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明細書 :RNA合成用モノマー、その製造方法、およびRNAの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5757641号 (P5757641)
登録日 平成27年6月12日(2015.6.12)
発行日 平成27年7月29日(2015.7.29)
発明の名称または考案の名称 RNA合成用モノマー、その製造方法、およびRNAの製造方法
国際特許分類 C07H  19/10        (2006.01)
C07H  19/20        (2006.01)
C07H  21/02        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12P  19/30        (2006.01)
C12P  19/32        (2006.01)
C12P  19/34        (2006.01)
FI C07H 19/10 CSP
C07H 19/20 ZNA
C07H 21/02
C12N 15/00 A
C12P 19/30
C12P 19/32 Z
C12P 19/34 Z
請求項の数または発明の数 15
全頁数 34
出願番号 特願2014-527019 (P2014-527019)
出願日 平成25年7月25日(2013.7.25)
国際出願番号 PCT/JP2013/070247
国際公開番号 WO2014/017615
国際公開日 平成26年1月30日(2014.1.30)
優先権出願番号 2012164985
優先日 平成24年7月25日(2012.7.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年1月28日(2015.1.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
発明者または考案者 【氏名】片岡 正典
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100075409、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久一
【識別番号】100129757、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久彦
【識別番号】100115082、【弁理士】、【氏名又は名称】菅河 忠志
【識別番号】100125243、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 浩彰
審査官 【審査官】三木 寛
参考文献・文献 特表2011-512390(JP,A)
国際公開第2011/030353(WO,A1)
国際公開第2002/079215(WO,A1)
E. ROZNERS et al,Synthesis of oligoribonucleotides by the H- phosphonate approach using base-labile 2'-O-protecting g,Nucleosides & Nucleotides,1992年,Vol.11, No.9,p.1579-1593
E. ROZNERS et al,Synthesis of RNA fragments using the H-phosphonate method and 2'-(2-chlorobenzoyl) protection,Nucleosides & Nucleotides,1995年,Vol.14, No.3-5,p.855-857
E. ROZNERS et al,Evaluation of 2'-hydroxyl protection in RNA-synthesis using the H-phosphonate approach,Nucleic Acids Research,1994年,Vol.22, No.1,p.94-99
E. ROZNERS et al,Solid-phase synthesis of oligoribonucleotides by the H-phosphonate method using 2'-O-benzoyl protect,Bioorganicheskaya Khimiya,1988年,Vol.14, No.11,p.1580-1582
E. ROZNERS et al,Synthesis of oligoribonucleotides by the H-phosphonate approach using base-labile 2'-O-protecting gr,Bioorganicheskaya Khimiya,1992年,Vol.18, No.2,p.263-271
Per J. GAREGG et al,Nucleoside H-Phosphonates. IV. Automated Solid Phase Synthesis of Oligoribonucleotides by the Hydrog,Tetrahedron Letters,1986年,Vol.27, No.34,p.4055-4058
Neilands, OJARS et al,Synthesis of Novel Tetrathiafulvalene System Containing Redox-Active Ribonucleoside and Oligoribonuc,Organic Letters,1999年,Vol.1, No.13,p.2065-2067
PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS, JOHN WILEY & SONS, INC.,1991年,p.10-14
E. ROZNERS et al,Building blocks for synthesis of oligoarabinonucleotides: preparation of arabinonucleoside H-phospho,Nucleosides & Nucleotides,1995年,Vol.14(9&10),p.2009-2025
E. ROZNERS et al,Synthesis of oligoarabinonucleotides using H-phosphonates,Nucleosides & Nucleotides,1995年,Vol.14(3-5),p.851-853
Xiaohu ZHAN et al,High Yield Protection of Purine Ribonucleosides for H-Phosphonate RNA Synthesis, , , ,,Tetrahedron Letters,1997年,Vol.38, No.41,p.7135-7138
Shoichiro OZAKI et al,Enzyme aided regio-selective acylation and deacylation of nucleosides,Nucleic Acids Symposium Series,1993年,No.29,p.53-54
Shoichiro OZAKI et al,Enzyme Aided Regioselective Acylation of Nucleosides,Nucleosides & Nucleotides,1995年,Vol.14(3-5),p.401-404
Francisco MORIS et al,A useful and versatile procedure for the acylation of nucleosides through an enzymic reaction,Journal of Organic Chemistry,1993年,Vol.58(3),p.653-660
調査した分野 C07H 19/10
C07H 19/20
C07H 21/02
C12N 15/09
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(I)で表されることを特徴とするRNA合成用モノマーまたはその塩。
【化1】
JP0005757641B2_000021t.gif
[式中、
Bは、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、ヒポキサンチンまたはキサンチンを示し;
1は、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチルテキシルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、トリ-p-キシリルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基およびt-ブチルメトキシフェニルシリル基から選択されるシリル系保護基;トリフェニルメチル基、α-ナフチルジフェニルメチル基、p-メトキシフェニルジフェニルメチル基、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル基、トリ(p-メトキシフェニル)メチル基、4-(4’-ブロモフェナシルオキシ)フェニルジフェニルメチル基、4,4’,4”-トリス(4,5-ジクロロフタルイミドフェニル)メチル基、4,4’,4”-トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル基、4,4’,4”-トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル基、3-(イミダゾイル-1-イルメチル)ビス(4’,4”-ジメトキシフェニル)メチル基および1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1’-ピレニルメチル基から選択されるトリチル系保護基;または、t-ブトキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびベンジルオキシカルボニル基から選択されるカーバメート系保護基を示し;
2は、C1-4アルキル基、C2-4アルケニル基またはC1-4ハロゲン化アルキル基を示す]
【請求項2】
下記式(I’)で表されることを特徴とするRNA合成用モノマーまたはその塩。
【化2】
JP0005757641B2_000022t.gif
[式中、
Bは、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、ヒポキサンチンまたはキサンチンを示し;
1は、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチルテキシルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、トリ-p-キシリルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基およびt-ブチルメトキシフェニルシリル基から選択されるシリル系保護基;トリフェニルメチル基、α-ナフチルジフェニルメチル基、p-メトキシフェニルジフェニルメチル基、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル基、トリ(p-メトキシフェニル)メチル基、4-(4’-ブロモフェナシルオキシ)フェニルジフェニルメチル基、4,4’,4”-トリス(4,5-ジクロロフタルイミドフェニル)メチル基、4,4’,4”-トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル基、4,4’,4”-トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル基、3-(イミダゾイル-1-イルメチル)ビス(4’,4”-ジメトキシフェニル)メチル基および1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1’-ピレニルメチル基から選択されるトリチル系保護基;または、t-ブトキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびベンジルオキシカルボニル基から選択されるカーバメート系保護基を示し;
2は、C1-4アルキル基、C2-4アルケニル基またはC1-4ハロゲン化アルキル基を示す]
【請求項3】
Bが、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、ヒポキサンチンまたはキサンチンであって、保護されていないものである請求項1または2に記載のRNA合成用モノマーまたはその塩。
【請求項4】
RNAの液相合成に用いられる請求項1~3のいずれかに記載のRNA合成用モノマーまたはその塩。
【請求項5】
1が、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチルテキシルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、トリ-p-キシリルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基およびt-ブチルメトキシフェニルシリル基から選択されるシリル系保護基を示す請求項1~4のいずれかに記載のRNA合成用モノマーまたはその塩。
【請求項6】
RNA合成用モノマーを製造するための方法であって、
当該RNA合成用モノマーは、下記式(I)の3’-H-ホスホン酸エステル、下記式(I’)の2’-H-ホスホン酸エステルまたはその塩であり;
【化3】
JP0005757641B2_000023t.gif
[式中、
Bは、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、ヒポキサンチンまたはキサンチンを示し;
1は、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチルテキシルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、トリ-p-キシリルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基およびt-ブチルメトキシフェニルシリル基から選択されるシリル系保護基;トリフェニルメチル基、α-ナフチルジフェニルメチル基、p-メトキシフェニルジフェニルメチル基、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル基、トリ(p-メトキシフェニル)メチル基、4-(4’-ブロモフェナシルオキシ)フェニルジフェニルメチル基、4,4’,4”-トリス(4,5-ジクロロフタルイミドフェニル)メチル基、4,4’,4”-トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル基、4,4’,4”-トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル基、3-(イミダゾイル-1-イルメチル)ビス(4’,4”-ジメトキシフェニル)メチル基および1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1’-ピレニルメチル基から選択されるトリチル系保護基;または、t-ブトキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびベンジルオキシカルボニル基から選択されるカーバメート系保護基を示し;
2は、C1-4アルキル基、C2-4アルケニル基またはC1-4ハロゲン化アルキル基を示す]
リパーゼの存在下、H-ホスホン酸エステル化された5’保護リボヌクレオシド(II)と、下記式(III)の化合物:
2C(=O)OR3 ・・・ (III)
[式中、R2は前記と同義を示し;R3は、-H、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、-C(=O)R2または-N=C(C1-6アルキル)2を示す]
とを反応させることにより、2’位水酸基または3’位水酸基を選択的にエステル化する工程を含むことを特徴とする製造方法。
【化4】
JP0005757641B2_000024t.gif
[式中、R1、R2およびBは上記と同義を示す]
【請求項7】
さらに、5’保護リボヌクレオシド(IV)に三ハロゲン化リンを作用させ、2’位水酸基または3’位水酸基をH-ホスホン酸エステル化することによりH-ホスホン酸エステル化された5’保護リボヌクレオシド(II)を得る工程を含む請求項6に記載の製造方法。
【化5】
JP0005757641B2_000025t.gif
[式中、BおよびR1は上記と同義を示す]
【請求項8】
さらに、リボヌクレオシド(V)の5’位水酸基を選択的に保護することにより5’保護リボヌクレオシド(IV)を得る工程を含む請求項7に記載の製造方法。
【化6】
JP0005757641B2_000026t.gif
[式中、BおよびR1は上記と同義を示す]
【請求項9】
RNAを製造するための方法であって、
下記式(I)または(I’)で表されることを特徴とするRNA合成用モノマーまたはその塩と
【化7】
JP0005757641B2_000027t.gif
[式中、
Bは、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、ヒポキサンチンまたはキサンチンを示し;
1は、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチルテキシルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、トリ-p-キシリルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基およびt-ブチルメトキシフェニルシリル基から選択されるシリル系保護基;トリフェニルメチル基、α-ナフチルジフェニルメチル基、p-メトキシフェニルジフェニルメチル基、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル基、トリ(p-メトキシフェニル)メチル基、4-(4’-ブロモフェナシルオキシ)フェニルジフェニルメチル基、4,4’,4”-トリス(4,5-ジクロロフタルイミドフェニル)メチル基、4,4’,4”-トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル基、4,4’,4”-トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル基、3-(イミダゾイル-1-イルメチル)ビス(4’,4”-ジメトキシフェニル)メチル基および1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1’-ピレニルメチル基から選択されるトリチル系保護基;または、t-ブトキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびベンジルオキシカルボニル基から選択されるカーバメート系保護基を示し;
2は、C1-4アルキル基、C2-4アルケニル基またはC1-4ハロゲン化アルキル基を示す]
下記式(VI)で表される固定化RNAとを縮合する工程
【化8】
JP0005757641B2_000028t.gif
[式中、
Bは上記と同義を示し、且つ、互いに同一であっても異なっていてもよく;
2は上記と同義を示し;
Xは可溶性高分子を示し;
nは整数を示す;
但し、n=0の場合、リン酸ジエステル基は水酸基であるものとする;
また、各リボース単位において、2’位および3’位の置換基は互いに入れ替わっていてもよいものとする];
亜リン酸ジエステル基を酸化する工程;および
1を除去する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
Bが、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、ヒポキサンチンまたはキサンチンであって、保護されていないものである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記縮合工程を液相合成で行なう請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
1が、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチルテキシルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、トリ-p-キシリルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基およびt-ブチルメトキシフェニルシリル基から選択されるシリル系保護基を示す請求項9~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
さらに、リパーゼまたはエステラーゼにより2’位のR2-(C=O)-基と3’位のX-(C=O)-基を除去する工程を含む請求項9~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
2’位のR2-(C=O)-基と3’位のX-(C=O)-基を除去する工程をC1-4アルコールを含む溶媒中で行う請求項13に記載の方法。
【請求項15】
下記式(XI)で表されることを特徴とするRNAオリゴマーまたはその塩。
【化9】
JP0005757641B2_000029t.gif
[式中、
Bは、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、ヒポキサンチンまたはキサンチンを示し、且つ、互いに同一であっても異なっていてもよく;
2は、C1-4アルキル基、C2-4アルケニル基またはC1-4ハロゲン化アルキル基を示し;
4は、水素原子;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチルテキシルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、トリ-p-キシリルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基およびt-ブチルメトキシフェニルシリル基から選択されるシリル系保護基;トリフェニルメチル基、α-ナフチルジフェニルメチル基、p-メトキシフェニルジフェニルメチル基、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル基、トリ(p-メトキシフェニル)メチル基、4-(4’-ブロモフェナシルオキシ)フェニルジフェニルメチル基、4,4’,4”-トリス(4,5-ジクロロフタルイミドフェニル)メチル基、4,4’,4”-トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル基、4,4’,4”-トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル基、3-(イミダゾイル-1-イルメチル)ビス(4’,4”-ジメトキシフェニル)メチル基および1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1’-ピレニルメチル基から選択されるトリチル系保護基;または、t-ブトキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびベンジルオキシカルボニル基から選択されるカーバメート系保護基を示し;
Xは可溶性高分子を示し;
mは1以上の整数を示す;
但し、各リボース単位において、2’位および3’位の置換基は互いに入れ替わっていてもよいものとする]
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、RNA合成用モノマー、当該RNA合成用モノマーを製造するための方法、および、当該RNA合成用モノマーを用いたRNAの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
RNAは、遺伝子の発現において重要な役割を担う他、触媒として機能することも知られている。さらに、mRNAの一部に相補的なRNAを結合させるとmRNAが分解されるRNA干渉という現象が見出されて以来、所望の塩基配列を有するRNAの需要が一層高まっている。
【0003】
RNAは、複数のリボヌクレオシドが5’位と3’位でホスホジエステル結合している構造を有する。よって、RNAを化学的に合成するに当たっては、2つのリボヌクレオシドを、リン酸を介して5’位と3’位とで選択的に結合することが非常に重要となる。
【0004】
一般的に、RNAは、塩基部分のアミノ基と2’位の水酸基が保護され且つ3’位で固相担体へ結合しているリボヌクレオシドに、塩基部分のアミノ基と、2’位および5’位の水酸基が保護されたリボヌクレオチドを結合させた後に脱保護する方法で製造される。かかる化学的製造方法では、各水酸基が選択的に保護されたモノマーをいかに効率的に得るかがポイントとなる。以下に、RNA合成用モノマーの代表的な製造方法を示す。
【0005】
【化1】
JP0005757641B2_000002t.gif

