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明細書 :電池充電容量推定方法および電池充電容量推定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-157565 (P2016-157565A)
公開日 平成28年9月1日(2016.9.1)
発明の名称または考案の名称 電池充電容量推定方法および電池充電容量推定装置
国際特許分類 H01M  10/48        (2006.01)
G01R  31/36        (2006.01)
H01M  10/44        (2006.01)
H02J   7/00        (2006.01)
FI H01M 10/48 301
G01R 31/36 A
H01M 10/44 P
H01M 10/48 P
H02J 7/00 Q
H02J 7/00 A
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2015-033943 (P2015-033943)
出願日 平成27年2月24日(2015.2.24)
発明者または考案者 【氏名】長岡 直人
【氏名】山本 雄斗
【氏名】成田 直哉
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G016
5G503
5H030
Fターム 2G016CA03
2G016CB00
2G016CB05
2G016CC01
2G016CC03
2G016CC04
2G016CC07
2G016CC13
2G016CF06
5G503BB01
5G503CA08
5G503DA04
5G503EA09
5H030AA10
5H030AS03
5H030AS08
5H030AS11
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF22
5H030FF27
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF51
5H030FF52
要約 【課題】リチウムイオン二次電池を含む二次電池の充電容量を、比較的容易に推定することが可能な電池充電容量推定方法を提供する。
【解決手段】二次電池の充電容量を推定する電池充電容量推定方法であって、二次電池を第1充電率から第2充電率まで充電する充電ステップと、二次電池を第2充電率から第1充電率まで放電する放電ステップと、充電ステップおよび放電ステップにおいて発生した二次電池の総発熱を算出する総発熱算出ステップと、総発熱を分極熱と反応熱に分離して反応熱を算出する反応熱算出ステップと、反応熱に基づいて二次電池の充電容量を推定する充電容量推定ステップとを含む。
【選択図】図18
特許請求の範囲 【請求項1】
二次電池の充電容量を推定する電池充電容量推定方法であって、
前記二次電池を第1充電率から前記第1充電率よりも大きい第2充電率まで充電する充電ステップと、
前記二次電池を前記第2充電率から前記第1充電率まで放電する放電ステップと、
前記充電ステップおよび前記放電ステップにおいて発生した前記二次電池の総発熱を算出する総発熱算出ステップと、
前記総発熱を分極熱と反応熱に分離して前記反応熱を算出する反応熱算出ステップと、
前記反応熱に基づいて前記二次電池の充電容量を推定する充電容量推定ステップと、
を含むことを特徴とする電池充電容量推定方法。
【請求項2】
前記充電ステップおよび前記放電ステップでは、前記二次電池の表面温度および周囲温度を測定し、
前記総発熱算出ステップでは、前記表面温度および前記周囲温度から熱等価回路を用いて、前記総発熱を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電池充電容量推定方法。
【請求項3】
前記充電容量推定ステップで推定した前記第2充電率における充電容量に基づいて前記二次電池の劣化を診断する劣化診断ステップを、さらに含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電池充電容量推定方法。
【請求項4】
前記第2充電率を、前記二次電池の満充電時における充電率とする
ことを特徴とする請求項3に記載の電池充電容量推定方法。
【請求項5】
二次電池の充電容量を推定する電池充電容量推定装置であって、
前記二次電池が第1充電率から前記第1充電率よりも大きい第2充電率まで充電された充電時、および前記二次電池が前記第2充電率から前記第1充電率まで放電された放電時に発生した前記二次電池の総発熱を算出する総発熱算出部と、
前記総発熱を分極熱と反応熱に分離して前記反応熱を算出する反応熱算出部と、
前記反応熱の充電容量特性に関する第1データが格納された記憶部と、
前記反応熱算出部で算出された前記反応熱と、前記記憶部に格納された前記第1データとに基づいて、前記二次電池の充電容量を推定する充電容量推定部と、
を含むことを特徴とする電池充電容量推定装置。
【請求項6】
前記記憶部には、熱等価回路に関する第2データが格納されており、
前記総発熱算出部は、前記充電時および前記放電時に取得した前記二次電池の表面温度および周囲温度から前記第2データを用いて、前記総発熱を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の電池充電容量推定装置。
【請求項7】
前記充電容量推定部は、前記第2充電率における充電容量に基づいて前記二次電池の劣化を診断する
ことを特徴とする請求項5または6に記載の電池充電容量推定装置。
【請求項8】
前記第2充電率を、前記二次電池の満充電時における充電率とする
ことを特徴とする請求項7に記載の電池充電容量推定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充電容量を推定するための電池充電容量推定方法および電池充電容量推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、携帯電話やノートパソコンを始めとしたモバイル機器から電気自動車や家庭用蓄電システムといった大型機器にまで、幅広く使用されている。リチウムイオン二次電池の実用性を更に高めるには、正確な充電容量の推定と劣化の診断が必要である。
【0003】
劣化を診断する方法としては、交流重畳法による専用機器を用いた電池劣化診断方法が知られている。しかしながら、この電池劣化診断方法は、専用機器が高価であり、しかもリチウムイオン二次電池を使用機器から取り外して専用機器に接続する必要があるため、汎用性が低い。
【0004】
劣化を診断する別の方法としては、リチウムイオン二次電池稼働中の電圧・電流波形から内部インピーダンスを導出し、内部インピーダンスに基づいて電池の劣化を診断する電池劣化診断方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、この電池劣化診断方法は、充電率(SOC)の依存性が大で、精度等に問題があるため、実用化には至っていない。
