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明細書 :不可視包囲体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5224529号 (P5224529)
公開番号 特開2010-161533 (P2010-161533A)
登録日 平成25年3月22日(2013.3.22)
発行日 平成25年7月3日(2013.7.3)
公開日 平成22年7月22日(2010.7.22)
発明の名称または考案の名称 不可視包囲体
国際特許分類 H01P   1/20        (2006.01)
FI H01P 1/20 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2009-001388 (P2009-001388)
出願日 平成21年1月7日(2009.1.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 社団法人日本磁気学会 第161回研究会資料 平成20年(2008年)7月14日開催 社団法人日本磁気学会 主催
審査請求日 平成23年11月1日(2011.11.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】真田 篤志
審査官 【審査官】佐藤 当秀
参考文献・文献 特開2008-023517(JP,A)
再公表特許第2008/111460(JP,A1)
米国特許出願公開第2008/0165442(US,A1)
調査した分野 B82B 1/00
G01S 7/38
H01P 1/20
H01P 1/32
特許請求の範囲 【請求項1】
メタマテリアルからなり、内部に空洞部を備えた円筒状の包囲体(1)であって、
前記メタマテリアルは、板状の誘電体ディスク共振器(2)をその平坦面の法線方向が前記包囲体(1)の円筒の半径方向を向くように多数配置したものであって金属を使用しないものであり、
さらに、前記メタマテリアルは、前記誘電体ディスク共振器(2)の厚さを前記包囲体(1)の円筒の半径に応じて変更して、前記メタマテリアルの半径方向の実効比透磁率が、前記包囲体(1)の最内周で0となり、最外周で1より小さい所定値となるように、前記包囲体(1)の円筒の半径に応じて順次増加する値としたものであり、
前記空洞部に存在する物体および前記包囲体(1)自体を特定の周波数範囲の電磁波に対してほぼ不可視とする不可視包囲体。

【請求項2】
請求項1に記載した不可視包囲体であって、
前記誘電体ディスク共振器(2)は、直径に比べて厚さが小さい円柱形状のものである不可視包囲体。
【請求項3】
請求項2に記載した不可視包囲体であって、
前記誘電体ディスク共振器(2)は、誘電体の比誘電率が20以上のものである不可視包囲体。
【請求項4】
請求項2,3のいずれか1項に記載した不可視包囲体であって、
前記誘電体ディスク共振器(2)は、円柱形状の厚さhと直径Dとの比h/Dが0.5より小さいものである不可視包囲体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は特定の周波数の電磁波に対して、物体を不可視あるいはほぼ不可視にするための包囲体に関する。詳しくは、メタマテリアルによって包囲体を構成し、その包囲体によって包囲された物体は特定の周波数の電磁波に対してほぼ不可視となるような不可視包囲体に関する。なお、ここで言う不可視とは、包囲体および物体を通過後の電磁波の伝播状態が、物体が存在していない場合と全く同一となることである。
【背景技術】
【0002】
金属、誘電体、磁性体、超伝導体などの小片(単位構造体)を、波長に対して十分短い間隔(波長の10分の1程度以下)で並べることで自然にはない性質を持った媒質を人工的に構成することができる。この媒質を自然にある媒質のカテゴリに比べてより大きいカテゴリに属する媒質と言う意味でメタマテリアル(metamaterials)と呼んでいる。メタマテリアルの性質は、単位構造体の形状、材質およびそれらの配置により様々に変化する。
【0003】
このようなメタマテリアルによる人工磁性体として、下記の特許文献1に記載されたような技術が公知である。特許文献1には、従来技術としてスプリットリング共振器を用いた人工磁性体が記載されており、また、誘電体を挟んで対向する導体片対を配列して構成した人工磁性体が記載されている。
【0004】
そして、このようなメタマテリアルを利用すると、任意の物体を包囲する包囲体によって包囲体およびその物体を不可視とすることが可能である。このような包囲体は、クローク媒質などとも呼ばれ、被せたものが見えなくなるという、いわゆる透明マントの機能を実現するものである。
【0005】
なお、ここで言う不可視とは、包囲体および物体を通過後の電磁波の伝播状態が、包囲体および物体が存在していない場合と全く同一となることである。このような不可視の状態では、包囲体および物体を通過した電磁波が、それらが存在しない場合と全く同一の状態で伝搬するため、その電磁波によってそれらが存在するか否かを検出することはできない。すなわち、包囲体および物体は全く見えない。
【0006】
この明細書では、このような不可視の状態あるいは不可視に近いほぼ不可視の状態を作り出すことのできる包囲体を不可視包囲体と呼ぶことにする。このような不可視包囲体をメタマテリアルからなる人工磁性体によって構成することは、下記の非特許文献1などに記載されているように公知である。非特許文献1には、非磁性金属のスプリットリング共振器を円筒状に多数配列した包囲体が、特定の周波数の電磁波に対してほぼ不可視の状態を作り出すことが示されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2008-28010号公報
【0008】

