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明細書 :放射測定器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第6019508号 (P6019508)
登録日 平成28年10月14日(2016.10.14)
発行日 平成28年11月2日(2016.11.2)
発明の名称または考案の名称 放射測定器
国際特許分類 G01J   5/00        (2006.01)
G01J   5/60        (2006.01)
G01J   5/58        (2006.01)
G01J   5/02        (2006.01)
G01J   5/46        (2006.01)
G01J   5/10        (2006.01)
FI G01J 5/00 E
G01J 5/60 D
G01J 5/58
G01J 5/02 T
G01J 5/46
G01J 5/10 B
請求項の数または発明の数 1
全頁数 11
出願番号 特願2016-022689 (P2016-022689)
出願日 平成28年2月9日(2016.2.9)
審査請求日 平成28年2月9日(2016.2.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
発明者または考案者 【氏名】田島 治
【氏名】長崎 岳人
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100093816、【弁理士】、【氏名又は名称】中川 邦雄
審査官 【審査官】佐々木 龍
参考文献・文献 特開平04-048230(JP,A)
特開2004-317393(JP,A)
特開2007-107939(JP,A)
特表2005-505774(JP,A)
特開2007-010476(JP,A)
M. Hasegawa et al.,Calibration system with cryogenically-cooled loads for cosmic microwave background polarization detectors,Rev. Sci. Instrum.,2011年 5月,Vol. 82, No. 5,pp. 054501
調査した分野 G01J 5/00-5/62
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
要約 【課題】対象物の温度を高精度に測定する放射測定器を提供する。
【解決手段】対象物からの放射を偏光フィルター3により偏光に分離し、その片方を第一光学路4を介してスペクトラムアナライザー7に入れ、もう片方を第二光学路5を介してスペクトラムアナライザー7に入れ二色比を測定し、一方、真空極低温恒温槽1の中におかれた、真空極低温の準熱平衡状態にある黒体2の放射を、第三光学路6を通して偏光フィルター3に入れ偏光に分離し、それぞれを対象物の放射の光学路と同じ光学路4,5に入れ、スペクトラムアナライザー7に入れ二色比を測定し、これら2つの二色比から対象物の温度を高精度に求める。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
内部を真空極低温に保つ真空極低温恒温槽と、
前記真空極低温恒温槽の中に設けられる第一周波数の放射を増幅する第一光学路と、
前記真空極低温恒温槽の中に設けられる黒体と、
前記真空極低温恒温槽の外に設けられる第二周波数の放射を増幅する第二光学路と、
前記真空極低温恒温槽の外に設けられる放射を偏光に分離する偏光フィルターと、
前記黒体からの放射が偏光フィルターに入れられる第三光学路と、
前記第一光学路及び前記第二光学路を経た信号を解析するスペクトラムアナライザーと、
から構成され、
前記真空極低温恒温槽の中の黒体が、10-4Pa以下の真空及び30K以下の極低温の準熱平衡状態に保たれ、
前記偏光フィルターが対象物の放射を受光するときは、対象物の放射が前記偏光フィルターにより偏光に分離され、分離された片方が前記第一光学路に入れられ、
