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明細書 :リグニン溶解性イオン液体を使用したバイオマスからのリグニンの製造方法、及びリグニン、ヘミセルロース、及びセルロースの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成28年5月30日(2016.5.30)
発明の名称または考案の名称 リグニン溶解性イオン液体を使用したバイオマスからのリグニンの製造方法、及びリグニン、ヘミセルロース、及びセルロースの製造方法
国際特許分類 C08H   7/00        (2011.01)
C08B  15/08        (2006.01)
C08B  37/14        (2006.01)
C07D 295/08        (2006.01)
FI C08H 7/00
C08B 15/08
C08B 37/14
C07D 295/08 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 24
出願番号 特願2014-522492 (P2014-522492)
国際出願番号 PCT/JP2013/064885
国際公開番号 WO2014/002674
国際出願日 平成25年5月29日(2013.5.29)
国際公開日 平成26年1月3日(2014.1.3)
優先権出願番号 2012143093
優先日 平成24年6月26日(2012.6.26)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC
発明者または考案者 【氏名】伊藤 敏幸
出願人 【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001139、【氏名又は名称】SK特許業務法人
【識別番号】100130328、【弁理士】、【氏名又は名称】奥野 彰彦
【識別番号】100130672、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 寛之
審査請求 未請求
テーマコード 4C090
Fターム 4C090AA04
4C090AA07
4C090BA24
4C090BA81
4C090BB08
4C090BB11
4C090BB12
4C090BB36
4C090BC01
4C090CA06
4C090DA28
4C090DA32
要約 リグニンの溶解性が高いイオン液体の開発と、簡単な装置で低コスト、安全にバイオマスからリグニンを製造するリグニン製造方法を提供する。
本発明によれば、(1)下記化学式(1)
【化1】
JP2014002674A1_000016t.gif
(式(1)中、R、Rは、同じでも違っていてもよく、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基を表し、Rは、1種又は複数置換されてもよく、水素原子、アミノ基、ヒドロキシ基、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、アルコキシ基を表し、Yは、CH、O、Sを表し、nは、環員数に対応し、n=1、2であり、Xは、アミノ酸由来のアニオンを表す。前記アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基は置換基として、ハロゲン、アミノ基、フェニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はヒドロキシ基のうち1種又は複数有してもよい。)で表させるリグニン溶解性イオン液体とバイオマスを20~80℃で混合して混合液を作製し、
(2)前記工程(1)で得られた混合液をイオン液体相と残渣に分離し、
(3)前記工程(2)で得られた前記イオン液体相に溶媒を加え、リグニンを析出させ、分離して回収する工程を備える、リグニンの製造方法が提供される。
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)下記化学式(1)
【化1】
JP2014002674A1_000015t.gif
(式(1)中、R、Rは、同じでも違っていてもよく、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基を表し、Rは、1種又は複数置換されてもよく、水素原子、アミノ基、ヒドロキシ基、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、アルコキシ基を表し、Yは、CH、O、Sを表し、nは、環員数に対応し、n=1、2であり、Xは、アミノ酸由来のアニオンを表す。前記アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基は置換基として、ハロゲン、アミノ基、フェニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はヒドロキシ基のうち1種又は複数有してもよい。)で表させるリグニン溶解性イオン液体とバイオマスを20~80℃で混合して混合液を作製し、
(2)前記工程(1)で得られた混合液をイオン液体相と残渣に分離し、
(3)前記工程(2)で得られた前記イオン液体相に溶媒を加え、リグニンを析出させ、分離して回収する工程を備える、リグニンの製造方法。
【請求項2】
前記Xは、L-アミノ酸由来のアニオンである請求項1に記載のリグニンの製造方法。
【請求項3】
前記Xは、L-リジン又はL-アルギニン由来のアニオンである請求項1又は2に記載のリグニンの製造方法。
【請求項4】
前記R、Rは、炭素数1~6のアルキル基とアルコキシアルキル基であり、前記Rは、水素原子であり、Yは、CHであり、nは、1である請求項1~3の何れか1つに記載のリグニンの製造方法。
【請求項5】
前記R、Rは、メチル基と2-メトキシエチル基であり、前記Rは、水素原子であり、Yは、CHであり、nは、1である請求項1~4の何れか1つに記載のリグニンの製造方法。
【請求項6】
前記工程(2)において、残渣を分離する方法は、ろ過又は遠心分離である請求項1~5の何れか1つに記載のリグニンの製造方法。
【請求項7】
前記工程(2)の後であって、前記工程(3)の前に、前記工程(2)で得られた残渣に、さらに前記イオン液体を加え、前記工程(2)で得られた残渣から前記イオン液体を分離する工程を複数回備える請求項1~6の何れか1つに記載のリグニンの製造方法。
【請求項8】
前記工程(3)において、前記溶媒は、水、アルコール、アセトンである請求項1~7の何れか1つに記載のリグニンの製造方法。
【請求項9】