【0005】
また、充電容量を推定する方法としては、電池端子間電圧(開放電圧)に基づいて充電容量を推定する電池充電容量推定方法が知られている。この電池充電容量推定方法は、電池端子間電圧が充電容量の増加に応じて高くなる二次電池に対しては、有効である。しかしながら、リチウムイオン二次電池の場合、電池端子間電圧が充電率(SOC)50%前後でほぼ一定になるので、この電池充電容量推定方法では、電池端子間電圧から充電率を知ることは困難であり、正確な充電容量を推定するためには、電池電流を積分する等の煩雑な処理が必要となる。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】岡田修平、外3名、「リチウムイオン電池の劣化診断技術の開発」、横河技報、横河電機株式会社、Vol.56 No.2(2013)、p27-30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、リチウムイオン二次電池を含む二次電池の充電容量を、比較的容易に推定することが可能な電池充電容量推定方法および電池充電容量推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る電池充電容量推定方法は、
二次電池の充電容量を推定する電池充電容量推定方法であって、
前記二次電池を第1充電率から前記第1充電率よりも大きい第2充電率まで充電する充電ステップと、
前記二次電池を前記第2充電率から前記第1充電率まで放電する放電ステップと、
前記充電ステップおよび前記放電ステップにおいて発生した前記二次電池の総発熱を算出する総発熱算出ステップと、
前記総発熱を分極熱と反応熱に分離して前記反応熱を算出する反応熱算出ステップと、
前記反応熱に基づいて前記二次電池の充電容量を推定する充電容量推定ステップと、
を含むことを特徴とする。
なお、充電ステップと放電ステップは、順序を逆転しても良い。
【0009】
上記電池充電容量推定方法は、
前記充電ステップおよび前記放電ステップでは、前記二次電池の表面温度および周囲温度を測定し、
前記総発熱算出ステップでは、前記表面温度および前記周囲温度から熱等価回路を用いて、前記総発熱を算出することが好ましい。
【0010】
上記電池充電容量推定方法では、
前記充電容量推定ステップで推定した前記第2充電率における充電容量に基づいて前記二次電池の劣化を診断する劣化診断ステップを、さらに含むことが好ましい。
また、前記第2充電率を、前記二次電池の満充電時における充電率とすることが好ましい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る電池充電容量推定装置は、
二次電池の充電容量を推定する電池充電容量推定装置であって、
前記二次電池が第1充電率から前記第1充電率よりも大きい第2充電率まで充電された充電時、および前記二次電池が前記第2充電率から前記第1充電率まで放電された放電時に発生した前記二次電池の総発熱を算出する総発熱算出部と、
前記総発熱を分極熱と反応熱に分離して前記反応熱を算出する反応熱算出部と、
前記反応熱の充電容量特性に関する第1データが格納された記憶部と、
前記反応熱算出部で算出された前記反応熱と、前記記憶部に格納された前記第1データとに基づいて、前記二次電池の充電容量を推定する充電容量推定部と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
上記電池充電容量推定装置では、
前記記憶部には、熱等価回路に関する第2データが格納されており、
前記総発熱算出部は、前記充電時および前記放電時に取得した前記二次電池の表面温度および周囲温度から前記第2データを用いて、前記総発熱を算出することが好ましい。
【0013】
上記電池充電容量推定装置では、
前記充電容量推定部は、前記第2充電率における充電容量に基づいて前記二次電池の劣化を診断することが好ましい。
また、前記第2充電率を、前記二次電池の満充電時における充電率とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リチウムイオン二次電池を含む二次電池の充電容量を、比較的容易に推定することが可能な電池充電容量推定方法および電池充電容量推定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電池充電容量推定装置の構成概略図である。
【図2】リチウムイオン二次電池の電気的等価回路図である。
【図3】リチウムイオン二次電池の熱等価回路図である。
【図4】リチウムイオン二次電池(CGR18650CH)の充電容量-サイクル特性図である。
【図5】リチウムイオン二次電池(CGR18650CH)の電池表面温度波形図であって、(a)は充電時、(b)は放電時の図である。
【図6】リチウムイオン二次電池(SCiB)の電池表面温度波形図であって、(a)は充電時、(b)は放電時の図である。
【図7】リチウムイオン二次電池(CGR18650CH)の表面温度と周囲温度との温度差を示す波形図であって、(a)は充電時、(b)は放電時の図である。
【図8】リチウムイオン二次電池(SCiB)の表面温度と周囲温度との温度差を示す波形図であって、(a)は充電時、(b)は放電時の図である。
【図9】リチウムイオン二次電池(CGR18650CH)の電池総発熱波形図であって、(a)は充電時、(b)は放電時の図である。
【図10】リチウムイオン二次電池(SCiB)の電池総発熱波形図であって、(a)は充電時、(b)は放電時の図である。
【図11】リチウムイオン二次電池(CGR18650CH)の熱因子-充電容量特性図である。
【図12】リチウムイオン二次電池(SCiB)の熱因子-充電容量特性図である。
【図13】リチウムイオン二次電池(CGR18650CH)の内部電位-SOC特性図である。
【図14】リチウムイオン二次電池(SCiB)の内部電位-SOC特性図である。
【図15】リチウムイオン二次電池(CGR18650CH)の熱因子-充電容量特性図である。
【図16】リチウムイオン二次電池(SCiB)の熱因子-充電容量特性図である。
【図17】リチウムイオン二次電池(CGR18650CH)の分極熱-充電容量特性図である。
【図18】リチウムイオン二次電池(CGR18650CH)の反応熱-充電容量特性図である。
【図19】リチウムイオン二次電池(CGR18650CH)の反応熱の電流特性を説明するための図である。
【図20】測定器接続概略図である。
【図21】電圧測定手段の回路図である。
【図22】電流測定手段の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る電池充電容量推定方法および電池充電容量推定装置の実施形態について説明する。なお、以下では、二次電池として、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。

