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明細書 :有機-無機複合材料及び有機-無機複合成形物並びにこれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-131300 (P2017-131300A)
公開日 平成29年8月3日(2017.8.3)
発明の名称または考案の名称 有機-無機複合材料及び有機-無機複合成形物並びにこれらの製造方法
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
A61F   2/28        (2006.01)
FI A61L 27/00 J
A61F 2/28
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2016-012025 (P2016-012025)
出願日 平成28年1月26日(2016.1.26)
発明者または考案者 【氏名】水谷 義
【氏名】廣田 健
【氏名】日下部 茜
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査請求 未請求
テーマコード 4C081
4C097
Fターム 4C081AB03
4C081AB04
4C081BA12
4C081BB08
4C081CA051
4C081CC07
4C081CF031
4C081DA01
4C081DA11
4C081EA02
4C081EA03
4C081EA05
4C097AA01
4C097BB01
4C097CC04
4C097DD01
4C097DD07
4C097DD08
4C097EE01
要約 【課題】 生体適合性、機械的強度の他、柔軟性にも優れた有機-無機複合材料及び有機-無機複合成形物並びにこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の有機-無機複合材料は、ヒドロキシ基を有する高分子における当該ヒドロキシ基がリン酸化度1~20%となる割合で部分的にリン酸化された構造を備える部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子に、ヒドロキシアパタイトが複合化されてなり、本発明の有機-無機複合成形物は、前記有機-無機複合材料からなる。本発明の有機-無機複合材料の製造方法は、前記部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子に、ヒドロキシアパタイトを複合化する。本発明の有機-無機複合成形物の製造方法は、前記部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子に、ヒドロキシアパタイトを複合化した後、温間等方圧プレス成形を行う。
【選択図】 なし
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒドロキシ基を有する高分子における当該ヒドロキシ基がリン酸化度1~20%となる割合で部分的にリン酸化された構造を備える部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子に、ヒドロキシアパタイトが複合化されてなる、有機-無機複合材料。
【請求項2】
複合材料全量に対し、前記部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子が1~40重量%となる割合で複合化されてなる、請求項1に記載の有機-無機複合材料。
【請求項3】
前記ヒドロキシ基を有する高分子がポリビニルアルコールである、請求項1又は2に記載の有機-無機複合材料。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の有機-無機複合材料からなる、有機-無機複合成形物。
【請求項5】
ヒドロキシ基を有する高分子における当該ヒドロキシ基がリン酸化度1~20%となる割合で部分的にリン酸化された構造を備える部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子に、ヒドロキシアパタイトを複合化する、有機-無機複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子と前記ヒドロキシアパタイトとの複合化を、交互浸漬法により行う、請求項5に記載の有機-無機複合材料の製造方法。
【請求項7】
ヒドロキシ基を有する高分子における当該ヒドロキシ基がリン酸化度1~20%となる割合で部分的にリン酸化された構造を備える部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子に、ヒドロキシアパタイトを複合化した後、温間等方圧プレス成形を行う、有機-無機複合成形物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機-無機複合材料及び有機-無機複合成形物並びにこれらの製造方法に関し、詳しくは、ヒドロキシ基を有する高分子における当該ヒドロキシ基が部分的にリン酸化された構造を備える部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子と、ヒドロキシアパタイトとの複合材料及び前記複合材料からなる有機-無機複合成形物並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は、有機成分(コラーゲン、他のたんぱく質、細胞など)と無機成分(ヒドロキシアパタイト)の複合材料である。
そこで、種々の有機-無機複合材料が合成され、骨組織の足場材料や人工骨としての適用可能性が模索されている。
【0003】
例えば、ポリビニルアルコールゲル複合体で強化されたナノヒドロキシアパタイト(nano-HA/PVA)を、異状のある又は損傷を受けた関節軟骨と置換する生体材料として用いるため、その応力緩和機構や影響要素を調べた研究報告がある(非特許文献1参照)。
【0004】
さらに、交互浸漬プロセスにより、ナノヒドロキシアパタイト(n-HA)がエレクトロスピニングされたポリカプロラクトンーゼラチン(PCG)繊維に堆積されたもの(PCG-HAAS)と、ヒドロキシアパタイト粉末がPCGのエレクトロスピニング溶液に混合されたもの(PCG-HB)とを用いて、物理化学的、生物学的特性を比較・検討した研究報告がある(非特許文献2参照)。
