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明細書 :電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-151569 (P2016-151569A)
公開日 平成28年8月22日(2016.8.22)
発明の名称または考案の名称 電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法及び装置
国際特許分類 G01R  31/26        (2014.01)
H01L  25/07        (2006.01)
H01L  25/18        (2006.01)
FI G01R 31/26 A
H01L 25/04 C
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 24
出願番号 特願2015-030901 (P2015-030901)
出願日 平成27年2月19日(2015.2.19)
発明者または考案者 【氏名】大村 一郎
【氏名】附田 正則
【氏名】田代 勝治
【氏名】松尾 和顕
出願人 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
【識別番号】505246848
【氏名又は名称】株式会社豊光社
【識別番号】597019609
【氏名又は名称】株式会社 シーディエヌ
【識別番号】593212378
【氏名又は名称】コペル電子株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100093285、【弁理士】、【氏名又は名称】久保山 隆
【識別番号】100182567、【弁理士】、【氏名又は名称】遠坂 啓太
審査請求 未請求
テーマコード 2G003
Fターム 2G003AA02
2G003AB18
2G003AC09
2G003AE06
2G003AH10
要約 【課題】電力用半導体デバイスの配線材である複数のボンディングワイヤや配線路に流れる電流分布の偏りなどの異常を、電流磁界を検出することにより非接触で検査診断し、配線不良などによるデバイスの長期信頼性を損なう恐れのある隠れた瑕疵等の原因を検査、診断、検出し、不良品を排除する。
【解決手段】複数の電力用半導体デバイスのそれぞれと基板間を、複数のボンディングワイヤで接合した電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法において、複数のボンディングワイヤに流れる電流をそれぞれ検出する電流センサを複数設け、電流センサにより予め採取した基準の電流磁界分布パターンと、新たに採取した分布パターンの特徴点比較を行い、予め指定された特徴点の差異を評価し、一定の評価値以上の差異が認められた場合に異常として診断する電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の電力用半導体デバイスのそれぞれと基板間を、複数のボンディングワイヤで接合した電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法において、
前記複数のボンディングワイヤに流れる電流により生じる磁界を検出するとともに、前記磁界に応じた電流を各ボンディングワイヤの電流としてそれぞれ出力する複数の電流センサを設け、
前記電流センサにより予め採取した基準の電流磁界分布パターンと、新たに採取した電流磁界分布パターンの特徴点比較を行い、予め指定された特徴点の差異を評価し、一定の評価値以上の差異が認められた場合に異常として診断する
ことを特徴とする電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法。
【請求項2】
予め採取した基準となる電流磁界分布パターンと、新たに採取した電流磁界分布パターンに対して、波形の時間軸を含めた各電流センサの電流磁界信号波形の差分を時間軸に積算したサンプル差分積分信号を、電流センサ配列の空間軸上にプロットし、空間的な偏りの発生を異常特徴として評価検出し、異常判定を行う請求項1記載の電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法。
【請求項3】
予め採取した基準となる電流磁界標準信号と、新たに採取した電流磁界検査信号に対して、各電流センサの電流磁界信号の差分をサンプル期間毎に求め、前記差分を時間軸に積算し、得られた電流センサ別差分積算値と予め設定された判定基準とを比較して、異常判定を行う請求項1記載の電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法。
【請求項4】
前記複数の電流センサの各出力信号の振幅及び周波数特性に対し、全ての出力特性がほぼ一致するように予め補正を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載の電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法。
【請求項5】
前記基準の電流磁界分布パターン及び前記新たに採取した電流磁界分布パターンは、それぞれ、前記電流センサにより検出した電流磁界から本来採取すべき電流磁界信号を著しく妨害する、検査環境に存在する不要な磁界輻射ノイズである環境ノイズ(以下、単に「環境ノイズ」という。)を除去した信号を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれかの項に記載の電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法。
【請求項6】
前記基準の電流磁界分布パターン及び前記新たに採取した電流磁界分布パターンは、それぞれ、前記電流センサにより検出した環境ノイズを含む原信号を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれかの項に記載の電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法。
【請求項7】
複数の電力用半導体デバイスのそれぞれと基板間を、複数のボンディングワイヤで接合した電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断装置において、
前記複数のボンディングワイヤに流れる電流により生じる磁界を検出するとともに、前記磁界に応じた電流を各ボンディングワイヤの電流としてそれぞれ出力する複数の電流センサと、
前記電流センサにより予め採取した基準の電流磁界分布パターンと、新たに採取した電流磁界分布パターンの特徴点比較を行い、予め指定された特徴点の差異を評価し、一定の評価値以上の差異が認められた場合に異常として診断する異常診断手段と
を設けたことを特徴とする電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断装置。
【請求項8】
前記異常診断手段は、
予め採取した基準となる電流磁界分布パターンと、新たに採取した電流磁界分布パターンに対して、波形の時間軸を含めた各電流センサの電流磁界信号波形の差分を時間軸に積算する差分積算手段と、
前記差分積算手段により積算されたサンプル差分積分信号を、前記電流センサ配列の空間軸上にプロットし、空間的な偏りの発生を異常特徴として評価検出し、異常判定を行う異常判定手段と
を含むことを特徴とする請求項7記載の電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断装置。
【請求項9】
前記異常診断手段は、
予め採取した基準となる電流磁界標準信号と、新たに採取した電流磁界検査信号に対して、各電流センサの電流磁界信号の差分をサンプル期間毎に求め、前記差分を時間軸に積算する電流センサ別差分積算手段と、
得られた電流センサ別差分積算値と予め設定された判定基準とを比較して、異常判定を行う異常判定手段と
を含むことを特徴とする請求項7記載の電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断装置。
【請求項10】
前記複数の電流センサの各出力信号の振幅及び周波数特性に対し、全ての出力特性がほぼ一致するように予め補正を行う電流センサ別出力特性補正手段を有することを特徴とする請求項7から9のいずれかの項に記載の電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断装置。
【請求項11】
前記異常診断手段において、前記基準の電流磁界分布パターン及び前記新たに採取した電流磁界分布パターンは、それぞれ、前記電流センサにより検出した環境ノイズを除去した信号を用いることを特徴とする請求項7から10のいずれかの項に記載の電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断装置。
【請求項12】
前記異常診断手段において、前記基準の電流磁界分布パターン及び前記新たに採取した電流磁界分布パターンは、それぞれ、前記電流センサにより検出した環境ノイズを含む原信号を用いることを特徴とする請求項7から10のいずれかの項に記載の電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用半導体デバイス、特にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と呼ばれる、1kW以上の電気機器および電子機器の電源やインバータ等に広く使われているデバイスの後工程、すなわちチップを実装してパッケージングする工程で不良品を検出し、市場での当該デバイスの故障を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBTの市場は、産業機器向け、車載機器向け、民生機器向けの3分野に大きく分けられる。産業機器向けで大きいのは、電車や産業ロボット、工作機械のモータ制御インバータ用途である。車載機器向けでも、ハイブリッド自動車の駆動用モータとカー・エアコン制御用のインバータ用途が多い。民生機器ではカメラのストロボ向けとエアコンのインバータ用途が主流である。特にハイブリッド自動車や電気自動車におけるIGBT需要により、市場は拡大している。
【0003】
IGBTを用いた電力用半導体モジュールは、複数の電力用半導体デバイスを同一基板上に密接して併設し、各電力用半導体デバイスと端子間を接合するボンディングワイヤも、高密度で配線されている。電力用半導体デバイスと端子間をボンディングワイヤで接合する場合、接合部やボンディングワイヤ表面の酸化膜の状態や作業上のボンディングワイヤ装着圧力の変化などによりボンディングワイヤ接合不良が生じることがある。すなわち、見掛け上は完全接合しているようでも、接合が不完全であると、接合部の抵抗がばらつき、電流が各電力用半導体デバイスに均等に流れず、一部の電力用半導体デバイスに大電流が流れて破壊することにつながる。また、接合強度が低いと、機械的振動やヒートサイクル負荷により、接合部の断線につながるおそれがある。
【0004】
このようなボンディングワイヤ接合不良を、製造段階のボンディング工程後に検査できると、出荷後の故障やトラブルを防止することができる。ボンディング工程後の検査に際し、複数のボンディングワイヤに流れる電流を同時に測定するために、特許文献1には、ボンディングワイヤに流れる電流により発生する磁束を測定する磁束検出装置をボンディングワイヤの数だけ所定の間隔を開けて積層したセンサが開示されている。
【0005】
非特許文献1では、スイッチング電流のオンオフを繰り返すことで、ボンディングワイヤ接合不良が発生し、接合部の接触抵抗が大きくなる等の問題点が指摘されている。
【0006】
特許文献2~4には、ボンディング方法に関する技術が開示されている。これらの技術は、ボンディングワイヤを介してチップ電流を検出しており、チップの全電流しか測定できない。また接触型の測定であり、電流分布も測定できない。
【0007】
特許文献5には、試験片に荷重(外力)を印加して材料試験を行うよう構成された材料試験機において、材料試験中の試験片の磁気データを検出する検出磁気検出手段を複数具備して、試験片における異なる箇所の磁気データを検出するようにした材料試験機が開示されているが、複数のボンディングワイヤに流れる電流を同時に測定するものではない。
【0008】
特許文献6には、所定周波数の電流を被測定物の一対の電極間に通電する通電手段と、被測定物の複数の部分に対向して位置し、前記複数の部分に流れる電流によってそれぞれ発生する磁界を検出して、検出磁界を表す信号を出力する磁界検出手段と、前記磁界検出手段から出力される検出磁界を表す信号から、前記所定周波数に等しい周波数の信号成分を取出す周波数成分取出手段と、前記周波数成分取出手段によって取出された信号成分から、被測定物の複数の部分に前記所定周波数と等しい周波数でそれぞれ流れる電流の大きさ及び向きを検出する電流分布検出手段とを備えた電流分布測定装置において、被測定物の一対の電極のうちの一方の電極は、被測定物の複数の異なる位置にそれぞれ接合される複数の電極端子を有し、前記通電手段は、前記複数の電極端子にそれぞれ異なる周波数の電流を通電し、前記周波数成分取出手段は、前記磁界検出手段から出力される検出磁界を表す信号から、前記異なる周波数にそれぞれ等しい周波数の信号成分を取出し、前記電流分布検出手段は、前記異なる周波数ごとに、被測定物の複数の部分に流れる電流の大きさ及び方向を検出する電流分布測定装置が開示されている。
【0009】
しかし、この電流分布測定装置では、磁界センサを複数配置する検出構造を取るが、一つのセンサを2つの直交する磁界方向を検出できるように構成し、太陽光発電パネルの発電セルの特性不良を電流磁界ベクトルの方向で検出することが目的であり、複数のボンディングワイヤに流れる電流を同時に測定する用途には適用できない。
【0010】
非特許文献2においては、パワーモジュールの初期不良を防ぐために、IGBTチップのボンディングワイヤ上に、小さなコイルを有する非接触センサを有する電流信号分布測定装置を開示しているが、外部磁界やノイズの影響への対策には触れていない。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2013-76569号公報
【特許文献2】欧州特許公開第2677541号公報
【特許文献3】米国特許第8541892号明細書
【特許文献4】米国特許第8004304号明細書
【特許文献5】特開2000-155083号公報
【特許文献6】特許第5152280号公報
【0012】