【0017】
[概要]
本発明の一実施形態に係る電池充電容量推定方法は、リチウムイオン二次電池の表面温度から、熱等価回路を用いてリチウムイオン二次電池の総発熱を算出するステップと、総発熱から分極熱と反応熱とを分離して反応熱を算出するステップと、反応熱に基づいてリチウムイオン二次電池の充電容量を推定するステップとを含む。

【0018】
本発明の一実施形態に係る電池充電容量推定装置は、電池充電容量推定方法を行うための装置である。図1に示すように、本実施形態に係る電池充電容量推定装置1は、反応熱-充電容量特性に関する第1データおよび熱等価回路に関する第2データが格納された記憶部11と、第2データを参照してリチウムイオン二次電池の表面温度からリチウムイオン二次電池の総発熱を算出する総発熱算出部12と、総発熱から分極熱と反応熱とを分離して反応熱を算出する反応熱算出部13と、第1データを参照して反応熱からリチウムイオン二次電池の充電容量を推定する充電容量推定部14とを含む。

【0019】
リチウムイオン二次電池は、充放電回路2により充電および放電が行われる。充放電回路2には、電圧測定手段3により測定されたリチウムイオン二次電池の電池端子間電圧に関する信号が入力される。電池充電容量推定装置1には、電流測定手段4により測定された充電電流または放電電流に関する信号と、表面温度測定手段5により測定されたリチウムイオン二次電池の表面温度に関する信号と、周囲温度測定手段6により測定されたリチウムイオン二次電池の周囲温度(外気温度)に関する信号が入力される。

