TOP > 国内特許検索 > 排水処理方法 > 明細書

明細書 :排水処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-153113 (P2016-153113A)
公開日 平成28年8月25日(2016.8.25)
発明の名称または考案の名称 排水処理方法
国際特許分類 C02F   1/52        (2006.01)
FI C02F 1/52 J
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 6
出願番号 特願2015-031835 (P2015-031835)
出願日 平成27年2月20日(2015.2.20)
発明者または考案者 【氏名】岸本 直之
出願人 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100121337、【弁理士】、【氏名又は名称】藤河 恒生
審査請求 未請求
テーマコード 4D015
Fターム 4D015BA04
4D015BA19
4D015BA21
4D015BB08
4D015BB18
4D015CA07
4D015DA05
4D015DA13
4D015DB44
4D015EA04
4D015EA32
要約 【課題】水溶性有機フッ素化合物に有効な凝集法による排水処理方法を提供する。
【解決手段】この排水処理方法は、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)に代表される水溶性有機フッ素化合物を含有する排水を処理する排水処理方法であって、アルミニウム系凝集剤又は鉄系凝集剤などの無機系凝集剤、及び臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムなどの陽イオン界面活性剤によって前記水溶性有機フッ素化合物を凝集分離する
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
水溶性有機フッ素化合物を含有する排水を処理する排水処理方法であって、
排水処理槽に水溶性有機フッ素化合物を含有する排水を注入するとともに無機系凝集剤及び陽イオン界面活性剤を添加して、前記排水処理槽内を攪拌することにより、前記水溶性有機フッ素化合物を凝集分離することを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水処理方法において、
前記無機系凝集剤として、アルミニウム系凝集剤又は鉄系凝集剤を用いることを特徴とする排水処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排水処理方法において、
前記陽イオン界面活性剤として、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用いることを特徴とする排水処理方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の排水処理方法において、
前記排水中の前記水溶性有機フッ素化合物に対する前記陽イオン界面活性剤の注入量の物質量比を1以上5.2以下の範囲に設定することを特徴とする排水処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性有機フッ素化合物を含有する排水を処理する排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)に代表される水溶性有機フッ素化合物は、界面活性剤など様々な用途に用いられてきたが、これを含有する排水を処理する場合、化学的安定性が高いため、分解処理が困難である。特にPFOSは、ほぼすべての有機化合物を分解し、二酸化炭素まで無機化できると言われているOHラジカルを利用する促進酸化処理技術を用いてもほとんど分解されないことが知られている。そのため、吸着法、膜分離法、抽出法など排水から水溶性有機フッ素化合物を分離する方法が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シクロデキストリンポリマーを吸着剤に用いた吸着法が開示されている。また、特許文献2には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂製の多孔質膜による膜分離法が開示されている。また、特許文献3には、超臨界二酸化炭素によって水溶性有機フッ素化合物を抽出する抽出法が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2012-101159号公報
【特許文献2】特開2010-119931号公報
【特許文献3】特開2004-174387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吸着法は、吸着剤のコストが高く、また排水中の共存物質による吸着阻害が起こり得る。膜分離法は、排水中の共存物質による膜閉塞(ファウリング)の問題があり、かつ、膜ろ過及び膜洗浄のための運転管理コストが大きい。抽出法は、付加的な特殊設備又は高圧設備が必要であり、どのような工場でも適用可能というわけにはいかない。
【0006】
これらの方法に対し、凝集剤によって水溶性有機フッ素化合物を凝集分離する凝集法が考えられるが、水溶性有機フッ素化合物に有効な凝集法は、まだ提案されてはいない。凝集法は、吸着法、膜分離法、抽出法のようには特別な設備を導入する必要はなく、一般的な既存の設備を用いることも可能であり、導入にあたって初期投資が小さい。
【0007】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、水溶性有機フッ素化合物に有効な凝集法による排水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の排水処理方法は、水溶性有機フッ素化合物を含有する排水を処理する排水処理方法であって、排水処理槽に水溶性有機フッ素化合物を含有する排水を注入するとともに無機系凝集剤及び陽イオン界面活性剤を添加して、前記排水処理槽内を攪拌することにより、前記水溶性有機フッ素化合物を凝集分離することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の排水処理方法は、請求項1に記載の排水処理方法において、前記無機系凝集剤として、アルミニウム系凝集剤又は鉄系凝集剤を用いることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の排水処理方法は、請求項1又は2に記載の排水処理方法において、前記陽イオン界面活性剤として、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用いることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の排水処理方法は、請求項1~3のいずれか1項に記載の排水処理方法において、前記排水中の前記水溶性有機フッ素化合物に対する前記陽イオン界面活性剤の注入量の物質量比を1以上5.2以下の範囲に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,水溶性有機フッ素化合物に有効な凝集法による排水処理方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る排水処理方法を実現する排水処理装置の模式図である。
【図2】同上の排水処理方法の実験で使用した実験装置の模式図である。
【図3】同上の排水処理方法の実験結果を示す特性グラフである。
【図4】同上の排水処理方法の比較例の実験結果を示す特性グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施形態に係る排水処理方法は、水溶性有機フッ素化合物を含有する排水を処理する排水処理方法であって、排水処理槽に水溶性有機フッ素化合物を含有する排水を注入するとともに無機系凝集剤及び陽イオン界面活性剤を添加して、排水処理槽内を攪拌することにより、水溶性有機フッ素化合物を凝集分離するものである。水溶性有機フッ素化合物は、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)に代表されるものである。無機系凝集剤としては、アルミニウム系凝集剤(例えば、硫酸ばん土)又は鉄系凝集剤(例えば、塩化第二鉄)を用いることができる。陽イオン界面活性剤としては、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)を用いることができる。

