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明細書 :褐色脂肪細胞及びその調製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成28年6月23日(2016.6.23)
発明の名称または考案の名称 褐色脂肪細胞及びその調製方法
国際特許分類 C12N   5/10        (2006.01)
A61K  35/12        (2015.01)
A61P   3/04        (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61P   3/06        (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
A61P  19/06        (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61P   3/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 5/00 102
A61K 35/12
A61P 3/04
A61P 3/10
A61P 3/06
A61P 9/10 101
A61P 9/12
A61P 19/06
A61P 1/16
A61P 3/00
C12N 15/00 A
国際予備審査の請求
全頁数 38
出願番号 特願2014-524904 (P2014-524904)
国際出願番号 PCT/JP2013/069226
国際公開番号 WO2014/010746
国際出願日 平成25年7月12日(2013.7.12)
国際公開日 平成26年1月16日(2014.1.16)
優先権出願番号 2012156066
優先日 平成24年7月12日(2012.7.12)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC
発明者または考案者 【氏名】岸田 綱郎
【氏名】松田 修
出願人 【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B065
4C087
Fターム 4B024AA01
4B024CA01
4B024CA09
4B024CA11
4B024CA20
4B024GA11
4B024HA17
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA67
4C087NA10
4C087NA14
4C087ZA42
4C087ZA45
4C087ZA70
4C087ZA75
4C087ZC21
4C087ZC31
4C087ZC33
4C087ZC35
要約 本発明は、哺乳動物の体細胞に褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物を導入することで、前記体細胞から褐色脂肪細胞を調製する方法であって、前記褐色脂肪細胞関連遺伝子がPRDM16(P)及びC/EBPβ(C)からなる群から選択される少なくとも1種であり、リプログラミング関連遺伝子がMycファミリーの遺伝子(c-Myc(M)、N-Myc、 L-Myc(L)、S-Myc, B-Myc)、GLIS ファミリーの遺伝子(GLIS1(G)、GLIS 2、GLIS 3)、 Klfファミリーの遺伝子(KLF1, KLF2, KLF3, KLF4(K), KLF5, KLF6, KLF7, KLF8, KLF9, KLF10, KLF11, KLF12, KLF13, KLF14, KLF15, KLF16, KLF17)、Octファミリーの遺伝子、Soxファミリーの遺伝子、Lin-28からなる群から選択される少なくとも1種である、褐色脂肪細胞を調製する方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
哺乳動物の体細胞に褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物を導入することで、前記体細胞から褐色脂肪細胞を調製する方法であって、前記褐色脂肪細胞関連遺伝子がPRDM16(P)及びC/EBPβ(C)からなる群から選択される少なくとも1種であり、リプログラミング関連遺伝子がMycファミリーの遺伝子、GLIS ファミリーの遺伝子、 Klfファミリーの遺伝子、Octファミリーの遺伝子、Soxファミリーの遺伝子、Lin-28からなる群から選択される少なくとも1種である、褐色脂肪細胞を調製する方法。
【請求項2】
前記体細胞が線維芽細胞または白色脂肪細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物がC/EBPβである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
リプログラミング関連遺伝子又はその発現産物がc-MycまたはL-Mycを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
リプログラミング関連遺伝子又はその発現産物がc-Mycを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
体細胞に導入される褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物の組み合わせが、PCM、CM、PCL、CL、PCG、CG、PCML、CML、PCM Oct3/4、CM Oct3/4、PCMG、CMG、PCL Oct3/4、CL Oct3/4、PCLG、CLG、PCML Oct3/4、CML Oct3/4、PCMLG、CMLG、PCM Oct3/4 G、CM Oct3/4 G、PCL Oct3/4 G、CL Oct3/4 G、PCML Oct3/4 G、CML Oct3/4 G(ここで、Pは「PRDM16」を示し、Cは「C/EBPβ」を示し、Mは「c-Myc」を示し、Lは「L-Myc」を示し、Gは「Glis1」を示す)からなる群から選ばれるいずれかの組み合わせである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
体細胞に導入される褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物の組み合わせが、PCM、CM、PCL、CL、PCML、CML、PCM Oct3/4、CM Oct3/4、PCMG、CMG、PCL Oct3/4、CL Oct3/4、PCLG、CLG、PCML Oct3/4、CML Oct3/4、PCMLG、CMLG、PCM Oct3/4 G、CM Oct3/4 G、PCL Oct3/4 G、CL Oct3/4 G、PCML Oct3/4 G、CML Oct3/4 Gからなる群から選ばれるいずれかの組み合わせである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
体細胞に導入される褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物の組み合わせが、PCM、CM、PCML、CML、PCMG、CMG、PCLG、CLG、PCMLG、CMLGからなる群から選ばれるいずれかの組み合わせである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
哺乳動物の体細胞に由来し、褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物を有する褐色脂肪細胞であって、前記褐色脂肪細胞関連遺伝子がPRDM16(P)及びC/EBPβ(C)からなる群から選択される少なくとも1種であり、リプログラミング関連遺伝子がMycファミリーの遺伝子、GLIS ファミリーの遺伝子、 Klfファミリーの遺伝子、Octファミリーの遺伝子、Soxファミリーの遺伝子、Lin-28からなる群から選択される少なくとも1種である、褐色脂肪細胞。
【請求項10】
肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患、メタボリックシンドロームの予防又は治療剤であって、請求項1~8のいずれかに記載の方法により調製された褐色脂肪細胞、または、請求項9に記載の褐色脂肪細胞を有効成分とする、予防又は治療剤。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載の方法により調製された褐色脂肪細胞、または、請求項9に記載の褐色脂肪細胞の肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患、メタボリックシンドロームの予防又は治療のための使用。
【請求項12】
請求項1~8のいずれかに記載の方法により調製された褐色脂肪細胞、または、請求項9に記載の褐色脂肪細胞を含む、移植材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、褐色脂肪細胞及びその調製方法に関する。また、本発明は、肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患、メタボリックシンドロームの予防又は治療剤およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満とこれに関連する代謝疾患、例えば糖尿病、メタボリックシンドロームなどは、先進工業国において、極めて大きな医療、社会上の問題になっている。肥満症においては、白色脂肪細胞が、食物由来の余剰エネルギーを脂肪酸として貯蔵するのみならず、さまざまなホルモンやサイトカインを産生して耐糖能異常、脂質代謝異常を惹起し、II型糖尿病、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症・痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患等をもたらす。
【0003】
一方、褐色脂肪(BA)細胞は、白色脂肪細胞とは逆に、脂肪酸を酸化分解してそのエネルギーを熱として放出する細胞である。これは、BA細胞が特異的に発現するミトコンドリア内膜蛋白、UCP1(Uncoupling protein 1)が、酸化的リン酸化を脱共役させるためである。マウスなどげっ歯類では、BA細胞は肩甲骨間、後頚部、縦隔, 腎周囲等に存在する。また、UCP1ノックアウトマウスの解析等から、BA細胞は肥満と耐糖能異常を抑制することが知られている。
【0004】
褐色脂肪細胞は、ヒトでは乳児期にのみ存在し、成人では存在しないと、最近まで考えられてきたが、2009年になって、成人でも鎖骨上部の皮下組織、大動脈周囲等に褐色脂肪細胞が存在することが明らかにされた(非特許文献1~3)。褐色脂肪細胞の数と機能には大きな個人差があり、BMI(体格指数)と空腹時血糖に逆相関する。やせ型のヒトでは多く、肥満、糖尿病、高脂血症の患者では極端に低下している。したがって、肥満、糖尿病、高脂血症等の疾患の遺伝的素因を解析し、環境要因を探索し、病態を解明し、あるいは新しい診断法や治療効果の判定等の技術を開発する上で、褐色脂肪細胞は重要な意義を持つ。褐色脂肪細胞はまた、これら疾患に対する新しい治療薬の開発にも極めて有益であると考えられる。さらに肥満、糖尿病、高脂血症、メタボリック症候群等の患者に褐色脂肪細胞を補充することができれば、これら疾患に対する新しい治療手段となる可能性がある。
【0005】
ヒトiPS細胞から間葉系幹細胞、次いで褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞を得る方法は知られているが(非特許文献4)、iPS細胞から褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞を誘導すると、最終の脂肪細胞を得るまでに時間がかかり、iPS由来であることから癌化のリスクが生じる。
【0006】
体細胞のダイレクト・コンヴァージョンに関し、例えば以下の報告がある:
マウス線維芽細胞→軟骨細胞(SOX9 + Klf4 + c-Myc遺伝子を導入、特許文献1)
マウス線維芽細胞→心筋細胞(GATA4 + Mef2c + Tbx5遺伝子を導入)
マウス線維芽細胞→肝細胞(Hnf4α+(Foxa1またはFoxa2またはFoxa3)
遺伝子を導入)
マウス線維芽細胞→神経幹細胞(Sox2 + FoxG1遺伝子を導入など)、
マウス、ヒト細胞→造血幹細胞
これまで、PRDM16とC/EBPβを筋芽細胞や線維芽細胞に遺伝子導入し、「褐色脂肪細胞様の細胞」に誘導することは知られている(特許文献2および非特許文献5)。しかし、PRDM16とC/EBPβで誘導した細胞は、UCP1の発現レベルが非常に低いなど、褐色脂肪細胞としての性質は不十分にしか有さない。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】WO2010/071210
【特許文献2】WO2010/080985A8
【0008】