【非特許文献1】D.Schurig,J.J.Mock,B.J.Justice,S.A.Cummer,J.B.Pendry,A.F.Starr,D.R.Smith,“Metamaterialelectromagnetic cloak at microwave frequencies”,Science Express,ManuscriptNumber 113362,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1に記載された不可視包囲体は、金属のスプリットリング共振器を利用した人工磁性体によって構成されている。そして、不可視特性を示す周波数は、スプリットリング共振器の共振周波数の近傍である。このため、金属による損失が共振周波数の近傍において大きく現れてしまい、不可視包囲体の損失も大きくなってしまうという問題点があった。不可視包囲体の損失が大きくなると、それだけ不可視特性も損なわれてしまうことになる。
【0010】
そこで、本発明は、金属を使用しないメタマテリアルによって不可視包囲体を構成し、共振周波数近傍における金属損失をなくして低損失の不可視包囲体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の不可視包囲体は、メタマテリアルからなり、内部に空洞部を備えた円筒状の包囲体であって、前記メタマテリアルは、板状の誘電体ディスク共振器をその平坦面の法線方向が前記包囲体の円筒の半径方向を向くように多数配置したものであって金属を使用しないものであり、さらに、前記メタマテリアルは、前記誘電体ディスク共振器の厚さを前記包囲体の円筒の半径に応じて変更して、前記メタマテリアルの半径方向の実効比透磁率が、前記包囲体の最内周で0となり、最外周で1より小さい所定値となるように、前記包囲体の円筒の半径に応じて順次増加する値としたものである。そして、前記空洞部に存在する物体および前記包囲体自体を特定の周波数範囲の電磁波に対してほぼ不可視とする。
【0012】
また、上記の不可視包囲体において、前記誘電体ディスク共振器は、直径に比べて厚さが小さい円柱形状のものとすることができる。
【0013】
また、上記の不可視包囲体において、前記誘電体ディスク共振器は、誘電体の比誘電率が20以上のものであることが好ましい。
【0014】
また、上記の不可視包囲体において、前記誘電体ディスク共振器は、円柱形状の厚さhと直径Dとの比h/Dが0.5より小さいものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0016】
不可視包囲体が、誘電体ディスク共振器を使用し、金属を使用していないので、共振周波数の近傍における金属損失がなく、損失を大幅に減少できる。これにより、低損失の不可視包囲体を実現することができ、不可視特性を向上させることができる。また、多数の誘電体ディスク共振器の厚さを不可視包囲体の内周から外周にわたって順次変更することにより、不可視包囲体に必要な透磁率の分布曲線を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、不可視包囲体1の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、不可視包囲体1に必要な誘電率と透磁率の値を示す図である。
【図3】図3は、誘電体ディスク共振器2の構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、TE01δモードの共鳴電磁界を模式的に示す図である。
【図5】図5は、人工磁性体における誘電体ディスク共振器の配列を示す図である。
【図6】図6は、人工磁性体の散乱行列のパラメータ値の周波数特性を示すグラフである。
【図7】図7は、人工磁性体の実効透磁率および実効誘電率の周波数特性を示すグラフである。
【図8】図8は、人工磁性体の周波数fと、誘電体ディスク共振器の厚さhとの関係を示すグラフである。
【図9】図9は、人工磁性体の実効誘電率および実効透磁率と、誘電体ディスク共振器の厚さhとの関係を示すグラフである。
【図10】図10は、不可視包囲体の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の理論的根拠について説明する。円筒座標系(r,θ,z)において、0≦r≦bなる領域をa≦r´≦bなる環状の領域(r´,θ´,z´)に変換するには、次の数1による座標変換を行えばよい。
【数1】
JP0005224529B2_000002t.gif

