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明細書 :生体情報推定装置、生体情報推定方法、及びコンピュータプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-023472 (P2017-023472A)
公開日 平成29年2月2日(2017.2.2)
発明の名称または考案の名称 生体情報推定装置、生体情報推定方法、及びコンピュータプログラム
国際特許分類 A61B   5/022       (2006.01)
A61B   5/02        (2006.01)
FI A61B 5/02 337F
A61B 5/02 310A
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 29
出願番号 特願2015-145878 (P2015-145878)
出願日 平成27年7月23日(2015.7.23)
発明者または考案者 【氏名】鈴木 新
出願人 【識別番号】504145283
【氏名又は名称】国立大学法人 和歌山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000280、【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C017
Fターム 4C017AA07
4C017AA08
4C017AA09
4C017AC28
4C017BC11
4C017BC23
4C017BD04
要約 【課題】生体情報の推定値をばらつきなく求めることができる技術を提供する。
【解決手段】 生体情報推定装置1は、脈波を微分した速度脈波と、速度脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定部10と、前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得部11と、前記幅値に基づいて推定血圧値を求める演算部12とを備えている。交差点特定部10は、互いに異なる速度脈波を表す複数の前記等高線ごとに複数の交差点を特定し、幅値取得部11は、複数の前記等高線ごとに前記幅値を取得する。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる生体の脈波から生体情報の推定値を求める生体情報推定装置であって、
前記脈波を取得する脈波取得部と、
前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定部と、
前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得部と、
前記幅値に基づいて前記推定値を求める演算部と、を備え、
前記交差点特定部は、互いに異なる値を表す複数の前記等高線ごとに前記複数の交差点を特定し、
前記幅値取得部は、複数の前記等高線ごとに前記幅値を取得する
生体情報推定装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記幅値と、前記複数の交差点の数とに基づいて前記推定値を求める請求項1に記載の生体情報推定装置。
【請求項3】
前記演算部は、
前記生体を分類するために予め設定された複数のグループに対応した前記推定値の演算を行うための演算用モデルと、
前記推定値の演算対象とされる前記生体が前記複数のグループの内のいずれに該当するかを、前記幅値及び前記複数の交差点の数の少なくとも一方に基づいて特定するグループ特定部と、
特定されたグループに応じた前記推定値の演算を、前記演算用モデルを用いて行う推定値演算部と、を備えている請求項1又は請求項2に記載の生体情報推定装置。
【請求項4】
前記脈波取得部は、前記生体から検出された検出脈波の微分波である微分脈波を前記脈波として取得する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の生体情報推定装置。
【請求項5】
前記脈波取得部は、前記検出脈波を一回微分した一回微分脈波と、前記検出脈波を二回微分した二回微分脈波とを前記脈波として前記交差点特定部に与え、
前記交差点特定部は、前記一回微分脈波と、前記一回微分脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す第1等高線と、が交差する複数の第1交差点を特定するとともに、前記二回微分脈波と、前記二回微分脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す第2等高線と、が交差する複数の第2交差点を特定し、
前記演算部は、前記複数の第1交差点より取得される第1幅値と、前記複数の第2交差点より取得される第2幅値とに基づいて前記推定値を求める請求項4に記載の生体情報推定装置。
【請求項6】
正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる生体の脈波から生体情報の推定値を求める生体情報推定方法であって、
前記脈波を取得する脈波取得ステップと、
前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定ステップと、
前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得ステップと、
前記幅値に基づいて前記推定値を求める演算ステップと、を含み、
前記交差点特定ステップは、互いに異なる値を表す複数の前記等高線ごとに前記複数の交差点を特定し、
前記幅値取得ステップは、複数の前記等高線ごとに前記幅値を取得する
生体情報推定方法。
【請求項7】
正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる生体の脈波から生体情報の推定値を求める処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに
前記脈波を取得する脈波取得ステップと、
前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定ステップと、
前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得ステップと、
前記幅値に基づいて前記推定値を求める演算ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記交差点特定ステップは、互いに異なる値を表す複数の前記等高線ごとに前記複数の交差点を特定し、
前記幅値取得ステップは、複数の前記等高線ごとに前記幅値を取得する
コンピュータプログラム。
【請求項8】
正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる生体の脈波から生体情報の推定値を求める生体情報推定装置であって、
前記脈波を取得する脈波取得部と、
前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定部と、
前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得部と、
前記幅値と、前記複数の交差点の数とに基づいて前記推定値を求める演算部と、を備えている生体情報推定装置。
【請求項9】
正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる生体の脈波から生体情報の推定値を求める生体情報推定方法であって、
前記脈波を取得する脈波取得ステップと、
前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定ステップと、
前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得ステップと、
前記幅値と、前記複数の交差点の数とに基づいて前記推定値を求める演算ステップと、を含んでいる生体情報推定方法。
【請求項10】
正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる生体の脈波から生体情報の推定値を求める処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに
前記脈波を取得する脈波取得ステップと、
前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定ステップと、
前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得ステップと、
前記幅値と、前記複数の交差点の数とに基づいて前記推定値を求める演算ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項11】
生体の脈波から生体情報の推定値を求める生体情報推定装置であって、
前記脈波を取得する脈波取得部と、
前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定部と、
前記複数の交差点の数に基づいて前記推定値を求める演算部と、を備えている生体情報推定装置。
【請求項12】
生体の脈波から生体情報の推定値を求める生体情報推定方法であって、
前記脈波を取得する脈波取得ステップと、
前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定ステップと、
前記複数の交差点の数に基づいて前記推定値を求める演算ステップと、を含んでいる生体情報推定方法。
【請求項13】
生体の脈波から生体情報の推定値を求める処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに
前記脈波を取得する脈波取得ステップと、
前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定ステップと、
前記複数の交差点の数に基づいて前記推定値を求める演算ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラム。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の脈波を表す信号波に基づいて生体情報の推定値を求める生体情報推定装置、生体情報推定方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、脈波信号を一回微分した速度脈波や、二回微分した加速度脈波から得られる特徴量に基づいて、血圧等の生体情報を推定することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2010-187993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記脈波信号は、光を生体に放射するLED等の光源と、放射した光の反射光又は透過光の強度を電気信号として検出する検出部と、を備えたセンサ装置によって取得することができる。
前記センサ装置は、心臓による拍動によって変化する血管の容積変化を光の反射光又は透過光の強度変化として検出する。前記センサ装置は、検出された光の強度変化を、容積脈波を示す脈波信号として出力する。
【0005】
ここで、上記脈波信号には、生体の脈波の成分だけでなく、生体の振動等、脈波とは関係のない外的な要因によるノイズ等が含まれてしまう場合がある。
このため、前記センサ装置には、検出した信号から不要なノイズを除去するためのフィルタが通常設けられている。
【0006】
前記フィルタは、ノイズの周波数に応じて一定の周波数帯域の信号成分を除去するように構成されている。よって、前記フィルタは、一定の周波数帯域内のノイズを除去することができるが、脈波信号の成分をも一部除去してしまうことがある。
前記センサ装置は、信号強度が比較的高く表れる脈波信号の成分については十分に検出することができる。しかし、信号強度が比較的低く表れる脈波信号の成分についてはフィルタによって減衰されてしまい、検出できても信号強度がさらに低くかつなだらかになってしまうことがあった。