【0020】
すなわち、電池充電容量推定装置1は、充放電電流、表面温度および周囲温度の3つのパラメータを用いて、リチウムイオン二次電池の充電容量を推定する。なお、図1では、電流測定手段4、表面温度測定手段5および周囲温度測定手段6を電池充電容量推定装置1に含めていないが、電池充電容量推定装置1に含めてもよい。また、電流測定手段4は、例えば充電容量推定部14が充放電電流に対する補正を行う場合に必要になるが、電流補正の必要がない場合は省略することができる。省略した場合、電池充電容量推定装置1は、表面温度および周囲温度の2つのパラメータを用いて、充電容量を推定することになる。

【0021】
[リチウムイオン二次電池]
リチウムイオン二次電池は、化学反応により化学エネルギーを電気エネルギーに変換する化学電池であり、可逆反応の特性を有し、再生利用可能な二次電池に分類される。リチウムイオン二次電池は、例えば、正極活物質にコバルト酸リチウム、負極活物質に炭素が用いられ、リチウムイオンの伝導媒体に有機電解液が用いられる。リチウムイオン二次電池は、充電時に外部エネルギーによりリチウムイオンが正極のコバルト酸リチウムより負極の炭素に挿入され、放電時に負極の炭素よりリチウムイオンが外部回路を通じて正極のコバルト酸リチウムに挿入される。この反応の繰り返しにより、リチウムイオン二次電池は電気エネルギーの充放電を行う。なお、リチウムイオン二次電池として、Panasonic社製円筒型リチウムイオン二次電池CGR18650CHおよび、東芝社製角型リチウムイオン二次電池SCiBを使用した。これらの電池の仕様を表1に示す。
【表1】
JP2016157565A_000003t.gif

【0022】
リチウムイオン二次電池の充電状態の指標としては、充電率(SOC)が一般的に用いられる。SOCの定義を(1)式に示し、リチウムイオン二次電池に蓄えられている総電荷量の定義を(2)式に示す。
【数1】
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【数2】
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ここで、総電荷量をq(t)[C]、電池容量(充電容量)をQ[C]、初期電荷量をq[C]、リチウムイオン二次電池に入力する電流をI[A]とする。電池容量Qの定義は、SOC=0%を、放電電流1.0[C]の定電流放電によりリチウムイオン二次電池の下限電圧に到達した点、SOC=100%を、充電電流1.0[C]の定電流充電によりリチウムイオン二次電池の上限電圧に到達した点とする。ただし、SCiBにおいては、1.0[C]が測定器の仕様範囲外となるため、測定器の最大電流値である4[A](0.952[C])を用いて定義する。

【0023】
[電気的等価回路]
リチウムイオン二次電池の電気的等価回路を図2に示す。ここで、リチウムイオン二次電池の内部電位をV[V]、内部インピーダンスをZ[Ω]、電池端子間電圧をV[V]、内部インピーダンスZによる電圧降下をV[V]、回路に流れる電流をI[A]とする。ただし、電流Iは充電方向を正とする。内部電位Vおよび内部インピーダンスZは定数ではなく、電流、温度、劣化、SOC等に依存する。

【0024】
[熱等価回路]
熱等価回路は、熱と電気のアナロジーを利用する回路である。熱等価回路を用いることで、熱の流動を電気回路論的に解析することが可能となる。図3に、リチウムイオン二次電池の熱等価回路を示す。図3において、リチウムイオン二次電池で発生する総発熱をP[W]、放熱抵抗をR[K/W]、リチウムイオン二次電池の熱容量をC[J/K]、リチウムイオン二次電池の周囲温度と表面温度との温度差をT[K]とする。なお、リチウムイオン二次電池の表面温度と、リチウムイオン二次電池の内部インピーダンスZによる電力損失とより、実験的に放熱抵抗Rと熱容量Cを導出することができる。

【0025】
[熱因子]
リチウムイオン二次電池は、充放電に伴い吸熱反応あるいは発熱反応を示す。それらの要因として、様々な化学反応あるいは物理現象が存在するが、電流に対する挙動により、分極熱P、反応熱P、副反応熱Pの3つに分類される。

【0026】
分極熱Pとは、内部インピーダンスZによる電力損失によって生じる熱である。内部インピーダンスZの抵抗成分Rとして、主因である分極に伴う抵抗R、活物質における拡散抵抗R、化学反応に伴い生じる抵抗R、外部回路との接触抵抗R等が存在する。分極熱Pは、これらを用いて(3)式のように表される。
【数3】
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ここで、Xは内部インピーダンスZにおけるリアクタンス成分であり、(3)式に示すように分極熱Pは充放電によらず電流Iの2乗に比例して発熱する。