【非特許文献1】Saito M. et al., Diabetes 58:1526, 2009
【非特許文献2】Cypess A. M. et al., N Eng J Med 360: 1509, 2009
【非特許文献3】Van Merken Lichtenbelt W. D. et al., N Engl J Med 360: 1500, 2009
【非特許文献4】Tim Ahfeldt et al., Nature Cell Biology Vol.14, No.2, 2012
【非特許文献5】Kajimura S, et al. Nature 460: 1154, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患、メタボリックシンドロームの予防又は治療剤、予防又は治療方法、該疾患又は状態の予防又は治療に有効な移植材料及びその調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、褐色脂肪細胞及びその調製方法、褐色脂肪細胞を含む移植材料、褐色脂肪細胞を含む各種疾患、状態の予防剤又は治療剤、使用を提供するものである。
項1. 哺乳動物の体細胞に褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物を導入することで、前記体細胞から褐色脂肪細胞を調製する方法であって、前記褐色脂肪細胞関連遺伝子がPRDM16(P)及びC/EBPβ(C)からなる群から選択される少なくとも1種であり、リプログラミング関連遺伝子がMycファミリーの遺伝子、GLIS ファミリーの遺伝子、 Klfファミリーの遺伝子、Octファミリーの遺伝子、Soxファミリーの遺伝子、Lin-28からなる群から選択される少なくとも1種である、褐色脂肪細胞を調製する方法。
項2. 前記体細胞が線維芽細胞または白色脂肪細胞である、項1に記載の方法。
項3. 褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物がC/EBPβである、項1又は2に記載の方法。
項4. リプログラミング関連遺伝子又はその発現産物がc-MycまたはL-Mycを含む、項1又は2に記載の方法。
項5. リプログラミング関連遺伝子又はその発現産物がc-Mycを含む、項1又は2に記載の方法。
項6. 体細胞に導入される褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物の組み合わせが、PCM、CM、PCL、CL、PCG、CG、PCML、CML、PCMOct3/4、CMOct3/4、PCMG、CMG、PCLOct3/4、CLOct3/4、PCLG、CLG、PCMLOct3/4、CMLOct3/4、PCMLG、CMLG、PCMOct3/4G、CMOct3/4G、PCLOct3/4G、CLOct3/4G、PCMLOct3/4G、CMLOct3/4G(ここで、Pは「PRDM16」を示し、Cは「C/EBPβ」を示し、Mは「c-Myc」を示し、Lは「L-Myc」を示し、Gは「Glis1」を示す)からなる群から選ばれるいずれかの組み合わせである、項1又は2に記載の方法。
項7. 体細胞に導入される褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物の組み合わせが、PCM、CM、PCL、CL、PCML、CML、PCMOct3/4、CMOct3/4、PCMG、CMG、PCLOct3/4、CLOct3/4、PCLG、CLG、PCMLOct3/4、CMLOct3/4、PCMLG、CMLG、PCMOct3/4G、CMOct3/4G、PCLOct3/4G、CLOct3/4G、PCMLOct3/4G、CMLOct3/4Gからなる群から選ばれるいずれかの組み合わせである、項6に記載の方法。
項8. 体細胞に導入される褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物の組み合わせが、PCM、CM、PCML、CML、PCMG、CMG、PCLG、CLG、PCMLG、CMLGからなる群から選ばれるいずれかの組み合わせである、項6に記載の方法。
項9. 哺乳動物の体細胞に由来し、褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物を有する褐色脂肪細胞であって、前記褐色脂肪細胞関連遺伝子がPRDM16(P)及びC/EBPβ(C)からなる群から選択される少なくとも1種であり、リプログラミング関連遺伝子がMycファミリーの遺伝子、GLIS ファミリーの遺伝子、 Klfファミリーの遺伝子、Octファミリーの遺伝子、Soxファミリーの遺伝子、Lin-28からなる群から選択される少なくとも1種である、褐色脂肪細胞。
項10. 肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患、メタボリックシンドロームの予防又は治療剤であって、項1~8のいずれかに記載の方法により調製された褐色脂肪細胞、または、項9に記載の褐色脂肪細胞を有効成分とする、予防又は治療剤。
項11. 項1~8のいずれかに記載の方法により調製された褐色脂肪細胞、または、項9に記載の褐色脂肪細胞の肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患、メタボリックシンドロームの予防又は治療のための使用。
項12. 項1~8のいずれかに記載の方法により調製された褐色脂肪細胞、または、項9に記載の褐色脂肪細胞を含む、移植材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、上記の先行技術と異なり、リプログラム関連遺伝子をPRDM16および/またはC/EBPβに加えて用いることで、UCP1の発現がより高く、褐色脂肪細胞としての性質がより優れた褐色脂肪細胞を、効率よく誘導することができる。
【0012】
本発明ではまた、上記の先行技術と異なり、PRDM16がなくても、C/EBPβに加えてリプログラム関連遺伝子を用いれば、褐色脂肪細胞としての性質が優れた細胞を、効率よく誘導することができる。
【0013】
褐色脂肪細胞は、生体に移植することで、肥満、メタボリックシンドローム、或いはこれらの関連する疾患又は状態、例えば糖尿病(特にII型糖尿病)、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患などの予防又は治療、内臓脂肪の除去などに有効である。
【0014】
また、褐色脂肪細胞は、脂肪の燃焼により内臓脂肪及び/又は皮下脂肪の除去にも有効であるので、褐色脂肪細胞を注入することにより局所的な脂肪の除去、体脂肪率の低下、皮下脂肪の除去などの美容術にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1の概要を示す。
【図2A】実施例2で得られた細胞のウェルNo.1~12のOilRedO染色結果を示す。aHDF,Day14。
【図2B】実施例2で得られた細胞のウェルNo.13~24のOilRedO染色結果を示す。aHDF,Day14。
【図2C】実施例2で得られた細胞のウェルNo.25~36のOilRedO染色結果を示す。aHDF,Day14。
【図2D】実施例2で得られた細胞のウェルNo.37~48のOilRedO染色結果を示す。aHDF,Day14。
【図2E】実施例2で得られた細胞のウェルNo.49~60のOilRedO染色結果を示す。aHDF,Day14。
【図2F】実施例2で得られた細胞のウェルNo.61~65のOilRedO染色結果を示す。aHDF,Day14。
【図3】実施例3で得られた細胞のウェルNo.1~65の脂肪含量(縦軸)、OilRedO抽出OD(相対値)。aHDF,Day14。
【図4】実施例4で得られた褐色脂肪細胞のウェルNo.1~65のUCP1 mRNAレベル(相対値)。aHDF,Day12。
【図5】実施例5で得られた細胞のUCP1mRNAの相対レベルを示す。aHDF
【図6】5種の細胞(Control, PRDM16, C/EBPβ, PRDM16+ C/EBPβ, PRDM16+ C/EBPβ+cMyc)のPhase contrast, ミトコンドリア染色、OilRedO染色の結果を示す。aHDF
【図7】ADSCを図1のように処理して得られた細胞のOilRedO染色の結果を示す。ADSC、Day22.
【図8】ヒト脂肪由来幹細胞(ADSC)を図1のように処理して得られた細胞のUCP1、CIDEA、AdipoQのmRNA発現を定量した結果を示す。縦軸「RQ」はmRNAの相対値を示す。ADSC、Day22.
【図9】マウスiPS-derived BA細胞、またはコントロールとして非誘導細胞を、同系マウスの腹部皮下に移植したときのOilRed染色像、体重及び直腸温を示す。
【図10】マウスiPS-derived BA細胞、またはコントロールとして非誘導細胞を、同系マウスの腹部皮下に移植したときのサーモグラフィーのイメージング結果を示す。Thermographic visualization shows thermogenesis at the induced BA graft. The temperature on the body surface went up remarkably in transplanted BA group compared with control group.
【図11】iPS-derived BA細胞を移植したマウス及び移植しないマウスについて、高カロリー食及び普通食を与えたときの体重の推移を示す。
【図12】iPS-derived BA細胞を移植したマウス及び移植しないマウスに高カロリー食を与え、4週間後に血清の脂質を調べた結果を示す。
【図13】2型糖尿病マウスの体細胞から樹立したiPS細胞の形態及び幹細胞マーカーの発現について調べた結果を示す。
【図14】iPS細胞から誘導した褐色脂肪細胞(図上)。この細胞をKK-Ayマウスに移植したところ、随時血糖の上昇が緩やかで(左下)、また尿糖は検出されなかった(右下, three weeks post-transplantation)。コントロールとして、移植していないKK-Ayマウスと、褐色脂肪細胞への誘導を行わなかった細胞を移植したマウスでは、糖尿病が進行していた。
【図15】iPS由来のBA細胞を移植したKK-Ayマウス、非移植マウス、GFP Controlマウスの、体重、血清中のNEFAと中性脂肪の測定結果を示す。
【図16】iPS由来のBA細胞を移植したKK-Ayマウス、非誘導細胞を移植したマウス、非移植Controlマウスの、血清中のアディポネクチン量、摂食量を示す。
【図17】ヒト正常皮膚線維芽細胞およびiPS細胞から誘導した褐色脂肪細胞の性状。
【図18】ヒト正常皮膚線維芽細胞から誘導した褐色脂肪細胞の性状
【図19】ヒト正常皮膚線維芽細胞から誘導した褐色脂肪細胞の性状
【図20】エピゾーマル・ベクターによ.るヒト正常皮膚線維芽細胞から褐色脂肪細胞へのダイレクト・リプログラミング。
【図21】マウス胎仔線維芽細胞(MEF)から誘導した褐色脂肪細胞。
【図22】マウス胎仔線維芽細胞(MEF)から誘導した褐色脂肪細胞の生体内機能。
【図23】マウス胎仔線維芽細胞(MEF)から誘導した褐色脂肪細胞の生体内機能。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の褐色脂肪細胞を移植材料として用いて治療する対象となる疾患としては、肥満、メタボリックシンドローム、或いはこれらの関連する疾患又は状態、例えば糖尿病(特にII型糖尿病)、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患などが挙げられる。また、腹部や顎の周り、太ももなどの脂肪を除去する美容的な用途にも使用できる。褐色脂肪細胞を投与すると、脂肪量、特に内臓脂肪、皮下脂肪などの白色脂肪細胞が低減され、また高カロリー食を摂取した場合にも体重増加が抑制されるため、肥満、メタボリックシンドローム、或いはこれらの関連する疾患又は状態の予防と治療の両方に有用である。本発明はまた、疾患の予防又は治療に限らず、健康増進や美容(例えば腹部、顎、腕、太ももなどの内臓脂肪、皮下脂肪の除去)等の目的で用いることもできる。その際、ヒトに対する処置も、本明細書では便宜上治療と呼び、「患者」は「健常者」あるいは「ヒト」、「疾患」は「健康増進」や「美容」等と読み替えることができる。