前記工程(3)において、前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノールである請求項1~8の何れか1つに記載のリグニンの製造方法。
【請求項10】
(4)前記工程(2)において得られた残渣を塩基性水溶液と混合して混合液を作製し、
(5)前記工程(4)で得られた混合液を液相と残渣に分離し、
(6)前記工程(5)で得られた液相からヘミセルロースを回収し、かつ前記工程(5)で得られた残渣からセルロースを回収する工程をさらに備える、リグニン、ヘミセルロース、及びセルロースの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リグニン溶解性イオン液体を使用したバイオマスからのリグニンの製造方法、及びリグニン、ヘミセルロース、及びセルロースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リグニンは芳香族環をもつフェニルプロパノイドの複雑な架橋結合により3次元網目構造をした巨大分子であり、リグニンが多く含有されている木材では、セルロースとリグニンが複雑な複合体を形成しているため、純粋なリグニンを取り出すのは困難であった。リグニンを可溶化して木材から製造する方法としては、従来は硫酸中フェノール溶液で加熱、あるいは、22MPaという高圧下300℃の亜臨界水で加水分解する方法が知られていた。
【0003】
また、近年、リグニンを溶解するのに、イオン液体を溶媒とする方法が提案されている(非特許文献1)。非特許文献1は竹の粉末をイミダゾリウム塩イオン液体で溶解させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Nawshad Muhammad et al., Appl Biochem Biotechnol, 2011, 165, 998-1009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、硫酸中フェノール溶液で加熱する方法はコスト面でも安全性でも問題があり、亜臨界水で加水分解する方法はクリーンな方法であるが大規模な処理装置を有しエネルギー収支の点で問題があり、非特許文献1は少量しか溶解せず、抽出溶媒がアセトンと水の混合溶媒であるため、環境への負荷が懸念される。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、リグニンの溶解性が高いイオン液体の開発と、簡単な装置で低コスト、安全にバイオマスからリグニンを製造するリグニン製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、下記化学式(1)
【化1】
JP2014002674A1_000003t.gif
(式(1)中、R、Rは、同じでも違っていてもよく、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基を表し、Rは、1種又は複数置換されてもよく、水素原子、アミノ基、ヒドロキシ基、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、アルコキシ基を表し、Yは、CH、O、Sを表し、nは、環員数に対応し、n=1、2であり、Xは、アミノ酸由来のアニオンを表す。前記アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基は置換基として、ハロゲン、アミノ基、フェニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はヒドロキシ基のうち1種又は複数有してもよい。)で表させるリグニン溶解性イオン液体が提供される。
【0007】
本発明者らは、リグニンを溶解するイオン液体の開発の鋭意検討を行ったところ、従来用いられてきたイミダゾリウム塩イオン液体ではリグニンの溶解性が乏しかったのに対し、上記化学式(1)で表されるイオン液体を使用することによって、バイオマスからリグニンが容易に抽出できることが分かった。そして、高温高圧の条件を必要とすることがなく、安全にリグニンを製造できることが分かり、本発明の完成に到った。
【0008】
本発明者らの実験によると、カチオンにイミダゾリウム塩やアンモニウム塩を用いた場合に比べて、ピロリジニウム塩やピペリジニウム塩を用いた場合、リグニンの溶解度が高くなった。またアニオンにアミノ酸を用いることで、リグニン溶解性が高いイオン液体になることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のリグニン溶解実験で得られた析出リグニンと標品リグニンのXRDを測定した結果を示す。
【図2】図2は、本発明のリグニンの製造方法を説明するための実験例である。
【図3】図3は、本発明のリグニンの製造方法で得られた析出リグニン、溶け残りのセルロースと標品とのXRDを測定した結果を示す。
【図4】図4は、本発明のリグニンの製造方法で得られた析出リグニンと標品リグニンのIRを測定した結果を示す。
【図5】図5は、本発明のリグニンの製造、セルロース、ヘミセルロースの分離方法を説明するための実験例である。
【図6】図6は、本発明のリグニンの製造方法で杉チップから得られたリグニンと標品リグニンとのXRDとIRを測定した結果を示す。
【図7】図7は、本発明のリグニンの製造方法で杉チップから得られたセルロースと標品セルロースとのXRDとIRを測定した結果を示す。
【図8】図8は、本発明のリグニンの製造方法で杉チップから得られたヘミセルロースと杉チップから得られたセルロースとのXRDとIRを測定した結果を示す。
【図9】図9は、本発明のリグニンの製造方法で杉チップから得られたリグニンのMALDI-QIT-TOF MSを測定した結果を示す。
【図10】図10は、本発明のリグニンの製造方法で杉、ヒノキ、ラワンチップから得られたリグニンのMALDI-QIT-TOF MSを測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
///////////////////////////////
<<1.リグニン溶解性イオン液体>>
<<2.イオン液体の合成>>
<2-1.塩化工程>
<2-2.塩交換工程>
(イオン交換樹脂法)
(酸化銀・メタノール法)
<<3.リグニン製造方法>>
<3-1.工程(1)リグニン溶解工程>
(バイオマス)
<3-2.工程(2)固液分離工程>
(再抽出工程)
<3-3.工程(3)リグニン析出工程>
<3-4.セルロース・ヘミセルロース分離工程>
(工程(4)ヘミセルロース抽出工程)
(工程(5)セルロース・ヘミセルロース分離工程)
(工程(6)セルロース・ヘミセルロース回収工程)
///////////////////////////////

