TOP > 国内特許検索 > 信号検出装置及び方法 > 明細書

明細書 :信号検出装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-156176 (P2017-156176A)
公開日 平成29年9月7日(2017.9.7)
発明の名称または考案の名称 信号検出装置及び方法
国際特許分類 G01M  11/00        (2006.01)
FI G01M 11/00 T
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2016-038306 (P2016-038306)
出願日 平成28年2月29日(2016.2.29)
発明者または考案者 【氏名】瀬戸 啓介
【氏名】徳永 英司
【氏名】庭瀬 暁隆
出願人 【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100179833、【弁理士】、【氏名又は名称】松本 将尚
【識別番号】100192773、【弁理士】、【氏名又は名称】土屋 亮
審査請求 未請求
テーマコード 2G086
Fターム 2G086EE12
要約 【課題】試料の非線形性やヒステリシスの評価をリアルタイムで容易に行うことが可能な信号検出装置及び方法を提供する。
【解決手段】信号検出装置1は、予め規定された基準周期で試料SPに電場を印加する電場印加部10と、電場印加部10による電場の印加によって得られる受光信号S1が入力される入力端T11と出力端T21~T26とを有し、入力端T11に接続される出力端を、基準周期よりも短い周期で順次切り替えるデマルチプレクサ30と、デマルチプレクサ30出力端T21~T26の各々に対応して設けられ、基準周期でロックイン検出するロックインアンプ41~46とを備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
予め規定された基準周期で刺激が印加された試料から得られる信号が入力される入力端とn個(nは2以上の整数)の出力端とを有し、前記入力端に接続される前記出力端を、前記基準周期の2n分の1の周期で順次切り替える切替部と、
前記切替部の出力端の各々に対応して設けられ、前記基準周期で同期検波を行う同期検波部と、
前記同期検波部の各々に対応して設けられたローパスフィルタと、
を備える信号検出装置。
【請求項2】
予め規定された基準周期で刺激が印加された試料から得られる信号に対し、前記基準周期で同期検波を行う同期検波部と、
前記同期検波部から出力される信号が入力される入力端とn個(nは2以上の整数)の出力端とを有し、前記入力端に接続される前記出力端を、前記基準周期の2n分の1の周期で順次切り替える切替部と、
前記切替部の出力端の各々に対応して設けられたローパスフィルタと、
を備える信号検出装置。
【請求項3】
前記刺激は、前記基準周期の前半部分及び後半部分の少なくとも一方で前記試料に印加される、請求項1又は請求項2記載の信号検出装置。
【請求項4】
前記刺激は、前記基準周期の前半部分では、ノコギリ波又は三角波で表される刺激であり、前記基準周期の後半部分では、前記試料に印加されない、請求項3記載の信号検出装置。
【請求項5】
前記試料に印加された刺激と前記ローパスフィルタから出力される信号との関係を表示する表示部を備える、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の信号検出装置。
【請求項6】
予め規定された基準周期で試料に刺激を印加し、
前記刺激の印加によって前記試料から得られる信号を、入力端とn個(nは2以上の整数)の出力端とを有する切替部に入力して、前記基準周期の2n分の1の周期で前記n個の出力端から順次出力し、
前記出力端の各々から出力される信号を個別に同期検波し、
個別に同期検波された信号を個別にフィルタリングする、
信号検出方法。
【請求項7】
予め規定された基準周期で試料に刺激を印加し、
前記刺激の印加によって前記試料から得られる信号を同期検波し、
同期検波された信号を、入力端とn個(nは2以上の整数)の出力端とを有する切替部に入力して、前記基準周期の2n分の1の周期で前記n個の出力端から順次出力し、
前記出力端の各々から出力される信号を個別にフィルタリングする、
信号検出方法。
【請求項8】
前記基準周期の前半部分及び後半部分の少なくとも一方で前記試料に刺激を印加する、請求項6又は請求項7記載の信号検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、信号検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロックイン検出は、測定信号と参照信号とを乗算し、得られた信号の高周波数成分を除去することで特定の信号を検出する検出方法であり、背景ノイズに埋もれた微小信号を最も高感度に検出することができる検出方法であることが知られている。この検出方法を用いた装置であるロックインアンプは、種々の物性測定を高感度で行うために用いられており、例えば試料に外部から周期的な刺激を与え、その刺激に対して主に線形に相関した分光スペクトルを測定する変調分光法では必須の装置である。
【0003】
以下の特許文献1には、マルチチャンネルロックインアンプを用いた2次元分光法が開示されている。具体的に、以下の特許文献1には、外部から変調を加えた試料に広帯域プローブ光を照射し、広帯域プローブ光を分光して変調によって誘起された分光スペクトル変化をマルチチャンネルロックインアンプにより多チャンネル同時にロックイン検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第3568847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非線形光学素子や電子材料・素子・回路、ポリマーの応力に対する機械的応答、生体試料の応答等に関する研究開発においては、試料の非線形性やヒステリシスがしばしば重要になる。試料の非線形な応答は、与えられる刺激の大きさのべき乗で物理量が応答するものであり、周期的な刺激に対しては、その周波数の整数倍の応答として観測される。
【0006】