検出された信号強度が低かったりなだらかであったりする場合、上述の速度脈波や加速度脈波のピークの値(の絶対値)もより小さく表れる。特徴量として用いるピークの値がより小さく表れれば、少しの変動であっても当該特徴量の相対的なばらつきが大きくなり、生体情報の推定値をばらつきのない安定した値として求めることが困難になる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、生体情報の推定値をばらつきなく求めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる生体の脈波から生体情報の推定値を求める生体情報推定装置であって、前記脈波を取得する脈波取得部と、前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定部と、前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得部と、前記幅値に基づいて前記推定値を求める演算部と、を備え、前記交差点特定部は、互いに異なる値を表す複数の前記等高線ごとに前記複数の交差点を特定し、前記幅値取得部は、複数の前記等高線ごとに前記幅値を取得する。
【0009】
上記のように構成された生体情報推定装置によれば、複数の等高線ごとの幅値を取得することで、脈波の波形に関する情報を時間軸方向に沿って取得できる。よって、フィルタによって脈波が減衰され、脈波のピークの値を取得するのが困難になる程度に当該ピークが小さくなったとしても、そのピークから脈波の波形に関する情報を取得できる。この結果、生体情報の推定値をばらつきなく求めることができる。
【0010】
(2)上記生体情報推定装置において、前記演算部は、前記幅値と、前記複数の交差点の数とに基づいて前記推定値を求めることが好ましい。
この場合、演算部は、生体情報の推定値を求めるために、幅値と複数の交差点の数とを用いることで、より多くの情報に基づいて生体情報の推定値を求めることができる。この結果、生体情報の推定値をよりばらつきなく求めることができる。
なお、一の等高線による交差点の数は、幅値の個数と等価である。よって、上記生体情報推定装置において、複数の交差点の数に代えて、幅値の個数を用いることができる。
【0011】
(3)また、上記生体情報推定装置において、前記演算部は、前記生体を分類するために予め設定された複数のグループに対応した前記推定値の演算を行うための演算用モデルと、前記推定値の演算対象とされる前記生体が前記複数のグループの内のいずれに該当するかを、前記幅値及び前記複数の交差点の数の少なくとも一方に基づいて特定するグループ特定部と、特定されたグループに応じた前記推定値の演算を、前記演算用モデルを用いて行う推定値演算部と、を備えていてもよい。
この場合、分類された各グループに応じて適切な演算を行うことができるので、より精度よく推定値を求めることができる。
【0012】
(4)上記生体情報推定装置において、前記脈波取得部は、前記生体から検出された検出脈波の微分波である微分脈波を前記脈波として取得することが好ましい。
この場合、脈波の振幅変動がより大きくなりピークが明りょうに表れるようにすることができる。この結果、脈波の波形に関する情報をより確実に取得することができる。
【0013】
(5)上記生体情報推定装置において、前記脈波取得部は、前記検出脈波を一回微分した一回微分脈波と、前記検出脈波を二回微分した二回微分脈波とを前記脈波として前記交差点特定部に与え、前記交差点特定部は、前記一回微分脈波と、前記一回微分脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す第1等高線と、が交差する複数の第1交差点を特定するとともに、前記二回微分脈波と、前記二回微分脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す第2等高線と、が交差する複数の第2交差点を特定し、前記演算部は、前記複数の第1交差点より取得される第1幅値と、前記複数の第2交差点より取得される第2幅値とに基づいて前記推定値を求めてもよい。
この場合、一回微分脈波から得た第1幅値と、二回微分脈波から得た第2幅値の両方に基づいて演算を行うので、より多くの情報に基づいて生体情報の推定値を求めることができ、生体情報の推定値をよりばらつきなく求めることができる。
【0014】
(6)本発明は、正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる生体の脈波から生体情報の推定値を求める生体情報推定方法であって、前記脈波を取得する脈波取得ステップと、前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定ステップと、前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得ステップと、前記幅値に基づいて前記推定値を求める演算ステップと、を含み、前記交差点特定ステップは、互いに異なる値を表す複数の前記等高線ごとに前記複数の交差点を特定し、前記幅値取得ステップは、複数の前記等高線ごとに前記幅値を取得する。
【0015】
(7)また、本発明は、正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる生体の脈波から生体情報の推定値を求める処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに前記脈波を取得する脈波取得ステップと、前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定ステップと、前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得ステップと、前記幅値に基づいて前記推定値を求める演算ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記交差点特定ステップは、互いに異なる値を表す複数の前記等高線ごとに前記複数の交差点を特定し、前記幅値取得ステップは、複数の前記等高線ごとに前記幅値を取得するコンピュータプログラムである。
【0016】
上記構成の生体情報推定装置及びコンピュータプログラムによれば、生体情報の推定値をばらつきなく求めることができる。
【0017】
(8)また、本発明は、正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる生体の脈波から生体情報の推定値を求める生体情報推定装置であって、前記脈波を取得する脈波取得部と、前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定部と、前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得部と、前記幅値と、前記複数の交差点の数とに基づいて前記推定値を求める演算部と、を備えている。
【0018】
(9)本発明は、正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる生体の脈波から生体情報の推定値を求める生体情報推定方法であって、前記脈波を取得する脈波取得ステップと、前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定ステップと、前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得ステップと、前記幅値と、前記複数の交差点の数とに基づいて前記推定値を求める演算ステップと、を含んでいる。
【0019】
(10)本発明は、正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる生体の脈波から生体情報の推定値を求める処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに前記脈波を取得する脈波取得ステップと、前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定ステップと、前記等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の前記等高線上の幅値を取得する幅値取得ステップと、前記幅値と、前記複数の交差点の数とに基づいて前記推定値を求める演算ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0020】
上記構成の生体情報推定装置、生体情報推定方法、及びコンピュータプログラムによれば、幅値と、交差点の数とを取得することで、脈波の波形に関する情報を時間軸方向に沿って取得できる。よって、フィルタによって脈波が減衰され、脈波のピークの値を取得するのが困難になる程度に当該ピークが小さくなったとしても、そのピークから脈波の波形に関する情報を取得できる。この結果、生体情報の推定値をばらつきなく求めることができる。
【0021】
(11)また、本発明は、生体の脈波から生体情報の推定値を求める生体情報推定装置であって、前記脈波を取得する脈波取得部と、前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定部と、前記複数の交差点の数に基づいて前記推定値を求める演算部と、を備えている。
【0022】
(12)本発明は、生体の脈波から生体情報の推定値を求める生体情報推定方法であって、前記脈波を取得する脈波取得ステップと、前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定ステップと、前記複数の交差点の数に基づいて前記推定値を求める演算ステップと、を含んでいる。
【0023】
(13)本発明は、生体の脈波から生体情報の推定値を求める処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに前記脈波を取得する脈波取得ステップと、前記脈波と、前記脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線と、が交差する複数の交差点を特定する交差点特定ステップと、前記複数の交差点の数に基づいて前記推定値を求める演算ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0024】
上記構成の生体情報推定装置、生体情報推定方法、及びコンピュータプログラムによれば、交差点の数を取得することで、脈波の波形に関する情報を時間軸方向に沿って取得できる。よって、フィルタによって脈波が減衰され、脈波のピークの値を取得するのが困難になる程度に当該ピークが小さくなったとしても、そのピークから脈波の波形に関する情報を取得できる。この結果、生体情報の推定値をばらつきなく求めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、生体情報の推定値をばらつきなく求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一実施形態に係る生体情報推定装置の全体構成を示す図である。
【図2】センサ制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】センサ部が出力する出力信号の信号波の一例を示す図である。
【図5】(a)は、交差点特定部が求めた速度脈波の一例を示す図、(b)は、交差点特定部が求めた加速度脈波の一例を示す図である。
【図6】領域における速度脈波と等高線との関係を示した図である。
【図7】(a)は、交差点特定部が求めた速度脈波の他の例を示す図、(b)は、交差点特定部が求めた加速度脈波の他の例を示す図である。
【図8】演算モデルのトレーニングデータの一例を示す図である。
【図9】(a)は、統合演算モデルのトレーニングデータの一例を示す図であり、速度脈波に基づいて求めた推定血圧値に関するトレーニングデータを示している。(b)は、統合演算モデルのトレーニングデータの一例を示す図であり、加速度脈波に基づいて求めた推定血圧値に関するトレーニングデータを示している。
【図10】比較例として用いるピークの値の求め方を説明するための図である。
【図11】特徴量の抽出率を求めた結果を示す図である。
【図12】変動係数C.V.を求めた結果を示す図である。
【図13】推定血圧値の絶対平均誤差を求めた結果を示した図である。
【図14】変形例に係る生体情報推定装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔全体構成について〕
図1は、一実施形態に係る生体情報推定装置の全体構成を示す図である。図1中、生体情報推定装置1は、生体の脈波を表す信号を取得し、取得した信号から生体情報の推定値を求める機能を有している。