【非特許文献1】Hamidi et al, "Reliability and lifetime evaluation of different wire bonding technologies for high power IGBT modules" Microelectronics Reliability 39 (1999) 1153-1158.
【非特許文献2】Tsukuda et al, "High-throughput DBC-assembled IGBT screening for power module," CIPS 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、電力用半導体モジュールは、電力用半導体デバイス電極とパッケージ電極との間を複数本のボンディングワイヤで接合し、電力用半導体デバイス電極とパッケージ電極との間での熱膨張係数の違いや車載搭載時の振動や衝撃を吸収しつつ、大電流伝送を可能とする構造を形成している。
【0014】
ボンディングワイヤはボンディングワイヤ装着装置により接合されるが、ボンディングワイヤ接合不良により、断線や接触抵抗値が高い状態にある場合、他の正常なボンディングワイヤに分流することになる。
【0015】
このデバイス電流分流の変化は、電力用半導体試験工程における非常に短い時間での半導体デバイス・パルス・スイッチング特性試験では、電力用半導体デバイスに流れる総合電流の特性計測を目的としているため、各ボンディングワイヤに流れる電流信号の微妙な特性変化は検出不可能である。これらの試験をすり抜け、隠れた瑕疵が存在する電力用半導体デバイスデバイス製品は、市場にて車両や各種パワー制御機器に搭載され、過酷な環境下で長時間動作する内に、ボンディングワイヤに局在する負荷の偏りが、電力用半導体デバイスの素子寿命を著しく低下させ、予期せぬ機能障害をもたらす危険性をはらんでいる。
【0016】
しかも、これら電力用半導体デバイス製品は、大電力小型化、高集積化されながら、社会インフラの重要な運輸機構あるいは自然エネルギー生成などのエネルギーコントロール部に搭載され、非常な勢いでその応用範囲を拡大しつつある。
【0017】
このため、これら機能障害は単なる装置機能停止では止まらず、社会生活根幹に多大な影響及ぼすものとなる。
【0018】
本発明は、電力用半導体デバイスの配線材である複数のボンディングワイヤや配線路に流れる電流分布の偏りなどの異常を、電流磁界を検出することにより非接触で検査診断し、配線不良などによるデバイスの長期信頼性を損なう恐れのある隠れた瑕疵等の原因を検査、診断、検出し、不良品を排除することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するため、本発明の第1の構成は、複数の電力用半導体デバイスのそれぞれと基板間を、複数のボンディングワイヤで接合した電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法において、
前記複数のボンディングワイヤに流れる電流により生じる磁界を検出するとともに、前記磁界に応じた電流を各ボンディングワイヤの電流としてそれぞれ出力する複数の電流センサを設け、
前記電流センサにより予め採取した基準の電流磁界分布パターンと、新たに採取した電流磁界分布パターンの特徴点比較を行い、予め指定された特徴点の差異を評価し、一定の評価値以上の差異が認められた場合に異常として診断する
ことを特徴とする電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法である。
【0020】
本発明の第2の構成は、第1の構成において、予め採取した基準となる電流磁界分布パターンと、新たに採取した電流磁界分布パターンに対して、波形の時間軸を含めた各電流センサの電流磁界信号波形の差分を時間軸に積算したサンプル差分積分信号を、電流センサ配列の空間軸上にプロットし、空間的な偏りの発生を異常特徴として評価検出し、異常判定を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明の第3の構成は、第1の構成において、予め採取した基準となる電流磁界標準信号と、新たに採取した電流磁界検査信号に対して、各電流センサの電流磁界信号の差分をサンプル期間毎に求め、前記差分を時間軸に積算し、得られた電流センサ別差分積算値と予め設定された判定基準とを比較して、異常判定を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明の第4の構成は、第1から3のいずれかの構成において、前記複数の電流センサの各出力信号の振幅及び周波数特性に対し、全ての出力特性がほぼ一致するように予め補正を行うことを特徴とする。
【0023】
本発明の第5の構成は、第1から第4のいずれかの構成において、前記基準の電流磁界分布パターン及び前記新たに採取した電流磁界分布パターンは、それぞれ、前記電流センサにより検出した電流磁界から本来採取すべき電流磁界信号を著しく妨害する、検査環境に存在する不要な磁界輻射ノイズである環境ノイズ(以下、単に「環境ノイズ」という。)を除去した信号を用いることを特徴とする。
【0024】
本発明の第6の構成は、第1から第4のいずれかの構成において、前記基準の電流磁界分布パターン及び前記新たに採取した電流磁界分布パターンは、それぞれ、前記電流センサにより検出した環境ノイズを含む原信号を用いることを特徴とする。
【0025】
本発明の第7の構成は、複数の電力用半導体デバイスのそれぞれと基板間を、複数のボンディングワイヤで接合した電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断装置において、
前記複数のボンディングワイヤに流れる電流により生じる磁界を検出するとともに、前記磁界に応じた電流を各ボンディングワイヤの電流としてそれぞれ出力する複数の電流センサと、
前記電流センサにより予め採取した基準の電流磁界分布パターンと、新たに採取した電流磁界分布パターンの特徴点比較を行い、予め指定された特徴点の差異を評価し、一定の評価値以上の差異が認められた場合に異常として診断する異常診断手段と
を設けたことを特徴とする電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断装置である。
【0026】
本発明の第8の構成は、第7の構成において、前記異常診断手段は、予め採取した基準となる電流磁界分布パターンと、新たに採取した電流磁界分布パターンに対して、波形の時間軸を含めた各電流センサの電流磁界信号波形の差分を時間軸に積算する差分積算手段と、
前記差分積算手段により積算されたサンプル差分積分信号を、前記電流センサ配列の空間軸上にプロットし、空間的な偏りの発生を異常特徴として評価検出し、異常判定を行う異常判定手段と