【0006】
上記のとおり、RNA合成用モノマーを製造するには、最短でも7段階もの工程が必要となる。詳しくは、塩基部分のアミノ基は塩基性が高く選択的に保護し易いが、特に2’位と3’位の水酸基の反応性には差がない。よって、3’位と5’位の水酸基を環状保護基で同時に保護した後、2’位水酸基を保護しておき、3’位と5’位の環状保護基を選択的に脱保護する必要があるため、工程数が多くならざるを得ない。
【0007】
RNA合成の研究は、最後に脱保護すべきものであることから、主に2’位水酸基の保護基に関して行われている。例えば特許文献1には、2’位水酸基が1,3-ジオキソラン-2-イル誘導体基などにより保護されたリボヌクレオシド化合物が開示されている。当該置換基は、安価な試薬により導入可能であり、また、リン酸ジエステル基の転位に対して不活性な酸性条件下で除去可能であるとされている。また、特許文献2には、RNAの3’-5’結合を維持しつつ塩基により除去され得る、2’位水酸基の保護基として、アセトキシメチル基などが記載されている。
【0008】
また、非特許文献1には、2’位水酸基または3’位水酸基を制御することなくH-ホスホン酸エステル化した後、2’位を選択的にTBDMS(t-ブチルジメチルシリル基)で保護することにより、3’位水酸基がH-ホスホン酸エステル化されたRNA合成用モノマーを得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2006-77013号公報
【特許文献2】特開2011-521930号公報
【0010】

【非特許文献1】Xiaohu Zhangら,Tetrahedron Letters,vol.38,no.41,pp.7135-7138(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、RNA合成用モノマーの製造方法は一応は確立しており、RNA合成に関する研究は主に置換基の検討について為されている。しかし、従来のRNA合成用モノマーの製造方法は、少量が得られればよい時代に開発されたものであり、工程数が多く、大量合成に適するものではない。例えば、100gのsiRNAが数十億円で取引きされている例がある。
【0012】
また、非特許文献1に記載の技術のように、RNA合成用モノマーの製造工程を減らすことも検討されている。しかし、非特許文献1に記載の方法では、塩基部分の種類によっては2’位と3’位における選択性は落ちる。
【0013】
さらに、上述したようにRNAの製造方法としては、各工程における精製が容易であるといった理由から固相合成法が一般的である。しかし、固相合成法ではRNA合成用モノマーが大過剰量用いられ、少量合成では5~15倍モル、大量合成でも2~5倍モル程度用いられる。また、ステップ毎に必要な大量の反応剤や洗浄に要する溶媒のコストがかかったり、大量の廃棄物が生じるという問題もある。一方、液相合成法はその高いコストパフォーマンスやエネルギーパフォーマンスから大量合成に適しており、また、塩基部分を保護する必要性が低いという利点があり、RNA合成用モノマーが大量に入手できるのであれば、液相合成法の適用も検討すべきである。しかし、一般的には、固相合成法よりもその使用量は低いといえるとはいえ、液相合成法でも過剰量のRNA合成用モノマーが用いられる。
【0014】
そこで本発明は、効率的に製造され得るものであり、結果としてRNAの製造コストを顕著に低減することができるRNA合成用モノマーと、少ない工程数で効率的にRNA合成用モノマーを製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明では、RNA合成用モノマーをほぼ化学量論量で用いる場合であってもRNAを効率的に合成できる方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、2’位または3’位がアルカノイル基などで保護されたRNA合成用モノマーは、ほぼ化学量論量でもRNAを効率的に合成できることを見出して、本発明を完成した。
【0016】
本発明に係る第1のRNA合成用モノマーは、下記式(I)で表される化合物またはその塩であることを特徴とする。
【0017】
【化2】
JP0005757641B2_000003t.gif

【0018】
[式中、
1は、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチルテキシルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、トリ-p-キシリルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基およびt-ブチルメトキシフェニルシリル基から選択されるシリル系保護基;トリフェニルメチル基、α-ナフチルジフェニルメチル基、p-メトキシフェニルジフェニルメチル基、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル基、トリ(p-メトキシフェニル)メチル基、4-(4’-ブロモフェナシルオキシ)フェニルジフェニルメチル基、4,4’,4”-トリス(4,5-ジクロロフタルイミドフェニル)メチル基、4,4’,4”-トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル基、4,4’,4”-トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル基、3-(イミダゾイル-1-イルメチル)ビス(4’,4”-ジメトキシフェニル)メチル基および1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1’-ピレニルメチル基から選択されるトリチル系保護基;または、t-ブトキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびベンジルオキシカルボニル基から選択されるカーバメート系保護基を示し;
2は、C1-24アルキル基、C2-24アルケニル基またはC1-24ハロゲン化アルキル基を示す]
当該RNA合成用モノマー(I)は、非常に効率的に製造できるものであるので、RNA合成のモノマーとして用いれば、RNA合成の全体的な製造効率を顕著に高めることができる。
【0019】
本発明に係る第2のRNA合成用モノマーは、下記式(I’)で表される化合物またはその塩であることを特徴とする。
【0020】
【化3】
JP0005757641B2_000004t.gif