【0015】
この排水処理方法は、図1に例示するような排水処理装置1を用いて実現できる。この排水処理装置1では、排水処理槽2に水溶性有機フッ素化合物を含有する排水Sを注入し、無機系凝集剤及び陽イオン界面活性剤を添加して、排水処理槽2内の排水Sを攪拌機3で攪拌する。そうすると、水溶性有機フッ素化合物は、徐々に凝集して行き沈殿する。その沈殿により水溶性有機フッ素化合物が分離し除去された排水S(上澄み)は、次の工程の排水処理装置に移される。

【0016】
この排水処理方法は、後述する実験で示すように、無機凝集剤に加えて少量の陽イオン界面活性剤を添加することで、有効に排水から水溶性有機フッ素化合物を凝集分離することができる。排水処理装置1は、一般的な既存の設備を活用することも可能である。

【0017】
次に、本願発明者が行った排水処理方法の実験について以下説明する。実験装置としては、図2に示すような、多数の実験用の排水処理槽2及び攪拌機3を有するジャーテスター1’を用いた。水溶性有機フッ素化合物は、PFOSとした。無機系凝集剤は、アルミニウム系凝集剤である硫酸ばん土、又は鉄系凝集剤である塩化第二鉄を用いた。陽イオン界面活性剤は、CTABを用いた。排水S中の水溶性有機フッ素化合物の初期濃度は2μM、無機系凝集剤の濃度は2.0mMとした。陽イオン界面活性剤の濃度は0~10.4μMの範囲、つまり、水溶性有機フッ素化合物に対する陽イオン界面活性剤の注入量の物質量比を0~5.2の範囲で設定した。それぞれの排水処理槽2に排水Sを注入し、無機系凝集剤及び設定量の陽イオン界面活性剤を添加し、炭酸ナトリウムを用いてPHを7に調整した。pH調整後、急速撹拌をG値200s-1で3分間行った後、緩速撹拌をG値46s-1で30分間実施した。そして、5分間静置沈降させた後、上澄みを採取し、孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過したろ液を液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)で分析し、水溶性有機フッ素化合物の濃度を定量した。