を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明の第9の構成は、第7の構成において、前記異常診断手段は、予め採取した基準となる電流磁界標準信号と、新たに採取した電流磁界検査信号に対して、各電流センサの電流磁界信号の差分をサンプル期間毎に求め、前記差分を時間軸に積算する電流センサ別差分積算手段と、
得られた電流センサ別差分積算値と予め設定された判定基準とを比較して、異常判定を行う異常判定手段と
を含むことを特徴とする。
【0028】
本発明の第10の構成は、第7から9のいずれかの構成において、全ての出力特性がほぼ一致するように予め補正を行う電流センサ別出力特性補正手段を有することを特徴とする。
【0029】
本発明の第11の構成は、第7から第10のいずれかの構成の異常診断手段において、前記基準の電流磁界分布パターン及び前記新たに採取した電流磁界分布パターンは、それぞれ、前記電流センサにより検出した環境ノイズを除去した信号を用いることを特徴とする。
【0030】
本発明の第12の構成は、第7から第10のいずれかの構成の異常診断手段において、前記基準の電流磁界分布パターン及び前記新たに採取した電流磁界分布パターンは、それぞれ、前記電流センサにより検出した環境ノイズを含む原信号を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、電力用半導体デバイスの配線材である複数のボンディングワイヤや配線路に流れる電流分布の偏りなどの異常を、電流磁界を検出することにより非接触で検査診断し、配線不良などによるデバイスの長期信頼性を損なう恐れのある隠れた瑕疵等の原因を検査、診断、検出し、不良品を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断を実施する電流磁界分布解析装置の構成例を示す装置構成図である。
【図2】本実施の形態に係るモジュール20の構成例と各種電流磁界の影響を示す図であり、(a)はコイルの配置が電力用半導体デバイス(IGBT)10のボンディングワイヤに対して正面視で示したものであり、(b)は側面視で示したものである。
【図3】本実施の形態に係る電流磁界分布解析装置100のソフトウエア機能的ブロック図である。
【図4】本実施の形態に係るセンサアレイモジュール20の各電流センサ出力特性の特性補正を行うための単発矩形波レスポンス波形データによる補正の説明図である。
【図5】8本の接合正常なボンディングワイヤを16チャンネルのセンサアレイモジュール20で測定した場合のボンディングワイヤの並び方向である空間軸方向、信号変化時間軸方向及び信号振幅方向に立体的に面で表した電流磁界波形の分布パターン(電流磁界分布パターン)を示すものであり、(a-1)はボンディングワイヤの平面視図、(a-2)は各電流センサ出力の電流磁界測定データの平面視図、(b-1)はボンディングワイヤの側面視図、(b-2)は電流磁界測定データの側面視図、(c-1)はボンディングワイヤの斜視図、(c-2)は電流磁界測定データの斜視図、(d)は電流磁界測定データの正面視図、(e)はボンディングワイヤが基板にしっかりと接合されている状態の側面視図、(f)は(e)の接合状態の時の正常応答を示す電流磁界波形図である。
【図6】8本のボンディングワイヤのうち、6番目のボンディングワイヤB6が接合不良の時の各ボンディングワイヤに流れる電流を16チャンネルのセンサアレイモジュール20で測定した場合、前記同様に立体的に表した電流磁界分布パターンを示すものであり、(a-1)はボンディングワイヤの平面視図、(a-2)は各電流センサ出力の電流磁界測定データの平面視図、(b-1)はボンディングワイヤの側面視図、(b-2)は電流磁界測定データの側面視図、(c-1)はボンディングワイヤの斜視図、(c-2)は電流磁界測定データの斜視図、(d)は電流磁界測定データの正面視図、(e)はボンディングワイヤの片方が接合不良で、抵抗を有している状態の側面視図、(f)は(e)の状態の応答を示す電流磁界波形図である。
【図7】ボンディングワイヤに流れる電流を測定する場合にセンサアレイモジュール20の電流センサ(CS1からCS16まで)がボンディングワイヤ接合不良以外から影響を受けるばらつきの原因を示す説明図である。
【図8】電流磁界の三次元分布の正面投影図であり、検査サンプル信号(a)にボンディングワイヤ接合不良が生じていた場合、標準サンプル平均信号波形(b)に対するサンプル差分積分信号(c)の関係を示したものである。
【図9】サンプル差分積分信号図8の(c)及びフロアノイズDの形状から見たいくつかの不良例のパターンを示すものであり、(a)はピークが1つ際立っている場合、(b)はピークが複数(2つ)離れている場合、(c)はピークが複数(2つ)近接している場合、(d)はピークが端に寄っている場合、(e)は端のピークが低い場合、(f)は全体的に低いピークが生じているが、所々でフロアノイズレベルDを超えている場合を示している。
【図10】ボンディングワイヤの試験パルス応答を示すものであり、STは試験対象の電力用半導体デバイスの入力ゲートに印加される試験パルス信号、SCはセンサアレイモジュール20の電流センサCS1からCS16の出力信号の代表例の一つを示している。
【図11】サンプル差分信号から差分信号積算値を求める方法と不良判定に用いる二種類の判定基準である第一判定基準200及び第二判定基準201の設定方法を示す説明図である。
【図12】図11に示した第一判定基準200を用いて分析し、判定閾値1(1σ)及び判定閾値2(2σ)により判定した実測例を示す実測値プロットである。
【図13】図3のGO/NO GO判定機能133で実行される、本発明のボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法の処理ステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る電力用半導体デバイス(IGBT)のボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断を実施する電流磁界分布解析装置100を中心とした検査診断装置構成を示す図である。この電流磁界分布解析装置100は、検査対象の電力用半導体デバイス(IGBT)10の複数のボンディングワイヤ(図2(a)及び(b)のボンディングワイヤB1~B8)に流れる電流により発生する電流磁界を非接触で同時に測定するセンサアレイモジュール20からの出力信号を入力し、数学演算を施し、ボンディングワイヤ上の電流分布の増減ばらつき度合いを検査し、電力用半導体デバイス10に内在する製造上の欠陥を検出するものである。前述の一連の製品欠陥検査判定機能はIGBT試験用検査装置40に収容され、電力用半導体デバイス10の性能仕様を試験するデバイス・パルス・スイッチング特性試験と同時並行に動作機能するものである。

