TOP > 国内特許検索 > ポルフィリン誘導体、及びこれを含む光増感剤等 > 明細書

明細書 :ポルフィリン誘導体、及びこれを含む光増感剤等

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-155768 (P2016-155768A)
公開日 平成28年9月1日(2016.9.1)
発明の名称または考案の名称 ポルフィリン誘導体、及びこれを含む光増感剤等
国際特許分類 C07D 487/22        (2006.01)
A61K  49/00        (2006.01)
A61K  31/409       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI C07D 487/22 CSP
A61K 49/00 C
A61K 31/409
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2015-033566 (P2015-033566)
出願日 平成27年2月24日(2015.2.24)
発明者または考案者 【氏名】人見 穣
【氏名】大橋 なつみ
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査請求 未請求
テーマコード 4C050
4C085
4C086
Fターム 4C050PA05
4C085HH07
4C085KA09
4C085KB56
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB04
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
要約 【課題】癌細胞で特異的に発現する膜蛋白質の酵素反応によって、癌細胞内に特異的に移行できるポルフィリン誘導体及び前記ポルフィリン誘導体が癌細胞内に特異的に移行する性質を利用する光増感剤、蛍光可視化剤並びにMRI造影剤の提供。
【解決手段】式(I)で表されるポルフィリン誘導体、及び当該ポルフィリン誘導体に金属イオンを挿入した金属錯体。挿入する金属イオンはMn,Zn,Mg,Sn,Pt、Ag又はAuのイオンであり、対イオンがCl、Br、NO、CFSO、水酸化物イオン又はCHCOOである金属錯体。
JP2016155768A_000010t.gif
(nは0~5の自然数;Rは同一又は互いに異なっていてもよい。)
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(I)で表されるポルフィリン誘導体。
【化1】
JP2016155768A_000008t.gif
(式中、nは0~5の自然数であり、Rは同一又は互いに異なっていてもよい。)
【請求項2】
nが3である請求項1に記載のポルフィリン誘導体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の何れかに記載のポルフィリン誘導体を有効成分として含む光増感剤。
【請求項4】
請求項1又は請求項2の何れかに記載のポルフィリン誘導体を有効成分として含む蛍光可視化剤。
【請求項5】
下記一般式(II)で表される金属錯体。
【化2】
JP2016155768A_000009t.gif
(式中、nは0~5の自然数であり、Rは同一又は互いに異なっていてもよい。また、Mは、マンガン、亜鉛、マグネシウム、スズ、パラジウム、銀、金の内の何れかである。さらに、Xは塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、水酸化物イオン、酢酸イオンのうちの何れかである。)
【請求項6】
nが3である請求項5に記載の金属錯体。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の金属錯体を有効成分として含む光増感剤。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の金属錯体を有効成分として含むMRI造影剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポルフィリン誘導体、これを含む光増感剤及び蛍光可視化剤、前記ポルフィリンに金属イオンを挿入してなる金属錯体、及び前記金属錯体を含む光増感剤及びMRI造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
光線力学治療法(PDT)は、光増感剤を静脈注射などの方法により投与して、癌組織に保持させたのち、所定波長のレーザー光やLED光を照射して癌組織のみを選択的に破壊する癌の治療方法である。
【0003】
より詳しくは、PDTは、癌組織に集積された光増感剤に光を照射して、光増感剤を一重項励起状態に励起させ、系間交差によって一重項励起状態から最低三重項状態となった光増感剤の近傍にある三重項酸素分子を一重項酸素(活性酸素)に変換させ、近傍の細胞を破壊することによって、周囲の正常組織に比較的損傷を与えずに癌細胞や癌組織を破壊して治療する、癌の治療方法である。
【0004】
このように、PDTは、正常組織に与える影響が少ないため、手術、抗癌剤による化学療法、放射線治療法等に続く、新しい癌の治療法として注目を浴びている。
【0005】
さて、PDT用の光増感剤としては、既に市販されているレザフリン、ビスダイン、テモポルフィン(Foscan)等のポルフィリン誘導体が使用されており、ポルフィリン誘導体を中心に従来から様々な誘導体が研究されている(例えば、特許文献1~13及び非特許文献1を参照。)。
【0006】
ただ、従来からあるポルフィリン誘導体は、水溶性とともに疎水性も備えており、癌細胞や癌組織だけに特異的に集積せず、迅速には体外に排出されない。そのため、PDTの終了後、患者は、体内に残留した光増感剤によって光線過敏症を発症しないように、暗室状態で一定期間入院しなければならなかった。
【0007】
このような問題を解決するため、従来から癌組織や癌細胞に特異的に集積するポルフィリン誘導体について研究されている。例えば、ピリジニウム基、テトラメチルアンモニウム基、グアニジウム基などを有するカチオン性ポルフィリンが、細胞内に移行することが知られている。
【0008】
しかし、これらのカチオン性ポルフィリンは、癌細胞で特異的に発現しているγ-グルタルトランスペプターゼ等の膜蛋白質による酵素反応によって発生させることはできない。そのため、これらのカチオン性ポルフィリンは、癌細胞内に特異的に移行させることができなかった。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開平05-097857号公報
【特許文献2】特開平09-124652号公報
【特許文献3】特開2001-11077号公報
【特許文献4】特開2004-2438号公報
【特許文献5】特開2005-507383号公報
【特許文献6】特開2012-506425号公報
【特許文献7】特許第3191223号公報
【特許文献8】特許第3718887号公報
【特許文献9】特許第5068920号公報
【特許文献10】特許第5226317号公報
【特許文献11】特公平04-24661号公報
【特許文献12】特公平07-25763号公報
【特許文献13】国際公開第2002/020536号
【0010】