【0005】
また、低温下の生体内水熱プロセスと溶液流廷法を用いて、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)/アパタイト様ナノ複合フィルムを合成し、その形態的、構造的、熱的及び機械的な特性を報告した研究報告がある(非特許文献3参照)。
【0006】
また、加熱処理によって調製されたポリビニルアルコール(PVA)とポリアクリル酸(PAA)のネットワーク(PVA/PAA-h-network)から得られる人工骨が高い機械的特性を示すことを報告するとともに、さらに、その生成機構を明らかにするため、凍結と融解を繰り返して調製したPVA/PAAネットワーク(PVA/PAA-ft-network)と、キトサン/PAAネットワークと、ゼラチン/PAAネットワークと、ポリ[N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド]-co—(アクリル酸)ネットワークからそれぞれ得られる人工骨について分析を行った研究報告がある(非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Yusong Pan, Dangsheng Xiong, J Mater Sci (2010) 45, 5495-5501
【非特許文献2】A.K.Jaiswal, H.Chhabra, V.P.Soni, J.R.Bellare, Materials Science and Engineering C 33 (2013) 2376-2385
【非特許文献3】Abdalla Abdal-hay, Chul In Kim, Jae Kyoo Lim, Ceramics International 40 (2014) 4995-5000
【非特許文献4】Takashi Iwatsubo, Ryoichi Kishi, Toshiaki Miura, Takuya Ohzono, Tomohiko Yamaguchi, J. Phys. Chem. B (2015) 119, 8793-899
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来、骨組織の足場材料や人工骨として適用可能な有機-無機複合材料を提供するための種々の研究がなされている。
そのような中で、本発明は、特に人工骨としての応用にも適した優れた生体適合性、機械的強度、柔軟性を備える有機-無機複合材料及び有機-無機複合成形物並びにこれらの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を備える。
すなわち、本発明にかかる有機-無機複合材料は、ヒドロキシ基を有する高分子における当該ヒドロキシ基がリン酸化度1~20%となる割合で部分的にリン酸化された構造を備える部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子に、ヒドロキシアパタイトが複合化されてなる。
【0010】
本発明にかかる有機-無機複合成形物は、上記有機-無機複合材料からなる。
【0011】
本発明にかかる有機-無機材料の製造方法は、ヒドロキシ基を有する高分子における当該ヒドロキシ基がリン酸化度1~20%となる割合で部分的にリン酸化された構造を備える部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子に、ヒドロキシアパタイトを複合化する。
【0012】
本発明にかかる有機-無機複合成形物の製造方法は、ヒドロキシ基を有する高分子における当該ヒドロキシ基がリン酸化度1~20%となる割合で部分的にリン酸化された構造を備える部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子に、ヒドロキシアパタイトを複合化した後、温間等方圧プレス成形を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有機-無機複合材料及び有機-無機複合成形物は、部分リン酸化ポリビニルアルコールなどの部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子と、ヒドロキシアパタイトから得られるので、生体適合性に優れている。
また、本発明の有機-無機複合材料及び有機-無機複合成形物は、機械的強度と柔軟性にも優れている。
本発明の有機-無機複合材料及び有機-無機複合成形物の製造方法によれば、上記のように優れた物性を備える有機-無機複合材料及び有機-無機複合成形物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の有機-無機複合材料のXRD測定結果を示す図である。
【図2】実施例2の有機-無機複合材料のXRD測定結果を示す図である。
【図3】実施例3の有機-無機複合材料のXRD測定結果を示す図である。
【図4】ヒドロキシアパタイトのXRD測定結果を示す図である。
【図5】実施例1~3にかかる各複合体とヒドロキシアパタイトにおける結晶子サイズをまとめた図である。
【図6】3点曲げ試験における3点曲げ強度(MPa)算出のための各パラメータについての参考説明図である。
【図7】実施例1~3の有機-無機複合成形物とヒドロキシアパタイトの3点曲げ強度試験結果を示す図である。
【図8】実施例1~3の有機-無機複合成形物とヒドロキシアパタイトについて、120℃、500MPaの圧力下で温間等方圧プレス成形(WIP成形)を行った試験片の応力-変位曲線の測定結果を示す図である。
【図9】実施例1~3の有機-無機複合成形物とヒドロキシアパタイトについて、120℃、700MPaの圧力下で温間等方圧プレス成形(WIP成形)を行った試験片の応力-変位曲線の測定結果を示す図である。
【図10】交互浸漬の繰り返し回数と無機含量との関係を明らかにするための熱重量測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる有機-無機複合材料及び有機-無機複合成形物並びにこれらの製造方法の好ましい実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。

