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明細書 :バインダ、バインダを含有する電極、および電気化学デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-100094 (P2016-100094A)
公開日 平成28年5月30日(2016.5.30)
発明の名称または考案の名称 バインダ、バインダを含有する電極、および電気化学デバイス
国際特許分類 H01M   4/62        (2006.01)
H01M   4/58        (2010.01)
H01M   4/36        (2006.01)
H01M  10/0568      (2010.01)
H01M  10/052       (2010.01)
H01G  11/38        (2013.01)
H01G  11/62        (2013.01)
H01G  11/42        (2013.01)
FI H01M 4/62 Z
H01M 4/58
H01M 4/36 B
H01M 10/0568
H01M 10/052
H01G 11/38
H01G 11/62
H01G 11/42
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2014-234021 (P2014-234021)
出願日 平成26年11月18日(2014.11.18)
発明者または考案者 【氏名】山縣 雅紀
【氏名】石川 正司
【氏名】高橋 卓矢
【氏名】松井 由紀子
出願人 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査請求 未請求
テーマコード 5E078
5H029
5H050
Fターム 5E078AA01
5E078AA02
5E078AA03
5E078AA05
5E078AA10
5E078AA11
5E078AA14
5E078AA15
5E078AB06
5E078BA04
5E078BA11
5E078BA12
5E078BA18
5E078BA24
5E078BA26
5E078BA41
5E078BA42
5E078BA44
5E078BA47
5E078BA53
5E078BA60
5E078BB09
5E078BB14
5E078BB30
5E078BB33
5E078BB38
5E078DA02
5E078DA06
5E078DA13
5E078FA02
5E078FA13
5E078ZA12
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM09
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ07
5H029DJ08
5H029DJ09
5H029EJ01
5H029EJ04
5H029EJ12
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA17
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA04
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA02
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA10
5H050EA22
5H050EA23
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
要約 【課題】電極合材の均一性が得られ、活物質および電解液との親和性が高く、かつ接着力が十分であって電極の作製が容易となるバインダ、サイクル特性が向上した電極、電気抵抗が軽減され、出力特性が向上した、高性能かつ安全性に優れた電気化学デバイスを提供する。
【解決手段】少なくとも、電極の材料である活物質と、集電体と、導電助剤とを連結させる、電気化学反応を伴うデバイスに用いられるバインダは、負に帯電した若しくは分極した官能基を有する高分子化合物と、正に帯電した低分子化合物または陽イオンとを少なくとも含む。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
硫黄化合物を含む電気化学デバイス用電極に用いられるバインダであって、
負に帯電した若しくは分極した官能基を有する高分子化合物と、
プロトン、リチウムイオン、2価以上の多価陽イオン、および正に帯電した低分子化合物からなる群より選ばれる、1種または2種以上の陽イオンおよび/または化合物と、を含むことを特徴とするバインダ。
【請求項2】
上記高分子化合物が、酸性官能基を有する高分子化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載のバインダ。
【請求項3】
上記酸性官能基を有する高分子化合物が、カルボキシル基を有する高分子化合物を含有することを特徴とする請求項2に記載のバインダ。
【請求項4】
上記カルボキシル基を有する高分子化合物が、ウロン酸が重合した構造を有する高分子化合物であることを特徴とする請求項3に記載のバインダ。
【請求項5】
上記ウロン酸が重合した構造を有する高分子化合物が、アルギン酸およびアルギン酸塩を含有することを特徴とする請求項4に記載のバインダ。
【請求項6】
上記2価以上の多価陽イオンが、多価金属イオンであることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載のバインダ。
【請求項7】
上記多価金属イオンが、マグネシウムイオンであることを特徴とする請求項6に記載のバインダ。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のバインダを含有することを特徴とする電気化学デバイス用電極。
【請求項9】
活物質が硫黄-炭素複合体であることを特徴とする請求項8に記載の電気化学デバイス用電極。
【請求項10】
請求項8または9に記載の電気化学デバイス用電極を有することを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項11】
イオン液体電解液を含有することを特徴とする請求項10に記載の電気化学デバイス。
【請求項12】
上記イオン液体電解液が、ビス(フルオロスルフォニル)イミドを含有することを特徴とする請求項11に記載の電気化学デバイス。
【請求項13】
上記イオン液体電解液が、リチウム溶媒和錯体を含有する電解液であることを特徴とする請求項11に記載の電気化学デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学反応を伴うデバイスに用いられるバインダ、当該バインダを含有する電極、および上記電極を有する電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の携帯端末機器、電気自動車等に搭載される電気化学デバイス(例えば、電気化学キャパシタ、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスが包含される)が開発されている。これら電気化学デバイスは、機器の小型化や軽量化を可能にし、充放電効率がよく、高いエネルギー密度を有しているため、例えば、携帯端末機器やノート型パソコン、家電機器、さらにはハイブリッド自動車や電気自動車の電源として使用されている。また、太陽光発電や風力発電等の自然エネルギーシステムと組み合わせた、発電した電力の貯蔵用蓄電デバイスとしての用途も新たに注目されている。
【0003】
例えば特許文献1に記載されているように、電気化学デバイスであるリチウム硫黄電池における硫黄正極は、一般的に活物質である、導通パスを担う炭素材料および導電助剤、並びに、バインダおよび集電体から構成されている。リチウム硫黄電池の特性は、硫黄正極の構成に大きく依存し、具体的には、当該硫黄電極を構成する各構成の材料そのものの特性と、各構成の組み合わせ方とに大きく影響を受ける。特に、バインダは、電極合材内の活物質である炭素材料、導電助剤および集電体を互いに接着する役割を担い、電気化学デバイスのサイクル特性や出力特性を左右する材料である。
【0004】
ここで、バインダは、電極内にて、その存在比が少ないこと、活物質や導電助剤、集電体、電解液との親和性に優れ、電極層の電気抵抗を最小限にできることが望まれる。ところが、硫黄正極の低い導電性は、電気化学デバイスの出力特性には不利である。
【0005】
従来技術におけるバインダは、非水系バインダおよび水系バインダの2種類に大きく分類される。非水系バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)(非特許文献1等)、ポリエチレンオキシド(PEO)(非特許文献2)、ポリビニルアルコール(PVA)(非特許文献3)、ブタジエン含有共重合体(特許文献2,3)等が挙げられる。水系バインダとしては、スチレン-ブタジエンラバー(SBR)とそのカルボキシメチルセルロース(Na塩、CMC)との併用物(非特許文献1,4等)等が挙げられる。水系バインダは、非常に安定したサイクル特性を示す。また、水系バインダとして天然高分子が有効であることが明らかとなっており、ゼラチン(非特許文献5等)、アルギン酸ナトリウム塩(非特許文献6等)等が報告されている。
【0006】
アルギン酸系バインダに関して、本発明者らは、キャパシタ用電極(特許文献4、非特許文献7)、並びに、リチウムイオン二次電池用負極(特許文献4)が適用可能であることを見出している。特に、リチウムを利用する蓄電デバイス(電気化学デバイス)にアルギン酸系バインダを適用する場合には、当該アルギン酸系バインダとしてアルギン酸ナトリウム塩を用いると、ナトリウムイオンと電解液中のリチウムイオンとの交換反応等が起こるため、より安定な作動を実現するには、アルギン酸マグネシウム塩を用いることが好ましいことが分かっている(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】米国特許出願第3,043,896号公報
【特許文献2】特開2004-047460号公報
【特許文献3】特開2004-047462号公報
【特許文献4】特開2013-161832号公報
【0008】

