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明細書 :アミノ化合物およびその高感度質量分析方法ならびにバイオマーカーのアッセイ方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成28年6月23日(2016.6.23)
発明の名称または考案の名称 アミノ化合物およびその高感度質量分析方法ならびにバイオマーカーのアッセイ方法
国際特許分類 G01N  27/62        (2006.01)
C07D 239/47        (2006.01)
C07D 233/88        (2006.01)
G01N  33/68        (2006.01)
G01N  33/66        (2006.01)
C07K   5/06        (2006.01)
FI G01N 27/62 V
C07D 239/47 CSPZ
C07D 233/88
G01N 33/68
G01N 33/66 Z
C07K 5/06
国際予備審査の請求
全頁数 89
出願番号 特願2014-524880 (P2014-524880)
国際出願番号 PCT/JP2013/069038
国際公開番号 WO2014/010700
国際出願日 平成25年7月11日(2013.7.11)
国際公開日 平成26年1月16日(2014.1.16)
優先権出願番号 2012156746
優先日 平成24年7月12日(2012.7.12)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC
発明者または考案者 【氏名】松井 利郎
【氏名】渡辺 俊明
出願人 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100093285、【弁理士】、【氏名又は名称】久保山 隆
【識別番号】100182567、【弁理士】、【氏名又は名称】遠坂 啓太
審査請求 未請求
テーマコード 2G041
2G045
4H045
Fターム 2G041CA01
2G041FA10
2G041JA04
2G041LA08
2G045AA13
2G045AA16
2G045AA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB17
2G045DA35
2G045FA34
2G045FB05
2G045FB06
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA11
4H045BA15
4H045BA50
4H045CA42
4H045EA50
4H045FA10
要約 耐糖能異常の診断に有用な、最終糖化産物を始めとする糖化タンパク質分解物誘導体の誘導体化されたアミノ酸誘導体およびペプチド等のアミノ化合物、ならびにその迅速、高感度かつ高精度な定量が可能な質量分析方法およびそれを用いたバイオマーカーのアッセイ方法を提供すること。
本発明は、特に、質量分析に好適な誘導体化された新規な糖化タンパク質分解物誘導体を提供する。また、本発明に係るアミノ酸誘導体およびペプチド等のアミノ化合物の高感度質量分析方法は、アミノ酸誘導体またはペプチドのN末端アミノ基とトリニトロフェニル化剤またはその他の誘導体化剤とを反応させ、前記N末端アミノ基を誘導体化する工程と、N末端アミノ基が誘導体化されたアミノ酸誘導体またはペプチドを質量分析する工程を有する。さらに、本発明は、得られた質量スペクトルの強度データを用いて、生体試料中のバイオマーカー濃度の定量を行う工程を有するバイオマーカーのアッセイ方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式[I]で表されることを特徴とするアミノ化合物またはその塩。
【化1】
JP2014010700A1_000047t.gif
(式中、Rはアミノ置換基を意味し、Zはニトロフェニル基を意味する。)
【請求項2】
請求項1に記載のアミノ化合物またはその塩であって、前記アミノ置換基がアミノ酸残基もしくは置換アミノ酸残基または複数の該アミノ酸残基ならびに/もしくは置換アミノ酸残基がペプチド結合したペプチド残基であることを特徴とするアミノ化合物またはその塩。
【請求項3】
請求項2に記載のアミノ化合物またはその塩であって、
前記アミノ酸残基もしくは置換アミノ酸残基のアミノ酸または前記ペプチド残基の構成アミノ酸が、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、プロリン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファンもしくはチロシンまたはそれらの置換体であることを特徴とするアミノ化合物またはその塩。
【請求項4】
請求項2または3に記載のアミノ化合物またはその塩であって、
前記アミノ酸残基もしくは置換アミノ酸残基のアミノ酸または前記ペプチド残基の構成アミノ酸が、アルギニン、リジン、バリン、チロシン、メチオニン、グリシン、ヒスチジン、グルタミン酸もしくはトリプトファンまたはそれらの置換体であることを特徴とするアミノ化合物またはその塩。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項に記載のアミノ化合物またはその塩であって、
前記置換アミノ酸残基が、最終糖化産物(AGE)の残基であることを特徴とするアミノ化合物またはその塩。
【請求項6】
請求項5に記載のアミノ化合物またはその塩であって、前記最終糖化産物(AGE)が、アルギニン誘導体またはリジン誘導体であることを特徴とするアミノ化合物またはその塩。
【請求項7】
請求項2に記載のアミノ化合物またはその塩であって、
前記ペプチド残基のペプチドが、2個ないし10個のアミノ酸がペプチド結合していることを特徴とするアミノ化合物またはその塩。

【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のアミノ化合物またはその塩であって、前記ニトロフェニル基が、一般式[IIIb]で表されることを特徴とするアミノ化合物またはその塩。
【化2】
JP2014010700A1_000048t.gif
(式中、R、R、R、RおよびRはそれぞれ同じであってもまたは異なっていてもよく、水素原子またはニトロ基を意味する。ただし、R、R、R、RおよびRの少なくとも1個はニトロ基を意味する。)

【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のアミノ化合物またはその塩であって、前記アミノ化合物が、一般式[Ia]で表されることを特徴とするアミノ化合物またはその塩。
【化3】
JP2014010700A1_000049t.gif
(式中、R、R、R、R、RおよびRはいずれも前記と同じ意味を有する。)

【請求項10】
請求項9に記載のアミノ化合物またはその塩であって、前記アミノ化合物が、一般式[Ii]で表されることを特徴とするアミノ化合物またはその塩。
【化4】
JP2014010700A1_000050t.gif
(式中、Rは前記と同じ意味を有する。)

【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のアミノ化合物またはその塩であって、前記アミノ化合物が、一般式[Ib]で表されるニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体または一般式[Ic]で表されるニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体であることを特徴とするアミノ化合物またはその塩。
【化5】
JP2014010700A1_000051t.gif
【化6】
JP2014010700A1_000052t.gif
(式中、R、R、R、RおよびRはいずれも前記と同じ意味を有する。)

【請求項12】
請求項11に記載のアミノ化合物またはその塩であって、前記アミノ化合物が、構造式[Iii]で表されるトリニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体または構造式[Iiii]で表されるトリニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体であることを特徴とするアミノ化合物またはその塩。
【化7】
JP2014010700A1_000053t.gif
【化8】
JP2014010700A1_000054t.gif

【請求項13】
一般式[I]で表されるアミノ化合物またはその塩を質量分析で測定することを特徴とするアミノ化合物またはその塩の質量分析方法。
【化9】
JP2014010700A1_000055t.gif
(式中、Rはアミノ置換基を意味し、Zはニトロフェニル基を意味する。)

【請求項14】
請求項13に記載のアミノ化合物またはその塩の質量分析方法であって、
前記アミノ置換基が、アミノ酸残基もしくは置換アミノ酸残基またはペプチド残基であることを特徴とするアミノ化合物またはその塩の質量分析方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載のアミノ化合物またはその塩の質量分析方法であって、
前記アミノ化合物が、一般式[Ia]で表されることを特徴とするアミノ化合物またはその塩の質量分析方法。
【化10】
JP2014010700A1_000056t.gif
(式中、R、R、R、RおよびRはそれぞれ同じであってもまたは異なっていてもよく、水素原子またはニトロ基を意味する。ただし、R、R、R、RおよびRの少なくとも1個はニトロ基を意味し、Rは前記と同じ意味を有する。)

【請求項16】
請求項13ないし15のいずれか1項に記載のアミノ化合物またはその塩の質量分析方法であって、前記アミノ化合物が、一般式[Ib]で表されるニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体または一般式[Ic]で表されるニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体であることを特徴とするアミノ化合物またはその塩の質量分析方法。
【化11】
JP2014010700A1_000057t.gif
【化12】
JP2014010700A1_000058t.gif
(式中、R、R、R、RおよびRはいずれも前記と同じ意味を有する。)

【請求項17】
請求項13ないし16のいずれか1項に記載のアミノ化合物またはその塩の質量分析方法であって、前記アミノ化合物が、
構造式[Iii]で表されるトリニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体または構造式[Iiii]で表されるトリニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体であることを特徴とするアミノ化合物またはその塩の質量分析方法。
【化13】
JP2014010700A1_000059t.gif
【化14】
JP2014010700A1_000060t.gif

