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明細書 :癌細胞の検出方法及び癌細胞検出キット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6028253号 (P6028253)
公開番号 特開2016-138840 (P2016-138840A)
登録日 平成28年10月28日(2016.10.28)
発行日 平成28年11月16日(2016.11.16)
公開日 平成28年8月4日(2016.8.4)
発明の名称または考案の名称 癌細胞の検出方法及び癌細胞検出キット
国際特許分類 G01N  33/68        (2006.01)
G01N  33/574       (2006.01)
G01N  33/536       (2006.01)
G01T   1/161       (2006.01)
FI G01N 33/68
G01N 33/574 D
G01N 33/536 B
G01T 1/161 A
G01N 33/574 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2015-014586 (P2015-014586)
出願日 平成27年1月28日(2015.1.28)
審査請求日 平成28年3月17日(2016.3.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
発明者または考案者 【氏名】福山 隆
【氏名】市来 嘉伸
【氏名】山▲崎▼ 等
【氏名】小林 憲忠
【氏名】山村 瑠衣
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
審査官 【審査官】赤坂 祐樹
参考文献・文献 特開2007-126442(JP,A)
特表2000-506380(JP,A)
特開2013-241417(JP,A)
国際公開第2010/087335(WO,A1)
Takashi Fukuyama et al.,Cancer Res,2006年 5月 1日,66(9),4922-4928
調査した分野 G01N 33/48-33/98
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
生体試料中の癌細胞の検出方法であって、C末端領域を細胞外に露出した形態で細胞膜表面上に局在するKK-LC-1タンパク質を検出する工程を備える、癌細胞の検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の癌細胞の検出方法に用いられる癌細胞検出キットであって、KK-LC-1タンパク質に対する抗体又はアプタマーを備える、キット。
【請求項3】
前記抗体又は前記アプタマーが、ポジトロン核種で標識されている、請求項2に記載のキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、癌細胞の検出方法及び癌細胞検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
癌/精巣抗原は、癌細胞と精巣以外では発現が認められないタンパク質の総称である。癌/精巣抗原の1つであるKitakyushu lung cancer antigen-1(以下、「KK-LC-1」という。)は、肺癌細胞株が特異的に発現する抗原として同定されたものである(例えば、非特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Identification of a new cancer/germline gene, KK-LC-1, encoding an antigen recognized by autologous CTL induced on human lung adenocarcinoma. Fukuyama T, Hanagiri T, Takenoyama M, Ichiki Y, Mizukami M, So T, Sugaya M, So T, Sugio K, Yasumoto K. Cancer Res. 2006 May 1;66(9):4922-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、KK-LC-1の細胞内での局在は不明であった。そこで、本発明は、KK-LC-1の局在を明らかにし、より高精度に癌細胞を検出することができる、癌細胞の検出方法を提供することを目的とする。本発明はまた、より高精度に癌細胞を検出することができる、癌細胞検出キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の通りである。
(1)生体試料中の癌細胞の検出方法であって、C末端領域を細胞外に露出した形態で細胞膜表面上に局在するKK-LC-1タンパク質を検出する工程を備える、癌細胞の検出方法。
(2)(1)に記載の癌細胞の検出方法に用いられる癌細胞検出キットであって、KKLC-1タンパク質に対する抗体又はアプタマーを備える、キット。
(3)前記抗体又は前記アプタマーが、ポジトロン核種で標識されている、(2)に記載のキット。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、より高精度に癌細胞を検出することができる、癌細胞の検出方法及び癌細胞検出キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】発現ベクターがコードするKK-LC-1融合タンパク質の構造を示す模式図である。
【図2】ウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。
【図3】(a)及び(b)は、フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
【図4】(a)は、KK-LC-1融合タンパク質の構造を示す模式図である。(b)及び(c)は、動物細胞におけるKK-LC-1融合タンパク質の存在状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(癌細胞の検出方法)
1実施形態において、本発明は、細胞膜表面上に存在するKK-LC-1タンパク質の発現を検出する工程を備える癌細胞の検出方法を提供する。

