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明細書 :路面状態判別報知装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-113410 (P2014-113410A)
公開日 平成26年6月26日(2014.6.26)
発明の名称または考案の名称 路面状態判別報知装置
国際特許分類 A61H   3/06        (2006.01)
A61H   3/02        (2006.01)
A61H   3/04        (2006.01)
A61G   5/00        (2006.01)
FI A61H 3/06 G
A61H 3/06 A
A61H 3/02 Z
A61H 3/04
A61G 5/00 510
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2012-271538 (P2012-271538)
出願日 平成24年12月12日(2012.12.12)
発明者または考案者 【氏名】中島 翔太
【氏名】田中 幹也
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001601、【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
審査請求 未請求
要約 【課題】高齢者や視覚障害者が車椅子で走行したり、杖を持って歩行したりするときに、事前に路面の表面が滑らかか粗いかといった路面の状態を報知して、車椅子での走行や杖を持っての歩行を支援できるようにすること。
【解決手段】車椅子又は杖を持つ人の前方の路面に向けて超音波を発射する発信器と、反射してくる超音波を受信する受信器と、受信した超音波の強度を測定する測定器からなる超音波センサと、該超音波センサから得られる超音波の強度に基づいて路面状態を判別する路面判別手段と、該路面判別手段の判別結果に応じて路面状態又は路面状態の変化を報知する路面状態報知手段を備え、判別した路面状態(路面の表面が滑らかか粗いか水たまりか)に応じた報知音やメッセージ等を出力する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
車椅子又は杖を持つ人の前方の路面に向けて超音波を発射する発信器と、反射してくる超音波を受信する受信器と、受信した超音波の強度を測定する測定器からなる超音波センサと、該超音波センサから得られる超音波の強度に基づいて路面状態を判別する路面判別手段と、該路面判別手段の判別結果に応じて路面状態又は路面状態の変化を報知する路面状態報知手段を備える路面状態判別報知装置。
【請求項2】
前記路面判別手段は、前記発信器から超音波を発射した後の所定期間において前記受信器で測定された強度を記憶し、記憶した強度の最大値、平均値又は波形に基づいて、路面状態を判別することを特徴とする請求項1記載の路面状態判別報知装置。
【請求項3】
前記路面判別手段は、前記発信器から超音波を発射するたびに、その発射後の所定期間において前記受信器で測定された強度の最大値、平均値又は波形を記憶し、記憶した強度の最大値、平均値又は波形が変化したことに基づいて、路面状態が変化したと判別することを特徴とする請求項1又は2記載の路面状態判別報知装置。
【請求項4】
前記超音波センサ、前記路面判別手段及び前記路面状態報知手段が一つの筐体に内蔵されており、該筐体が車椅子又は杖に着脱可能となっていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載されている路面状態判別報知装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子や杖等に搭載した超音波センサを用いて路面からの反射波を取得し、その反射波強度に基づいて路面状態を判別し、その判別結果に応じて車椅子に乗っている人又は杖を持っている人に前方の路面状態や路面状態の変化を報知しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
超音波センサは、超音波を検出媒体とした非接触検出センサである。