【請求項18】
一般式[II]で表されるアミノ酸誘導体またはその塩と、一般式[III]で表されるニトロベンゼン化合物を反応させて一般式[I]で表されるアミノ化合物またはその塩を得る工程と、
上記工程で得られたアミノ化合物またはその塩を質量分析する工程を有することを特徴とするアミノ化合物またはその塩の質量分析方法。
【化15】
JP2014010700A1_000061t.gif
(式中、Rはアミノ置換基を意味する。)
【化16】
JP2014010700A1_000062t.gif
(式中、Xはアミノ基反応性官能基を意味し、Zはニトロフェニル基を意味する。)
【化17】
JP2014010700A1_000063t.gif
(式中、RおよびZは、前記と同じ意味を有する。)

【請求項19】
前記一般式[II]で表されるアミノ酸誘導体またはその塩と、一般式[III]で表されるニトロベンゼン化合物の反応を、アルカリ性水溶液または水と有機溶媒の混合溶液であり、かつ前記溶液のpHが8~10でおこなうことを特徴とする請求項18に記載のアミノ化合物またはその塩の質量分析方法。
【請求項20】
請求項18または19に記載のアミノ化合物またはその塩の質量分析方法であって、
前記アミノ置換基がアミノ酸残基もしくは置換アミノ酸残基またはペプチド残基であることを特徴とするアミノ化合物またはその塩の質量分析方法。
【請求項21】
請求項18ないし20のいずれか1項に記載のアミノ化合物またはその塩の質量分析方法であって、前記反応が試料中で行われることを特徴とするアミノ化合物またはその塩の質量分析方法。
【請求項22】
請求項18ないし21のいずれか1項に記載の質量分析方法であって、
前記アミノ酸誘導体またはその塩がバイオマーカーであることを特徴とするアミノ化合物の質量分析方法。
【請求項23】
一般式[I']で表されるアミノ化合物またはその塩を質量分析することを特徴とするアミノ化合物またはその塩の質量分析方法。
【化18】
JP2014010700A1_000064t.gif
(式中、R’は、置換アミノ酸残基またはペプチド残基を意味し、Z’は誘導体化残基を意味する。)

【請求項24】
請求項23に記載のアミノ化合物またはその塩の質量分析方法であって、
前記誘導体化残基の誘導体化剤が、
1-ピレンスルホニルクロライド(PSC)、ダンシルクロライド(DNS-Cl)等のスルホニル化合物;
9-フルオレニルメチルクロロホルメート(FMOC)、4-ジメチルアミノスルホニル-7-フルオロベンゾキサジアゾール(DBD-F)、4-フルオロ-7-ニトロベンゾフラザン(NBD-F)、2、3-ナフタレンジアルデヒド(NDA);
3-アミノピリジル-N-ヒドロキシサクシニミジルカルバメート(APDS)等のカルバメート化合物;
3-クロロカルボニル-6、7-ジメトキシ-1-メチル-2-キノキサリノン(DMEQ-COCl);
3-ニトロフェニルイソチオシアネート、3-ピリジルイソチオシアネート、4-(ジメチルアミノ)フェニルイソチオシアネート、フルオレセイン-5-イソチオシアネート(FITC)等のイソチオシアネート化合物;
ジエチルエトキシメチレンマロネート等のマロネート化合物;
(5-サクシニミドキシ-5-オキソペンチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(SPTPP)等のホスホニウム化合物;
または2-クロロ-1-メチルピリジニウム塩等のピリジニウム化合物から選択された少なくとも1以上の誘導体化剤であることを特徴とするアミノ化合物またはその塩の質量分析方法。

