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明細書 :多槽式溶出測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3388383号 (P3388383)
公開番号 特開平10-239306 (P1998-239306A)
登録日 平成15年1月17日(2003.1.17)
発行日 平成15年3月17日(2003.3.17)
公開日 平成10年9月11日(1998.9.11)
発明の名称または考案の名称 多槽式溶出測定装置
国際特許分類 G01N 33/18      
G01N 31/10      
FI G01N 33/18 B
G01N 33/18
G01N 31/10
請求項の数または発明の数 3
全頁数 4
出願番号 特願平09-042491 (P1997-042491)
出願日 平成9年2月26日(1997.2.26)
審査請求日 平成13年2月15日(2001.2.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591025163
【氏名又は名称】国立環境研究所長
発明者または考案者 【氏名】木幡 邦男
【氏名】竹下 俊二
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】竹中 靖典
調査した分野 G01N 33/18
G01N 33/18 106
G01N 1/10
特許請求の範囲 【請求項1】
底泥に含まれる栄養塩、有機物等の溶出量を測定するための装置であって、少くとも検体槽、対照槽および濾過槽とを備え、
検体槽は、その下部が側壁で囲まれる範囲内で底泥に開放されて、側壁と上部とによって外界に対して閉鎖されているとともに、その上部には取水口が設けられ、
対照槽は、上下部と側壁とによって外界に対して閉鎖され、その上部には取水口が設けられ、
濾過槽は、採水口において外界に開放されており、
かつ、検体槽と対照槽および対照槽と濾過槽は相互に連通されており、
濾過槽採水口から採り入れた外界直上水を濾過槽および対照槽を経由して検体槽に導入し検体槽内を外界直上水と略同一環境に置き、必要に応じて対照槽上部の取水口からの外界直上水と対照しつつ、検体槽上部の取水口からの試料直上水の採取をもって溶出量を測定することを特徴とする多槽式溶出測定装置。

【請求項2】
濾過槽の採水口には濾紙もしくは網が取り付けられた請求項1の多槽式溶出測定装置。

【請求項3】
検体槽と対照槽の間、および対照槽と濾過槽の間の連通部には逆止弁が配設されている請求項1の多槽式溶出測定装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】この出願の発明は、多槽式溶出測定装置に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、沿岸海域や湖沼、河川等の底泥に含まれる栄養塩、有機物等の溶出量の測定に有用な多槽式溶出測定装置に関するものである。

【0002】

【従来の技術とその課題】従来より、海洋生態学の研究においては、沿岸海域底泥に含まれる栄養塩等の溶出量を正確に測定する方法として、現場海底に底の開いた容器をかぶせ、その容器内の水質変化を測定するベルジャー法が知られている。しかしながら、このような従来の方法においては、外界との入れ替えなしにそのまま測定するために、容器内部で起こる有機物の分解などで、例えば、溶存酸素が著しく減少する等の変化が起こり、実験を2日以上継続することは不可能であった。従来の装置のこの欠点は、現場にて数日の連続観測を行い、環境変動を調査する際の大きな問題であった。

【0003】
さらに、海底に容器を設置する際に、現場環境条件を攪乱することなく直上水を捕集することは技術的に困難であり、今までにも様々な改良がなされてきたが、まだ完全なものは提供されていないのが現状である。そこで、この発明は、以上のような従来技術の問題を解消し、底泥に含まれる栄養塩、有機物等の溶出量の正確な測定が可能な、新しい溶出測定装置を提供することを目的としている。

【0004】

【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、底泥に含まれる栄養塩、有機物等の溶出量を測定するための装置であって、少くとも検体槽、対照槽および濾過槽とを備え、検体槽は、その下部が側壁で囲まれる範囲内で底泥に開放されて、側壁と上部とによって外界に対して閉鎖されているとともに、その上部には取水口が設けられ、対照槽は、上下部と側壁とによって外界に対して閉鎖され、その上部には取水口が設けられ、濾過槽は、採水口において外界に開放されており、かつ、検体槽と対照槽および対照槽と濾過槽は相互に連通されており、濾過槽採水口から採り入れた外界直上水を濾過槽および対照槽を経由して検体槽に導入し検体槽内を外界直上水と略同一環境に置き、必要に応じて対照槽上部の取水口からの外界直上水と対照しつつ、検体槽上部の取水口からの試料直上水の採取をもって溶出量を測定することを特徴とする多槽式溶出測定装置を提供する。

【0005】

【発明の実施の形態】この出願の発明は、上記のとおりの特徴を有するものとして、沿岸海域だけでなく、湖沼や大規模河川等の底泥による溶出評価に有用なものであるが、以下に実施例を示し、さらに詳しくこの発明の多槽式溶出測定装置についての実施の形態を説明する。