従来、送信器から超音波を空中に発信し、対象物で反射した超音波を受信器で検知することで、対象物の存在判別や対象物までの距離の測定等に用いられている。通常、超音波センサから得られる情報は、測定範囲内の対象物の有無、もしくは対象物との距離情報のみである。
【0003】
超音波センサを用いた高齢者や視覚障害者の歩行支援に関しては、前方の障害物を検知し、高齢者や視覚障害者に知らせて歩行を支援する研究などがなされている。
しかし、前方の障害物を検知するだけでは、歩行者が実際に歩く路面の危険性等を検知して知らせることができないなどの問題があった。
【0004】
また、超音波センサを用いて素材を判別しようとする研究も行われている。そのひとつである反射波の形によって素材を判別する研究は、波形を2次元画像として捉え、基準パターンとのパターンマッチングを行うことで素材の判別を行おうとするものである。
しかし、この手法では対象物を判別可能な距離がほぼ固定であることや、位相のズレによって判別が不可能になるなどの問題点があるため、応用範囲が非常に限られる。
【0005】
特許文献1には、視覚障害者用杖に電磁波や超音波を利用して路面状態を検出する路面状態検出手段を装着し、その路面状態検出手段により検出された路面状態を振動により報知することが開示されている。
しかし、その路面状態検出手段(図1~3に示されるセンサ部10)は、杖2の下方先端方向に超音波を出力する送信素子22、反射してくる超音波を電気信号に変換する受信素子24及び杖2の下方先端側からの入射光を受光してその色成分を判別する色判別センサ26を備え、杖2の下方先端付近の路面状態しか検知できないものである。
また、送信素子22及び受信素子24は超音波によってセンサ部10から杖2の下方先端付近の路面までの距離を計測し、その変化量に基づいて路面に段差があるか否かを判断するものであり、色判別センサ26は杖2の下方先端付近の路面色を認識し、路面に敷設された歩行路案内用の表示物を検出するものであって、いずれも路面の表面が滑らかか粗いかといった状態を検出し報知するものではない。
【0006】
特許文献2には、超音波センサ10と路面判別部11とから構成される路面状況設定部3により、路面が舗装道路であるのか、砂利道であるのか等の判別を行うことが開示されている(段落0019等)。
しかし、超音波センサ10は路面の凹凸、すなわち、超音波センサ10から路面までの距離を検知するものであり、路面判別部11は、路面の凹凸情報にもとづいて、路面の状態を判別するものである。
【0007】
特許文献3には、超音波受信検波装置6により反射波強度を検出し、各路面種別対応しきい値と一定の判別時間毎に検出された反射波強度との比較により路面種別を判別することが開示されている(第4欄32~38行等)。
しかし、この装置はしきい値の設定や再設定を頻繁に行うために、車速センサ9、温度センサ10、降雨センサ11等を備えており、制御が複雑であるとともに非常に高価なものとなる。
【0008】
さらに、特許文献2、3に記載されている発明は車載用の装置であって、路面状態を判別してはいるものの、自動車の走行ノイズを除去したり、2輪駆動から4輪駆動への切換、サスペンションの減衰力調整、車高調整等を自動的に行ったりすることを目的とするものである。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開平6-343669号公報
【特許文献2】特開平6-067690号公報
【特許文献3】実公平6-008488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
高齢者や視覚障害者が車椅子で走行したり、杖を持って歩行したりするときに、事前に路面の表面が滑らかか粗いかといった路面の状態を報知して、車椅子での走行や杖を持っての歩行を支援できるようにすることが、本発明の解決しようとする主な課題である。
また、そのための路面状態判別報知装置を一つの筐体に納め、既存の車椅子や杖に取り付けて使えるようにすることも、本発明の解決しようとする課題の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための請求項1に係る発明は、車椅子又は杖を持つ人の前方の路面に向けて超音波を発射する発信器と、反射してくる超音波を受信する受信器と、受信した超音波の強度を測定する測定器からなる超音波センサと、該超音波センサから得られる超音波の強度に基づいて路面状態を判別する路面判別手段と、該路面判別手段の判別結果に応じて路面状態又は路面状態の変化を報知する路面状態報知手段を備える路面状態判別報知装置である。