【請求項25】
請求項13ないし24のいずれか1項に記載のアミノ化合物の質量分析方法により得られる質量スペクトルの強度データを用いて、生体試料中のバイオマーカー濃度の定量を行うことを特徴とするバイオマーカーのアッセイ方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ化合物およびその高感度質量分析方法ならびにバイオマーカーのアッセイ方法に関する。更に詳しくは、最終糖化産物を始めとするアミノ酸誘導体とニトロベンゼン系化合物との誘導体化で得られるアミノ化合物およびその塩、ならびにこのアミノ化合物を迅速に高感度かつ高精度で定量が可能な質量分析方法、およびそれを用いたバイオマーカーのアッセイ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、血糖値が病的に高い状態をいうが、血糖値の異常に起因する急性症状以外に、高血糖状態が長期間継続することに伴い、種々の臓器が障害を受け、糖尿病慢性期合併症を発症すると、治療が非常に困難になるため、早期に発症を診断し、生活習慣の改善、経口血糖降下薬の投与、インスリン注射等の処置を開始することが重要である。
【0003】
しかし、生活習慣病を主因とする糖尿病患者数は年々増加の一途を辿っており、厚生労働省の推計では900万人を超えるのはもはや時間の問題と言われている。その糖尿病患者数に加えて、いわゆる糖尿病予備軍が1000万人以上いると推定されることから、糖尿病疾患患者数は近い将来激増することは想像に難くない。しかしながら、実際に糖尿病の治療を受けている患者はわずか300万人足らずであり、また十分な診断を受けずに放置して治療が遅れたために腎症に至る患者が、毎年1万人ずつ増加し続けているのが現状である。その上、糖尿病の患者の約半数は心筋梗塞や脳梗塞等の虚血性疾患で死亡していることを考え合わせると、糖尿病とその合併症、ならびにいわゆる隠れ糖尿病(糖尿病前症)に対する対策は、医療経済からしても極めて重要である。とりわけ、健康診断の血糖値測定のみでは判定が極めて困難な潜在的糖尿病予備軍である糖尿病前症に対する対策、つまり早期診断方法と治療システムの確立は急務である。
【0004】
しかも、近年、糖尿病前症の中でも、空腹時血糖値(FPG)は正常であるのに、耐糖能障害(IGT)のために食後血糖値が極端に高くなり、これにより心血管障害を引き起こす患者が増加していることが指摘されている。このため、米国糖尿病学会や世界保健機構は、糖尿病前症をれっきとした疾患と定め、生活習慣の質的改善と薬物治療による糖尿病前症のIGT改善の重要性を唱えている。前述したように、このような糖尿病前症といわれる患者は、日本でも、推定1000万人を超えていると考えられるところから、糖尿病前症に対する予防ならびに治療対策は極めて重要である。
【0005】
日本糖尿病学会では、糖尿病前症や糖尿病の診断基準として、一次健康診断では空腹時血糖値(FPG)、また二次健康診断では経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の実施を指導してきた。糖尿病前症患者の耐糖能障害は、一次健康診断のFPG検査やグリコヘモグロビン(HbA1c)検査だけでは正確に診断することが困難であるところから、一次健康診断で糖尿病前症が疑われる被検者に対しては、OGTTの二次健康診断の受診を勧められている。しかしながら、このOGTTは、被験者の長い拘束時間や簡便性に欠けている上に、糖(グルコース)負荷という身体的負担を課するとともに急激な血糖値上昇等の危険が伴う等の問題があり、一般の健康診断での血液検査による血糖値検査法のように普及していないのが実情である。その結果、潜在的な糖尿病前症の多くが、OGTTの二次健康診断の受診を怠ってしまい、糖尿病やその合併症を自覚することなく未治療のまま真性の糖尿病に進行し、さらに重篤な合併症を発症するか、または腎透析を余儀なくされるに至っている。
【0006】
一次健康診断では、通常、空腹時血糖(FPG)、随時血糖あるいはグリコヘモグロビン(HbA1c)を判定指標とした検査が実施されていて、FPG値が100mg/dL以上、またはHbA1c値が5.2%以上であれば、インスリン抵抗性もしくはそれによるIGTの疑いありと診断されている。しかし、インスリン抵抗性によるIGTは、食後高血糖が主たる初期変化として現れてくることから、従来の一次健康診断で使用されているいずれの指標も精度の点で不十分と言わざるを得ず、従来の一次健康診断法は、糖尿病前症の早期診断としては利用することができない。
【0007】
そこで、現実的には、一次健康診断において、これらの指標を用いてインスリン抵抗性あるいはIGTが疑われる被検者に対して、二次健康診断あるいはそれ以降の健康診断で75g経口ブドウ糖負荷試験(75g OGTT)、血中インスリン、HOMA-R等の検査により、インスリン抵抗性もしくはIGTが陽性であるかどうかを検査して、糖尿病前症の確定診断がなされている。これらの検査は、当然のことながら費用も手間もかかることになる。
【0008】
そこで、もし一次健康診断で用いた同じ血糖測定用採血サンプルでOGTTと同等の精度で糖尿病前症の診断を確定できる方法があれば、糖尿病前症患者の検出率は飛躍的に向上するとともに、二次健康診断でのOGTT検査は不要となり、世界保健機構等が提唱する糖尿病前症の早期診断ならびに治療による糖尿病化阻止戦略を強力に推し進めることが可能となる。
【0009】
他方、近年、糖尿病慢性期合併症のリスクファクターとして、種々の最終糖化産物が注目を集めている。最終糖化産物(AGE類)は、糖化タンパク質、メイラード反応産物等とも呼ばれ、グルコース等の還元糖とタンパク質のアミノ基との非酵素的な反応により生成する種々の構造を有するタンパク質誘導体である。AGE類は、細胞外マトリックスタンパク質、膜タンパク質および細胞内タンパク質の糖化修飾に起因するこれらのタンパク質の機能及びそれに依存する細胞機能の破綻、あるいはAGE類をリガンドとするレセプターが引き起こす細胞応答の結果として、種々の病変の発症及び増悪に関与している。例えば、AGE類レセプターの1つであるRAGE類によってAGE類が認識されると、細胞内NADPHオキシダーゼによる細胞内酸化ストレス物質の産生が亢進し、これが上皮細胞における遺伝子発現を変化させることにより、種々の糖尿病性血管障害が発症すると考えられている(非特許文献1参照)。
【0010】
AGE類の中でも、解糖系の中間体または副産物として産生されるグリセルアルデヒドやメチルグリオキサール(MG)に由来するものは、糖尿病および耐糖能異常の発症および予後予測等に関する診断マーカーとして期待を集めている(非特許文献2、3、4、5)。
【0011】
非特許文献2には、2型糖尿病患者の血清について、メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾールのポリクロナール抗体を用いたELISA系で測定した結果、メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾールの血清レベルが同齢健常人に比較して増加しているとの報告がなされている。同非特許文献2は、メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾールの血清レベルと、AGE類の1種であるNε-(カルボニルメチル)リジンの血清レベルとの間には、同様に有意な相関関係があるが、メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾールの血清レベルは、空腹時血糖の血漿レベルやヘモグロビンレベルとは関連性はなかったと報告している。
【0012】
非特許文献3は、LC/MS/MSを用いて1型糖尿病患者の血漿を測定した結果、タンパク質の糖化または酸化による付加生成物の濃度ならびにその遊離残基(free adduct)の濃度が増加していることを示している。例えば、メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロンやグリオキサール由来ヒドロイミダゾロンあるいはその他のAGE類であるNε-(カルボニルメチル)リジン、Nε-(カルボニルエチル)リジン、ならびにこれらの遊離付加物(free adduct)が増加していることが報告されている。
【0013】
非特許文献4は、1型糖尿病患者の血漿をタンデム質量分析した結果、メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン遊離付加物が糖尿病患者のマーカーとして優れていることを示唆している。
【0014】
非特許文献5は、1型糖尿病患者の血漿ならびに尿サンプルをLC-MS/MSで測定した結果、糖負荷後の血糖値とインスリン値の上昇に加えて、メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾール遊離付加物を初めとして、Nε-(カルボニルメチル)リジン、Nε-(カルボニルエチル)リジン、グリオキサール由来ヒドロイミダゾロン、Nδ-[5-(2,3,4-トリヒドロキシブチル)-5-ヒドロ4-イミダゾロン2-イル]-オルニチン(3DG-H1)等のfree adductも増加することを報告している。即ち、この論文は、食後には高血糖になるだけでなく、高カルボニルストレス状態も誘発されることを示している。さらに、この文献には、メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン遊離付加物の他、アルグピリミジンを含む多くのAGE類、ならびにアミノ酸(アルギニン、リジン、メチオニン、チロシンおよびトリプトファン)についてのタンデム質量分析結果が記載されている。
【0015】
上述したように、これらのAGE類をタンデム質量(MS/MS)分析する手法が報告されている。しかしながら、これらのAGE類についての測定は、ELISA法等の免疫化学的手法を用いた総量評価以外に有効な手法が存在しないのが現状であり(特許文献1)、個別のAGE類およびその分解産物について確立した測定法は殆ど存在しておらず、ましてや臨床に応用可能な測定法は存在してないと言わざるを得ない。これらの個別のAGE類の定量は、糖尿病および耐糖能異常の診断のみならず、メタボローム解析等においても有用であることから、AGE類についてより迅速に高感度かつ高精度に個別の化合物を測定できるアッセイ法が強く望まれている。
【0016】
AGE類分析の他に、アミノ酸分析も、臨床分野、例えば先天的な代謝障害のアッセイにとって非常に重要であり、また診断のバイオマーカー検索に使用できる可能性を持っている。アミノ酸分析は、例えば、先天性アミノ酸症の診断や、肝臓機能障害の重症度や治療の指針等として使用されている。また、最近の報告では、アミノ酸のプロファイルが、慢性C型肝炎患者の進行型線維症等の診断に応用されている。さらに、アミノ酸のプロファイルを指標として用いて、生物の健康度合いの分析の可能性までも報告されている(非特許文献6)。
【0017】
上述したようなアミノ酸分析のために、アミノ酸自動分析装置が開発された。この装置はニンヒドリン試薬を用いたアミノ酸の比色を測定するものであり、分析には非常に時間を要するものである。
【0018】
上記のような比色測定方法の他に、プレカラム誘導体化法が開発され、このプレカラム誘導体化法に使用する誘導体化剤も様々なものが開発されている(非特許文献6)。しかし、この誘導体化法は複雑で時間を要する技術である。さらに、この誘導体化法と質量分析方法を組み合わせた自動アミノ酸分析方法も開発されているが、この方法にしても更なる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【0019】

【特許文献1】特開2008-224453号公報
【0020】

【非特許文献1】Marie-Paule Wautier他著、「Activation of NADPH oxidase by AGE links oxidant stress to altered gene expression via RAGE」、American Journal of Physiology -Endocrinology and Metabolism、(米国)、アメリカ生理学会(American Physiological Society)、2001年5月、第280巻、E685-E694
【非特許文献2】Kilhovd, B.K., et al. Metabolism, Vol 52, No 2 (February), 2003: pp. 163-167
【非特許文献3】Rabbani, N., and Thornalley, P.J. Amino Acids DOI 10.1007/s00726-010-0783-0
【非特許文献4】Ahmed, N., et al. Diabetologia (2005) 48: 1590-1603
【非特許文献5】Ahmed, N., et al. Diabetes Care, Vol. 28, No. 10, October 2005, pp. 2465-2471
【非特許文献6】Shimbo, K., et al. Biomed. Chromatogr. 2010; 24: 683-691.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
そこで、本発明者らは、かかる事情に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、AGE類のメチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体(MG-H1)ならびにアルグピリミジン(AP)の末端アミノ基をニトロベンゼン系化合物で誘導体化することによって、質量分析における感度が大幅に向上する上に、AGE類に加えて、その他のアミノ酸誘導体またはペプチド等のアミノ化合物にも応用できることを見いだして、本発明を完成するに至った。
【0022】
したがって、本発明は、特に最終糖化産物を始めとするアミノ酸誘導体とニトロベンゼン系化合物との誘導体化で得られるアミノ化合物およびその塩、ならびにこのアミノ化合物を迅速に高感度かつ高精度で定量が可能な質量分析方法、およびそれを用いたバイオマーカーのアッセイ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明は、一般式[I]で表されるアミノ化合物またはその塩を提供する。
【0024】
【化1】
JP2014010700A1_000003t.gif

【0025】
式[I]において、Rはアミノ置換基を意味し、Zはニトロフェニル基を意味する。
【0026】
本発明は、その好ましい態様として、上記アミノ置換基が、アミノ酸残基もしくは置換アミノ酸残基または該アミノ酸残基ならびに/もしくは置換アミノ酸残基がペプチド結合したペプチド残基であるアミノ化合物またはその塩を提供する。
【0027】
本発明は、その好ましい態様として、上記アミノ酸残基もしくは置換アミノ酸残基のアミノ酸または前記ペプチド残基の構成アミノ酸が、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、プロリン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファンもしくはチロシンまたはそれらの置換体、好ましくはアルギニン、リジン、バリン、チロシン、メチオニン、グリシン、ヒスチジン、グルタミン酸もしくはトリプトファンまたはそれらの置換体であるアミノ化合物またはその塩を提供する。
【0028】
本発明は、その好ましい別の態様として、上記置換アミノ酸残基が、最終糖化産物(AGE)、好ましくはアルギニン誘導体またはリジン誘導体の残基であるアミノ化合物またはその塩を提供する。
【0029】
本発明は、その好ましい別の態様として、上記ペプチド残基のペプチドが、2個ないし10個のアミノ酸がペプチド結合しているアミノ化合物またはその塩を提供する。
【0030】
本発明は、その好ましい別の態様として、上記ニトロフェニル基が、一般式[IIIb]で表されるアミノ化合物またはその塩を提供する。
【0031】
【化2】
JP2014010700A1_000004t.gif