【0021】
[式中、R1とR2は上記と同義を示す]
例えば、塩基部分がアデニンであるRNA合成用モノマー(I’)は、2-5Aの原料化合物として有用である。詳しくは、3~6個のアデノシンが2’,5’リン酸結合しているオリゴマーは2-5Aと呼ばれており、補酵素としてRNase Lを活性化し、病原ウィルスのmRNAを分解する。このRNase Lは、インターフェロンが細胞膜受容体に結合することにより誘導される。即ち、当該RNA合成用モノマー(I’)は、インターフェロンによる治療システムの一端を担う2-5Aの原料化合物として有用である。
【0022】
また、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、5’位が保護されたリボヌクレオシドをリパーゼで処理すると、2’位または3’位の水酸基が高い選択率でエステル化されるばかりでなく、塩基部分のアミノ基を保護する必要がないことから、わずかな工程数でRNA合成用モノマーが製造できることを見出して、本発明を完成した。
【0023】
本発明に係るRNA合成用モノマーの製造方法は、
当該RNA合成用モノマーとして、下記式(I)の3’-H-ホスホン酸エステル、下記式(I’)の2’-H-ホスホン酸エステルまたはその塩を製造するためのものであり;
【0024】
【化4】
JP0005757641B2_000005t.gif

【0025】
[式中、R1とR2は上記と同義を示す]
リパーゼの存在下、H-ホスホン酸エステル化された5’保護リボヌクレオシド(II)と、下記式(III)の化合物:
2C(=O)OR3 ・・・ (III)
[式中、R2は前記と同義を示し;R3は、-H、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、-C(=O)R2または-N=C(C1-6アルキル)2を示す]
とを反応させることにより、2’位水酸基または3’位水酸基を選択的にエステル化する工程を含むことを特徴とする。
【0026】
【化5】
JP0005757641B2_000006t.gif

【0027】
[式中、R1とR2は上記と同義を示す]
本発明に係るRNA合成用モノマーの製造方法では、さらに、5’保護リボヌクレオシド(IV)に三ハロゲン化リンを作用させ、2’位水酸基または3’位水酸基をH-ホスホン酸エステル化することによりH-ホスホン酸エステル化された5’保護リボヌクレオシド(II)を得る工程を含むことが好ましい。
【0028】
【化6】
JP0005757641B2_000007t.gif

【0029】
[式中、R1は上記と同義を示す]
本発明方法では、リパーゼを用いて2’位水酸基または3’位水酸基を選択的にエステル化することができるので、その前工程において、2’位水酸基または3’位水酸基を選択的に保護する必要が無い。また、上記反応により得られるH-ホスホン酸エステル化された5’保護リボヌクレオシドにおいて、H-ホスホン酸基は2’位と3’位との間で転位するため、何れかの位置異性体がリパーゼ反応で消費されると平衡が傾き、リパーゼの基質化合物ではない位置異性体が基質化合物に変化するため、ホスホン酸エステル化を効率的に進めることができる。
【0030】
本発明に係るRNA合成用モノマーの製造方法では、さらに、リボヌクレオシド(V)の5’位水酸基を選択的に保護することにより5’保護リボヌクレオシド(IV)を得る工程を含むことが好ましい。
【0031】
【化7】
JP0005757641B2_000008t.gif

【0032】
[式中、R1は上記と同義を示す]
5’位水酸基の反応性は、塩基部分中のアミノ基や2’位水酸基、3’位水酸基とも区別できるので、5’位水酸基のみを選択的に保護することは比較的容易である。また、本発明方法では、塩基部分中のアミノ基を保護する必要が無い。
【0033】
本発明に係るRNAの製造方法は、
下記式(I)または(I’)で表されることを特徴とするRNA合成用モノマーまたはその塩と
【0034】
【化8】
JP0005757641B2_000009t.gif

【0035】
[式中、R1とR2は上記と同義を示す]
下記式(VI)で表される固定化RNAとを縮合する工程
【0036】
【化9】
JP0005757641B2_000010t.gif

【0037】
[式中、
2は上記と同義を示し;
Xは可溶性高分子を示し;
nは整数を示す;
但し、n=0の場合、リン酸ジエステル基は水酸基であるものとする;
また、各リボース単位において、2’位および3’位の置換基は互いに入れ替わっていてもよいものとする];
亜リン酸ジエステル基を酸化する工程;および
1を除去する工程を含むことを特徴とする。
【0038】
本発明に係るRNAの製造方法では、さらに、リパーゼまたはエステラーゼにより2’位のR2-(C=O)-基と3’位のX-(C=O)-基を除去する工程を含むことが好ましい。リパーゼまたはエステラーゼを用いれば、R2-(C=O)-基のみならず、水溶性担体も穏和な条件で良好に除去することが可能になる。
【0039】
本発明に係るRNAの製造方法では、2’位のR2-(C=O)-基と3’位のX-(C=O)-基を除去する工程をC1-4アルコールを含む溶媒中で行うことが好ましい。RNAの切断などの副反応は水の存在により引き起こされるが、リパーゼとエステラーゼは溶媒中にC1-4アルコールが含まれていても脱保護反応を触媒することができ、また、C1-4アルコールの存在により、上記副反応を抑制することが可能である。
【0040】
本発明に係るRNAオリゴマーまたはその塩は、下記式(XI)で表されることを特徴とする。
【0041】
【化10】
JP0005757641B2_000011t.gif

【0042】
[式中、
2とXは上記と同義を示し;
4は、上記R1と同義を示すか或いは水素原子を示し;
mは1以上の整数を示し;
但し、各リボース単位において、2’位および3’位の置換基は互いに入れ替わっていてもよいものとする]
本発明において、「C1-24アルキル基」とは、炭素数1~24の直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味する。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、s-ペンチル基、イソペンチル基、メチルブチル基、ネオペンチル基、エチルプロピル基、ヘキシル基、s-ヘキシル基、イソヘキシル基、メチルペンチル基、ジメチルブチル基、エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ドデカニル基、テトラデカニル基、ヘキサデカニル基、オクタデカニル基、イコサニル基、ドコサニル基、テトラコサニル基を挙げることができる。立体障害の小ささや置換基(-C(=O)R2)の導入のし易さや除去のし易さの観点からは、R2としてはC1-6アルキル基が好ましく、C1-4アルキル基がより好ましく、C1-2アルキル基がさらに好ましく、メチル基が最も好ましい。また、炭素数が多いとモノマーの脂溶性が高まり、特に長鎖RNAの合成の際に有機溶媒に対する溶解性が向上し、反応効率の低下を回避することが可能になり得る。かかる観点からは、R2としてはC10-24アルキル基が好ましく、C12-20アルキル基がより好ましく、C14-18アルキル基がさらに好ましい。また、本発明に係るRNA合成用モノマーを重合してRNAを製造する場合には、溶解度を向上させるために、5~10塩基ごとにR2として比較的長鎖の上記アルキル基を導入することが好ましい。
【0043】
「C1-6アルキル基」とは、炭素数1~6の直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味し、C1-24アルキル基の上記具体例のうち炭素数が1~6のものを挙げることができる。
【0044】
「C2-24アルケニル基」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する炭素数2~24の直鎖状または分枝鎖状の不飽和炭化水素基を意味する。例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-オクテニル基、(4-エテニル)-5-ヘキセニル基、2-デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、ドコセニル基を挙げることができる。アルキル基の場合と同様に、置換基(-C(=O)R2)の導入のし易さや除去のし易さの観点からは、R2としてはC2-6アルケニル基が好ましく、C2-4アルケニル基がより好ましく、2-プロペニル基がさらに好ましい。また、炭素数が多いとモノマーの脂溶性が高まり、RNA合成の際に有機溶媒を用いることができるようになり得る。かかる観点からは、R2としてはC10-24アルケニル基が好ましく、C12-20アルケニル基がより好ましく、C14-18アルケニル基がさらに好ましい。
【0045】
「C2-6アルケニル基」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する炭素数2~6の直鎖状または分枝鎖状の不飽和炭化水素基を意味し、C2-24アルケニル基の上記具体例のうち炭素数が2~6のものを挙げることができる。
【0046】
「C1-24ハロゲン化アルキル基」とは、1以上のハロゲン原子基に置換されたC1-24アルキル基を意味する。ハロゲン原子基としては、フッ素原子基、塩素原子基、臭素原子基、ヨウ素原子基のいずれかをいう。ハロゲン原子基の置換基数の上限は、置換可能である限り特に制限されないが、好適には5、より好適には4、さらに好適には3、さらに好適には2、特に好適には1である。C1-24ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、1,1,1-トリフルオロエチル基、1,1,1-トリクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基を挙げることができる。
【0047】
「C1-4アルコール」としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノールおよびt-ブタノールを挙げることができ、C1-2アルコールがより好ましい。
【発明の効果】
【0048】
本発明に係るRNA合成用モノマーは、2’位または3’位がアルカノイル基などにより保護されているという構造的な特徴を有する。その理由は必ずしも明らかではないが、本発明に係るRNA合成用モノマーを重合する場合には、従来、RNA合成用モノマーを過剰量用いなければならなかったのに対して、ほぼ化学量論量でも反応が進行する。よって、本発明に係るRNA合成用モノマーと当該RNA合成用モノマーを用いたRNAの製造方法は、RNAの製造コストを顕著に低減できるものとして産業上非常に有用である。
【0049】
また。本発明に係るRNA合成用モノマーの製造方法によれば、先ず、原料化合物であるリボヌクレオシドの塩基部分のアミノ基を保護する必要がない。よって、従来方法に比して、当該アミノ基を選択的に保護するための複数工程を実施しなくてもよい。
【0050】
また、本発明に係るRNA合成用モノマーの製造方法によれば、リパーゼによりヌクレオシドの2’位水酸基または3’位水酸基が選択的にエステル化される。この際、基質化合物である5’保護ヌクレオチドのホスホン酸基は、溶液中、2’位と3’位で転位し、これら位置異性体はおおよそ1:1で存在する。よって、リパーゼにより2’ホスホン酸エステル体または3’ホスホン酸エステル体が基質化合物として消費されると、平衡が傾いて他方の位置異性体が基質化合物に変化するので、従来方法と異なり、2’位水酸基を選択的に保護して3’位水酸基を選択的にリン酸エステル化するといった必要が無い。
【0051】
従って、本発明に係るRNA合成用モノマーの製造方法は、従来方法に比して工程数が大幅に少なく、RNA合成用モノマーを安価で効率的に製造できるので、RNA合成用モノマーの製造コスト、ひいてはRNAの製造コストを顕著に低減できるものとして、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、5’-O-TBDMSアデノシン H-ホスホン酸エステル混合物の2’位をブタ膵臓由来のリパーゼでアセチル化した反応液のHPLCチャートである。
【図2】図2は、5’-O-TBDMSウリジン H-ホスホン酸エステル混合物の2’位をブタ膵臓由来のリパーゼでアセチル化した反応液のHPLCチャートである。
【図3】図3は、本発明方法により得られたRNA2量体のHPLCチャートである。
【図4】図4は、本発明方法により得られたRNA21量体のHPLCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、先ず、本発明に係るRNA合成用モノマーの製造方法を実施の順番に従って説明する。

