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明細書 :シクロヘキサノンの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5822191号 (P5822191)
公開番号 特開2013-014535 (P2013-014535A)
登録日 平成27年10月16日(2015.10.16)
発行日 平成27年11月24日(2015.11.24)
公開日 平成25年1月24日(2013.1.24)
発明の名称または考案の名称 シクロヘキサノンの製造方法
国際特許分類 C07C  45/33        (2006.01)
C07C  49/303       (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 45/33
C07C 49/303
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2011-147917 (P2011-147917)
出願日 平成23年7月4日(2011.7.4)
審査請求日 平成26年6月20日(2014.6.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】山本 豪紀
【氏名】杉本 常実
個別代理人の代理人 【識別番号】100092820、【弁理士】、【氏名又は名称】伊丹 勝
【識別番号】100103274、【弁理士】、【氏名又は名称】千且 和也
審査官 【審査官】中島 芳人
参考文献・文献 特開平09-169680(JP,A)
特開2008-308469(JP,A)
特開平10-204013(JP,A)
特開2002-331242(JP,A)
特開2010-095506(JP,A)
特開平11-021264(JP,A)
特開平09-024592(JP,A)
特開2002-161056(JP,A)
CATALYSIS LETTERS,2009年,Vol.129, No.1-2,p.222-227,Scheme1, Table3
調査した分野 C07C 45/33
C07C 49/303
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
シクロヘキサンを酸素又は酸素含有ガスと接触させて、コバルト化合物のみを触媒として酸化させるシクロヘキサノンの製造方法であって、
前記酸化処理は、無溶媒で行い、
前記コバルト化合物が、硝酸コバルト、アセチルアセトンコバルト、塩化コバルト及び炭酸コバルト並びにそれらの水和物より選ばれる1以上であることを特徴とするシクロヘキサノンの製造方法。
【請求項2】
コバルト化合物が、硝酸コバルト六水和物であることを特徴とする請求項1記載のシクロヘキサノンの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロヘキサンをコバルト化合物を触媒として酸化することによりラクタム原料として有用なシクロヘキサノンを選択性良く製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロヘキサノンは、カプロラクタム、ナイロン、アジピン酸の製造原料、高沸点溶剤、剥離剤、金属等の洗浄剤、染料の安定剤など、様々な分野で用いられている。中でも特に、カプロラクタムの原料として有用であり、カプロラクタムの製造量のうち、およそ90%以上がシクロヘキサノンのオキシムを経由する方法によって製造されている。そして、シクロヘキサノンは、シクロヘキサンの酸化もしくはフェノールの水素化によって製造されており、シクロヘキサノン製造量の約80%がシクロヘキサン酸化法に基づいている。
【0003】
しかし、シクロヘキサノンの従来の製造方法は、その転化率が低いという欠点を有する。加えて、これらの反応からは様々なシクロヘキサンの酸化生成物の分解物が生成するので、生成物選択率が80%を超えることは難しい。
【0004】
例えば、特許文献1及び2には、極性プロトン溶剤及び極性非プロトン溶剤から選択される溶剤中において、反応媒体に溶解させた触媒の存在下、酸素又は酸素含有ガスにより、炭化水素、アルコール及び/又はケトンが液相で酸化しカルボン酸となることが記載されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平11-021264号公報
【特許文献2】特表2004-501887号公報
【特許文献3】特開平5-271143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2の記載の通り、シクロヘキサノンは、酸化反応条件下において、エステルやカルボン酸などの副生物を生成する。また、特許文献3に記載の通り、シクロヘキサンの分子状酸素による酸化により、シクロヘキサノンのみならずシクロヘキサノールが生成することも知られている。シクロヘキサノールが副生する場合には、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンを蒸留操作等で分離し、シクロヘキサノールを脱水素反応等によってシクロヘキサノンに変換する工程が必要となるため、シクロヘキサノン製造工程が煩雑となり、シクロヘキサノン製造コストが増大する。
このため、通常、工業的には3~4%と言う低い転化率で酸化反応を行い、できるだけ選択率を高める工夫をしなければならないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような問題を鑑みてなされたものであって、シクロヘキサンをコバルト触媒を用いて酸化させる際に、選択性良く高効率でシクロヘキサノンを製造することができるシクロヘキサノンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、通常、室温ではシクロヘキサンに溶解し難いコバルト化合物を触媒として用いて、酸化処理を無溶媒で行うと、予期に反し選択性良くシクロヘキサノンが製造できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、シクロヘキサンを酸素又は酸素含有ガスと接触させて、コバルト化合物を触媒として酸化させるシクロヘキサノンの製造方法であって、前記酸化処理は、無溶媒で行うことを特徴とするシクロヘキサノンの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、シクロヘキサンをコバルト触媒を用いて酸化させる際に、選択性良く高効率でシクロヘキサノンを製造することができるシクロヘキサノンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、触媒としてコバルト化合物の存在下に、シクロヘキサンを酸素又は酸素含有ガスと接触させることにより、酸化反応を行う。この酸化反応は、液相、気相のいずれでも行うことができるが、液相にて行うことがより好ましい。

【0012】
本発明に係るシクロヘキサノンの製造方法において、上記酸化反応は、無溶媒で行うことを特徴とする。無溶媒で行うことにより、シクロヘキサノールを副生することなく、高効率でシクロヘキサノンを製造できる。また、溶媒を蒸留等で分離除去するという煩雑な工程を省略することができる。