【0017】
本発明はまた、ヒトだけでなく、イヌ、ネコ等の愛玩動物やウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ等の家畜の疾患の治療にも用いることが可能である。その場合、「患者」あるいは「ヒト」を「患畜」あるいは「動物」と読み替えることとする。

【0018】
移植材料とは、褐色脂肪細胞を生体内に導入する材料をいう。褐色脂肪細胞は、乳房などに導入する美容的処置の移植材料として使用することもできる。移植材料は、インビトロで体細胞から褐色脂肪細胞に変換した後、同一または別の個体に移植する材料を包含する。

【0019】
本発明の方法の対象となる体細胞としては、特に限定されないが、例えば線維芽細胞、上皮細胞(皮膚表皮細胞、口腔粘膜上皮細胞、気道粘膜上皮細胞、腸管粘膜上皮細胞など)、表皮細胞、歯肉細胞(歯肉線維芽細胞、歯肉上皮細胞)、歯髄細胞、白色脂肪細胞、皮下脂肪、内臓脂肪、筋肉、血液細胞などが挙げられ、好ましくは線維芽細胞、表皮細胞(ケラチノサイト)などが挙げられる。また、間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)、神経幹細胞(Neural stem cell)、肝幹細胞(hepatic stem cell)、腸幹細胞、皮膚幹細胞、毛包幹細胞、色素細胞幹細胞などの体性幹細胞から分化誘導し、あるいは脱分化させ、あるいはリプログラミングさせて作成した体細胞も挙げられる。また、さまざまな体細胞から分化誘導し、あるいは脱分化させ、あるいはリプログラミングさせて別の体細胞に誘導した細胞も挙げられる。また、生殖系列の細胞から分化誘導し、あるいは脱分化させ、あるいはリプログラミングさせて誘導した体細胞も挙げられる。また、胎性幹細胞(Embryonic stem cell:ES細胞)や人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPS細胞)から分化誘導し、あるいはリプログラミングさせて誘導した体細胞も挙げられる。また、厳密には体細胞ではないが、ES細胞、iPS細胞、あるいは生殖系列の細胞も本発明の「体細胞」に包含される(その際には、「体細胞」を「ES細胞」、「iPS細胞」あるいは「生殖系列の細胞」と読み替えるものとする)。また、培養細胞も挙げられ、培養細胞から分化誘導し、あるいは脱分化させ、あるいはリプログラミングさせて誘導した体細胞も挙げられる。体細胞の由来は、成人であっても小児であっても胎児であってもよい。本発明の方法の主要な実施形態として、分化した体細胞に褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物を導入してダイレクト・リプログラミングする方法が挙げられるが、ES細胞、iPS細胞、あるいは他の幹細胞などの多能性細胞についても、褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物を導入してダイレクト・リプログラミングと同様の本発明方法により、褐色脂肪細胞を得ることができる。

【0020】
体細胞は、ヒト由来であることが特に好ましい。

【0021】
本発明の方法では、体細胞に以下の遺伝子またはその発現産物の組み合わせを導入する。ここで、「発現産物」としては、各遺伝子のmRNA又はタンパク質が挙げられる。

【0022】
褐色脂肪細胞に導くためには、褐色脂肪細胞関連遺伝子またはその発現産物とリプログラミング関連遺伝子またはその発現産物を導入する。褐色脂肪細胞関連遺伝子はPRDM16(P)及びC/EBPβ(C)からなる群から選択される少なくとも1種であり、リプログラミング関連遺伝子はMycファミリーの遺伝子(c-Myc(M)、N-Myc、 L-Myc(L)、S-Myc, B-Myc)、GLIS ファミリーの遺伝子(GLIS1(G)、GLIS 2、GLIS 3)、 Klfファミリーの遺伝子(KLF1, KLF2, KLF3, KLF4(K), KLF5, KLF6, KLF7, KLF8, KLF9, KLF10, KLF11, KLF12, KLF13, KLF14, KLF15, KLF16, KLF17)、Octファミリーの遺伝子(Oct3/4など)、Soxファミリーの遺伝子(Sox2など)、Lin-28からなる群から選択される少なくとも1種であり、好ましくはc-MycまたはL-Mycを含み、より好ましくはc-Mycを含む。