【0027】
反応熱Pは、リチウムイオン二次電池の充放電に伴う化学反応により生じる熱のうち、可逆的な反応により生じる熱である。この可逆的な反応はリチウムイオン二次電池の主反応と呼ばれ、エネルギーの充電・放電を行う反応である。ファラデーの電気分解の法則の第一法則より、析出される物質量をω[mol]、電気化学当量をK[mol/C]、電流をI[A]、時間をt[s]とすると、(4)式が成り立つ。
【数4】
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ここで、析出される物質量ωは化学反応量と比例関係にあり、化学反応量と発生する熱量も比例関係にある。したがって、反応熱係数(比例係数)をV[V]とおくと、単位時間毎の熱量である反応熱Pは(5)式のように表される。
【数5】
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(5)式に示すように、反応熱Pは充放電により吸発熱が変化し、電流Iに比例する。ただし、反応熱係数Vは、内部電位Vに依存しており常に正になるとは限らない。したがって、電流Iが一定であってもSOCによって吸発熱が変化することがある。

【0028】
副反応熱Pは、リチウムイオン二次電池の充放電に伴う化学反応により生じる熱のうち、非可逆的な反応により生じる熱である。副反応は、一度反応により物質が変化すれば、通常の使用において元の状態に戻ることはない非可逆的な反応である。このため、副反応は、劣化の要因となる。副反応は、活物質や電解液等、電池を構成する物質の各所で発生する。また、副反応は、複数の反応が混在したものであり、反応量も主反応と比べると微小であることから解析が困難である。したがって、本実施形態では、副反応熱Pを考慮せず、無視する。

【0029】
総発熱Pは、分極熱P、反応熱P、副反応熱Pの和となるが、上述したように副反応熱Pを無視すると、(6)式のように表される。
【数6】
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【0030】
[電池劣化]
リチウムイオン二次電池の劣化は、経年劣化とサイクル劣化とに大別される。経年劣化は、年月の経過に伴う劣化であり、サイクル劣化は、充放電を繰り返すことによる劣化である。以下では、準備が容易であるサイクル劣化させたリチウムイオン二次電池により劣化試験を行う。サイクル条件は、周囲温度25[℃]において、まず定電流定電圧充電を行い、15分以上の休止期間を経て、定電流放電を行うこととし、これを1サイクルとする。定電流定電圧充電は、充電電流1.0[C]により電池の上限電圧まで定電流充電を行い、その電圧を維持したまま充電電流が0.05[C](1/20[C])に低下するまで定電圧充電を行うものとする。なお、CGR18650CHにおいては、下限電圧を表1に示す2.5[V]ではなく、一般的なリチウムイオン二次電池のサイクル試験で用いられる2.75[V]とする。

【0031】
図4に示すように、電池容量(充電容量)Qは充放電サイクル特性を繰り返すことにより減少する。また、劣化の要因として様々な要素が研究されているが、いずれも電池容量Qの低下をもたらす。このため、劣化特性は、図4に示すように電池容量Qの変化で示すのが一般的である。JISC8711では、電池容量Qが初期容量の60%に減少したときを電池寿命の目安としている。

【0032】
[熱等価回路を用いた総発熱導出]
図3の示す熱等価回路を用いてリチウムイオン二次電池の総発熱Pを導出するためには、リチウムイオン二次電池の周囲温度と表面温度との温度差T、放熱抵抗R、およびリチウムイオン二次電池の熱容量Cが必要である。熱因子解析では電池周囲の熱特性を安定させる必要があるため、恒温槽(例えば、ETAC社製恒温器TL401E)を使用して、周囲温度を常温(25[℃])に維持させた。図5に、CGR18650CHの電池表面温度波形を示し、図6に、SCiBの電池表面温度波形を示す。図5(a)および図6(a)は、定電流充電時、図5(b)および図6(b)は、定電流放電時の波形である。なお、リチウムイオン二次電池の表面温度は、東亜電機社製T型熱電対MF-O-Tを使用して測定した。