【0011】
<<1.リグニン溶解性イオン液体>>
リグニン溶解性を持つイオン液体は、下記の化学式(1)で表される。

【0012】
【化1】
JP2014002674A1_000004t.gif
式(1)中、R、Rは、同じでも違っていてもよく、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基を表し、Rは、1種又は複数置換されてもよく、水素原子、アミノ基、ヒドロキシ基、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、アルコキシ基を表し、Yは、CH、O、Sを表し、nは、環員数に対応し、n=1、2であり、Xは、アミノ酸由来のアニオンを表す。前記アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基は置換基として、ハロゲン、アミノ基、フェニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はヒドロキシ基のうち1種又は複数有してもよい。

【0013】
炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられ、それぞれ、ハロゲン、アミノ基、フェニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はヒドロキシ基のうち1種又は複数に置換されていてもよい。

【0014】
炭素数2~6のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基が挙げられ、それぞれ、ハロゲン、アミノ基、フェニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はヒドロキシ基のうち1種又は複数に置換されていてもよい。

【0015】
ハロゲンとしてはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が挙げられる。

【0016】
なかでもR、Rとしては、炭素数1~6のアルキル基とアルコキシアルキル基の組み合わせが好ましく、特にメチル基と2-メトキシエチル基の組み合わせが好ましく、Rとしては水素原子が好ましい。

【0017】
Yとしては、CHが好ましく、nとしては、n=1が好ましい。

【0018】
Xはアミノ基とカルボキシル基を同一炭素上に持つ化合物であり、例えばL-アミノ酸、D-アミノ酸が挙げられ、このうちL-アミノ酸が好ましく、特にリジン、アルギニンが好ましい。

【0019】
<<2.イオン液体の合成>>
イオン液体の合成は大きく分けて次の2つの工程、<2-1.塩化工程>、<2-2.塩交換工程>で合成される。

【0020】
<2-1.塩化工程>
塩化工程では、ピロリジン誘導体と末端にハロゲンを持つ化合物を混合し、ハロゲンをアニオンに持つピロリジニウム塩を合成する。具体的には例えば、ピロリジン誘導体と末端にハロゲンを持つ化合物を反応容器に入れ、40~160℃で混合する。常圧で混合を行なってもよく、耐圧容器を用いて加圧条件下で行なってもよい。反応容器は、特に限定はしないが、ガラス製やテフロン(登録商標)製などが利用できる。前記混合方法は、特に限定はしないが、スターラーを用いてもよく、振とう機を用いてもよい。

【0021】
塩化工程の反応温度は、40~160℃であり、好ましくは60~100℃である。塩化工程の温度が低すぎると反応が進行せず、温度が高すぎると原料が気化し、イオン液体が着色するためである。この温度は、具体的には例えば、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150又は160℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0022】
塩化工程の反応時間は、特に限定はしないが、例えば6~48時間であり、好ましくは12~24時間である。この時間は、具体的には例えば、6、7、8、9、10、11、12、15、18、21、24、27、30、36、42又は48時間であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0023】
塩化工程の後、さらに、洗浄溶媒を加えて洗浄を行う洗浄工程を行なってもよい。洗浄工程は、未反応の基質を取り除くために行う工程である。前記洗浄溶媒は、特に限定されないが、ヘキサン、酢酸エチル、アセトニトリルやそれらの混合溶媒が挙げられ、基質を溶解し、ハロゲンをアニオンに持つピロリジニウム塩を溶解しない溶媒であればよい。

【0024】
<2-2.塩交換工程>
塩交換工程では、アニオンのハロゲンを目的のアミノ酸に交換を行う。
上記の化学式(1)のイオン液体を合成する方法は下記の(イオン交換樹脂法)と(酸化銀・メタノール法)の2つあり、(イオン交換樹脂法)は使用するイオン交換樹脂が再利用できるためコストが低く、(酸化銀・メタノール法)は大量合成に向いている利点がそれぞれある。(イオン交換樹脂法)と(酸化銀・メタノール法)で得られる生成物は全く同じであり、それぞれの利点を加味して状況に合わせた合成法を選ぶことができる。

【0025】
(イオン交換樹脂法)
イオン交換樹脂法では、イオン交換樹脂に上記の<2-1.塩化工程>で得られたハロゲンをアニオンに持つピロリジニウム塩を通すことによりアニオンが水酸化物イオンに交換され、続いてアミノ酸と反応させることにより、水分子として脱離し、アニオンがアミノ酸であるピロリジニウム塩イオン液体が合成できる。具体的には例えば、ピロリジニウム塩水溶液をイオン交換樹脂に通し、アミノ酸水溶液と混合する。その後、水を留去する。前記イオン交換樹脂は、特に限定はしないが、陰イオン交換樹脂であり、アニオンをハロゲンから水酸化物イオンに交換できるものであればよい。反応容器は、特に限定はしないが、ガラス製、テフロン製やプラスチック製などが利用できる。前記混合方法は、特に限定はしないが、スターラーを用いてもよく、振とう機を用いてもよい。

【0026】
イオン交換樹脂を用いた塩交換の方法は、特に限定はしないが、筒状やロート状の容器にイオン交換樹脂を充填し、そこに自然落下又は圧力をかけて通す方法や、ビーカーやフラスコに入れ混合する方法でもよく、アニオンがハロゲンから水酸化物イオンへ交換される方法であればよい。
具体的には例えば、ガラス製のカラムにイオン交換樹脂を充填し、そこにピロリジニウム塩を自然落下により通すことで塩交換することができる。