【0028】
本実施形態の生体情報推定装置1は、センサ部2と、処理部3とを備えている。
センサ部2は、被検者Sの指先等の末端部分から当該被検者Sの容積脈波を取得し、取得した容積脈波を表す出力信号を処理部3に与える機能を有している。処理部3は、与えられた出力信号に基づいて演算処理を行い、被検者の生体情報である血圧値を推定値(推定血圧値)として求める機能を有している。

【0029】
センサ部2は、光源4と、受光部5と、センサ制御部6とを備えており、いわゆる光電式の脈波センサを構成している。
光源4は、例えば、LED(Light Emitting Diode)によって構成されており、被検者Sに向けて光を照射する。
受光部5は、例えば、PD(Photo Diode)によって構成されており、光源4からの光が被検者Sで反射したときの反射光を検出し、反射光の強度に応じた出力信号を出力する。

【0030】
被検者Sからの反射波の強度は、被検者Sの心拍による血管の容積変化に応じて変化する。血管の容積変化に応じて被検者Sによる光の吸収率が変化するからである。
よって、受光部5が出力する出力信号の信号強度も、被検者Sの心拍による血管の容積変化に応じて変化する。つまり、受光部5の出力信号は、被検者Sから検出された容積脈波を表している。
受光部5の出力信号は、センサ制御部6に与えられる。

【0031】
図2は、センサ制御部6の構成を示すブロック図である。センサ制御部6は、光源4及び受光部5を制御する機能を有している。センサ制御部6は、受光部5に反射光を適切に受光させるように光源4を制御する光源制御部6aと、受光部5から与えられる出力信号に対して必要な信号処理を行う信号処理部6bと、信号処理が行われた出力信号からノイズ等を除去するためのフィルタ部6cと、フィルタ部6cを通過した出力信号を増幅する増幅部6dと、アナログ信号である出力信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器(ADC)6eとを備えている。

【0032】
センサ制御部6は、受光部5から与えられる出力信号に対して、ノイズ除去や、増幅、アナログ/デジタル変換といった信号処理を行い、デジタル信号に変換された出力信号を出力する。
センサ制御部6は、出力信号を処理部3に与える。
なお、センサ部2のセンサ制御部6からの出力信号は、各種信号処理がなされているが、被検者Sから検出された容積脈波(検出脈波)を表している。

【0033】
〔2. 処理部3の処理について〕
図3は、処理部3の構成を示すブロック図である。
処理部3は、上述したように、センサ部2から与えられるデジタル信号に変換された出力信号に基づいて、被検者の推定血圧値を求める機能を有している。

【0034】
処理部3は、プロセッサや、記憶部、入出力部等を含むコンピュータによって構成されている。処理部3は、記憶部に記憶されたプログラムを読み出して以下に説明する当該処理部3が有する各機能部を実現するとともに、各種機能を実行する機能を有している。

【0035】
図3に示すように、処理部3は、微分処理部9と、交差点特定部10と、幅値取得部11と、演算部12とを機能的に有している。
センサ部2が出力する出力信号は、微分処理部9に与えられる。
微分処理部9は、センサ部2が出力する出力信号が表している容積脈波を微分して微分脈波を求める機能を有している。微分処理部9は、求めた微分脈波を交差点特定部10に与える。

【0036】
図4は、センサ部2が出力する出力信号の信号波の一例を示す図である。図中、横軸は時間(秒)であり、縦軸は信号強度を表している。
図4に示されている出力信号の信号波は、被検者Sの容積脈波を表しており、1拍ごとに近似した波形が時間軸方向に並んで表れている。なお、この図4の出力信号の信号波は、24歳男性の被検者から検出したものである。

【0037】
微分処理部9は、センサ部2から出力信号が与えられると、この出力信号が表している容積脈波を微分した微分脈波を求める。
微分処理部9は、容積脈波を一回微分した一回微分波である速度脈波と、容積脈波を二回微分した二回微分波である加速度脈波とを求める。

【0038】
図5(a)は、交差点特定部10が求めた速度脈波の一例を示す図である。図5(a)中、横軸は時間(秒)であり、縦軸は一回微分値を示している。図5(a)に示す速度脈波は、図4に示す信号波を一回微分することによって求められている。
図5(b)は、交差点特定部10が求めた加速度脈波の一例を示す図である。図5(b)中、横軸は時間(秒)であり、縦軸は二回微分値を示している。図5(b)に示す加速度脈波は、図4に示す信号波を二回微分することによって求められている。

【0039】
図4に示す容積脈波は信号強度によって表されているため、正の値で表されていると言える。
つまり、図4及び図5に示すように、容積脈波、速度脈波、及び加速度脈波は、正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる。

【0040】
微分処理部9は、一つの出力信号に基づいて、速度脈波と加速度脈波の両方を求める。
微分処理部9は、求めた速度脈波及び加速度脈波を、被検者Sの脈波として交差点特定部10に与える。
つまり、センサ部2及び微分処理部9は、速度脈波及び加速度脈波を被検者Sの脈波として取得する脈波取得部を構成している。

【0041】
〔2.1 交差点の特定及び交差点数の取得〕
図3中、交差点特定部10は、与えられた微分波と、この微分波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線とが交差する交差点を特定する機能を有している。

【0042】
交差点特定部10は、微分処理部9から速度脈波と加速度脈波の両方が与えられると、速度脈波について、1拍分の領域Rを特定し、下記式(1)を用いて、特定した1拍分の領域R内の最大振幅値が「1」となるように速度脈波の振幅を調整する。
vpg´(t) = vpg(t)/vpgMAX ・・・(1)

【0043】
上記式(1)中、vpg(t)は、時間tの関数として表した速度脈波、vpg´(t)は、振幅が調整された後の速度脈波を時間tの関数として表したもの、vpgMAXは、特定した1拍分の領域R内における速度脈波の最大振幅値を示している。

【0044】
また、交差点特定部10は、加速度脈波についても同様に、1拍分の領域Rを特定し、下記式(2)を用いて、特定した1拍分の領域内の最大振幅値が「1」となるように加速度脈波の振幅を調整する。
apg´(t) = apg(t)/apgMAX ・・・(2)

【0045】
上記式(2)中、apg(t)は、時間tの関数として表した加速度脈波、apg´(t)は、振幅が調整された後の加速度脈波を時間tの関数として表したもの、apgMAXは、特定した1拍分の領域R内における加速度脈波の最大振幅値を示している。

【0046】
このように、振幅の最大値が「1」となるように速度脈波及び加速度脈波の振幅を調整することで、他の被検者Sの出力信号の信号波から求められる速度脈波及び加速度脈波との間で、後に求める特徴量を相対比較することができるように規格化する。

【0047】
なお、交差点特定部10は、1拍分の領域Rを特定する際、1拍分の領域内において速度脈波及び加速度脈波に表れる最も一回微分値が大きいピークから時間軸の上流側に遡って最初に振幅が「0」になる地点を始点及び終点として1拍分の領域である領域Rを特定する。
例えば、図5(a)では、速度脈波に表れる最も一回微分値が大きいピークpから時間軸の上流側に遡って最初に振幅が「0」になる地点rを始点及び終点として領域Rを特定する。
また、図5(b)では、加速度脈波に表れる最も二回微分値が大きいピークpから時間軸の上流側に遡って最初に振幅が「0」になる地点rを始点及び終点として領域Rを特定する。

【0048】
なお、ここで、ピークとは、脈波において極値を取る極大点及び極小点のことである。正側に表れるピークは極大値を取る極大点であり、負側に表れるピークは極小値を取る極小点である。

【0049】
次いで、交差点特定部10は、振幅を調整した後の領域R分の速度脈波を示す情報を第1特定部10aに与える。
第1特定部10aは、与えられた速度脈波と、速度脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線とが交差する交差点を特定する。

【0050】
図6は、領域Rにおける速度脈波と等高線との関係を示した図である。図6中、横軸は時間(秒)であり横軸全域が領域Rを示している。縦軸は一回微分値であって最大振幅値が「1」となるように一般化された値を示している。

【0051】
第1特定部10aは、例えば、図6に示すように、等高線Hを、縦軸の値(規格化された一回微分値の値)が「1」である最大振幅値に対して10%の間隔で複数設定する。
本実施形態では、等高線Hは、縦軸の値が、最大振幅値の-30%である「-0.3」から100%である「1」の間で「0.1」間隔となるように14本設定される。
なお、図6では、縦軸の値が「1」、「0.8」、「0.6」、「0.4」、「0.2」、「0」、「-0.2」である7本の等高線Hを例示している。

【0052】
第1特定部10aは、速度脈波と、等高線H(第1等高線)とが交差する交差点q(第1交差点)を特定する。
例えば、図6中、縦軸の値が「0」で一定である等高線Hv1に着目する。速度脈波と、等高線Hv1とは、交差点qv1、qv2、qv3、及びqv4で交差している。
よって、この場合、第1特定部10aは、等高線Hv1については、4つの交差点qv1、qv2、qv3、及びqv4を特定する。
また、第1特定部10aは、交差点qの数である交差点数VPを、速度脈波の特徴量として取得する。この場合第1特定部10aは、等高線Hv1による交差点数VPとして「4」を取得する。
なお、速度脈波の特徴量とは、速度脈波に基づいた生体情報の取得のために、当該速度脈波の特徴を数値化した値のことである。