【0012】
上記の課題を解決するための請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の路面判別手段が、前記発信器から超音波を発射した後の所定期間において前記受信器で測定された強度を記憶し、記憶した強度の最大値、平均値又は波形に基づいて、路面状態を判別することを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決するための請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明の路面判別手段が、前記発信器から超音波を発射するたびに、その発射後の所定期間において前記受信器で測定された強度の最大値、平均値又は波形を記憶し、記憶した強度の最大値、平均値又は波形が変化したことに基づいて、路面状態が変化したと判別することを特徴とする。
【0014】
上記の課題を解決するための請求項4に係る発明は、請求項1~3のいずれかに係る発明の路面状態判別報知装置において、前記超音波センサ、前記路面判別手段及び前記路面状態報知手段が一つの筐体に内蔵されており、該筐体が車椅子又は杖に着脱可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び2に係る発明の路面状態判別報知装置によれば、車椅子で走行したり、杖を持って歩行したりするときに、事前に路面の表面が滑らかか粗いかといった路面の状態を報知するので、特に目の良く見えない高齢者や視覚障害者が安心して行動することができるという効果がある。
【0016】
請求項3に係る発明の路面状態判別報知装置によれば、請求項1及び2に係る発明による効果に加え、車椅子で走行したり、杖を持って歩行したりするときに、事前に路面の状態が変化することを報知するので、特に目の良く見えない高齢者や視覚障害者に対して、その報知の直後には走行や歩行に注意するよう促すことができるという効果がある。
【0017】
請求項4に係る発明の路面状態判別報知装置は、超音波センサ、路面判別手段及び路面状態報知手段が一つの筐体に内蔵されており、その筐体が車椅子又は杖に着脱可能となっているので、乗り慣れている車椅子や使い慣れている杖に装着して使用できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の路面状態判別報知装置を装着した車椅子を示す図。
【図2】本発明の路面状態判別報知装置を装着した杖の使用状態を示す図。
【図3】実験装置の概略を示す図。
【図4】実験対象面がアスファルトである場合の測定結果を示すグラフ。
【図5】実験対象面が砂利である場合の測定結果を示すグラフ。
【図6】実験対象面が芝生である場合の測定結果を示すグラフ。
【図7】実験対象面が砂である場合の測定結果を示すグラフ。
【図8】実験対象面が泥である場合の測定結果を示すグラフ。
【図9】実験対象面が木材である場合の測定結果を示すグラフ。
【図10】実験対象面が水たまりである場合の測定結果を示すグラフ。
【図11】各実験対象面における反射波強度の最大値の平均と標準偏差を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、車椅子又は杖を持つ人の前方の路面に向けて超音波を発射する発信器と、反射してくる超音波を受信する受信器と、受信した超音波の強度を測定する測定器からなる超音波センサと、該超音波センサから得られる超音波の強度に基づいて路面状態を判別する路面判別手段と、該路面判別手段の判別結果に応じて路面状態又は路面状態の変化を報知する路面状態報知手段を備える路面状態判別報知装置1であり、その路面状態判別報知装置1を車椅子2に装備した場合は図1に示すようなものとなり、杖4に装備した場合は図2に示すようなものとなる。
いずれの場合も、その前方の路面3に向けて超音波を発射し、反射してくる超音波を受信して強度を測定し、その強度に基づいて路面状態を判別し、車椅子に乗っている人、車椅子を押している人又は杖を持って歩いている人に路面状態又は路面状態の変化を報知するようになっている。

【0020】