従来のロックインアンプでは、参照信号のモードを1F(基本周波数)から2F(基本周波数の2倍の周波数)に切り替えることで、2次の応答を観測することが可能であるが、更に高次の応答を観測するのは困難である。尚、高級なロックインアンプであれば、参照信号のモードを3F(基本周波数の3倍の周波数)、或いは4F(基本周波数の4倍の周波数)に切り替え可能なものも存在するが、コストの面で問題がある。試料の非線形性を正確に評価するには全ての次数の応答を観測する必要があるが、従来のロックインアンプを用いて全ての次数の応答を観測することは極めて困難である。
【0007】
ここで、電気化学の分野で多用される測定法として、電位を掃引して応答電流を測定するサイクリックボルタメントリーというものがある。このサイクリックボルタメントリーの測定結果は、横軸を掃引電位、縦軸を応答電流としてプロットしたサイクリックボルタモグラムとして表される。このサイクリックボルタモグラムを参照すれば、掃引電位と応答電流との相関を容易に把握することができる。ロックインアンプを用いて得られた測定結果(高次の応答を含む測定結果)を、サイクリックボルタモグラムと同様の方法で表すことができれば、試料の非線形性やヒステリシスの評価をリアルタイムで容易に行うことができると考えられる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、試料の非線形性やヒステリシスの評価をリアルタイムで容易に行うことが可能な信号検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1発明に係る信号検出装置は、予め規定された基準周期(T)で刺激が印加された試料(SP)から得られる信号が入力される入力端(T11)とn個(nは2以上の整数)の出力端(T21~T26)とを有し、前記入力端に接続される前記出力端を、前記基準周期の2n分の1の周期で順次切り替える切替部(30)と、前記切替部の出力端の各々に対応して設けられ、前記基準周期で同期検波を行う同期検波部(DT)と、前記同期検波部の各々に対応して設けられたローパスフィルタ(LP)と、を備える。
上記課題を解決するために、第2発明に係る信号検出装置は、予め規定された基準周期(T)で刺激が印加された試料(SP)から得られる信号に対し、前記基準周期で同期検波を行う同期検波部(DT)と、前記同期検波部から出力される信号が入力される入力端(T11)とn個(nは2以上の整数)の出力端(T21~T26)とを有し、前記入力端に接続される前記出力端を、前記基準周期の2n分の1の周期で順次切り替える切替部(30)と、前記切替部の出力端の各々に対応して設けられたローパスフィルタ(LP1~LP6)と、を備える。
また、第1,第2発明に係る信号検出装置は、前記刺激が、前記基準周期の前半部分(T1)及び後半部分(T2)の少なくとも一方で前記試料に印加される。
また、第1,第2発明に係る信号検出装置は、前記刺激が、前記基準周期の前半部分(T1)では、ノコギリ波又は三角波で表される刺激であり、前記基準周期の後半部分(T2)では、前記試料に印加されない。
また、第1,第2発明に係る信号検出装置は、前記試料に印加された刺激と前記ローパスフィルタから出力される信号との関係を表示する表示部(60)を備える。
第1発明に係る信号検出方法は、予め規定された基準周期(T)で試料(SP)に刺激を印加し(S11)、前記刺激の印加によって前記試料から得られる信号を、入力端(T11)とn個(nは2以上の整数)の出力端(T21~T26)とを有する切替部(30)に入力して、前記基準周期の2n分の1の周期で前記n個の出力端から順次出力し(S12)、前記出力端の各々から出力される信号を個別に同期検波し(S13)、個別に同期検波された信号を個別にフィルタリングする(S14)。
第2発明に係る信号検出方法は、予め規定された基準周期(T)で試料(SP)に刺激を印加し(S21)、前記刺激の印加によって前記試料から得られる信号を同期検波し(S22)、同期検波された信号を、入力端(T11)とn個(nは2以上の整数)の出力端(T21~T26)とを有する切替部(30)に入力して、前記基準周期の2n分の1の周期で前記n個の出力端から順次出力し(S23)、前記出力端の各々から出力される信号を個別にフィルタリングする(S24)。
また、第1,第2発明に係る信号検出方法は、前記基準周期の前半部分(T1)及び後半部分(T2)の少なくとも一方で前記試料に刺激を印加する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、予め規定された基準周期で試料に刺激を印加し、刺激の印加によって試料から得られる信号を基準周期の2n分の1の周期で分割し、分割された信号を個別に同期検波して個別にフィルタリングしている。或いは、予め規定された基準周期で試料に刺激を印加し、刺激の印加によって試料から得られる信号を同期検波し、同期検波された信号を基準周期の2n分の1の周期で分割し、分割された信号を個別にフィルタリングしている。このため、試料の非線形性やヒステリシスの評価をリアルタイムで容易に行うことが可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態による信号検出装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態において試料に印加される電場の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるロックインアンプの要部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態による信号検出方法の概要を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態において表示されるグラフを説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施形態による信号検出装置の要部構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2実施形態による信号検出方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による信号検出装置及び方法について詳細に説明する。