それと同時にもう片方が前記第二光学路に入れられるように前記偏光フィルター、前記第一光学路及び前記第二光学路が配置されており、
且つ、
前記偏光フィルターが前記黒体の放射を前記第三光学路を経て受光するときは、
前記黒体の放射が前記偏光フィルターにより偏光に分離され、分離された片方が前記第一光学路に入れられ、
それと同時にもう片方が前記第二光学路に入れられるように前記偏光フィルターの偏光面の切替えができるように配置され、
対象物の放射の前記第一周波数での第一放射輝度を前記偏光フィルター→前記第一光学路→前記スペクトラムアナライザーの手順で測定し、
対象物の放射の前記第二周波数での第二放射輝度を前記偏光フィルター→前記第二光学路→前記スペクトラムアナライザーの手順で測定し、
前記黒体の放射の前記第一周波数での第三放射輝度を前記偏光フィルター→前記第一光学路→前記スペクトラムアナライザーの手順で測定し、
前記黒体の放射の前記第二周波数での第四放射輝度を前記偏光フィルター→前記第二光学路→前記スペクトラムアナライザーの手順で測定し、
前記各手順で測定された前記第一放射輝度及び前記第二放射輝度の比を、前記第三放射輝度及び前記第四放射輝度の比を用いて較正することにより、
黒体を用いて測定される対象物の温度の測定値Tを求めると
さらに、求めるべき対象物の温度(プランクの公式により定義される黒体の温度)Tと前記黒体を用いて測定される対象物の温度の測定値Tとの温度誤差ΔT(=T-T
対象物の絶対温度tと使用する黒体の絶対温度tとの温度比率t/tに反比例して小さくり、
使用する黒体の温度を低温にするほど前記温度誤差を低減する効果を大きくし、求めるべき対象物の温度を高精度で測定可能にすることを特徴とする放射測定器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放射測定器に関する。更に詳しくは、本発明は、自然界に存在する物体(放射体)の放射(灰色体放射という。)が有する温度(放射体温度と略す。)を測定するために、真空極低温の準熱平衡状態にある黒体を用い、プランクの公式に基づく二色温度測定法に従い、放射体の温度を較正することにより、放射体温度を高精度に測定する放射測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射体温度の測定を非接触で行う方法及び装置として、例えば、特許文献1~4及び非特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1は、放射体からの放射を2つの偏光成分に分光し、それぞれの分光放射輝度L及びLを測定すると共に、オフラインで背光を受けない状態で測定したときのそれぞれの偏光成分での放射率ε1t及びε2tとを用いて背光の影響を補償することにより、放射体温度を求める方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、放射体からの放射線を赤外フィルターにより赤外線を透過させ、続いて、第1の偏光子により偏光させ、続いて偏光された放射線が電気光学エレメントにより2つの互いに直交する偏光成分に分離すると同時に高調波振幅変調し、数値アナライザーにより高調波振幅比と予め用意されたキャリブレーション検索表とから温度が求められることを開示している。
【0005】
特許文献3は、コムジェネレーターをクライオ環境下におき、常温黒体及び冷却黒体(液体窒素に浸けた黒体)を対面させるように配置させ、マイクロ波の温度較正を行うことを開示している。黒体をクライオ環境下におくことについては何も言及していない。
【0006】
特許文献4は、常温黒体と冷却黒体(液体窒素に浸けた黒体)を別々に用意し、マイクロ波の温度較正を行うことを開示している。
【0007】
非特許文献1は、常温黒体と冷却黒体(液体窒素に浸けた黒体)を用意し、それぞれが発する放射を常温下のチョッパーホイール及び極低温下のミキサープレアンプを通して検出器に入れ、放射体温度測定を行うことを開示している。
【0008】