【非特許文献1】Yoon et al. Clin. Endosc. 2013, 46, 7-23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、癌細胞で特異的に発現する膜蛋白質の酵素反応によって、癌細胞内に特異的に移行できるポルフィリン誘導体を提供することを課題とする。また、前記ポルフィリン誘導体が癌細胞内に特異的に移行する性質を利用する光増感剤、蛍光可視化剤、MRI造影剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、鋭意検討の結果、アミド基がγ-グルタルトランスペプターゼ等による酵素反応によって第一級アミノ基へと容易に変換されることに着目して、4つの第一級アミノ基を有する水溶性ポルフィリン誘導体を合成し、このポルフィリン誘導体が光増感剤、蛍光可視化剤、MRI造影剤等に使用できることを見出した。
【0013】
すなわち、請求項1に記載の発明は、下記一般式(I)で表されるポルフィリン誘導体である。
【化1】
JP2016155768A_000002t.gif
(式中、nは0~5の自然数であり、Rは同一又は互いに異なっていてもよい。)
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のポルフィリン誘導体であって、nが3のポルフィリン誘導体である。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2の何れかに記載のポルフィリン誘導体を有効成分として含む光増感剤である。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2の何れかに記載のポルフィリン誘導体を有効成分として含む蛍光可視化剤である。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、下記一般式(II)で表される金属錯体である。
【化2】
JP2016155768A_000003t.gif
(式中、nは0~5の自然数であり、Rは同一又は互いに異なっていてもよい。また、Mは、マンガン、亜鉛、マグネシウム、スズ、パラジウム、銀、金の内の何れかである。さらに、Xは塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、水酸化物イオン、酢酸イオンのうちの何れかである。)
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の金属錯体であって、nが3の金属錯体である。
【0019】
さらに、請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6の何れかに記載の金属錯体を有効成分として含む光増感剤である。
【0020】
加えて、請求項8に記載の発明は、請求項5又は請求項6の何れかに記載の金属錯体を有効成分として含むMRI造影剤である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポルフィリン誘導体は、従来からあるカチオン性ポルフィリン誘導体よりも高効率、かつ特異的に癌細胞内に移行する。そのため、本発明のポルフィリン誘導体を含む光増感剤を使用すれば、投与量が少なくても癌組織に高濃度で集積でき、光線力学治療法による高い治療効果、癌組織の高い蛍光可視化効果が期待できる。
【0022】
また、本発明のポルフィリン誘導体にマンガンイオンを挿入した本発明の金属錯体も高効率、かつ特異的に癌細胞内に移行する。そのため、本発明の金属錯体を含む光増感剤を使用しても、光線力学治療法による高い治療効果が期待できる。また、本発明の金属錯体を含むMRI造影剤を使用すれば、投与量が少なくても癌組織に高濃度で集積でき、癌組織をより鮮明に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明のポルフィリン誘導体の合成経路の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明のポルフィリン誘導体の濃度と癌細胞死滅効果との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.ポルフィリン誘導体
本発明のポルフィリン誘導体は、下記一般式(I)で表される。なお、nは0~5の自然数であり、合成が容易で、且つ、水溶性に優れているという理由から3が好ましい。また、4つのRは同一又は互いに異なっていてもよいが、合成が容易であることから、同一であることが好ましい。

