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明細書 :危険ドラッグの検出用細胞および検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-149990 (P2016-149990A)
公開日 平成28年8月22日(2016.8.22)
発明の名称または考案の名称 危険ドラッグの検出用細胞および検出方法
国際特許分類 C12N   5/10        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N  15/00        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
FI C12N 5/00 102
C12N 15/00 A
C12N 15/00 ZNA
C12Q 1/02
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2015-030116 (P2015-030116)
出願日 平成27年2月19日(2015.2.19)
発明者または考案者 【氏名】新田 淳美
【氏名】宇野 恭介
【氏名】宮▲崎▼ 杜夫
出願人 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B063
4B065
Fターム 4B024AA11
4B024CA04
4B024CA20
4B024DA02
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ61
4B063QR08
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS36
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA60
要約 【課題】
危険ドラッグを網羅的に検出できる培養細胞およびその細胞を利用した危険ドラッグの検出方法を提供する。
【解決手段】
Shati/Nat8l遺伝子上流部に連結したレポーター遺伝子が導入された細胞は、中枢神経系に作用する薬物、特に、カチノン系薬物のみならずカンナビノイド系薬物に高い感受性を有し、危険ドラッグの検出に有用である。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
翻訳開始点から-380~-270にCREB結合領域を有するShati/Nat8l遺伝子の上流と連結したレポーター遺伝子が導入された細胞。
【請求項2】
Shati/Nat8l遺伝子の上流がプロモーターおよび翻訳開始点から+120までを含むものである請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
レポーター遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子である請求項1または2に記載の細胞。
【請求項4】
細胞がドーパミン合成酵素およびドーパミン受容体を発現できる細胞である請求項1~3に記載の細胞。
【請求項5】
請求項1~4に記載の細胞を用いることを特徴とする薬物の検出方法。
【請求項6】
細胞がPC12細胞である請求項5に記載の薬物の検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、危険ドラッグを網羅的に検出する方法、具体的には、危険ドラッグの検出に有用な培養細胞とその培養細胞を用いる検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
危険ドラッグを摂取しての死亡例や大きな交通事故が連日報道されている。危険ドラッグ成分を包括的に規制することで、約1400化合物が、指定薬物となっている。その内、カンノビサイド系は770化合物、カチノン系は496化合物である。
しかし、それらの健康被害の大きさや依存性については、全く分かっていない。また、1400の指定薬物の成分で入手可能なものは限られており、毒性や依存性研究の妨げとなっている。さらに、危険ドラッグの構造を変えた規制対象外の新物質が次々現れる「イタチごっこ」が問題となっている。
【0003】
成分不明の危険ドラッグが、人体に有害かどうかを検出する方法として、カンナビノイド受容体CB1を強制発現させたCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞を利用する方法が検討されている(非特許文献1)。
一方、覚せい剤依存の形成を抑制する分子として発見されたShati/Nat8lは、薬物依存症など、精神障害に有効な化合物のスクリーニング方法に使用できる分子である(特許文献1)。また、PC12細胞においてメタンフェタミン曝露がShati/Nat8l発現を増強するとの報告がある(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】WO2006/093034