【0016】
〔有機-無機複合材料〕
本発明の有機-無機複合材料は、ヒドロキシ基を有する高分子(以下、単に「ヒドロキシ基含有高分子」と称することがある)における当該ヒドロキシ基が部分的にリン酸化された構造を備える部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子(以下、単に「部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子」と称することがある)と、ヒドロキシアパタイトとの複合材料である。

【0017】
前記ヒドロキシ基含有高分子としては、特に限定するわけではないが、例えば、重量平均分子量が1万~10万の範囲のものが好ましく、重量平均分子量が1万~5万の範囲のものがより好ましい。
前記ヒドロキシ基含有高分子としては、ヒドロキシ基を含有するものであればよく、特に限定するわけではないが、構造が単純であるため制御が容易であり、かつ、入手も容易であることから、ポリビニルアルコールが好ましく使用できる。

【0018】
前記部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子におけるリン酸化度は1~20%である。この範囲において、ヒドロキシアパタイト結晶の成長が適度に行われ、機械的強度及び柔軟性に優れた有機-無機複合材料となる。5~20%であることがより好ましく、7~15%であることが特に好ましい。
なお、本発明において、前記リン酸化度は、部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子におけるヒドロキシ基とリン酸基との合計を100としたときのリン酸基の割合を指すものとする。

【0019】
ヒドロキシアパタイトは、Ca10(PO46(OH)2を基本組成とするものであるが、本発明において、ヒドロキシアパタイトというときは、本発明の効果を害しない範囲において、Ca成分の一部がSr、Ba、Mg、Fe、Al、Y、La、Na、K、Hなどで置換されていたり、PO4成分の一部がVO4、BO3、SO4、CO3、SiO4などで置換されていたり、OH成分の一部がF、Cl、O、CO3などで置換されていたり、これらの各成分の一部に欠陥があったりしたものも含む。

【0020】
本発明の有機-無機複合材料としては、機械的強度、柔軟性の観点から、複合材料全量に対し、前記部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子が1~40重量%となる割合で複合化されてなるものが好ましく、5~30重量%となる割合であることがより好ましい。

【0021】
〔有機-無機複合材料の製造方法〕
上記本発明の有機-無機複合材料は、特に限定するわけではないが、例えば、以下に詳述する本発明の有機-無機複合材料の製造方法によって製造することができる。

【0022】
本発明の有機-無機複合材料の製造方法は、ヒドロキシ基含有高分子のヒドロキシ基がリン酸化度1~20%となる割合で部分的にリン酸化された構造を備える部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子に、ヒドロキシアパタイトを複合化することにより行う。