【0023】
具体的な組み合わせ例としては、体細胞に導入される褐色脂肪細胞関連遺伝子又はその発現産物とリプログラミング関連遺伝子又はその発現産物の組み合わせが、PCM、PM、CM、PCL、PL、CL、PCK、PK、CK、PCG、PG、CG、PCML、PML、CML、PCMK、PMK、CMK、PCMG、PMG、CMG、PCLK、PLK、CLK、PCLG、PLG、CLG、PCKG、PKG、CKG、PCMLK、PMLK、CMLK、PCMLG、PMLG、CMLG、PCMKG、PMKG、CMKG、PCLKG、PLKG、CLKG、PCMLKG、PMLKG、CMLKG、
PCM Lin-28、PM Lin-28、CM Lin-28、PCL Lin-28、PL Lin-28、CL Lin-28、PCK Lin-28、PK Lin-28、CK Lin-28、PCG Lin-28、PG Lin-28、CG Lin-28、PCML Lin-28、PML Lin-28、CML Lin-28、PCMK Lin-28、PMK Lin-28、CMK Lin-28、PCMG Lin-28、PMG Lin-28、CMG Lin-28、PCLK Lin-28、PLK Lin-28、CLK Lin-28、PCLG Lin-28、PLG Lin-28、CLG Lin-28、PCKG Lin-28、PKG Lin-28、CKG Lin-28、PCMLK Lin-28、PMLK Lin-28、CMLK Lin-28、PCMLG Lin-28、PMLG Lin-28、CMLG Lin-28、PCMKG Lin-28、PMKG Lin-28、CMKG Lin-28、PCLKG Lin-28、PLKG Lin-28、CLKG Lin-28、PCMLKG Lin-28、PMLKG Lin-28、CMLKG Lin-28、
PCM Oct3/4、PM Oct3/4、CM Oct3/4、PCL Oct3/4、PL Oct3/4、CL Oct3/4、PCK Oct3/4、PK Oct3/4、CK Oct3/4、PCG Oct3/4、PG Oct3/4、CG Oct3/4、PCML Oct3/4、PML Oct3/4、CML Oct3/4、PCMK Oct3/4、PMK Oct3/4、CMK Oct3/4、PCMG Oct3/4、PMG Oct3/4、CMG Oct3/4、PCLK Oct3/4、PLK Oct3/4、CLK Oct3/4、PCLG Oct3/4、PLG Oct3/4、CLG Oct3/4、PCKG Oct3/4、PKG Oct3/4、CKG Oct3/4、PCMLK Oct3/4、PMLK Oct3/4、CMLK Oct3/4、PCMLG Oct3/4、PMLG Oct3/4、CMLG Oct3/4、PCMKG Oct3/4、PMKG Oct3/4、CMKG Oct3/4、PCLKG Oct3/4、PLKG Oct3/4、CLKG Oct3/4、PCMLKG Oct3/4、PMLKG Oct3/4、CMLKG Oct3/4、
PCM Sox2、PM Sox2、CM Sox2、PCL Sox2、PL Sox2、CL Sox2、PCK Sox2、PK Sox2、CK Sox2、PCG Sox2、PG Sox2、CG Sox2、PCML Sox2、PML Sox2、CML Sox2、PCMK Sox2、PMK Sox2、CMK Sox2、PCMG Sox2、PMG Sox2、CMG Sox2、PCLK Sox2、PLK Sox2、CLK Sox2、PCLG Sox2、PLG Sox2、CLG Sox2、PCKG Sox2、PKG Sox2、CKG Sox2、PCMLK Sox2、PMLK Sox2、CMLK Sox2、PCMLG Sox2、PMLG Sox2、CMLG Sox2、PCMKG Sox2、PMKG Sox2、CMKG Sox2、PCLKG Sox2、PLKG Sox2、CLKG Sox2、PCMLKG Sox2、PMLKG Sox2、CMLKG Sox2、
PCM Lin-28 Oct3/4、PM Lin-28 Oct3/4、CM Lin-28 Oct3/4、PCL Lin-28 Oct3/4、PL Lin-28 Oct3/4、CL Lin-28 Oct3/4、PCK Lin-28 Oct3/4、PK Lin-28 Oct3/4、CK Lin-28 Oct3/4、PCG Lin-28 Oct3/4、PG Lin-28 Oct3/4、CG Lin-28 Oct3/4、PCML Lin-28 Oct3/4、PML Lin-28 Oct3/4、CML Lin-28 Oct3/4、PCMK Lin-28 Oct3/4、PMK Lin-28 Oct3/4、CMK Lin-28 Oct3/4、PCMG Lin-28 Oct3/4、PMG Lin-28 Oct3/4、CMG Lin-28 Oct3/4、PCLK Lin-28 Oct3/4、PLK Lin-28 Oct3/4、CLK Lin-28 Oct3/4、PCLG Lin-28 Oct3/4、PLG Lin-28 Oct3/4、CLG Lin-28 Oct3/4、PCKG Lin-28 Oct3/4、PKG Lin-28 Oct3/4、CKG Lin-28 Oct3/4、PCMLK Lin-28 Oct3/4、PMLK Lin-28 Oct3/4、CMLK Lin-28 Oct3/4、PCMLG Lin-28 Oct3/4、PMLG Lin-28 Oct3/4、CMLG Lin-28 Oct3/4、PCMKG Lin-28 Oct3/4、PMKG Lin-28 Oct3/4、CMKG Lin-28 Oct3/4、PCLKG Lin-28 Oct3/4、PLKG Lin-28 Oct3/4、CLKG Lin-28 Oct3/4、PCMLKG Lin-28 Oct3/4、PMLKG Lin-28 Oct3/4、CMLKG Lin-28 Oct3/4、
PCM Oct3/4 Sox2、PM Oct3/4 Sox2、CM Oct3/4 Sox2、PCL Oct3/4 Sox2、PL Oct3/4 Sox2、CL Oct3/4 Sox2、PCK Oct3/4 Sox2、PK Oct3/4 Sox2、CK Oct3/4 Sox2、PCG Oct3/4 Sox2、PG Oct3/4 Sox2、CG Oct3/4 Sox2、PCML Oct3/4 Sox2、PML Oct3/4 Sox2、CML Oct3/4 Sox2、PCMK Oct3/4 Sox2、PMK Oct3/4 Sox2、CMK Oct3/4 Sox2、PCMG Oct3/4 Sox2、PMG Oct3/4 Sox2、CMG Oct3/4 Sox2、PCLK Oct3/4 Sox2、PLK Oct3/4 Sox2、CLK Oct3/4 Sox2、PCLG Oct3/4 Sox2、PLG Oct3/4 Sox2、CLG Oct3/4 Sox2、PCKG Oct3/4 Sox2、PKG Oct3/4 Sox2、CKG Oct3/4 Sox2、PCMLK Oct3/4 Sox2、PMLK Oct3/4 Sox2、CMLK Oct3/4 Sox2、PCMLG Oct3/4 Sox2、PMLG Oct3/4 Sox2、CMLG Oct3/4 Sox2、PCMKG Oct3/4 Sox2、PMKG Oct3/4 Sox2、CMKG Oct3/4 Sox2、PCLKG Oct3/4 Sox2、PLKG Oct3/4 Sox2、CLKG Oct3/4 Sox2、PCMLKG Oct3/4 Sox2、PMLKG Oct3/4 Sox2、CMLKG Oct3/4 Sox2、
PCM Lin-28 Sox2、PM Lin-28 Sox2、CM Lin-28 Sox2、PCL Lin-28 Sox2、PL Lin-28 Sox2、CL Lin-28 Sox2、PCK Lin-28 Sox2、PK Lin-28 Sox2、CK Lin-28 Sox2、PCG Lin-28 Sox2、PG Lin-28 Sox2、CG Lin-28 Sox2、PCML Lin-28 Sox2、PML Lin-28 Sox2、CML Lin-28 Sox2、PCMK Lin-28 Sox2、PMK Lin-28 Sox2、CMK Lin-28 Sox2、PCMG Lin-28 Sox2、PMG Lin-28 Sox2、CMG Lin-28 Sox2、PCLK Lin-28 Sox2、PLK Lin-28 Sox2、CLK Lin-28 Sox2、PCLG Lin-28 Sox2、PLG Lin-28 Sox2、CLG Lin-28 Sox2、PCKG Lin-28 Sox2、PKG Lin-28 Sox2、CKG Lin-28 Sox2、PCMLK Lin-28 Sox2、PMLK Lin-28 Sox2、CMLK Lin-28 Sox2、PCMLG Lin-28 Sox2、PMLG Lin-28 Sox2、CMLG Lin-28 Sox2、PCMKG Lin-28 Sox2、PMKG Lin-28 Sox2、CMKG Lin-28 Sox2、PCLKG Lin-28 Sox2、PLKG Lin-28 Sox2、CLKG Lin-28 Sox2、PCMLKG Lin-28 Sox2、PMLKG Lin-28 Sox2、CMLKG Lin-28 Sox2、
PCM Lin-28 Oct3/4 Sox2、PM Lin-28 Oct3/4 Sox2、CM Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCL Lin-28 Oct3/4 Sox2、PL Lin-28 Oct3/4 Sox2、CL Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCK Lin-28 Oct3/4 Sox2、PK Lin-28 Oct3/4 Sox2、CK Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PG Lin-28 Oct3/4 Sox2、CG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCML Lin-28 Oct3/4 Sox2、PML Lin-28 Oct3/4 Sox2、CML Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCMK Lin-28 Oct3/4 Sox2、PMK Lin-28 Oct3/4 Sox2、CMK Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCMG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PMG Lin-28 Oct3/4 Sox2、CMG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCLK Lin-28 Oct3/4 Sox2、PLK Lin-28 Oct3/4 Sox2、CLK Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCLG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PLG Lin-28 Oct3/4 Sox2、CLG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCKG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PKG Lin-28 Oct3/4 Sox2、CKG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCMLK Lin-28 Oct3/4 Sox2、PMLK Lin-28 Oct3/4 Sox2、CMLK Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCMLG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PMLG Lin-28 Oct3/4 Sox2、CMLG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCMKG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PMKG Lin-28 Oct3/4 Sox2、CMKG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCLKG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PLKG Lin-28 Oct3/4 Sox2、CLKG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PCMLKG Lin-28 Oct3/4 Sox2、PMLKG Lin-28 Oct3/4 Sox2、CMLKG Lin-28 Oct3/4 Sox2、
PC LIN-28、P LIN-28、C LIN-28、PC OCT3/4、P OCT3/4、C OCT3/4、PC SOX2、P SOX2、C SOX2、PC LIN-28 OCT3/4、P LIN-28 OCT3/4、C LIN-28 OCT3/4、PC LIN-28 SOX2、P LIN-28 SOX2、C LIN-28 SOX2、PC OCT3/4 SOX2、P OCT3/4 SOX2、C OCT3/4SOX2、PC LIN-28 OCT3/4 SOX2、P LIN-28 OCT3/4 SOX2、C LIN-28 OCT3/4 SOX2、
(ここで、Pは「PRDM16」を示し、Cは「C/EBPβ」を示し、Mは「c-Myc」を示し、Lは「L-Myc」を示し、Kは「KLF-4」を示し、Gは「Glis1」を示す)が挙げられる。このうち望ましいのは、PCM、CM、PCL、CL、PCG、CG、PCML、CML、PCMOct3/4、CMOct3/4、PCMG、CMG、PCLOct3/4、CLOct3/4、PCLG、CLG、PCMLOct3/4、CMLOct3/4、PCMLG、CMLG、PCMOct3/4G、CMOct3/4G、PCLOct3/4G、CLOct3/4G、PCMLOct3/4G、CMLOct3/4Gが挙げられる。このうち特に望ましいのはPCM、CM、PCL、CL、PCML、CML、PCMOct3/4、CMOct3/4、PCMG、CMG、PCLOct3/4、CLOct3/4、PCLG、CLG、PCMLOct3/4、CMLOct3/4、PCMLG、CMLG、PCMOct3/4G、CMOct3/4G、PCLOct3/4G、CLOct3/4G、PCMLOct3/4G、CMLOct3/4Gである。このうちさらに望ましいのは、PCM、CM、PCML、CML、PCMG、CMG、PCLG、CLG、PCMLG、CMLGである 。

【0024】
c-Mycは他のMycファミリーの遺伝子(N-Myc, L-Myc、S-Myc, B-Myc)と置き換えることも可能である。本明細書ではMycファミリーの代表として「c-Myc」と「L-Myc」を使用して説明しているが、Mycファミリーの他の遺伝子もc-Mycと同様に使用することができる。

【0025】
KLF-4は他のKlfファミリー(KLF1, KLF2, KLF3, KLF5, KLF6, KLF7, KLF8, KLF9, KLF10, KLF11, KLF12, KLF13, KLF14, KLF15, KLF16, KLF17)の遺伝子に置き換えることも可能である。本明細書ではKlfファミリーの代表として「KLF-4」を使用して説明しているが、Klfファミリーの他の遺伝子もKLF-4と同様に使用することができる。

【0026】
GLIS1(GLIS family zinc finger 1) は他のGLIS ファミリーのメンバーの遺伝子、例えばGLIS 2、GLIS 3に置き換えることも可能である。

【0027】
同様に、Oct3/4は他のOctファミリーの遺伝子に置き換えることが可能であり、Sox2は他のSoxファミリーの遺伝子に置き換えることが可能である。

【0028】
上記遺伝子は、いずれも、脊椎動物で高度に保存されている遺伝子であり、本明細書では、特に動物名を示さない限り、ホモログを含めた遺伝子を表すものとする。また、polymorphismを含め、変異を有する遺伝子であっても、野生型の遺伝子産物と同等の機能を有する遺伝子もまた、含まれるものとする。導入される遺伝子は体細胞と同じ哺乳動物由来の遺伝子が好ましく、例えばヒトの体細胞にはヒトの遺伝子を導入する。

【0029】
本発明の方法は、特定の遺伝子を選択する以外は、公知のダイレクト・リプログラミングの手法に準じて行うことができ、例えば以下の文献1~6の方法に準じて行うことができる:
文献1 Direct Reprogramming of Fibroblasts into Functional Cardiomyocytes
by Defined Factors; Masaki Ieda, Ji-Dong Fu, Paul Delgado-Olguin, Vasanth Vedantham, Yohei Hayashi, Benoit G. Bruneau, and Deepak Srivastava Cell 142: 375-386, 2010.
文献2 Direct conversion of fibroblasts to functional neurons by defined factors. Thomas Vierbuchen, Austin Ostermeier, Zhiping P. Pang, Yuko Kokubu, Thomas C. Sudhof & Marius Wernig. Nature 463: 1035-1041, 2010
文献3 Induction of human neuronal cells by defined transcription factors. Pang ZP, Yang N, Vierbuchen T, Ostermeier A, Fuentes DR, Yang TQ, Citri A, Sebastiano V, Marro S, Sudhof TC, Wernig M. Nature 476: 220-223, 2011.
文献4 Generation of hyaline cartilaginous tissue from mouse adult dermal fibroblast culture by defined factors Kunihiko Hiramatsu, Satoru Sasagawa, Hidetatsu Outani, Kanako Nakagawa, Hideki Yoshikawa, and Noriyuki Tsumaki, Journal of Clinical Investigation, 121: 640-657, 2011.
文献5 Induction of functional hepatocyte-like cells from mouse fibroblasts by defined factors. Pengyu Huang, Zhiying He, Shuyi Ji, Huawang Sun, Dao Xiang, Changcheng Liu, Yiping Hu, XinWang & Lijian Hui, . Nature 475:386-389, 2011.
文献6 Direct conversion of mouse fibroblasts to hepatocyte-like cells by defined factors. Sayaka Sekiya & Atsushi Suzuki. Nature 475:390-393, 2011.
具体的には、褐色脂肪細胞に変換するための導入遺伝子を発現ベクターに組み込み、対象とする体細胞に発現ベクターを導入し、細胞内で発現させることが好ましい。

