察したところ、色調の変化からスイゼンジノリ多糖体分子およびコラーゲン分子が配向していることが確認された。
【実施例】
【0065】
実施例5
スイゼンジノリ多糖体0.5(質量/体積)%および0.3M塩化ナトリウムを含有する水溶液33mLおよびアテロコラーゲン〔(株)高研製〕の0.5(質量/体積)%および0.3M塩化ナトリウムを含有する水溶液17mLを十分に撹拌することにより、スイゼンジノリ多糖体およびコラーゲンを含む混合溶液を調製した。前記で得られた混合溶液を表面が平坦なポリプロピレン製のプレート上にスプレーコートした。前記プレートを35℃の雰囲気中で2日間乾燥させることにより、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートを得た。前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートをプレートから剥がし、その厚さを測定したところ、当該スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートの厚さは、約40μmであった。
【実施例】
【0066】
その後、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体シートを大過剰の水中に1日間浸漬することにより、当該乾燥体に含まれている未反応のスイゼンジノリ多糖体、未反応のコラーゲン、ナトリウムイオンおよび塩素イオンを除去し、35℃の雰囲気中で2日間乾燥させることにより、スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムを得た。
【実施例】
【0067】
次に、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムの膨潤度を実施例1と同様にして求めた。その結果、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムの膨潤度は、3.0×102であった。
【実施例】
【0068】
比較例1
スイゼンジノリ多糖体0.5(質量/体積)%を含有する水溶液50mLを表面が平坦なポリプロピレン製のプレート上にスプレーコートした。前記プレートを35℃の雰囲気中で2日間乾燥させることにより、スイゼンジノリ多糖体フィルムを得た。
【実施例】
【0069】
比較例2
アテロコラーゲン〔(株)高研製〕の0.5(質量/体積)%を含有する水溶液50mLを表面が平坦なポリプロピレン製のプレート上にスプレーコートした。前記プレートを35℃の雰囲気中で2日間乾燥させることにより、アテロコラーゲンフィルムを得た。
【実施例】
【0070】
比較例3
ネイティブコラーゲン〔(株)高研製〕の0.5(質量/体積)%を含有する水溶液50mLを表面が平坦なポリプロピレン製のプレート上にスプレーコートした。前記プレートを35℃の雰囲気中で2日間乾燥させることにより、ネイティブコラーゲンフィルムを得た。
【実施例】
【0071】
実験例1
実施例2で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体、実施例3で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体、比較例1で用いられたスイゼンジノリ多糖体、比較例2で用いられたアテロコラーゲン、および比較例3で用いられたネイティブコラーゲンの赤外吸収(IR)スペクトルを赤外吸収スペクトル装置(パーキンエルマー社製、商品名:Spectrum One)を用いて調べた。その結果を図1に示す。
【実施例】
【0072】
図1に示された結果から、実施例2および3で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体は、比較例1で用いられたスイゼンジノリ多糖体、比較例2で用いられたアテロコラーゲンおよび比較例3で用いられたネイティブコラーゲンと対比して、アミドIIIに由来する1237cm-1のピークが減少および消失していないことから、コラーゲンが変性していないことが確認された。
【実施例】
【0073】
実験例2
実施例3で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体、実施例5で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体および比較例2で用いられたアテロコラーゲンの赤外吸収(IR)スペクトルを赤外吸収スペクトル装置(パーキンエルマー社製、商品名:Spectrum One)を用いて調べた。その結果を図2に示す。
【実施例】
【0074】
図2に示された結果から、比較例1で用いられたスイゼンジノリ多糖体のアミノ基に由来する波数1537cm-1のピークが、実施例3で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体および実施例5で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体では、いずれも波数1546cm-1にシフトしていることから、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが錯体(化学的結合)を形成していることが推察される。
【実施例】
【0075】
実験例3
実施例2で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体、実施例4で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体および比較例3で用いられたネイティブコラーゲンの赤外吸収(IR)スペクトルを赤外吸収スペクトル装置(パーキンエルマー社製、商品名:Spectrum One)を用いて調べた。その結果を図3に示す。
【実施例】
【0076】