【0025】
【化3】
JP2016155768A_000004t.gif

【0026】
本発明のポルフィリン誘導体は、例えば、以下に示す(A)及び(B)の化学反応を組み合わせて合成できる。なお、本発明のポルフィリン誘導体は、以下の合成法により製造されたものに限定されない。

【0027】
(A)カルボン酸アミドの合成
下記の化学式(III)に示すように、ポルフィリン誘導体であるカルボン酸aとアジド基を有する第一級アミンbとをアミド結合させて、カルボン酸アミドcを合成する。

【0028】
【化4】
JP2016155768A_000005t.gif

【0029】
(B)アジド基の還元
下記の化学式(IV)に示すように、カルボン酸アミドcの末端にあるアジド基を還元して、アミンdを合成する。

【0030】
【化5】
JP2016155768A_000006t.gif

【0031】
2. 光増感剤及び蛍光可視化剤
本発明の光増感剤及び蛍光可視化剤は、本発明のポルフィリン誘導体を有効成分として含むものであり、ヒト又はそれ以外の動物に投与することができる。

【0032】
なお、本発明の光増感剤及び蛍光可視化剤の剤形は、特に制限されるものではなく、必要に応じて適宜選択すればよい。具体的には、注射剤、点滴剤等の非経口剤として利用することが一般的ではあるが、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤として利用できる。なお、光増感剤及び蛍光可視化剤の中のポルフィリン誘導体の濃度、患者への造影剤の投与量は、患者の年齢、体重、疾患の程度に応じて自由に選択することができる。

【0033】
本発明の光増感剤及び蛍光可視化剤を注射剤、点滴剤等の非経口剤として製造する場合には、注射用蒸留水、生理食塩水希釈剤、ブドウ糖水溶液等の希釈剤とともに、公知の方法によって製造することができる。なお、必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤を加えてもよい。また、この非経口剤は安定性の点から、バイアル等に充填後冷凍して、通常の凍結乾燥処理により水分を除き、使用直前に凍結乾燥物から液剤に再調製することもできる。さらに、必要に応じて、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤を加えてもよい。

【0034】
本発明の光増感剤及び蛍光可視化剤を錠剤等の経口剤として製造する場合には、公知の賦型剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤等とともに、公知の製造方法により製造することができる。また、本発明の光増感剤及び蛍光可視化剤は、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤としてとしても経口投与することができる。この場合、矯味剤、矯臭剤、着色剤などを含有していてもよい。

【0035】
なお、本発明の光増感剤及び蛍光可視化剤は、公知のDDS技術、例えば、本発明の造影剤をリポソームなどの運搬体に封入して、体内投与してもよい。この場合、標的部位の細胞を特異的に認識する運搬体などを利用すれば、本発明の光増感剤及び蛍光可視化剤を標的部位により効率よく運ぶことができる。

【0036】
3.金属錯体
本発明のポルフィリン錯体は、本発明のポルフィリン誘導体にマンガンイオンを挿入したものであって、下記の化学式(II)に示すものである。なお、nは0~5の自然数であり、合成が容易で、且つ、水溶性に優れているという理由から3が好ましい。また、4つのRは同一又は互いに異なっていてもよいが、合成が容易であることから、同一であることが好ましい。

【0037】
さらに、Mは、マンガン、亜鉛、マグネシウム、スズ、パラジウム、銀、金の内の何れかであり、MRI造影の効果が高いとの理由から、マンガンが好ましい。加えて、Xは塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、水酸化物イオン、酢酸イオンのうちの何れかであり、精製が容易という理由から塩素イオンが好ましい。

【0038】
【化6】
JP2016155768A_000007t.gif

【0039】
本発明の金属錯体は、本発明のポルフィリン誘導体を配位子としてマンガンなどの金属イオンに配位させる公知の方法を使用して製造できる。具体的には、中心金属となる金属イオンを含む塩をメタノール、アセトニトリルなどの極性有機溶剤に溶かした金属イオン溶液と、本発明のポルフィリン誘導体を極性有機溶剤に溶かしたポルフィリン誘導体溶液とを調製し、金属イオン溶液とポルフィリン誘導体溶液とを混合攪拌すれば、錯体の結晶を析出させることができる。なお、この結晶を極性有機溶媒によって洗浄すればより純度の高い結晶が得られる。

【0040】
4.光増感剤及びMRI造影剤
本発明の他の光増感剤及びMRI造影剤は、本発明の金属錯体を有効成分として含むものであり、ヒト又はそれ以外の動物に投与することができる。なお、MRI造影剤の剤型、投与量などは、本発明の光増感剤及び蛍光可視化剤と同様に任意に設定・変更できる。