【0033】
まず、図5および図6の電池表面温度波形から熱時定数τを求める。熱時定数τは(7)式に示すように、熱等価回路の放熱抵抗Rと熱容量Cの積であり、定電流充放電後のリチウムイオン二次電池の表面温度の応答速度から算出される。
【数7】
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図5および図6の電池表面温度波形から、充放電完了後の適当な範囲において、表面温度と周囲温度(25[℃])との温度差Tを求め、温度差Tを対数軸で表すと、図7および図8が得られる。図7および図8の波形の適当な範囲において、最小二乗法を用いた直線近似を行い、傾きAを求める。ここで、充放電終了後の波形は(8)式のように表される。
【数8】
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(8)式において、両辺の常用対数をとると、(9)式が得られる。
【数9】
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求めた傾きAは温度差Tを対数軸にとっているため、切片をBとすると(10)式のように表される。
【数10】
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(9)式および(10)式より、熱時定数τは(11)式のように表される。
【数11】
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【0034】
次に、放熱抵抗Rを求める。放熱抵抗Rとは、温度の伝えにくさを表す値である。リチウムイオン二次電池から外気への放熱量W[J]は、(12)式のように表される。
【数12】
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非可逆反応を考慮しない場合、充電電力量をWch[J]とし、放電電力量をWdch[J]とすると、エネルギー保存則に基づき(13)式が成り立つ。
【数13】
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放熱量Wは、充電時放熱量と放電時放熱量の和とする。充電電力量Wchおよび放電電力量Wdchは、(14)式および(15)式に示すように、観測波形の電圧と電流の積の積分値より求められる。また、(12)式を(13)式に代入し、放熱抵抗Rについてまとめると、(16)式が成り立つ。
【数14】
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【数15】
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【数16】
JP2016157565A_000019t.gif

【0035】
(16)式は連続関数によって表されるが、電流および電圧の観測波形が離散的なデータとなる場合は、(17)式を用いて放熱抵抗Rを求める。なお、ここでは、エヌエフ回路設計ブロック社製リチウムイオン電池評価システムAs-510-LB4を使用しており、観測波形は、サンプリング間隔△t=1[s]の離散的なデータとなる。したがって、(17)式を用いて放熱抵抗Rを求める。
【数17】
JP2016157565A_000020t.gif
(17)式を用いて求めた放熱抵抗Rは、CGR18650CHでは5[K/W]となり、SCiBでは1.5[K/W]となる。

【0036】
次に、熱容量Cを求める。熱時定数τと放熱抵抗Rより、(7)式を用いて求めた熱容量Cは、CGR18650CHでは60[J/K]となり、SCiBでは260[J/K]となる。

【0037】
次に、温度差T、放熱抵抗Rおよび熱容量Cを用いて、総発熱Pを導出する。図3に示す熱等価回路より、リチウムイオン二次電池の総発熱Pは(18)式のように表される。
【数18】
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(18)式は、連続関数によって表される式である。よって、(19)式を用いて総発熱Pを導出する。
【数19】
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なお、表面温度波形に対しノイズを除去するため、観測時間前後30[s]の離散データを用いた移動平均を施す。図5および図6の電池表面温度波形に(19)式を適用すると、図9および図10に示す波形が得られる。

【0038】
[熱因子解析]
分極熱Pと反応熱Pの最大の相違点は、分極熱Pは、充放電に関わらず電流の2乗に比例して常に発熱するのに対し、反応熱Pは、充放電により吸発熱が変化することである。これは、分極による電圧降下が全て熱として損失されるのに対して、化学反応による電圧降下は化学反応に伴う物質の性質変化そのものに消費されるからである。すなわち、反応熱Pは、単純に抵抗に電流が流れてジュール熱が発生するといった電気的な等価回路上に表すことができず、(5)式のように化学反応により定まる反応熱係数Vによって表される。以下、分極熱Pと反応熱Pの特性の違いを利用した熱因子の分離法について説明する。

【0039】
CGR18650CHにおいては、1.0[C](2.25[A])で定電流充放電を行い、SCiBにおいては4[A]で定電流充放電を行い、充電容量を横軸にとったときの充電時総発熱波形(充電時総発熱)をPchとし、放電時総発熱波形(放電時総発熱)をPdchとすると、分極熱Pについては(20)式が成り立ち、反応熱Pについては(21)式が成り立つ。分極熱Pは常に発熱であることに対し、反応熱Pは充放電によって吸発熱が変化することから、(20)式においては、充電時総発熱波形Pchと放電時総発熱波形Pdchの和を取ることで反応熱Pを消去し、(21)式においては、充電時総発熱波形Pchと放電時総発熱波形Pdchの差を取ることで分極熱Pを消去している。
【数20】
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【数21】
JP2016157565A_000024t.gif
充電容量を横軸とし、図9および図10の電池総発熱波形(総発熱)Pに(20)式および(21)式を適用すると、図11および図12に示す熱因子波形が得られる。