【0023】
<部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子の合成>
部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子の合成は、特に限定するわけではないが、例えば、尿素、リン酸、ジメチルホルムアミド(DMF)によるヒドロキシ基含有高分子の均一系リン酸化反応(勝浦嘉久次、稲垣訓宏、桜井史朗,日本化学会誌,1972,1305-1309参照)が有用である。この反応によれば、反応時間を適宜選定することでリン酸化度を容易に調整することができ、また、高リン酸化度のものを得ることも可能である。

【0024】
<部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子とヒドロキシアパタイトとの複合化>
部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子とヒドロキシアパタイトとの複合化は、特に限定するわけではないが、例えば、交互浸漬法を利用する方法が好ましい。

【0025】
ここで、一般に、交互浸漬法とは、カルシウムイオンを含む溶液に基材を浸漬した後、リン酸イオンを含む溶液に浸漬する一連の工程を1サイクルとして、これを繰り返すことにより、ヒドロキシアパタイトの核形成と成長を実現する方法である。

【0026】
本発明において、交互浸漬法を利用する場合には、例えば、以下のようにして行うことができる。
まず、部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子の水溶液を調製した後、例えば、水酸化ナトリウム水溶液などを用いて、pHを塩基性側に調整したのち、カルシウムイオンを含む溶液を加え、ゲル化させる。
次いで、このゲルに対し、リン酸イオンを含む溶液とカルシウムイオンを含む溶液を交互に1回以上、好ましくは2~5回程度繰り返し反応させることで、部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子とヒドロキシアパタイトとの複合化を実現することができる。

【0027】
上記において、カルシウムイオンを含む溶液としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の水溶液を挙げることができ、また、リン酸イオンを含む溶液としては、例えば、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムなどのリン酸水素塩の水溶液を挙げることができる
また、反応の際の溶液の温度としては、例えば、10~50℃が好ましく、20~40℃がより好ましい。反応の際の溶液のpHとしては、塩基性側、例えば、pH6~13、pH7~10がより好ましい。pH調整には、例えば、アンモニア水溶液などを用いることができる。
溶媒としては、各成分の溶解度の点から、上記のように水を使用することが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、有機溶媒と水の混合溶液を使用しても良い。
さらに、本発明の目的を害しない範囲で、上記成分以外の成分を用いても良い。

【0028】
交互浸漬法を利用する上記方法においては、部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子におけるリン酸基がカルシウムイオンと結合して結晶核が形成され、そこに、リン酸イオンを含む溶液及びカルシウムイオンを含む溶液から供給されるリンとカルシウムが取り込まれてヒドロキシアパタイトの結晶が成長していくものであり、また、部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子におけるヒドロキシ基もヒドロキシアパタイトと結合し、安定した複合体が生成されるものと推測される。
本発明において、リン酸化ヒドロキシ基含有高分子におけるリン酸化度が1~20%であることにより、優れた効果が奏せられるのは、この範囲において、部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子におけるリン酸基においてヒドロキシアパタイトの結晶核が生成され、部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子におけるヒドロキシ基がヒドロキシアパタイトとの結合サイトとなっているという上述した両者の働きのバランスが最適となるからであると考えられる。

【0029】
また、上述のとおり、本発明の有機-無機複合材料としては、機械的強度、柔軟性の観点から、複合材料全量に対し、前記部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子が20~40重量%となる割合で複合化されてなるものが好ましく、5~30重量%となる割合であることがより好ましいが、この割合の調整は、例えば、交互浸漬法を利用する上記方法の場合には、リン酸イオンを含む溶液とカルシウムイオンを含む溶液を反応させる際の当該回数を調整することによって行うことができる。反応の繰り返し回数が多いほど、ヒドロキシアパタイトの含有割合が増加し、部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子の割合が相対的に減少することになる。反応後にエージングを行うことによりヒドロキシアパタイトの含有割合の増加と結晶性の向上を図ることもできる。