【0034】
電流磁界分布解析装置100には、センサアレイモジュール20からの複数の電流センサ出力(本実施例では図2のCS1からCS16の16チャンネルの構成である)のアナログ信号出力が入力され、高速ディジタイザ110で高速サンプリング後、ディジタル信号に変換される。このディジタル信号は、ソフトウエア解析演算処理部120でディジタル数学演算が施され、センサアレイモジュール20の各電流センサ出力の信号特性のばらつき補正の前処理を施す周波数成分補正を行った後、前もって計算範囲設定や閾値設定が施された判定基準データを元に試験パルスによりボンディングワイヤに流れる特徴的な応答波形の電流分布を測定し、特徴的な変位を抽出し、電力用半導体デバイスの正常/異常判定を行う。具体的には、図3に示すソフトウエア機能ブロック図に基づいて説明する。

【0035】
センサアレイモジュール20は図2の(a)に示すような構造をしている。ボンディングワイヤB1~B8に対してコイルC1~C16が平行になるように一直線に並べられた構造を取っている。(b)はボンディングワイヤB1~B8とコイルC1~C16の側面から視た位置関係を示すものである。コイルC1~C16にはボンディングワイヤに流れる電流により生じる電流磁界BWC1~BWC8により電流が発生し、信号増幅とコイル特有の出力特性に対する周波数補正を行うアンプ回路A1~A16に入力され、増幅、周波数特性補正された信号は電流センサCS1~CS16の出力として、図1の電流磁界分布解析装置100の高速ディジタイザ110に入力される。このように構成された16チャンネルの独立した一連のコイルC1~C16とアンプ回路A1~A16の電流センサ構造では製造ばらつきによりチャンネル間の微妙な特性の差が発生してしまう場合がある。この出力特性のばらつきはその後のボンディングワイヤB1~B8の電流分布検出に支障を来すため、前述ソフトウエア解析演算処理部120にてばらつき特性補正を行う必要がある。

【0036】
また図2には、センサアレイモジュール20をIGBT試験用検査装置40に装着し電力用半導体デバイス10のボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断を行う場合、本来の検査目的のボンディングワイヤ電流磁界BWC1~BWC8以外に検査装置内部の構造に起因する様々な環境磁界ノイズの影響を受ける状況の一例を示している。試験電流端子50は電力用半導体デバイス10のボンディングワイヤB1~B8の接続される基板電極端子に接触し、試験電流51を供給する。この時試験電流51により発生する試験電流端子磁界TTCは、ボンディングワイヤにより発生するボンディングワイヤ電流磁界BWC1~BWC8の総和の電流磁界値(IGBTモジュールの場合パッケージされる電力用半導体デバイスの搭載個数により更に総和の電流磁界値は大きくなる)よりも極端に大きな値になり、センサアレイモジュール20のコイルC1~C16にノイズとして影響を与える。

【0037】
これら環境磁界ノイズはボンディングワイヤの近傍の電流磁界と異なり、検査装置内部の広い範囲に広がる広域的なノイズ成分として捉えることができる。測定時、センサアレイモジュール20のコイルC1~C16がボンディングワイヤB1~B8近傍に位置する位置を基準位置52とすると、当該位置ではボンディングワイヤ電流磁界BWC1~BWC8の影響を受けると共に試験電流端子磁界TTCの影響も同時に受ける。一方ボンディングワイヤB1~B8よりもコイルC1~C16の位置が偏位し偏位位置53に位置する場合、試験電流端子磁界TTCは同程度の影響を受けるが、ボンディングワイヤ電流磁界BWC1~BWC8の影響は薄れる状態になる。
以上のことから基準位置52で検出した電流センサCS1~CS16出力値から偏位位置53で検出した電流センサCS1~CS16出力値を差し引くことにより、広域的なノイズ成分である環境磁界ノイズ影響を差し引くことも可能となる。

【0038】
次に図3を用いてソフトウエア解析演算処理部120のソフトウエア処理構成の機能説明を行う。高速ディジタイザ制御機能ブロック122は、人間の操作インターフェースを介在し、ハードウエアである高速ディジタイザ110の、サンプリング速度設定、入力スケーリング設定、入力チャンネル選択設定、入力極性切換、入力インピーダンス切換、入力カプリングAC/DC切換、入力トリガレベル設定(トリガ入力は図10の試験パルスSTの最初の立ち上がりをサンプリング開始とする。)などの設定制御を行う。データ取り込み機能ブロック124は、高速ディジタイザ110が変換したディジタル信号を記憶部である取得データメモリ125内に取り込む制御を行う。自動レンジデータ取得機能ブロック123は、取得データメモリ125に記憶されたサンプリングされたディジタル信号を読出し、高速ディジタイザ110内部のA/D変換器のサンプリング値が最も効率の良いスケーリングとなるように高速ディジタイザ制御機能ブロック122に対して制御指示を行う。データ取り込み機能ブロック124に対しては、A/D変換の最適値で取り込めるよう複数回のサンプル波形データ取得を指示する。また取得されたディジタル信号を次処理ブロックである周波数成分補正機能ブロック126に引き渡す。

【0039】
周波数成分補正機能ブロック126は、自動レンジデータ取得機能ブロック123でスケール最適化確認された後の、波形ディジタル信号に対して、図2のセンサアレイモジュール20内部の電流センサCS1~CS16出力特性の微妙なばらつきに対して周波数特性補正やゲイン調整を施す。具体的な演算補正パラメタの算出方法は図4の(a)~(c)の波形を用いて説明する。

【0040】
前記センサアレイモジュール20の各電流センサCS1~CS16の出力の増幅度及び周波数特性の補正を行う二つの演算補正パラメタすなわち振幅補正値Aj及び減衰時定数補正値Bjは、図4(a)に示す補正用に使用する試験パルス入力(a)に対する各電流センサCS1~CS16の出力波形データViと、予め正常な電力用半導体デバイスについて測定した波形データに基づいて作成した図4(b)に示す理想的な基準出力波形Vrefとの比較補正をすることにより求められる。本来センサアレイモジュール20の各電流センサCS1~CS16を構成する各アンプ回路A1~A16の増幅度及び周波数特性は試験用パルス入力(a)に対する基準出力波形Vrefに一致するように設計されているが、電流センサCS1~CS16を構成するコイルC1~C16のパターン形成過程中のばらつきやアンプ回路A1~A16を構成する部品の微妙なばらつきにより出力特性の微妙な違いとなって現れている。図4の(b)に示すViは補正対象となるセンサアレイモジュール20の補正前の各電流センサCS1~CS16の出力波形の一つの例を示す。
各電流センサCS1~CS16の出力波形データViに対する補正は、次の(1)式で導出される。

【0041】
【数1】
JP2016151569A_000003t.gif
ここで、iは電流センサチャンネル番号、Ajは振幅補正値、Bjは減衰時定数補正値(=ΔCR)である。
図4(b)に示すように、測定した波形データViには、0V基準(0電圧)に対するオフセット電圧Voffが生じていたり、振幅Viの振幅Aiが基準波形の振幅Arefとずれていたり、また減衰曲線の傾きが違っていたり、さらに下降エッジの時間にずれΔTiが生じていたりする。そこで、まず、図4(c)に示すように、Voffの除去と、振幅Aiの補正と、下降エッジの時間ずれΔTiをゼロとする時間補正を行った上でAref=Aiとなるように振幅補正値Ajを算出する(実施例ではおよそ0.7~1.3程度)。

【0042】
次に、減衰時定数Biの修正を行う。減衰時定数補正値Bjは図4(c)に示すように基準出力波形Vrefの時定数Brefと波形データViの時定数Biの差で与えられる。図4(c)の例の場合BiはBrefに比べると大きいため補正符号はマイナスとなる。Bjの符号を含めた算出式はBj=Bref-Biで与えられる。なお、実際の波形データViに対する演算補正は波形の立ち下がりエッジのVrefに対する収斂度として、極力Vie=0Vとなるような値にBjを選定する。これらの計算結果の各電流センサCS1~CS16の出力補正値(振幅補正値Ai及び減衰時定数補正値Bj)を周波数成分補正機能ブロック126の演算補正パラメタとして組み込み(1)式を用いて各電流センサ出力補正演算を行う。なお一度算出した演算補正パラメタすなわち補正値(振幅補正値Ai及び減衰時定数補正値Bj)は、センサアレイモジュール20が別の個体と交換されることがない限り同一補正値が使用される。一方センサアレイモジュールが別の個体と交換された場合には、前記手順に従い再度補正値を算出し直し、その個体特有の補正値として適用する必要がある。