【0040】
分極熱Pは図2に示す電気的等価回路においてRIで表されるため、分極熱Pを電流Iで除すことで、内部インピーダンスZにおける電圧降下Vが得られる。よって、(22)式を用いて内部電位Vが算出可能となる。
【数22】
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(22)式を用いて算出した充放電時における内部電位Vの波形と、SOC10%間隔にて間欠充電により計測した内部電位Vの波形とを、CGR18650CHについては図13に、SCiBについては図14に示す。なお、CGR18650CHでは1.0[C](2.25[A])、SCiBでは4[A](0.952[C])の定電流充電を行い、5400[s]の休止時間をおいた。休止時間をおく理由は、活物質における拡散が落ち着くまでに時間を有するためである。図13および図14に示す両波形から、それぞれの二次電池において導出した内部電位Vと間欠充電により導出した内部電位Vが良好に一致していることが分かる。

【0041】
分極熱Pは(3)式に示すように電流の2乗に比例して増減し、反応熱Pは(5)式に示すように電流に比例して増減する。そこで、CGR18650CHにおいては0.4[C](0.9[A])、SCiBにおいては2[A](0.476[C])の定電流充放電を行い、上述した熱因子分離法を用いて電池総発熱波形(総発熱)Pより、分極熱Pと反応熱Pとを分離する。CGR18650CHにおいて、0.4[C](0.9[A])および1.0[C](2.25[A])の定電流充放電を行い導出した分離波形を図15に示し、SCiBにおいて、2[A]および4[A]の定電流充放電を行い導出した分離波形を図16に示す。ただし、図15および図16では、(3)式および(5)式に基づく波形比較を行うため、CGR18650CHにおける0.4[C](0.9[A])の分極熱Pを0.4、反応熱Pを0.4で除し、SCiBにおける2[A]の分極熱Pを0.5、反応熱Pを0.5で除し、正規化した。図15および図16から、CGR18650CHにおいては概ね一致することが確認でき、SCiBにおいては良好に一致することが確認できる。

【0042】
結局、上述した熱因子分離法によれば、電池総発熱波形(総発熱)Pを、(3)式および(5)式の特性を有する分極熱Pおよび反応熱Pに分離することができる。分極熱Pは、リチウムイオン二次電池と外部回路の接触抵抗等によって変化する可能性がある一方、反応熱Pは、測定環境による影響が小である。したがって、反応熱Pは、リチウムイオン二次電池の充電容量推定および劣化診断に有用なパラメータであることが分かる。

【0043】
[電池充電容量推定アルゴリズム]
リチウムイオン二次電池は充放電を繰り返すと劣化する。劣化により生じる現象はいくつか確認されているが、充電容量の減少により論じられるのが一般的である。以下、CGR18650CHにおける電池充電容量推定アルゴリズムについて説明する。

【0044】
充放電サイクルを0サイクルから500サイクルまで100サイクル毎に、充放電した6種類のリチウムイオン二次電池(CGR18650CH)を用意し、熱因子分離法に準じて0.4[C]の定電流充放電を行い導出した分極熱Pと反応熱Pとの分離波形を図17および図18に示す。図17から、分極熱Pは概ねサイクル数に伴い増加しているがノイズ成分が大であることが分かる。一方、図18から、反応熱Pは全てのサイクル数において特性が良好に一致しており、分極熱Pと比べてノイズ成分が小であることが分かる。

【0045】
なお、分極熱Pにノイズ成分が大きい理由は、リチウムイオン二次電池と測定器(電流測定手段4)の配線による接触抵抗にある。図15に示す分極熱波形を1.0[C](2.25[A])の2乗で除すことで電池内部抵抗Rを推定できるが、電池内部抵抗Rは、最大でも25[mΩ]となり接触抵抗を無視できないほど小である。本実施形態における実験環境では電池ホルダーにCGR18650CHを差し込み外部回路と接続しているが、差し込み方による接触抵抗の変化の他、電池の温度変化による体積の増減等が外部回路との接触抵抗に影響を与えると考えられる。これらの理由より、分極熱Pにおけるノイズを除去し、電池充電容量推定を行うことは極めて困難である。