【0027】
イオン交換樹脂法の反応温度は、-10~30℃であり、好ましくは0~10℃である。イオン交換樹脂法の温度が低すぎると反応が進行せず、温度が高すぎると原料が壊れてしまうためである。この温度は、具体的には例えば、-10、-5、0、5、10、20又は30℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0028】
イオン交換樹脂法の反応時間は、特に限定はしないが、例えば6~48時間であり、好ましくは12~24時間である。この時間は、具体的には例えば、6、7、8、9、10、11、12、15、18、21、24、27、30、36、42又は48時間であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0029】
イオン交換樹脂法では、さらに、水を留去した後に、洗浄分離工程を行なってもよい。洗浄分離工程は、未反応の基質を取り除くために行う工程である。洗浄溶媒は、特に限定されないが、アセトニトリル、メタノール、アセトンやそれらの混合溶媒が挙げられ、ピロリジニウム塩イオン液体を溶解し、基質を溶解しない溶媒であればよい。
分離方法は、特に限定されないが、例えば、ろ過や遠心分離などの方法を用いることができる。ろ過の方法としては、自然ろ過、減圧ろ過または加圧ろ過が挙げられる。
洗浄分離工程により未反応基質を取り除き、洗浄溶媒を留去することでピロリジニウム塩イオン液体を得ることができる。

【0030】
(酸化銀・メタノール法)
酸化銀・メタノール法では、上記の<2-1.塩化工程>で得られたハロゲンをアニオンに持つピロリジニウム塩をメタノール中で反応させることによりアニオンがメトキシドに交換され、続いてアミノ酸と反応させることにより、メタノールとして脱離し、アニオンがアミノ酸であるピロリジニウム塩イオン液体が合成できる。具体的には例えば、ピロリジニウム塩、酸化銀、メタノールを混合し、固形分を分離し、分離した反応液にアミノ酸を混合し、固形分を分離し、溶媒を留去する。反応容器は、特に限定はしないが、ガラス製やテフロン製などが利用できる。前記混合方法は、特に限定はしないが、スターラーを用いてもよく、振とう機を用いてもよい。

【0031】
固形分を分離する方法は、特に限定されないが、例えば、ろ過や遠心分離などの方法を用いることができる。ろ過の方法としては、自然ろ過、減圧ろ過または加圧ろ過が挙げられる。

【0032】
酸化銀・メタノール法での反応温度は、0~50℃であり、好ましくは15~35℃である。この温度は、具体的には例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0033】
酸化銀・メタノール法での反応時間は、特に限定はしないが、例えば12~72時間であり、好ましくは24~48時間である。この時間は、具体的には例えば、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66又は72時間であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0034】
<<3.リグニン製造方法>>
本発明の一実施形態のリグニンの製造方法は、(1)イオン液体とバイオマスを混合し、(2)前記工程(1)で得られた混合液からイオン液体相と残渣を分離し、(3)前記工程(2)で得られた前記イオン液体相にリグニン析出溶媒を加え、リグニンを析出させ、分離する工程を備える。

【0035】
<3-1.工程(1)リグニン溶解工程>
工程(1)では、イオン液体とバイオマスを混合しリグニンをイオン液体に溶解させる。具体的には例えば、イオン液体とバイオマスを反応容器に入れ、0~120℃で混合する。常圧で混合を行なってもよく、耐圧容器を用いて減圧又は加圧条件下で行なってもよい。前記反応容器は、特に限定はしないが、ガラス製、テフロン製やプラスチック製などが利用できる。前記混合方法は、特に限定はしないが、スターラーを用いてもよく、振とう機を用いてもよい。工程(1)ではバイオマス中のリグニンがイオン液体に溶解し、セルロース、ヘミセルロースは溶解されずに残渣として溶け残っている。

【0036】
リグニン溶解工程の反応温度は、0~120℃であり、好ましくは20~100℃である。リグニン溶解工程の温度が低すぎると反応が進行せず、温度が高すぎるとイオン液体が分解するためである。リグニン溶解工程の温度は、具体的には例えば、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110又は120℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0037】
本発明で用いるイオン液体はセルロースも溶解するが、その溶解には80℃以上の温度が必要である。一方、リグニンは60℃~80℃で溶解することができる。このため、本発明のイオン液体にバイオマスを加えて80℃以下で撹拌することで、リグニンの選択的な抽出が可能になる。

【0038】
リグニン溶解工程の反応時間は、特に限定はしないが、例えば0.5~24時間であり、好ましくは6~12時間である。この時間は、具体的には例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、21又は24時間であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0039】
(バイオマス)
バイオマスとしては、植物系のバイオマスであれば特に限定はしないが、例えば木質系又は草本系植物原料が挙げられる。この木質系原料として、例えば、間伐材、木材加工屑家屋廃材などがあり、草本系原料としては、例えば、バガス、籾殻、稲、麦などの藁類、ケナフ、エリアンサス、農産物廃棄物などがある。