【0032】
式[IIIb]において、R、R、R、RおよびRはいずれも同じであってもまたは異なっていてもよく、水素原子またはニトロ基を意味する。ただし、R、R、R、RおよびRの少なくとも1個はニトロ基を意味する。
【0033】
本発明は、そのより好ましい態様として、上記アミノ化合物が、一般式[Ia]で表されるアミノ化合物またはその塩を提供する。
【0034】
【化3】
JP2014010700A1_000005t.gif

【0035】
式[Ia]において、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ前記と同じ意味を有する。
【0036】
本発明は、そのより好ましい別の態様として、上記アミノ化合物が、一般式[Ii]で表されるアミノ化合物またはその塩を提供する。
【0037】
【化4】
JP2014010700A1_000006t.gif

【0038】
式[Ii]において、Rは前記と同じ意味を有する。
【0039】
本発明は、そのより好ましい態様として、上記アミノ化合物が、一般式[Ib]で表されるニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体または一般式[Ic]で表されるニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体であるアミノ化合物またはその塩を提供する。
【0040】
【化5】
JP2014010700A1_000007t.gif

【0041】
【化6】
JP2014010700A1_000008t.gif

【0042】
式[Ib]及び[Ic]において、R、R、R、RおよびRはいずれも前記と同じ意味を有する。
【0043】
本発明は、そのより好ましい態様として、上記アミノ化合物が、構造式[Iii]で表されるトリニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体または構造式[Iiii]で表されるトリニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体であるアミノ化合物またはその塩を提供する。
【0044】
【化7】
JP2014010700A1_000009t.gif

【0045】
【化8】
JP2014010700A1_000010t.gif

【0046】
本発明は、その別の形態として、一般式[I]で表されるアミノ化合物またはその塩を質量分析で測定するアミノ化合物またはその塩の質量分析方法を提供する。
【0047】
【化9】
JP2014010700A1_000011t.gif

【0048】
式[I]において、Rはアミノ置換基、例えば、アミノ酸残基もしくは置換アミノ酸残基またはペプチド残基を意味し、Zはニトロフェニル基を意味する。
【0049】
本発明は、その好ましい態様として、上記アミノ化合物が、一般式[Ia]で表されるアミノ化合物またはその塩の質量分析方法を提供する。
【0050】
【化10】
JP2014010700A1_000012t.gif

【0051】
式[Ia]において、R、R、R、RおよびRはいずれも同じであってもまたは異なっていてもよく、水素原子またはニトロ基を意味する。ただし、R、R、R、RおよびRの少なくとも1個はニトロ基を意味し、Rは前記と同じ意味を有する。
【0052】
本発明は、そのより好ましい態様として、上記アミノ化合物が、一般式[Ib]で表されるニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体または一般式[Ic]で表されるニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体であるアミノ化合物またはその塩の質量分析方法を提供する。
【0053】
【化11】
JP2014010700A1_000013t.gif

【0054】
【化12】
JP2014010700A1_000014t.gif

【0055】
式[Ib]及び[Ic]において、R、R、R、RおよびRはいずれも前記と同じ意味を有する。
【0056】
本発明は、そのより好ましい態様として、上記アミノ化合物が、構造式[Iii]で表されるトリニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体または構造式[Iiii]で表されるアミノ化合物またはその塩の質量分析方法を提供する。
【0057】
【化13】
JP2014010700A1_000015t.gif

【0058】
【化14】
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【0059】
本発明は、その別の形態として、一般式[II]で表されるアミノ酸誘導体またはその塩と、一般式[III]で表されるニトロベンゼン化合物を反応させて一般式[I]で表されるアミノ化合物またはその塩を得る工程と、
上記工程で得られたアミノ化合物またはその塩を質量分析する工程を有するアミノ化合物またはその塩の質量分析方法を提供する。
【0060】
【化15】
JP2014010700A1_000017t.gif

【0061】
式[II]において、Rは、アミノ置換基、例えば、アミノ酸残基もしくは置換アミノ酸残基またはペプチド残基を意味する。
【0062】
【化16】
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【0063】
式[III]において、Xはアミノ基反応性官能基を意味し、Zはニトロフェニル基を意味する。
【0064】
【化17】
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【0065】
式[I]において、RおよびZは、前記と同じ意味を有する。
【0066】
本発明は、そのより好ましい態様として、前記一般式[II]で表されるアミノ酸誘導体またはその塩と、一般式[III]で表されるニトロベンゼン化合物の反応を、アルカリ性水溶液または水と有機溶媒の混合溶液であり、かつ前記溶液のpHが8~10でおこなうことを特徴とするアミノ化合物またはその塩の質量分析方法を提供する。
【0067】
本発明は、その好ましい態様として、上記反応が試料中で行われるアミノ化合物またはその塩の質量分析方法を提供する。
【0068】
本発明は、そのより好ましい態様として、上記アミノ酸誘導体またはその塩がバイオマーカーであるアミノ化合物の質量分析方法を提供する。
【0069】
本発明は、さらに別の形態として、一般式[I']で表されるアミノ化合物またはその塩を質量分析するアミノ化合物またはその塩の質量分析方法であって、上記誘導体化残基の誘導体化剤が、1-ピレンスルホニルクロライド(PSC)、ダンシルクロライド(DNS-Cl)等のスルホニル化合物;9-フルオレニルメチルクロロホルメート(FMOC)、4-ジメチルアミノスルホニル-7-フルオロベンゾキサジアゾール(DBD-F)、4-フルオロ-7-ニトロベンゾフラザン(NBD-F)、2、3-ナフタレンジアルデヒド(NDA);3-アミノピリジル-N-ヒドロキシサクシニミジルカルバメート(APDS)等のカルバメート化合物;3-クロロカルボニル-6、7-ジメトキシ-1-メチル-2-キノキサリノン(DMEQ-COCl)、3-ニトロフェニルイソチオシアネート、3-ピリジルイソチオシアネート、4-(ジメチルアミノ)フェニルイソチオシアネート、フルオレセイン-5-イソチオシアネート(FITC)等のイソチオシアネート化合物;ジエチルエトキシメチレンマロネート等のマロネート化合物、(5-サクシニミドキシ-5-オキソペンチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(SPTPP)等のホスホニウム化合物;または2-クロロ-1-メチルピリジニウム塩等のピリジニウム化合物であるアミノ化合物またはその塩の質量分析方法を提供する。
【0070】
【化18】
JP2014010700A1_000020t.gif

【0071】
式[I']において、R’は、前記Rと同じ意味を有する置換アミノ酸残基またはペプチド残基を意味し、Z’は誘導体化残基を意味する。
【0072】
本発明は、さらに別の形態として、上記のアミノ化合物の質量分析方法により得られる質量スペクトルの強度データを用いて、生体試料中のバイオマーカー濃度の定量を行うバイオマーカーのアッセイ方法を提供する。
【発明の効果】
【0073】
本発明によって、アミノ酸誘導体のN末端アミノ基を誘導体化することにより、質量分析におけるイオン化効率が向上し、試料中に少量しか存在しない最終糖化産物等の分子バイオマーカーやペプチドホルモンについても、質量分析方法を用いて迅速、高感度かつ高精度な定量分析が可能になる。したがって、本発明は、アミノ酸誘導体とニトロベンゼン化合物等の誘導体化剤との誘導体化生成物である新規なアミノ化合物、好ましくはタンパク質の解糖等の反応中間産物である糖化タンパク質分解物がニトロベンゼン化合物等の誘導体化剤で誘導体化された、耐糖能異常の診断に有用な新規な糖化タンパク質分解物誘導体を提供する。また、本発明は、そのアミノ化合物についての迅速、高感度かつ高精度な定量が可能な質量分析方法およびそれを用いたバイオマーカーのアッセイ方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体(MG-H1)の質量スペクトル(MS、MS/MS)である。
【図2】MG-H1の2,4,6-トリニトロフェニル誘導体(MG-H1-TNP)の質量スペクトル(MS、MS/MS)である。
【図3】アルグピリミジン(AP)の質量スペクトル(MS、MS/MS)である。
【図4】APの2,4,6-トリニトロフェニル誘導体(AP-TNP)の質量スペクトル(MS、MS/MS)である。
【図5】質量スペクトルより予測されるMG-H1の2,4,6-トリニトロフェニル誘導体(MG-H1-TNP)のフラグメンテーションパターンを示す図である。
【図6】質量スペクトルより予測されるAPの2,4,6-トリニトロフェニル誘導体(AP-TNP)のフラグメンテーションパターンを示す図である。
【図7】(A)はMG-H1の、(B)はMG-H1の2,4,6-トリニトロフェニル誘導体(MG-H1-TNP)のLC-MS分析の結果を示すマスクロマトグラムである。
【図8】(A)はAPの、(B)はAPの2,4,6-トリニトロフェニル誘導体(AP-TNP)のLC-MS分析の結果を示すマスクロマトグラムである。
【図9】MG-H1-TNPの濃度と質量スペクトルのピーク強度について、内部標準法を用いて作製した検量線である。
【図10】AP-H1-TNPの濃度と質量スペクトルのピーク強度について、内部標準法を用いて作製した検量線である。
【図11】MG-H1の2,4,6-トリニトロフェニル化に及ぼすpHの影響を示すグラフである。
【図12】APの2,4,6-トリニトロフェニル化に及ぼすpHの影響を示すグラフである。
【図13】ラット血漿の前処理のプロトコールを示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、下記の実施形態は、本発明を具体的に詳細に説明するために例示的に記載するものである。したがって、下記の実施形態から想到される形態もまた、本発明の範囲に包含されるものと理解されるべきである。