【0018】
図3に、実験結果を示す。横軸は排水Sに添加した陽イオン界面活性剤の濃度、縦軸は排水S中の水溶性有機フッ素化合物の濃度である。図3より、陽イオン界面活性剤の添加量を増やして濃度を増加させるにつれ、上澄み中の水溶性有機フッ素化合物の濃度が減少しており、陽イオン界面活性剤の添加効果が認められる。添加効果は、アルミニウム系凝集剤を用いた場合の方が大きい。90%以上の水溶性有機フッ素化合物の除去に必要な陽イオン界面活性剤の濃度は、アルミニウム系凝集剤を用いた場合では1.2μM以上、鉄系凝集剤を用いた場合では2μM以上である。よって、90%以上の水溶性有機フッ素化合物の除去には、物質量比で、アルミニウム系凝集剤を用いた場合では0.6倍、鉄系凝集剤を用いた場合では1倍の陽イオン界面活性剤の添加が必要となることになる。重量換算すると、PFOSの分子量は500.13、CTABの分子量は364なので、90%以上の水溶性有機フッ素化合物の除去には、重量比で、アルミニウム系凝集剤を用いた場合では0.44倍、鉄系凝集剤を用いた場合では0.73倍の陽イオン界面活性剤の添加が必要となることになる。このように、陽イオン界面活性剤の添加は少量でよい。また、水溶性有機フッ素化合物に対する陽イオン界面活性剤の注入量の物質量比を1~5.2の範囲に設定すれば、90%以上の水溶性有機フッ素化合物の除去が可能である。

【0019】
次に、比較のために本願発明者が行った実験について説明する。実験装置としては、上記のジャーテスター1’を用いた。水溶性有機フッ素化合物と無機系凝集剤は、上記実験と同様である。陽イオン界面活性剤の代わりに、活性炭(より詳細には、クラレケミカル製クラレコール(登録商標)GW-HS2(粒径149~325μm))を乳鉢ですり潰したものを用いた。排水S中の水溶性有機フッ素化合物の初期濃度と無機系凝集剤の濃度は、上記実験と同様である。活性炭の添加量は、0~55mg/Lの範囲で設定した。それぞれの排水処理槽2に排水Sを注入し、無機系凝集剤及び設定量の活性炭を添加した。それ以降のpHの調整、攪拌、分析は、上記実験と同様である。

【0020】
図4に、比較のための実験の結果を示す。横軸は排水Sに添加した活性炭の添加量、縦軸は排水S中の水溶性有機フッ素化合物の濃度である。図4より,活性炭の添加量を増やすにつれ、上澄み中の水溶性有機フッ素化合物の濃度が減少しており、活性炭の添加効果が認められる。添加効果は、無機系凝集剤の種類に依存していない。90%以上の水溶性有機フッ素化合物の除去に必要な活性炭の添加量は、38mg/L以上と評価できる。2μMのPFOSの重量濃度は1.0mg/Lであるので、90%以上の水溶性有機フッ素化合物の除去には、重量比で、水溶性有機フッ素化合物の38倍以上(上記の陽イオン界面活性剤と比較すると52倍以上)もの大量の活性炭の添加が必要となることになる。

【0021】
以上の実験より、陽イオン界面活性剤は、水溶性有機フッ素化合物の除去に極めて有効であることが分かる。

【0022】
一般に水溶性有機フッ素化合物は炭素-フッ素結合部が疎水性の性質を有し、一部にカルボン酸やスルホン酸等の陰イオン性の構造を有することで水溶性を発現する。よって、陽イオン界面活性剤を添加することにより有機フッ素化合物の炭素-フッ素結合部と陽イオン界面活性剤の疎水基が会合し、低濃度条件下では、微小な会合体として水中に分散するものと考えられる。この際、有機フッ素化合物の陰イオン性部分が有する負電荷は陽イオン界面活性剤が有する正電荷により、会合体全体として電荷中和が起こる。その結果、凝集フロックへの吸着性が向上し、水溶性有機フッ素化合物の除去が促進されるものと推測される。

【0023】
以上、本発明の実施形態に係る排水処理方法について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、無機系凝集剤及び陽イオン界面活性剤に加えてそれ以外のものを、必要に応じて添加することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 排水処理装置
1’ ジャーテスター
2 排水処理槽
3 攪拌機
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図2】
3