本発明の路面状態判別報知装置1においては、路面で反射する超音波の強度に基づいて路面状態を判別しているので、初めに反射してくる超音波の強度と路面状態との関係を知るための実験装置及びその実験結果について詳細に説明する。

【0021】
実験対象面に向けて超音波を発射し、反射してくる超音波を受信し、その強度と路面状態との関係を明らかにするための実験装置の概略は、図3に示すとおりである。
すなわち、発信器5から実験対象面8に向けて超音波を発射し、実験対象面8から反射してくる超音波を受信器6で受信し、測定器7で受信した超音波の強度を測定し記録するものである。
超音波の測定には送受信独立型超音波センサ(中心周波数:40k±1kHz)を用いた。測定距離(発信器5及び受信器6と実験対象面8との距離)は、車椅子や杖への搭載を想定し、50cm及び70cmとした。実験対象面8の材質は、アスファルト、砂利、芝生、砂、泥、木材及び水たまりの計7種類を用いた。水たまり以外の材質は、濡れていない乾いた状態のものを用い、実験時の気温は29℃であった。

【0022】
実験の手順は、各材質に対し、それぞれ100回の測定を行い、超音波を発射してから経過した時間を横軸、反射波強度を縦軸として反射波強度の波形を得るとともに、各回の測定における反射波強度の最大値の平均値及び標準偏差を求めることによって、各材質における反射波強度の波形や最大値の平均値及び標準偏差の違いを検証した。
各材質における反射波強度の波形の代表的なものを図4~図10に示し、反射波強度の最大値の平均値及び標準偏差を図11に示した。

【0023】
各材質における反射波強度の波形(図4~図10)及び反射波強度の最大値の平均値(図11)から分かるように、材質によって反射波強度が違うことが明確である。
また、図11に基づいて、材質を2.0V(図中のVth)を境に“反射波強度が強いもの”と“反射波強度が弱いもの”に分類すれば、前者にはアスファルト、木材、水たまりが属し、後者には砂利、芝生、砂、泥が属する。分類後の材質をみると、反射波強度が強い材質は表面が滑らかで、反射波強度が弱い材質は表面が粗い特徴があることが分かる。
車椅子の走行を想定した場合、水たまりを除けば単純に“反射波強度が強いもの=安全な材質”と判断することが出来る。この結果をもとに危険検知システムを構成すれば、およそ想定される危険は避けることができる。
ただし、ここで問題となるのは水たまりの測定結果である。図11より、水たまりの最大電圧はアスファルトと近い値となっている。しかし、図10の水たまりの波形を見ると、他の波形と違い反射波が複数観測されていることが分かる。これは、水たまりの波による反射時間のずれによるものだと推定される。そして、波形の違いを利用すれば、安全でない水たまりの判別も可能である。

【0024】
測定距離を50cmから70cmに変えた場合の測定値の変化については、図3~図10に示されるとおり、値全体の減衰は見られるものの各材質の波形の特徴はほぼ同じであることが分かる。また、図11より、その値の減衰は危険検知のための判別には影響が少ないことが分かる。
以上のことから、測定距離が変わったとしても、測定距離の変化がそれほど大きくない場合には路面状態の判別に格別の支障をきたすことはなく、測定距離の変化が大きい場合であっても測定距離は超音波を発射してから反射波が受信されるまでの時間を用いて計測することができるので、計測された距離を考慮してしきい値を計算しておくことにより、路面状態の判別を行うことが可能である。
なお、超音波の入射角度によっても反射波強度は変化するが、入射角度の変化がそれほど大きくない場合には路面状態の判別に格別の支障をきたすことはなく、入射角度の変化が大きい場合であっても角度センサを用いて入射角度を測定できるようにすれば、測定された入射角度に応じてしきい値を計算することにより、路面状態の判別を行うことが可能である。
本発明の路面判別手段では、この材質による反射波強度や反射波波形の違いを利用して路面状態の判別を行い、また、継続的に反射波強度を測定し、その強度や波形に変化が生じたことを判定して、路面状態が変化したことを判別する。
【実施例】
【0025】
図1に示す面状態判別報知装置1を車椅子2に装備した場合の実施例1について説明する。
路面状態判別報知装置1は、超音波センサ、路面判別手段、路面状態報知手段及びバッテリーが一つの筐体に内蔵されたものであり、その筐体は車椅子2の左又は右のアームレスト前方に着脱可能とするためのベルト、挟持体又は取り付け金具等の固定部材を有している。