しかしながら、以上の方法は、放射の測定を外部環境の擾乱の影響を直接乃至間接的に受けながら行う方法であるので、特に常温黒体は常時温度変動を受けており、冷却黒体は液体窒素の沸点である77Kという熱輻射若しくは熱振動の擾乱を受けているので、放射体温度を高精度で測定することは困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2007-107935号公報
【特許文献2】特表2005-505744号公報
【特許文献3】特開2003-57274号公報
【特許文献4】US20140035779A1
【0010】

【非特許文献1】A.R.Kerr et al.,Measurement of gain compression in SIS mixer receives,ALMA Memo 460.1, 15 May 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記の説明の様に、従来の放射計による放射体温度の測定は、77K黒体を用いる放射計でも、放射体温度の高精度の温度測定が困難であった。そこで、前記の事情に鑑み、本発明は、放射体温度の高精度測定を行う放射測定器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
・本発明の原理
黒体を用いて放射を測定するのは、すべての周波数の放射を完全に吸収する物体(これを黒体という)が発する放射を測定することにより、黒体が吸収した放射と等しい放射を測定することができるという原理に基づいている。また、熱平衡状態にある黒体は、吸収した放射と等しい放射を放出するので、熱平衡状態にある黒体を用いることにより放射体温度を知ることができる。
【0013】
しかし、黒体は仮想上の物体であって現実には存在しないので、また、完全な熱平衡状態も現実には存在しないので、仮想上の黒体を用いることにより放射体温度(プランクの公式により定義される黒体の温度)を知ることは現実的には不可能なことである。
【0014】
そこで、本発明は、黒体に近い物体(本発明ではこれを「黒体」という。)を用い、それを真空極低温の熱平衡状態に限りなく近い状態(準熱平衡状態という。)におくことにより、前記放射体温度を高精度に測定する放射測定器を提供するものである。
【0015】
本発明は、対象物(「放射体」ともいう。)からの放射を偏光に分離し、分離された片方を第一周波数での第一放射輝度として測定し、もう片方を第二周波数での第二放射輝度として測定し、一方、黒体を真空極低温恒温槽の中におくことにより、真空極低温の準熱平衡状態となし、その黒体が発する放射を前記と同様に偏光に分離し、前記と同様に分離された片方を前記の第一周波数と同じ光学路に導き、第一周波数での第三放射輝度として測定し、もう片方を前記の第二周波数と同じ光学路に導き、第二周波数での第四放射輝度として測定し、測定された第一放射輝度及び第二放射輝度の比を第三放射輝度及び第四放射輝度の比を用いて較正することを特徴とする放射測定器である。
【0016】
より具体的には、
(1)
内部を真空極低温に保つ真空極低温恒温槽と、
前記真空極低温恒温槽の中に設けられる第一周波数の放射を増幅する第一光学路と、
前記真空極低温恒温槽の中に設けられる黒体と、
前記真空極低温恒温槽の外に設けられる第二周波数の放射を増幅する第二光学路と、
前記真空極低温恒温槽の外に設けられる放射を偏光に分離する偏光フィルターと、
前記黒体からの放射が偏光フィルターに入れられる第三光学路と、
前記第一光学路及び前記第二光学路を経た信号を解析するスペクトラムアナライザーと、
から構成され、
前記真空極低温恒温槽の中の黒体が、真空極低温の準熱平衡状態に保たれ、
前記偏光フィルターが対象物の放射を受光するときは、対象物の放射が前記偏光フィルターにより偏光に分離され、分離された片方が前記第一光学路に入れられ、
それと同時にもう片方が前記第二光学路に入れられるように前記偏光フィルター、前記第一光学路及び前記第二光学路が配置されており、
且つ、
前記偏光フィルターが前記黒体の放射を前記第三光学路を経て受光するときは、
前記黒体の放射が前記偏光フィルターにより偏光に分離され、分離された片方が前記第一光学路に入れられ、