【0043】
データ選択機能ブロック128は、データ保存/読み出し機能ブロック130の制御により、周波数成分補正機能ブロック126からの出力ディジタル信号を入力し、取得データメモリ125とのディジタル信号の入出力選択し、データ表示制御機能ブロック129とGO/NO GO判定機能ブロック133にディジタル信号を選択し、引き継ぐ。
データ表示制御機能ブロック129は、データ保存/読み出し機能ブロック130の制御により、データ選択機能ブロック128の出力するディジタル信号を取り込み、人間の操作インターフェースを介し、以下に示す各種表示形式に変換する。二次元(2D)表示機能G1は各電流センサ別に色分けし、振幅方向と時間軸方向のスケーリングを合わせた電流磁界波形の各電流センサチャンネルの側面視の二次元重ね表示を行う。三次元(3D)表示機能G2は、各電流センサ別の二次元表示波形を電流センサ毎の物理的並び方向の空間に等間隔に並べ、斜め上方視点から俯瞰する表示機能であり、図5の(c-2)あるいは図6(c-2)に示したような特徴的な波形形状をつかみやすくための表示機能である。また、操作インターフェースを介し、視点切り替えや表示する電流センサチャンネルの順番切り替えを行う。等高線表示機能G3は、振幅に色付けを行い振幅軸上方から捉えた二次元画像化表示機能であり、図5の(a-2)あるいは図6の(a-2)に示す波形のように、信号振幅を二次元平面上で等高線色分けし、捉え易くする機能である。また、操作インターフェースを介し、表示色味割り付けが可能である。

【0044】
データ保存/読み出し機能ブロック130は、人間の操作インターフェースを介し、取得データメモリ125に対して波形データであるディジタル信号やスケーリング値、サンプリング間隔情報、その他演算に必要な付加情報などの保存あるいは読み出し制御を行い、データ選択機能ブロック128に対して、ディジタル信号の入力ソース切り替え制御を行い、データ表示制御機能ブロック129に対して、データ表示制御機能ブロック129で変換された各種表示波形データを視点角度や表示電流センサチャネル順序など付加情報と共に取得データメモリ125に保存する制御を行う。

【0045】
特徴点マーキング機能ブロック131は、人間の操作インターフェースを介し、取得データメモリ125にあらかじめ格納されている任意の波形データのディジタル信号をその付帯データ(サンプリングビット数、サンプリングスケール値やサンプリング時間間隔など)と共に、データ選択機能ブロック128を経由し読み出し、図10と図11に示す本発明の判定に用いるディジタル信号演算範囲の積分計算区間の設定を行う。
特徴点マーキングの際、特徴点マーキング表示機能G4では、データ表示制御機能ブロック129の等高線表示機能G3で生成された等高線表示情報と同様な波形表示を用いて、ボンディングワイヤ結合不良による波形変化の最も現れやすいと想定される領域を関心領域マーカにより選択設定する。
マーキングされた関心領域(積分計算区間)は領域を設定した波形情報のディジタル信号と共に比較データメモリ132に保存される。

【0046】
GO/NO GO判定機能ブロック133は、データ選択機能ブロック128から出力される被検査波形のディジタル信号と比較データメモリ132に格納された検査基本波形の複数のディジタル信号及び関心領域情報(積分計算区間)を用いて図13に示すソフトウエアアルゴリズムに従い検査・可否判定を行い、結果表示G5で“正常”,“不良”及び“疑わしい”旨の表示を行う。なお、前述GO/NO GO判定機能ブロック133では検査基本波形の複数のディジタル信号を用い、前もって図11で示される第一判定基準200の判定閾値1(1σ)及び判定閾値2(2σ)と、第二判定基準201の判定閾値1(1σ)、判定閾値2(2σ)及び判定閾値3(1.5σ)の算出を行って、比較データメモリ132に格納しておき、図13のソフトウエアアルゴリズムの各判定ステップで使用する。

【0047】
図5は、8本の接合正常のボンディングワイヤを16チャンネルのセンサアレイモジュール20で測定した場合の各電流センサCS1~CS16の並び空間軸方向、信号変化時間軸方向及び信号振幅方向に立体的に面で表した電流磁界分布波形の分布パターンである電流磁界分布パターンを示すものであり、(a-1)はボンディングワイヤB1~B8の平面視図、(a-2)は各電流センサチャンネルの測定データの平面視図、(b-1)はボンディングワイヤの側面視図、(b-2)は測定データの側面視図、(c-1)はボンディングワイヤの斜視図、(c-2)は測定データの斜視図、(d)は測定データの正面視図、(e)はボンディングワイヤが基板にしっかりと接合されている状態の側面視図、(f)は(e)の接合状態の時の正常応答を示す電流磁界波形図である。この接合正常状態では、全電流センサチャンネルの電流磁界分布波形測定データの三次元分布は(d)の正面視図に示すように、ボンディングワイヤB1~B8の数の小さな起伏を示す。このようにセンサアレイモジュール20を用いて測定した信号波形は時間軸方向(試験パルス信号変化方向)、空間軸方向(センサアレイモジュール20の複数の電流センサCS1~CS16の並び方向)及び各電流センサ出力の信号振幅方向(信号強度)で示される海の波のような複雑な波面変化でその特徴を捉えることができる。

【0048】
一方、図6は、8本のボンディングワイヤのうち、6番目のボンディングワイヤB6が接合不良の時の各ボンディングワイヤB1~B8に流れる電流を16チャンネルのセンサアレイモジュール20で測定した場合、前記同様に立体的に表した電流磁界分布波形図を示すものであり、(a-1)はボンディングワイヤの平面視図、(a-2)は各電流センサチャンネルの測定データの平面視図、(b-1)はボンディングワイヤの側面視図、(b-2)は測定データの側面視図、(c-1)はボンディングワイヤの斜視図、(c-2)は測定データの斜視図、(d)は測定データの正面視図、(e)はボンディングワイヤの片方が接合不良で、微小な抵抗を有している状態の側面視図、(f)は(e)の状態の応答を示す電流磁界波形図である。このようにボンディングワイヤの一部に接合不良があると、それが抵抗値の上昇となり、電流が小さくなりそれが電流磁界波形振幅の減少となって現れ、また試験パルス応答の微妙な応答遅延となって現れる。この電流磁界分布波形値を、予め設定した基準となる電流磁界分布波形と比較することにより、ボンディングワイヤB6の不良を検査することができる。しかしながら、実際には次の図7に示すように多くの機構的な位置合わせばらつきや製造上のばらつき、あるいはIGBT試験用検査装置40の内部の試験用電源供給電極や試験用負荷のインダクタなどから発生する、強力な環境磁界ノイズなどが外乱となって発生するため、単純な差分検査では電力用半導体デバイス10の不良検査は難しい。