【非特許文献1】M. He他,J. Phys. Chem. C, 115, 15703 (2011)
【非特許文献2】J. Sun, Electrochim. Acta, 53, 7084 (2008)
【非特許文献3】K. Dokko他,J. Electrochem. Soc, 160, A1304 (2013)
【非特許文献4】K. Zhao他,J. Korean Electrochem. Soc, 13, 169 (2010)
【非特許文献5】Y. Wang他,Electrochem. Acta, 54, 4062 (2009)
【非特許文献6】W. Bao他,J. Energy Chem., 22, 790 (2013)
【非特許文献7】M. Yamagata et al.,RSC Advances,Vol. 3, pp. 1037-1040 (2013)
【非特許文献8】K. Soeda他,ECS Trans,53, 93 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非水系バインダであるPTFEやPVdF等のフッ素化ポリマーは、活物質との間の分子間力が小さいために、十分な分散性および接着性が得られない場合が多い。また、電解液と接触すると膨潤するため、電極構造の崩壊による電極の内部抵抗の増加等が懸念される。一方、水系バインダであるSBRとCMCとの併用物は、SBRが主鎖に二重結合を有しているため、高温等の環境下において電極が酸化雰囲気に曝されると劣化が生じるという問題点を有している。さらに、上記併用物は、電解液と接触すると膨潤するため、集電体から活物質が剥離して脱落し、サイクル特性や出力特性が低下する原因となる。電極層におけるバインダの含有量を増加させることによって当該電極層の強度を確保することは可能であるものの、この場合には、電極の電気抵抗が増加する結果となり、特に充放電時の形状変化が大きい活物質ではその活性点が失われてしまう。
【0010】
また、これらバインダに共通する課題として、硫黄の低電子導電性から、硫黄正極は殆どの場合において、出力特性に問題点を有している。尚、アルギン酸ナトリウム塩をバインダとして用いた場合には、電極の内部抵抗を低減する効果があるため、比較的高い出力が期待できるものの、ナトリウムイオンと電解液中のリチウムイオンとの交換反応等が起こるため、結果的に電極の内部抵抗の増加、およびサイクル特性の低下を引き起こす。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その主たる目的は、電極合材の均一性が得られ、活物質および電解液との親和性が高く、かつ接着力が十分であって電極の作製が容易となるバインダ、当該バインダを含有する、サイクル特性が向上した電極、および上記電極を有する、電気抵抗が軽減され、出力特性が向上した、高性能かつ安全性に優れた電池等の電気化学デバイスを提供することにある。また、天然高分子を用いることによる環境負荷の低減およびコストの削減を実現することができるバインダ、電極、電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、負に帯電した若しくは分極した官能基を有する高分子化合物と、正に帯電した低分子化合物または陽イオンとを少なくとも含むバインダを用いることによって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係るバインダは、硫黄化合物を含む電気化学デバイス用電極に用いられるバインダであって、負に帯電した若しくは分極した官能基を有する高分子化合物と、プロトン、リチウムイオン、2価以上の多価陽イオン、および正に帯電した低分子化合物からなる群より選ばれる、1種または2種以上の陽イオンおよび/または化合物と、を含むことを特徴としている。
【0014】
上記バインダは、上記高分子化合物が、酸性官能基を有する高分子化合物を含有することがより好ましい。また、上記酸性官能基を有する高分子化合物が、カルボキシル基を有する高分子化合物を含有することがより好ましい。また、上記カルボキシル基を有する高分子化合物が、ウロン酸が重合した構造を有する高分子化合物であることがより好ましい。さらに、上記ウロン酸が重合した構造を有する高分子化合物が、アルギン酸およびアルギン酸塩を含有することがより好ましい。
【0015】
上記バインダは、上記2価以上の多価陽イオンが、多価金属イオンであることがより好ましい。また、上記多価金属イオンが、マグネシウムイオンであることがより好ましい。
【0016】
また、本発明に係る電気化学デバイス用電極は、上記バインダを含有することを特徴としている。さらに、上記電気化学デバイス用電極は、活物質が硫黄-炭素複合体であることがより好ましい。
【0017】
本発明に係る電気化学デバイスは、上記電気化学デバイス用電極を有することを特徴としている。上記電気化学デバイスは、イオン液体電解液を含有することがより好ましい。また、上記イオン液体電解液が、ビス(フルオロスルフォニル)イミドを含有することがより好ましい。さらに、上記イオン液体電解液が、リチウム溶媒和錯体を含有する電解液であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るバインダは、硫黄化合物を含む電気化学デバイス用電極に用いられるバインダであって、負に帯電した若しくは分極した官能基を有する高分子化合物と、プロトン、リチウムイオン、2価以上の多価陽イオン、および正に帯電した低分子化合物からなる群より選ばれる、1種または2種以上の陽イオンおよび/または化合物と、を含んでいる。
【0019】
それゆえ、電極合材の均一性が得られ、活物質および電解液との親和性が高く、かつ接着力が十分であって電極の作製が容易となるバインダ、当該バインダを含有する、サイクル特性が向上した電極、および上記電極を有する、電気抵抗が軽減され、出力特性が向上した、高性能かつ製造プロセスにおける環境負荷の軽減が可能であり、安全性に優れた電池等の電気化学デバイスを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1,2,3で構築した評価用2極式ハーフセルの正極の充放電サイクル特性を示すグラフである。
【図2】(a)は、実施例1で構築した評価用2極式ハーフセルの正極の充放電曲線を示すグラフであり、(b)は、比較例1で構築した評価用2極式ハーフセルの正極の充放電曲線を示すグラフである。
【図3】実施例1および比較例1で構築した評価用2極式ハーフセルの正極の充放電サイクル特性を示すグラフである。
【図4】実施例1および比較例1で構築した評価用2極式ハーフセルの正極の出力特性を示すグラフである。
【図5】実施例4および比較例2で構築した評価用2極式ハーフセルの正極の出力特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。尚、本出願において、「A~B」とは、「A以上、B以下」であることを示している。また、特に断りの無い限り、「質量」および「重量」、「質量%」および「重量%」は、同義語として扱う。

【0022】
本発明に係るバインダは、硫黄化合物を含む電気化学デバイス用電極に用いられるバインダであって、負に帯電した若しくは分極した官能基を有する高分子化合物と、プロトン、リチウムイオン、2価以上の多価陽イオン、および正に帯電した低分子化合物からなる群より選ばれる、1種または2種以上の陽イオンおよび/または化合物と、を含む構成である。また、本発明に係る電気化学デバイス用電極は、上記バインダを含有する構成である。以下、電極を構成する部材を順に説明する。