それと同時にもう片方が前記第二光学路に入れられるように前記偏光フィルターの偏光面の切替えができるように配置され、
対象物の放射の前記第一周波数での第一放射輝度を前記偏光フィルター→前記第一光学路→前記スペクトラムアナライザーの手順で測定し、
対象物の放射の前記第二周波数での第二放射輝度を前記偏光フィルター→前記第二光学路→前記スペクトラムアナライザーの手順で測定し、
前記黒体の放射の前記第一周波数での第三放射輝度を前記偏光フィルター→前記第一光学路→前記スペクトラムアナライザーの手順で測定し、
前記黒体の放射の前記第二周波数での第四放射輝度を前記偏光フィルター→前記第二光学路→前記スペクトラムアナライザーの手順で測定し、
前記各手順で測定された前記第一放射輝度及び前記第二放射輝度の比を、前記第三放射輝度及び前記第四放射輝度の比を用いて較正することを特徴とする
放射測定器。
(2)
前記真空極低温恒温槽の中の黒体が、10-4Pa以下の真空及び30K以下の極低温の準熱平衡状態に保たれることを特徴とする(1)に記載の放射測定器。
である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、対象物の温度を真空極低温の準熱平衡状態にある黒体を用いて較正するので、対象物の放射が受ける擾乱の影響に左右されることなく、対象物の温度を高精度で測定することができ、且つ、信頼性の高い測定ができる。
【0018】
特に、10-4Pa以下の真空・30K以下の極低温に黒体を維持することにより、測定される放射体(対象物)温度と求めるべき対象物の温度(プランクの公式により定義される黒体の温度のこと)との温度誤差を約10分の1以下にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の常温黒体及び冷却黒体を用いる放射測定器の構造を説明する概略図である。
【図2】本発明放射測定器の構造を説明する概略図である。
【図3】本発明放射測定器により対象物の放射を測定する手順を説明する図である。
【図4】本発明放射測定器により黒体放射を測定する手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。

【0021】
先ず、ここで、従来技術について説明する。図1は、常温黒体b及び冷却黒体cを用いる従来の放射測定器aである。対象物からの放射gが常温黒体bにより受光され、常温黒体bの放射hは、常温黒体放射の光学路dを経て、スペクトラムアナライザーfに入り、放射輝度が測定される。一方、冷却黒体cの放射iは冷却黒体放射の光学路eを経て、スペクトラムアナライザーfに入り、放射輝度が測定される。

【0022】
しかし、常温黒体bは、それがおかれた外部環境の擾乱による影響を常時受けており、また、その影響を低減するために冷却黒体cを用いているものの、冷却黒体c自体も液体窒素の沸点である77Kの擾乱にさらされているので、不確かな常温黒体bによる温度較正を不確かな冷却黒体cを用いて温度較正をするという論理的矛盾を含んでいる。したがって、この方法は、厳密な意味での放射体温度を高精度で計測する目的には適さない。
【実施例1】
【0023】
図2は、本発明放射測定器の概略図である。本発明放射測定器Aは、内部を真空極低温に保つ真空極低温恒温槽1と、真空極低温恒温槽1の中に設けられる第一周波数の放射を増幅する第一光学路4と、真空極低温恒温槽1の中に設けられる黒体2と、真空極低温恒温槽1の外に設けられる第二周波数の放射を増幅する第二光学路5と、真空極低温恒温槽1の外に設けられる放射を偏光に分離する偏光フィルター3と、黒体2からの放射が偏光フィルター3に入れられる第三光学路6と、第一光学路4及び第二光学路5を経た信号を解析するスペクトラムアナライザー7と、から構成され、
そして、
真空極低温恒温槽1におかれた黒体2が真空極低温の準熱平衡状態に保たれ、
偏光フィルター3が対象物の放射を受光するときは、対象物の放射が偏光フィルター3により偏光に分離され、分離された片方が第一光学路4に入れられ、
それと同時にもう片方が第二光学路5に入れられるように偏光フィルター3、第一光学路4及び第二光学路5が配置されており、
且つ、
