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明細書 :ゲル化剤及びゲル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5618287号 (P5618287)
公開番号 特開2011-246678 (P2011-246678A)
登録日 平成26年9月26日(2014.9.26)
発行日 平成26年11月5日(2014.11.5)
公開日 平成23年12月8日(2011.12.8)
発明の名称または考案の名称 ゲル化剤及びゲル
国際特許分類 C09K   3/00        (2006.01)
C07C 317/22        (2006.01)
FI C09K 3/00 103M
C07C 317/22
請求項の数または発明の数 2
全頁数 13
出願番号 特願2010-124185 (P2010-124185)
出願日 平成22年5月31日(2010.5.31)
審査請求日 平成25年5月24日(2013.5.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】岡本 浩明
【氏名】森田 由紀
審査官 【審査官】松元 麻紀子
参考文献・文献 国際公開第2009/078268(WO,A1)
米国特許出願公開第2012/0184779(US,A1)
特開2007-191626(JP,A)
国際公開第2007/083843(WO,A1)
特開2011-162511(JP,A)
特開2011-184436(JP,A)
特開2010-280799(JP,A)
特開2011-246422(JP,A)
調査した分野 C09K 3/00
C07C 317/22
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)の化合物よりなるゲル化剤
【化1】
JP0005618287B2_000011t.gif
但し、n,mはそれぞれ2~18の整数、R,Rはそれぞれ炭素数0~6の分枝又は直鎖状のアルキレン基、Zはフェニレン基又はビフェニレン基である。

【請求項2】
前記請求項1記載のゲル化剤の0.4~5重量パーセントと室温下で液状である有機化合物99.6~95重量パーセントを含むゲル。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は有機化合物をゲル化又は増粘するためのゲル化剤及び該ゲル化剤を用いたゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来各種産業分野において、ゲル化剤は液体状物質を固化、すなわちゼリー状に固めるとか、又は増粘する目的でゲル化剤が用いられている。例えば接着剤、塗料、印刷インキ、化粧品等の流動性の制御、チクソトロピー性の付与、海上への石油類の流出対策、家庭等における食用油の処分、その他食品製造業、医療分野等において使用されている。これらのゲル化剤としては、水分を固化させるもの、例えばコラーゲン、ゼラチン、寒天、アガー(カラギーナン)、ペクチン等があり、また有機物、特に炭化水素、アルコール類、ケトン類、エステル類その他の有機溶剤及びそれらを主として含む溶液等を固化させるゲル化剤がある。
【0003】
これらのうち、有機溶液を固化させるためのゲル化剤としては、低分子量又は高分子量の有機化合物があり、低分子量ゲル化剤としては、例えばアミノ基、イミド基、尿素基など水素結合性官能基を分子内に有する低分子量有機化合物群が知られている。また高分子ゲル化剤としては、親油性を有する高分子ポリマーの絡み合った分子中に油類を取り込み膨潤はするが、固体状を保つものとして例えばポリビニルアルコール/ポリエチレン/各種エラストマーや、尿素樹脂、ポリオレフィン不織布などが知られている。
【0004】
本発明は、有機溶液を固化させるための低分子量ゲル化剤を提供する。
【0005】
従来有機溶液を固化させるゲル化剤は、一般に大量のゲル化剤、例えば溶液に対して、5~10%程度用いる必要があったこと及び比較的低い温度例えば30~40℃程度でゾルに転移し、液状に戻る傾向があった。
【0006】
ゲル化させるために多くのゲル化剤を使用することは、経済的に不利であるばかりでなく、ゲル化される溶媒中への異物の混入量が多くなることを意味しており、ゲル化された溶媒を利用する場合にあっては不純物としてのゲル化剤の影響も無視し得ない場合がある。
【0007】
またゲル化温度の上限が低い場合は、少しの温度上昇により、形状が保てなくなり、流動化して液洩れ等の原因となる場合がある。
【0008】
そこで、より少量で且つ比較的高温までゲル状態が保たれるゲル化剤の開発が望まれていた。
【0009】
本発明者らは、より少量の使用で、且つ比較的高温下でもゲル状態を保持し得るゲル化剤の開発を目指し、すでに特許文献1乃至4として、パーフルオロアルキル基と炭化水素基をそれぞれ有する、特定構造のエーテル類、チオエーテル類及びスルホン基を提案した。
【0010】
これらの低分子量有機ゲル化剤にあっては比較的少量の使用で、或いは比較的高い温度下でも有機溶液をゲル状に保つことは可能となった。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2007-191661
【特許文献2】特開2007-191627
【特許文献3】特開2007-191626
【特許文献4】特開2007-324705
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明もまた、少量のゲル化剤の使用により多くの有機液化をゲル化し、且つ比較的高温に至るまでゾルに転移しないゲル化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する手段として、本願の請求項1に記載の発明は、下記一般式(1)の化合物よりなるゲル化剤を提供する。
【0014】
【化1】
JP0005618287B2_000002t.gif