【0030】
〔有機-無機複合成形物〕
本発明の有機-無機複合成形物は、本発明にかかる有機-無機複合材料からなる。

【0031】
〔有機-無機複合成形物の製造方法〕
本発明の有機-無機複合成形物は、特に限定するわけではないが、例えば、以下に詳述する本発明の有機-無機複合成形物の製造方法によって製造することができる。

【0032】
<部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子とヒドロキシアパタイトとの複合化>
部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子とヒドロキシアパタイトとの複合化は、本発明にかかる有機-無機複合材料の製造方法に関して既に述べた方法によればよい。

【0033】
<複合化後の成形>
本発明の有機-無機複合成形物の製造方法では、上記複合化後、温間等方圧プレス成形(以下、「WIP成形」と略記する)を行う。本発明者の検討によれば、WIP成形を行うことで、特に機械的強度及び柔軟性に優れた複合材料を得ることができることが分かった。
機械的強度及び柔軟性に優れた複合成形物を得るという観点において好適な条件は以下のとおりである。
すなわち、WIP成形を行う場合の成形温度は、例えば、80~180℃が好ましい。
また、WIP成形を行う場合の成形圧力は、例えば、200~1000MPaが好ましい。

【0034】
WIP成形の前に、冷間等方静水圧プレス成形(以下、「CIP成形」と略記する)を行うことがより好ましく、CIP成形の前に予備成形を行うことがさらに好ましい。
前記CIP成形を行う場合の成形温度は、例えば、5~30℃が好ましい。
また、前記CIP成形を行う場合の成形圧力は、例えば、100~300MPaが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を用いて、本発明にかかる有機-無機複合材料及び有機-無機複合成形物並びにこれらの製造方法について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
〔実施例1〕
<PPVAの合成>
合成反応のスキームを下式(1)に示す。
【実施例】
【0037】
【化1】
JP2017131300A_000002t.gif
【実施例】
【0038】
具体的な合成方法は、以下のとおりである。
すなわち、100%リン酸2.7mL(0.05mol)、尿素12g、トリエチルアミン25mL、脱水N,N-ジメチルホルムアミド75mLを200mlの三口反応容器に入れ、120℃に加熱し、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記する)4.4g(1.5×10-4mol)を加え、45分間反応させることにより、リン酸化度5%のリン酸化ポリビニルアルコール(以下、「PPVA」と略記する)が得られた。
反応終了後、エタノールを加え生成物を沈殿させ、その沈殿物を取り出し、蒸留水に溶解した。そして、セロハンチューブを用い、蒸留水中で2日間透析を行い精製した。その後、精製したPPVA水溶液を多量のアセトン中に滴下し再沈殿を行った。
得られた沈殿物を蒸留水に溶解し、真空乾燥し、フィルム状のPPVAを得た。得られたPPVAについて、1H NMRスペクトル、13C NMRスペクトル、1H-1H COSYを用いて、合成確認を行った。リン酸化度は1H NMRの積分値より決定した。
NMR測定結果及び収量(収率)を以下に示す。
1H NMR(500MHz,D2O):δ/ppm=1.59-1.86(m,2H,CH2),4.03(bs,0.95H,CH),4.49(bs,0.05H,CH)
13C NMR(125MHz,D2O):δ/ppm=46.38(CH2),66.9(CH),71.68(CH)
収量(収率)=3.75g(77.7%)
【実施例】
【0039】
<PPVA-Ca2+ゲルの合成>
PPVAに蒸留水を加え10重量%にし、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9近傍に調整し、1mol/L塩化カルシウム水溶液を加えゲル化させることにより、PPVA-Ca2+ゲルを得た。
【実施例】
【0040】