【0076】
なお、本明細書においては、説明を簡潔にするために、誘導体化剤としてはニトロベンゼン化合物を例に挙げて説明するが、本発明においては、誘導体化剤はニトロベンゼン化合物に一切限定されるものではなく、その他の誘導体化剤も本発明の範囲に当然包含されるものとして理解されるべきである。したがって、本明細書においては、誘導体化剤でアミノ酸誘導体の末端アミノ基を誘導体化した残基についても、ニトロベンゼン化合物の残基であるニトロフェニル基について説明するが、これについても一切限定されるものではなく、その他の誘導体化剤の残基も同様に包含されるものと理解されるべきである。

【0077】
本発明に係るアミノ化合物は、一般式[I]で表すことができる。

【0078】
【化19】
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【0079】
式[I]において、Rはアミノ置換基を意味し、Zはニトロフェニル基を意味する。

【0080】
上記一般式において、用語「アミノ置換基」は、アミノ酸残基もしくは置換アミノ酸残基またはペプチド残基を意味する。
ここで、用語「アミノ酸残基」とは、非置換アミノ酸からアミノ基を除外した残基を意味している。例えば、アラニンの場合には、2-アミノプロパン酸と別称されるので、2-アミノプロパン酸からアミノ基を除外したアミノ酸残基は、カルボキシルエチル基である。同様に、リジンの場合のアミノ酸残基は1-カルボキシル-5-アミノペンチル基である。

【0081】
また、上記一般式において、用語「置換アミノ酸残基」とは、上記アミノ酸からアミノ基を除外したアミノ酸残基であって、該アミノ酸を構成するカルボキシル基以外の残基、つまり原子団が置換基で置換されて形成された原子団、つまり置換部分(moiety)を有するアミノ酸残基を意味している。置換アミノ酸残基の例としては、上記リジン残基の5-アミノ基にカルボキシルメチル基が置換した1-カルボキシル-5-(カルボキシルメチル)アミノペンチル基が挙げられる。また別の例として、例えば、アルギニン残基のアミノ-イミノメチル基が2-ピリミジニル基に変換した置換アミノ酸残基等も挙げることができる。

【0082】
さらに、上記一般式において、用語「ペプチド残基」とは、上記アミノ酸および/または置換アミノ酸がペプチド結合して形成されたペプチドの末端アミノ酸から末端アミノ基が除外された残基を意味している。例えば、ペプチドVal-Tyrの場合、ペプチド残基とは、末端アミノ酸のバリンからアミノ基が除外された残基を意味する。

【0083】
本発明において、用語「アミノ酸誘導体」とは、特段の定めがない限り、非置換アミノ酸誘導体、もしくはN末端アミノ基以外のアミノ酸部分が置換基等で修飾されている置換アミノ酸誘導体、またはペプチドを意味している。

【0084】
したがって、本発明において使用する用語「アミノ化合物」は、特段の定めがない限り、アミノ酸誘導体[II]またはその塩のN末端アミノ基が、ニトロベンゼン化合物[III]によりニトロフェニル化されたニトロフェニル化アミノ化合物を意味している。

【0085】
本発明において、アミノ酸残基もしくは置換アミノ酸残基のアミノ酸、またはペプチド残基のペプチド構成アミノ酸のアミノ酸は、広義には、アミノ基とカルボキシ基の両方の官能基を有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、狭義には、例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、プロリン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファンおよびチロシン、好ましくはアルギニンおよびリジン等のタンパク質の構成成分であるアミノ酸およびそれらを構成するカルボキシル基以外の残基が置換基で置換されて形成された置換部分を有する置換アミノ酸残基が挙げられる。

【0086】
好ましいアミノ酸としては、例えば、好ましくはアルギニン、リジン、バリン、チロシン、メチオニン、グリシン、ヒスチジン、グルタミン酸またはトリプトファンが挙げられる。

【0087】
また、本発明において使用する用語「置換アミノ酸残基」は、上記アミノ酸の末端アミノ基以外の残基に任意の置換基が結合して形成された別の原子団を有する置換アミノ酸誘導体の残基を意味している。かかるアミノ酸誘導体としては、本発明の目的を逸脱しない限り、特に限定されるものではなく、例えば、アミノ酸等の生体成分の分解生成物や中間生成物、または代謝産物等が挙げられ、例えば、タンパク質の糖化反応によって生成される各種最終糖化産物(AGE類)、アルギニンの分解生成物であるオルニチン、筋肉へのエネルギー供給源のクレアチニンリン酸の代謝産物であるクレアチニン、肝臓中のグルタチオン欠乏を示すバイオマーカーであるオフタルミン酸生合成の中間体のα-アミノ酪酸(AABA)、主に神経伝達物質として作用するγ-アミノ酪酸(GABA)等の他、各種疾患の診断および予後予測等に用いられる分子バイオマーカーや、馬尿酸等も挙げられる。これらアミノ酸のうち、上記AGE類等が好ましい。より好ましいのは、例えば、アルギニンの側鎖のグアノシル基とメチルグリオキサール、またはリジンのアミノ基とグリオキサールもしくはメチルグリオキサール等の脂質過酸化、メイラード反応、解糖等の反応中間産物との反応により生成されるAGE類等が挙げられる。かかるAGE類等のうち、好ましいものとしては、置換アルギニン誘導体や置換リジン誘導体等が挙げられる。

【0088】
置換アルギニン誘導体としては、例えば、アルギニンのグアニジノ基がカルボキシルメチル基、カルボキシルエチル基等の置換基で修飾されたアルキル置換アルギニン誘導体、イミダゾロン類、ピリミジン類、イミダゾピリジン類等のグアニジノ基が環状構造になっている環状アルギニン誘導体等が挙げられる。

【0089】
更に具体的には、アルキル置換アルギニン誘導体としては、例えば、カルボキシルメチルアルギニン(CMA)等が挙げられる。また、環状アルギニン誘導体のイミダゾロン類としては、例えば、イミダゾロン、グリオキサールヒドロイミダゾロン(G-H)、メチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(MG-H)、Nδ-[5-(2,3,4-トリヒドロキシブチル)-5-ヒドロ4-イミダゾロン2-イル]-オルニチン(3-DG-H)等が挙げられる。ピリミジン類としては、例えば、アルグピリミジン、テトラヒドロピリミジン等が挙げられる。イミダゾピリジン類としては、例えば、ペントシジン等が挙げられる。

【0090】
これら置換アルギニン誘導体のうち、特に好ましいのは、例えば、構造式[IIa]で表されるメチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体(MG-H1:Nδ-(5-ヒドロ-5-メチル-4-イミダゾロン2-イル)-オルニチン)、または構造式[IIb]で表されるアルグピリミジン(AP)が挙げられる。

【0091】
【化20】
JP2014010700A1_000022t.gif

【0092】
【化21】
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【0093】
更に具体的には、上記アミノ酸誘導体は、立体構造を有し、構造式[IIc]または構造式[IId]でそれぞれ表すことができる。

【0094】
【化22】
JP2014010700A1_000024t.gif

【0095】
【化23】
JP2014010700A1_000025t.gif

【0096】
また、上記AGE類のうち、置換リジン誘導体としては、例えば、リジンのアミノ基がカルボキシルメチル基、カルボキシルエチル基等の置換基で修飾されたアルキル置換リジン誘導体、リジンのアミノ基が環状構造を有している環状リジン誘導体等が挙げられる。