【0006】

【実施例】添付した図面の図1は、この発明の装置の構成を例示した斜視図であり、図2はその側断面図である。たとえばこの図1および図2に示したように、この発明の装置は、少くとも検体槽(1)、対照槽(2)および濾過槽(3)の3槽から構成される。検体槽(1)は従来の装置のベルジャーと同様にその下部が開いた容器として構成されており、この容器で海底泥(8)を覆うことによって、底泥に含まれる栄養塩等の溶出量を測定する。

【0007】
すなわち、検体槽(1)は、その下部が側壁(11)で囲まれた範囲内で海底泥(8)に開放され、側壁(11)と上部(12)とによって外界に対して閉鎖されている。そしてその上部(12)には取水口(7)が設けられており、この取水口(7)には、試料水取水用チューブ(41)が取り付けられている。対照槽(2)は、側壁(21)と上部(22)および下部(23)とによって外界に対して閉鎖されているとともに、その上部(22)では、検体槽(1)の上部(12)とチューブ(42)で直接連通されている。そして、対照槽(2)にも槽内の水を取水するための取水口(7)にチューブ(43)が取り付けられている。濾過槽(3)は対照槽(2)の上部(22)とチューブ(44)で連通されており、かつ、外界の直上水を濾過しながら連続的に取り入れるための濾紙もしくは網を取り付けた採水口(31)が設けられている。また、検体槽(1)と対照槽(2)から試料水を採取する際の槽間の逆流を防ぐため、検体槽(1)と対照槽(2)の間、および対照槽(2)と濾過槽(3)の間の連通のためのチューブ(42)(44)には、各々、逆止弁(5)が配設されている。さらに、各槽内の水質を均一に保つため、槽内上部に攪拌子(6)が設けられている。

【0008】
たとえば以上の構成を有するこの発明の装置においては、外界から隔離された空間であるベルジャー内に閉じ込められた海底泥(8)からの直上水によって測定する従来の装置の場合とは異なり、連通された検体槽(1)、対照槽(2)、および濾過槽(3)を配設することで、検体槽(1)内の直上水を、濾過槽(3)の採水口(31)より採り入れた外界直上水を濾過槽(3)および対照槽(2)を経由して検体槽(1)内へ導くことで外界直上水で置き換えて外界と略同一の環境とすることが可能になっている。つまり、装置内の水質を常に外界と同じ状況に保つことができるため、正確な測定を継続的に行うことが可能になっている。

【0009】
さらに具体的には、この発明の装置を目的の現場に設置する際にも、設置時点で検体槽(1)の装置内に閉じこめられた直上水は必ず攪乱を受けるが、この時点での直上水は測定には使用せず、底泥環境が安定した後に、外界の直上水を、濾過槽(3)の採水口(31)から吸引し、濾過槽(3)、対照槽(2)を経由して、検体槽(1)に導入する。この時、たとえば検体槽(1)の内容積の3倍以上に相当する十分な量の直上水を吸引導入することで、初めに検体槽(1)内に閉じこめられた直上水を外界の直上水と完全に入れ換えることができる。この外界の状態と全く同じと考えられる乱れのない直上水を検体槽(1)に導入した時点を測定の初期状態とする。その後は、数時間毎あるいは1日毎に、検体槽(1)と対照槽(2)に取り付けられた取水口(7)から試料水を採取し、その水質の対照と変化から、底泥に含まれる栄養塩、有機物などの溶出量を測定する。

【0010】
測定の初期状態では、検体槽(1)とともに、対照槽(2)にも同一の外界の直上水が導入される。このとき、対照槽(2)は底部が閉じられているので、底泥の影響は全く受けない。このため、対照槽(2)内の水質変化を測定することは、底泥の影響を受けない海水の部分だけの変化量を測定していることになる。つまり、対照槽(2)で得られる水質変化の測定値を対照として用いることによって、検体槽(1)の水質変化の測定値を海水の部分の変化と底泥の影響による変化とに分離して評価することができる。

【0011】
もちろん、この発明は以上の例によって限定されるものではない。その細部の構成については様々な態様が可能である。

【0012】

【発明の効果】以上詳しく説明したように、この発明の多槽式溶出測定装置では、装置内の水質を常に外界と同じ状況に保つことができるため、海域、湖沼、大規模河川等での正確な底泥の溶出測定を継続的に行うことが可能である。そして、水中における変化の影響を受けることなく、正味の底泥からの溶出を測定することが可能でもある。
図面
【図1】
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【図2】
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