【0013】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による信号検出装置の要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の信号検出装置1は、電場印加部10(刺激印加部)、受光部20、デマルチプレクサ30(切替部)、ロックインアンプ群40、信号処理部50、及び表示部60を備えており、試料SPに対して電場(刺激)を印加して得られる信号を検出する装置である。

【0014】
本実施形態において、試料SPは、電気光学効果(電場の印加によって光学特性が変化する現象)が生ずる電気光学結晶であるとする。ここで、上記の電気光学効果には、1次の電気光学効果であるポッケルス効果(Pockels effect)、及び2次の電気光学効果であるカー効果(Kerr effect)が含まれるとする。つまり、本実施形態における試料SPは、非線形の電気光学効果を生ずる電気光学結晶であるとする。

【0015】
電場印加部10は、試料SPに近接配置された一対の電極11,12のうちの一方の電極11に接続されており、試料SPに対して刺激としての電場を印加する。尚、一対の電極11,12のうちの他方の電極12は、例えば接地されている。この電場印加部10としては、例えば任意の周波数と波形を持った交流電圧信号を生成することのできる機器であるファンクションジェネレータを用いることができる。

【0016】
図2は、本発明の第1実施形態において試料に印加される電場の一例を示す図である。電場印加部10は、試料SPに対して予め規定された基準周期Tで電場を印加する。このため、図2に示す通り、試料SPに印加される電場の変化を示す波形(以下、単に「電場の波形」という)は、基準周期Tを単位として繰り返されるものとなる。尚、基準周期Tは、試料SPの応答特性に応じて任意の周期に設定することが可能である。例えば、周波数(周期の逆数)に換算して、数[Hz]~数[MHz]に設定することが可能である。