図3に示された結果から、実施例2で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体および実施例4で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体では、いずれも、比較例3で用いられたスイゼンジノリ多糖体のアミノ基に由来する波数1537cm-1のピークが波数1545cm-1にシフトしていることから、スイゼンジノリ多糖体とコラーゲンとが錯体(化学的結合)を形成していることが推察される。
【実施例】
【0077】
実験例4
実施例2で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムおよび実施例5で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムの物性として、異方性、圧縮弾性率および架橋点間分子量を以下の方法に基づいて調べた。その結果、実施例2で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムの異方性は9.3であり、圧縮弾性率は108kPaであり、架橋点間分子量は7.5g/molであり、実施例4で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムの異方性は46であり、圧縮弾性率は5kPaであり、架橋点間分子量は29.0g/molであった。
【実施例】
【0078】
〔異方性の測定方法〕
正立型生物顕微鏡〔オリンパス(株)製〕の光路に2枚の偏光子を互いに偏光方向が直交するようにして挿入し、その間にサンプル(スイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体の水膨潤物)をエッジ部分が光路に平行になるように設置した後、さらに波長530nmの偏光カラーフィルターを鋭敏色板としてサンプルの上方に挿入した。
【実施例】
【0079】
次に、鋭敏色板の偏光方向を前記偏光子に対して45°の方向になるように調整した後、白色光を下方から照射することにより、上方からサンプルの色を観察した。
【実施例】
【0080】
〔圧縮弾性率の測定方法〕
各フィルムを縦約5mm、横約5mmの正方形状に裁断することにより、試験片を作製した。得られた試験片を約15℃の純水中に24時間浸漬した後、試験片の圧縮強度を圧縮試験機(INSTRON社製、型番:3365)で測定し、変位を縦軸に圧縮応力を横軸にとることによって描かれたグラフの傾きを求めることにより圧縮弾性率を算出した。
【実施例】
【0081】
〔架橋点間分子量の計算方法〕
架橋点間分子量は、式:
[架橋点間分子量(g/mol)]
=3×[水の密度(103kg/m3)/膨潤度)]
×[気体定数(8.31m2kg・s-2・K-1・mol-1)]
×[水温(300K)/圧縮弾性率(kPa)]
に基づいて求めた。
【実施例】
【0082】
実験例5
実施例2で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体フィルムを70%エタノール水溶液に24時間浸漬することにより、滅菌処理を行なった。その後、当該フィルムを滅菌リン酸緩衝液(PBS)で洗浄し、10%ウシ胎児県政含有ダルベッコ改変イーグル基礎培地(DMEM)に24時間浸漬し、膨潤ゲルとした。
【実施例】
【0083】
前記で得られた膨潤ゲルを15mmポンチで打ち抜き、24wellカルチャープレート〔旭硝子(株)製、IWAKIブランドマイクロプレート、品種コード:3820-024〕に静置し、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)500μLを添加した。
【実施例】
【0084】
細胞接着試験に使用した細胞は、骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(MSC)(独立行政法人理化学研究所、理化学研究所バイオリソースセンターから入手)を用いた。なお、骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(MSC)は、継代数3のものを用いた。
【実施例】
【0085】
次に、50000/mLの密度に調製した骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(MSC)懸濁液1mLを各wellに整地されたゲル上に播種し、24時間経過後、細胞の接着および伸展を観察した。なお、陽性対象として、24wellプレートの未処理wellに同数の骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(MSC)を播種し、観察した。
【実施例】
【0086】
細胞の接着および伸展は、位相差顕微鏡および染色用色素〔(株)同仁化学研究所製、商品名:Calcei-AM〕で染色された生細胞の蛍光像を蛍光顕微鏡で観察することによって評価した。その結果を図4に示す。
【実施例】
【0087】
前記で培養された細胞は、いずれも生きており、しかも良好に培地の膨潤ゲルに接着していた。また、dish 1およびdish 2で培養された細胞の写真を図4に示すが、図4の白色で示されているように、細胞が培地の膨潤ゲルで伸展していることがわかる。さらに、細胞は、膨潤ゲルの表面に沿って均一に接着していることが確認された。
【実施例】
【0088】
以上の結果から、前記で得られたスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体は、細胞に対する親和性に優れているのみならず、細胞に対する接着性にも優れ、さらに細胞が伸展しやすいという優れた性質を有するものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のスイゼンジノリ多糖体-コラーゲン複合体は、細胞を培養させる際の培地として使用したときに細胞に対する接着性に優れ、細胞が伸展しやすいことから、細胞培養シートをはじめ、例えば、手術の際の臓器などが癒着することを防止するための臓器癒着防止膜、創傷治療用絆創膏、創傷被覆膜、冷却用シート、臓器保存用クッションシート、体液吸い取りシートなどの種々の用途に使用することが期待されるものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3