筐体の形状はどのようなものでも良いが、筐体の下面又は後面に、アームレスト前方の上面又は前面を覆うことのできるコの字状の凹部を設け、その凹部をアームレスト前方の上面又は前面を覆うように配置した時、超音波センサの発信器からの超音波が路面に45度から85度の所定角度で入射するようにしておけば、取り付け角度の調整を容易かつ確実に行うことができる。
【実施例】
【0026】
筐体をアームレスト前方に固定した後、路面状態判別報知装置1を使用する際には、車椅子2の前方が平面であることを確認してからスイッチを投入する。そして、路面判別手段は超音波を発射してから反射波を受信するまでの時間(例えば、超音波発射から反射波強度が0.2Vを初めて超えた時までの経過時間)に基づいて、超音波センサから超音波入射地点までの距離を計測して、“反射波強度が強いもの”と“反射波強度が弱いもの”に分類するためのしきい値(図11のVth)を計算する。例えば、計測距離が50cmでVthが2V、70cmでVthが1.5Vとなるような計算式を作成しておく。
その後は1秒間に2回から50回程度の間隔で、発信器から間歇的に超音波を発射し、受信器で反射してくる超音波を所定期間(例えば、超音波発射後20msec経過時まで)受信し、測定器で受信した超音波の強度を測定し、路面判別手段で超音波強度の最大値がスイッチ投入直後に計算したしきい値より大きいか否かを比較する。最大値の抽出は、1~100μsec程度の周期でサンプリングされた超音波強度の時系列データを処理することで行うが、サンプリングされた順に順次それまでに記憶されている最大値と比較し、比較したサンプリング値の方が大きければ、そのサンプリング値を最大値に置き換えて記憶し、それまでに記憶されている最大値の方が大きければ、そのまま次のサンプリング値との比較を行っていって、最終的に記憶されている値を最大値として抽出すれば良い。
そして、最大値としきい値を比較した結果、最大値がしきい値より大きい場合には格別の報知を行わないか、路面状態報知手段から小さく短い音を発音し、車椅子前方の路面の表面が滑らかであることを報知する。逆にその比較結果が小さい場合には路面状態報知手段から大きく短い音を発音して車椅子前方の路面の表面が粗いことを報知する。
なお、最大値として抽出された値が、所定値(例えば0.3V)未満であるときや異常に高い値(例えば7.0V以上)であるときには検出エラーとし、検出エラーが連続する場合には何らかの異常(装置の故障又は車椅子や杖を持つ人の転倒、杖の落下等)があると判断して、エラー報知を行ったり救助を求める音を発生させたりすると良い。
【実施例】
【0027】
路面判別手段では、超音波強度の極大値が1回だけ発生しているか、2回発生しているかについて判定を行っても良い。極大値の抽出は最大値を抽出する処理の過程で、所定値(例えば0.3V)以上の値が記憶された後、その所定値未満の値(例えば0.2V)以下にサンプリング値が下がった時点で、記憶されている値を第1の最大値候補として抽出するとともに、記憶されている値は初期値に戻す。その後最大値を抽出する処理を再開して最終的に記憶されている値を第2の最大値候補として抽出する。
そして、第1、第2の最大値候補がともに所定値(例えば0.3V)以上の値であれば、極大値が2回発生していると判定し、いずれか一つだけが所定値以上の値であれば、極大値が1回だけ発生していると判定する。
その結果、極大値が2回発生している場合には、超音波強度の最大値がしきい値より大きいか否かにかかわらず、路面状態報知手段から大きく長い音を発音して車椅子前方の路面に水たまりがあることを報知する。
なお、この判定を行う場合には、抽出された第1、第2の最大値候補のうち高い方の値を最大値とすることができるので、最大値の抽出処理を単独で行う必要はない。
また、報知音は単純な音に限ることはなく、それぞれの路面状態に対応した音程、音色、メロディー又はメッセージを発音しても良い。
【実施例】
【0028】
次に、図2に示す面状態判別報知装置1を杖4に装備した場合の実施例2について説明する。
実施例1と同様に、路面状態判別報知装置1は、超音波センサ、路面判別手段、路面状態報知手段及びバッテリーが一つの筐体に内蔵されたものであり、その筐体は杖4の把持部の下に着脱可能とするためのベルト、挟持体又は取り付け金具等の固定部材を有している。