【0023】
[活物質]
電極の材料であり、電気エネルギーの蓄電に直接係わる活物質としては、正極の材料である正極活物質および負極の材料である負極活物質が挙げられる。

【0024】
上記活物質は、例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム等の陽イオンの挿入または脱離が可能な物質であればよく、特に限定されるものではない。また、上記活物質としては、硫黄-炭素複合体も好適に用いることができる。

【0025】
上記正極活物質としては、例えば、硫黄電池用の正極活物質として、硫黄、Lix2で表される硫化リチウム化合物、Nay2で表される硫化ナトリウム化合物、Mgz2で表される硫化マグネシウム化合物等の硫化物が挙げられる。この場合、硫黄或いは硫化物の低い電子伝導性のため、電子伝導性の高い物質と組み合わせることも可能である。

【0026】
上記電子伝導性の高い物質として、例えば、活性炭等のミクロ多孔性カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、カーボンブラック、カーボンウイスカー、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンファイバー等が挙げられる。

【0027】
上記「硫黄-炭素複合体」としては、例えば、上記硫化物と、上記電子伝導性の高い物質との複合体を挙げることができる。上記複合体は、例えば上記硫化物と、上記電子伝導性の高い物質とを混合することによって製造することができる。

【0028】
また、硫黄-炭素複合体以外の正極活物質としては、TiS2、MoS2、NbSe3等の金属カルコゲン化物;ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子化合物;等が挙げられる。また、CuO、Cu2O、MnO2、MoO3、V25、CrO3、Fe23、Ni23、CoO3等の遷移金属酸化物;LiXCoO2、LiXNiO2、LiXMn24、LiNi1/3Mn1/3Co1/32、LiFePO4等のリチウムと遷移金属とを含むリチウム複合酸化物、また、これらのナトリウム、マグネシウム等の1族或いは2族元素置換化合物等を挙げることもできる。さらには、これらと炭素系材料との複合活物質でも構わない。これら活物質は、本発明に係るバインダと組み合わせて用いるのに好適な活物質である。

【0029】
上記負極活物質としては、例えば、硫黄電池用の負極活物質として、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素等の炭素材料が挙げられる。また、金属リチウムや金属ナトリウム、金属マグネシウム等の1族および2族元素金属、スズ化合物等の金属材料、ケイ素およびケイ素化合物、チタン酸化物などの金属酸化物、またこれらの1族および2族元素との合金或いは1族および2族元素を含む化合物、さらには、これらの結晶性化合物および非晶質化合物;導電性ポリマー等も挙げられる。

【0030】
[集電体]
集電体としては、構成された電池等の電気化学デバイスにおいて、その性能に悪影響を及ぼさない電子伝導体であればよく、特に限定されるものではない。集電体としては、具体的には、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等が挙げられる。また、接着性や導電性、耐酸化性等の性能を向上させることを目的として、アルミニウム等の表面を、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀等で処理してなる集電体を用いてもよい。

【0031】
さらに、集電体の表面を酸化処理することも可能である。また、集電体の形状は、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチまたはエキスパンドされた形状であってもよく、或いは、ラス体、多孔質体、発泡体等の成形体であってもよい。厚さは特に限定されるものではないが、通常、1μm以上、100μm以下の範囲の集電体が用いられる。

【0032】
尚、本発明に係るバインダを含有する電極を正極として有する電池等の電気化学デバイスにおいて、負極用集電体は、特に限定されるものではなく、公知の負極用集電体を用いることができる。

【0033】
[導電助剤]
活物質間の導通パスを担う導電助剤は、構成された電池等の電気化学デバイスにおいて、その性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であればよく、特に限定されるものではない。導電助剤としては、通常、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックが使用される。また、導電助剤として、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンウイスカー、炭素繊維粉末、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金等)粉末、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を使用してもよい。導電助剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。

【0034】
[バインダ]
本発明に係るバインダは、硫黄化合物を含む電気化学デバイス用電極に用いられ、少なくとも、活物質と、集電体と、導電助剤とを連結させる機能を有している。そして、上記バインダは、負に帯電した若しくは分極した官能基を有する高分子化合物と、プロトン、リチウムイオン、2価以上の多価陽イオン、および正に帯電した低分子化合物からなる群より選ばれる、1種または2種以上の陽イオンおよび/または化合物と、を含んでいる。

【0035】
本発明に係るバインダは結着剤であり、接着性に優れるため、少なくとも、活物質と、集電体と、導電助剤とを、集電体に良好に接着させる(連結させる)ことができる。

【0036】
負に帯電した若しくは分極した官能基を有する高分子化合物は、天然高分子であってもよく、合成高分子であってもよい。負に帯電した若しくは分極した官能基としては、具体的には、例えば、カルボキシル基、カルボニル基、スルホ基、スルホン酸基、スルホニル基、ニトロ基、硝酸基、亜硝酸基、リン酸基、フェノール性ヒドロキシル基等の酸性官能基が挙げられる。高分子化合物は、上記官能基を1種類のみ有していてもよく、2種類以上有していてもよい。

【0037】
上記高分子化合物は、上記官能基を有するモノマーを含むモノマー組成物(単量体成分)を重合(または共重合)することによって得ることができる。上記官能基を有するモノマーとしては、具体的には、例えば、アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボン酸ビニル、ビニルスルホン酸等が挙げられる。上記モノマーは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、上記モノマー組成物は、本発明に係るバインダとしての機能を損なわない範囲で、上記官能基を有しないモノマーを共重合成分として含んでいてもよい。

【0038】
また、上記高分子化合物として、ペクチン、ポリ乳酸、ナフィオン(登録商標;炭素およびフッ素からなる疎水性フッ素樹脂骨格(主鎖)とスルホン酸基を有するパーフルオロ側鎖とから構成されるパーフルオロカーボン)、スチレン-スルホン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体等の、プロトンを有する極性官能基を有するモノマーの重合体(または共重合体)、或いは、プロトンを有する極性官能基が付加されたポリマー等が挙げられる。

【0039】
上記高分子化合物の中でも、上記酸性官能基を有する高分子化合物がより好ましい。また。上記酸性官能基を有する高分子化合物の中でも、カルボキシル基を有する高分子化合物がより好ましい。さらに、上記カルボキシル基を有する高分子化合物の中でも、ウロン酸が重合した構造を有する高分子化合物がより好ましい。ウロン酸が重合した構造を有する高分子化合物としては、例えばアルギン酸を挙げることができる。また、高分子化合物は、本発明に係るバインダとしての機能を損なわない範囲で、上記官能基を有しない高分子化合物を含んでいてもよい。

【0040】
上記正に帯電した低分子化合物としては、例えば、アンモニウムイオン、尿素やアルキルジアミン、フェニレンジアミン等のジアミンをベースとした低分子化合物およびその酸誘導体;スルホニウムイオン、アルキルジスルホニウムやフェニレンジスルホニウム等のジスルホニウムをベースとした低分子化合物或いはその酸誘導体;ホスホニウムイオン、アルキルジホスホニウム等のジホスホニウムをベースとした低分子化合物或いはその誘導体;アミン、スルホニウム、ホスホニウム等の酸性官能基を少なくとも2つ以上含む低分子化合物或いはその誘導体等が挙げられる。