【0054】
(1) 5’位水酸基の保護工程
本発明方法の中間化合物である5’保護リボヌクレオシド(IV)は、出発原料化合物であるリボヌクレオシド(V)の5’位水酸基を選択的に保護することにより得られる。

【0055】
【化11】
JP0005757641B2_000012t.gif

【0056】
[式中、R1は上記と同義を示す]
上記反応では、リボヌクレオシドを溶媒に溶解し、保護試薬を直接または溶媒に溶解した上で加え、反応させればよい。

【0057】
リボヌクレオシド中の塩基(式中では「B」)としては、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、ヒポキサンチン、キサンチンを挙げることができ、これら塩基を含むリボヌクレオシドは、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、イノシン、キサントシンとして、それぞれ容易に入手可能である。その他、Bは人工的に合成された塩基基であってもよい。なお、本発明における「B」中の-NH2または=NHは保護されていても保護されていなくてもよく、本発明に係るRNA合成用モノマーの製造方法では塩基基を保護しなくても反応を進めることができるため、好適には保護しない。

【0058】
保護試薬は、保護基R1に対応するハロゲン化物、より具体的には塩化物または臭化物を用いればよい。かかる保護試薬は、市販されているか、市販の前駆体化合物から容易に調製することができる。

【0059】
保護試薬の使用量は、適宜調整すればよいが、例えば、リボヌクレオシドに対して0.9倍モル以上、1.1倍モル以下程度とすることができる。

【0060】
上記反応で用いる溶媒は、リボヌクレオシドや保護試薬を適度に溶解できるものであり且つ反応の進行を妨げないものであれば特に制限されない。例えば、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジンなどのピリジン系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;ジメチルカーボネートなどの炭酸エステル系溶媒などを挙げることができる。また、後述するリパーゼ反応の基質化合物(III)を本工程の溶媒として用いることもできる。溶媒は、使用直前に脱水するなど、水を含まないものや水含量が極力抑えられているものを使うことが好ましい。

【0061】
さらに、塩基を用いてもよい。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール、ジアザビシクロウンデセン(DBU)などの有機塩基を用いることができる。

【0062】
リボヌクレオシド溶液の濃度は、適宜調整すればよいが、例えば、10mg/mL以上、500mg/mL以下程度とすることができる。また、保護試薬を溶媒に溶解して添加する場合、保護試薬の濃度も適宜調整すればよく、例えば、10mg/mL以上、500mg/mL以下程度とすることができる。リボヌクレオシド溶液の溶媒と保護試薬溶液の溶媒は、同一であっても異なっていてもよい。

【0063】
反応温度は適宜調整すればよく、例えば、リボヌクレオシド溶液を-100℃以上、10℃以下に冷却した上で、保護試薬またはその溶液をゆっくり加えた後、反応混合液の温度を20℃以上、50℃以下程度に高めればよい。反応時間も適宜調整すればよく、例えば、薄層クロマトグラフィで原料化合物の消費を確認できるまでとしたり、予備実験により決定すればよい。具体的には、保護試薬またはその溶液の添加完了から1時間以上、10時間以下程度とすることができる。

【0064】
反応終了後は、通常の後処理を行えばよい。例えば、反応混合液を濃縮し、濃縮物を塩化メチレンや酢酸エチルなど水に対する溶解性の低い溶媒に溶解した後、水で洗浄する。有機相を乾燥、濃縮した後、さらに再結晶などにより5’保護リボヌクレオシド(IV)を精製すればよい。

【0065】
(2) ホスホン酸エステル化工程
次に、5’保護リボヌクレオシド(IV)の溶液に三ハロゲン化リンを加え、2’位水酸基または3’位水酸基をH-ホスホン酸エステル化することにより、本発明方法に特徴的なリパーゼ反応の基質化合物であり、H-ホスホン酸エステル化された5’保護リボヌクレオシド(II)を得る。なお、当該反応では、下記式のとおり、5’保護リボヌクレオシド(IV)がいったんホスフィチル化された後、水の存在下で加水分解されて2’ホスホン酸エステルまたは3’ホスホン酸エステルとなり、また、水溶液中では、ホスフィチル体を介して2’ホスホン酸エステルと3’ホスホン酸エステルが平衡状態にあると考えられる。

【0066】
【化12】
JP0005757641B2_000013t.gif

【0067】
なお、亜リン酸基やリン酸基などを有する化合物が溶解している場合には、P-OHは電離してP-O-の状態にあると考えられるが、本発明では、便宜上、P-OHと記載し、P-O-の状態にある場合も本発明範囲に含まれるものとする。

【0068】
三ハロゲン化リンとしては、三塩化リン、三臭化リンおよび三ヨウ化リンを挙げることができ、三塩化リンが最も安価で入手容易である。

【0069】
上記反応で用いる溶媒は、適宜選択すればよいが、例えば、上記工程(1)で用いたものを同様のものを用いることができる。

【0070】
上記反応においては、反応をより一層進行せしめるために塩基を用いてもよい。かかる塩基は特に制限されず適宜選択すればよいが、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ベンズイミダゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、キノリン、イソキノリン、インドール、ピリミジン、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、ピラジン、ピリダジン、ピペリジン、2-ピラゾリン、ピラゾリジン、3-ピロリン、ピロリジン、ピロール、モルフォリン、キノキサリン、4,4-トリメチレンジピリジン、ピペラジン、4,4’-トリメチレンジピペリジン、1-(3-アミノプロピル)-イミダゾール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)などを用いることができる。これら塩基は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。

【0071】
塩基の使用量は適宜調整すればよいが、例えば、5’保護リボヌクレオシド(IV)に対して過剰量、具体的には、2倍モル以上、10倍モル以下程度とすることができる。

【0072】
5’保護リボヌクレオシド(IV)溶液の濃度は、適宜調整すればよいが、例えば、10mg/mL以上、500mg/mL以下程度とすることができる。また、当該溶液に塩基を加える場合の総塩基の濃度も適宜調整すればよいが、例えば、10mg/mL以上、500mg/mL以下程度とすることができる。

【0073】
三ハロゲン化リンは、そのまま加えてもよいし、溶媒に溶解した上で加えてもよい。三ハロゲン化リン溶液とする場合の濃度は、適宜調整すればよいが、例えば、100mg/mL以上、1000mg/mL以下程度とすることができる。5’保護リボヌクレオシド(IV)の溶媒と三ハロゲン化リンの溶液の溶媒は、同一であっても異なっていてもよい。

【0074】
反応温度は適宜調整すればよく、例えば、5’保護リボヌクレオシド(IV)溶液を-100℃以上、-10℃以下に冷却した上で、三ハロゲン化リンまたはその溶液をゆっくり加える。反応時間も適宜調整すればよく、例えば、薄層クロマトグラフィで原料化合物の消費を確認できるまでとしたり、予備実験により決定すればよい。具体的には、三ハロゲン化リンまたはその溶液の添加完了から1分間以上、5時間以下程度とすることができる。

【0075】
さらに、得られたホスフィチル体を加水分解する。例えば、反応混合液を10℃以下に冷却した後、塩基性水溶液を添加すればよい。当該塩基性水溶液中の塩基としては、例えば、炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を挙げることができる。当該塩基性水溶液の濃度は適宜調整すればよく、例えば、0.1質量%以上、10質量%以下程度とすることができる。また、当該塩基性水溶液の使用量も適宜調整すればよく、例えば、反応混合液の0.5倍容量以上、2倍容量以下程度とすることができる。

【0076】
反応終了後は、通常の後処理を行えばよい。例えば、塩基などを除去するために透析を行った後、クロマトグラフィなどによりH-ホスホン酸エステル(II)を精製すればよい。

【0077】
(3) 2’水酸基または3’水酸基の保護工程(リパーゼ反応工程)
次に、リパーゼの存在下、H-ホスホン酸エステル化された5’保護リボヌクレオシド(II)と、下記式(III)の化合物:
2C(=O)OR3 ・・・ (III)
[式中、R2およびR3は前記と同義を示す]
とを反応させることにより、H-ホスホン酸エステル化された5’保護リボヌクレオシド(II)の2’位水酸基または3’位水酸基を選択的にエステル化し、3’ホスホン酸エステル(I)または2’ホスホン酸エステル(I’)を得る。