【0017】
電場印加部10は、基準周期Tの各々において、前半部分T1(基準周期Tの前半周期)では大きさが直線状に増大する電場を試料SPに印加し、後半部分T2(基準周期Tの後半周期)では試料SPに対する電場の印加を停止する(電場の印加を行わない)。このため、図2に示す通り、試料SPに印加される電場の波形は、前半部分T1ではノコギリ波状になり、後半部分T2では零になる。

【0018】
ここで、基準周期Tの前半部分T1でノコギリ波状の電場を試料SPに印加し、後半部分T2で試料SPに対する電場の印加を行わないのは、サイクリックボルタメントリー(電位を掃引して応答電流を測定する測定法)と同様の手法による信号検出を行うためである。尚、このような信号検出の結果をサイクリックボルタモグラムと同様の方法で表示することにより、試料SPの非線形性やヒステリシスの評価をリアルタイムで容易に行うことが可能となる。

【0019】
また、電場印加部10は、上述した基準周期Tを有する参照信号R1を出力する。この参照信号R1は、例えば基準周期Tで変化する矩形波状の信号であっても良く、基準周期Tで変化する正弦波状の信号であっても良い。つまり、参照信号R1は、周期が基準周期Tであれば、その波形の形状は問わない。尚、電場印加部10から出力される参照信号R1は、デマルチプレクサ30及びロックインアンプ群40に出力される。

【0020】
受光部20は、例えばフォトダイオードやアバランシェフォトダイオード等の受光素子を備えており、試料SPを透過した透過光Lを受光して受光信号S1を出力する。試料SPを透過した透過光L、或いは透過光Lを受光して得られる受光信号S1が、前述した試料SPに電場を印加して得られる信号である。尚、試料SPには、不図示の光源から射出される光(例えば、波長が既知であって強度が一定の光)が照射されており、受光部20は、試料SPに照射された光のうち、試料SPを透過した透過光Lを受光可能な位置に配置されている。

【0021】
デマルチプレクサ30は、1つの入力端T11と複数の出力端T21~T26とを備えており、電場印加部10から出力される参照信号R1に基づいて、入力端T11に接続される出力端を順次切り替える。具体的に、デマルチプレクサ30は、入力端T11に接続される出力端を、基準周期Tの1/12の周期(デマルチプレクサ30に設けられた出力端の数「6」を2倍して得られる数「12」分の1の周期)で順次切り替える。つまり、デマルチプレクサ30は、上記の周期で、入力端T11に接続される出力端を、出力端T21→出力端T22→出力端T23→出力端T24→出力端T25→出力端T26→出力端T21→出力端T22…と順次切り替える。

【0022】
ロックインアンプ群40は、デマルチプレクサ30の出力端T21~T26の数と同数のロックインアンプ41~46からなる。ロックインアンプ41~46は、デマルチプレクサ30の出力端T21~T26にそれぞれ対応して設けられており、電場印加部10から出力される参照信号R1を用いて、デマルチプレクサ30の出力端T21~T26から出力される信号を個別にロックイン検波する。

【0023】
図3は、本発明の第1実施形態におけるロックインアンプの要部構成を示すブロック図である。尚、ロックインアンプ41~46は同様の構成であるため、ここではロックインアンプ41についてのみ説明し、他のロックインアンプ42~46の説明は省略する。図3に示す通り、ロックインアンプ41は、同期検波部DTとローパスフィルタLPとを備えており、電場印加部10から出力される参照信号R1を用いて、デマルチプレクサ30の出力端T21から出力される信号SDをロックイン検波する。

【0024】
同期検波部DTは、電場印加部10から出力される参照信号R1を用いて、デマルチプレクサ30の出力端T21から出力される信号SDを同期検波する。ローパスフィルタLPは、同期検波部DTから出力される信号に対して高周波成分を除去するフィルタリング処理を行う。尚、ローパスフィルタLPのカットオフ周波数は、除去が必要となる高周波成分に応じて適宜設定される。