【0030】
遺伝子を導入する方法としては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどのウイルス性ベクターを感染させる方法のほか、遺伝子とその発現産物の導入の場合には、カチオニック・リポソーム、カチオニック・ポリマー、電気穿孔法等の非ウイルスベクターで、プラスミドベクターやエピゾーマルベクター、遺伝子の発現産物(RNA、タンパク質)をトランスフェクションする方法も用いることができる。また、RNAを導入することもできる。これら遺伝子導入に用いる手段をすべて包括して、本明細書ではベクターと呼ぶ。

【0031】
また、治療目的の遺伝子とともに薬剤選択マーカーとなる遺伝子(ピューロマイシン耐性、ブラストサイジンS耐性、ネオマイシン耐性、ハイグロマイシン耐性など)を導入し、その後薬剤選択を行うことによって、褐色脂肪細胞への変換に必要な遺伝子を発現する細胞を選択してから用いることができる。

【0032】
また、導入因子が遺伝子の発現産物(例えばタンパク質)の場合には、Protein Transduction Domain(PTD)と呼ばれるペプチドを発現産物である蛋白質に結合させ、培地に添加することにより、体細胞内に導入してもよい。褐色脂肪細胞の原料となる体細胞で、褐色脂肪細胞への変換に必要な遺伝子の一部が発現している場合は、その蛋白質に関しては外部から導入する必要がない。

【0033】
褐色脂肪細胞を分化させるための分化誘導培地としては、特に限定されず、通常の細胞培養培地を使用することができる。

【0034】
褐色脂肪細胞を分化させるための分化誘導培地としては、特に限定されず、通常の細胞培養培地を使用することができる。たとえば、以下の既知の褐色脂肪誘導培地TypeIと褐色脂肪誘導培地TypeIIを使用することができるがこれに限定されない。褐色脂肪誘導培地TypeI(100U/mL Penicillinと100μg/ml Streptomycinを含んだ1% NEAA 10% FBS DMEMに、850nM human Insulin、1nM triiodothyronine(T3)、0.5mM 3-isobutyl-1-methylxanthine(IBMX)、100 nM Dexametazone、125nM Indometacin、1μg/ml Rosigritazone(いずれも最終濃度)を加えたもの)。褐色脂肪誘導培地TypeII(100U/mL Penicillinと100μg/ml Streptomycinを含んだ1% NEAA 10% FBS DMEMに、850nM human Insulin、1nM triiodothyronine(T3)、1μg/mL Rosigritazone(いずれも最終濃度)を加えたもの)。

【0035】
褐色脂肪細胞が得られたことは、UCP1、CIDEA、PGC1、DIO2、Cox8b、Otopなどの遺伝子発現を測定することにより評価できる。また網羅的遺伝子発現プロファイルを解析しても評価できる。

【0036】
移植後に免疫応答が起きないようにする目的で、予防又は治療用の移植細胞は、患者自身から樹立した自家細胞であることが望ましい。

【0037】
本発明の遺伝子の導入は、プラスミドで行ってもよく、ウイルスベクター、たとえばレトロウイルスベクターを用いてもよい。導入効率と導入遺伝子の安定保持の観点からはウイルスベクターが好ましく、癌化のリスクを抑えるためにはプラスミドが好ましい。

【0038】
体細胞に導入される遺伝子はLTRプロモーターにより転写させることもできるし、ベクター内部の別のプロモーターから発現させてもよい。例えばCMVプロモーター、EF-1αプロモーター、CAGプロモーターなどの構成的発現プロモーター、または所望の誘導性プロモーターを利用することができる。また、LTRの一部を他のプロモーターに置換したキメラプロモーターを利用してもよい。

【0039】
本発明により得られる褐色脂肪細胞(移植材料)を用いて治療する対象となる疾患としては、肥満、内臓脂肪型肥満、肥満症、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、遅延創傷治癒、耐糖能異常、インスリン抵抗性、高血糖症、高インスリン血症、白内障、緑内障、網膜症、神経障害、腎症、歯周病、皮膚疾患、壊疽、潰瘍、脂質代謝異常、高脂肪酸血症、高トリグリセリド血症、高グリセロール血症、高コレステロール血症、高脂血症、低HDL血症、X症候群、細小血管障害、動脈硬化性疾患、閉塞性動脈硬化症、脳血管障害、冠動脈疾患、アテローム硬化症、動脈硬化症、動脈瘤、過血糖(特に食後の過血糖)、高血圧、高尿酸血症、痛風、慢性全身性炎症、非アルコール性脂肪性肝疾患、脂肪肝、肝硬変、肝性糖尿病、胆のう炎、胆石、尿失禁、尿閉、インポテンツ、膀胱炎、内皮機能不全、自律神経障害、湿疹、口腔炎、歯槽膿漏、骨粗しょう症、メタボリックシンドロームなどが挙げられる。

【0040】
本明細書において、特に明示のない限り、「治療」という用語は、患者が特定の疾患又は障害を患っている間に行う処置を意図し、これによって疾患若しくは障害の重症度、又は1つ若しくは複数のその症状が軽減されるか、又は疾患若しくは障害の進行が遅延又は減速することを意味する。本明細書において、「治療」には「予防」を含むものとする。

【0041】
本発明で得られる褐色脂肪細胞は、疾患の治療に限らず、美容目的で用いることもできる。たとえば脂肪組織を減らしやせる目的で褐色脂肪細胞を移植することができる。その際、ヒトに対する処置も、本明細書では便宜上治療と呼び、「患者」は「健常者」あるいは「ヒト」、「疾患」は「美容」と読み替えることができる。

【0042】
本発明はまた、ヒトだけでなく、イヌ、ネコ等の愛玩動物やウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ等の家畜を含む哺乳動物の疾患の治療にも用いることが可能である。その場合、「患者」を「患畜」あるいは「哺乳動物」と読み替えることとする。

【0043】
移植材料とは、肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、メタボリック症候群の治療又は美容的処置のために生体内に導入する、褐色脂肪細胞を含有する材料をいう。移植材料は、インビトロで組織構築を形成させて、同一または別の個体に移植する材料を包含する。本発明で得られた褐色脂肪細胞は、移植材料の作製に使用することができる。褐色脂肪細胞自体も移植材料になる。したがって、褐色脂肪細胞を細胞製剤として患者又は被験体に移植することもできるし、人工材料からなる基材(スキャホルド)とともに移植することができる。

【0044】
体細胞は、哺乳動物由来であればよい。褐色脂肪細胞を生体に移植する場合には、移植される被験体由来の体細胞(自家細胞)を用いることが、感染や拒絶応答等の危険を低減させるために好ましい。しかしながら、自家細胞でなく、他人や他の動物の体細胞からあらかじめ準備しておいた褐色脂肪細胞を移植に用いることができる。またはあらかじめ準備しておいた他人や他の動物の体細胞から褐色脂肪細胞を作り、移植に用いることができる。すなわち、褐色脂肪細胞バンク、または褐色脂肪細胞前駆細胞のバンクを作っておき移植目的に供することができる。このような場合、拒絶応答等の危険を低減させるために、あらかじめMHCをタイピングしておくことができる。また、あらかじめ褐色脂肪細胞のキャラクターや造腫瘍性などを確認しておくことができる。

【0045】
本明細書において、哺乳動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ヒト、イヌ、ネコ、サル、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタなどが挙げられ、特にヒトが挙げられる。

【0046】
本発明はまた、褐色脂肪細胞を用いたさまざまな研究や技術開発等に用いることができる。たとえば褐色脂肪細胞の発生と老化、代謝調節機構、これらに対する栄養、免疫、神経、ホルモン、食品の影響の解析などの基礎研究に有用である。

【0047】
本発明を用いれば、さまざまな疾患や遺伝的背景を有するヒトや動物から簡便、迅速、安価に褐色脂肪細胞を樹立できるので、疾患や遺伝的背景に関連した褐色脂肪細胞の異常を生化学的、分子生物学的、免疫学的等手法により解析することが可能であり、これにより肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、メタボリック症候群等の種々の疾患の発症機序の解明などの研究や診断法の開発に役立てることができる。たとえばこのような疾患において、遺伝的な差異に起因する発症率の違い、疾患の増悪の程度の違い、治療への応答性の違い、治療効果の違いなどを判定あるいは予測することで、テーラーメード医療に応用できる。またこのような褐色脂肪細胞を用いて、薬剤の開発、薬剤の毒性試験等を行えば、肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、メタボリック症候群等の種々の疾患に対する新規治療法の開発に役立てることができる。