【0078】
【化13】
JP0005757641B2_000014t.gif

【0079】
使用する基質化合物(III)のうち、R3が-Hであるカルボン酸は比較的シンプルな構造を有しており、例えば市販化合物として入手可能である。また、R3がC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、-C(=O)R2または-N=C(C1-6アルキル)2であるエステル化合物または酸無水物も、比較的シンプルな構造を有しており、市販化合物として入手可能であるか、或いは、当業者であれば市販化合物から容易に合成可能である。

【0080】
3’ホスホン酸エステル(I)または2’ホスホン酸エステル(I’)の何れが主生成物として得られるかは、主に使用するリパーゼによる。例えば、目的化合物が3’ホスホン酸エステル(I)である場合、2’位水酸基を選択的にエステル化できるリパーゼとして、Candida Cyclindracea(Candida rugosa)由来、ブタ膵臓由来、Pseudomonas cepacia由来、Mucor miehei由来、Thermomyces lanuginosus由来のものを用いればよい。また、目的化合物が2’ホスホン酸エステル(I’)である場合、3’位水酸基を選択的にエステル化できるリパーゼとして、例えば、Lipase PS Amano SDを用いることができる。但し、溶媒や化合物(III)との組合せなどで選択性が変わることがあるので、使用する酵素は、実際には予備実験などで決定することが好ましい。

【0081】
上記反応で用いる溶媒は、適宜選択すればよいが、例えば、上記工程(1)で用いたものと同様のものを用いることができる。

【0082】
H-ホスホン酸エステル化された5’保護リボヌクレオシド(II)の溶液中の濃度は、適宜調整すればよいが、例えば、20mg/mL以上、500mg/mL以下程度とすることができる。

【0083】
また、基質化合物(III)の使用量は、適宜調整すればよいが、例えば、H-ホスホン酸エステル化された5’保護リボヌクレオシド(II)に対して過剰量、具体的には、2倍モル以上、100倍モル以下程度とすることができる。また、基質化合物(III)を溶媒として用いることもできる。

【0084】
リパーゼの使用量は特に制限されず適宜調整すればよいが、例えば、5’保護リボヌクレオシド(II)と基質化合物(III)を含む溶液に対して0.001g/mL以上、1g/mL以下程度とすることができる。

【0085】
反応温度は、使用するリパーゼなどに応じて適宜調整すればよく、例えば、25℃以上、80℃以下程度とすることができる。反応時間も適宜調整すればよく、例えば、薄層クロマトグラフィで原料化合物の消費を確認できるまでとしたり、予備実験により決定すればよい。具体的には、2時間以上、240時間以下程度とすることができる。

【0086】
なお、いかなるリパーゼを用いても、一方の位置異性体のみが生成し、他方の位置異性体は全く生成しないということはなく、程度の差はあるが、3’ホスホン酸エステル(I)と2’ホスホン酸エステル(I’)の混合物が得られる。しかし、リパーゼに加え、基質化合物(III)の種類、溶媒、温度などを調整することにより、選択率を高めることが可能である。これらの好適条件は、予備実験などにより決定すればよい。

【0087】
反応終了後は、通常の後処理を行えばよい。例えば、反応後の反応混合液を濃縮した後、目的化合物を精製すればよい。なお、3’ホスホン酸エステル(I)と2’ホスホン酸エステル(I’)は、クロマトグラフィにより分離することができる。

【0088】
本発明方法で製造される3’ホスホン酸エステル(I)またはその塩は、RNA合成用のモノマーとして有用である。

【0089】
また、本発明方法で製造される2’ホスホン酸エステル(I’)またはその塩は、RNA合成用のモノマーの他、インターフェロン治療システムで用いる2-5Aの原料化合物として有用である。

【0090】
さらに、本発明に係るRNA合成用モノマーまたはその塩を用いてRNAを合成する場合、従来技術ではモノマーを大過剰量用いなければならなかったのに対して、ほぼ化学量論量でも反応が進行する。よって、本発明に係るRNA合成用モノマー自体の製造コストが低い上に、本発明に係るRNA合成用モノマーを用いれば、RNA製造のコストも低減することができる。

【0091】
その他、本発明に係るRNA合成用モノマーは、2’位または3’位のアルカノイル基により、溶媒に対して適度な溶解性を有し、H-ホスホン酸部が安定化され、様々なカウンターイオンなどに対して安定性を示し、また、反応性が向上している可能性がある。

【0092】
なお、本発明に係るRNA合成用モノマーまたはその塩を構成するカウンターカチオンは、特に制限されないが、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン;カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン;銀イオンなどの遷移金属イオン;アンモニウムイオン;メチルアンモニウムイオンやエチルアンモニウムなどの1級アンモニウムイオン;ジエチルアンモニウムイオン、ジイソプロピルアンモニウムイオン、グアニジニウムイオンなどの2級アンモニウムイオン;トリエチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、N,N-ジイソプロピルエチルアンモニウムイオン、トリスヒドロキシエチルアンモニウムイオン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセ-7-エンイオンなどの3級アンモニウムイオン;テトラブチルアンモニウムイオンやテトラメチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオン;ピリジニウムイオンやイミダゾリウムイオンなどの芳香族アンモニウムイオン;t-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホランイオンなどのホスファゼニウムイオンを挙げることができる。

【0093】
以下、本発明に係るRNAの製造方法を実施の順番に従って説明する。なお、以下では3’ホスホン酸エステル型のRNAの製造方法を代表的に説明するが、2’ホスホン酸エステル型RNAおよびこれらの混合型RNAも、使用する原料化合物に応じて同様に製造することができる。

【0094】
(4) 縮合工程
先ず、本発明に係るRNA合成用モノマー(I)と固定化RNA(VI)とを縮合する。

【0095】
【化14】
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【0096】
本発明における縮合工程では、従来主に用いられている固相合成ではなく液相合成を実施する。よって、Xは可溶性高分子である。

【0097】
可溶性高分子としては、水や水溶性有機溶媒に対して十分な溶解性を示し、且つ原料化合物から明確に分離できる程度の分子量を有するものであれば特に制限されない。例えば、ポリエチレングリコールやポリエチレングリコールを用いることができる。可溶性高分子の分子量としては、例えば、平均分子量で1000以上、50000以下とすることができる。なお、上記Xの末端には、下記のとおり可溶性高分子を結合させるためのジカルボン酸の一部が含まれていてもよいものとする。

【0098】
化合物(VI)は、例えば、ヌクレオシドの2’位または3’位の一方をジカルボン酸無水物でエステル化し、化合物(III)(R2C(=O)OR3)を用いて他方をエステル化した後、ジカルボン酸のカルボキシ基と可溶性高分子とを反応させることにより合成できる。ここで用いられるジカルボン酸無水物としては、例えば、マロン酸無水物、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、アジピン酸無水物、ピメリン酸無水物、スベリン酸無水物、アゼライン酸無水物、セバシン酸無水物を挙げることができる。なお、上記反応式では代表的に化合物(VI)と化合物(VII)を記載しているが、末端リボースの2’位と3’位は何れも最終的に脱保護するので、2’位と3’位の置換基は互いに入れ替わっていてもよい。また、各リボース単位の2’位と3’位の置換基も、互いに入れ替わっていてもよい。但し好適には、可溶性高分子が置換している末端リボース以外のリボース単位の2’位と3’位の置換基は、何れも共通することが好ましい。

【0099】
固定化RNA(VI)や(VII)において、塩基部分は同一であっても異なっていてもよい。

【0100】
nは整数であり、上限は特に制限されないが、例えば、500以下、300以下、200以下、100以下、80以下、50以下、40以下、30以下とすることができる。なお、本発明者による実験により、21量体(n=20)までの製造実績があり、また、それ以上の多量体の製造ももちろん可能である。

【0101】
従来方法では、固定化DNAに対して、RNA合成用モノマーを過剰量用いるのが一般的であった。一方、本発明に係るRNAの製造方法では、RNA合成用モノマーの使用量をほぼ化学量論量としても反応は進行する。具体的には、固定化RNA(VI)に対するRNA合成用モノマー(I)の割合を0.9倍モル以上、1.2倍モル以下程度にすることができる。当該割合としては、0.95倍モル以上が好ましく、1.0倍モル以上とすることがより好ましく、また、1.15倍モル以下とすることが好ましく、1.1倍モル以下とすることがより好ましく、1.05倍モル以下とすることがさらに好ましい。

【0102】
本工程で用いる溶媒は、上記原料化合物に対する適度な溶解性を示し、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;ジエチルエーテルやテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジンなどのピリジン系溶媒;ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒などを挙げることができる。溶媒としては、ニトリル系溶媒またはハロゲン化炭化水素系溶媒が好ましく、アセトニトリルまたは塩化メチレンがより好ましい。

【0103】
反応条件としては、RNA合成における一般的な縮合条件を適用することができる。例えば、RNA合成用モノマー(I)と固定化RNA(VI)の溶液に、クロロ蟻酸エチル、クロロ蟻酸イソブチル、塩化ピバロイル、塩化2,4,6-トリクロロベンゾイル、トリフリオロメタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホン酸無水物などのエステル化促進剤と、トリエチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチル エチルアミン、ピリジン、ジメチルピリジンなどの有機塩基を加える。エステル化促進剤は、RNA合成用モノマー(I)および固定化RNA(VI)に対して過剰量、具体的には1.5倍モル以上、5倍モル以下程度用いればよい。有機塩基は、エステル化促進剤と等倍モル用いればよい。

【0104】
反応温度は適時選択することができ、常温でよく、また、具体的には10℃以上、50℃以下とすることができる。反応時間も適宜選択することができ、一方の原料化合物が無くなるまでや予備実験により決定すればよいが、例えば、5分間以上、5時間以下程度とすることができる。

【0105】
反応終了後、使用した可溶性高分子などに応じた方法で目的化合物を精製してもよいが、反応液をそのまま次工程で用いてもよい。

【0106】
(5) 酸化工程
上記縮合工程で得られた固定化RNA(VII)では、RNA合成用モノマー(I)と固定化RNA(VI)とが亜リン酸ジエステル基で結合されている。そこで、当該亜リン酸ジエステル基を酸化する必要がある。