<交互浸漬法を利用したPPVA-HAp複合体の合成>
PPVA-Ca2+ゲルに、0.1mol/Lの(NH42HPO4水溶液を5ml加え、アンモニア水溶液でpHを9近傍に調整し25℃の恒温槽に入れ、2時間静置した。反応終了後、吸引濾過し、蒸留水で洗浄した。
次に、0.1mol/LのCaCl2水溶液をPPVA-Ca2+ゲルに5mL加え、pHを9近傍に調整し25℃の恒温槽に入れ、2時間静置した。反応終了後、吸引濾過し、蒸留水で洗浄した。この操作を5回繰り返した。5回目の0.1mol/LのCaCl2水溶液を加えたあと、60℃で、2時間アニーリングを行った。
以上のようにして、PPVAとヒドロキシアパタイト(以下、「HAp」と略記する)の複合体を合成したのち、真空乾燥を行った。
【実施例】
【0041】
<PPVA-HAp複合成形物の作製>
上記のPPVA-HAp複合体を粉末化したのち、一軸金型成形により100MPaで予備成形した。
次いで、245MPaでCIP成形を行った。
さらに、120℃で、300,500又は700MPaで、WIP成形を行うことにより、PPVA-HAp複合成形物として、3種(WIP成形圧力300,500,700MPa)の各試験片(サイズ:3.5mm×5mm×12mm)を作製した。
【実施例】
【0042】
〔実施例2〕
<PPVAの合成>
100%リン酸2.7mL(0.05mol)、尿素12g、トリエチルアミン25mL、脱水N,N-ジメチルホルムアミド75mLを200mlの三口反応容器に入れ、120℃に加熱し、PVA4.4g(1.5×10-4mol)を加え、反応させる際、反応時間を1時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、リン酸化度10%のPPVAを得た。
NMR測定結果及び収量(収率)を以下に示す。
1H NMR(500MHz,D2O):δ/ppm=1.59-1.86(m,2H,CH2),4.03(bs,0.9H,CH),4.49(bs,0.1H,CH)
13C NMR(125MHz,D2O):δ/ppm=46.38(CH2),66.9(CH),71.68(CH)
収量(収率)=3.68g(71.0%)
【実施例】
【0043】
<PPVA-Ca2+ゲルの合成、交互浸漬法を利用したPPVA-HAp複合体の合成、及び、PPVA-HAp複合成形物の作製>
リン酸化度10%のPPVAを用いたこと以外は実施例1と同様にして、PPVA-Ca2+ゲルの合成、交互浸漬法を利用したPPVA-HAp複合体の合成、及び、3種(WIP成形圧力300,500,700MPa)のPPVA-HAp複合成形物の作製を行った。
【実施例】
【0044】
〔実施例3〕
<PPVAの合成>
100%リン酸2.7mL(0.05mol)、尿素12g、トリエチルアミン25mL、脱水N,N-ジメチルホルムアミド75mLを200mlの三口反応容器に入れ、120℃に加熱し、PVA4.4g(1.5×10-4mol)を加え、反応させる際、反応時間を4時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、リン酸化度20%のPPVAを得た。
NMR測定結果及び収量(収率)を以下に示す。
1H NMR(500MHz,D2O):δ/ppm=1.59-1.86(m,2H,CH2),4.03(bs,0.8H,CH),4.49(bs,0.2H,CH)
13C NMR(125MHz,D2O):δ/ppm=46.38(CH2),66.9(CH),71.68(CH)
収量(収率)=4.69g(77.8%)
【実施例】
【0045】
<PPVA-Ca2+ゲルの合成、交互浸漬法を利用したPPVA-HAp複合体の合成、及び、PPVA-HAp複合成形物の作製>
リン酸化度5%のPPVAを用いたこと以外は実施例1と同様にして、PPVA-Ca2+ゲルの合成、交互浸漬法を利用したPPVA-HAp複合体の合成、及び、3種(WIP成形圧力300,500,700MPa)のPPVA-HAp複合成形物の作製を行った。
【実施例】
【0046】
〔物性の測定・評価〕
<XRD>
実施例1~3にかかる各複合体について、粉末X線回折装置「SmartLab」(リガク社製)を用いて粉末X線回折(XRD)を行い、結晶構造解析を行った。測定結果を、それぞれ、図1~3に示す。図4にHApのXRD測定結果を示す。