偏光フィルター3が黒体2の放射を第三光学路6を経て受光するときは、
黒体2の放射が偏光フィルター3により偏光に分離され、分離された片方が第一光学路4に入れられ、
それと同時にもう片方が第二光学路5に入れられるように偏光フィルター3の偏光面の切替えができるように配置され、
対象物の放射の第一周波数での第一放射輝度が偏光フィルター3→第一光学路4→スペクトラムアナライザー7の手順で測定され、
対象物の放射の第二周波数での第二放射輝度が偏光フィルター3→第二光学路5→スペクトラムアナライザー7の手順で測定され、
一方、
黒体2の放射の第一周波数での第三放射輝度が偏光フィルター3→第一光学路4→スペクトラムアナライザー7の手順で測定され、
黒体2の放射の第二周波数での第四放射輝度が偏光フィルター3→第二光学路5→スペクトラムアナライザー7の手順で測定されることにより、
対象物の放射の2つの周波数での放射輝度の比が真空極低温の準熱平衡状態にある黒体の放射の2つの周波数での放射輝度により較正されることを特徴とする。
【実施例1】
【0024】
本発明の黒体を真空極低温の準熱平衡状態に保つとは、黒体の分子運動を擾乱の影響をほとんど受けにくい真空極低温の準熱平衡状態にもっていき、その状態を保つことをいう。液体窒素の沸点である77Kの黒体の原子・分子は、まだ、熱運動・熱振動が盛んであるので、原子・分子が擾乱を受けやすい状態にあるが、物質の原子・分子運動がゼロになる絶対零度を実現することは困難である。
【実施例1】
【0025】
そこで、本発明は、黒体の原子・分子運動が擾乱の影響をほとんど受けない準熱平衡状態にするために、黒体を真空極低温の環境におく。したがって、同じ冷却温度の黒体を用いて温度較正をしたとき、従来の常圧下冷却黒体による温度較正よりも、本発明の真空極低温の準熱平衡状態にある黒体による温度較正の方が飛躍的に高精度の温度較正であり、かつ、信頼性が高い。
【実施例1】
【0026】
黒体を真空極低温の環境におくことは、真空極低温恒温槽の中に黒体をおくことにより行われる。飛躍的に高精度の温度較正を行うために、前記真空極低温恒温槽の中の黒体は、10-4Pa以下の真空及び30K以下の極低温の準熱平衡状態に保たれるのが好ましい。
【実施例1】
【0027】
本発明における真空極低温恒温槽は、恒温槽の中が真空極低温に保たれる恒温槽である。真空を絶対真空にすることは実際上困難であるが、絶対真空に限りなく近い真空にすることは可能である。真空極低温恒温槽の中を真空にするのは、外部の擾乱の影響をカットするのに最も効果的であるからである。また、真空極低温恒温槽の中を極低温にするのは、真空極低温恒温槽の中に設けられる光学路、黒体、等に対して熱的な擾乱を与えることを極力抑制するためである。
【実施例1】
【0028】
こうすることにより、真空極低温恒温槽の中の黒体を熱平衡状態に限りなく近い状態(準熱平衡状態という)にすることができる。真空極低温恒温槽の中の真空は、好ましくは10-4Pa乃至それよりも高真空であり(以下、10-4Pa以下の真空ともいう。)、更に好ましくは10-5Pa乃至それよりも高真空である。
【実施例1】
【0029】
また、真空極低温恒温槽の中の温度は極低温に維持される。本発明の極低温とは、液体窒素の沸点である77Kよりも低い温度をいう。好ましくは30K乃至それ以下であり、更に好ましくは10K乃至それ以下の温度である。また、真空極低温恒温槽内の極低温冷却は、無冷媒冷凍機を真空極低温恒温槽の中に設けることにより、行うことができる。
【実施例1】
【0030】
また、本発明である準熱平衡状態の黒体を用いて対象物の温度を測定するとき、対象物の絶対温度をtとし、使用する黒体の絶対温度をtとしたとき、求めるべき対象物の温度(プランクの公式により定義される黒体の温度)Tと黒体を用いて測定される対象物の温度の測定値Tとの温度誤差ΔT(=T-T)は、意外にも、対象物の絶対温度tと使用する黒体の絶対温度tとの温度比率t/tに反比例して小さくすることができることがわかった。以下では、これを、温度誤差を低減する効果という。
【実施例1】
【0031】