【0041】
上記陽イオンとしては、プロトン、リチウムイオン、2価以上の多価陽イオン、例えば、二価以上の金属イオン(マグネシウムイオン、アルカリ土類金属イオン、鉄(III) イオンやマンガン(II)イオン等の遷移金属イオン等)等の陽イオンが挙げられる。上記陽イオンのうち、多価金属イオン(二価以上の金属イオン)がより好ましい。また、上記多価金属イオンのうち、マグネシウムイオンがより好ましい。

【0042】
上記高分子化合物と、プロトン、リチウムイオン、2価以上の多価陽イオン、および正に帯電した低分子化合物からなる群より選ばれる、1種または2種以上の陽イオンおよび/または化合物と、の組み合わせとしては、酸性官能基を有する高分子化合物と、プロトン、リチウムイオンおよび2価以上の多価陽イオンからなる群より選ばれる1種または2種以上の陽イオンとの組み合わせ、カルボキシル基を有する高分子化合物と上記陽イオンとの組み合わせ、ウロン酸が重合した構造を有する高分子化合物と上記陽イオンとの組み合わせ、アルギン酸およびアルギン酸塩を含有する高分子化合物と上記陽イオンとの組み合わせが、後述したものほどより好ましい。上記陽イオンとしては、上述したようにマグネシウムイオンが最も好ましい。

【0043】
一つの陽イオンは、二つ以上の上記官能基と相互作用するため、高分子化合物は、見かけ上、架橋構造を形成する。

【0044】
即ち、本発明に係るバインダでは、「プロトン、リチウムイオン、2価以上の多価陽イオン、および正に帯電した低分子化合物からなる群より選ばれる、1種または2種以上の陽イオンおよび/または化合物」(以下、本項において「陽イオンおよび/または化合物」と称する)が、二つ以上の、負に帯電した若しくは分極した官能基と相互作用し、見かけ上、高分子化合物が架橋構造を形成する。特に、マグネシウムイオン等の二価かつ表面電荷密度の大きい陽イオンの場合には、二つ以上の、負に帯電した若しくは分極した官能基に作用し、分子内或いは分子間で見かけ上、架橋構造を形成する。これにより、電極の構造が維持される。

【0045】
上記高分子化合物と、上記陽イオンおよび/または化合物との組み合わせとしては、多糖類系の天然高分子であるアルギン酸マグネシウムが最適である。バインダとしてアルギン酸マグネシウムを含有する電極合材を用いてなる電極を電気化学デバイスの正極として用いることにより、当該正極と電解液との高い親和性を利用して、電極のサイクル特性をより一層向上させることができ、電気化学デバイスの出力特性をより一層向上させることができる。具体的には、多糖類系の天然高分子であるアルギン酸マグネシウムは安価であり、環境負荷が低減され、アルギン酸マグネシウム単体でバインダとして利用することが可能であり、また、均一な電極合材を作製することができるので、均一な電極を容易にかつ低コストで製造することができる。そして、アルギン酸の活物質、電解液および集電体に対する高い親和性により、従来のバインダでは達成することができない高いサイクル特性(安定性)および出力特性を有する電気化学デバイスを製造することができる。

【0046】
そして、本発明に係る電気化学デバイスとしての電池が例えば硫黄電池(リチウム硫黄電池および非リチウム硫黄電池)である場合には、上記陽イオンおよび/または化合物は、充放電過程において溶出する硫黄成分であるポリスルフィドと相互作用し、トラップ効果によって、当該ポリスルフィドの電解液への溶出を防止する。このようなメカニズムによって、本発明に係るバインダは、電極における含有量が少なくても高い電極強度を確保することができ、かつ、電解液等との高い親和性を有することで電極の高い出力特性等を実現することができる。以上のメカニズムに基づいていれば、上記バインダは、負に帯電した若しくは分極した官能基を有する高分子化合物と、上記陽イオンおよび/または化合物と、を含んでいる限り、その構成は特に限定されるものではない。

【0047】
上記バインダは、本発明に係るバインダとしての機能を損なわない範囲で、公知のバインダ成分を含んでいてもよい。即ち、本発明に係るバインダは、負に帯電した若しくは分極した官能基を有する高分子化合物、および、上記陽イオンおよび/または化合物を、主成分として含有していればよい。具体的には、バインダの総重量を100重量%としたとき、バインダにおける上記化合物(高分子化合物と、上記陽イオンおよび/または化合物との合計)の含有率は、50重量%を超え、100重量%以下であればよい。上記含有率は、70重量%以上、100重量%以下であることが好ましく、75重量%以上、100重量%以下であることがより好ましく、80重量%以上、100重量%以下であることがさらに好ましく、85重量%以上、100重量%以下であることが特に好ましく、90重量%以上、100重量%以下であることが最も好ましい。上記含有率が50重量%以下である場合には、電気化学デバイスの出力が低下する。

【0048】
バインダにおける上記化合物の含有率が100重量%未満の場合において、上記化合物以外の公知のバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF);PVdFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMV)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体等のPVdF共重合体;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂;スチレン-ブタジエンラバー(SBR)、エチレン-プロピレンゴム(EPDM)、スチレン-アクリロニトリル共重合体等のポリマー;カルボキシメチルセルロース(CMC)等の多糖類;ゼラチン等のタンパク質類;等が挙げられる。また、これらの誘導体でも構わない。上記公知のバインダは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。

【0049】
本発明に係るバインダは、電極を構成する材料(活物質、集電体、導電助剤)に対する高い親和性を有するため、硫黄電池に限らず、各種電気化学デバイスに好適に用いることができる。

【0050】
また、本発明に係るバインダは、活物質、集電体、導電助剤、および電解液に対する高い親和性を有するため、後述する実施例に示すように、上記活物質を使用した電極のサイクル特性、および電気化学デバイスの容量発現特性を飛躍的に向上させることができる。また、本発明に係るバインダは、活物質および導電助剤との親和性に優れるため、電気化学デバイスの電極における各材料間の界面抵抗を軽減することもできる。さらに、良好な充放電特性を高電圧および高電位で実現することが可能である。

【0051】
従って、本発明に係るバインダを用いることにより、硫黄電池等の電気化学デバイスの高エネルギー密度化および高出力化を実現することができる。

【0052】
[電極]
本発明に係る電極は、電気化学デバイス用の電極であって、本発明に係るバインダを含有している。上記電極は、バインダ以外に、少なくとも、上述した活物質、集電体および導電助剤を含有している。

【0053】
本発明に係る電極における上記バインダの含有率は、集電体を除いた重量を100重量%としたとき、1重量%以上、20重量%以下であることが好ましく、2重量%以上、10重量%以下であることがより好ましい。換言すれば、上記バインダの含有率は、上記活物質、導電助剤およびバインダの重量の合計を100重量%としたとき、1重量%以上、20重量%以下であることが好ましく、2重量%以上、10重量%以下であることがより好ましい。