【0019】
この座標変換により、誘電率テンソルおよび透磁率テンソルの各要素は以下の数2のようになる。
【数2】
JP0005224529B2_000003t.gif

【0020】
上記の数2で表される媒質による環状領域は完全な不可視特性を有する。しかし、数2で表される媒質は、誘電率テンソルおよび透磁率テンソルの要素の中のrに依存して変化する要素の数が多いため、それらの要素の値を実現するのが難しくなる。いま、簡単のため入射波の電界の偏波の方向はz方向とする。このとき、波の伝搬にはε、μおよびμθだけが関係する。いま次の数3で表される分散性を持つ媒質を考える。

【0021】
【数3】
JP0005224529B2_000004t.gif

【0022】
数3の媒質は、数2の媒質と同じ分散特性を持つ。ただし、この数3の媒質への入射波は完全には無反射とはならず反射波を生じる。このことは、若干の反射を許せば、半径方向の透磁率テンソル成分μのみの制御で媒質に不可視特性を持たせることが可能であることを示している。すなわち、数3の媒質は、透磁率テンソル成分μのみを制御して、透過波の軌道を数2の媒質と同じにすることができる。

【0023】
図1に、環状領域の媒質としての不可視包囲体1を示す。不可視包囲体1は、内径2aと外径2bを有する円筒体であり、内部に空洞部が有り、中心軸方向には無限に存在している。不可視包囲体1の中心軸をz軸とし、半径方向をr軸とすると、a≦r≦bの範囲に不可視包囲体1を構成する媒質が存在している。r<aの領域は空洞部である。不可視包囲体1が完全な不可視特性を有していれば、r<aの空洞部に存在する物体を完全に隠して不可視とすることができる。

【0024】
実例として、a:b=1:3の場合の不可視包囲体1に必要な誘電率と透磁率を数3から計算した。図2が数3から求めた誘電率と透磁率の理論値である。図2の横軸はr/aの値であり、縦軸は比誘電率および比透磁率で表している。誘電率εと透磁率μθの値は、不可視包囲体1内部の位置によらず一定の値である。透磁率μの値はa≦r≦bの範囲で0~約0.45に変化している。

【0025】
数3から、不可視包囲体1の最内周(r=a)ではμ=0、最外周(r=3a)ではμ=4/9となることが分かる。このように透磁率μの値は、最内周では0、最外周では1より小さい所定値となる。なお、最外周でのμの値は、数3においてr=bとした場合の値であり、内径と外径との比によって定まるものである。

【0026】
そして、図2に示すような各誘電率・透磁率テンソル成分の値を設定できれば、不可視包囲体1に不可視特性を与えることができる。ただし、図2の値は数3に基づいて求めたものであり、包囲体の境界面で若干の反射が生じるため、完全に不可視とはならない準不可視状態となる。

【0027】
ここで、メタマテリアルを構成するための共振器として、図3に示すような誘電体ディスク共振器2を考える。この誘電体ディスク共振器2は直径Dと厚さhを持つ円板形状に形成された誘電体からなる。誘電体の比誘電率εは十分に大きく、円周外周部では磁気壁となる境界条件が仮定できるものとする。具体的には、誘電体の比誘電率は20以上が好ましい。この誘電体ディスク共振器2の厚さhと直径Dの比(アスペクト比)h/Dが小さい形状ではTE01δモードが最低次の共振モードとなる。