【0041】
以下、本発明について実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明の特許請求の範囲は、以下の実施例によって如何なる意味においても制限されない。
【実施例1】
【0042】
1.ポルフィリン誘導体の合成
本発明にかかるポルフィリン誘導体TAEPを、図1の合成経路に沿って合成した。なお、理解し易くするため、以下の説明では、同じ化合物については図1と同じ記号を使用した。
【実施例1】
【0043】
(1)カルボン酸アミド(化合物c)の合成
テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(化合物a,CAS# 14609-54-2,100 mg, 0.125 mmol) を二口ナスフラスコに入れ、窒素下でジクロロメタン(10mL)を加えた。反応溶液を攪拌しながら、塩化オキサリル(0.25mL, 3mmol)及びN,N-ジメチルホルムアミド(1μL)を加え、窒素下、遮光した状態で室温で19時間攪拌した。反応溶液をアルカリトラップと液体窒素トラップに接続されたロータリーエバポレーターで濃縮し、ジクロロメタン(5mL)で洗浄した。この操作を2回繰り返したのち、反応溶液に窒素下でジクロロメタン(10mL)を加えた(以下、反応溶液1と省略する。)。
【実施例1】
【0044】
これとは別に、11-アジド-3,6,9-トリオキサウンデカン-1-アミン(化合物b,CAS# 134179-38-7,318mg, 1.25 mmol)を二口ナスフラスコに測り取り、窒素下でジクロロメタン (5 mL)を加えたのち、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL)を加えた(以下、反応溶液2と省略する。)。その後、反応溶液2を窒素下で反応溶液1に加え、窒素下、遮光した状態で、室温で22時間攪拌した。
【実施例1】
【0045】
得られた反応溶液をジクロロメタン(100mL)で希釈したのち、有機層を1N塩酸、1N水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水して濾過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮、真空乾燥した。真空乾燥物をフラッシュクロマトグラフィーで精製したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮、真空乾燥し、濃紫色の粉末を得た(収量: 142.4 mg 、収率: 72 %)。なお、この化合物は核磁気共鳴分光法(1H NMR)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR) の測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
【実施例1】
【0046】
1HNMR (500MHz, CDCl3): δ [ppm] = 8.83 (s, 8H, pyrrolic-β-CH), 8.29 (d, J = 8.3 Hz, 8H, phenylic CH), 8.21 (d, J = 8.3 Hz 8H, phenylic CH), 7.16 (t, J = 5.2 Hz, 4H, amido), 3.86 (t, J = 4.8 Hz, 8H, N3CH2CH2), 3.83 (d, J = 4.1 Hz, 8H, CONHCH2), 3.73 (m, 32H, PEG), 3.66 (t, J = 5.2 Hz, 8H, CONHCH2CH2), 3.35 (t, J = 4.8 Hz, 8H, N3CH2), -2.81 (s, 2H, pyrrolic-NH).
FTIR (neat): 2099 cm-1as N3), 1100 cm-1as C-O-C).
【実施例1】
【0047】
(2)アジド基の還元(化合物dの合成)
トリフェニルホスフィン(99mg, 0.38mmol)を二口ナスフラスコに測り取り、テトラヒドロフラン(2mL)に溶解した。このトリフェニルホスフィン溶液を、化合物c(60mg, 0.038mmol)を測り取ったシュレンク管に加え、窒素下、室温で18時間攪拌した。反応溶液に水(0.2 mL)を加え、再び窒素下、室温で23時間攪拌した。
【実施例1】
【0048】
得られた反応液をロータリーエバポレーターで濃縮して真空乾燥した。真空乾燥物を0.5 M 塩酸(50mL)で希釈して、酢酸エチルで3回洗浄した。水層を1N水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順番で洗浄したのち、クロロホルムにより抽出した。クロロホルム層を硫酸ナトリウムで脱水して濾過して、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮、真空乾燥し、濃紫色のゲル状物質(化合物d)を得た(収量: 62.4mg, quant.)。なお、この化合物は核磁気共鳴分光法(1H NMR)、質量分析法の測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