(但し、n,mはそれぞれ2~18の整数、R,Rはそれぞれ炭素数0~6の分枝又は直鎖状のアルキレン基、Zはフェニレン基又はビフェニレン基を表す。)
また本願の請求項2に記載の発明は、室温下に液状である有機化合物99.6~95重量%と前記一般式(1)の化合物0.4~5重量%を含むゲルを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、新規な化合物である前記一般式(1)の化合物よりなるゲル化剤であって本発明のゲル化剤は、室温下に液体である種々の有機化合物、例えば炭化水素類、アルコール類、ケトン類、油脂を含むエステル類、カルボン酸類、アミン類、ニトリル類、アミド類等をゲル化又は増粘することができる。
【0016】
すなわち、本発明のゲル化剤は、0.4重量%の使用(有機液体99.6重量%以下)で、十分に室温(25℃)で液状の有機化合物をゲル化することが可能であり、ゲル化剤を、より多く用いることにより、一層安定なゲルを得る。更に本発明のゲルは比較的高温、例えば60℃又はそれ以上の温度までゲル状を保つことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のゲル化剤を用いたゲルのゾル-ゲル転移温度を示す図である。
【図2】実施例中(3)の化合物におけるIRチャート図である。
【図3】実施例中(3)の化合物におけるNMRチャート図である。
【図4】本発明のゲル化剤である実施例中(4)の化合物におけるIRのチャート図である。
【図5】本発明のゲル化剤である実施例中(4)の化合物におけるNMRチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、下記一般式(1)で示される新規化合物よりなるゲル化剤である。

【0019】
【化2】
JP0005618287B2_000003t.gif



(但し、n及びmは、同じでも異なっていてもよい。それぞれ2~18の整数、R,Rは炭素数0~6の分枝があるか又は直鎖状のアルキレン基、Zはフェニレン基又はビフェニレン基を表す。)
すなわち、本発明の特徴の一つは本発明のゲル化剤である化合物の両末端がパーフルオロアルキル基であり、更にアルキレン基を介するか、又は介することなく、スルホン基が結合し、該スルホン基は他方で芳香族基であるフェニレン基又はビフェニレン基に結合している。なお該芳香族基は少なくとも一つ酸素原子を介して、更にアルキレン基を介するか又は介することなくパーフルオロアルキル基を有することを必須とする。

【0020】
ここで、一般式(1)において、m,nは同じ数あってもよいし、また、2~18の間で異なる数であってもよい。しかし、m,nは1の場合は、ゲル化剤とならないし、18を超えると合成が難しくなるばかりか、有機溶剤に溶け難くなり、やはりゲル化剤として好ましくない。好ましくは、2~8の範囲であり、8を超えると環境面で懸念の恐れがある。

【0021】
またR,Rは炭素数0~6のアルキレン基である。すなわち、炭素数0とは、パーフルオロアルキル基が直接スルホン基或いは酸素原子を介して芳香族基に結合していてもよいことを表しており、また炭素数6までのアルキレン基とはメチレン基~ヘキサメチレン基の如く、直鎖状のアルキレン基であってもよいし、ジメチルメチレン基、1,2ジメチルエチレン基、1,2ジエチルエチレン基の如く分枝状であってもよい。次にZはフェニレン基又はビフェニレン基であり、これらの芳香族基は、アルキル基等の置換基を有していてもよい。