【0028】
図4はTE01δモードの共鳴電磁界の様子を模式的に示すものである。図4(a)は誘電体ディスク共振器2の円板の中心軸方向(平坦面の法線方向)から見た図であり、図4(b)は中心軸を含む断面を示す図である。誘電体ディスク共振器2の内外で、電界Eと磁界Hが図示のように分布する。TE01δモードで共鳴する誘電体ディスク共振器は、円板の平坦面の法線方向に磁気モーメントを持つ。よって、誘電体ディスク共振器の方向を揃えて多数配置すると、磁気異方性を有する人工磁性体を構成することができる。

【0029】
このような人工磁性体は、共鳴周波数をプラズマ周波数とする分散を持ち、損失が小さい場合にはこの共鳴周波数付近で円板の平坦面に垂直な方向の実効透磁率が0から1までの値をとるような異方性を有する。また、共鳴周波数も円板の形状(直径Dと厚さh)によって制御できる。このため、この人工磁性体は、共鳴周波数の近傍で任意の値の実効透磁率を持つように設計することができる。

【0030】
図5に誘電体ディスク共振器2を配列した人工磁性体の構成を示す。図5(a)に示すように、単体の誘電体ディスク共振器2は円板の平坦面を含む平面内で配列ピッチpで2次元的に配列されている。その円板が配列された平面が、図5(b)に示すように、円板の厚さ方向に積層ピッチgで積層され、3次元的に配列されている。この図5のような人工磁性体について、数値シミュレーションによりその特性を求めた。

【0031】
数値シミュレーションは、有限要素法による電磁界シミュレーションを行うコンピュータ・ソフトウェアによって計算したものであり、計算での数値条件は次の通りである。誘電体ディスク共振器2は、直径D=10.0mm、誘電体の比誘電率ε=93、誘電正接tanδ=1.7×10-4とした。ただし、誘電正接は誘電体の損失の度合いを示す特性値である。その誘電体ディスク共振器2が、配列ピッチp=15.0mm、積層ピッチg=10.0mmで無限に周期的に配列されているものとした。

【0032】
まず、誘電体ディスク共振器2を3次元的に配列した人工磁性体に平面波の電磁波を入射した際の散乱行列を求め、その散乱行列のパラメータ値から人工磁性体の実効透磁率と実効誘電率を計算した。その一例として、誘電体ディスク共振器2の厚さh=3.3mmとし、その他の誘電体ディスク共振器2の寸法、材料特性、配列寸法などは前述の通りとした場合の、計算結果を図6および図7に示す。

【0033】
図6は、散乱行列のパラメータである反射係数S11と透過係数S21の周波数特性を示すグラフである。反射係数S11は破線で示し、透過係数S21は実線で示している。図の横軸は周波数[GHz]、縦軸は散乱パラメータ(S11、S21)の大きさ[dB]である。さらに、それらのパラメータから計算した実効透磁率μと実効誘電率εを図7に示す。実効透磁率μ実線で示し、実効誘電率ε破線で示している。図7の横軸は周波数[GHz]であり、縦軸は比誘電率および比透磁率で表している。


【0034】
図6の散乱パラメータには様々な周波数においてピークが見えるが、このままでは共振器との結合が大きいため誘電体ディスク共振器のTE01δモードの共鳴周波数は判断できない。しかし、図7の実効透磁率の周波数特性からこの人工磁性体の磁気共鳴周波数は3.44GHzであることが分かる。また、図7よりf=3.78GHzにおいて実効透磁率が0となり、さらにその高域側の領域において実効透磁率が1よりも小さくなる領域が存在することが分かる。この人工磁性体のこの0<μ<1となる領域において、不可視包囲体が実現可能であることが分かる。

【0035】
なお、この領域より上の周波数において実効透磁率および実効誘電率は複雑な変化を呈するが、これは誘電体ディスク共振器の高次のスプリアス共振によるものである。このように実効透磁率および実効誘電率が複雑に変化する周波数領域においては、実効誘電率および実効透磁率の制御が難しくなり、磁性材料としての利用も実際には困難である。