【0005】

【非特許文献1】厚生労働科学研究費補助金、「培養細胞系を用いた未規制合成カンナビノイドの乱用危険性推測に関する研究(2012年度総括)」
【非特許文献2】J Neurochem. 2008 Dec;107(6):1697-708.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カンナビノイド受容体CB1を強制発現させたCHO細胞を利用する方法は、カンナビノイド受容体CB1のアゴニストであるカンナビノイド系化合物の検出には有用性が高いものの、その作用機序からカチノン系化合物に対しては、十分ではなく、危険ドラッグを網羅的に検出可能な簡易検出法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、Shati/Nat8lの発現調整メカニズムに係わる研究をから、転写活性を測定することで、メタンフェタミンなどカチノン系薬物のみならず代表的なカンナビノイド系薬物のテトラヒドロカンナビノール(THC)の検出が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明は、Shati/Nat8l遺伝子の翻訳開始点から-380~-270にCREB結合領域を有するShati/Nat8l遺伝子上流部に連結したレポーター遺伝子が導入された細胞およびその細胞を利用した薬物の検出方法である。
より具体的には、Shati/Nat8l遺伝子の翻訳開始点から-380~-270にCREB結合領域を有するShati/Nat8l遺伝子の転写調節領域より翻訳開始点から+120に至るShati/Nat8l遺伝子上流部に連結したレポーター遺伝子を有する細胞およびその細胞を利用した中枢神経に作用する薬物の検出方法である。
【0009】
本発明使用される細胞は、ドーパミン合成酵素およびドーパミン受容体を発現できる細胞であれば、特に限定されないが、例えば、Pheochromocytoma-12(PC12)細胞、SH-SY5細胞、ラットまたはマウス初代培養など挙げられるが、神経様形態を呈することから、PC12細胞が好ましい。
【0010】
本発明に使用されるレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質(GFP)などが使用できる、ルシフェラーゼ遺伝子が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のShati/Nat8l遺伝子上流部に連結したレポーター遺伝子が導入された細胞は、中枢神経系に作用する薬物、特に、カチノン系薬物のみならずカンナビノイド系薬物に高い感受性を有し、危険ドラッグの検出に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】PC12細胞またはNeuro2aの培養液にメタンフェタミンを添加した後の、Shati/Nat8mRNAの発現増強を示す図である。
【図2】Shati/Nat8l転写開始地点上流の遺伝子を組み込んだPGL3-basicベクターを遺伝子導入し、メタンフェタミンで刺激することでレポーターアッセイを行った図
【図3】pGL3-ベーシックベクターを導入したPC12細胞におけるメタンフェタミン刺激でのルシフェラーゼ活性を示す図である。なお、ベクターに導入しているプロモーターの長さが異なることから、遺伝子導入効率による差を差し引くために、メタンフェタミンのかわりにPBSを添加したものを1として示している。
【図4】本発明の検出法の手順の概図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のShati/Nat8l遺伝子のプロモーターは、具体的には、Shati/Nat8l遺伝子の翻訳開始点から-380~-270にCREB結合領域を有するShati/Nat8l遺伝子の転写調節領域より翻訳開始点から+120に至るShati/Nat8l遺伝子上流部である。より具体的には、配列番号1または配列番号2で表記される塩基配列である。なお、配列番号1の塩基配列には、翻訳開始点から上流側に向けて、AP-1、CREBおよびNF-κBを含んでいる。

【0014】
本発明の細胞を作製するには、通常、公知のレポーターアッセイ用細胞の作製方法に準じて行えばよいが、例えば、pGL3-basic ベクター(プロメガ株式会社)に、マウス(C57BL/6)由来DNAからPCR法を用いて作製した欠損遺伝子配列を、ライゲーションすることで、Shati/Nat8l 転写上流領域DNAとルシフェラーゼ遺伝子が連結したベクターを作製し、このベクターを細胞に導入すればよい。

【0015】