【0053】
第1特定部10aは、設定した複数(本例では14本)の等高線Hごとに、交差点qの特定及び交差点数VPの取得を行う。よって、第1特定部10aは、等高線Hと同じ個数である14個の交差点数VPを取得する。
第1特定部10aは、特定した交差点qを示す情報を、領域R分の速度脈波を示す情報とともに幅値取得部11に与える。また、第1特定部10aは、取得した交差点数VPを演算部12に与える。
第1特定部10aが各部に与える、交差点qを示す情報及び交差点数VPは、速度脈波に基づいて得られた情報である。

【0054】
一方、図3中、交差点特定部10は、振幅を調整した後の領域R分の加速度脈波を示す情報を第2特定部10bに与える。
第2特定部10bは、与えられた加速度脈波と、加速度脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線とが交差する交差点を特定する。

【0055】
第2特定部10bは、第1特定部10aと同様、等高線Hを複数(例えば14本)設定し、加速度脈波と、等高線H(第2等高線)とが交差する交差点q(第2交差点)を特定する。
また、第2特定部10bは、交差点qの数である交差点数VPを、加速度脈波の特徴量として取得する。
なお、加速度脈波の特徴量とは、加速度脈波に基づいた生体情報の取得のために、当該加速度脈波の特徴を数値化した値のことである。

【0056】
第2特定部10bは、設定した複数(本例では14本)の等高線Hごとに、交差点qの特定及び交差点数VPの取得を行う。よって、第2特定部10bは、等高線Hと同じ個数である14個の交差点数VPを取得する。
第2特定部10bは、特定した交差点qを示す情報を、領域R分の加速度脈波を示す情報とともに幅値取得部11に与える。また、第2特定部10bは、取得した交差点数VPを演算部12に与える。
第2特定部10bが各部に与える、交差点qを示す情報及び交差点数VPは、加速度脈波に基づいて得られた情報である。

【0057】
なお、交差点特定部10が取得する一の等高線による交差点数(VP、VP)は、幅値取得部11が取得する後述の幅値(W、W)の個数と等価である。
つまり、図6に示すように、交差点qが4つである場合、幅値Wは、必ず2つ表れる。このように、幅値の個数は、必ず交差点数の1/2となる。
よって、交差点特定部10が取得する交差点数(VP、VP)に代えて、幅値の個数を速度脈波及び加速度脈波の特徴量として用いてもよい。

【0058】
以上のようにして、交差点特定部10は、正側及び負側の少なくともいずれか一方にピークを含んでいる速度脈波及び加速度脈波と、等高線とが交差する交差点q(交差点q、交差点q)を特定する。

【0059】
〔2.2 幅値の取得〕
図3中、幅値取得部11は、交差点特定部10が特定した交差点q(交差点q、交差点q)の内、両微分脈波に含まれるピークであって着目している等高線が位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の等高線上の幅値を求める機能を有している。

【0060】
幅値取得部11は、交差点qを示す情報及び領域R分の速度脈波を示す情報が第1特定部10aから与えられると、これら情報を第1取得部11aに与える。
第1取得部11aは、交差点qを示す情報及び領域R分の速度脈波を示す情報に基づいて、領域Rにおける速度脈波に含まれるピークであって着目する等高線Hが位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一対の交差点q同士間の等高線H上の幅値W(第1幅値)を求める。

【0061】
例えば、図6中、縦軸の値が「0」で一定である等高線Hv1に着目する。
この等高線Hv1は、「0」であるから、等高線Hv1は正側に位置している。
ピークpv1は、等高線Hv1が位置する符号側(等高線Hv1が表している縦軸の値の符号)と同じ符号側である正側に位置している。一対の交差点qv1及び交差点qv2は、ピークpv1の前後に位置している。

【0062】
よって、第1取得部11aは、図6に示すように、ピークpv1の前後に位置する一対の交差点qv1及び交差点qv2の間の幅値Wv1を求める。
また、第1取得部11aは、等高線Hv1が位置する符号側(正側)と同じ符号側(正側)のピークであるピークpv2の前後に位置する一対の交差点qv3及び交差点qv4の間の幅値Wv2を求める。

【0063】
さらに、第1取得部11aは、これら求めた幅値Wv1及び幅値Wv2を合計し、合計した合計幅値EPを、速度脈波の特徴量として取得する。
図6の場合、幅値Wv1が「0.14」、幅値Wv2が「0.08」であるとすると、幅値EPは、「0.22」となる。

【0064】
第1取得部11aは、設定されている複数(本例では14本)の等高線Hごとに合計幅値EPを取得する。よって、第1取得部11aは、等高線Hと同じ個数である14個の合計幅値EPを取得する。
第1取得部11aは、取得した合計幅値EPを演算部12に与える。
第1取得部11aが演算部12に与える、合計幅値EPは、速度脈波に基づいて得られた値である。

【0065】
一方、図3中、幅値取得部11は、交差点qを示す情報及び領域R分の加速度脈波を示す情報が第2特定部10bから与えられると、これら情報を第2取得部11bに与える。
第2取得部11bは、交差点qを示す情報及び領域R分の加速度脈波を示す情報に基づいて、領域Rにおける加速度脈波に含まれるピークであって着目する等高線Hが位置する符号側と同じ符号側のピークの前後に位置する一又は複数対の交差点q同士間の等高線H上の幅値W(第2幅値)を求める。

【0066】
第2取得部11bは、第1取得部11aと同様にして、幅値Wを求め、合計幅値EPを、加速度脈波の特徴量として取得する。

【0067】
第2取得部11bは、設定されている複数(本例では14本)の等高線Hごとに合計幅値EPを取得する。よって、第2取得部11bは、等高線Hと同じ個数である14個の合計幅値EPを取得する。
第2取得部11bは、取得した合計幅値EPを演算部12に与える。
第1取得部11aが演算部12に与える、合計幅値EPは、加速度脈波に基づいて得られた値である。

【0068】
このように、幅値取得部11は、複数の等高線(H、H)ごとの幅値(W、W)を取得することで、速度脈波及び加速度脈波の波形に関する情報を時間軸方向に沿って取得することができる。よって、例えば、フィルタ部6cによって脈波が減衰され、速度脈波及び加速度脈波のピークの値を取得するのが困難になる程度に当該ピークが小さくなったとしても、そのピークから速度脈波及び加速度脈波の波形に関する情報を取得することができる。

【0069】
なお、図6で示した例では、正側に位置するピークpv1及びピークpv2と、正側の等高線Hv1との関係を説明したが、ピーク及び等高線が負側に位置していたとしても、幅値取得部11は、上記と同様の手順で幅値を取得する。
また、図6において、交差点qv1と、交差点qv2との間で速度脈波と等高線Hv1とが交差しない状態で、交差点qv1と、交差点qv2との間にピークpv1に加えさらに他のピークが存在する場合であっても、幅値取得部11は、交差点qv1と、交差点qv2との間である幅値Wv1を取得する。つまり、互いに隣り合う交差点qv1と、交差点qv2との間に複数のピークが存在したとしても、そのピークが等高線Hv1と同じ符号側であれば、幅値取得部11は、交差点qv1と、交差点qv2との間である幅値Wv1を取得する。

【0070】
また、幅値取得部11は、等高線Hが正側に位置する場合、極大点となるピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の等高線H上の幅値を取得し、等高線Hが負側に位置する場合、極小点となるピークの前後に位置する一又は複数対の交差点同士間の等高線H上の幅値を取得するように構成されることがある。

【0071】
〔2.3 クラスの特定〕
図3中、演算部12は、推定血圧値の演算対象とされている被検者Sが、当該被検者Sを分類するために予め設定された複数のクラス(グループ)の内、いずれのクラスに該当するかを特定し、特定したクラスに応じて推定血圧値の演算を行うように構成されている。

【0072】
図7(a)は、交差点特定部10が求めた速度脈波の他の例を示す図である。また、図7(b)は、交差点特定部10が求めた加速度脈波の他の例を示す図である。
図7(a)の速度脈波、及び図7(b)の加速度脈波は、57歳男性の被検者から検出した出力信号から求めたものである。