【0107】
【化15】
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【0108】
上記反応式でも、各リボース単位の2’位と3’位の置換基は、互いに入れ替わっていてもよい。但し好適には、可溶性高分子が置換している末端リボース以外のリボース単位の2’位と3’位の置換基は、何れも共通することが好ましい。

【0109】
本工程は、RNAの一般的な製造方法で用いられている酸化条件に従って実施することができる。例えば、固定化RNA(VII)の溶液に、ヨウ素と有機塩基を含む溶液を添加すればよい。ヨウ素は、固定化RNA(VII)に対して過剰量、例えば5倍モル以上、20倍モル以下用いることができる。有機塩基は、ヨウ素と等倍モル用いればよい。同様に、ビストリメチルシリルペルオキシドとトリメチルシリルトリフラートの組み合わせや、塩基性条件下におけるブタノンペルオキシドやt-ブチルヒドロペルオキシドでも酸化反応は進行する。或いは、塩基性条件下でBeaucage試薬、ジチオチウラムジスルフィド、ビス[(3-トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、プロピレンスルフィド等の硫化剤を使用することで、チオエート型リン酸エステルに変換することもできる。本発明の範囲には、かかる態様も範囲に含まれるものとする。

【0110】
反応温度は適時選択することができ、常温でよく、また、具体的には10℃以上、50℃以下とすることができる。反応時間も適宜選択することができ、固定化RNA(VII)が無くなるまでや予備実験により決定すればよいが、例えば、5分間以上、5時間以下程度とすることができる。

【0111】
反応終了後、使用した可溶性高分子などに応じた方法で目的化合物を精製してもよいが、反応液をそのまま次工程で用いてもよい。

【0112】
(6) 5’位の脱保護工程
次に、R1を除去し、5’位を脱保護する。下記反応式でも、上記反応式でも、各リボース単位の2’位と3’位の置換基は、互いに入れ替わっていてもよい。但し好適には、可溶性高分子が置換している末端リボース以外の各リボース単位の2’位と3’位の置換基は、何れも共通することが好ましい。

【0113】
【化16】
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【0114】
本工程は、R1に応じて行う。具体的には、R1がシリル系保護基である場合には、フッ化物イオンや酸性条件により容易に除去でき、トリチル系保護基である場合には、酸性条件で容易に除去することができる。何れにせよ、副反応の原因となるようなアルカリ性条件は用いる必要がない。

【0115】
反応温度は適時選択することができ、常温でよく、また、具体的には10℃以上、50℃以下とすることができる。反応時間も適宜選択することができ、固定化RNA(VIII)が無くなるまでや予備実験により決定すればよいが、例えば、5分間以上、5時間以下程度とすることができる。

【0116】
反応終了後、目的化合物である固定化RNA(IX)を精製することが好ましい。精製は、使用した可溶性高分子に応じた方法で行うことができる。具体的には、サイズ排除クロマトグラフィ、ダイアフィルトレーション、電気透析、等電点電気泳動、疎水クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィなどにより精製することができる。その他、逆相クロマトグラフィなど、通常のクロマトグラフィでも精製することができる。

【0117】
得られた固定化RNA(IX)を上記工程(4)の固定化RNA(VI)として用い、上記工程(4)~(6)を繰返すことにより、RNA鎖を伸長することが可能になる。

【0118】
なお、化合物(VIII)および化合物(IX)およびその塩、即ち、化合物(XI)およびその塩は、RNAの合成中間体として有用である。化合物(XI)のmは、0である場合を除いてnと同義とすることができる。また、化合物(XI)の塩を構成するカウンターイオンは、本発明に係るRNA合成用モノマーの塩のカウンターイオンと同様のものとすることができる。また、化合物(XI)およびその塩において、可溶性高分子を除去して2’位または3’位を水酸基とした化合物も、同様に合成中間体として有用である。

【0119】
(7) 2’位および3’位の脱保護工程
上記工程(4)~(6)を繰返し、所望の塩基配列を有するRNA鎖が得られた後は、可溶性高分子が結合した末端リボースの2’位と3’位を脱保護することによりRNAとする。

【0120】
【化17】
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【0121】
固定化RNA(IX)の2’位と3’位はアルカノイル基により保護されているか可溶性高分子はエステル結合により結合しているため、加水分解によりRNA(X)が得られる。加水分解の条件は、R2C(=O)-基などに応じて適宜選択すればよい。

【0122】
しかし通常の加水分解条件では、RNA鎖が切断されるおそれがある。そこで、本発明においては、エステル加水分解酵素を用いることが好ましい。エステル加水分解酵素としては、リパーゼやエステラーゼを挙げることができる。リパーゼまたはエステラーゼを用いる場合には、アルコール系有機溶媒、または水とアルコール系有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。水ではなくこれら溶媒を用いることにより、RNA鎖の切断反応などの副反応を抑制することができる。水とアルコール系有機溶媒との混合溶媒におけるアルコール系有機溶媒の割合は、50vol%以上が好ましく、60vol%以上がより好ましく、70vol%以上がさらに好ましく、80vol%以上が特に好ましい。アルコール系有機溶媒としては、C1-4アルコールを用いることができ、C1-2アルコールが好ましい。

【0123】
使用するリパーゼや反応条件などは、上記工程(3)と同様にすることができる。また、反応後の精製は、上記工程(6)と同様に行うことができる。また、エステラーゼとしては、hog kidney由来のものやRhodosporium toruloides由来のものを挙げることができる。