【0049】
各ボンディングワイヤB1~B8に流れる電流のばらつきは、接合不良の他に、図7に示すように、ボンディングワイヤB1~B8の形状や傾きのばらつきによっても生じる。すなわち、ボンディングワイヤB1~B8は、全てがきれいに直線上に並んでいるのではなく、電力用半導体デバイス10の素子内の垂直方向に流れる「面電流」を向上させるために図5の(a-1)(b-1)(c-1)、図6の(a-1)(b-1)(c-1)及び図7の(a)に示すように、千鳥状に配置されることが多い。また、ボンディングワイヤB1~B8をデバイス電極面や基板電極端子面に圧着接合する際、完全に垂直ではなく、図7(b)に示すように多少の傾きが生じる。さらに、センサアレイモジュール20の電流センサCS1~CS16のコイルC1~C16のボンディングワイヤB1~B8に対する近接位置には、センサアレイモジュール20をIGBT試験用検査装置40の内部のデバイス試験治具に固定する際の多少の相対位置ばらつき(±Δx、±Δy、±Δz)が生じる。このような各種の影響が複雑に影響し合うと、図7(d)に示すように、センサアレイモジュール20のコイルC1~C16は均一に配置されていても、全電流センサCS1~CS16の各チャンネルが検出する電流磁界波形には、図7(c-2)に示すようにばらつきが生じる。これらのばらつきは各電流センサの電流磁界分布検出の際の信号入力の偏差値(図7(c-1))として認識される。一般にこれら相対位置ばらつきは、各電流センサCS1~CS16の出力信号値の求める標準信号レベルに対して傾向的な信号影響を伴うことが多い。このことは後の図11の第二判定基準201の判定閾値1、判定閾値2及び判定閾値3を用いたフロアノイズ判定として応用される。
なお、機構的な相対位置のばらつきによる電流磁界分布波形のばらつきは、図6に示す接合不良による電流磁界分布波形のばらつきとは傾向が異なる。このことを踏まえ、ボンディングワイヤB1~B8の接合不良を、前記機構的な位置合わせ相対バラツキによる影響や、図2のセンサアレイモジュール20の電流センサCS1~CS16を構成するアンプ回路A1~A16の信号ノイズ比(以降S/N比という)を劣化させるLSI回路の熱雑音の影響、あるいは同じく図2で説明した試験電流端子50から発生する試験電流端子磁界TTCの影響など測定環境を取り巻く各種外乱ノイズを伴う電流センサCS1~CS16の出力信号の中から、高精度に識別するために、本発明では、以下に示す方法で診断するようにしている。

【0050】
本発明においては、図8に示す電流磁界の三次元分布の正面視図のように、予め採取した接合不良がない正常な電力用半導体デバイスにおける各ボンディングワイヤB1~B8の電流磁界分布である標準サンプル平均信号(b)と検査サンプル信号(a)の差分を取ると、サンプル差分積分信号(c)で示すように、時間軸(図奥行き方向)に積算する差分の積分が得られる。この信号差分値の時間軸方向に積算したサンプル差分積分信号(c)において、フロアノイズDよりもピークが高い部分がボンディングワイヤ接合不良部分であると判定できる。このフロアノイズDは、主にボンディングワイヤ接合不良が発生すると、減少した電流は他の正常なボンディングワイヤに分流する性質があるために生じるなどに起因するものである。

【0051】
図9は図8に示したサンプル差分積分信号(c)のいくつかの不良パターンを示すものであり、図9(a)はピークが1つ際立っており、電流センサCS12近傍で大きなボンディングワイヤ接合不良を検出している場合、(b)はピークが複数(電流センサCS6と電流センサCS12の近傍の2つ)離れている場合、(c)はピークが複数(電流センサCS10と電流センサCS12の2つの近傍)近接している場合、(d)はピークが電流センサCS1の端に寄っている場合、(e)は電流センサCS1の端で且つピークが低い場合、(f)は全体的に非常に低いピークが生じているが、電流センサCS1またはCS2近傍または電流センサCS8及びCS10近傍の所々でフロアノイズレベルDを超えている場合を示している。特に(e)や(f)のような条件のサンプル差分積分信号(図8(c))のボンディングワイヤ接合不良部の信号レベルの低いものや全体的にランダムなものが存在すると不良判定が難しくなる。

【0052】
ところで、本発明の実施の形態では、信号差分を求める元になる標準サンプル平均信号[基準波形](b)と検査サンプル信号[現在測定波形](a)は、既に図2のセンサアレイモジュール20の曝される環境磁界ノイズで説明したように、信号測定を行ったIGBT試験用検査装置40の装置機構構造特有の環境磁界ノイズを含んだ信号となる。このことは前述の信号差分で個々の電力用半導体デバイスのボンディングワイヤ電流磁界分布のばらつき判定を行う場合、大きな外乱ノイズとなり支障を来す場合がある。このため、環境磁界ノイズの影響を標準サンプル平均信号(b)[基準波形]算出の元となるN個の標準波形信号サンプル取得時に前もって除去する処理を行っておくことは、標準サンプル平均信号(b)[基準波形]データの検査装置間の可搬性を高める効果がある。

【0053】
その一つの例は、既に図2で説明したようにセンサアレイモジュール20の電力用半導体デバイス10のボンディングワイヤB1~B8の電流磁界計測の位置の基準位置52とボンディングワイヤB1~B8から遠ざかった偏位位置53で同じ試験パルス信号応答の差分を取るものである。

【0054】
前記の二つの偏位位置における信号波形計測の方法は具体的に、センサアレイモジュール20の計測位置を基準位置52と偏位位置53の二つの位置に移動し、それぞれ同じ試験パルス信号STにて計測する方法と、センサアレイモジュール20の電流センサCS1~CS16の構造のコイル位置を基準位置52と偏位位置53の両方に設ける機構的構造を取る方法によっても可能である。
なおコイル位置を複数設け信号差分を取る方法は前記の電流センサ出力後のアナログ演算やディジタル演算によっても可能であるし、また基準位置52と偏位位置53のそれぞれのコイルの磁束に対する起電力の極性方向の異なる巻き線方向の異なるコイル信号出力極性で相殺するよう結線することによっても実現可能である。
また、前記の複数のコイルC1~C8は磁気抵抗素子など他の磁気検出素子に置き換えられても構わない。
基準位置52と偏位位置53での信号波形の差分をとることにより、鋭敏な電流センサ周囲に複雑な形状で、ともすると電流センサ検出信号に有害な誘導磁界影響を与えてしてしまう恐れのある防磁シールドのような特殊な構造を付加することなく、環境磁界ノイズ信号を相殺することができる。

【0055】
本発明の実施例では、標準サンプル平均信号(b)[基準波形]を測定するIGBT試験用検査装置40と検査サンプル信号(a)[現在測定波形]を測定するIGBT試験用検査装置40とが同じ装置であることを前提として説明しており、センサアレイモジュール20のコイルC1~C16に及ぼす環境磁界ノイズ(図2に示す例として試験電流端子磁界TTCなど)の影響は同等であると考えることができ、後に説明する(3)式の電流センサ別差分積算値D(i,j)及び後に説明する(4)式の電流センサ総合差分積算値DA(i)の演算結果には環境磁界ノイズが差し引き相殺されていることになる。
そこで、本発明の実施例の形態では、電流センサCS1~CS16の高さを異ならせてそれらの差分を取ることによりノイズを相殺するという工程を省略し、環境ノイズを含んだままの基準波形と測定波形を用いることとした。以下、説明する。

【0056】
図11(a)に示す各マス目の数値は、標準サンプル平均信号[基準波形]と検査サンプル信号[現在測定波形]の各サンプル時間タイミングにおける符号付き(図10の電流センサ出力信号(b)の0V基準を中心)差分値である。説明図では説明簡略化のため、1や4などに置数しているが、実際は図11(b-1)に示すボンディングワイヤの磁界電流を検出する電流センサCS1~CS16の出力値(図11(b-2)参照)(約±1000.0mV)の差分値であり実際は±300.0mV前後の値で変位する。
サンプル差分積分信号(図8の(c)と図9の(a)~(f)の例)は、図11(c)に示す各電流センサ(CS1~CS16)の積分計算区間Tiの積算値である各電流センサ差分積算値の連なりを示す情報である。