【0048】
本発明の遺伝子の組み合わせに、さらに他の遺伝子を加えることも可能である。

【0049】
本発明では、ダイレクト・リプログラミングあるいはこれに準じた方法により体細胞から短期間で褐色脂肪細胞を提供できる。この褐色脂肪細胞は、移植する本人の体細胞から容易に誘導できるので、移植した場合にも免疫学的な拒絶応答などの問題は生じない。また、iPS細胞やES細胞を経由することなく直接体細胞から褐色脂肪細胞を誘導できるため、癌化などの多能性幹細胞に起因する問題を回避できる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を示すが、本発明はこの実施例だけに限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
実施例1 実験の概略(図1 )
レトロウイルスベクタープラスミドpMXs.puroに、C/EBPβ等の種々の遺伝子のcDNAコーディング配列をGene artシステム組み込んだ。パッケージング細胞 Plat GP細胞を、100U/mL Penicillinと100μg/ml Streptomycinを含んだ1% NEAA 10% FBS DMEM(通常培地)に縣濁し、ゼラチンコートした10cm培養ディシュにディシュあたり5×106 個の濃度で播種した(第3日)。24時間培養後、種々の遺伝子を含むpMXsベクターを、種々の組み合わせで、pCMV VSVベクターと伴に、X-tremeGENE 9を用いて以下の比で導入した。すなわち導入遺伝子5μg、pCMV.VSV 2.5μg、Opti-MEM 500μl、X-tremeGENE 9 22.5μlの混和液を10mlの培地入りの10cmディシュに添加した(第2日)。24時間後、抗生剤を含まない通常培地に交換(第-1日)。同日(第1日)に、ヒト正常皮膚線維芽細胞株であるaHDF、またはヒト脂肪由来幹細胞であるADSCを、1.5×104~2×104 cells/mLで培養ディッシュまたは12 wellプレートに播種した。24時間後(第 0日)、Plat GP培養上清を、ポアの直径が0.45μmのシリンジフィルターを通した後、ポリブレン(最終濃度4μg/mL)と混和した(ウイルス液)。aHDF の培養上清を吸引除去した後、すばやく上記のウイルス液を1mL加え24時間培養した(感染)。コントロール群として、ウイルス感染を行わない細胞も準備した。1日後(第 1日)、培養上清を吸引除去し、褐色脂肪誘導培地TypeI(通常培地に850nM human Insulin、1nM triiodothyronine(T3)、0.5mM 3-isobutyl-1-methylxanthine(IBMX)、100 nM Dexametazone、125nM Indometacin、1μg/ml Rosigritazone(いずれも最終濃度)を加えたもの)を加え2日間培養した。第3日に培地を吸引除去し、褐色脂肪誘導培地TypeII(通常培地に850nM human Insulin、1nM triiodothyronine(T3)、1μg/mL Rosigritazone(いずれも最終濃度)を加えたもの)を加え、その後2日おきに同じ組成の新しい培養液に交換した。第 12-22日に、OilRedO染色、Real-time RT-PCRを行った。レトロウイルスベクターを感染させずに、同じ培養を行った細胞をControlとした。
【実施例】
【0052】
実施例2 ヒト正常皮膚線維芽細胞から褐色脂肪細胞へのコンバージョン、OilRedO染色像(図2)
ヒト正常皮膚線維芽細胞であるaHDFを、12 wellプレートに培養し、図1のように実験した。第14日に各ウェルから培養液を吸引除去し、PBSで1回洗浄を行った後、60%イソプロパノールで固定。OilRedO染色液を加え、37℃で15分間静置した(OilRedO染色液は以下のように作成した。OilRedO粉末0.24gを99.7%イソプロパノール30mLに溶解したのち、20mLの蒸留水を添加。30分間室温放置したのち濾紙を用いて濾過し、OilRedO染色液とした)。60%イソプロパノールで1回洗浄したのち、純水で3回洗浄した。プレートの画像を図2A-Fに示す。プレートの各ウェルには異なる遺伝子の組み合わせが導入されており、どのナンバーのウェルにどの遺伝子の組み合わせが導入されたかは、図3に記載する(図3の下の表中で、No.は図2のNo.と共通でプレートのウェルの番号を指す。また各遺伝子の欄に「1」と記載があるものは、その遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させたことを、空欄は、その遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させていないことを表す)。赤く染まっているのは脂質であり、いくつかのウェルでは、小さな多房性の脂肪滴を含む褐色脂肪細胞が認められる。たとえば、図2のNo.36ウェルは、図3のNo. 36に示されるとおり、C/EBPβ、L-Myc、c-Mycの遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させた細胞であり、多くの褐色脂肪細胞が含まれているのが分かる。
【実施例】
【0053】
実施例3 ヒト正常皮膚線維芽細胞から褐色脂肪細胞へのコンバージョン、OilRedO染色の半定量と定量(図3)
図2と同じ実験において、OilRedOの染色性を半定量するために、2名の評価者がそれぞれ独立に、プレートを実体顕微鏡観察し、OilRedOの染色性を4段階で評価した(OilRedOの染色性が強いものから順に、+++、++、+、-)。その結果を図3の下の表中に示す。図3の下の表中で、各遺伝子の欄に「1」と記載があるものは、その遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させたことを、空欄は、その遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させていないことを表す。
【実施例】
【0054】
図2と同じ実験において、脂肪の含量を定量化する目的で、画像撮影の後、各ウェルから蒸留水を取り除き、100%イソプロパノール300μlを加えて抽出液を調整した。抽出液を250μlずつ、96 well plateに移した後、波長550nmの吸光度(OD550)をマイクロプレートリーダーを用いて測定した。結果を図3に示す。グラフの縦軸はOD550であり、各ウェルの脂肪の含量を示す。たとえばNo.4のPRDM16、C/EBPβ, L-Myc, c-Myc, Glis1の遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させた細胞は、もっとも多くの褐色脂肪細胞を含むことが分かる。
【実施例】
【0055】
実施例4 ヒト正常皮膚線維芽細胞から褐色脂肪細胞へのコンバージョン、UCP1遺伝子のmRNA発現計測(図4)
ヒト正常皮膚線維芽細胞であるaHDFを、12wellプレートに培養し、図1のように実験した。遺伝子導入12日後、一部のウェルからISOGEN IIにてtotal RNAを回収し、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mixを用いてcDNAを合成した。UCP1とβアクチン遺伝子のmRNAレベルを定量する目的で、Real-time PCR Master Mix、Taqman probe、Specific PrimerおよびcDNAを混和し、AB7300 Real-time PCR systemを用いてReal-time RT-PCRを行った。各細胞のβアクチンmRNAレベルに対するUCP1 mRNAレベルの値を計算した。結果を図4に示す。図4の下の表中で、各遺伝子の欄に「1」と記載があるものは、その遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させたことを、空欄は、その遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させていないことを表す。グラフの縦軸は、No.64(遺伝子を導入していない細胞)の値を1として計算した相対値であり、バーに書かれた数値も同じである。ND(Not determined)と書かれたものはこの実験では測定していない。PRDM16、C/EBPβ, L-Myc, c-Mycの4つの遺伝子を導入した細胞(No.19)は、controlと比較し、遺伝子レベルにおいて褐色脂肪細胞特異的マーカーであるUncoupling protein-1(UCP-1)のもっとも強力な発現を認めた。また、C/EBPβ、L-Myc、c-Mycの3つの遺伝子を導入した細胞(No. 36)や、C/EBPβ、c-Myc、Glis1の3つの遺伝子を導入した細胞(No. 38)でも極めて高いUCP1の発現を認め、これらの遺伝子があればPRDM16がなくてもヒト線維芽細胞から褐色脂肪細胞へのダイレクト・リプログラミングが効率よく可能であることが分る。
【実施例】
【0056】
実施例5 ヒト正常皮膚線維芽細胞から褐色脂肪細胞へのコンバージョン、UCP1遺伝子のmRNA発現(図5)
ヒト正常皮膚線維芽細胞であるaHDFを、12wellプレートに培養し、図1のように実験した(図4とは遺伝子を組み合わせを変えて独立に行った実験である)。遺伝子導入12日後、一部のウェルからISOGEN IIにてtotal RNAを回収し、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mixを用いてcDNAを合成した。UCP1とβアクチン遺伝子のmRNAレベルを定量する目的で、Real-time PCR Master Mix、Taqman probe、Specific PrimerおよびcDNAを混和し、AB7300 Real-time PCR systemを用いてReal-time RT-PCRを行った。各細胞のβアクチンmRNAレベルに対するUCP1 mRNAレベルの値を計算した。結果を図5に示す。図5の下の表中で、各遺伝子の欄に「+」と記載があるものは、その遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させたことを、空欄は、その遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させていないことを表す。グラフの縦軸は、遺伝子を導入していない細胞(一番右のバーに示す)の値を1として計算した相対値である。PRDM16、C/EBPβ, c-Mycの3つの遺伝子を導入した細胞(右から7番目のバー)は、mRNAレベルにおいて褐色脂肪細胞特異的マーカーであるUncoupling protein-1(UCP-1)のもっとも強力な発現を認めた。その発現レベルは、PRDM16とC/EBPβの2つの遺伝子を導入した細胞(左から8番目のバー)で認められるUCP1のmRNAレベルと比較して、100倍以上高いことが分る。