【0009】
後述するように、発明者らは、KK-LC-1タンパク質がC末端領域を細胞外に露出した形態で細胞膜表面上に局在していることを明らかにした。

【0010】
したがって、細胞膜表面上に存在するKK-LC-1タンパク質の発現を検出する手法により、KK-LC-1タンパク質を検出することができる。例えば、KK-LC-1に対する抗体又はアプタマーを用いて生体試料中の細胞を染色することによりKK-LC-1タンパク質の発現を検出することができる。

【0011】
なお、本明細書において、「抗体」は、抗体及び抗体誘導体を含む。抗体誘導体としては、F(ab)、F(ab’)フラグメント等の抗体断片、scFv等の1本鎖抗体等が挙げられる。

【0012】
KK-LC-1に対する抗体は、定法により、KK-LC-1タンパク質又はその部分ペプチドを抗原として、動物を免疫すること等により作製することができる。

【0013】
KK-LC-1に対する抗体は、蛍光色素、放射性同位元素等で標識されていてもよい。これにより、KK-LC-1タンパク質の発現の検出が容易になる。

【0014】
KK-LC-1に対する抗体は、ヒト化されていてもよい。ヒト化された抗体は、ヒトに投与することができるため、抗体医薬としての応用も可能になる。

【0015】
また、アプタマーとしては、例えばDNAアプタマーが挙げられる。KK-LC-1タンパク質に対するDNAアプタマーは、例えば、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)法等の定法により、KK-LC-1タンパク質に対する結合能を指標として、ランダム配列の核酸ライブラリー等から選別することができる。

【0016】
本実施形態の検出方法により検出可能な癌細胞としては、例えば、胃癌、肺癌、乳癌、大腸癌、食道癌、膵臓癌、胆道癌、胆嚢癌、十二指腸癌、大腸癌、肝癌、脳腫瘍、子宮癌、卵巣癌、白血病、骨肉腫、中皮腫等が挙げられる。

【0017】
本実施形態に係る癌細胞の検出方法は、生体試料を対象に実施されてもよく、生体内で実施されてもよい。生体試料を対象に実施する場合には、例えば、フローサイトメトリー、組織染色、ウエスタンブロッティング等により実施することができる。

【0018】
また、生体内で実施される場合には、例えば、ポジトロン断層法(PET)により実施することができる。例えば、KK-LC-1遺伝子の発現を指標として、遺伝子レベルで癌細胞の検出を行う場合には、生体組織を採取する必要があり、これは侵襲を伴うものである。これに対し、PET等の方法によれば、低侵襲で高精度に癌細胞の検出を行うことができる。

【0019】
PETとは、陽電子(ポジトロン)の検出を利用したコンピューター断層撮影技術である。PET診断に用いられるポジトロン核種としては、11C(半減期20.4分)、13N(半減期9.97分)、15O(半減期2.04分)、18F(半減期109.8分)、64Cu(半減期12.7時間)、89Zr(半減期78.91時間)等が挙げられる。

【0020】
上記の抗体やアプタマーを、上記のいずれかのポジトロン核種で標識することにより、KK-LC-1タンパク質特異的なポジトロン断層法用プローブ(PET用プローブ)を製造することができる。

【0021】
抗体やアプタマーをポジトロン核種で標識する方法としては、例えば、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸)等のキレート剤を抗体やアプタマーに結合させ、続いて、DOTAに64Cu等のポジトロン核種をキレートさせる方法等が挙げられる。抗体やアプタマーにDOTAを結合させる方法としては、例えば、抗体やアプタマーとDOTA-NHS(N-hydroxysuccinimide)エステルとを反応させる方法等が挙げられる。

【0022】
KK-LC-1タンパク質は、正常細胞ではほとんど発現が見られない一方、各種癌細胞において高発現している。今回、発明者らがKK-LC-1タンパク質の局在を明らかにしたことから、本実施形態の検出方法により、高精度に癌細胞を検出することができる。

【0023】
(癌細胞の検出キット)
一実施形態において、本発明は、KK-LC-1に対する抗体又はアプタマーを備える癌細胞検出キットを提供する。KK-LC-1に対する抗体としては、上述したものを使用することができる。