【0057】
前記積分計算区間Tiにおいて(a)の各マス目の差分値を積算することの利点は、一つのサンプル時間のタイミングの瞬時値、すなわち(a)のマス目の値にスパイクノイズなどの急峻な変化を捉えた場合、時間軸積分により全体に平準化できることと、また、ボンディングワイヤ接合不良が発生した場合、信号の特徴的な変化が現れ易い点、すなわち差分値が大きくなり易い点(実施例では図10のSCで信号の最初の立ち下がり前後を指定している(Ti))近傍の時間積分により、検出信号のS/N比をより向上できることにある。

【0058】
本実施例では、評価基準として、第一判定基準200と第二判定基準201の二つの基準値を設ける。以下にそれぞれの判定基準の算出設定方法の説明を行う。

【0059】
図11(f)の第一判定基準200は、各マス目のサンプリング差分値の絶対値の全電流センサCS1~CS16及び積分計算区間Tiにおける積算値を元に計算される。第一判定基準200の目的は全ての電流センサの差分信号を一度に評価し、本来ボンディングワイヤ電流磁界分布ばらつき不良は多くないことを前提に検査判定速度を高めることを目的としている。
まず任意の電流センサ出力値の任意のサンプリング時点における振幅の、不良の含まれない電力用半導体デバイスの予め計測したサンプル個体数Nで平均した、平均値を(2)式により求める。

【0060】
【数2】
JP2016151569A_000004t.gif
(X (i,j,k):電力用半導体デバイスの一つの個体計測するところの、一つの電流センサチャンネルの、一つのサンプリング時点での符号付き信号振幅値,i:1からN個の電力用半導体デバイスのサンプル個体数を与える値。j:1からC個までの任意の電流センサ(CS1~CS16)数を与える値で最大をCとする。k:1からTまでの積分計算区間Tiの任意のサンプリング時間位置を与える値で最大をTとする。)

【0061】
次に(3)式で各電流センサ別に積分計算区間の任意のサンプリング時点での前記正常なN個のサンプル信号と前記標準サンプル平均信号XA(j.k)との差を取り各電流センサ毎のN個の分散を求める。信号は図10のSCに示すように0V基準値を中心に極性付振幅の為各信号の絶対値を取り積分計算区間Tiで時間積分する。積分結果は二つの信号の差分面積を意味する。

【0062】
【数3】
JP2016151569A_000005t.gif
次に(4)式で各電流センサ別差分積算値であるD(i,j)を全電流センサ(CS1~CS16)で積算した値であり、電流センサ総合差分積算値を求める。


【0063】
【数4】
JP2016151569A_000006t.gif

【0064】
次にN個の正常な電流センサ総合差分積DA(i)の標準偏差値を正規化した、第一判定基準200の偏差値(図11の(f)参照)を(5)式で求める。
算出結果、標準偏差値と存在確率により正常品判定基準である最適な判定閾値1(本実施例では図10の許容マージンm=1σ[約68.2%幅の存在確率]として設定)を選択する。一方不良品判定の判定閾値2(実施例では2σ[約95.4%幅の存在確率]として設定)などに使用する場合には検査治具の位置精度ばらつきなどを含んだ実際の製造ラインの歩留まりなどを事前に充分評価し最適な値を設定する必要がある。

【0065】
【数5】
JP2016151569A_000007t.gif

【0066】
(6)式は図10に示す検査サンプル信号(a)[現在測定波形]の絶対値と標準サンプル平均信号(b)[基準波形]の絶対値との差分をすべての電流センサCS1~CS16と積分計算区間Tiで積分した値(電流センサ総合差分面積)であり、評価対象の絶対値をとって分散評価する式である。ここで、電流センサCS1~CS16すべての波形値の絶対値をとらずそのまま加算するとボンディングワイヤ接合不良部の減少電流分と他の正常なボンディングワイヤに分流した増加電流分が相殺され、0になる可能性が高いため、本判定では、絶対値を取り総量で評価することとしている。

【0067】
【数6】
JP2016151569A_000008t.gif
(XS(j,k):検査サンプル信号(図10(a))[現在測定波形]の任意のセンサの任意のサンプリング時間位置における信号振幅値)
以上、(6)式で与えられる検査サンプル信号(図10(a))[現在測定波形]DASを前記判定閾値1(1σ)と前記判定閾値2(2σ)で評価することにより正常・異常判定を行う。
具体的には1σ以内の場合は「正常」とし、2σ以上の場合には「異常」とする。この判定で主に判断できる不良品判定内容は図9に示す(a)~(d)に示すようなボンディングワイヤ接合不良部がはっきりしているパターンの場合(フロアノイズDに比較してボンディングワイヤ接合不良部のピークが際立っている場合)である。1σと2σの間の場合は、各種方法が考えられるが、本実施例では以降に述べる第二判定基準201に引き継ぐ処理を行う。

【0068】
前記第一判定基準200において各電流センサCS1~CS16の総合差分積算値(e)を算出する利点は、センサアレイモジュール20の電流センサCS1~CS16を構成する各アンプ回路A1~A16の互いに相関の無い熱雑音など回路内在ノイズを積算により軽減できることである。これによって電流センサ総合差分積算値(e)のS/N比の改善が期待でき、より判定確度の高い判定を実現可能である。
次に各電流センサCS1~CS16毎に設定された第二判定基準201について説明する。

【0069】
図11(d)の第二判定基準201は各電流センサ毎に設定された評価値であり、第一判定基準200に比べるとより詳細な評価が可能となるが、その分判定に時間が掛かる。

【0070】
各電流センサ別CS1~CS16の個々の第二判定基準201の偏差値(図11の(d)参照)を前記第一判定基準200の手順と同様に(7)式で求める。

【0071】
【数7】
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(7)式で表される電流センサ別偏差値TSjは本実施例の場合、電流センサはCS1~CS16の16チャンネルあるので、各独立の16通りの判定閾値1が存在し、本実施例では各電流センサ毎の異なる標準偏差値のσ値が存在する。同様に判定閾値2にも各電流センサ毎に最適値の判定閾値2(本実施例では各電流センサ毎の異なる標準偏差値の2σ)が存在する。
実際の不良品判定の第二判定基準201の閾値2(たとえば2σ)などに使用する場合には製造過程特有の傾向値が存在することも考えられ、実際の製造ラインの歩留まりなどを考慮し最適な値を設定する必要がある。

【0072】
(8)式は図10に示す検査サンプル信号(a)[現在測定波形]と標準サンプル平均信号(b)[基準波形]との差分の絶対値を各電流センサ別に積分計算区間Tiで時間積分した評価対象の分散値である。
積分の結果、検査サンプル信号(a)[現在測定波形]の方が標準サンプル平均信号(b)[基準波形]よりも振幅が大きい場合には(8)式の積分結果の極性は+(プラス)になる。逆に小さい場合には-(マイナス)になる。

【0073】
【数8】
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以上(8)式の各電流センサ出力別の積算値DSjを第二判定基準201の判定閾値1及び判定閾値2で評価することにより「正常」・「異常」及び「判定不能」(曖昧)の判定を行う。具体的な判定は以下の通りである。
1σ以内の場合は「正常」とし、jで与えられる電流センサ(CS1~CS16)出力の内1つでも2σ以上の場合には「異常」とする。この「異常」判定例は図9の(e)のような例である。1σと2σの間の場合は、判定不能(曖昧)と見なし、フロアノイズ評価を行う。

【0074】
フロアノイズ評価では、第二判定基準201の「判定不能」範囲における(8)式の各電流センサ別振幅差分DSjの大きさと極性のばらつき(値の±極性分散)の評価を合わせて行う。