【0040】
<3-2.工程(2)固液分離工程>
工程(2)では、工程(1)で得られた混合液からイオン液体相と残渣を種々の固液分離法を用いて分離する。残渣は、固体またはゲル状の形状をしている。固液分離法は、特に限定されないが、例えば、ろ過や遠心分離などの方法を用いることができる。ろ過の方法としては、自然ろ過、減圧ろ過または加圧ろ過が挙げられる。
具体的には例えば、遠心分離により分離したイオン液体をピペットなどで取り除くことにより分離することができる。

【0041】
(再抽出工程)
固液分離工程の後、さらに、イオン液体を加え固液分離を行い残渣からイオン液体を分離する再抽出工程を複数回行なってもよい。再抽出工程は、残渣から完全にリグニンが溶解したイオン液体を取り除くために行う工程である。再抽出に用いるイオン液体は、特に限定されないが、好ましくはリグニン溶解工程で使用したものと同じイオン液体を使用して行うのがよい。再抽出方法としては、例えば、再度イオン液体を加え残渣と混合し、遠心分離により分離する方法を使用することができる。
再抽出工程の反応温度は、上記の<3-1.工程(1)リグニン溶解工程>と同じで、反応時間は、特に限定はしないが、例えば0.5~3時間であり、好ましくは1~2時間である。この時間は、具体的には例えば、0.5、1、1.5、2、2.5又は3時間であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0042】
なお、再抽出工程は、リグニンの抽出効率を向上させるために行うものであり、特に大きな収率の変動がないため、再抽出工程は適時省略することが可能である。

【0043】
<3-3.工程(3)リグニン析出工程>
工程(3)では、工程(2)で得られたイオン液体相にリグニン析出溶媒を加え、リグニンを析出させ、分離する。リグニン析出溶媒は、特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、水、アセトンを用いることができ、イオン液体を溶解し、リグニンを溶解しない溶媒であればよい。

【0044】
リグニンとイオン液体の分離法は、特に限定されないが、例えば、ろ過や遠心分離などの方法を用いることができる。ろ過の方法としては、自然ろ過、減圧ろ過または加圧ろ過が挙げられる。
具体的には例えば、遠心分離により分離したイオン液体をピペットなどで取り除くことにより分離することができる。

【0045】
<3-4.セルロース・ヘミセルロース分離工程>
セルロース・ヘミセルロース分離工程は、工程(2)で得られた残渣に塩基性水溶液を加え混合液を作製する工程(4)と、工程(4)で得られた混合液を液相と残渣に分離する工程(5)と、工程(5)で得られた液相からヘミセルロースを回収し、かつ工程(5)で得られた残渣からセルロースを回収する工程(6)から構成される。

【0046】
(工程(4)ヘミセルロース抽出工程)
工程(4)では、工程(2)で得られた残渣に塩基性水溶液を加え混合液を作成し、ヘミセルロースを塩基性水溶液に溶解させる。塩基性水溶液は、特に限定されないが、種々の濃度の水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(CaOH)などの水溶液を用いることができ、ヘミセルロースを溶解し、セルロースを溶解しない溶液であればよい。特に、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
工程(4)は、<3-1.工程(1)リグニン溶解工程>と同様の方法にて行うことができる。

【0047】
(工程(5)セルロース・ヘミセルロース分離工程)
工程(5)では、工程(4)で得られた混合液を種々の固液分離法を用いて液相と残渣に分離する。固液分離法は<3-2.工程(2)固液分離工程>と同様の方法にて行うことができる。

【0048】
(工程(6)セルロース・ヘミセルロース回収工程)
工程(6)では、工程(5)で得られた液相からヘミセルロースを回収し、かつ工程(5)で得られた残渣からセルロースを回収する。

【0049】
ヘミセルロースの回収方法は、工程(5)で得られた液相を乾燥させ、水洗浄を行い、再度乾燥させる事により、ヘミセルロースを回収することができる。

【0050】
セルロースの回収方法は、工程(5)で得られた残渣を水洗浄し、乾燥させる事により、ヘミセルロースを精製することができる。

【0051】
(工程(6)セルロース・ヘミセルロース回収工程)での乾燥方法は、特に限定されないが、例えば、自然乾燥、真空乾燥、加熱乾燥などの方法を用いることができる。