したがって、本発明は、使用する黒体の温度を低温にするほど温度誤差を低減する効果が大きくなるので、求めるべき対象物の温度を高精度で測定することができる。従来は常圧下で液体窒素の沸点である77Kまでの黒体を用いていたので、77K以下の真空極低温の準熱平衡状態にある黒体についての温度誤差を低減する効果は予想のできない未踏領域にあった。本発明は、特に、10-4以下の真空・30K以下の極低温に保たれた黒体が、温度誤差を低減する効果を顕著に与える。
【実施例1】
【0032】
前記の如く、常温黒体により測定される温度と求めるべき対象物の温度との温度誤差をΔTとしたとき、本発明における黒体を10-4Pa-30Kに保つとき若しくは10-5Pa-10Kに保つときは、ΔTを更に10分の1若しくは30分の1にまで低減することができる。例えば、常温黒体のみを用いて対象物の温度を測定したときに、対象物の測定温度と求めるべき対象物の温度との温度誤差が10Kであったとすると、従来法の常温黒体及び液体窒素の沸点である77K黒体を用いて対象物の温度を測定したときの対象物の測定温度と求めるべき対象物の温度との温度誤差は、約2.5K~10Kの範囲にある。
【実施例1】
【0033】
これに対し、本発明の10-4Pa-30Kの黒体を用いて測定するときには、対象物の測定温度と求めるべき対象物の温度との温度誤差を1K程度にすることができ、10-5Pa-10Kの黒体を用いて測定するときには、温度誤差を0.3K程度にすることができる。
【実施例1】
【0034】
第一光学路及び第二光学路を、放射に含有される第一周波数及び第二周波数の放射だけを選択的に取り出しそれを増幅するための光学路とするのは、対象物の放射は非常に微弱である場合が多いので、放射の測定に先だって周波数の放射を増幅するためである。
【実施例1】
【0035】
第一光学路の第一周波数と第二光学路の第二周波数は異なる周波数でもよく、あるいは同一の周波数でもよい。例えば、対象物が雲の場合、通常、第一周波数及び第二周波数として、それぞれ20GHz及び60GHzとするのがよい。
【実施例1】
【0036】
放射に含有される周波数の放射だけを選択的に取り出すには、通常、光学フィルターが用いられる。光学フィルターとしては、バンドパスフィルター、レンズフィルター、薄膜光学、ダイクロイックミラー等の種々の光学フィルターが知られているので、これらを適宜用いることができる。また、前記周波数の放射を増幅するには、通常、低雑音アンプを用いることができる。
【実施例1】
【0037】
偏光フィルター3は、放射を異なる進行方向の偏光に分離するための光学デバイスである。偏光フィルターとしては、ワイヤーグリッドを用いるのが好ましい。大型の放射測定器を回転させることなく、短時間(1Hzレベル)で測定方向の偏光が可能になる。
【実施例1】
【0038】
準熱平衡状態の黒体を用いるのは、対象物の放射に含まれる周波数での放射についての放射輝度の測定値と、準熱平衡状態の黒体の放射に含まれる周波数での放射の放射輝度の測定値とから、空洞放射の原理により、論理的に正しい対象物の温度を知ることができるからである。黒体としては、通常、白金黒、黒鉛等を用いる。
【実施例1】
【0039】
図3により、本発明放射測定器による対象物の放射の測定Bの手順を説明する。対象物からの放射8は、偏光フィルター3により、異なる進行方向の偏光波9及び偏光波10に分離される。
【実施例1】
【0040】
図3では、偏光波10を第一光学路4に入れ、偏光波9を第二光学路5に入れるように配置している。第一光学路4に入った偏光波10に含まれる第一周波数での放射が増幅されてスペクトラムアナライザー7に入り、第一放射輝度としてアウトプットされる。また、第二光学路5に入った偏光波9に含まれる第二周波数の放射が増幅されてスペクトラムアナライザー7に入り、第二放射輝度としてアウトプットされる。
【実施例1】
【0041】
図4により、本発明放射測定器による黒体放射の測定Cの手順を説明する。真空極低温の準熱平衡状態にある黒体2の放射11が、第三光学路6を経て偏光フィルター3に入る。偏光フィルター3により偏光に分離された片方が第一光学路4に入り、第一周波数の放射が増幅されてスペクトラムアナライザー7に入り、第三放射輝度としてアウトプットされる。また、偏光に分離されたもう片方は第二光学路5に入り、第二周波数の放射が増幅されてスペクトラムアナライザー7に入り、第四放射輝度としてアウトプットされる。