また、実施例1~3にかかる各複合体とHApにおける結晶子サイズを図5にまとめた(なお、実施例3の(130),(222),(004)の回折ピークは弱く、半値幅を求めることが困難であったので、結晶子サイズは不明)。
図1~4より、実施例1~3にかかる複合体において、HApの結晶が生成されたことを確認することができた。リン酸化度が小さいほど、よりシャープなHApのピークが観測された。
また、図5に示す結果から、リン酸化度が小さいほど結晶子サイズが大きくなることが分かった。また、いずれにおいても、(002)面が最も結晶子サイズが大きく、針状結晶であることが分かった。
【実施例】
【0047】
<成形物の物性試験>
実施例1~3の各成形物(各試験片)について、ファインセラミックス曲げ強さ試験機「MZ-250」(株式会社マルトー社製)を用いて、3点曲げ試験を行った。支点間距離Lは8mm、曲げ試験のクロスヘッド速度は、0.5mm/minとした。
試験結果に基づき、3点曲げ強度(MPa)を以下の算出式から算出した。
σp=3PL/2wt2
ここで、Pは最大荷重(N)、Lは支点間距離(mm)、wは試験片の幅(mm)、tは試験片の厚さ(mm)である。なお、3点曲げ強度(MPa)算出のための前記各パラメータについての参考説明図を図6に示す。
実施例1~3と、参考としてのHApについて、測定結果を下表1及び図7にまとめて示す。下表1には、各成形体の密度d(g/cm3)も併記した。
【実施例】
【0048】
【表1】
JP2017131300A_000003t.gif
【実施例】
【0049】
また、実施例1~3のそれぞれに関し、2種(WIP成形圧力500,700MPa)の各試験片(PPVA-HAp複合成形物)について、応力-変位曲線を図8,9に示す(図8:WIP成形圧力500MPa,図9:WIP成形圧力700MPa)
【実施例】
【0050】
図7に示す結果から、複合化により、機械的強度が向上していることが分かる。
また、図8,9に示す結果から、複合化により、破断するまでのエネルギーが大きくなっており、靭性、柔軟性が向上していることが分かる。
図9に示すように、リン酸化度10%PPVAによる実施例2の成形体において、特に破断するまでに吸収されるエネルギーが大きく、リン酸化度を調整することで高靱性の成形体が製造できることが分かった。
【実施例】
【0051】
なお、以上においては、部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子としてPPVAを用いた例を示したが、PPVA以外の部分リン酸化ヒドロキシ基高分子以外においても、そのリン酸基においてHApの結晶核が生成され、他方、そのヒドロキシ基がHApとの結合サイトとなることが合理的に推測できる。
したがって、当業者は、上記実施例を参酌することにより、本発明が、PPVAを用いる実施形態において好適であることを理解するとともに、PPVA以外の部分リン酸化ヒドロキシ基含有高分子を用いる実施形態においても適用できるものであると理解することが可能である。
【実施例】
【0052】
〔参考データ:交互浸漬の繰り返し回数と無機含量との関係〕
参考のため、「交互浸漬法を利用したPPVA-HAp複合体の合成」における交互浸漬の繰り返し回数と無機含量との関係を図10に示す。
具体的には、「交互浸漬法を利用したPPVA-HAp複合体の合成」における繰り返し回数のみを変更したこと以外は実施例1~3に準じてPPVA-HAp複合体を合成し、それぞれについて、「DTG-60A」(島津製作所社製)を用いて熱重量測定を行った。
図10に示す結果から、繰り返し数の増加に伴い、無機含量が増加することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明における有機-無機複合材料及び有機-無機複合成形物は、優れた生体適合性、機械的強度、柔軟性を利用して、例えば、人工骨やその他の骨再生分野などにおいて、好適に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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