【実施例1】
【0049】
1H NMR (500MHz, CDCl3): δ [ppm] = 8.82 (s, 8H, pyrrolic-β-CH), 8.27 (d, J = 8.7 Hz, 8H, phenylic CH), 8.24 (d, J = 8.0 Hz 8H, phenylic CH), 7.88 (t, J = 5.1 Hz, 4H, amido), 3.64-3.85 (m, 48H, PEG), 3.50 (t, J = 5.1 Hz, 8H, NH2CH2CH2), 2.83 (t, J = 5.1 Hz, 8H, NH2CH2), 1.61 (s, 8H, NH2), -2.84 (s, 2H, pyrrolic-NH).
m/z (ESI): Calcd. for C80H104N12O16 [M+2H]2+ 496.92; found 496.92, Calcd. for C80H105N12O16 [M+3H]3+ 744.37; found 744.37.
【実施例2】
【0050】
2.癌細胞死滅効果
本発明のポルフィリン誘導体を光増感剤として使用して、光線力学治療法による癌細胞の死滅効果を調べた。具体的には、以下の手順で調べた。なお、従来からあるポルフィリン誘導体であるMesotetra(4-N-methylpyridyl)porphine tetraiodide(以下、TMPyPと省略する。CAS# 36674-90-5)を実験対照として使用した。
【実施例2】
【0051】
(1)癌細胞の培養
HeLa細胞(RIKEN RCB007)を含む細胞培養用培地(D-MEM,1×105 cells/mL, 100 μL/well)を、96穴マイクロプレートに入れ、細胞培養用インキュベーターで24時間培養した。なお、同様のプレートを計4枚用意した。
【実施例2】
【0052】
(2)光増感剤溶液の調製
実施例1で製造したポルフィリン誘導体TAEP、及びTMPyPのDMSO溶液(TAEP: 2.18 mM, TMPyP: 1.23 mM)を調製した。これらポルフィリン誘導体のDMSO溶液をD-MEM(血清不含)を使用して10μMとなるように希釈した。さらに、これらをD-MEM(血清不含)を使用して段階希釈し、10μM、 8μM、 6μM、 5μM、 4μM、 3μM、 2.5μM、 2μM、 1 μMのポルフィリン誘導体希釈培地を調製した。
【実施例2】
【0053】
(3)光線力学治療
インキュベーターから96穴マイクロプレートを取り出し、クリーンベンチにて培地をすべて取り除いた。12連ピペットマンを使用して、96穴マイクロプレートの各ウェルにポルフィリン誘導体希釈培地(100μL/well)をそれぞれ加えて、TAEPの希釈培地を含む96穴マイクロプレート2枚と、TMPyPの希釈培地を含む96穴マイクロプレート2枚を調製した。調製した4枚の96穴マイクロプレートをインキュベーターで24時間培養した。
【実施例2】
【0054】
各ポルフィリン希釈溶液を含む96穴マイクロプレートから1枚ずつ選び、選んだ96穴マイクロプレートから培地をクリーンベンチにてすべて取り除き、D-PBS(120μL/well)で2回洗浄し、D-MEM(血清不含, 100μL/well)を加えた。
【実施例2】
【0055】
未洗浄の2枚の96穴マイクロプレートと、洗浄済みの2枚の96穴マイクロプレートを暗室に移した。キセノン光源(朝日分光製、MAX-303,λ = 375~700 nm)を使用して、96穴マイクロプレートに400±20 mW/m2の光を30分間照射したのち、インキュベーターで20時間培養した。
【実施例2】
【0056】
(4)生存率の測定
96穴マイクロプレートの各ウェル中で生存している癌細胞の生存率をMTTアッセイに従って調べた。まず、MTT溶液(2.5 mg/mL, 20 μL/well)を各ウェルに加えたのち、インキュベーターで3時間培養し、クリーンベンチ内で培地をすべて取り除いた。つぎに、ホルマザン溶解液(100 μL/well)を各ウェルに加えてピペッティングしたのち、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices製、 OptiMax Tunable Microplate Reader)で570 nmにおける吸光度を測定した。測定した吸光度から、癌細胞の生存率を計算した。その結果を図2に示す。
【実施例2】
【0057】
(5)まとめ
図2に示すように、TAEPは、癌細胞を洗浄後(図2中のTAEP+Wash)も細胞洗浄前(図2中のTAEP)とほぼ同様に光照射による高い癌細胞死滅効果(1μM以下で癌細胞が100%近く死滅。)を示しており、高い細胞移行性を有することが分かった。なお、実験対照であるTMPyPでは、細胞洗浄前(図2中のTMPyP)と細胞洗浄後(図2中のTMPyP+Wash)とを比べると、IC50=1μMからIC50=5μMに癌細胞死滅効果が低下している。
図面
【図1】
0
【図2】
1