【0097】
アルキル置換リジン誘導体としては、例えば、カルボキシメチルリジン(CML)、カルボキシエチルリジン(CML)等が挙げられる。また、環状リジン誘導体としては、例えば、ビラリン、FTP(Formyl Therosyl Pyrrole)等のピロール誘導体、GOLD(グリオキサール由来リジン二量体)、MOLD(メチルグリオキサール由来リジン二量体)、DOLD(3-デオキシグルコソン由来リジン二量体)等のイミダゾール誘導体、GLAP(Glyceraldehyde-derived pyridinium)、GA-ピリジン(glycolaldehyde-ピリジン)等のピリジン誘導体、ペントシジン等のイミダゾピリジン誘導体等が挙げられる。

【0098】
さらに、上記一般式[I]において、置換基Rで表されるペプチド残基のペプチドとしては、そのペプチドを構成する上記アミノ酸の数は特に限定されないが、上記アミノ酸が2個~10個、好ましくは2個~6個、より好ましくは2個~4個ペプチド結合して構成されているペプチドであるのがよい。かかるペプチドとしては、例えば、バリルチロシン、リシルチロシン、メチオニルチロシン、グリシルチロシン、ヒスチジルチロシン、グルタミルチロシン、トリプトファニルチロシン、ヒスチジニルトリプトファン、カルノシン、アンセリン等のジペプチド、グルタチオン等のトリペプチド等が挙げられる。その他に、エンケファリン、カキシトシン、バソプレッシン等を挙げることができる。これらペプチドのうち、バリルチロシン、リシルチロシン、メチオニルチロシン、グリシルチロシン、ヒスチジルチロシン、グルタミルチロシン、トリプトファニルチロシンならびにヒスチジニルトリプトファン等のジペプチドが好ましい。また、ペプチドは、タンパク質の消化物、最終糖化産物等の代謝産物、ペプチドホルモン等の生理活性ペプチドのいずれであってもよく、各種疾患の診断および予後予測等に用いられる分子バイオマーカーであってもよい。

【0099】
一方、上記一般式[I]において、置換基 Z は、アミノ酸誘導体[II]の末端アミノ基をニトロフェニル化したニトロベンゼン化合物の残基であって、一般式[IIIb] で表すことができる。

【0100】
【化24】
JP2014010700A1_000026t.gif

【0101】
式[IIIb]において、R、R、R、RおよびRはいずれも、同じであってもまたは異なっていてもよく、水素原子またはニトロ基を意味する。ただし、R、R、R、RおよびRの少なくとも1個はニトロ基を意味する。

【0102】
ここで、ニトロフェニル基としては、例えば、モノ-、ジ-またはトリ-ニトロフェニル基、好ましくはトリ-ニトロフェニル基、特に好ましくは2、4、6-ニトロフェニル基が挙げられる。ニトロ置換基の位置にしても、特に限定はないが、1個の場合は2-位、2個の場合は2-位と4-位、3個の場合に2-位、4-位ならびに6-位であるのがよい。

【0103】
したがって、本発明に係るアミノ化合物は、一般的には、一般式[I]で表され、より具体的には、一般式[Ia]で表すことができる。

【0104】
【化25】
JP2014010700A1_000027t.gif

【0105】
【化26】
JP2014010700A1_000028t.gif

【0106】
式[Ia]において、R、Z、R、R、R、RおよびRはいずれも前記と同じ意味を有する。

【0107】
本発明において、構造式[Ia]で表されるアミノ化合物の好ましい例としては、例えば、構造式[Ib]で表されるニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体、または構造式[Ic]で表されるニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体が挙げられる。

【0108】
【化27】
JP2014010700A1_000029t.gif

【0109】
【化28】
JP2014010700A1_000030t.gif

【0110】
式[Ib]および[Ic]において、R、R、R、RおよびRはいずれも前記と同じ意味を有する。

【0111】
さらに好ましいアミノ化合物は、例えば、一般式[Ii]で表すことができる。

【0112】
【化29】
JP2014010700A1_000031t.gif

【0113】
式[Ii]において、Rは前記と同じ意味を有する。

【0114】
したがって、アミノ化合物としては、例えば、構造式[Iii]で表されるニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体、または一般式[Iiii]で表されるニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体がさらに好ましい。

【0115】
【化30】
JP2014010700A1_000032t.gif

【0116】
【化31】
JP2014010700A1_000033t.gif

【0117】
上記のトリニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体およびトリニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体の立体構造式([Iiv]および[Iv])はそれぞれ次のように表すことができる。

【0118】
【化32】
JP2014010700A1_000034t.gif

【0119】
【化33】
JP2014010700A1_000035t.gif

【0120】
本発明に係るアミノ化合物[I]は、一般式[II]で表されるアミノ酸誘導体またはその塩を、一般式[III]で表されるニトロベンゼン化合物で誘導体化反応することにより得ることができる。

【0121】
【化34】
JP2014010700A1_000036t.gif

【0122】
式[II]において、Rは前記と同じ意味を有する。

【0123】
【化35】
JP2014010700A1_000037t.gif

【0124】
式[III]において、Xはアミノ基反応性官能基を意味し、Zは上記と同じ意味を有する。

【0125】
より具体的には、本発明のアミノ化合物[Ia]は、アミノ酸誘導体[II]またはその塩と、一般式[IIIa] で表されるニトロベンゼン化合物との誘導体化反応により得ることができる。

【0126】
【化36】
JP2014010700A1_000038t.gif

【0127】
式[IIIa]において、X、R、R、R、RおよびRはいずれも前記と同じ意味を有する。

【0128】
更に具体的には、本発明のアミノ化合物[Ii]は、アミノ酸誘導体[II]またはその塩と、一般式[IIIc]で表されるトリニトロベンゼン化合物との誘導体化反応により得ることができる。

【0129】
【化37】
JP2014010700A1_000039t.gif

【0130】
式[IIIc]において、Xは前記と同じ意味を有する。

【0131】
ここで、Xで表されるアミノ基反応性官能基としては、アミノ酸または置換アミノ酸([II])をニトロフェニル誘導体化する反応性官能基であれば特に限定されないが、例えば、塩素原子、フッ素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子、またはスルホン酸またはスルホン酸塩、アルキルスルホン酸エステル基、アリールスルホン酸エステル基、パーフルオロアルキルスルホン酸エステル基等の、ニトロベンゼン誘導体の芳香族求核置換反応において脱離基となり得る任意の官能基が挙げられる。

【0132】
そこで、好ましいニトロベンゼン化合物としては、例えば、2,4,6-トリニトロフルオロベンゼン、2,4,6-トリニトロクロロベンゼン、2,4,6-トリニトロブロモベンゼン、2,4,6-トリニトロヨードベンゼンおよび2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸またはその塩等が挙げられ、これらのうち特に好ましいのは、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸またはその塩である。塩としては、例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、カリウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。

【0133】
本発明において、上記アミノ酸誘導体のN末端アミノ基をニトロベンゼン化合物で誘導体化するには、上記アミノ酸誘導体とニトロベンゼン化合物とを、アルカリ性の水溶液または、水と有機溶媒の混合溶液中にて室温で数十分間混合することにより行うことができる。好ましくはアルカリ性水溶液中で行われる。また、水と有機溶媒との混合溶液を用いる場合、有機溶媒としてはエタノール等の水との親和性が高い有機溶媒が好ましく用いられる。これらの溶液のpHは8~10であることが好ましく、より好ましくは8.5~9.5であるのがよい。溶液のpHが高すぎると、分析対象のアミノ酸誘導体またはこの化合物が分解する可能性が増大し、低すぎるとニトロフェニル化反応が迅速に進行しなくなる。ここでpHとは、pHメータにより直接測定される値である。なお、室温とは15℃から40℃程度の温度であり、30℃前後で反応を行うことが好ましい。また、混合はいかなる方法であってもよく、1分以上1時間以下、好ましくは5分から40分間の混合が行われる。通常は30分間の混合で十分である。

【0134】
本発明の特徴の一つは、かかる温和な条件下で、ニトロフェニル化反応を行うことができることである。試料中の分析対象となる物質を単離してニトロフェニル化を行ってもよいが、夾雑物等を含むような試料中でそのままニトロフェニル化を行ってもよい。本発明はこのような試料中でそのままニトロフェニル化を行うことができるため、単離によるロス等を低減することができ、分析対象となる物質が少量しか含まれないような場合であっても測定することができるという優れた方法である。また、複雑な操作を行う必要が無く、簡便に測定することができる。特に対象試料が生体試料等の場合は、分析対象となる物質が少なく、かつ、夾雑物が多い状態であることが多いため有効である。