【0013】
本発明に係るシクロヘキサノンの製造方法において、酸素又は酸素含有ガスとしては、酸素ガス、空気、または酸素ガスもしくは空気を窒素、二酸化炭素、ヘリウム等の不活性ガスで希釈したものを用いることができる。シクロヘキサンと酸素又は酸素含有ガスとの接触は、例えば、シクロヘキサンおよびコバルト化合物を含む液を、酸素又は酸素含有ガスの雰囲気下に置くことにより行ってもよいし、この液中に酸素又は酸素含有ガスを吹き込むことにより行ってもよい。

【0014】
本発明に係るシクロヘキサノンの製造方法において、触媒として用いられるコバルト化合物は、硝酸コバルト、アセチルアセトンコバルト、塩化コバルト、過塩素酸コバルト、テトラフルオロホウ酸コバルト及び炭酸コバルト並びにそれらの水和物より選ばれる1以上であることが好ましく、中でも硝酸コバルト六水和物あるいはアセチルアセトンコバルトがより好ましい。

【0015】
上記触媒の量は、シクロヘキサン1モルに対して0.00001モル~10モルが好ましく、シクロヘキサン1モルに対して0.005モル~0.1モルが特に好ましい。触媒添加量が少ない程、反応効率が高いため好ましい。また、触媒添加量を減じても、シクロヘキサン転化率は充分に高く、シクロヘキサノン選択性が高い。

【0016】
本発明に係るシクロヘキサノンの製造方法において、反応温度が100℃以下の時には著しく反応が遅いため、100℃より高い反応温度が好ましく、110℃~180℃がより好ましい。

【0017】
反応圧力については、特に限定されないが、過度に低いと反応速度が低下するので、通常0.1MPa以上、好ましくは0.5MPa以上、特に2MPa以上が好ましい。また、反応圧力が過度に高い場合には、耐圧性を高めた特殊な反応装置が必要となることもあり、通常100MPa以下、好ましくは50MPa以下、特に30MPa以下が好ましい。

【0018】
本発明に係るシクロヘキサノンの製造方法によれば、高い選択性でシクロヘキサノンを製造することが可能であるが、反応終了後の反応混合物には、シクロヘキサノンのほかに、未反応の原料、副反応による生成物が含まれることもある。シクロヘキサノンを分離する方法としては、特に限定されず、蒸留、抽出など公知の方法が挙げられる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
(実験例1)
まず、ステンレス製オートクレーブ(耐圧硝子工業株式会社製、10ml)にシクロヘキサン(10mmol)、表1に示す種々のコバルト化合物(10mol%)を加え、酸素:窒素(21:79)混合ガスを10MPaに充填した後に系を閉じた。135℃で24時間加熱撹拌した。その後、反応混合物をサンプリングし、H-NMRの測定を行い、その積分比から算出した生成物の組成比を表1に示す。また、比較として、触媒を用いなかった場合についても同様にして、結果を表1に示す。
【実施例】
【0021】
【表1】
JP0005822191B2_000002t.gif
【実施例】
【0022】
以上より、硝酸コバルト六水和物、塩化コバルト、及びアセチルアセトンコバルトを触媒に用いたときに、反応混合物中のシクロヘキサノンの組成比が比較的高くなることが明らかとなった。また、シクロヘキサノン選択性は、いずれも100%と非常に高かった。
【実施例】
【0023】
(実験例2)
次に、反応に用いられる触媒量を検討した。触媒量の検討を行うにあたって、反応効率を表す指標としてEfを定義する。一般的には、そのような指標にはターンオーバー数(turnover number、TON)が用いられるが、本実験では収率をもとに算出していないために、TONに相当する指標として下記式(1)で示されるEfを使用する。
【実施例】
【0024】
【数1】
JP0005822191B2_000003t.gif
【実施例】
【0025】
硝酸コバルト六水和物あるいはアセチルアセトンコバルトを使用し、触媒量の検討を行った。具体的には、シクロヘキサンを10mmolから20mmolに変更し、触媒量を表2に示すようにそれぞれ変化させた以外は、実験例1と同様に実験を行った。結果を表2に示す。
【実施例】
【0026】
【表2】
JP0005822191B2_000004t.gif
【実施例】
【0027】
(実験例3)
次に、反応時間の検討を行った。具体的には、コバルト化合物として硝酸コバルト六水和物を用い、シクロヘキサンを10mmolから20mmolに変更し、触媒量、反応時間を表3に示すようにそれぞれ変化させた以外は、実験例1と同様に実験を行った。結果を表3に示す。本検討は、反応容器からのサンプル抜き取りによるものではなく、それぞれの反応時間で反応を停止し、分析した結果である。
【実施例】
【0028】
【表3】
JP0005822191B2_000005t.gif
【実施例】
【0029】
(実験例4)
次に、反応圧力、反応温度の検討を行った。具体的には、コバルト化合物として硝酸コバルト六水和物2.5モル%を用い、反応圧力、反応温度を表4に示すようにそれぞれ変化させた以外は、実験例2と同様に実験を行った。結果を表4に示す。なお、反応温度115℃の場合には、反応時間を48時間とした。本検討は、実験例1と同様な方法により分析した結果である。
【実施例】
【0030】
【表4】
JP0005822191B2_000006t.gif