【0036】
次に、人工磁性体の実効透磁率が0となる周波数fが厚さhによってどのように変化するかを計算した。図8がその計算結果を示すグラフである。図8に示されているように、厚さhが大きくなるとともに、周波数fが低下している。周波数fは共鳴周波数とほぼ連動しており、h<5mmの範囲で変化の割合が大きい。

【0037】
すなわち、誘電体ディスク共振器2の厚さhと直径Dの比(アスペクト比)h/D<0.5の範囲で、共鳴周波数(周波数f)が大きく変化する。このように、誘電体ディスク共振器2の厚さhを変化させて共鳴周波数(周波数f)を制御することにより、人工磁性体の実効透磁率と実効誘電率を制御することが可能である。また、実効透磁率と実効誘電率の制御範囲を広くするには、誘電体ディスク共振器2のアスペクト比:h/Dが0.5より小さい範囲が好ましい。

【0038】
次に、誘電体ディスク共振器による人工磁性体の不可視包囲体としての利用可能性を検証するために、ある一定の周波数において誘電体ディスク共振器の厚さhに対する実効誘電率および実効透磁率の値の変化を調べた。

【0039】
一例として、周波数を3.88GHzに選ぶ。この場合、h=3.0mmの時に実効透磁率が0となる。この周波数において厚さhを変化させた場合の人工磁性体の実効誘電率および実効透磁率の変化を前述の電磁界シミュレーションにより算出した。その計算結果を図9に示す。図9の横軸は誘電体ディスク共振器の厚さh[mm]であり、縦軸は比透磁率および比誘電率で表している。

【0040】
なお、図7および図9におけるμおよびεは実効透磁率と実効誘電率を表しており、数2、数3および図2におけるμおよびεとは意味が異なる。しかし、実効透磁率μは透磁率テンソルのμ成分に相当し、実効誘電率εは誘電率テンソルのε成分に相当する。

【0041】
図9より、厚さhを3.0~5.0mmの範囲(アスペクト比h/D:0.3~0.5の範囲)で変化させた場合、実効透磁率は0から0.45以上まで変化させることが可能であることが分かる。これらの実効透磁率の値は、図2に示した不可視包囲体の実現に必要な値の範囲を十分にカバーしている。また、この時の実効誘電率はほぼ2.25で一定であり、これも図2のεの値をほぼ満足している。以上のことにより、人工磁性体を構成する誘電体ディスク共振器の厚さhを変化させることで不可視包囲体として利用できることがわかる。

【0042】
図10は、不可視包囲体1の構成例を示す斜視図である。図10における多数の小円板体は全て誘電体ディスク共振器である。多数の誘電体ディスク共振器を、不可視包囲体1の半径方向に中心軸が向くように配置して、数3で示された異方性を有する不可視包囲体1を構成することができる。なお、誘電体ディスク共振器の厚さは、不可視包囲体1の半径方向の透磁率が図2のような曲線と一致するように、外周側に行くほど厚くなるようにする。

【0043】
以上のような不可視包囲体1は、誘電体ディスク共振器を使用しており、金属を使用していないので共振周波数の近傍における金属損失がなく、損失を大幅に減少できる。これにより、低損失の不可視包囲体を実現することができ、それだけ不可視特性を向上させることができる。また、多数の誘電体ディスク共振器の中心軸を不可視包囲体1の半径方向に向けて配置し、その誘電体ディスク共振器の厚さを不可視包囲体の内周から外周にわたって順次変更することにより、不可視包囲体に必要な透磁率の分布曲線を容易に実現することができる。

【0044】
なお、ここでは誘電体ディスク共振器2を円板状のものとしたが、形状は必ずしも円板に限定されるものではない。図4に示すのと同様の共鳴モード(等価的な磁気モーメントを持つような共鳴モード)を持つ形状であればよい。例えば、四角板などの多角形板状でも、図4に示すのと同様の共鳴モードを有する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の不可視包囲体は、誘電体ディスク共振器を使用しており、金属を使用していないので共振周波数の近傍における金属損失がなく、低損失かつ高性能の不可視包囲体を実現することができる。このような不可視包囲体によって建築物などを覆うことにより、電波障害を防止することなども可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 不可視包囲体
2 誘電体ディスク共振器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9