【0024】
本実施形態に係る癌細胞検出キットは、ポジトロン核種で標識されたPET用プローブであってもよい。本実施形態に係る癌細胞検出キットをPET用プローブとして用いることにより、低侵襲で高精度に癌細胞を検出することができる。
【実施例】
【0025】
次に実験例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
[実験例1:KK-LC-1タンパク質の構造予測]
KK-LC-1タンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)をもとに、以下の複数のプログラムを用いてその構造を予測した。
【実施例】
【0027】
(「SOSUI」による検討)
プログラム「SOSUI」(http://harrier.nagahama-i-bio.ac.jp/sosui/sosui_submit.html)を用いた検討を行った。その結果、N末端から20残基が膜貫通ドメインであることが予測された。
【実施例】
【0028】
(「Euk-mPLoc2.0」による検討)
プログラム「Euk-mPLoc2.0」(http://www.csbio.sjtu.edu.cn/bioinf/euk-multi-2/)を用いた検討を行った。その結果、KK-LC-1タンパク質は細胞膜に局在するタンパク質であることが予測された。
【実施例】
【0029】
(「BaCelLo」による検討)
プログラム「BaCelLo」(http://gpcr.biocomp.unibo.it/bacello/pred.htm)を用いた検討を行った。その結果、KK-LC-1タンパク質は分泌タンパク質であることが予測された。
【実施例】
【0030】
(「CELLO」による検討)
プログラム「CELLO」(http://cello.life.nctu.edu.tw/)を用いた検討を行った。その結果、KK-LC-1タンパク質は、細胞外又は細胞膜に局在するタンパク質であることが予測された。
【実施例】
【0031】
以上の結果から、KK-LC-1タンパク質は、N末端から20残基の領域に膜貫通ドメインを有し、細胞外に表出するタンパク質又は分泌タンパク質であることが予測された。
【実施例】
【0032】
[実験例2:KK-LC-1融合タンパク質の発現ベクターの作製]
KK-LC-1タンパク質をコードする塩基配列(配列番号2)をもとに、KK-LC-1融合タンパク質の発現ベクターを作製した。
【実施例】
【0033】
図1は、作製した発現ベクターがコードするKK-LC-1融合タンパク質の構造を示す模式図である。具体的には、C末端にV5タグを有し、N末端にはタグを有しないKK-LC-1融合タンパク質(以下、「no flag」という。)、C末端にV5タグを有し、N末端に1×flagタグを有するKK-LC-1融合タンパク質(以下、「1×flag」という。)、及び、C末端にV5タグを有し、N末端に3×flagタグを有するKK-LC-1融合タンパク質(以下、「3×flag」という。)の発現ベクターを作製した。なお、各V5タグの下流には、ヒスチジンタグ(図1において、「His×6」と示す。)も付加されていた。
【実施例】
【0034】
[実験例3:ウエスタンブロッティングによるKK-LC-1融合タンパク質の発現解析]
上述した各発現ベクターを、ヒト胃腺癌細胞株であるAGS細胞に導入して発現させ、48時間後にKK-LC-1融合タンパク質の発現を解析した。
【実施例】
【0035】
KK-LC-1融合タンパク質を発現させた結果、動物細胞が培養皿から剥離して浮遊する現象が見られた。そこで、培養皿に接着した細胞及び浮遊した細胞をそれぞれ回収し、V5タグに対する抗体(抗V5抗体)を用いたウエスタンブロッティングを行い、KK-LC-1融合タンパク質の発現を確認した。陰性対照として、発現ベクターを導入していないAGS細胞を用いた。また、陽性対照として、抗β-アクチン抗体を用いてβ-アクチンタンパク質の検出も行った。
【実施例】
【0036】
図2は、ウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。その結果、AGS細胞がKK-LC-1融合タンパク質を発現したことが確認された。更に、KK-LC-1融合タンパク質の発現量は、培養皿に接着した細胞よりも、浮遊した細胞においてより高い傾向が認められた。
【実施例】
【0037】