筐体の形状はどのようなものでも良いが、杖4のシャフト部を挿入できるU字状の凹部を設け、その凹部を、杖4を持つ人の前方となる方向から挿入した時、超音波センサの発信器からの超音波が路面に45度から85度の所定角度で入射するようにしておけば、取り付け角度の調整を容易かつ確実に行うことができる。
【実施例】
【0029】
筐体を杖4の把持部の下に固定した後、路面状態判別報知装置1を使用する際にはスイッチを投入する。そして、1秒間に2回から50回程度の間隔で、発信器から間歇的に超音波を発射し、受信器で反射してくる超音波を所定期間受信する。
路面判別手段は、超音波を発射してから反射波を受信するまでの時間に基づいて、超音波センサから超音波入射地点までの距離をまず計測し、“反射波強度が強いもの”と“反射波強度が弱いもの”に分類するためのしきい値(図11のVth)を計算する。実施例2においては、超音波を発射する時の杖の角度がまちまちで、超音波センサから超音波入射位置までの距離が毎回変化するため、超音波を発射するたびに超音波センサから超音波入射位置までの距離を計測して、しきい値を計算する必要がある。
なお、杖の角度が変化すると超音波の入射角度も変化するが、杖の場合には角度の変化はそれほど大きくないため、実施例2においては杖の角度の変化を考慮せずにしきい値の計算を行っている。
しきい値を計算した後の、路面判別手段における超音波強度の最大値の抽出、その最大値と計算したしきい値との比較、その比較結果に応じて路面状態報知手段から前方の路面の表面が滑らかであるか粗いかについての報知については、実施例1と同様である。
【実施例】
【0030】
また、路面判別手段で、超音波強度の極大値が1回だけ発生しているか、2回発生しているかについて判定を行い、極大値が2回発生している場合には、前方の路面に水たまりがあることを報知するようにしても良い点や、報知音は単純な音に限ることはなく、それぞれの路面状態に対応した音程、音色又はメロディーを発音しても良い点も、実施例1と同様である。
【実施例】
【0031】
実施例1及び2の変形例を列記する。
(1)実施例1においては、車椅子に路面状態判別報知装置1を取り付けて使用したが、手押し車型の杖に装着しても同様に使用することが可能である。
(2)実施例1の構成に加えて、超音波センサ、路面判別手段及び路面状態報知手段を内蔵する筐体に水準器を設け、その水準器を水平にセットした時、筐体の取り付け状態が最適となるようにしておけば、路面状態を正確に判別できる。
(3)実施例1においては、路面が平面の場合には超音波センサから超音波入射位置までの距離がほとんど変化しないので、超音波を発射した時から反射波を受信するまでの時間はほぼ一定となる。
したがって、その時間を計測しておき計測結果に変化が認められた場合には、車椅子前方の路面が平面ではないこと、例えば、段差、障害物、突起又はくぼみ等が存在することを検知できる。
そのため、車椅子前方の路面状態又は路面状態の変化を報知するだけでなく、車椅子前方の路面が平面ではないことも報知することができる。
なお、車椅子前方の路面が平面ではないことを報知する場合、反射波強度には変化が生じることが多いので、路面状態又は路面状態の変化については報知せず、路面状態又は路面状態の変化を報知する際の報知音とは異なる音を発音するようにした方が良い。
(4)実施例2においては、超音波を発射する時の杖の角度がまちまちで、超音波センサから超音波入射位置までの距離が毎回変化するため、路面は平面であると仮定した上で、超音波を発射するたびに超音波センサから超音波入射位置までの距離を計測して、しきい値を計算している。
しかし、超音波センサの杖に対する取付角度が小さい場合には、杖が路面に対して垂直な場合と路面に対して傾いた場合で、超音波センサから超音波入射位置までの距離に大きな差は生じない。
例えば、超音波センサの杖に対する取付角度を15度、取付高さを1mとしたとき、杖が路面に対して垂直な場合は1.03m、前方に30度傾いた場合は0.90m、後方に30度傾いた場合は1.22mとなり、最大32cmの差しか生じない。
そのため、スイッチ投入時又は事前に計算したしきい値をそのまま用いて、前方の路面状態又は路面状態の変化を判別することも可能である。