【0054】
上記バインダの含有率が1重量%以上であれば、活物質、導電助剤およびバインダが均一に混合された電極合材を作製することが容易となり、上記含有率が2重量%以上であればより容易となる。また、バインダの含有率が20重量%以下であれば、バインダの含有率の増加に伴う活物質の含有率の低下を防ぐことができ、上記含有率が10重量%以下であれば上記低下をより防ぐことができるので好ましい。

【0055】
本発明に係る電極は、本発明に係るバインダを含有しているため、後述する実施例に示すように、上記電極合材における含有率がCMCやSBR等の従来のバインダより低くても、従来のバインダを用いた電極と同等或いはそれ以上の強度を確保することができる。また、本発明に係る電極は、本発明に係るバインダを用いていることにより、均一性に優れており、電気抵抗が低減されており、後述する実施例に示すように、3.0Vの高電圧或いはそれ以上の高電圧にて作動可能である。

【0056】
[電極の製造方法]
本発明に係る電極は、例えば、本発明に係るバインダと、活物質と、導電助剤とを混合し、混合物を得る工程Aと、上記混合物と水とを混合し、固形分濃度が20~75重量%である電極合材を得る工程Bとを備える方法によって製造することができる。但し、電極の製造方法は、上記方法に限定されるものではない。

【0057】
上記電極合材の固形分における活物質、導電助剤およびバインダの含有率(重量%)は、電極合材の固形分の重量を100重量%としたときに、活物質:導電助剤:バインダ=85~98:0~10:1~10であることが好ましく、90~98:1~6:2~10であることがより好ましい。

【0058】
上記工程Aでは、それぞれ固体であるバインダと、活物質と、導電助剤とを混合して混合物を得る。上記混合は、例えば従来公知の乳鉢等の容器に、上記バインダと、活物質と、導電助剤とを収容し、従来公知の乳棒等で攪拌し、粉砕および/または混合する方法;上記バインダと、活物質と、導電助剤とを例えば、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、或いは、振動ミル、ロールグラニュレーター、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等に投入し、粉砕および/または混合する方法;等により行うことができる。

【0059】
上記工程Bでは、上記混合物と水とを混合することにより、電極合材である電極用スラリーを得ることができる。電極用スラリーの固形分濃度は、当該電極用スラリーの内容物によって変化するため、特に限定されるものではない。但し、電極用スラリーは、固形分濃度が例えば好ましくは20~75重量%、より好ましくは60重量%となるように、水を混合して調製すればよい。混合は、上述した乳鉢やロールミル等を用いて適宜行うことができる。

【0060】
電極は、上記電極用スラリーを集電体に塗布し、乾燥させることによって製造することができる。塗布方法としては、例えば、集電体に上記電極用スラリーを塗布し、ドクターブレードにより余分な電極用スラリーを除去する方式、集電体に上記電極用スラリーを塗布し、ローラにより上記電極用スラリーを集電体と共に圧延する方式、等の公知の塗布方法を採用することができる。

【0061】
塗布した上記電極用スラリーを乾燥する温度は、特に限定されるものではなく、上記電極用スラリーに含まれる各材料の含有率に応じて適宜変更すればよい。乾燥方法の一例としては、上記電極用スラリーを塗布した集電体を室温にて放置した後、加熱用の機器を用いて当該集電体を50℃~100℃に加熱して水分を除去し、乾燥させ、さらに、減圧下、120℃にて数時間、乾燥させる方法が挙げられる。尚、このときの減圧条件は、圧力が10Pa以下であることが好ましい。また、得られる電極の厚さや大きさは、当該電極を用いる電気化学デバイスの用途に応じて適宜変更すればよい。

【0062】
[電解液]
上記電極を用いてなる電池等の電気化学デバイスに使用される電解液は、特に限定されるものではなく、従来のリチウム硫黄電池を始め、一般的な二次電池で検討或いは採用された電解液を採用することができる。つまり、電解液は公知の電解液を用いることができる。電解液の中でも、非水系電解液を用いることがより好ましい。非水系電解液は、従来の電気化学デバイスに用いられる非水系電解液であればよく、イオン液体電解液を用いることもできる。

【0063】
また、非水系電解液は、電気化学デバイスの非水系電解液として用いられる有機系電解液であってもよい。当該有機系電解質は、イオンキャリアとなる電解質塩を含み、当該電解質塩と、これを溶解させる有機溶媒とから構成されている。

【0064】
上記電解質塩としては、1族元素金属塩、2族元素金属塩等が挙げられる。

【0065】
代表的な1族元素金属塩、2族元素金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。

【0066】
上記電解質塩のアニオンとしては、例えば、BF4-、NO3-、PF6-、SbF6-、CH3CH2OSO3-、CH3CO2-、または;CF3CO2-、CF3SO3-、(CF3SO22-[ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(TFSI)]、(FSO22-[ビス(フルオロスルフォニル)イミド(FSI)]、(CF3SO23-等のフルオロアルキル基含有アニオン等が挙げられる。

【0067】
特に、電気化学デバイスとしての電池がリチウム-硫黄二次電池である場合における電解質塩としては、例えば、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiPF4、LiBF4、LiB(C654、LiCl、LiBr、CH3SO3Li、LiFSI、LiTFSI、CF3SO3Li等のリチウム塩等が挙げられる。中でも、LiFSIがより好ましい。また、電気化学デバイスとしての電池が非リチウム-硫黄二次電池である場合には、上記電解質塩の1族元素置換化合物或いは2族元素置換化合物が挙げられる。中でも、FSIをアニオンとする塩が好ましい。

【0068】
また、上記有機溶媒としては、例えば、エーテル類、ケトン類、ラクトン類、ニトリル類、アミン類、アミド類、硫黄化合物、塩素化炭化水素類、エステル類、カーボネート類、ニトロ化合物、リン酸エステル系化合物、スルホラン系化合物等が挙げられる。代表的な有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アニソール、モノグライム、アセトニトリル、プロピオニトリル、4-メチル-2-ペンタノン、ブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、1,2-ジクロロエタン、γ-ブチロラクトン、ジメトキシエタン、メチルフォルメイト、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルチオホルムアミド、スルホラン、3-メチル-スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、およびこれら有機溶媒の混合溶媒等が挙げられる。

【0069】
これら有機溶媒の中でも、低粘度であり、イオン伝導性に優れ、電気化学的な安定性に優れている点で、プロピレンカーボネートがより好ましい。上記有機溶媒は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。

【0070】
或いは、電池が硫黄電池である場合においては、例えば、以下の電解液を用いることもできる。具体的には、例えば、1,2-ジメトキシエタン(DME)やジエチルカーボネート(DEM)を主溶媒として、それに極性溶媒である1,3-ジオキソラン(DOL)やエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルスルフォン(EMS)等を組み合わせてなる混合溶媒、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)等に代表される化学式「R1(CH2CH2O)n2」(n=2~10であり,R1はアルキル基またはアルコキシ基、R2はアルキル基、特にR1がアルコキシ基の場合はグライムと呼ばれる)を単体或いは主溶媒とし、副溶媒としてDOL等を組み合わせてなる混合溶媒、等が挙げられる。