【0025】
信号処理部50は、ロックインアンプ41~46の各々から出力される信号を用いてサイクリックボルタモグラムに相当するグラフを作成する処理を行う。このグラフは、試料SPに印加された電場とロックインアンプ41~46の各々から出力される信号との関係を示すグラフである。信号処理部50は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアによって実現することも、信号処理部50の機能を実現するプログラムをCPU(中央処理装置)が実行することによってソフトウェア的に実現することも可能である。表示部60は、例えば液晶表示装置等の表示装置を備えており、信号処理部50で作成されたグラフを表示する。

【0026】
尚、以上説明した電場印加部10、受光部20、デマルチプレクサ30、ロックインアンプ群40、信号処理部50、及び表示部60は、一体の装置に組み込まれていても良く、別対の装置に組み込まれていても良い。例えば、電場印加部10、受光部20、デマルチプレクサ30、及びロックインアンプ群40が1つの装置に組み込まれ、信号処理部50及び表示部60が他の装置に組み込まれても良い。或いは、電場印加部10が1つの装置に組み込まれ、受光部20、デマルチプレクサ30、及びロックインアンプ群40が他の装置に組み込まれ、信号処理部50及び表示部60が別の装置に組み込まれても良い。

【0027】
次に、上記構成における信号検出装置1の動作について説明する。図4は、本発明の第1実施形態による信号検出方法の概要を示すフローチャートである。信号検出装置1の電源が投入され、信号検出開始の指示がなされると、まず試料SPに電場が印加される(ステップS11)。具体的には、図1に示す電場印加部10によって電極11に電圧が印加され、これにより図2に示す電場(基準周期Tの前半部分T1ではノコギリ波状であり、後半部分T2では零になる波形の電場)が試料SPに印加される。尚、試料SPに対する電場の印加が開始されると、試料SPに対する光の照射(不図示の光源からの光の照射)も開始される。

【0028】
試料SPに照射された光のうち、試料SPを透過した透過光Lは受光部20で受光され、受光部20からは受光信号S1が出力される。ここで、試料SPの光学特性は、印加された電場に応じて変化するため、試料SPを透過した透過光Lは、試料SPに印加された電場の影響を受けたものとなる。例えば、透過光Lは、その電場による変化分が電場振幅に非線形的に依存するものとなる。このため受光部20から出力される受光信号S1も、その電場による変化分が非線形に依存するものとなる。

【0029】
受光部20から出力された受光信号S1は、デマルチプレクサ30の入力端T11に入力されて、基準周期Tの1/12の周期で出力端T21~T26から順次出力される。これにより、試料SPに電場を印加して得られる信号である受光信号S1は、基準周期Tよりも短い周期(1/12の周期)で分割される(ステップS12)。具体的には、基準周期Tの前半部分T1で6分割され、基準周期Tの後半部分T2で6分割される。

【0030】
このようなデマルチプレクサ30の動作によって、出力端T21からは、図2中の期間p1で得られた受光信号S1(期間p1における電場が試料SPに印加されたときに得られた受光信号S1)が基準周期Tの半周期毎に順次出力される。また、出力端T22からは、図2中の期間p2で得られた受光信号S1(期間p2における電場が試料SPに印加されたときに得られた受光信号S1)が基準周期Tの半周期毎に順次出力される。また、出力端T23からは、図2中の期間p3で得られた受光信号S1(期間p3における電場が試料SPに印加されたときに得られた受光信号S1)が基準周期Tの半周期毎に順次出力される。

【0031】
同様に、出力端T24からは、図2中の期間p4で得られた受光信号S1(期間p4における電場が試料SPに印加されたときに得られた受光信号S1)が基準周期Tの半周期毎に順次出力される。また、出力端T25からは、図2中の期間p5で得られた受光信号S1(期間p5における電場が試料SPに印加されたときに得られた受光信号S1)が基準周期Tの半周期毎に順次出力される。また、出力端T26からは、図2中の期間p6で得られた受光信号S1(期間p6における電場が試料SPに印加されたときに得られた受光信号S1)が基準周期Tの半周期毎に順次出力される。