【0022】
本発明のゲル化剤の製法は何ら限定されないが、一般に次のスキームによって合成することができる。

【0023】
【化3】
JP0005618287B2_000004t.gif




或いは、

【0024】
【化4】
JP0005618287B2_000005t.gif

ここで出発原料化合物(A)、(B)、(D)、(F)及び(I)に相当する代表的化合物は、それぞれ市販されている(例えば和光純薬工業株式会社、ダイキン化成品販売株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、メルク社、シグマアルドリッチ社、等)。

【0025】
本発明のゲル化剤は、一般に室温(約25℃)で液状の有機化合物をゲル化することができる。例えばガソリン、軽油、灯油等の石油類、ヘキサン、へプタン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン、プロピレンカーボネート、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メチルエーテル、エチルエーテル、エポキシプロパン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、蟻酸、酢酸等の有機酸類、ホルムアミド等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、パーム油等の油脂類、ブチロラクトム、バレロラクトム類のラクトム類、ピリジウム系化合物、イミダゾリウム系化合物、ピロリウム系化合物のイオン液体等が挙げられる。

【0026】
本発明のゲル化剤は、図1に示すように5重量%より少ない使用量で多くの有機液体をゲル化し得る。勿論、ゲル化剤の最適使用量は、目的とする有機液体の種類や温度によっても相違するが、油脂やイオン液体等多くの有機液体は室温下に0.4重量%程度でゲル化が可能となる。またゲル化剤は、使用量を増すほどゲル-ゾル転移温度を高くすることができる。

【0027】
また本発明の特徴の一つは、比較的高い温度においてもゲル状を保つことができる。一般にゲル-ゾル転移温度は、ゲル化剤を多く用いる程高くなる傾向にあり、5重量%程度の使用で60℃又はそれ以上とすることもできる。

【0028】
本発明のゲル化剤の使用にあっては、従来のゲル化剤の使用方法と何ら変わるものではなく、例えばゲル化対象物である液体状の有機化合物をゾル-ゲル転移温度以上に加温して、ゲル化剤を均一に混合溶解した後、放冷等により冷却すればゲルが得られる。勿論液体状有機化合物は一種であることを要せず、複数種の混合物であってもよいし、溶質を溶解した溶液であってもよい。また使用済の食油のように多くの分解成分やテンプラ滓等の食材残滓を含んだもの或いは、機械洗浄後の廃油の如く、鉄サビや泥等を含んだものであってもよい。

【0029】
以下に実施例を示すが、本発明のゲル化剤又は該ゲル化剤を用いたゲルは、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
【化5】
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100mlのナスフラスコにペルフルオロヘキシルアイオダイド(20.0g,0.0449mol)と3-ブテン-1-オール(3.882g,0.0538mol)、アセトニトリル(36.7ml)、水(24.6ml)を加え、撹拌しながら、炭酸水素ナトリウム(3.767g,0.0449mol)、ハイドロサルファイトナトリウム(7.809g,0.0449mol)の順に加え、遮光して一晩撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、水層を除去した。有機層を水で2回と食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを瀘別した後、瀘液を減圧下、濃縮し残渣をクロロホルム溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、ヨード-4-ペルフルオロヘキシルブタン-1-オール(1)を得た。

収量:21g(91%)
IR(KBr):1201.7,1147.7cm-1(C-F),2935.7cm-1(C-H),3448.7cm-1(-OH)

【実施例】
【0031】
【化6】
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200mlのナスフラスコに3-ヨード-4-ペルフルオロヘキシル-ブタン-1-オール(10g,0.0193mol)と乾燥ジエチルエーテル(100ml)溶液を入れ、氷冷しながら、LiAlH(1.17g,0.0386mol)を少量ずつ加えた。LiAlHを加え終わった後、室温にて一晩撹拌した。反応終了後、塩化アンモニウム水溶液を加え、水層を除去し、有機層を水で2回、洗浄し、さらに食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムを瀘別し、得られた有機層を減圧下にて濃縮し、4-ペルフルオロヘキシル-ブタン-1-オール(2)を得た。