【実施例】
【0057】
実施例6 ヒト正常皮膚線維芽細胞から褐色脂肪細胞へのコンバージョン、ミトコンドリア染色像(図6)
ヒト正常皮膚線維芽細胞 aHDFを、12wellプレートに培養し、図1のように実験した。遺伝子導入から12日後、位相差顕微鏡で観察した(図6左列)。また一部のウェルではミトコンドリアを可視化する目的で、培養液に終濃度200nMになるようにInvitrogen 社製のMito Tracker Red probeを添加し、5%CO2 /95%大気、37℃で15分間静置した後オリンパス社製の蛍光顕微鏡で観察した(図6中央列)。別の一部のウェルでは、図2と同様の方法でOilRedOで染色した(図6右列)。PRDM16、C/EBPβ, c-Mycの3つの遺伝子を導入した群では、多数のミトコンドリアを細胞内に集積した細胞が多数観察された。またこの群ではOilRedO染色により小さな多房性脂肪滴を含む褐色脂肪細胞が確認された。これに比べて、PRDM16、C/EBPβの2つの遺伝子を導入した群では、ミトコンドリア、脂肪滴ともにはるかに少なかった。
【実施例】
【0058】
実施例7 ヒト脂肪由来幹細胞から褐色脂肪細胞へのコンバージョン、OilRedO染色像(図7)
ヒト脂肪由来幹細胞(ADSC)を12wellプレートに培養し、図1のように実験した。遺伝子導入から22日後、図2と同様の方法でOilRedO染色を行った。結果を図7に示す。赤く染まっているのは脂質であり、脂肪細胞が誘導されたことを示す。PRDM16、C/EBPβ、cMycの遺伝子を含むレトロウイルスベクターを感染させた細胞では、小さな多房性の脂肪滴を含む褐色脂肪細胞が、数多く認められる(図7左上)。一方GFP(Green fluorescent protein)遺伝子を導入した細胞では、大きな単房性の脂肪滴を含む白色脂肪細胞が認められた(図7右下)。
【実施例】
【0059】
実施例8 ヒト脂肪由来幹細胞から褐色脂肪細胞へのコンバージョン、UCP1遺伝子のmRNA発現計測(図8)
ヒト脂肪由来幹細胞(ADSC)を12wellプレートに培養し、図1のように実験した。遺伝子導入22日後、UCP1、CIDEA、AdipoQのmRNA発現を定量する目的で、細胞からtotal RNAを回収し、図4と同様にReal-time RT-PCRを行った。その結果を図8に示す。PRDM16、C/EBPβ、c-Mycの3つの遺伝子を導入した群では、PRDM16、C/EBPβ、L-Mycの3つの遺伝子を導入した群や、PRDM16、C/EBPβ、Glis1の3つの遺伝子を導入した群、GFP遺伝子を導入したControl群と比較して、褐色脂肪細胞特異的因子であるUCP1とCIDEAを有意に高発現していた。一方、褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞の共通のマーカーである、Adiponectin(AdipoQ)は、PRDM16、C/EBPβ、c-Mycを導入した群およびControl群で有意に高発現していた。
【実施例】
【0060】
これらの結果より、ヒト脂肪由来幹細胞(ADSC)は遺伝子導入を行わないと多くが白色脂肪細胞になるが、PRDM16、C/EBPβ、c-Mycの3つの遺伝子を導入することにより、褐色脂肪細胞に誘導できることが示された。したがって、ヒト正常皮膚線維芽細胞以外の細胞からでもダイレクトに褐色脂肪細胞にコンバートできることが示された。
【実施例】
【0061】
試験例1
図9-12に、マウスiPSから褐色脂肪細胞を誘導し(iPS-derived BA細胞)、C57BL/6マウスに移植した実験を示す。熱産生、体重増加抑制を認め、また高カロリー食を与えると体重増加抑制と血清脂質異常改善を認めたことから、高カロリー食に伴う肥満と脂質代謝異常をiPS-derived BA細胞が是正できる可能性があることが分る。
【実施例】
【0062】
(1)図9
マウスiPS-derived BA細胞、またはコントロールとして非誘導細胞を、同系マウスの腹部皮下に図左上のように移植した。iPS-derived BA細胞のグラフトは、OilRed染色陽性の脂肪組織の組織像を呈した(右上)。iPS-derived BA細胞を移植したマウスは、体重増加が有意に抑制され(左下)、体温が有意に上昇していた(右下)。
【実施例】
【0063】
(2)図10
マウスiPS-derived BA細胞、またはコントロールとして非誘導細胞を、同系マウスの腹部皮下に移植した。各群、2匹のサーモグラフィーのイメージング像を示す。iPS-derived BA細胞のグラフト局所で温度が上昇していた(下)。褐色脂肪細胞への誘導を行わなかった細胞のグラフトは周囲組織と同じ温度であった(上)。
【実施例】
【0064】
(3)図11
移植後、高カロリー食餌を与えたところiPS-derived BA細胞を移植したマウスのみ体重減少が有意に抑制された。
【実施例】
【0065】
(4)図12
移植後、高カロリー食餌(QF)を与え、4週間後に血清の脂質を調べたところ、iPS-derived BA(iBA)細胞を移植したマウスのみ高脂血症が進行していなかった。NFは通常食餌を与えたマウスである。
【実施例】
【0066】
試験例2
図13-16では、2型糖尿病マウスの体細胞からiPS細胞を作り、そのiPS細胞から褐色脂肪細胞を誘導し(iPS-derived BA細胞)、糖尿病マウスに移植した実験を示す。移植によって随時血糖値低下、体重増加抑制、血清脂質異常改善が認められ、褐色脂肪細胞の移植が糖尿病を制御できることが分る。
【実施例】
【0067】
(1)図13
2型糖尿病を発症するKK-Ayマウスの体細胞からiPS細胞を作った。得られたiPS細胞は典型的なES細胞様の形態を示し(中央、位相差顕微鏡像)、幹細胞マーカーを発現していた(下:real time RT-PCR、右:免疫蛍光染色)。KK-AyiPS1~4は、KK-Ayの体細胞由来の4つの異なるiPS細胞クローンであり、201B7は正常マウス由来のiPS細胞クローンである。
【実施例】
【0068】
(2)図14
図13のiPS細胞から褐色脂肪細胞を誘導した(iPS-derived BA細胞)(上)。この細胞をKK-Ayマウスに移植したところ、随時血糖値の上昇が緩やかで(左下)、また尿糖はほとんど検出されなかった(右下)。コントロールとして、移植していないKK-Ayマウス(Non-transplant)と、褐色脂肪細胞への誘導を行わずGFP(green fluorescent protein)遺伝子を導入した細胞を移植したマウス(GFPコントロール)では、糖尿病が進行していた。
【実施例】
【0069】
(3)図15
iPS由来のBA細胞を移植したKK-Ayマウスは、体重増加が有意に抑制され(上)、血清中のNEFA(左下)と中性脂肪(右下)も低かった。
【実施例】
【0070】
(4)図16
iPS由来のBA細胞を移植したKK-Ayマウスは、血清中のアディポネクチンが有意に高値であった。摂食量はコントロールマウスと同じであった。
【実施例】
【0071】
実施例9
ヒト正常皮膚線維芽細胞およびiPS細胞から誘導した褐色脂肪細胞の性状(図17)
A,ヒト正常皮膚線維芽細胞 aHDFを、12wellプレートに培養し、図1に示す方法で、C/EBPβとc-Mycの2つの遺伝子を導入した群の結果を示す。遺伝子導入から12日後、位相差顕微鏡で観察した(左)。また一部のウェルではミトコンドリアを可視化する目的で、培養液に終濃度200nMになるようにInvitrogen 社製のMito Tracker Red probeを添加し、5%CO2 /95%大気、37℃で15分間静置した後オリンパス社製の蛍光顕微鏡で観察した(中央)。別の一部のウェルでは、図2と同様の方法でOilRedOで染色した(右)。多数のミトコンドリアが細胞内に集積し、また多房性脂肪滴を含む褐色脂肪細胞が、多数認められる。
【実施例】
【0072】
B、ヒト正常皮膚線維芽細胞 aHDFを、12wellプレートに培養し、図1のように実験した。C/EBPβ, c-Mycの2つの遺伝子を導入した群の結果を示す。遺伝子導入から12日後、免疫染色を行った。上段から順に抗UCP1抗体(1次抗体)とPE Cy5標識抗ウサギIgG抗体(2次抗体)、抗CIDEA抗体(1次抗体)とAlexaFluor488標識抗ウサギIgG抗体(2次抗体)、抗PGC-1抗体(1次抗体)とPE Cy5標識抗ウサギIgG抗体(2次抗体)、および抗Dio2抗体(1次抗体)とAlexaFluor488標識抗ウサギIgG抗体(2次抗体)で染色した細胞である。左は蛍光像、右は微分干渉像。褐色脂肪細胞に特異的な4つのたんぱくのすべてが多量に発現しているのが分かる。
【実施例】
【0073】
C、ヒト正常皮膚線維芽細胞 aHDF、aHDFからAの方法で誘導した褐色脂肪細胞(dBA)、ヒトiPS細胞から誘導した褐色脂肪細胞(iBA)からRNAを回収し、UCP1、CIDEA、AdipoQに特異的なプライマー・プローブを用いたreal time RT-PCR解析を行った。各mRNAの発現量を、βアクチンのmRNA発現量で補正した後、aHDFでのmRNA発現量を1として算出した相対的なmRNA発現量を示す。dBAとiBAは、aHDFと比べて極めて高いレベルで、褐色脂肪細胞に特異的な遺伝子のmRNAを発現している。
【実施例】
【0074】
実施例10
ヒト正常皮膚線維芽細胞から誘導した褐色脂肪細胞の性状(図18)
A, ヒト正常皮膚線維芽細胞 aHDF、aHDFから図17Aの方法で誘導した褐色脂肪細胞(dBA)、dBAに100 nMのレプチンを添加後24時間培養した細胞(Lep)、およびdBAに1μMのイソプロテレノールを添加後2時間培養した細胞(Iso)からRNAを回収し、UCP1、レプチンレセプターに特異的なプライマー・プローブを用いたreal time RT-PCR解析を行った。各mRNAの発現量を、βアクチンのmRNA発現量で補正した後、aHDFでのmRNA発現量を1として算出した相対的なmRNA発現量を示す。dBAは、aHDFと比べて極めて高いレベルでUCP1とレプチンレセプターのmRNAを発現し、これらの発現はレプチンあるいはイソプロテレノールの刺激でさらに増強することが分かる。