【0032】
デマルチプレクサ30の出力端T21~T26から出力された信号は、ロックインアンプ41~46にそれぞれ入力される。そして、デマルチプレクサ30によって分割された受光信号S1を、ロックインアンプ41~46に設けられた同期検波部DTで個別に同期検波し(ステップS13)、個別に同期検波された信号をローパスフィルタLPで個別にフィルタリングする処理が行われる(ステップS14)。以上の処理によって、図2中の期間p1~p6の各々で印加された電場に対する応答を示す信号が、ロックインアンプ41~46からそれぞれ出力される。

【0033】
続いて、ロックインアンプ41~46の各々から出力される信号を用いてサイクリックボルタモグラムに相当するグラフを作成する処理が信号処理部50で行われる。つまり、試料SPに印加された電場とロックインアンプ41~46の各々から出力される信号との関係を示すグラフを作成する処理が行われる(ステップS15)。そして、信号処理部50で作成されたグラフを表示部60に表示する処理が行われる(ステップS16)。

【0034】
図5は、本発明の第1実施形態において表示されるグラフを説明するための図である。図5に示す通り、信号処理部50で作成されるグラフは、試料SPに印加される電場が横軸に設定され、ロックインアンプ41~46の出力信号が縦軸に設定されたグラフである。また、図5に示すグラフの横軸は、図2に示す基準周期Tの前半部分T1における電場の大きさに応じて、図2中の期間p1~p6に相当する区間P1~P6が設定されている。尚、図5に示すグラフでは、区間P1~P6を、図2中における基準周期Tの前半部分T1と見立てることができる。

【0035】
区間P1では、図2中の期間p1で得られた受光信号S1が入力されるロックインアンプ41の出力信号がプロットされ、区間P2では、図2中の期間p2で得られた受光信号S1が入力されるロックインアンプ42の出力信号がプロットされ、区間P3では、図2中の期間p3で得られた受光信号S1が入力されるロックインアンプ43の出力信号がプロットされる。同様に、区間P4では、図2中の期間p4で得られた受光信号S1が入力されるロックインアンプ44の出力信号がプロットされ、区間P5では、図2中の期間52で得られた受光信号S1が入力されるロックインアンプ45の出力信号がプロットされ、区間P6では、図2中の期間p6で得られた受光信号S1が入力されるロックインアンプ46の出力信号がプロットされる。

【0036】
図5に示すグラフを参照すると、ノコギリ波状の電場を試料SPに印加しているにも拘わらず、ロックインアンプ41~46の出力は直線とはなっておらず、試料SPの非線形性の影響を受けたものになっていることが分かる。このため、表示部60に表示されたグラフを参照するだけで、試料の非線形性の評価をリアルタイムで容易に行うことが可能である。また、図5に示すグラフに対し、試料SPの非線形を考慮したフィッティングを行うことで、試料SPの2次以上の非線形感受率χを求めることも可能である。

【0037】
以上の通り、本実施形態では、予め規定された基準周期Tで電場を試料SPに印加し、受光部20から出力される受光信号S1をデマルチプレクサ30で基準周期Tの1/12の周期で分割し、分割した受光信号S1を基準周期Tで個別にロックイン検出(同期検波及びフィルタリング処理)するようにしている。このため、試料SPの非線形性等の評価をリアルタイムで容易に行うことができる。

【0038】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明の第2実施形態による信号検出装置の要部構成を示すブロック図である。図6に示す通り、本実施形態の信号検出装置2は、図1に示す信号検出装置1が備える受光部20とデマルチプレクサ30との間に同期検波部DTを設け、ロックインアンプ41~46に代えてローパスフィルタLP1~LP6を設けた構成である。この信号検出装置2は、ロックインアンプの数を減らしてコストの低減を図ったものである。

【0039】
同期検波部DTは、図3に示す同期検波部DTと同様のものであり、電場印加部10から出力される参照信号R1を用いて、受光部20から出力される受光信号S1を同期検波する。ローパスフィルタLP1~LP6は、図3に示すローパスフィルタLPと同様のものである。これらローパスフィルタLP1~LP6は、デマルチプレクサ30の出力端T21~T26にそれぞれ対応して設けられており、デマルチプレクサ30の出力端T21~T26から出力される信号に対して高周波成分を除去するフィルタリング処理を個別に行う。尚、ローパスフィルタLPのカットオフ周波数は、除去が必要となる高周波成分に応じて適宜設定される。