【0071】
また、非水系電解液は、電気化学デバイスの非水系電解液として用いられるイオン液体電解液であってもよい。ここで「イオン液体」とは、100℃以下において液体で存在する塩を意味する。このイオン液体のカチオンとしては、例えば、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、テトラアルキルアンモニウム、ピラゾリウム、またはテトラアルキルホスホニウム等が挙げられる。

【0072】
上記イミダゾリウムとしては、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-アリル-3-メチルイミダゾリウム、1-アリル-3-エチルイミダゾリウム、1-アリル-3-ブチルイミダゾリウム、1,3-ジアリルイミダゾリウム等が挙げられる。

【0073】
上記ピリジニウムとしては、例えば、1-プロピルピリジニウム、1-ブチルピリジニウム、1-エチル-3-(ヒドロキシメチル)ピリジニウム、1-エチル-3-メチルピリジニウム等が挙げられる。

【0074】
上記ピロリジニウムとしては、例えば、N-メチル-N-プロピルピロリジニウム、N-メチル-N-ブチルピロリジニウム、N-メチル-N-メトキシメチルピロリジニウム等が挙げられる。

【0075】
上記ピペリジニウムとしては、例えば、N-メチル-N-プロピルピペリジニウム等が挙げられる。

【0076】
上記テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム等が挙げられる。

【0077】
上記ピラゾリウムとしては、例えば、1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム等が挙げられる。

【0078】
上記テトラアルキルホスホニウムとしては、例えば、P-ブチル-P,P,P-トリエチルホスホニウムやP,P,P-トリエチル-P-(2-メトキシエチル)ホスホニウム等が挙げられる。

【0079】
また、上記カチオンと組み合わされてイオン液体を構成するアニオンとしては、例えば、BF4-、NO3-、PF6-、SbF6-、CH3CH2OSO3-、CH3CO2-、または;CF3CO2-、CF3SO3-、(CF3SO22-[ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(TFSI)]、(FSO22-[ビス(フルオロスルフォニル)イミド(FSI)]、(CF3SO23-等のフルオロアルキル基含有アニオン等が挙げられる。

【0080】
上記イオン液体電解液は、上記カチオンの少なくとも1種と、上記アニオンの少なくとも1種とを適宜組み合わせて構成することができる。電池がリチウムイオン二次電池である場合におけるイオン液体電解液は、(FSO22-等のアニオンを含んでいることがより好ましい。

【0081】
上記イオン液体電解液は、電気化学デバイスである蓄電デバイスにおける電気的特性により優れると共に、当該電気的特性の低下が抑制されるという点、および、入手し易く、イオン液体電解液が備える電気的特性の低下が蓄電デバイスにおいてより抑制されるという点から、好ましい。

【0082】
また、大気中での取り扱いが容易であるという点で、リチウムイオン二次電池においては、(FSO22-等の含フッ素系アニオンを含むイオン液体電解液がより好ましい。

【0083】
さらに、上記イオン液体電解液としては、比較的低粘度であり、イオン伝導性に優れ、電気化学的な安定性に優れているという点で、イミダゾリウムカチオンまたはピロリジニウムカチオンを含んでいることがより好ましい。

【0084】
具体的には、上記イオン液体電解液が、ビス(フルオロスルフォニル)イミド(FSI)を含有することが好ましく、上記イオン液体電解液を構成するイオン液体としては、アニオンとしてのビス(フルオロスルフォニル)イミドアニオン(FSI)と、カチオンとしてのピロリジニウム等の四級アンモニウムとの塩がより好ましく、例えば、N,N-メチルプロピルピロリジニウム ビス(フルオロスルフォニル)イミド(MPPyrPyrFSI)、N,N,N-トリメチル-N-ブチル-アンモニウム ビス(フルオロスルフォニル)イミド(N1114FSI)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルフォニル)イミド(EMImFSI)がより好ましい。

【0085】
一方、従来の電気化学デバイスに使用されているイオン液体系電解液(本明細書で取り上げている溶媒和イオン液体を含む)等を用いることもできる。

【0086】
上記溶媒和イオン液体は、上記電解質塩と、電解質陽イオンと錯体形成をする有機化合物とから構成されるイオン液体である。上記有機化合物としては、例えば、モノグライム(エチレングリコールジメチルエーテル)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグライム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)等のエーテル系溶媒等が挙げられる。

【0087】
上記溶媒和イオン液体としては、電気化学デバイスとしての電池が非リチウム-硫黄二次電池である場合には、リチウム溶媒和錯体を含有する電解液、即ち上記電解質陽イオンがリチウムイオンである電解液であることが好ましい。

【0088】
特に、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルフォニル)イミド(以下、「EMImFSI」と記載する場合がある)を含むイオン液体電解液を用いることにより、従来のイオン液体電解液では達成することができない高いサイクル特性(安定性)および出力特性を有する電気化学デバイスを製造することができる。また、添加剤を特に必要とせず、また可燃性の低粘性溶剤を用いないので、安定な充放電を行うことができる安全性に優れた電気化学デバイスを提供することができる。EMImFSIを含むイオン液体電解液を用いることにより、高いイオン伝導性を発揮することができ、充放電過程で生じる例えばポリスルフィドの溶解度が低く、電気化学的安定性および安全性に優れているので、電気化学デバイスを安定に作動させることができる。また、可燃性の低粘性溶剤を用いないので、電気化学デバイスの耐熱性を向上させることができる。

【0089】
また、電池がリチウムイオン二次電池である場合においては、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリメチルメタクリレート等の公知のポリマー電解質を用いてもよい。

【0090】
電池が硫黄電池である場合においては、上記電解液を用いることにより、高いイオン伝導性を発揮することができ、充放電過程で生じるポリスルフィドの溶解度が低く、電気化学的安定性および安全性に優れているので、当該硫黄電池(特に正極)を安定に作動させることができる。

【0091】
また、電池がリチウム硫黄電池である場合においては、バインダであるアルギン酸マグネシウムと、電解液である1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルフォニル)イミドとを組み合わせることにより、当該電池の充電時間を、従来の10時間から1時間に短縮することができる。

【0092】
つまり、従来のバインダは、電極を成形するための結着剤として好適な構成が考慮されており、活物質の移動や電解質の移動に関しては特段の考慮がなされていない。これに対して、本発明に係るバインダにおいては、結着剤として好適なだけでなく、活物質の移動や電解質の移動の容易さも含めて、その構成が考慮されている。それゆえ、本発明に係るバインダは、単なる結着剤ではなく、高分子化合物および陽イオン等によって電気的なネットワークを有しており、活物質の移動や電解質の移動を阻害しない。従って、従来と比較して、充電時間を大幅に短縮することができる。

【0093】
[セパレータ]
上記電極を用いてなる電池等の電気化学デバイスでは、正極と負極との間の短絡を防止するために、正極と負極との間にセパレータが備えられる。上記セパレータは、公知のセパレータを用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン製またはポリプロピレン製フィルムの微多孔膜;多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム;ポリエステル繊維、アラミド繊維またはガラス繊維等からなる不織布;が挙げられる。