【0052】
(工程(6)セルロース・ヘミセルロース回収工程)での水洗浄方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーや、振とう機などで撹拌し、水相をピペットなどで取り除く方法を用いることができる。
【実施例】
【0053】
///////////////////////////////
<<1.リグニン溶解性イオン液体の合成>>
<1-1.塩化工程>
<1-2.塩交換工程>
(イオン交換樹脂法)
(酸化銀・メタノール法)
<1-3.各種のL-アミノ酸イオン液体の合成>
<<2.リグニン溶解実験>>
<2-1.カチオンの違いによる溶解性の変化>
<2-2.アニオンの違いによる溶解性の変化>
<<3.バイオマス溶解実験>>
<3-1.杉チップ溶解実験>
<3-2.標品との比較>
<3-3.リグニン・セルロース・ヘミセルロース分離実験>
<3-4.カチオンの違いによる溶解性の変化>
<<4.イオン液体のリサイクル>>
///////////////////////////////
【実施例】
【0054】
<<1.リグニン溶解性イオン液体の合成>>
以下の方法に従って、リグニン溶解性イオン液体を合成した。
【実施例】
【0055】
<1-1.塩化工程>
以下の化学式(2)に示す塩化反応を行った。
二口ナスフラスコをアルゴン置換し、1-メチルピロリジン14.4mlを量りとり、2-ブロモエチルメチルエーテル13.6mlを滴下し、80℃で24時間、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌した。撹拌終了後、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒(7/1)を用いて洗浄し、未反応の基質、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒を留去し、減圧乾燥を行い1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピロリジニウムブロマイドを収率98%で得た。
【実施例】
【0056】
【化2】
JP2014002674A1_000005t.gif
【実施例】
【0057】
<1-2.塩交換工程>
イオン交換法、酸化銀・メタノール法を用いて、それぞれ以下の化学式(3)、化学式(4)に示す、アニオンをブロマイドからアミノ酸への塩交換反応を行った。反応条件は、以下の通りである。
【実施例】
【0058】
(イオン交換樹脂法)
上記の<1-1.塩化工程>で得られた1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピロリジニウムブロマイド1.5gの水溶液(水:10ml)をイオン交換樹脂(オルガノ株式会社製:Amberlite IRA400CL)に通した後、リジン水溶液(リジン:1.17g、水:50ml)に0℃で滴下し24時間、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌した。水を留去し、アセトニトリル/メタノール混合溶媒(9/1)で1回洗浄し、ろ過を行った。その後、アセトニトリル/メタノール混合溶媒を留去し、減圧乾燥して、N-メチル-N-(2-メトキシエチル)ピロリジニウムリジン([P1ME][Lys])を収率96%で得た。NMR、IRを測定した結果は以下の通りである。
1H NMR (500 MHz, ppm, CD3OD, J = Hz) 1.35-1.45(6H, m), 2.17(4H, s), 2.58(2H, t, J=6.9Hz), 3.25(1H, t, J=1.8), 3.30(2H, br), 3.35(2H, br), 3.38(3H, s), 3.53-3.56(8H, m), 3.77(2H, s); 13C NMR (125 MHz, ppm, CD3OD, J = Hz) 182.49, 67.63, 66.31, 64.40, 59.21, 57.61, 49.34, 42.46, 36.62, 33.94, 24.31, 22.43; IR (neat, cm-1) 3347, 3279, 2930, 2856, 2815, 2063, 1582, 1462, 1396, 1123, 1038
【実施例】
【0059】
【化3】
JP2014002674A1_000006t.gif
【実施例】
【0060】
(酸化銀・メタノール法)
上記の<1-1.塩化工程>で得られた1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピロリジニウムブロマイド30.8gとメタノール50mlを混合し、酸化銀(I)25.6gを1時間かけて投入し、室温で24時間、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌した。反応液を濾過し、濾残をメタノール50mlで洗い濾洗液を得た。この濾洗液に、(L)-α-リジン23.9gを室温で15分かけて投入し、室温で48時間、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌した。浮遊していた固体を濾別し、濾液を濃縮乾燥して濃縮物70.0gを得た。この濃縮物にトルエンを加え、減圧して濃縮乾燥することで、N-メチル-N-(2-メトキシエチル)ピロリジニウムリジン([P1ME][Lys])35.8gを収率91%で得た。
【実施例】
【0061】
【化4】
JP2014002674A1_000007t.gif
【実施例】
【0062】
<1-3.20種類のL-アミノ酸イオン液体の合成>
上記の(イオン交換樹脂法)と同様の合成法で、20種類のL-アミノ酸を用いてイオン液体を合成した結果を、表1に示す。
表1から、すべてのアミノ酸で良好な収率でイオン液体を合成できることが分かる。ここで、カチオンのN-メチル-N-(2-メトキシエチル)ピロリジニウムは[P1ME]と表記し、アニオンのアミノ酸は3文字表記で記載する。
【実施例】
【0063】
【表1】
JP2014002674A1_000008t.gif
【実施例】