【0040】
図1に示す信号検出装置1は、まず受光部20から出力される受光信号S1をデマルチプレクサ30で基準周期Tの1/12の周期で分割し、次に分割した受光信号S1を個別にロックイン検出(同期検波及びフィルタリング処理)するものであった。これに対し、本実施形態の信号検出装置2は、まず受光部20から出力される受光信号S1を同期検波し、次に同期検波された信号をデマルチプレクサ30で基準周期Tの1/12の周期で分割し、続いて分割された信号のフィルタリング処理を行うものである。

【0041】
以下、信号検出装置1の動作の詳細について説明する。図7は、本発明の第2実施形態による信号検出方法の概要を示すフローチャートである。まず、第1実施形態と同様に、試料SPに図2に示す電場が印加される(ステップS21)。尚、試料SPに対する電場の印加が開始されると、第1実施形態と同様に、試料SPに対する光の照射(不図示の光源からの光の照射)も開始される。

【0042】
試料SPに照射された光のうち、試料SPを透過した透過光Lは受光部20で受光され、受光部20からは受光信号S1が出力される。試料SPに電場を印加して得られる信号である受光信号S1は、同期検波部DTに入力されて同期検波される(ステップS22)。同期検波部DTで同期検波された信号は、デマルチプレクサ30の入力端T11に入力されて、基準周期Tの1/12の周期で出力端T21~T26から順次出力される。これにより、同期検波部DTで同期検波された信号は、基準周期Tよりも短い周期(1/12の周期)で分割される(ステップS23)。具体的には、基準周期Tの前半部分T1で6分割され、基準周期Tの後半部分T2で6分割される。

【0043】
このようなデマルチプレクサ30の動作によって、出力端T21からは、図2中の期間p1で得られた受光信号S1を同期検波した信号が基準周期Tの半周期毎に順次出力される。また、出力端T22からは、図2中の期間p2で得られた受光信号S1を同期検波した信号が基準周期Tの半周期毎に順次出力される。また、出力端T23からは、図2中の期間p3で得られた受光信号S1を同期検波した信号が基準周期Tの半周期毎に順次出力される。

【0044】
同様に、出力端T24からは、図2中の期間p4で得られた受光信号S1を同期検波した信号が基準周期Tの半周期毎に順次出力される。また、出力端T25からは、図2中の期間p5で得られた受光信号S1を同期検波した信号が基準周期Tの半周期毎に順次出力される。また、出力端T26からは、図2中の期間p6で得られた受光信号S1を同期検波した信号が基準周期Tの半周期毎に順次出力される。

【0045】
デマルチプレクサ30の出力端T21~T26から出力された信号は、ローパスフィルタLP1~LP6にそれぞれ入力される。そして、出力端T21~T26から出力された信号をローパスフィルタLP1~LP6で個別にフィルタリングする処理が行われる(ステップS24)。以上の処理によって、図2中の期間p1~p6の各々で印加された電場に対する応答を示す信号が、ローパスフィルタLP1~LP6からそれぞれ出力される。

【0046】
続いて、ローパスフィルタLP1~LP6の各々から出力される信号を用いてサイクリックボルタモグラムに相当するグラフを作成する処理が信号処理部50で行われる。つまり、試料SPに印加された電場とローパスフィルタLP1~LP6の各々から出力される信号との関係を示すグラフを作成する処理が行われる(ステップS25)。そして、信号処理部50で作成されたグラフを表示部60に表示する処理が行われる(ステップS26)。以上の処理が行われることで、図5に示すグラフと同様のグラフが表示部60に表示される。

【0047】
以上の通り、本実施形態では、予め規定された基準周期Tで電場を試料SPに印加し、受光部20から出力される受光信号S1を基準周期Tで同期検波し、同期検波された信号をデマルチプレクサ30で基準周期Tの1/12の周期で分割し、分割した信号を個別にフィルタリング処理するようにしている。このため、試料SPの非線形性等の評価をリアルタイムで容易に行うことができる。