【0094】
上記セパレータの空隙率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。また、上記空隙率は、95%以下であることがより好ましい。

【0095】
ここで、上記空隙率は、セパレータの見掛け密度と構成材料の固形分の真密度とから、次式
空隙率(%)=100-(セパレータの見掛け密度/構成材料の固形分の真密度)×100
により算出される値である。

【0096】
[電気化学デバイス]
本発明に係る電気化学デバイスは、正極および負極を備え、正極と負極との間に、電解液を含んでいる。そして、正極および負極の一方、好ましくは正極は、本発明に係るバインダを用いて製造されている。また、電気化学デバイスは、正極と負極との間の短絡を防止するために、正極と負極との間にセパレータを備えている。正極および負極にはそれぞれ集電体が備えられており、両集電体は電源に電気的に接続されている。この電源の操作によって電気化学デバイスの充放電の切り替えが行われる。

【0097】
本発明に係る電気化学デバイスとしては、例えば、硫黄二次電池(リチウム-硫黄二次電池、ナトリウム-硫黄二次電池等)、リチウムイオン二次電池および非リチウムイオン二次電池(ナトリウム二次電池、マグネシウム二次電池等)、空気電池(リチウム-空気電池等)、電気化学キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、色素増感型太陽電池等も包含される。当該電気化学デバイスは、電気抵抗が軽減され、出力特性が向上した蓄電デバイスとして利用することができる。よって、本発明に係る電気化学デバイスは、携帯電話や携帯情報端末(PDA)等の携帯端末機器、ノート型パソコン、ビデオカメラやデジタルカメラ等の小型電子機器、家電機器;電動自転車、電動自動車(電気自動車)、ハイブリッド自動車、電車等の移動用機器(車両);火力発電、風力発電、水力発電、原子力発電、地熱発電、太陽光発電等の発電用機器;自然エネルギー蓄電システム;等に好適に搭載することができる。

【0098】
上記電気化学デバイスの中でも、電池であることが好ましく、硫黄二次電池、リチウム-硫黄二次電池であることがより好ましい。

【0099】
即ち、本発明に係る電気化学デバイスに用いられる本発明に係るバインダは、電極における含有量が少なくても高い電極強度を確保することができ、かつ、電解液等との高い親和性を有することで電極の高い出力特性等を実現することができる。それゆえ、電極合材の均一性が得られ、活物質および電解液との親和性が高く、かつ接着力が十分であって電極の作製が容易となるバインダ、当該バインダを含有する、サイクル特性が向上した電極、および上記電極を有する、電気抵抗が軽減され、出力特性が向上した、高性能かつ安全性に優れた電池等の電気化学デバイスを提供することができる。