【実施例】
【0075】
B、ヒト正常皮膚線維芽細胞 aHDF、aHDFから図17Aの方法で誘導した褐色脂肪細胞(dBA)、およびdBAに1μMのイソプロテレノールを添加後2時間培養した細胞(Iso)を準備した。24時間培養前後の培地中のグルコースの濃度をグルコースBテスト(和光)で測定した。コントロールとして、細胞を培養しない培地を24時間インキュベートし、それぞれのグルコース濃度の減少率を算出した。dBAは線維芽細胞に比し、より多くのグルコースを消費すること、その消費量はイソプロテレノールの刺激でさらに増加することが分かる。
【実施例】
【0076】
C, ヒト正常皮膚線維芽細胞 aHDF、およびaHDFから図17Aの方法で誘導した褐色脂肪細胞(dBA)からDNAを採取した。PPARg遺伝子上流域(転写開始点の-431~-151 bp)、およびUCP1遺伝子上流域(転写開始点の-693~-348 bp)のCpGジヌクレオチドのメチル化を、バイサルファイド法で解析した。メチル化を黒で、脱メチル化を白で示す。線維芽細胞ではどちらの領域も高度にCpGメチル化されているのに対して、dBAでは低メチル化になっていることが分かる。
【実施例】
【0077】
実施例11
ヒト正常皮膚線維芽細胞から誘導した褐色脂肪細胞の性状(図19)
A, ヒト正常皮膚線維芽細胞 aHDFから、図17Aの方法で褐色脂肪細胞(dBA)を誘導する実験を行い、遺伝子導入後0、3、6、9、12日後の細胞からRNAを採取した。MitoHDに特異的なプライマー・プローブを用いたreal time RT-PCR解析を行った。mRNAの発現量を、βアクチンのmRNA発現量で補正した後、aHDFでのmRNA発現量を1として算出した相対的なmRNA発現量を示す。線維芽細胞からdBAへの誘導にともなって、ミトコンドリアDNAのMT-ND1遺伝子の発現が増強することが分かる。
【実施例】
【0078】
B、ヒト正常皮膚線維芽細胞 aHDF、およびaHDFから図17Aの方法で誘導した褐色脂肪細胞(dBA)を準備した。6ウェルプレートに播種後、図のようにインスリン、Phloretin、アンチマイシン、および/またはイソプロテレノールを添加し、2-デオキシグルコースの取り込みを測定した。dBAは線維芽細胞に比して高いグルコース取り込みを示すこと、その取り込みはインスリン刺激により増加すること、インスリン刺激によるグルコース取り込みの増加はPhloretin(グルコーストランスポーター阻害剤)によってキャンセルされることがわかる。また、dBAによるグルコース取り込みはイソプレテレノール刺激により増加すること、イソプロテレノール刺激によるグルコース取り込みの増加はアンチマイシン(ミトコンドリア電子伝達鎖阻害剤)によってキャンセルされることがわかる。
【実施例】
【0079】
C, ヒト正常皮膚線維芽細胞 aHDF、およびaHDFから図17Aの方法で誘導した褐色脂肪細胞(dBA)を準備した。FCCP、アンチマイシン、またはオリゴマイシンを添加し、経時的に細胞外酸素濃度を測定した。縦軸は発光強度であり、数字が高いと酸素濃度が低いことを示す。線維芽細胞と比べてdBAでは酸素消費量が高く、その酸素消費はアンチマイシンまたはオリゴマイシンの添加により抑制されることがわかる。
【実施例】
【0080】
実施例12
ヒトiPS細胞から図17Aの方法で褐色脂肪細胞を誘導する。得られた細胞は多房性脂肪滴を含み、UCP1を有意に発現する。また、ヒト白色脂肪細胞から図17Aの方法で褐色脂肪細胞を誘導する。得られた細胞は多房性脂肪滴を含み、UCP1を有意に発現する。
【実施例】
【0081】
実施例13
エピゾーマル・ベクターによるヒト正常皮膚線維芽細胞から褐色脂肪細胞へのダイレクト・リプログラミング(図20)
A、エピゾーマル・ベクターとプラスミド・ベクターの構造を示す。図左:エピゾーマル・ベクター。この中のcDNAとして、何も含まないものをpG.oriP9.E、PRDM16を含むものをpG.oriP9.E.P、CEBPbetaを含むものをpG.oriP9.E.C、c-Mycを含むものをpG.oriP9.E.Mと呼ぶ。図右:プラスミド・ベクター。この中のcDNAとして、何も含まないものをpG.4、PRDM16を含むものをpG.P、CEBPbetaを含むものをpG.C、c-Mycを含むものをpG.Mと呼ぶ。CAG prom:CAGプロモーター、polyA:Poly A additional signal,oriP: Epstein-Barr virus (EBV) origin of replication P,EBNA1: EBV nuclear antigen 1。
【実施例】
【0082】
B、Aのプラスミドを、ヒト皮膚由来線維芽細胞に電気穿孔法で導入後、12日間培養し、RNAを回収した。UCP1遺伝子特異的プライマー・プローブを用いてreal time RT-PCRを行った。UCP1遺伝子mRNAの発現量を、βアクチンのmRNA発現量で補正した後、線維芽細胞でのmRNA発現量を1として算出した相対的なmRNA発現量を示す。pG.oriP9.E.CおよびpG.oriP9.E.Mを共導入したもので最も高くUCP1 mRNAが発現し、褐色脂肪細胞に誘導されたことがわかる。
【実施例】
【0083】
C、ヒト線維芽細胞に記載のプラスミドを導入後、12日間培養した。OilRedO染色像を示す。CEBPbetaとc-Mycをそれぞれ含む2つのエピゾーマルベクター(pG.oriP9.E.CとpG.oriP9.E.M)の共導入により、効率よく褐色脂肪細胞に誘導できたことがわかる。CEBPbetaとc-Mycをそれぞれ含む2つのプラスミドベクター(pG.CとpG.M)の共導入でも、褐色脂肪細胞を誘導できるが、その効率はエピゾーマルベクターよりも劣る。
【実施例】
【0084】
実施例14
マウス胎仔線維芽細胞(MEF)から誘導した褐色脂肪細胞(図21)
実施例1と同様に、マウスのPRDM16(P)、C/EBPβ(C)、L-Myc(L)、およびc-Myc(M)遺伝子を有するレトロウイルスベクターを、種々の組み合わせでマウス胎仔線維芽細胞(MEF)に感染させ、その後褐色脂肪誘導培地で培養した。感染後第 20日目に、RNAを回収した。レトロウイルスベクターを感染させずに、同じ培養を行った細胞をControlとした。UCP1遺伝子特異的プライマー・プローブを用いてreal time RT-PCRを行った。UCP1遺伝子mRNAの発現量を、βアクチンのmRNA発現量で補正した後、線維芽細胞でのmRNA発現量を1として算出した相対的なmRNA発現量を示す。PRDM16(P),C/EBPβ(C),L-Myc(L)の3因子を導入したもので最も高くUCP1 mRNAが発現し、褐色脂肪細胞に誘導されたことがわかる。
【実施例】
【0085】
実施例15
マウス胎仔線維芽細胞(MEF)から誘導した褐色脂肪細胞の生体内機能(図22)
実施例13の方法で、C57BL/6マウスのMEFにPRDM16(P)、C/EBPβ(C)およびL-Myc(L)遺伝子を導入して、褐色脂肪細胞(dBA)を誘導した。この細胞、またはGFP遺伝子を導入したMEF(GFP-MEF)を、8週齢の同系マウスの皮下に移植した。これらのマウス、および移植しないマウスに、高脂肪食餌(QF)を与えた。コントロールとして、通常食餌(NF)を与えた非移植マウスも準備した。
【実施例】
【0086】
A、移植後のマウスの体重を示す。非移植およびGFP-MEF移植マウスでは、QF摂取にともないNF摂取マウスに比して体重が著しく増加したが、dBAを移植した群ではこの食餌性の肥満が顕著に抑制できた。
【実施例】
【0087】
B、移植後4週に血清を採取し、非エステル化脂肪酸(NEFA)と中性脂肪(TG)を測定した。非移植およびGFP-MEF移植マウスでは、QF摂取にともないNF摂取マウスに比して血清NEFAとTGが著しく増加したが、dBAを移植した群ではこの食餌性の脂質異常症が顕著に抑制できた。
【実施例】
【0088】
C、移植後7日目に、GFP-MEFまたはdBA移植マウスを麻酔し、低温に2時間暴露した。その後サーモグラフィーで体表温度を測定した。GFP-MEF移植マウスでは移植部の温度は周辺体表温度と変わらなかったが、dBA移植マウスでは移植部の温度上昇が認められた。
【実施例】
【0089】
実施例16
マウス胎仔線維芽細胞(MEF)から誘導した褐色脂肪細胞の生体内機能(図23)
糖尿病モデルであるAAkyマウスのMEFから、PRDM16(P)、C/EBPβ(C)およびL-Myc(L)遺伝子を用いた実施例13の方法で、褐色脂肪細胞(dBA)を誘導した。この細胞、またはGFP遺伝子を導入したMEF(GFP-MEF)を、6週齢の同系マウスの皮下に移植(10 cm Dish confluentx2/マウス)した。これらのマウス、および移植しないマウスを、通常食餌で飼育した。
【実施例】
【0090】
A—C、マウスの体重(A)、随時血中グルコース(B)、空腹時血中グルコース(C)を示す。dBAを移植したAAkyマウスでは体重増加と血中グルコース上昇が有意に抑制されたことが分かる。
【実施例】
【0091】
D、移植後4週目に、経口グルコース負荷試験を行った。50mg/mouseのグルコースをカテーテルでマウスの胃内に投与し、経時的に血中グルコースを測定した。dBAを移植したマウスでは耐糖能が改善していることが分かる。
【実施例】
【0092】
E、移植後4週目に、経口グルコース負荷試験を行った。0.0125U/mouseのインスリンをマウスの腹腔内に注射し、経時的に血中グルコースを測定した。dBAを移植したマウスではインスリン抵抗性が改善していることが分かる。
【実施例】
【0093】
F、移植後4週目にマウスの血清を採取し、非エステル化脂肪酸(NEFA)と中性脂肪(TG)を測定した。非移植およびGFP-MEF移植マウスでは、血清NEFAとTGが増加したが、dBAを移植した群ではこの脂質異常症が顕著に抑制できた。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図2C】
3
【図2D】
4
【図2E】
5
【図2F】
6
【図3】
7
【図4】
8
【図5】
9
【図6】
10
【図7】
11
【図8】
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【図9】
13
【図10】
14
【図11】
15
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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