【0075】
各電流センサ出力(CS1~CS16)出力のDSjがすべて同一極性方向に偏り(+または-)が見られる場合は同一傾向オフセット(特性の偏り)として「正常」とする。この「正常」判定はあくまでも、電力用半導体デバイス10の各ボンディングワイヤ(B1~B8)に分散する電流が同一傾向を持っており、偏りが無いと言う判定であり、IGBT試験用検査装置40にてパルス応答特性試験に問題があればその判定に従うものである。一方各電流センサ出力にランダムな極性分散(+と-が混在)する場合は、1σから1.5σ程度の大きさであれば「正常」とみなし、1.5σ以上の大きさのランダム極性分散が認められると特性の偏りの傾向性が見られず傾向オフセットとはみなされ難いため「疑わしい」とみなす。「疑わしい」判定の例としては図9の(f)のようなパターンである。なお、各電流センサ出力別のランダム極性分散の場合の大きさ判定閾値3(本実施例では1.5σとしている。)は、実際の製造ラインの不良状態を解析し、最適値が選択される必要がある。

【0076】
前記第二判定基準201において各電流センサ別差分積算値(c)で評価する利点は、各電流センサCS1~CS16出力毎に空間分布する図9の(a)~(f)までに示すサンプル差分積分信号の値をそのまま評価することが可能となり、各電流センサ毎の確度でボンディングワイヤ接合不良の判定を行うことが可能となる点である。

【0077】
図12は、第一判定基準200の実測例を示すものであり、複数のサンプル波形信号に対して図11(e)の電流センサ総合差分積算値をプロットし、(9)式の標準サンプル平均値の電流センサ総合積算値平均DACを標準偏差値の存在確率の中心値として判定閾値1及び判定閾値2(実施例ではそれぞれ1σ[約68.2%幅の存在確率]、2σ[約95.4%幅の存在確率])を設定する。

【0078】
【数9】
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なお、図12のデータプロットでは25個の標準サンプルの中にも正常品でありながら前記2σ(閾値2)を超えるサンプルも存在する。このため図12のσ値はあくまでも一例を示すものであり、電力用半導体デバイスの歩留まり等を考慮し、判定閾値1、判定閾値2として最適なものを選択設定する必要がある。

【0079】
図13は、本発明のボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法の処理ステップを示すフローチャートである。これは、図3のGO/NO GO判定機能ブロック133で処理され(2)式から(8)式をもって評価判定される内容を示し、比較データメモリ132内に格納される標準サンプル平均信号データ、第一判定基準200にかかる評価閾値1及び評価閾値2、第二判定基準201にかかる評価閾値1、評価閾値2及び評価閾値3、そして同じく図3の特徴点マーキング機能ブロック131で標準サンプル平均信号データに設定された積分計算区間情報が用いられる。以下、各ステップについて説明する。

【0080】
ステップS100:図1のセンサアレイモジュール20の各電流センサ(CS1~CS16)出力の検査サンプル信号(図10(a))[現在測定波形]と標準サンプル平均信号(図10(b))[基準波形]差分を作成する。
ステップS110:各電流センサチャンネル差分信号の図10の積分計算区間Tiにおいて積分を行う(図11の(c)参照)。
ステップS120:各電流センサチャンネル間積分を行う(図11の(e)参照)。
以上スッテプS100~S120の一連の処理は(6)式に示されたDASを算出することを意味する。

【0081】
ステップS130:DASを第一判定基準200にかかる判定閾値1(1σ)及び判定閾値2(2σ)を用いて検査サンプル信号(図10(a))[現在測定波形]の積分計算区間(図3の特徴点マーキング表示G4の関心領域マーカで示す領域、及び図10のTiで示す区間)内での標準偏差値評価を行う。
ステップS140:完全に許容内(1σ以内)であればステップS150に進み、“正常”と判定する。完全に許容外(2σより外)であればステップS180に進み、“不良”と判定する。判定が曖昧(1σと2σの間)であればステップS160の第二判定基準201による電流センサ毎の偏差値評価に移行する。ステップS140の判定で“正常”あるいは“不良”が確定できると最も早く検査が終了する。

【0082】
ステップS160:(8)式で表される各電流センサ出力別の差分値DSjを各電流センサ毎に設定される第二判定基準201にかかる各判定閾値1(1σ)及び各判定閾値2(2σ)を用いて各電流センサチャンネルの標準偏差値で評価する。なお、差分値DSjはステップS110にてすでに各電流センサ毎に作成されている。第二判定基準201を用いる場合、電流センサ毎のばらつき範囲で詳細に評価可能であるが処理時間が掛かる。
ステップS170:完全に許容内(1σ以内)であれば前述ステップS150に進み、“正常”と判定する。完全に許容外(2σより外)であれば前述ステップS180に進み、 “不良”と判定する。判定が曖昧(1σと2σの間)であればステップS190の第二判定基準201を用いたフロアノイズの評価に移行する。

【0083】
ステップS190:(8)式で表される各電流センサ毎の差分値DSjを各電流センサ毎に設定される第二判定基準201にかかる各判定閾値1(1σ)、各判定閾値2(2σ)及び判定閾値3(1.5σ)を用いて1σと2σの間の偏り度合いを判別することによりフロアノイズの性質の評価を行う。
ステップS200:各電流センサ毎の差分値DSjがランダム(+側と-側に分かれている状態)で且つ大きく判定閾値3の1.5σ以上である場合はステップS210に進み、“疑わしい”と判定する。揃って1σと2σの+側または-側のどちらか一方側に偏ったもの、あるいは前記ランダムであっても判定閾値3の1.5σよりも小さい値であれば傾向性のある特性オフセットあるいは小さなフロアノイズと見なし、ステップS220に進み、“正常”と判定する。
なお、このフロアノイズ判定を含む各電流センサ毎の判定を行う第二判定基準201の判定閾値1(本実施例では1σ)、判定閾値2(本実施例では2σ)及び判定閾値3(本実施例では1.5σ)は電力用半導体デバイスの特性ばらつきの度合いを考慮し、見直すことによって、より精度の高いものに改善できる。

【0084】
以上、図13のボンディングワイヤ電流磁界分布検査診断方法の処理ステップを示すフローチャートの実施例は、判定の高速化と高精度化を達成する例であり、高精度追求のみであれば、ステップS110から直接ステップS160に移行し、各電流センサ(CS1~CS16)出力を、第二判定基準201を用いて個別に評価するソフトウエア構成のフローチャートも可能である。
また、判定の高速化のみを追求する場合には、第一判定基準200に第二判定基準201と同様な判定閾値3(判定値の例として1.2σ)を設け、ステップ190のフロアノイズの評価と同様な構成を取り、ステップS140の偏差値評価判定で判定が「曖昧」と判断された場合にステップS190のフロアノイズの評価に移行するようにフローチャートを構成することにより実現可能である。

【0085】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電力用半導体デバイスの配線材である複数のボンディングワイヤに流れる電流分布の偏りなどの異常を、電流磁界を検出することにより非接触で検査診断し、配線不良などによるデバイスの長期信頼性を損なう恐れのある隠れた瑕疵等の原因を検査、診断、検出し、不良品を排除することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、電力用半導体デバイス、特にIGBTのパッケージング時のボンディングワイヤ接合不良判定を高精度で行うことができる技術として、電気機器および電子機器の電源やインバータ等に広く使われている電力用半導体デバイスの製品の使用中の故障を低減させ、信頼性を著しく向上させることができる。
【符号の説明】
【0087】
10 電力用半導体デバイス(IGBT)
20 センサアレイモジュール
40 IGBT試験用検査装置
50 試験電流端子
51 試験電流
52 基準位置
53 偏位位置
100 電流磁界分布解析装置
110 高速ディジタイザ
120 ソフトウエア解析演算処理部
122 高速ディジタイザ制御機能ブロック
123 自動レンジデータ取得機能ブロック
124 データ取り込み機能ブロック
125 取得データメモリ
126 周波数成分補正機能ブロック
128 データ選択機能ブロック
129 データ表示制御機能ブロック
130 データ保存/読み出し機能ブロック
131 特徴点マーキング機能ブロック
132 比較データメモリ
133 GO/NO GO判定機能ブロック
200 第一判定基準
201 第二判定基準
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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