【0073】
ここで、図4(a)及び図4(b)では、より若い24歳男性の速度脈波及び加速度脈波の例を示したが、図4(a)及び図4(b)の速度脈波及び加速度脈波と、図7(a)及び図7(b)の速度脈波及び加速度脈波とを比較すると、図7(a)及び図7(b)の速度脈波及び加速度脈波の方が、変動が少ないことが判る。これは、年齢が増加するに従って血管の弾力性が低下し、血管に細かい容積変化が生じ難くなっているためである。

【0074】
このように、年齢に応じて、速度脈波及び加速度脈波の変動に差が生じるため、本実施形態では、年齢が少なく波形の変動が多くなると、その数値が大きくなる交差点数(VP、VP)を用いて、年齢に応じたクラス分けを行う。

【0075】
図3に戻って、演算部12は、推定血圧値の演算対象とされる被検者Sが複数のクラスの内のいずれに該当するかを、速度脈波に基づいて得られた値である交差点数VPに基づいて特定する第1クラス特定部15を備えている。また、演算部12は、複数のクラスに対応した推定血圧値の演算を行うための第1演算用モデル17と、特定されたクラスに応じた演算を、第1演算用モデル17を用いて行う第1推定値演算部16とを備えている。

【0076】
また、演算部12は、推定血圧値の演算対象とされる被検者Sが複数のクラスの内のいずれに該当するかを、加速度脈波に基づいて得られた値である交差点数VPに基づいて特定する第2クラス特定部18を備えている。また、演算部12は、複数のクラスに対応した推定血圧値の演算を行うための第2演算用モデル20と、特定されたクラスに応じた演算を、第2演算用モデル20を用いて行う第2推定値演算部19とを備えている。

【0077】
演算部12は、第1特定部10aから交差点数VPが与えられるとともに、第1取得部11aから合計幅値EPが与えられると、これら値を第1クラス特定部15に与える。
第1クラス特定部15は、交差点数VPを用いて、交差点数VP及び合計幅値EPに基づいた推定血圧値を演算するに当たっての被検者Sのクラス特定を行う。

【0078】
第1クラス特定部15は、複数(本例では14本)の等高線Hごとに取得された交差点数VPの内の一つを用いてクラスの特定を行う。
第1クラス特定部15は、複数の等高線Hの内、どの等高線Hを用いて取得された交差点数VPを用いてクラスの特定を行うかについて記憶している。

【0079】
クラスの特定に用いる交差点数VPを定めるための方法は、以下のように行われる。
すなわち、複数の被検者Sから取得した脈波から実際のデータ(上述した複数の等高線Hごとに取得された交差点数VP)を多数収集し、得られたデータを、例えば、年齢が20歳台のグループ(若年グループ)と、50歳以上のグループ(壮年グループ)の2つのグループに分類する。

【0080】
次いで、ある等高線Hにおける交差点数VPの平均値を両グループごとに求める。
さらに、求めた、若年グループの交差点数VPの平均値と、壮年グループの交差点数VPの平均値との差ΔVPを求め、この差であるΔVPの2乗値を求める。
ΔVPの2乗値を等高線Hごとに求め、ΔVPの2乗値が最も大きい等高線Hから求められる交差点数VPを、クラス特定に用いるための交差点数VPとする。

【0081】
このように、ΔVPの2乗値が最も大きい等高線Hから求められる交差点数VPを用いてクラス特定を行うことで、各クラスにおける交差点数VPの値の差がより大きく表れるように設定することができ、適切にクラスの特定を行うことができる。

【0082】
第1クラス特定部15は、クラス特定用の交差点数VPとして、上述のようにして特定された等高線Hの交差点数VPを用いることを記憶している。

【0083】
第1クラス特定部15は、第1特定部10aから与えられる交差点数VPの内、クラス特定用の交差点数VPと記憶している等高線Hの交差点数VPを参照する。
第1クラス特定部15は、参照した交差点数VPの値に応じて、複数に分類されたクラスの内のいずれに該当するかを特定する。
本実施形態では、6つのクラスとしてクラスAからクラスFが予め設定されている。

【0084】
第1クラス特定部15は、参照した交差点数VPの値が、「2」である場合、クラスAと特定し、参照した交差点数VPの値が、「2」より大きく「4」より小さい場合、クラスBと特定する。
第1クラス特定部15は、参照した交差点数VPの値が、「4」である場合、クラスCと特定し、参照した交差点数VPの値が、「4」より大きく「6」より小さい場合、クラスDと特定する。
第1クラス特定部15は、参照した交差点数VPの値が、「6」である場合、クラスEと特定し、参照した交差点数VPの値が、「6」より大きい場合、クラスFと特定する。

【0085】
このように、本実施形態では、年齢に応じて変化する値である交差点数VPの値を用いて被検者Sを複数のクラスに分類する。
なお、クラスの特定を行うために用いる交差点数VPは、例えば、一の被検者Sの速度脈波から複数の領域Rを選択し、選択した複数の領域Rから求めた交差点数VPの平均値を用いてもよい。

【0086】
以上のようにして、第1クラス特定部15は、交差点数VP及び合計幅値EPに基づいた推定血圧値を演算するに当たっての被検者Sのクラス特定を行うことができる。

【0087】
一方、演算部12は、第2特定部10bから交差点数VPが与えられるとともに、第2取得部11bから合計幅値EPが与えられると、これら値を第2クラス特定部18に与える。
第2クラス特定部18は、交差点数VPを用いて、交差点数VP及び合計幅値EPに基づいた推定血圧値を演算するに当たっての被検者Sのクラス特定を行う。
なお、第2クラス特定部18が特定するクラスも、第1クラス特定部15が特定するクラスと同様、6つのクラスに分類されている。

【0088】
第2クラス特定部18が行う被検者Sのクラス特定は、上述の第1クラス特定部15によるクラス特定と同様である。
よって、第2クラス特定部18は、クラス特定用の交差点数VPとして、予め特定された等高線Hの交差点数VPを用いることを記憶している。

【0089】
第2クラス特定部18は、第2特定部10bから与えられる交差点数VPの内、クラス特定用の交差点数VPと記憶している等高線Hの交差点数VPを参照する。
第1クラス特定部15は、参照した交差点数VPの値に応じて、6つのクラスの内のいずれに該当するかを特定する。

【0090】
以上のようにして、第2クラス特定部18は、合計幅値EPに基づいた推定血圧値を演算するに当たっての被検者Sのクラス特定を行うことができる。

【0091】
〔2.4 推定血圧値の演算〕
演算部12の第1クラス特定部15は、クラスを特定すると、第1推定値演算部16に交差点数VP及び合計幅値EPを与える。
第1推定値演算部16は、第1クラス特定部15が特定したクラスに応じた推定血圧値の演算を、第1演算用モデル17を用いて行う。

【0092】
第1演算用モデル17は、6つのクラスに対応して第1モデルから第6モデルの6つの演算モデルを含んでいる。
第1推定値演算部16は、第1演算用モデル17に含まれる6つの演算モデルの内、第1クラス特定部15が特定したクラスに対応した演算モデルを選択する。
第1推定値演算部16は、選択した演算モデルを用いて推定血圧値の演算を行う。

【0093】
第1演算用モデル17に含まれる各演算モデルは、複数の被検者Sから得た実際のデータからなるトレーニングデータを用いて構築されている。

【0094】
図8は、演算モデルのトレーニングデータの一例を示す図である。図8には、No.1からNo.Jまでの被検者Sの測定血圧値、及び各被検者Sから取得した脈波から得た交差点数VP及び合計幅値EPが示されている。

【0095】
図8中、xは、特徴量である交差点数VP及び合計幅値EPを統合して表した変数である。以下の説明では、xを特徴量とも呼ぶ。
また、図8中、kは、一の被検者Sによる速度脈波の特徴量である交差点数VP及び合計幅値EPを特定するための値であり、交差点数VP及び合計幅値EPを求めるために用いた等高線Hに対応付けられている。つまり、同じ等高線Hを用いて得られた交差点数VPにはkの値として同じ値が付される。