(5)実施例2においては、超音波を発射する時の杖の角度がまちまちで、超音波センサから超音波入射位置までの距離が毎回変化するため、路面は平面であると仮定した上で、超音波を発射するたびに超音波センサから超音波入射位置までの距離を計測して、しきい値を計算している。
しかし、路面状態判別報知装置に姿勢検知装置を追加し、杖4が路面に対してほぼ垂直になっている時だけに発信器から超音波を発射できるようにすれば、路面が平面である場合には、超音波を発射した時から反射波を受信するまでの時間はほぼ一定となる。そうすると、車椅子の場合と同様に前方の路面が平面ではないことも検知でき、前方の路面状態又は路面状態の変化を報知するだけでなく、前方の路面が平面ではないことも報知することができる。
その場合、路面状態判別報知装置1を使用する際には、杖4を路面に対して垂直に立て、杖4を持つ人の前方が平面であることを確認してからスイッチを投入する。その後は、車椅子の場合と同様スイッチ投入時のみに、路面判別手段は超音波センサから超音波入射地点までの距離を計測してしきい値を計算し、前方の路面が平面ではないことの検知も、上記(3)と同様に行うことができる。
姿勢検知装置としては、杖4の先端部に路面の水平に対する傾きを検知する傾斜計、路面状態判別報知装置1に超音波センサの水平に対する傾きを検知する傾斜計を設け、両傾斜計の検知した傾斜角度の差が超音波センサの杖4に対する取付角度と一致した時点を杖4が路面に対して垂直になっている状態と判定するものが一例である。
(6)実施例1及び上記(5)においては、路面判別手段は、スイッチを投入した時、超音波を発射してから、反射波を受信するまでの時間に基づいて、超音波センサから超音波入射地点までの距離を計測し、“反射波強度が強いもの”と“反射波強度が弱いもの”に分類するためのしきい値を計算したが、路面判別手段で距離を計測するのに代えて、筐体の設置高さ(車椅子の場合アームレストの路面からの高さ、杖の場合筐体の設置位置から下方先端までの長さ)を使用者が事前に入力又は選択することでその距離を求め、しきい値を計算するようにしても良い。
(7)実施例2においては、路面状態判別報知装置1を杖4に装備したが、杖4を持つ人の頭に装着しても良い。その場合筐体の背面は額にマッチする形状とし、ベルトやバンドで頭に固定できるようにすると良い。また、ヘッドランプに内装する形態としても良い。頭に装着できるようにした場合には、目の良く見えない人だけではなく、暗がりで行動する人に対しても、路面状態、路面状態の変化又は障害物の有無を報知できるので、適用の幅が広がる。
(8)実施例1及び2においては、反射波強度の最大値をしきい値と比較して路面の表面が滑らかであるか粗いかを判定しているが、反射波強度の平均値や反射波強度波形の面積と適宜のしきい値とを比較して、路面の表面が滑らかであるか粗いかを判定したり、複数のパラメータの比較結果を総合して、路面の材質について判定したりすることも可能である。
(9)実施例1及び2においては、原則として前方の路面の表面が滑らかであるか粗いかについて継続的に報知しているが、前方の路面の状態が変化すると判定した時にだけ、報知する態様としても良い。例えば、前方の路面の状態が滑らかから粗い又は水たまりに変化すると判定した時、その後5秒間だけ注意を促すメッセージを出力し、逆に、前方の路面の状態が粗い又は水たまりから滑らかに変化すると判定した時、その後5秒間だけもう少しの辛抱であることを告げるメッセージを出力といった態様が考えられる。
(10)実施例1及び2においては、車椅子や杖の前方の路面状態又は路面状態の変化を音で報知しているが、音に代えて又は音に加えて、ランプの点灯、点滅、体表面に対する振動、あるいは体表面の複数箇所を押圧することによって報知しても良い。
(11)実施例1及び2においては、路面状態判別報知装置の電源としてバッテリーを用いているが、太陽電池や車椅子が動くと発電する発電機等を電源としても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 路面状態判別報知装置
2 車椅子
3 路面
4 杖
5 発信器
6 受信器
7 測定器
8 実験対象面
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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