【0048】
以上、本発明の実施形態による信号検出装置及び方法について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した第1,第2実施形態では、基準周期Tの前半部分T1で試料SPに印加される電場がノコギリ波状である例について説明したが、基準周期Tの前半部分T1で試料SPに印加される電場は三角波状であっても良い。三角波状の電場を印加することで、試料SPのヒステリシス(電場の大きさを徐々に大きくする場合の応答と電場の大きさを徐々に小さくする場合の応答との差)の評価をリアルタイムで容易に行うことが可能である。

【0049】
また、上述した第1,第2実施形態では、基準周期Tの前半部分T1で試料SPに電場を印加し、後半部分T2では試料SPに電場の印加を行わない例について説明した。しかしながら、これとは逆に、基準周期Tの前半部分T1では試料SPに電場の印加を行わず、後半部分T2で試料SPに電場を印加するようにしても良い。また、基準周期Tの前半部分T1及び後半部分T2の双方で電場を試料SPに印加するようにしても良い。但し、基準周期Tの前半部分T1で試料SPに印加する電場の波形と、基準周期Tの後半部分T2で試料SPに印加する電場の波形とは異なる波形にする必要がある。

【0050】
また、上述した第1,第2実施形態では、デマルチプレクサ30が6個の出力端T21~T26を備える例について説明したが、デマルチプレクサ30の出力端の数は2以上であれば任意でよい。但し、デマルチプレクサ30の出力端の数が増加すると、ロックインアンプ又はローパスフィルタの数も増加するため、デマルチプレクサ30の出力端の数は、必要となる検出精度とコストとを考慮する必要がある。

【0051】
また、上述した実施形態では、理解を容易にするために、試料SPが非線形の電気光学効果を生ずる電気光学結晶であるとしたが、本発明は任意の試料SPの特性の測定に用いることが可能である。また、上述した実施形態では、試料SPに対して電場を印加する例について説明したが、試料SPに与える刺激は、試料SPに応じた任意のもの(例えば、応力、温度等)を与えることが可能である。例えば、巨大で複雑な分子からなるポリマー(樹脂やゴム)は、タイムスケールや印加された応力に対して挙動が変わる非線形な応答が特徴的である。本発明によって、このようなポリマーの非線形性の評価を効率的且つ正確に行うことができるようになる。

【0052】
また、本発明は、材料の評価のみならず、電子回路、増幅器、整流回路等の種々の電子素子や電子回路の特性の評価にも用いることができる。更には、神経の信号伝達の評価にも用いることができる。例えば、癲癇は、脳神経細胞の伝達特性の非線形性によって全神経細胞が同期する興奮状態が生じたものであるが、本発明を用いることで、神経の信号伝達の非線形性を評価することができる。このように、本発明は、非線形性が重要になる研究開発分野・現場で用いることが可能である。

【0053】
以上の通り、本発明は、微弱な信号からでも非線形性の評価等が可能である点を特徴とするが、ここにいう「微弱」には、「信号そのものがノイズに埋もれて微弱であること」と、「信号が大きな背景信号に埋もれているという意味で微弱であること」との双方の意味が含まれる。前者は、例えば信号レベルがノイズのレベルよりも小さい場合であり、後者は、例えば試料に与える刺激によって透過光量が99.00%から99.01%に変化する場合である。後者の例において、受光信号そのものの信号レベルは高いが、刺激による変化(0.01%)は信号レベルに比べて極めて小さく、「信号が大きな背景信号に埋もれている」という状況である。
【符号の説明】
【0054】
1,2 信号検出装置
10 電場印加部
30 デマルチプレクサ
60 表示部
DT 同期検波部
LP ローパスフィルタ
LP1~LP6 ローパスフィルタ
SP 試料
T 基準周期
T1 前半部分
T2 後半部分
T11 入力端
T21~T26 出力端
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6