【実施例1】
【0042】
本発明放射測定器により得られる放射輝度の測定値を用いて対象物の温度を求める手順を説明する。偏光フィルター3に入るまでの対象物の放射の放射輝度をU、対象物からの放射が偏光フィルター3→第一光学路→スペクトラムアナライザー7の経路から受ける摂動の大きさをΔPとし、一方、偏光フィルター3に入るまでの黒体2の放射の放射輝度をV、黒体2からの放射が偏光フィルター3→第一光学路→スペクトラムアナライザー7の経路から受ける摂動の大きさをΔPとすると、対象物の放射の放射輝度の測定値から黒体2の放射の放射輝度を差し引いた値は、[U+ΔP]-[V+ΔP]=U-Vとなる。
【実施例1】
【0043】
第二光学路を通して放射輝度を測定する場合も同様である。すなわち、本発明の光学系を用いて対象物の放射輝度及び黒体の放射輝度を測定し、対象物の放射の放射輝度を黒体の放射の放射輝度を用いて較正することにより、対象物の放射の放射輝度を擾乱の影響を全く受けることのない値として対象物の放射の放射輝度を測定することができる。
【実施例1】
【0044】
本発明は、対象物からの放射を2つの周波数について放射輝度を測定する。それらの比率Rを算出する。この比率Rを二色比という。この二色比を与える黒体の温度をTとすると、プランクの公式に基づく二色温度測定法の原理からlogR=C+C/Tの関係が成立する。
【実施例1】
【0045】
したがって、対象物の放射についての二色比Rとこの二色比を与える黒体の温度Tは、logR=C+C/Tの関係にある。
また、準熱平衡状態にある温度Tの黒体の二色比Rとこの二色比を与える準熱平衡状態にある黒体の温度Tは、logR=C+C/Tの関係にある。
ここで、C=5log(λ)、C=C(1/λ-1/λ)、C=ch/k、λ及びλはそれぞれ2つの周波数に相当する波長である。cは光速、hはプランク定数、kは、ボルツマン定数である。
したがって、logR-logR=C(1/T-1/T)となる。
【実施例1】
【0046】
この式に実測値R、R、λ、λ、及びTを代入することにより、黒体の温度Tを算出することができる。ここで、二色温度測定法の原理は、黒体の温度を対象物の温度とみなすので、黒体の温度Tは、すなわち、対象物の温度である。また、前述の説明のように、得られる対象物の温度は、光学系から受ける擾乱の影響を全く受けることのない値を示す。
【実施例1】
【0047】
本発明は、第一光学路及び第三光学路だけを用いて対象物の温度を求めることもできる。また、第二光学路及び第三光学路だけを用いて対象物の温度を求めることもできる。
【実施例1】
【0048】
得られた対象物の温度較正データは、高速演算データ処理により、対象物の運動エネルギーに変換することもできる。さらに、PC画面上に対象物の運動を画像表示することもできる。また、得られる対象物の温度変化も対象物の運動エネルギーの変化に変換することができるので、本発明による高精度の温度測定により、対象物の温度変化を有意差のある対象物の運動の変化として表示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、放射計に用いられる放射測定器として産業上利用することができる。例えば、テラヘルツ検査装置が搭載する放射測定器としての利用が挙げられる。
【符号の説明】
【0050】
a 従来の放射測定器
b 常温黒体
c 冷却黒体
d 常温黒体放射の光学路
e 冷却黒体放射の光学路
f スペクトラムアナライザー
g 対象物からの放射
h 放射
i 放射
A 本発明放射測定器
B 本発明放射測定器による対象物の放射の測定
C 本発明放射測定器による黒体放射の測定
1 真空極低温恒温槽
2 黒体
3 偏光フィルター
4 第一光学路
5 第二光学路
6 第三光学路
7 スペクトラムアナライザー
8 対象物からの放射
9 偏光波
10偏光波
11放射
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3