【0096】
図8中、Kは、kの最大値であり、交差点数VP及び合計幅値EPそれぞれの値の個数の合計数である。
本実施形態では、交差点数VPは14個取得され、合計幅値EPは14個取得される。よって、Kは、「28」となる。また、図8では、交差点数VPから先にkが付与され、その次に合計幅値EPにkが付与されている。よって、14個の交差点数VPには、kの値として、それぞれ、「1」から「14」が付与され、14個の合計幅値EPには、kの値として、それぞれ、「15」から「28」が付与される。
図8中、jは、No.1からNo.Jまでの被検者Sを特定するための値である。

【0097】
各演算モデルは、速度脈波の特徴量x(交差点数VP及び合計幅値EP)を個々に用いて推定した、特徴量ごとの推定値を求め、さらに、特徴量ごとの推定血圧値に、その特徴量に対応するSN比を乗算し、速度脈波に基づいた推定血圧値y^を求める。つまり、本実施形態では、単回帰分析によって推定血圧値y^を求める。

【0098】
【数1】
JP2017023472A_000003t.gif

【0099】
下記式(3)は、特徴量xに基づいて推定血圧値を求めるためのモデルであり、ここでは、速度脈波の特徴量xに基づいた推定血圧値を求める。

【0100】
【数2】
JP2017023472A_000004t.gif

【0101】
上記式(3)中、左辺は、一の特徴量xから推定された推定血圧値である。
また、式(3)中、xrfは、図8に示すトレーニングデータにおける特徴量xの被検者一人当たりの平均値、yrfは、図8に示すトレーニングデータにおける測定血圧値yの被検者一人当たりの平均値である。
また、βは、xrf及びyrfを通過する傾きを示しており、下記式(4)のように表される。

【0102】
【数3】
JP2017023472A_000005t.gif

【0103】
また、各特徴量に対応するSN比ωは、下記式(5)、(6)、(7)、(8)に基づいて求めることができる。

【0104】
【数4】
JP2017023472A_000006t.gif

【0105】
なお、上記式(5)は、全平方和Sを示している。式(6)は、回帰平方和Sβを示している。式(7)は、誤差分散Vを示している。
SN比ωは、上記式(8)によって求めることができる。

【0106】
図8に示すトレーニングデータを用い、上述の式(4)から式(8)に従って、各特徴量に対応したβ、xrf、yrf、及びωを求める。これら値を求めることにより、後述する演算モデルに用いられるパラメータが得られる。

【0107】
下記式(9)は、特徴量ごとの推定血圧値に基づいて各特徴量を考慮した推定血圧値y^を求めるための演算モデルであり、ここでは、速度脈波に基づいた推定血圧値y^を求める。

【0108】
【数5】
JP2017023472A_000007t.gif

【0109】
式(9)中、左辺は、各特徴量を考慮した推定血圧値y^であり、ここでは、速度脈波に基づいた推定血圧値y^が得られる。式(9)中の右辺のy^は、式(3)で示した一の特徴量xから推定された推定血圧値である。
よって、式(9)は、特徴量xの関数となっている。
つまり、式(9)に、取得した脈波から得た速度脈波の特徴量x(交差点数VP及び合計幅値EP)を代入すれば、推定血圧値y^を求めることができる。

【0110】
第1演算用モデル17が有している6つの演算モデルは、対応するクラスの特徴に応じたトレーニングデータを用いて構築されている。
このため、各演算モデルは、分類された各クラスに応じて適切な演算を実現することが可能なモデルとなっている。

【0111】
第1推定値演算部16は、第1演算用モデル17が有する演算モデルの内、第1クラス特定部15が特定したクラスに対応した演算モデルを用い、推定血圧値y^の演算を行う。第1推定値演算部16は、特徴量である交差点数VP及び合計幅値EPを演算モデルに導入し、推定血圧値y^を求める。
速度脈波に基づいた推定血圧値y^を求めると、第1推定値演算部16は、求めた推定血圧値y^を統合演算部21に与える。
統合演算部21が行う処理については後に説明する。

【0112】
一方、演算部12の第2クラス特定部18は、クラスを特定すると、第2推定値演算部19に交差点数VP及び合計幅値EPを与える。
第2推定値演算部19は、第2クラス特定部18が特定したクラスに応じた推定血圧値の演算を、第2演算用モデル20を用いて行う。

【0113】
第2演算用モデル20は、6つのクラスに対応して第7モデルから第12モデルの6つの演算モデルを含んでいる。
第2推定値演算部19は、第2演算用モデル20に含まれる6つの演算モデルの内、第2クラス特定部18が特定したクラスに対応した演算モデルを選択する。
第2推定値演算部19は、選択した演算モデルを用いて推定血圧値の演算を行う。

【0114】
なお、第2演算用モデル20に含まれる各演算モデルの構築手順は、加速度脈波に基づいて得られた交差点数VP及び合計幅値EPを用いて行われる以外、第1演算用モデル17の場合と同様である。
また、第2推定値演算部19が行う推定血圧値を演算するための処理は、加速度脈波に基づいて得られた交差点数VP及び合計幅値EPを用いて行われる以外、第1演算用モデル17による処理と同様である。
よって、これらの点については説明を省略する。

【0115】
第2推定値演算部19は、第2演算用モデル20が有する演算モデルの内、第2クラス特定部18が特定したクラスに対応した演算モデルを用い、推定血圧値y^の演算を行う。第2推定値演算部19は、特徴量である交差点数VP及び合計幅値EPを演算モデルに導入し、推定血圧値y^を求める。
加速度脈波に基づいた推定血圧値y^を求めると、第2推定値演算部19は、求めた推定血圧値y^を統合演算部21に与える。

【0116】
〔2.5 推定血圧値の統合〕
統合演算部21は、速度脈波に基づいて求めた推定血圧値y^が第1推定値演算部16から与えられるとともに、加速度脈波に基づいて求めた推定血圧値y^が第2推定値演算部19から与えられると、両値を統合する演算を行う。

【0117】
統合演算部21は、推定血圧値y^及び推定血圧値y^を統合するための演算を、統合演算するための統合演算モデルを用いて行う。

【0118】
統合演算部21は、6つのクラスに対応して6つの統合演算モデルを有している。
統合演算部21は、第1クラス特定部15及び第2クラス特定部18の少なくともいずれか一方が特定したクラスに対応したモデルを選択する。
統合演算モデルは、複数の被検者Sから得た実際のデータからなるトレーニングデータを用いて構築されている。

【0119】
図9(a)は、統合演算モデルのトレーニングデータの一例を示す図であり、速度脈波に基づいて求めた推定血圧値y^に関するトレーニングデータを示している。図9(a)には、ある一のクラスに属する被検者Sであって、No.1からNo.Nまでの被検者Sの測定血圧値、及び各被検者Sの脈波から得た交差点数VP及び合計幅値EPから求めた推定血圧値y^v,nが示されている。

【0120】
また、図9(b)は、統合演算モデルのトレーニングデータの一例を示す図であり、加速度脈波に基づいて求めた推定血圧値y^に関するトレーニングデータを示している。図9(b)中、No.1からNo.Nまでの被検者Sは、図9(a)の被検者Sと同じ被検者である。図9(b)には、図9(a)の被検者Sの測定血圧値、及び各被検者Sの脈波から得た交差点数VP及び合計幅値EPから求めた推定血圧値y^a,nが示されている。

【0121】
統合演算モデルは、速度脈波に基づく推定血圧値y^、及び加速度脈波に基づく推定血圧値y^に、対応するSN比を乗算し、両値を統合した推定血圧値y^を求める。
SN比ηは、下記式(10)、(11)、(12)、(13)に基づいて求めることができる。

【0122】
【数6】
JP2017023472A_000008t.gif

【0123】
なお、上記式(10)は、全平方和Sを示している。式(11)は、回帰平方和Sβを示している。式(12)は、誤差分散Vを示している。
SN比ηは、上記式(13)によって求めることができる。

【0124】
図9(a)、図9(b)に示すトレーニングデータを用い、上述の式(10)から式(13)に従って、推定血圧値y^及び推定血圧値y^に対応するSN比ηを求める。 下記式(14)は、SN比ηによって統合した推定血圧値y^を求めるための演算モデルである。

【0125】
【数7】
JP2017023472A_000009t.gif

【0126】
式(14)中、左辺は、統合した推定血圧値y^である。
式(14)に、第1推定値演算部16から与えられる推定血圧値y^を代入し、さらに、第2推定値演算部19から与えられる推定血圧値y^を代入すれば、統合した推定血圧値y^を求めることができる。