【0135】
また、例えば、試料中のアミノ酸誘導体を測定するに当たっては、生体試料に、ニトロベンゼン化合物を添加することにより、試料中のバイオマーカーとしてのアミノ酸誘導体をニトロベンゼン化合物で誘導体化することも可能であるとともに、かかる誘導体化したアミノ酸誘導体をバイオマーカーとして測定できることは当然のことである。
本発明において試料となるものは、測定対象となる最終糖化産物等の、本発明によってアミノ酸誘導体とニトロベンゼン系化合物との誘導体化で得られるアミノ化合物となるものを含有するものであればよい。また、生体由来の試料を生体試料とよぶ。

【0136】
さらに、アミノ酸誘導体の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、リチウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を使用することができる。

【0137】
本発明においては、誘導体化剤として、上記ニトロベンゼン化合物の他に、その他のアミノ基を誘導体化する誘導体化剤も使用できることは当然のことである。かかる誘導体化剤としては、例えば、ニトロベンゼンスルホン酸化合物、フルオロ-ニトロベンゼン等のニトロベンゼン化合物の他に、1-ピレンスルホニルクロライド(PSC)、ダンシルクロライド(DNS-Cl)等のスルホニル化合物、9-フルオレニルメチルクロロホルメート(FMOC)、4-ジメチルアミノスルホニル-7-フルオロベンゾキサジアゾール(DBD-F)、4-フルオロ-7-ニトロベンゾフラザン(NBD-F)、2、3-ナフタレンジアルデヒド(NDA)、3-アミノピリジル-N-ヒドロキシサクシニミジルカルバメート(APDS)等のカルバメート化合物、3-クロロカルボニル-6、7-ジメトキシ-1-メチル-2-キノキサリノン(DMEQ-COCl)、3-ニトロフェニルイソチオシアネート、3-ピリジルイソチオシアネート、4-(ジメチルアミノ)フェニルイソチオシアネート、フルオレセイン-5-イソチオシアネート(FITC)等のイソチオシアネート化合物、ジエチルエトキシメチレンマロネート等のマロネート化合物、(5-サクシニミドキシ-5-オキソペンチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(SPTPP)等のホスホニウム化合物、または2-クロロ-1-メチルピリジニウム塩等のピリジニウム化合物等を挙げることができる。これらの誘導体化剤も、上記ニトロベンゼン化合物と実質的に同様に使用することができる。

【0138】
つまり、本発明において、上記誘導体化剤を使用する場合は、本発明に係るアミノ化合物は、一般式[I']で表される。

【0139】
【化38】
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【0140】
式[I']において、R’は上記Rと同じ意味を有するアミノ酸残基もしくは置換アミノ酸残基またはペプチド残基を意味し、Z’は誘導体化残基を意味する。

【0141】
ここで、誘導体化残基は、上記誘導体化剤が、置換アミノ酸誘導体(R’-NH)のアミノ基を誘導体化した残基を意味している。例えば、誘導体化剤としてダンシルクロライドを使用した場合、置換アミノ酸誘導体(R’-NH)のアミノ基がダンシル化、つまり、ジメチルアミノナフタレンスルホニル化されるので、このダンシル基が誘導体化残基ということができる。

【0142】
したがって、この場合も、本明細書において、ニトロベンゼンスルホン酸を誘導体化剤として用いた場合についての記載を実質的に同様に適用することができる。

【0143】
本発明において、質量分析に用いられる試料のイオン化法については、特に制限はないが、生体分子の検出および定量に広く用いられているMALDI法、ESI法、APCI法等用いられるのが好ましい。分離技術と組み合わせたLC/MSやGC/MS等においては、試料のイオン化法としてはESI法やAPCI法を用いられるのがよい。分析には、MS/MS、MS等のタンデム質量分析方法を用いることができる。この場合、プロダクトイオンの検出には、例えば、夾雑物の影響を排除し高感度な検出が可能な多重反応モニタリング(MRM)を用いるのが好ましい。

【0144】
次に、本発明に係る質量分析方法を用いたバイオマーカーのアッセイ方法について説明する。
本発明は、分析対象としてバイオマーカーを選択することにより、バイオマーカーを、迅速に、高感度かつ高精度に検出および定量できるアッセイ方法を提供することができる。すなわち、本発明のバイオマーカーのアッセイ方法は、アミノ酸誘導体であるバイオマーカーのN末端アミノ基とニトロベンゼン化合物等の誘導体化剤とを反応させ、N末端アミノ基をニトロフェニル化等の誘導体化する工程と、N末端アミノ基がニトロフェニル化等の誘導体化されたアミノ酸誘導体またはその塩を質量分析する工程と、質量分析方法を用いて得られた質量スペクトルの強度データを用いて、生体試料中のバイオマーカー濃度の定量を行う工程を有している。

【0145】
本発明において、バイオマーカーとしては、アミノ基を有するアミン化合物である限り、特に制限はないが、本発明のアッセイ方法が特に好ましく適用できるものとしては、例えば、アミノ酸誘導体と糖の代謝産物との反応により生成される最終糖化産物(AGE類)等や、生体アミンであるカテコールアミン(ドパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)、インドールアミン(セロトニン、メラトニン)、イミダゾールアミン(ヒスタミン)、アセチルコリン、ポリアミン(プトレシン、スペルミジン、スペルミン)等が挙げられる。

【0146】
本発明のアッセイ方法による分析対象のバイオマーカーとして特に好ましいAGE類としては、例えば、構造式[Iii]で表されるトリニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体(MG-H1)、および構造式[Iiii]で表されるトリニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体(AP)を挙げることができる。

【0147】
【化39】
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【0148】
【化40】
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【0149】
これらはそれぞれ、MG-H1およびAPのN-2,4,6-トリニトロフェニル誘導体であり、質量分析方法により高感度で検出および定量が可能なAGEであり、耐糖能異常の診断指標として有用である。

【0150】
本発明において、アッセイ対象となるアミノ酸誘導体またはペプチドの濃度をマススペクトルの面積強度から定量するためには、例えば、検量線法または同位体希釈法が用いられる。質量分析において、分析対象物質を定量分析する手法の一つに検量線法が挙げられる。検量線法は、既知量の標準物質を含み、濃度の異なるいくつかの標準試料と、これらの標準試料から得られる信号強度との関係(検量線)が理論的には線形関係になることを利用し、未知試料から得られた信号強度からその試料の濃度を定量する方法である。標準とする試料の調製法により、検量線法は、外部標準法、内部標準法、標準添加法に大別されるが、本アッセイ方法ではいずれの方法を用いてもよい。同位体希釈法は、測定対象化合物を構成する特定の元素の同位体比に着目し、同位体比が既知のスパイクを一定量添加して測定対象化合物の同位体組成を平衡に到達させた後、スパイク添加前後の試料の同位体比を測定し、同位体組成の変化から試料の元素濃度を求める方法であり、検出限界が1pg程度と低いことが利点として挙げられる。

【0151】
上記の様にして得られたバイオマーカーの定量データは、疾患の発症、進行度、予後等の予測や診断に用いることができる。すなわち、本発明の一実施形態としては、アミノ酸誘導体またはペプチドであるバイオマーカーのN末端アミノ基とトリニトロフェニル化剤等の誘導体化剤とを反応させ、N末端アミノ基をトリニトロフェニル化等の誘導体化する工程と、N末端アミノ基がトリニトロフェニル化等の誘導体化されたアミノ酸誘導体またはペプチドを質量分析する工程と、質量分析方法を用いて得られた質量スペクトルの強度データを用いて、生体試料中のバイオマーカー濃度の定量を行う工程と、このようにして得られるバイオマーカーの濃度データを元に、疾患の発症、進行度、予後等に関する診断を行う工程を有する疾患の診断方法に関するものである。