【0064】
<<2.リグニン溶解実験>>
イオン液体([P1ME][Lys])1gに対し、標品リグニン(ALDRICH製 lignin,alkali:471003-100G)0.05gをバイアル管に量りとり、5wt%混合液とし、室温で5時間、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌し、溶解しているかを目視で確認し溶解していたら、さらにリグニンを0.05gずつ加えていき溶解度を調べた。室温で溶解しないのを確認したら60℃、100℃に順次、昇温して溶解度を調べた。60℃、100℃では1時間撹拌させた。
100℃でも溶解しないのを確認したら、エタノールで希釈し、リグニンを析出させ、3500rpmで5分間遠心分離を行い、イオン液体とリグニンを分離した。
【実施例】
【0065】
析出したリグニンのXRD測定を行い、標品リグニン(ALDRICH製 lignin,alkali:471003-100G)とパターンを比較した結果を図1に示す。
図1の結果から明らかなように、溶解前と溶解後では、リグニンの構造が変化していないことが分かった。
【実施例】
【0066】
<2-1.カチオンの違いによる溶解性の変化>
上記の<<1.リグニン溶解性イオン液体の合成>>と同様の合成方法により、基質を変えて、以下の化学式(5)に示す5種のイオン液体を合成した。N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムアラニン([N221ME][Ala])は基質にジエチルメチルアミンを使用して合成し、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-(メチルチオ)エチル)アンモニウムアラニン([N221MTE][Ala])は基質にジエチルメチルアミンと2-クロロエチルメチルスルフィドを使用して合成し、N,N-ジエチル-2-メトキシ-N-(2-メトキシエチル)エタンアンモニウムアラニン([N22(ME)2][Ala])は基質にジエチル(2-メトキシエチル)アミンを使用して合成し、N-エチル-2-メトキシ-N,N-ビス(2-メトキシエチル)エタンアンモニウムアラニン([N2(ME)3][Ala])は基質にエチルビス(2-メトキシエチル)アミンを使用して合成し、3-(2-メトキシエチル)-1-メチルイミダゾリウムアラニン([(2-ME)mim][Ala])は基質に1-メチルイミダゾールを使用して合成した。
【実施例】
【0067】
【化5】
JP2014002674A1_000009t.gif
【実施例】
【0068】
上記の<1-3.20種類のL-アミノ酸イオン液体の合成>で合成した、[P1ME][Ala]と化学式(5)に示す5種のイオン液体について、上記の<<2.リグニン溶解実験>>と同様の操作で、リグニンの溶解性を調べた結果を表2に示す。
表2の結果から、[P1ME][Ala]が最もリグニンを溶解することが分かった。
【実施例】
【0069】
さらに、上記の<1-3.20種類のL-アミノ酸イオン液体の合成>で合成した、[P1ME][Lys]と化学式(6)に示すN-メチル-N-(2-メトキシエチル)ピペリジニウムリジン([Py1ME][Lys])について、上記の<<2.リグニン溶解実験>>と同様の操作で、リグニンの溶解性を調べた結果を表3に示す。N-メチル-N-(2-メトキシエチル)ピペリジニウムリジン([Py1ME][Lys])は基質にN-メチルピペリジンを使用して、上記の<1-1.塩化工程>および(イオン交換樹脂法)と同様の方法で合成された。
表3の結果から、[P1ME][Lys]、[Py1ME][Lys]は両方共、高いリグニン溶解性を示すことが分かった。
【実施例】
【0070】
【化6】
JP2014002674A1_000010t.gif
【実施例】
【0071】
【表2】
JP2014002674A1_000011t.gif
【実施例】
【0072】
【表3】
JP2014002674A1_000012t.gif
【実施例】
【0073】
<2-2.アニオンの違いによる溶解性の変化>
上記の<1-3.20種類のL-アミノ酸イオン液体の合成>で合成したイオン液体20種を使用してリグニンの溶解実験を行った結果を表4に示す。
表4の結果から、リジン、アルギニンに最も多くリグニンが溶解し、次いで、フェニルアラニン、チロシンによく溶解することが分かった。この結果から、リジン、アルギニン末端にアミノ基を持っており、このアミノ基がリグニンとセルロースの間で水素結合を形成し、リグニンをセルロースから引き剥がす効果が高いと思われる。また、フェニルアラニン、チロシンはともにベンゼン環を持っており、このベンゼン環とリグニンのベンゼン環とのスタッキング相互作用により、リグニンがイオン液体になじみやすく溶解性が高いものと思われる。
【実施例】
【0074】
【表4】
JP2014002674A1_000013t.gif
【実施例】
【0075】
<<3.バイオマス溶解実験>>
図2に示したように、上記の<<1.リグニン溶解性イオン液体の合成>>で合成した、N-メチル-N-(2-メトキシエチル)ピロリジニウムリジン([P1ME][Lys])を使用しバイオマスの溶解実験を行った。バイオマスとして杉チップを使用し、杉チップは杉の板をノコギリで切るときにでるオガクズを使用した。
【実施例】
【0076】
<3-1.杉チップ溶解実験>
イオン液体([P1ME][Lys])1gに杉のチップ0.1gをスピッツ管に計りとり混合液とし、60℃で12時間撹拌した。続いて、遠心分離をした後、イオン液体層を回収した。そしてさらに、スピッツ管にイオン液体を0.3g加え、60℃で1時間撹拌、遠心分離、イオン液体層を回収という操作を2回行った。回収したイオン液体層をエタノールで希釈し、リグニンを析出させた。続いて遠心分離にかけてリグニンを分離し、真空乾燥して質量を測定した。
【実施例】
【0077】
杉チップ溶解実験では杉チップあたり16wt%のリグニンを回収することに成功した。杉には約20%のリグニンが含まれているので、ほとんどすべてを回収できることが分かった。
【実施例】
【0078】
<3-2.標品との比較>