【0100】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、実施例および比較例において、使用量ないし含有量を表す「部」および「%」は、特に断りの無い限り、重量基準である。
【実施例】
【0102】
〔実施例1〕
先ず、活物質としての市販の硫黄粉末およびミクロ多孔性炭素粉末を密閉容器に入れて密閉し、155℃、3時間および300℃、2時間の加熱を行い、複合化物(S/C)を得た。この複合化物と炭素系の導電助剤とを乳鉢に入れ、約10分間混合して混合物を得た。次に、バインダとしてのアルギン酸マグネシウムを水に溶解して、所定の濃度のアルギン酸マグネシウム水溶液を調製した。そして、上記混合物にアルギン酸マグネシウム水溶液を加えて混練し、電極合材としての電極用スラリーを得た。混合物に対するアルギン酸マグネシウム水溶液の添加量は、電極用スラリーにおける硫黄粉末およびミクロ多孔性炭素粉末の含有率(活物質の合計)が91重量%、アルギン酸マグネシウムの含有率が4重量%となるように調節した(残りの5重量%は導電助剤)。また、アルギン酸マグネシウム水溶液の濃度は、得られる電極用スラリーの粘度を考慮して適宜調節した。
【実施例】
【0103】
得られた電極用スラリーを、集電体としてのアルミニウム箔に、ドクターブレード法を採用して塗布した。その後、当該アルミニウム箔を80℃のホットプレート上で加熱して水分を除去し、乾燥させた。さらに、減圧下、80℃で数時間、乾燥させることで、本発明に係るシート状の電極を得た。上記シート状の電極を、所定の大きさおよび形状に打ち抜き、電極1を作製した。電極1の主な構成を表1にまとめた。
【実施例】
【0104】
得られた電極1を正極(作用極)とし、当該電極1と、電解液としてのグライム-リチウム錯体系溶媒和イオン液体(非特許文献3を参照)(以下、「Li(G4)[TFSI]+HFE」(G4はテトラグライム、HFEはハイドロフルオロエーテルを表す)と記載する場合がある)と、負極(対極)としてのリチウム金属箔と、セパレータとを用いて、評価用2極式ハーフセル1を構築した。評価用2極式ハーフセル1の主な構成を表2にまとめた。
【実施例】
【0105】
〔実施例2〕
アルギン酸マグネシウムに替えてアルギン酸ナトリウムを用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行うことより、本発明に係る電極2を得た。電極2の主な構成を表1にまとめた。
【実施例】
【0106】
そして、得られた電極2を正極(作用極)とし、実施例1の操作と同様の操作を行うことより、評価用2極式ハーフセル2を構築した。評価用2極式ハーフセル2の主な構成を表2にまとめた。
【実施例】
【0107】
〔実施例3〕
アルギン酸マグネシウムに替えてアルギン酸アンモニウムを用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行うことより、本発明に係る電極3を得た。電極3の主な構成を表1にまとめた。
【実施例】
【0108】
そして、得られた電極3を正極(作用極)とし、実施例1の操作と同様の操作を行うことより、評価用2極式ハーフセル3を構築した。評価用2極式ハーフセル3の主な構成を表2にまとめた。
【実施例】
【0109】
〔比較例1〕
アルギン酸マグネシウムに替えて、従来の一般的なバインダであるカルボキシメチルセルロース(CMC)およびスチレン-ブタジエンラバー(SBR)(以下、「CMC+SBR」と記載する場合がある)を用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行うことより、電極4を得た。混合物に対するCMC+SBRの添加量は、活物質の含有量が91重量%、CMC+SBRの含有率が4重量%(CMC2重量%、SBR2重量%)となるように調節した(残りの5重量%は導電助剤)。電極4の主な構成を表1にまとめた。
【実施例】
【0110】
そして、得られた電極4を正極(作用極)とし、実施例1の操作と同様の操作を行うことより、評価用2極式ハーフセル4を構築した。評価用2極式ハーフセル4の主な構成を表2にまとめた。
【実施例】
【0111】
〔実施例4〕
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルフォニル)イミド(以下、「EMImFSI」と記載する場合がある)に、リチウムビス(フルオロスルフォニル)イミド(以下、「LiFSI」と記載する場合がある)を1.0モル/dm3溶解させたイオン液体電解液(以下、「LiFSI/EMImFSI」と記載する場合がある)を調製した。
【実施例】
【0112】
そして、実施例1で得られた電極1を正極(作用極)とし、Li(G4)[TFSI]+HFEに替えてLiFSI/EMImFSIを電解液として用いた以外は、実施例1の操作と同様の操作を行うことより、評価用2極式ハーフセル5を構築した。評価用2極式ハーフセル5の主な構成を表2にまとめた。
【実施例】
【0113】
〔比較例2〕
実施例4と同様にしてLiFSI/EMImFSIを調製した。
【実施例】
【0114】
そして、比較例1で得られた電極4を正極(作用極)とし、Li(G4)[TFSI]+HFEに替えてLiFSI/EMImFSIを電解液として用いた以外は、比較例1の操作と同様の操作を行うことより、評価用2極式ハーフセル6を構築した。評価用2極式ハーフセル6の主な構成を表2にまとめた。
【実施例】
【0115】
【表1】
JP2016100094A_000002t.gif
【実施例】
【0116】
【表2】
JP2016100094A_000003t.gif
【実施例】
【0117】
〔評価用2極式ハーフセルの性能評価〕
<充放電特性の評価>
実施例1~3および比較例1で構築した評価用2極式ハーフセル1~4の正極に関して、充放電特性の評価を行った。具体的には、測定条件を0.1C(時間率、但し、1C=1672mA/gとする)の放電電流(定電流)、1.0Vから3.0Vの電圧範囲とし、評価用2極式ハーフセル1~4の定電流充放電測定を行った。結果をグラフとして図1~3に記載した。
【実施例】
【0118】
ここで、図1,3の横軸は充放電のサイクル数を示し、縦軸は放電容量の硫黄重量あたりの密度を示している。図2の横軸は容量の硫黄重量あたりの密度を示し、縦軸は電圧を示している。そして、図2中の「1,2,10,20,50」は、それぞれ、1,2,10,20,50サイクル時の充放電曲線を表している。
【実施例】
【0119】
図1は、実施例1,2,3で構築した評価用2極式ハーフセル1~3の正極の充放電サイクル特性を示すグラフである。
【実施例】
【0120】
特に、実施例1,3で構築した評価用2極式ハーフセル1,3では、放電容量の減衰が非常に小さく、安定な充放電を繰り返し行うことが可能であることが分かる。
【実施例】
【0121】
図2の(a)は、実施例1で構築した評価用2極式ハーフセル1の正極の充放電曲線を示すグラフであり、図2の(b)は、比較例1で構築した評価用2極式ハーフセル4の正極の充放電曲線を示すグラフである。
【実施例】
【0122】
本発明に係るバインダを用いて得た電極を用いて構築した実施例1の評価用2極式ハーフセル1は、従来のバインダを用いて得た電極を用いて構築した比較例1の評価用2極式ハーフセル4と比較して、充放電の繰り返し(サイクル)に伴う充放電容量の減少が低減されていることが分かる。また、充電時および放電時の分極は、評価用2極式ハーフセル4よりも評価用2極式ハーフセル1の方が小さく、それゆえ、本発明に係るバインダを用いることにより、正極(電極)の内部抵抗が低減されていることが分かる。
【実施例】
【0123】
図3は、実施例1および比較例1で構築した評価用2極式ハーフセル1,4の正極の充放電サイクル特性を示すグラフである。
【実施例】
【0124】
図3から、評価用2極式ハーフセル4よりも評価用2極式ハーフセル1の方が、安定な充放電を繰り返し行うことが可能であることが分かる(このことは図2からも明らかである)。尚、評価用2極式ハーフセル4において、充放電の繰り返しに伴って放電容量が大きく減衰している理由は、活物質である硫黄成分が電解液へ溶出することにより、電極4中における利用可能な活物質量が減少したためであると推察される。
【実施例】
【0125】
<出力特性の評価>
実施例1,4および比較例1,2で構築した評価用2極式ハーフセル1,4~6の正極に関して、出力特性の評価を行った。具体的には、測定条件を0.2Cから2.0Cの放電電流、1.0Vから3.0Vの電圧範囲とし、評価用2極式ハーフセル1,4~6の充放電測定を行った。結果をグラフとして図4,5に記載した。
【実施例】
【0126】
ここで、図4,5の横軸は充放電のサイクル数を示し、縦軸は放電容量の硫黄重量あたりの密度を示している。そして、図4,5中の「0.2C,0.3C,0.5C,1.0C,2.0C」は、それぞれ、放電電流が0.2C,0.3C,0.5C,1.0C,2.0Cであることを表している。
【実施例】
【0127】
図4は、実施例1および比較例1で構築した評価用2極式ハーフセル1,4の正極の出力特性を示すグラフである。
【実施例】
【0128】
評価用2極式ハーフセル1,4共に、放電電流の増加に伴って放電容量は低下しているものの、その低減率は評価用2極式ハーフセル1の方が遥かに少ない。評価用2極式ハーフセル1では、0.5Cの放電電流であっても900mAh/g-sulfur以上の放電容量を維持している。このことから、本発明に係るバインダを用いることにより、正極(電極)の内部抵抗が低減されていることが分かる。また、この結果は、図2に示されている充電時および放電時の分極の低減とも一致している。
【実施例】
【0129】
図5は、実施例4および比較例2で構築した評価用2極式ハーフセル5,6の正極の出力特性を示すグラフである。
【実施例】
【0130】
評価用2極式ハーフセル5,6共に、放電電流の増加に伴って放電容量は低下しているものの、その低減率は評価用2極式ハーフセル5の方が遥かに少ない。
【実施例】
【0131】
また、評価用2極式ハーフセル5の正極の出力特性と、図4に記載の評価用2極式ハーフセル1の正極の出力特性との比較から、電解液として、Li(G4)[TFSI]+HFEよりもLiFSI/EMImFSIを用いた方が、優れた出力特性を示すことが分かる。特に、本発明に係るバインダを用いて得た正極(電極)は、電解液としてLiFSI/EMImFSIを用いることにより、2.0Cの放電電流であっても良好に作動することが分かる。この理由は、本発明に係るバインダがLiFSI/EMImFSIに対して高い親和性を有していることに起因し、正極(電極)の内部抵抗が低減されている効果と併せて、見かけ上、より大きな抵抗の軽減に繋がったためであると推察される。
【実施例】
【0132】
尚、LiFSI/EMImFSIは難燃性であり、かつ、溶媒(揮発性成分)を一切含まない。従って、LiFSI/EMImFSIを電解液として用いることにより、より電気抵抗が軽減され、出力特性が向上した電池等の電気化学デバイスを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明に係るバインダ、電極および電気化学デバイスは、携帯電話や携帯情報端末(PDA)等の携帯端末機器、ノート型パソコン、ビデオカメラやデジタルカメラ等の小型電子機器、家電機器;電動自転車、電動自動車(電気自動車)、ハイブリッド自動車、電車等の移動用機器(車両);火力発電、風力発電、水力発電、原子力発電、地熱発電、太陽光発電等の発電用機器;自然エネルギー蓄電システム;等の分野において広範に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4