本発明の細胞を用いて、カチノン系薬物およびカンナビノイド系薬物を検出するには、例えば、以下の手順により行うことができる。
(1)細胞に遺伝子導入をしてから24時間後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはメタンフェタミンを含んだ培養液に、細胞に加え、薬物刺激する。
(2)1時間後に培養液を交換し、24時間後にルシフェラーゼ蛋白を回収する。
(3)CMVプロモーターによって発現制御されているウミシイタケルシフェラーゼを内部標準としてホタルルシフェラーゼ発光を測定する。
(4) Shati/Nat8l プロモーターの活性を数値化する。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
<細胞および培養>
Pheochromocytoma-12(PC12)細胞は独立行政法人理化学研究所より購入し、10%ウシ胎児血清(FBS)、5%ウマ血清、および1%ペニシリンストレプトマイシンを含むD-MEM(Dulbecco's Modified Eagle's medium:和光純薬)を用い、37℃、5%CO2で培養した。Neuro2A細胞はDSファーマバイオメディカル株式会社より購入し、10%FBS、および1%ペニシリンストレプトマイシンを含むD-MEM Low-Glucose(Dulbecco's Modified Eagle's medium:和光純薬)]を用い、37℃、5%CO2で培養した。
【実施例】
【0017】
<薬物刺激>
PC12細胞およびNeuro2a細胞に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはメタンフェタミン(METH)1μMを含んだ培養液を加え、薬物刺激をした。1時間後にRNA抽出用試薬(ISOGEN II、ニッポン・ジーン)を用いてサンプルを回収した。フェノール抽出試薬(TRIsure、日本ジェネティクス)によりtotal RNAの抽出を行い、リアルタイムRT-PCRの逆転写反応キット(PrimeScript RT reagent Kit (Perfect Real Time)、タカラバイオ)を用いて逆転写反応を行った。ShatiのmRNAレベルの測定は、リアルタイムPCR用試薬(THUNDER BIRD SYBR qPCR Mix、東洋紡)を用いたreal time-PCRで行い、内部標準としてハウスキーピング遺伝子である36B4 (acidic ribosomal phosphoprotein P0)を使用した。
【実施例】
【0018】
<real-time PCRに用いたプライマーの配列>
・Shati (forward):5’-GTGATTCTGGCCTACCTGGA-3’(配列番号6)
・Shati(reverse):5’-CCACTGTGTTGTCCTCCTCA-3’(配列番号7)
・36B4 (forward):5’-ACCCTGAAGTGCTCGACATC-3’(配列番号8)
・36B4 (reverse):5’-AGGAAGGCCTTGACCTTTTC-3’(配列番号9)
【実施例】
【0019】
<薬物刺激の結果>
内部標準である36B4と比較して、PC12細胞では、METH刺激後にSati/Nat8lの発現量が増加した。Neuro2a細胞では、発現量の増加が観察されなかった。(図1)
【実施例】
【0020】
<Shati/Nat8lプロモーターを持ったpGL3-Basic ベクターの作成>
C57BL/6J雄マウス(8週齢、日本SLC)の脳側坐核から、動物組織からのDNA抽出・増幅キット[REDExtract-N-Amp Tissue PCR Kit(シグマ・アドリッチ)]で抽出した側坐核DNAに、キット附属のExtraction Solution 20μLとTissue Solution 5μLを加えて95℃で5分間加熱。その後Nutralization Solution B 25μLのを加えて得たDNAサンプルを、Forward primer:5’-GAGCTCGGCCCTTCTGCCTGACTGTCCTC-3’(配列番号10)とReverse primer:5’-CTCGAGGATGCACGCGCTGCCTGACAG-3’(配列番号11)を用いてPCR[TaKaRa EX taq(タカラバイオ):EX taq 0.25μL, 10×EX taq buffer 2.5μL, dNTP 4μL, primer(3.2μM) それぞれ1μL, マウス側坐核DNA 1μL, 超純水(milli Q water )15.75μL)する。
【実施例】
【0021】