上記の<3-1.杉チップ溶解実験>で得られた析出リグニンと溶け残りの残渣のXRDを測定した結果を図3に示す。
図3の結果から、析出リグニンは標品セルロース(Fluka製 Avicel PH-101:11365)のような鋭いピークがでず、標品リグニン(ALDRICH製 lignin,alkali:471003-100G)と同じようなピークが出ることが分かった。溶け残りの残渣は標品セルロース(Fluka製 Avicel PH-101:11365)と類似したパターンのピークが見られ、溶け残りの残渣はI型セルロースであると分かった。
【実施例】
【0079】
また、上記の<3-1.杉チップ溶解実験>で得られた析出リグニンのIRを測定した結果を図4に示す。
図4の結果から、析出リグニンと標品リグニン(ALDRICH製 lignin,alkali:471003-100G)はIRのパターンが類似していることが分かる。
【実施例】
【0080】
図3、図4の結果から、イオン液体([P1ME][Lys])を使用して溶解実験を行うことで、杉チップからリグニンのみを抽出でき、溶解しなかった残渣はリグニンが除かれたセルロースであることが分かった。
【実施例】
【0081】
<3-3.リグニン・セルロース・ヘミセルロース分離実験>
図5に示したように、上記の<3-1.杉チップ溶解実験>と同様の方法で分量を10倍にしてリグニンを0.131g分離した。遠心分離後に試験管に残った残渣Dを水で3回洗浄し、0.1Mの水溶液ナトリウム水溶液でヘミセルロースの抽出を行い、抽出液Fを得た。得られた抽出液Fを真空乾燥させ、水で洗浄し、再度真空乾燥を行うことによりヘミセルロースを0.093g得た。さらに残渣Dからヘミセルロースを抽出したあとに残った残渣Eを水で3回洗浄し、真空乾燥を行うことによりセルロースを0.665g得た。
【実施例】
【0082】
上記の<3-3.リグニン・セルロース・ヘミセルロース分離実験>で得られたリグニン、セルロース、ヘミセルロースのXRDとIRを測定した結果を図6、図7,図8に示す。
【実施例】
【0083】
図6の結果から、得られたリグニンと標品リグニン(ALDRICH製 lignin,alkali:471003-100G)はXRDとIRのパターンが類似していることが分かる。同様に、図7の結果から、得られたセルロースと標品セルロース(Fluka製 Avicel PH-101:11365)はXRDとIRのパターンが類似していることが分かる。
また、図8の結果から、得られたセルロースとヘミセルロースはXRDとIRのパターンが大きく異なることが分かる。
【実施例】
【0084】
図6、図7,図8の結果から、イオン液体([P1ME][Lys])を使用してリグニン、セルロース、ヘミセルロースの分離を行うことで、綺麗に3成分が分離できることが分かった。
【実施例】
【0085】
上記の<3-3.リグニン・セルロース・ヘミセルロース分離実験>で得られたリグニンのMALDI-QIT-TOF MSを測定した結果を図9に示す。
【実施例】
【0086】
図9の結果から、得られたリグニンの分子量は21キロダルトンになることが分かり、本発明の方法を用いることで、リグニンの構造をほとんど破壊することなく分離することが可能であることが分かる。
【実施例】
【0087】
上記の<3-1.杉チップ溶解実験>と同様の方法で、杉の代わりにヒノキとラワンをバイオマスとして使用し、それぞれからリグニンを分離し、杉、ヒノキ、ラワンから得られたリグニンのMALDI-QIT-TOF MSを測定した結果を図10に示す。
【実施例】
【0088】
図10の結果から、杉とヒノキから得られるリグニンはm/z=196+197×nとm/z=110+197×nの2種のポリマーから構成され、ラワンから得られるリグニンはm/z=196+197×nの単一のポリマーから構成されていることが分かる。
【実施例】
【0089】
<3-4.カチオンの違いによる溶解性の変化>
カチオンを変えた3種のイオン液体について、上記の<3-1.杉チップ溶解実験>と同様の操作で、リグニンの溶解性を調べた結果を表5に示す。
使用したイオン液体は、上記の<1-1.塩化工程>および(イオン交換樹脂法)と同様の方法で基質を変えて合成された。N-メチル-N-(2-メトキシエチル)ピペリジニウムリジン([Py1ME][Lys])は基質にN-メチルピペリジンを使用して合成し、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムリジン([N221ME][Lys])は基質にジエチルメチルアミンを使用して合成した。
【実施例】
【0090】
表5の結果から明らかなように、[Py1ME]、[N221ME]に比べて[P1ME]はリグニンの溶解度が高いことが分かった。
【実施例】
【0091】
【表5】
JP2014002674A1_000014t.gif
【実施例】
【0092】
<<4.イオン液体のリサイクル>>
上記の<3-1.杉チップ溶解実験>でリグニンと分離したイオン液体からエタノールを留去し、真空乾燥を行いイオン液体の再生を行った。
この再生したイオン液体をもう一度、<3-1.杉チップ溶解実験>の溶媒として利用すると、リグニンが初めて利用した時と同じ量溶解することが分かった。
【実施例】
【0093】
この再生をして、<3-1.杉チップ溶解実験>の溶媒として利用する操作を5回繰り返してもリグニンの溶解量が全く変わらないことが分かり、イオン液体[P1ME][Lys]は再生処理を行うことで何度も再利用が可能であることがわかった。
【実施例】
【0094】
本発明の方法を用いれば、間伐材、木材加工屑、家屋廃材など,これまであまり利用価値がなかったバイオマスをリグニン成分とセルロース成分に分離することが可能となる。また、イオン液体、使用した溶媒なども回収してほとんどロスすることなく再利用ができるため、廃棄物がでないクリーンなリグニン製造が可能である。
リグニンは、ポリマー、医薬品、香料の原料として利用でき、リグニンがほぼすべて取り除けているので、溶け残りのセルロースはパルプとして利用が可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
9