収量:3.65g (48.3%)
IR(KBr):1201.7,1147.7cm-1(C-F),2935.7cm-1(C-H),3448.7cm-1(-OH)

H NMR(270MHz,CDCl)δ=1.61-1.79(5H,m),2.00-2.21(2H,m),3.70(2H,m)ppm

【実施例】
【0032】
【化7】
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丸底三口フラスコに4-[2-(ペルフルオロヘキシル)エチルチオ]フェノール(3.02g,0.0042mol)とトリフェニルホスフィン(1.67g,0.0042mol)を入れ、氷水で冷やしながら乾燥テトラヒドロフラン(60ml)に溶かし、窒素雰囲気下、4-ペルフルオロヘキシル-ブタン-1-オール(2.48g,0.0042mol)、ジエチルアゾジカルボキシレート(1.10g,0.0042mol)の順に滴下した。滴下終了後、徐々に室温に戻し、一晩撹拌した。反応終了後、溶液を100mlのナスフラスコに移し、エバポレーターとアスピレーターで濃縮した。残渣をエタノールに加熱溶解し、放冷した後、析出した結晶を吸引濾過で瀘別した。減圧下、瀘液を濃縮し得られた残渣をクロロホルム溶媒によるカラムクロマトグラフィーにより精製し、1-(4-ペルフルオロヘキシル-ブトキシ)-4-[2-(ペルフルオロヘキシル)エチルチオ]ベンゼン)(3)を得た。

収量:2.79g(52%)
融点:53.9-54.9℃ 白色粉末

IR(KBr):1151.5,1209.4cm-1(C-F),1650.0,1750.0cm-1(C-H)2864.3cm-1(-O-) (図2参照)

H NMR(270MHz,CDCl):δ=1.75-1.90(4H,m),2.16-2.36(4H,m),2.96-3.02(2H,m),4.00(2H,t,J=6.5Hz),6.85(2H,d,J=8.9Hz),7.37(2H,d,J=8.6Hz)ppm (図3参照)

【実施例】
【0033】
【化8】
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100mlのナスフラスコに化合物(3)(1.00g,0.00182mol)と酢酸(25ml)を入れ、35%過酸化水素水(0.345g,0.00355mol)を加え、80℃で2日間撹拌した。反応終了後、20%亜硫酸水素ナトリウムをナスフラスコに適量加え、過酸化水素水を還元除去した。さらに、水を加え、析出した固体を吸引濾過し、本発明のゲル化剤を得た。

収量:0.67g(64.5%)
融点:110.9—112.1℃ 白色粉末

この化合物のマススペクトルは、m/z=878であった。

IR(KBr):1151.5,1209.4cm-1(C-F),2864.3,2937.6cm-1(C-H),987.6cm-1(C-O),1091.7cm-1(S-O)(図4参照)

H NMR(270MHz,CDCl):δ=1.81-1.96(4H,m),2.16-2.28(2H,m),2.48-2.67(2H,m),3.27-3.33(2H,m),4.10(2H,t,J=5.9Hz),7.05(2H,d,J=8.9Hz),7.86(2H,d,J=8.9Hz)ppm.(図5参照)

(5)<最低ゲル化濃度の測定>
15mmφのサンプル管に本発明のゲル化剤を秤量し、これに有機溶媒を加え、加熱溶解した。室温(25℃)まで、放冷し、サンプル管を上下に逆にした。目視により液体が流れなければ、ゲルと判断した。(ここで総重量からゲル化剤の濃度を求めた。)ゲルになった試料には、さらに有機溶媒を少量加えた後、加熱しゾルの状態にした。室温まで放冷し、サンプル管を上下を逆にし、観察した。これを冷却後もゾル状態になるまで繰り返した。室温にて、液体が流れ出す直前の濃度を最低ゲル化濃度とした。結果を表1に示す。
<ゾル-ゲル転移温度の測定>
ゲルになった試料(濃度既知)を加熱し、ゾルになる温度を測定してゾル-ゲル転移温度を求めた。結果を図1に示す。


【実施例】
【0034】
【表1】
JP0005618287B2_000010t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4