pGL3-Basic vector(プロメガ)のマルチクローニングサイトはSac I(タカラバイオ)とXho I(タカラバイオ)で切断される配列を持ち、PrimerもForward primerにSac Iを、Reverse primerにXho Iによって切断される配列を持つように設計されている。そこで、PCR産物をSac IとXho Iで切断(DNA 16μL, Sac I/Xho I 1μL, 1×M buffer 2μLで2時間)し、1.5%アガロースゲル(Agarose S:和光純薬)電気泳動にて目的領域の増幅確認とゲルの切出しをする。切出したゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン)を用いてDNAを抽出し、同様の操作で制限酵素処理(Sac IとXho I)とゲル抽出で得たpGL3-Basic ベクターにLigation High Ver2(東洋紡)を用いてライゲーションさせる。大腸菌を用いて増幅し、抽出・シークエンス確認を行った。
【実施例】
【0022】
Shati/Nat8lの翻訳開始点を0とし、その上流-695から下流+120までの塩基を最長として、翻訳開始に最も必要な部位を明確にするために、順番に短い連続塩基を作成(配列番号1~5)した。作成には、上記したと同様のPCR反応で増幅を行い、pGL3-Basic vector(プロメガ)への組み込みを行った。なお、DNAの増幅は、Forward primerは、5’-GTGATTCTGGCCTACCTGGA-3’(配列番号6)の一定とし、Reverse primerを変更することで、順番に短い連続塩基の作成をした。すなわち、-980から下流+120の連続塩基の作成には、Reverse primer を5’-GAGCTCTATAGGAGGACCGGGGCAATG-3’(配列番号12)とした。上流-680から下流+120では、5’-GAGCTCGGCCCTTCTGCCTGACTGTCCTC-3’(配列番号13)とした。上流-380から下流+120では、5’-GAGCTCATTACCCTACTCCCAGGTTCC-3’(配列番号14)とした。上流-270から下流+120では5’-GAGCTCCCGTTCTGCTGGCTCC-3’(配列番号15)とした。最短である上流-150から下流+120では5’-GGTACCGGATATGC- CACTACGCATTCC -3’(配列番号16)とした。各々には、下流側からNF-κB、CREBおよびAP-1の各部分を含んでいる(図2)。
【実施例】
【0023】
<PC12細胞への遺伝子導入と薬物刺激>
上記で作成したベクター(0.4μg/well)とpRL-CMVベクター(0.4μg/well)をLipofectamine 2000(ライフテクノロジーズ)を用いてそれらベクターを2×105cell/wellのPC12細胞に導入させる(1well当たり1μLのLipofectamine 2000)。その後24時間後にメタンフェタミン塩酸塩1μMを含んだ培養液(D-MEM High glucose, 10% FBS, 5% HBS, 1%ペニシリンストレプトマイシン :和光純薬)への交換を薬物刺激とした。培養液交換2時間後に、メタンフェタミンを含まない通常の培養液に交換した。
【実施例】
【0024】
<サンプル回収とLuciferase発光検出>
最後の培養液交換24時間後に、培養液を捨て、PBSで2回洗浄し、Dual-luciferase assay kit(プロメガ)添付の1×Passive Lysis Buffer 100μL/wellでサンプルを回収した。100μLのPassive Lysis Bufferで回収したサンプルのうち20μLに、Dual-luciferase assay kitのLuciferase Assay SubstrateとLuciferase Assay Buffer IIの当量を混合したものを50μL加えて、Shati/Nat8l プロモーターによるルシフェラーゼ活性として発光強度を測る。その後、さらにStop & Glo Substrate(20μL)と50X Stop & Glo Buffer(980μL)を混合したものを50μL加え、内部標準(CMV制御)として発光強度を測定する。すなわち、CMVプロモーターによって発現制御されているウミシイタケルシフェラーゼを内部標準としてホタルルシフェラーゼ発光を測定することで、Shati/Nat8l プロモーターの活性を数値化した。
【実施例】
【0025】
配列番号1~5の各プロモーターを導入したPC12細胞にメタンフェタミンで刺激後1時間後に細胞を回収してルシフェラーゼアッセイを行ったところ、NF-κBおよびCREBの部分が必須であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のShati/Nat8l遺伝子上流部に連結したレポーター遺伝子が導入された細胞は、中枢神経系に作用する薬物、特に、カチノン系薬物のみならずカンナビノイド系薬物に高い感受性を有し、危険ドラッグの検出に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3