【0127】
統合演算部21は、この統合演算モデルを上述のように6つ有している。各統合演算モデルは、対応するクラスの特徴に応じたトレーニングデータを用いて構築されている。
このため、各統合演算モデルは、分類された各クラスに応じて適切な演算を実現することが可能なモデルとなっている。

【0128】
統合演算部21は、上述の統合演算モデルを用い、推定血圧値y^と、推定血圧値y^とを統合した推定血圧値y^の演算を行う。第1推定値演算部16は、推定血圧値y^と、推定血圧値y^とを、特定されたクラスに応じて選択した統合演算モデルに導入し、推定血圧値y^を求める。
推定血圧値y^を求めると、統合演算部21は、求めた推定血圧値y^を出力部13に与える。

【0129】
なお、本実施形態の統合演算部21は、推定血圧値y^と、推定血圧値y^とを単回帰分析によって、統合した推定血圧値y^を演算するように構成されている。この統合演算部21による演算方法は、推定血圧値y^、及び推定血圧値y^のそれぞれにウエイトとしてSN比ηを乗算して統合した推定血圧値y^を求めていると考えることができる。よって、例えば、SN比以外の方法によって求めた、適切に推定血圧値y^を演算するためのウエイトを、推定血圧値y^、及び推定血圧値y^の少なくともいずれか一方に乗算することで、推定血圧値y^を演算するように構成してもよい。

【0130】
処理部3の出力部13は、例えば、液晶パネルからなる表示モニタやプリンタ等によって構成されている。
出力部13は、統合演算部21から与えられる推定血圧値y^を、表示モニタに表示したり、印刷することによって出力する。

【0131】
上記構成の生体情報推定装置1によれば、複数の等高線(H、H)ごとの幅値(W、W)を取得することで、脈波としての速度脈波及び加速度脈波の波形に関する情報を時間軸方向に沿って取得することができる。よって、例えば、フィルタ部6cによって脈波が減衰され、速度脈波及び加速度脈波のピークの値を取得するのが困難になる程度に当該ピークが小さくなったとしても、そのピークから速度脈波及び加速度脈波の波形に関する情報を取得できる。この結果、推定血圧値y^をばらつきなく安定した値として求めることができる。

【0132】
また、本実施形態の生体情報推定装置1は、合計幅値(EP、EP)と、複数の等高線ごとの交差点数(VP、VP)とに基づいて推定血圧値y^を求めるので、より多くの情報に基づいて推定血圧値y^を求めることができる。この結果、推定血圧値y^をよりばらつきなく安定した値として求めることができる。

【0133】
また、本実施形態の演算部12は、予め設定された複数のクラス(グループ)に対応した推定血圧値y^の演算を行うための演算用モデル(第1演算用モデル17、第2演算用モデル20)と、推定血圧値y^の演算対象とされる被検者Sが複数のクラスの内のいずれに該当するかを、交差点数(VP、VP)に基づいて特定するクラス特定部(第1クラス特定部15、第2クラス特定部18)と、特定されたクラスに応じた推定血圧値y^の演算を行う推定値演算部(第1推定値演算部16、第2推定値演算部19)とを備えている。
これにより、分類された各クラスに応じて適切な演算を行うことができるので、より精度よく推定血圧値y^を求めることができる。

【0134】
また、本実施形態において、微分処理部9は、センサ部2の出力信号が表している、被検者Sから検出された容積脈波(検出脈波)を微分した微分波である速度脈波及び加速度脈波(微分脈波)を、被検者Sの脈波として取得するので、脈波の振幅変動がより大きくなりピークが明りょうに表れるようにすることができる。この結果、脈波の波形に関する情報をより確実に取得することができる。

【0135】
また、本実施形態において、微分処理部9は、検出脈波を一回微分した速度脈波(一回微分脈波)と、検出脈波を二回微分した加速度脈波(二回微分脈波)とを被検者Sの脈波として交差点特定部10に与え、交差点特定部10は、速度脈波と、速度脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線H(第1等高線)とが交差する交差点q(第1交差点)を特定するとともに、加速度脈波と、加速度脈波の振幅方向に対して一定値であることを表す等高線H(第2等高線)とが交差する交差点q(第2交差点)を特定する。また、演算部12は、交差点qより取得される幅値W(第1幅値)と、交差点qより取得される幅値W(第2幅値)とに基づいて推定血圧値y^を求めるように構成されている。

【0136】
この場合、速度脈波と、加速度脈波の両方に基づいて演算を行うので、より多くの情報に基づいて推定血圧値y^を求めることができ、推定血圧値y^をよりばらつきなく安定した値として求めることができる。

【0137】
なお、上記実施形態では、生体情報推定装置1を、被検者Sの生体情報の推定値として推定血圧値を求める場合を例示したが、生体情報推定装置1は、例えば、血管年齢や、ストレス状態を表す指数等といった被検者Sの他の生体情報の推定値を求めるように構成してもよい。

【0138】
また、上記実施形態では、合計幅値(EP、EP)と、交差点数(VP、VP)とに基づいて推定血圧値y^を求めた場合を示したが、合計幅値(EP、EP)、及び交差点数(VP、VP)のいずれか一方を用いて推定血圧値y^を求めてもよい。
さらに、上記実施形態では、1拍分の波形である領域Rを速度脈波及び加速度脈波それぞれで一つだけ用い、合計幅値(EP、EP)と、交差点数(VP、VP)を求めた場合を例示したが、より多数の波形を用いて合計幅値(EP、EP)及び交差点数(VP、VP)を求めてもよい。

【0139】
上記実施形態では、速度脈波と、加速度脈波の両方に基づいて推定血圧値y^を求めた場合を示したが、速度脈波、及び加速度脈波のいずれか一方を用いて推定血圧値y^を求めることもできる。
さらに、被検者Sから検出された容積脈波(検出脈波)に基づいて推定血圧値y^を求めることもできる。この場合、微分処理部9は、与えられた出力信号が表す容積脈波を微分せずそのまま交差点特定部10に与える。後段の各部は、容積脈波に基づいて、特徴量である合計幅値と、交差点数とを求め、推定血圧値y^を求める。
よって、推定血圧値y^を求めるために、容積脈波、速度脈波、及び加速度脈波のいずれかを用いることができる。また、これら内、任意の脈波を選択して組み合わせ、推定血圧値y^を求めることもできる。

【0140】
また、上記実施形態では、クラス特定部(第1クラス特定部15、第2クラス特定部18)が、交差点数(VP、VP)に基づいて、被検者Sのクラスを特定する場合を例示したが、合計幅値(EP、EP)に基づいて、被検者Sのクラスを特定するように構成してもよいし、交差点数(VP、VP)、及び合計幅値(EP、EP)の両方を用いて被検者Sのクラスを特定するように構成してもよい。

【0141】
また、上記実施形態では、被検者Sを分類するための複数のクラスを、被検者Sの特徴としての年齢に応じて分類分けした場合を例示したが、例えば、性別によってクラスを分類してもよいし、被検者Sの特徴であって、その相違が交差点数(VP、VP)、及び合計幅値(EP、EP)に影響を及ぼすような特徴によってクラスを分類してもよい。

【0142】
また、上記実施形態の生体情報推定装置1は、被検者Sの脈波を検出する機能のみを有するセンサ部2を用いた場合を例示したが、例えば、パルスオキシメータに、生体情報推定装置1が有する推定血圧値を求める機能を付加することで、パルスオキシメータとしての機能と、血圧測定装置としての機能を備えた生体情報推定装置を構成してもよい。
この場合、パルスオキシメータは、光電式のセンサを用いているため、その光電式のセンサを脈波センサとして兼用することができる。よって、容易に、パルスオキシメータ機能及び血圧測定機能の両方を備えた構成とすることができる。

【0143】
さらに、例えば、本実施形態の生体情報推定装置1は、処理部3としてスマートフォン等の携帯端末装置を用い、センサ部2として前記携帯端末装置に取り付け可能なセンサを用いて構成することもできる。
この場合、携帯端末装置に生体情報推定装置1としての機能を付与できるので、常時、血圧測定等の健康状態の管理が可能となる。
また、腕時計型の携帯端末装置であれば、使用者の腕に接触する部分にセンサ部2を埋め込むことができ、逐次、健康状態の管理が可能となる。