【0124】
本願は、2012年7月25日に出願された日本特許出願第2012-164985号に基づく優先権の利益を主張するものである。2012年7月25日に出願された日本特許出願第2012-164985号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0125】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0126】
実施例1 3’-H-ホスホン酸 RNA合成用モノマーの一般的合成
(1-1) 5’-O-TBDMS-リボヌクレオシドの合成
4種のリボヌクレオシド(100mmol)の無水ピリジン溶液(200mL)に対して、塩化t-ブチルジメチルシリル(14.3g,95mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いて0℃でゆっくりと加えた。得られた反応混合液の温度を室温まで昇温したのち、4時間撹拌した。エバポレータを用いて反応混合液を濃縮した後、濃縮物を塩化メチレン(200mL)に溶解または懸濁した。得られた溶液または懸濁液を、撹拌した蒸留水(500mL)に滴下した。有機相を分離した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、さらにエバポレータを用いて濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物は蒸留水-メタノールで再結晶することにより精製した。得られた結晶をアセトニトリルあるいはアセトンで洗浄することにより、目的の5’-O-TBDMS体を得た(収率:83~88%)。
【実施例】
【0127】
(1-2) 5’-O-TBDMS アデノシンの合成
アデノシン(100mmol)の無水ピリジン溶液(400mL)に対して、塩化t-ブチルジメチルシリル(14.3g,95mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いて0℃でゆっくりと加えた。得られた反応混合液の温度を室温まで昇温したのち、4時間撹拌した。エバポレータを用いて反応混合液を濃縮した後、濃縮物を塩化メチレン(200mL)に溶解した。得られた溶液を、撹拌した蒸留水(500mL)に滴下した。有機相を分離した後、エバポレータを用いて濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物はアセトニトリルで再結晶することにより精製した。得られた結晶をアセトニトリルで洗浄することにより、目的の5’-O-TBDMS体を得た(収率:85%)。
【実施例】
【0128】
(1-3) 5’-O-TBDMS シチジンの合成
シチジン(100mmol)の無水ピリジン溶液(400mL)に対して、塩化t-ブチルジメチルシリル(14.3g,95mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いて0℃でゆっくりと加えた。得られた反応混合液の温度を室温まで昇温したのち、4時間撹拌した。エバポレータを用いて反応混合液を濃縮した後、濃縮物を塩化メチレン(200mL)に溶解または懸濁した。得られた溶液または懸濁液を、撹拌した蒸留水(500mL)に滴下した。有機相を分離した後、酢酸エチルを加えて粗生成物を結晶として得た。さらに酢酸エチル-塩化メチレンで再結晶することにより目的の5’-O-TBDMS体を得た(収率:88%)。
【実施例】
【0129】
(1-4) 5’-O-TBDMS ウリジンの合成
ウリジン(100mmol)の無水ピリジン溶液(200mL)に対して、塩化t-ブチルジメチルシリル(14.3g,95mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いて0℃でゆっくりと加えた。得られた反応混合液の温度を室温まで昇温したのち、4時間撹拌した。エバポレータを用いて反応混合液を濃縮した後、濃縮物を塩化メチレン(200mL)に溶解した。得られた溶液を、撹拌した蒸留水(500mL)に滴下した。有機相を分離した後、エバポレータを用いて濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物を中圧クロマト装置(山善社製,製品名「YFLC AI-580」)とHigh-Flash 40μmsize4Lカラムを用いて、塩化メチレン-メタノールを溶出溶媒として精製し、目的の5’-O-TBDMS体を得た(収率:83%)。
【実施例】
【0130】
(1-5) 5’-O-TBDMS-N3-ジメチルアミノメチニル グアノシンの合成
グアノシン(100mmol)の塩化メチレン(200mL)懸濁液に対してジメチルホルムアミドジメチルアセタール(500mmol)を加え、室温で8時間撹拌した。反応液をろ過し、得られた固体を乾燥した後、無水ピリジン溶液(200mL)に溶解した。この溶液に塩化t-ブチルジメチルシリル(14.3g,95mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いて0℃でゆっくりと加えた。得られた反応混合液の温度を室温まで昇温したのち、4時間撹拌した。エバポレータを用いて反応混合液を濃縮した後、濃縮物を塩化メチレン(200mL)に溶解した。得られた溶液を撹拌した蒸留水(500mL)に滴下し、有機相を分離した後、エバポレータを用いて濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物をアセトニトリルで再結晶することにより、目的の5’-O-TBDMS体を得た(収率:83~88%)。
【実施例】
【0131】
(2-1) 5’-O-TBDMS-リボヌクレオシド 2’-または3’-H-ホスホン酸エステル混合物の一般的合成
上記で得られた4種の5’-O-TBDMS-リボヌクレオシド(80mmol)、1,2,4-トリアゾール(16.6g,240mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(35.6mL,240mmol)の無水ピリジン溶液(160mL)に対して、蒸留した三塩化リン(7.0mL,80mmol)を、カニュラーを用いて-78℃でゆっくりと滴下し、30分撹拌した。反応液を、0℃に冷却した5%炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)に滴下し、10分撹拌した。反応液を、排除限界分子量100の透析膜(Cellulose Ester(CE) Dialysis Membranes,Spectrum製)に封入し、メタノールに対して15時間透析し、反応試薬由来の不純物と溶媒を交換した。得られた溶液を濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物を下記条件のクロマトグラフィに付し、目的化合物であるホスホン酸エステル混合物を得た(収率:65~77%)。
【実施例】
【0132】
クロマトグラフィ条件
カラム担体: ODSシリカ担体(60μm)
装置: 中圧逆相クロマトグラフ装置(昭光サイエンティフィック社製,Purif-compact)
溶離液: 0~50%アセトニトリル水溶液
(2-2) 5’-O-TBDMS アデノシン 2’-または3’-H-ホスホン酸エステル混合物の合成
イミダゾール(49g,720mmol)の塩化メチレン(200mL)溶液に対して、蒸留した三塩化リン(10mL,120mmol)を-50℃下でゆっくりと滴下した。当該溶液に5’-O-TBDMSアデノシン(22.9mmol,60mmol)の無水ピリジン溶液(200mL)を、カニュラーを用いてゆっくりと滴下し、30分以上かけて0℃まで昇温し、そのまま30分撹拌した。反応液に28%アンモニア水(100mL)を加え、室温で一晩撹拌した。得られた溶液を濃縮して粗生成物を得たのち、中圧クロマト装置(山善社製,製品名「YFLC AI-580」)とHigh-Flash 40μmsize4Lカラムを用いて、塩化メチレン-メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物であるホスホン酸エステル混合物を得た(収率:77%)。
【実施例】
【0133】
(2-3) 5’-O-TBDMS シチジン 2’-または3’-H-ホスホン酸エステル混合物の合成
イミダゾール(25g,360mmol)の塩化メチレン(100mL)溶液に対して、蒸留した三塩化リン(5.0mL,60mmol)を-50℃下でゆっくりと滴下した。当該溶液に5’-O-TBDMSシチジン(10.8g,60mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いてゆっくりと滴下し、30分以上かけて0℃まで昇温し、そのまま30分撹拌した。反応液に28%アンモニア水(100mL)を加え、室温で一晩撹拌した。得られた溶液を濃縮して粗生成物を得たのち、粗生成物を中圧クロマト装置(山善社製,製品名「YFLC AI-580」)とHigh-Flash 40μmsize4Lカラムを用いて、塩化メチレン-メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物であるホスホン酸エステル混合物を得た(収率:75%)。
【実施例】
【0134】
(2-4) 5’-O-TBDMS ウリジン 2’-または3’-H-ホスホン酸エステル混合物の合成
イミダゾール(25g,360mmol)の塩化メチレン(100mL)溶液に対して、蒸留した三塩化リン(5.0mL,60mmol)を-50℃下でゆっくりと滴下した。当該溶液に5’-O-TBDMSウリジン(10.8g,30mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いてゆっくりと滴下し、30分以上かけて0℃まで昇温し、そのまま30分撹拌した。反応液に28%アンモニア水(100mL)を加え、室温で一晩撹拌した。得られた溶液を濃縮して粗生成物を得たのち、粗生成物を中圧クロマト装置(山善社製,製品名「YFLC AI-580」)とHigh-Flash 40μmsize4Lカラムを用いて、塩化メチレン-メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物であるホスホン酸エステル混合物を得た(収率:75%)。
【実施例】
【0135】
(2-5) 5’-O-TBDMS グアノシン 2’-または3’-H-ホスホン酸エステル混合物の合成
イミダゾール(25g,360mmol)の塩化メチレン(100mL)溶液に対して、蒸留した三塩化リン(5.0mL,60mmol)を-50℃下でゆっくりと滴下した。当該溶液に5’-O-TBDMSグアノシン(13.6g,30mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いてゆっくりと滴下し、30分以上かけて0℃まで昇温し、そのまま30分撹拌した。反応液に28%アンモニア水(100mL)を加え、室温で一晩撹拌した。得られた溶液を濃縮して粗生成物を得た後、中圧クロマト装置(昭光サイエンティフィック社製,製品名「PrifCompact」)とPrifPack ODS 30μmsize200カラムを用いて、塩化メチレン-メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物であるホスホン酸エステル混合物を得た(収率:75%)。
【実施例】
【0136】
(3-1) 2’-O-アセチル-5’-O-TBDMS-リボヌクレオシド 3’-H-ホスホン酸エステルの一般的合成
上記(2)で得られた4種の5’-O-TBDMS-リボヌクレオシド H-ホスホン酸エステル混合物(50mmol)の無水DMF溶液(250mL)に対して、酢酸ビニル(23.4mL,250mmol)とCandida Cyclindracea(Candida rugosa)由来のリパーゼ(1.0g)を加え、55℃で24時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。得られた粗生成物を、溶離液を5~25%アセトニトリル水溶液に変更した以外は上記(2)と同様の条件のクロマトグラフィに付し、目的化合物である3’-H-ホスホン酸エステルを得た(収率:55~81%)。
【実施例】
【0137】
(3-2) 2’-O-アセチル-5’-O-TBDMS-アデノシン 3’-H-ホスホン酸エステルモノマーの合成
上記(2)で得られた5’-O-TBDMSアデノシン H-ホスホン酸エステル混合物(17g,25mmol)のt-ブタノール溶液(125mL)に対して、無水酢酸(7.1mL,75mmol)とブタ膵臓由来のリパーゼ(1.0g)を加え、37℃で8時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物は昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、PrifPack ODS30μm size200カラムを用いて、脱気した水-メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物である3’-H-ホスホン酸エステルを得た(13.2g,収率:76%)。
1H NMR(500 MHz,CD3OD):δ8.74(1H,s),8.51(1H,s), 8.11-8.17(2H,br S),6.93(1H,d,J = 588 Hz),6.58-6.71(1H,m),6.17-6.24(1H,m),5.09-5.47(1H,m),4.42-4.55(5H,m),3.49-3.66(2H,m),2.36(3H,s),0.82(9H,s),0.02(3H,s),-0.06(3H,s)
31P NMR(202.5 MHz,CD3OD):δ2.0
ESI-TOF MS:calcd for C18H29N5O7PSi,[M-H]-m/z:486.16,Found m/z:486.36
得られた目的化合物を、逆相カラムを用いた下記条件のHPLCで分析した。得られたHPLCチャートを図1に示す。
【実施例】
【0138】
高圧グラジエントユニット:日本分光社製「HG-980-31」
ポンプ:日本分光社製「PU-980」
サンプリングユニット:日本分光社製「AS-2057plus」
UV-VIS検出器:日本分光社製「UV-970」
カラムオーブン:日本分光社製「860-CO」
カラム:ナカライテスク社製「5C18 COSMOSIL-AR-II 4.6×250mm」
溶出液:0.1M TEAA buffer(pH7.0)/CH3CN aq (CH3CN aqの割合を、30分間かけて2%から60%とした)