【0152】
本発明の診断方法は、複数種のAGE類を同時に測定、定量できることからも有用である。すなわち、本発明は、試料中でニトロフェニル化を行うことができる方法であり、また質量分析により分析するものであるから、質量数が異なる対象物質を測定する場合、質量分析法と組み合わせることで同時に測定(定量)することができる優れた方法を提供するものである。本発明により、従来の早期診断法に比べて、費用および手間を大幅に削減することができる。
【実施例】
【0153】
以下、本発明の実施例に基づいて、本発明の特徴、作用効果についてより具体的に説明する。これらの実施例はあくまでも例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0154】
トリニトロフェニル化メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体(MG-H1-TNP)[Iii]を次のようにして製造した。
メチルグリオキサール由来ヒドロイミダゾロン誘導体(MG-H1)[IIa]を0.1Mホウ酸溶液(pH9.3)に溶解させ、30mM 2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(TNBS)-0.1Mホウ酸溶液(pH9.3)を10μL添加後、十分に混和した。得られた混合物を30℃にて20分間インキュベー卜して、誘導体化を行った。誘導体化したMG-H1(MG-H1-TNP)を、それぞれ、100%CHCN/0.1%ギ酸(3mL)及び0.1%ギ酸(3mL)で平衡化したSep-Pak Plus C18カートリッジ(Waters)に負荷し、0.1%FA(3mL)で洗浄後、100%CHCN/0.1%ギ酸(3mL)にて溶出した画分を遠心エバポレータで乾固した。画分乾固物は脱イオン水1.5mLで再溶解し、凍結乾燥後、-40℃で保存した。
【実施例1】
【0155】
【化41】
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【実施例2】
【0156】
トリニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体(AP-TNP)[Iiii]を次のようにして製造した。
アルグピリミジン[IIb]を、実施例1と実質的に同様に処理してトリニトロフェニル化アルグピリミジン誘導体(AP-TNP)[Iiii]を得た。
【実施例2】
【0157】
【化42】
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【実施例3】
【0158】
質量スペクトルの測定
MG-H1およびAP、ならびに上記の様にして調製したMG-H1およびAPのN-2,4,6-トリニトロフェニル誘導体(それぞれ「MG-H1-TNP」および「AP-TNP」)を0.1%ギ酸に溶解させ、質量スペクトルの測定を行った。測定条件は下記のとおりである。
・イオン化モード ESI-positive
・スキャン範囲 100~500m/z
・ドライガス 330℃、8.0L/分
・ネブライザーガス 276kPa
・キャピラリー電圧 -2750V
・スキマー電圧 40V
・キャピラリー出口電圧 124V
【実施例3】
【0159】
MG-H1、AP、MG-H1-TNPおよびAP-TNPの質量スペクトル(MSおよびMS/MS)を、それぞれ、図1、2、3、4に示す。なお、図2、4において、MG-H1およびAPのN-2,4,6-トリニトロフェニル誘導体は、それぞれ、「MG-H1-TNP」、「AP-TNP」と表記されている。MS/MSの測定に用いたプリカーサーイオンは、ぞれぞれの化合物についての[M+H]イオンである。得られた質量スペクトルのうち、ピーク強度の最も大きなものを、後述するLC-MRM-MS/MS分析においてモニターの対象となるイオンピークとして選択した。
【実施例3】
【0160】
また、図3、図4に示すMSスペクトルおよびMS/MSスペクトルより予測されるMG-H1-TNPおよびAP-TNPのフラグメンテーションパターンを、それぞれ図5および図6に示す。
【実施例4】
【0161】
LC-MRM-MS/MS分析
下記の条件下で、MG-H1、AP、MG-H1-TNPおよびAP-TNPのLC-MRM-MS/MS分析を行った。サンプル濃度はいずれも10nmol/Lとし、いずれも0.1%ギ酸水溶液に溶解させた。
<HPLC条件>
・移動相 MeOH-0.1%ギ酸水溶液
・流速 0.20mL/分
・グラジエント 0~100%(25分)
・固定相 Waters Atlantis T3(φ2.1×100mm)
・カラムオーブン温度 40℃
【実施例4】
【0162】
<MS条件>
・イオン化モード ESI-positive
・スキャン範囲 100~500m/z
・ドライガス 330℃、8.0L/分
・ネブライザーガス 276kPa
・キャピラリー電圧 -2750V
・スキマー電圧 40V
・キャピラリー出口電圧 124V
・インジェクション体積 25μL
【実施例4】
【0163】
MG-H1、AP、MG-H1-TNPおよびAP-TNPのマスクロマトグラムを、それぞれ、図7、8に示す。図7の結果より、MG-H1のN末端アミノ基を2,4,6-トリニトロフェニル化することにより、ピーク強度が1500倍程度に増大することが確認された。
【実施例5】
【0164】
検量線の作製ならびに検出限界および定量限界の決定
内部標準としてMG-H1-TNPの重水素化体(MG-H1-d3-TNP)を用いて、MG-H1-TNPおよびAP-TNPの検量線を作製した。酸による分解の影響を避けるために、インジェクション直前に0.1%ギ酸水溶液を添加する手順(表1参照)で希釈を行い、高濃度側から測定を行った。まず、原液として、MG-H1-TNPおよびAP-TNPの1μmol/mL水溶液を調製し、終濃度が400、200、40、20、4、2pmol/mLとなるように水で希釈した。各濃度について、これらの等モル混合物25μLに、MG-H1-d3-TNPの400pmol/mL水溶液25μLを加え、0.2%ギ酸水溶液50μLを加えて十分混和し、うち25μLをLC-MS分析に用いた。
【実施例5】
【0165】
【表1】
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【実施例5】
【0166】
得られた質量スペクトルにおけるMG-H1-TNPまたはAP-TNPと、MG-H1-d3-TNPとのピーク強度比をMG-H1-TNPまたはAP-TNPの濃度に対しプロットすることにより、図9および10に示す検量線が得られた。これらより、MG-H1-TNPについて、検出限界2.05pmol/mL、定量限界6.20pmol/mL、AP-TNPについて、検出限界0.11pmol/mL、定量限界0.33pmol/mLという結果が得られた。同様にCML-TNPについて検量線を作製し濃度換算すると、検出限界5.3nmol/L、定量限界16nmol/Lであった。また、CEL-TNPについては、検出限界2.7nmol/L、定量限界8.0nmol/Lであった。検量線については、相関係数0.996以上の良好な直線性が得られると共に、それぞれについてpmolレベル(濃度としてnM/Lレベル)での定量分析が可能であることが確認された。これらの数値は、従来より用いられている誘導体化剤であるダンシルクロリドやNDA(2,3-ナフタレンジアルデヒド)における検出限界の1/100~1/200であり、2,4,6-トリニトロフェニル化により大幅な感度向上が可能であることを示している。
【実施例6】
【0167】
2,4,6-トリニトロフェニル化におけるpHの影響
実施例1および2においてMG-H1-TNPおよびAP-TNPのそれぞれの調製において、反応液のpHを7.5、8.0、8.5にした場合における誘導体化率を、LC-MS分析を用いて算出した。遠心エバポレータ処理により得られた乾固物を0.2%ギ酸水溶液100μLに溶解し、内部標準としてMG-H1-d3-TNPの200pmol/mL水溶液50μLを加え、十分に混和した後、25μLをLC-MS分析に供し、検量線法により2,4,6-トリニトロフェニル体の濃度を決定した。結果は、図11、12に示すとおりであり、MG-H1-TNPまたはAP-TNPのいずれの場合についても、pH8.5~9.3で、定量的に誘導体化が可能であることが確認された。
【実施例7】
【0168】
ラット血漿スパイク試験
SDラットのコントロール血漿に対し、MG-H1、APおよび内部標準であるMG-H1-d3をスパイクし、回収後、2,4,6-トリニトロフェニル化を行った。血漿に対する前処理は、図13に示すプロトコール(E.M.N. Nakashima et al., Anal. Biochem., 414, 109-116(2011)参照)に準拠して行い、スパイクしたMG-H1、APおよびMG-H1-d3の同時検出を試みた。標準添加法により作製した検量線を用いたLC-MS分析により、MG-H1およびAPについて、血漿中濃度の定量が可能であることが確認された。
【実施例8】
【0169】
Val-Tyrを用いた検討
AGE類であるMG-H1およびAPの代わりにジペプチドVal-Tyrを用いて、上記と同様の手順により、2,4,6-トリニトロフェニル化による検出感度の変化を検討した結果、MG-H1の場合と同様、2,4,6-トリニトロフェニル化によりピーク強度が約50倍に増大することが確認された(表2)。
【実施例9】
【0170】
ジペプチドを用いた検討
実施例8と実質的に同様にして下記ジペプチドを調製し、検出感度の変化を検討した。その結果を表2に示す。
【実施例9】
【0171】
【表2】
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【産業上の利用可能性】
【0172】
この発明は、例えば、生体内成分であるタンパク質が代謝過程で糖化等された最終糖化産物や中間産物等の代謝産物を始めとするアミノ酸誘導体をニトロベンゼン化合物等の誘導体化剤により誘導体化したアミノ化合物であって、特に耐糖能異常の診断に有用な化合物であるところから、これらのあの化合物を迅速、高感度かつ高精度に定量することが可能である質量分析方法である。したがって、これらのアミノ化合物をバイオマーカーとしてアッセイすることにより様々な疾患の予防や診断に役立ち、これによりその疾患の予防薬や治療薬の開発に役に立つことが期待できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
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【図11】
10
【図12】
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【図13】
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