【0144】
また、上記実施形態では、センサ部2に反射光を利用した光電式の脈波センサを用いて被検者Sの容積脈波を取得する場合を例示したが、透過光を利用する光電式の脈波センサを用いてもよい。さらに、被検者Sから取得する脈波としては、容積脈波に限らず、圧脈波や、その他の脈波を取得し、推定血圧値y^の演算に用いることができる。
なお、圧脈波を取得する場合、センサ部としては、圧電式の脈波センサを用いることができる。

【0145】
〔3. 取得した特徴量の安定性評価について〕
次に、上記実施形態の生体情報推定装置1によって推定血圧値y^を求める際の特徴量である合計幅値(EP、EP)と、従来から特徴量として用いられていた加速度脈波のピークの値とについて、取得したときの値の安定性について評価した。

【0146】
実施例としては、上記実施形態の生体情報推定装置1が加速度脈波から取得した合計幅値EPを採用し、比較例としては、加速度脈波から取得したピークの値を採用した。

【0147】
実施例では、規格化された二回微分値が最大振幅値の-30%である「-0.3」の等高線、同30%である「0.3」の等高線、同60%である「0.6」の等高線、同90%である「0.9」の等高線それぞれにおける合計幅値EPを5拍分取得し評価に用いた。

【0148】
図10は、比較例として用いるピークの値の求め方を説明するための図である。
加速度脈波からピークの値の求めるには、まず、図10中、1拍分の波形である領域Rにおいて、絶対値で最も高い値を示しているピークp10から順に並ぶ各ピークp11、p12、p13、及びp14の値をそれぞれ取得する。
次いで、取得した各値である、ピークp11の値b、ピークp12の値c、ピークp13の値d、及びピークp14の値eを、ピークp10の値aで規格化する。

【0149】
比較例では、これら規格化したピークp11の値b/a、ピークp12の値c/a、ピークp13の値d/a、及びピークp14の値e/aを5心拍分取得し評価に用いた。

【0150】
評価方法としては、下記式(15)に示す特徴量の抽出率ExRateを、実施例及び比較例それぞれで求め、比較した。

【0151】
【数8】
JP2017023472A_000010t.gif

【0152】
ここで、extrは、抽出フラグであり、特徴量(合計幅値EP、ピークの値)が抽出できた場合に「1」を代入し、抽出できなかった場合に「0」を代入する。また、iは、抽出率ExRateを求めるために用いたサンプル数であり、ここでは、5拍分を用いたのでiは「5」となる。

【0153】
また、下記式(16)に示す変動係数C.V.を、実施例及び比較例それぞれで求め、比較した。

【0154】
【数9】
JP2017023472A_000011t.gif

【0155】
なお、上記式(16)中、mは特徴量(合計幅値EP、ピークの値)の平均値、σは特徴量(合計幅値EP、ピークの値)の標準偏差である。なお、抽出できなかった特徴量の値は「0」とした。

【0156】
図11は、特徴量の抽出率ExRateを求めた結果を示す図である。
図11に示すように、実施例では、すべての等高線での合計幅値EPの抽出率が100%であった。
一方、比較例では、ピークp11の値b/aの抽出率は100%であったが、他の値の抽出率は100%に至らなかった。
この結果から、実施例では、比較例と比較して、加速度脈波から安定して波形の情報を取得することができることが判る。

【0157】
図12は、変動係数C.V.を求めた結果を示す図である。
図12に示すように、実施例では、すべての等高線での合計幅値EPの変動係数が0.1未満と非常に小さい値であった。
一方、比較例では、ピークp11の値b/aの変動係数が0.1未満と小さくなっているが、他の変動係数は、いずれも0.3を超えており、非常に大きい値であった。
この結果から、実施例では、比較例と比較して、値を取得したときのばらつきが少なく、安定していることが判る。

【0158】
上記結果から、本実施形態の生体情報推定装置1によれば、ピークの値を特徴量として取得する場合と比較して、特徴量である合計幅値EPをばらつきなく安定して取得することができることが判る。
つまり、本実施形態の生体情報推定装置1は、特徴量として合計幅値EPを取得することで、加速度脈波の波形に関する情報を時間軸方向に沿って取得することができ、ピークの値を特徴量として取得する場合と比較して、より安定して加速度脈波の波形に関する情報を取得することができると言える。

【0159】
また、この結果から、本実施形態の生体情報推定装置1は、ばらつきなく安定して特徴量を取得することができ、推定血圧値をばらつきなく安定した値として求めることができる。

【0160】
〔4. 推定値の誤差について〕
上記実施形態では、特徴量である交差点数(VP、VP)及び合計幅値(EP、EP)を用いて推定血圧値y^を演算する際に、単回帰分析によって演算した場合を例示したが、他の実施形態として、単回帰分析に代えて、PLS法(Partial Least Squares Regression)による重回帰分析によって推定血圧値y^を演算するように構成した生体情報推定装置1を用い、推定血圧値y^を演算させた。

【0161】
さらに他の実施形態として、CART法(Classification and regression trees)による重回帰分析によって推定血圧値y^を演算するように構成した生体情報推定装置1を用い、推定血圧値y^を演算させた。

【0162】
そして、単回帰分析によって演算した推定血圧値y^、PLS法によって演算した推定血圧値y^、及びCART法によって演算した推定血圧値y^それぞれの推定誤差を求め、比較した。

【0163】
推定誤差は、下記式(17)に示す、絶対平均誤差MAPEを求め、比較した。なお、MAPEを求めるに際して、例えば、No.1からNo.NまでのN人の被検者Sの血圧値を測定するとともに、生体情報推定装置1によって推定血圧値y^を求めた。
また、推定血圧値y^としては、収縮期及び拡張期の両方を求め、測定血圧値との間で比較した。

【0164】
【数10】
JP2017023472A_000012t.gif

【0165】
図13は、推定血圧値の絶対平均誤差を求めた結果を示した図である。
図13中、CART法によって演算した推定血圧値y^は、単回帰分析による演算、及びPLS法による演算の推定血圧値y^と比較して若干誤差が大きく表れているが、いずれの方法の場合も、実用上問題の無い誤差であることが確認できた。

【0166】
〔5. その他〕
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、演算部21が、第1クラス特定部15、及び第2クラス特定部18を備えていることで、被検者Sのクラスを特定した上で推定血圧値y^及び推定血圧値y^を求めるように構成した場合を例示したが、例えば、図10に示す変形例のように、演算部21が、第1推定値演算部16と、第1推定値演算部16が演算に用いる演算モデル25と、第2推定値演算部19と、第2推定値演算部19が演算に用いる演算モデル26とを備え、第1クラス特定部15、及び第2クラス特定部18を備えない構成とすることもできる。

【0167】
この場合、第1推定値演算部16には、第1特定部10a及び第1取得部11aから、交差点数VP及び合計幅値EPが与えられ、第2推定値演算部19には、第2特定部10b及び第2取得部11bから、交差点数VP及び合計幅値EPが与えられる。

【0168】
第1推定値演算部16及び第2推定値演算部19は、交差点数及び合計幅値を用いて推定血圧値y^,y^求める。このとき、第1推定値演算部16及び第2推定値演算部19は、上記実施形態と同様に単回帰分析によって推定血圧値y^,y^を求めても良いが、単回帰分析に代えて、例えば、PLS法等の重回帰分析(多変量解析)によって、推定血圧値y^,y^を求めても良い。
このとき、演算モデル25、26としては、PLS法等の重回帰分析を行うためのモデルが採用され、予め推定血圧値y^,y^を求めるためのトレーニングがなされる。

【0169】
この場合、上記実施形態のように被検者Sを複数クラスに分類せずとも、クラスの分類に利用する変数(交差点数VP,VP及び合計幅値EP,EP)を多変量解析の入力変数に用いることで、クラスを分類したときと同様の効果を得ることができ、高い精度で推定血圧値y^を求めることができる。
【符号の説明】
【0170】
1 生体情報推定装置
2 センサ部
3 処理部
4 光源
5 受光部
6 センサ制御部
6a 光源制御部
6b 信号処理部
6c フィルタ部
6d 増幅部
9 微分処理部
10 交差点特定部
10a 第1特定部
10b 第2特定部
11 幅値取得部
11a 第1取得部
11b 第2取得部
12 演算部
13 出力部
15 第1クラス特定部
16 第1推定値演算部
17 第1演算用モデル
18 第2クラス特定部
19 第2推定値演算部
20 第2演算用モデル
21 統合演算部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13