溶出速度:0.5mL/min
分析温度:40℃
検出波長:260nm
図1のとおり、酵素を用いたアセチル化により、高い立体選択性をもって2’位をアセチル化できることが実証された。
【実施例】
【0139】
(3-3) 2’-O-アセチル-5’-O-TBDMS-シチジン 3’-H-ホスホン酸エステルモノマーの合成
上記(2)で得られた5’-O-TBDMSシチジン H-ホスホン酸エステル混合物(6.6g,10mmol)のt-ブタノール溶液(25mL)に対して、無水酢酸(2.8mL,30mmol)とブタ膵臓(0.4g)を加え、37℃で24時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、PrifPack ODS30μm size200カラムを用いて、脱気した水-メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物である3’-H-ホスホン酸エステルを得た(5.54g,収率:80%)。
1H NMR(500 MHz,CD3OD):7.95-8.20(2H,br S),δ7.73(1H,d,J = 17.3),6.63(1H,d,J = 593 Hz),6.32-6.65(1H,m),6.05-6.37(1H,m),5.94(1H,d,J = 17.3),5.09-5.40(2H,m),4.18-4.63(5H,m),3.63-3.72(2H,m),2.45(3H,s),0.81(9H,s),0.04(3H,s),-0.02(3H,s)
31P NMR(202.5 MHz,CD3OD):δ2.2
ESI-TOF MS:calcd for C17H29N3O8PSi,[M-H]-m/z:462.15,Found m/z:462.23
(3-4) 2’-O-アセチル-5’-O-TBDMS-ウリジン 3’-H-ホスホン酸エステルモノマーの合成
上記(2)で得られた5’-O-TBDMSウリジン H-ホスホン酸エステル混合物(6.6g,10mmol)のt-ブタノール溶液(25mL)に対して、無水酢酸(2.8mL,30mmol)とブタ膵臓由来のリパーゼ(0.4g)を加え、37℃で24時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、PrifPack ODS30μm size200カラムを用いて、脱気した水-メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物である3’-H-ホスホン酸エステルヌクレオシドモノマーを得た(5.61g,収率:81%)。
1H NMR(500 MHz,CD3OD):δ7.88(1H,d,J = 17.2),6.63(1H,d,J = 579 Hz),6.21-6.59(1H,m),5.58-6.07(1H,m),5.79(1H,d,J = 17.3),4.99-5.28(2H,m),4.10-4.73(5H,m),3.73-3.88(2H,m),2.27(3H,s),0.82(9H,s),0.01(3H,s),-0.06(3H,s)
31P NMR(202.5 MHz,CD3OD):δ2.1
ESI-TOF MS:calcd for C17H28N2O9PSi,[M-H]-m/z:463.13,Found m/z:463.51
得られた目的化合物を、上記実施例1(3-2)と同様の条件のHPLCで分析した。得られたHPLCチャートを図2に示す。図2のとおり、酵素を用いたアセチル化により、ウリジンでも、高い立体選択性をもって2’位をアセチル化できることが実証された。
【実施例】
【0140】
(3-5) 2’-O-アセチル-5’-O-TBDMS-グアノシン 3’-H-ホスホン酸エステルの合成
上記(2)で得られた5’-O-TBDMSグアノシン H-ホスホン酸エステル混合物(7.03g,10mmol)のt-ブタノール溶液(25mL)に対して、無水酢酸(2.8mL,30mmol)とブタ膵臓由来のリパーゼ(0.4g)を加え、37℃で24時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、PrifPack ODS30μm size200カラムを用いて、脱気した水-メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物である3’-H-ホスホン酸エステルヌクレオシドモノマーを得た(4.8g,収率:55%)。
1H NMR(500 MHz,DMSO-D6):δ10.46-10.64(1H,br s),8.07(1H,s),7.23-7.56(2H,br S),6.54(1H,d,J = 592 Hz),5.28-6.59(3H,m),4.45-4.98(5H,m),3.63-3.79(2H,m),2.34(3H,s),0.77(9H,s),-0.03(3H,s),-0.12(3H,s)
31P NMR(202.5 MHz,DMSO-D6):δ1.7
ESI-TOF MS:calcd for C18H29N5O7PSi,[M-H]-m/z:502.51,Found m/z:502.77
【実施例】
【0141】
実施例2 2’-H-ホスホン酸 RNA合成用モノマーの製造
(1) 3’-O-アセチル-5’-O-TBDMS-リボヌクレオシド 2’-H-ホスホン酸エステルの合成
上記実施例1(2)で得た4種の5’-O-TBDMS-リボヌクレオシド H-ホスホン酸エステル混合物(50mmol)の無水ピリジン溶液(250mL)に対して、酢酸ビニル(23.4mL,250mmol)とブタ膵臓由来リパーゼ(2.0g)を加え、55℃で24時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。得られた粗生成物を上記実施例1(3)と同様の条件のクロマトグラフィに付し、目的化合物である2’-H-ホスホン酸エステルモノマーを得た(収率:52~80%)。
【実施例】
【0142】
(2) 3’-O-アセチル-5’-O-TBDMS-アデノシン 2’-H-ホスホン酸エステルの合成
上記実施例1(2)で得た5’-O-TBDMSアデノシン H-ホスホン酸エステル混合物(6.7g,10mmol)の無水DMF溶液(25mL)に対して、無水酢酸(2.8mL,30mmol)とLipasePS AmanoSD(0.4g)を加え、37℃で8時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物は昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、PrifPack ODS30μm size200カラムを用いて、脱気した水-メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物である2’-H-ホスホン酸エステルモノマーを得た(5.35g,収率:80%)。
H NMR(500 MHz,CD3OD):δ8.72(1H,s),8.48(1H,s),8.03-12(2H,br S),6.58(1H,d,J = 573 Hz),6.62-6.73(1H,m),5.57-6.19(2H,m),4.68-5.01(4H,m),3.49-3.66(2H,m),2.41(3H,s),0.81(9H,s),0.03(3H,s),-0.05(3H,s)
31P NMR(202.5 MHz,CD3OD):δ2.4
ESI-TOF MS:calcd for C18H29N5O7PSi,[M-H]-m/z:486.16,Found m/z:486.41
得られた目的化合物を、上記実施例1(3-2)と同様の条件のHPLCで分析した。得られたHPLCチャートを図2に示す。図2のとおり、酵素を用いたアセチル化により、高い立体選択性をもって3’位もアセチル化できることが実証された。
【実施例】
【0143】
以上に加えて、リパーゼ反応の条件を種々検討した。結果を表1および表2にまとめる。
【実施例】
【0144】
【表1】
JP0005757641B2_000019t.gif
【実施例】
【0145】
【表2】
JP0005757641B2_000020t.gif
【実施例】
【0146】
実施例3 RNA2量体の製造
(1) 5’-O-TBDMS-ウリジン 2’-アセチル-3’-酒石酸エステルおよび3’-アセチル2’-酒石酸エステル混合物の合成
5’-O-TBDMSウリジン(1.08g,3.0mmol)の無水ピリジン溶液(10mL)に対して、無水酒石酸(300mg,3.0mmol)を0℃下で加え、そのまま1時間撹拌した。反応液に無水酢酸(570μL,6.0mmol)を加え、0℃で30分撹拌した。反応液にメタノールを加え、得られた溶液を濃縮して粗生成物を得た後、中圧クロマト装置(昭光サイエンティフィック社製,PrifCompact)と分離精製用カラム(昭光サイエンティフィック社製,PurifPack ODS30μm size60)を用いて、脱気した水-メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物である5’-O-TBDMS-ウリジン アセチル-酒石酸エステル混合物を得た(1.2g,収率:73%)。
【実施例】
【0147】
(2) 5’-O-TBDMS ウリジン 2’-アセチル-3’-酒石酸担持ポリエチレングリコールおよび5’-O-TBDMS ウリジン 3’-アセチル-2’-酒石酸担持ポリエチレングリコールの混合物の合成
上記(1)で得られた5’-O-TBDMS-ウリジン アセチル-酒石酸エステル混合物(1.1g,2.0mmol)およびモノメトキシポリエチレングリコール(平均分子量5000,5.0g,1.0mmol)の無水アセトニトリル溶液(10mL)に対して、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(810mg,6.0mmol)およびN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(0.93mL,6.0mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応液にTBAFのTHF溶液(1.0M,4.0mL,4.0mmol)を加え、室温で撹拌した後、CellfineGH-25(50mL,溶離液:メタノール)を用いて精製し、ウリジン担持ポリエチレングリコールを得た(1.0g,収率:95%)。
【実施例】
【0148】
(3) 縮合
上記(2)で得られたウリジン担持ポリエチレングリコール(1.0g,1.9mmol)と、上記実施例1(3-2)で得られた2’-O-アセチル-5’-O-TBDMS-アデノシン 3’-H-ホスホン酸エステルモノマー(2.0mmol)のアセトニトリル(4.0mL)溶液に、塩化ピバリル酸(490μL,4.0mmol)およびトリエチルアミン(560μL,4.0mmol)を加えた。モノマーの消費をYMC PakDiol60(溶離液:0.1M,NaCl)で追跡しながら1時間撹拌した。
【実施例】
【0149】
(4) 亜リン酸ジエステル基の酸化
上記反応溶液に、20mMヨウ素水/ピリジン/THF溶液(1.0mL,20mmol)を添加して30分撹拌した。
【実施例】
【0150】
(5) 5’位の脱保護
さらに、上記反応液にTBAFのTHF溶液(1.0M,4.0mL,4.0mmol)を加えて1時間撹拌した。次いで、CellfineGH-25(50mL)で精製した。
【実施例】
【0151】
(6) 2’位と3’位の脱保護
上記担持2量体RNAをメタノール(125mL)に溶解し、Thermomyces lanuginosus由来のリパーゼ(5.0mL)を加え、室温で48時間振とうした。リパーゼを濾別し、反応液を凍結乾燥した後、昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、YMC ODSpack 25μm 200カラムを用いて、オートクレーブおよび脱気した水-メタノールを溶出溶媒として精製し、目的のRNA2量体(1.5g)を得た。得られたRNA2量体がテトラブチルアンモニウム塩であるとして計算した通算収率は95%であった。得られたRNA2量体の分析結果を以下に示す。
ESI-TOF MS:calcd for C19H23N7O12P,[M-H]- m/z:572.11,Found m/z:572.23
また、上記実施例1(3-2)と同様の条件で、得られた溶液をHPLCで分析した。得られたHPLCチャートを図3に示す。図3のとおり、本発明方法により得られたRNA2量体の純度は高いものであった。
【実施例】
【0152】
実施例4 RNA21量体の製造
上記実施例3と同様の条件で、さらに上記(3)~(5)のプロセスを繰り返し、可溶化高分子に担持された5’-rGCA UUU UUA UUU UUU UUU UUU-3’の配列のRNA21量体の保護体がポリエチレングリコールに固定化された化合物を合成した。
【実施例】
【0153】
上記担持21量体RNAをメタノール(125mL)に溶解し、Thermomyces lanuginosus由来のリパーゼ(5.0mL)を加え、室温で48時間振とうした。リパーゼを濾別し、反応液を凍結乾燥した後、昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、YMC ODSpack 25μm 200カラムを用いて、オートクレーブおよび脱気した20mM酢酸アンモニウム-アセトニトリルを溶出溶媒として精製し、目的のRNA21量体を得た(OD260:22500,通算収率:23%)。
【実施例】
【0154】
得られたRNA21量体を、下記の溶出液を用いた以外は上記実施例1(3-2)と同様の条件のHPLCで分析した。
【実施例】
【0155】
溶出液:0.1M TEAA buffer(pH7.0)/CH3CN aq(CH3CN aqの割合を、30分間かけて40%から60%とした)
得られたHPLCチャートを図4に示す。
【実施例】
【0156】
得られたRNAの純度は、HPLCチャートより99%以上であることを確認した。
【実施例】
【0157】
以上のとおり、本発明方法によれば、固定化RNAに対してRNA合成用モノマーをほぼ化学量論量で用いた場合であっても、21量体を通算収率23%という液相法としては十分な高収率で製造することができた。
【実施例】
【0158】
また、最後の脱保護反応において、有機溶媒であるメタノール中、リパーゼを用いることができた。よって、最終段階におけるRNA分解酵素によるRNA鎖の切断などの副反応を回避できるといえる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3