[実験例4:フローサイトメトリーによるKK-LC-1融合タンパク質の発現解析]
上述したKK-LC-1融合タンパク質の発現ベクター(3×flag)をヒト胃腺癌細胞株であるAGS細胞に導入して発現させた。続いて、遺伝子導入から48時間後に、細胞を抗V5抗体で染色してフローサイトメトリーにより解析し、KK-LC-1融合タンパク質の発現を確認した。
【実施例】
【0038】
図3(a)及び(b)は、フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図3(a)は、対照として、発現ベクターを導入していないAGS細胞を、染色せずに解析した結果を示すグラフであり、横軸に蛍光強度を、縦軸に細胞数を示す。グラフ中の数字は、グラフ中の線で示した領域の細胞の存在割合(%)を示す。
【実施例】
【0039】
図3(b)左欄は、対照として、発現ベクターを導入していないAGS細胞を、抗V5抗体で染色して解析した結果を示すグラフであり、横軸に蛍光強度を、縦軸に細胞数を示す。グラフ中の数字は、グラフ中の線で示した領域の細胞の存在割合(%)を示す。
【実施例】
【0040】
図3(b)中欄は、発現ベクターを導入したAGS細胞のうち、培養皿に接着していた細胞を、抗V5抗体で染色して解析した結果を示すグラフであり、横軸に蛍光強度を、縦軸に細胞数を示す。グラフ中の数字は、グラフ中の線で示した領域の細胞の存在割合(%)を示す。
【実施例】
【0041】
図3(b)右欄は、発現ベクターを導入したAGS細胞のうち、培養皿から浮遊した細胞を、抗V5抗体で染色して解析した結果を示すグラフであり、横軸に蛍光強度を、縦軸に細胞数を示す。グラフ中の数字は、グラフ中の線で示した領域の細胞の存在割合(%)を示す。
【実施例】
【0042】
その結果、抗体で細胞表面を染色することにより、KK-LC-1融合タンパク質の発現を検出することができた。図3(b)右欄に示すように、KK-LC-1融合タンパク質の発現は、浮遊した細胞において特に顕著であった。
【実施例】
【0043】
抗V5抗体を用いてKK-LC-1融合タンパク質の発現を検出することができたことから、KK-LC-1は、C末端側を細胞の外部に露出した状態で細胞膜表面上に存在することが明らかとなった。
【実施例】
【0044】
これについて説明する。図4(a)は、KK-LC-1融合タンパク質(3×flag)400の構造を示す模式図である。KK-LC-1融合タンパク質400は、N末端に3×flagタグ410を有し、その下流に膜貫通ドメイン420を有し、C末端にV5タグ430を有している。
【実施例】
【0045】
図4(b)は、KK-LC-1融合タンパク質が、C末端側を細胞の外部に露出した状態で細胞膜表面上に存在すると仮定した場合の、動物細胞におけるKK-LC-1融合タンパク質の存在状態を示す模式図である。KK-LC-1融合タンパク質が、このような状態で存在すれば、抗V5抗体による染色により、細胞が染色されると考えられる。
【実施例】
【0046】
一方、図4(c)は、KK-LC-1融合タンパク質が、C末端側を細胞の内側に向けた状態で細胞膜表面上に存在すると仮定した場合の、動物細胞におけるKK-LC-1融合タンパク質の存在状態を示す模式図である。KK-LC-1融合タンパク質が、このような状態で存在すれば、抗V5抗体で染色しても、細胞は染色されないと考えられる。
【実施例】
【0047】
したがって、抗V5抗体を用いたフローサイトメトリー解析により、KK-LC-1融合タンパク質の発現を検出することができたことは、KK-LC-1タンパク質がC末端側を細胞の外部に露出した状態で細胞膜表面上に存在することを示す。
【実施例】
【0048】
以上の結果から、細胞膜表面上に存在するKK-LC-1タンパク質の発現を検出することにより、癌細胞を高精度に検出することができることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明により、より高精度に癌細胞を検出することができる、癌細胞の検出方法及び癌細胞検出キットを提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
400…KK-LC-1融合タンパク質、410…3×flagタグ、420…膜貫通ドメイン、430…V5タグ。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図2】
3