【0046】
一方、反応熱Pは、導出過程にて分極熱Pの影響を全て取り除くため、接触抵抗の影響を受けない。また、反応熱Pはサイクル特性によって変化しないため、反応熱Pを算出し、図18に示す反応熱-充電容量特性を用いることで、充電容量を推定することができる。さらに、リチウムイオン二次電池は劣化に伴い満充電時(SOC100%時)の充電容量が減少するので、満充電時(SOC100%時)の充電容量を推定することにより、劣化診断が可能となる。以下、反応熱導出による充電容量推定アルゴリズム(電池充電容量推定方法)を2種類提案する。

【0047】
(第1の方法)
第1の方法は、充電ステップと、放電ステップと、総発熱算出ステップと、反応熱算出ステップと、充電容量推定ステップとを含む。第1の方法は、例えば、図1に示す電池充電容量推定装置1、充放電回路2、電流測定手段4、表面温度測定手段5および周囲温度測定手段6によって行われる。

【0048】
充電ステップでは、充放電回路2がリチウムイオン二次電池に対して、第1電圧Vから第2電圧V(V<V)まで、言い換えれば、第1充電率SOCから第2充電率SOC(SOC<SOC)まで定電流充電を行う。定電流充電は、リチウムイオン二次電池の充電電圧(電池端子間電圧)またはSOCを監視しながら行ってもよいし、制御が容易な充電時間を監視しながら行ってもよい。充電時間は、2分以上であることが好ましく、充電電流は0.5[C]以上であることが好ましい。

【0049】
電池端子間電圧、SOCまたは充電時間の監視は、充放電回路2が自ら行ってもよいし、電池充電容量推定装置1が行ってもよい。電池充電容量推定装置1が監視を行う場合、充放電回路2は、電池充電容量推定装置1の制御下でリチウムイオン二次電池の充放電を行うことになる。また、この場合、電池充電容量推定装置1に、電圧測定手段3で測定したリチウムイオン二次電池の電池端子間電圧に関する信号を入力することが好ましい。

【0050】
放電ステップは、充電ステップ完了後、リチウムイオン二次電池の表面温度が外気温(周囲温度)と一致するまで休止させた後に行う。放電ステップでは、充放電回路2がリチウムイオン二次電池に対して、第2電圧Vから第1電圧Vまで、言い換えれば、第2充電率のSOCから第1充電率のSOCまで定電流放電を行う。定電流放電は、リチウムイオン二次電池の放電電圧(電池端子間電圧)またはSOCを監視しながら行ってもよいし、放電時間を監視しながら行ってもよい。放電ステップでは、放電時間を充電時間と同じにし、放電電流の大きさを充電電流の大きさと同じにする。

【0051】
充電ステップおよび放電ステップでは、リチウムイオン二次電池の充放電電流、表面温度および周囲温度を、それぞれ所定の周期で取得しておく。具体的には、電池充電容量推定装置1は、電流測定手段4から取得した充放電電流に関するデータ、表面温度測定手段5から取得した表面温度に関するデータ、および周囲温度測定手段6から取得した周囲温度に関するデータを記憶部11に格納する。なお、充電ステップと放電ステップは、順序を逆転しても良い。

【0052】
総発熱算出ステップでは、表面温度および周囲温度から図3に示す熱等価回路を用いて、リチウムイオン二次電池の総発熱Pを算出する。熱等価回路に関するデータ(第2データ)は、記憶部11に予め格納されている。総発熱算出部12は、記憶部11に格納された上記表面温度および周囲温度に関するデータおよび熱等価回路に関するデータ(第2データ)に基づいて、総発熱Pを算出する。

【0053】
反応熱算出ステップでは、総発熱算出ステップで算出した総発熱Pを、熱因子分離法により分極熱Pおよび反応熱Pに分離して、(20)式および(21)式により反応熱Pの熱量を算出する。この反応熱算出ステップは、反応熱算出部13で行われる。

【0054】
充電容量推定ステップでは、反応熱算出ステップで算出した反応熱Pから、図18に示す反応熱-充電容量特性を用いて、リチウムイオン二次電池の測定時の充電容量(残容量)を推定する。反応熱-充電容量特性に関するデータ(第1データ)は、記憶部11に予め格納されている。反応熱-充電容量特性はリチウムイオン二次電池の種類、メーカー等によって異なるので、充電容量を推定しようとするリチウムイオン二次電池の反応熱-充電容量特性に関するデータを予め記憶部11に格納しておく必要がある。また、反応熱-充電容量特性はSOCの依存性が小であるため、SOC毎に格納しておく必要はなく、すくなくとも1つのSOCに対するデータがあればよい。

【0055】
例えば、記憶部11に、図18に示す反応熱-充電容量特性のデータが格納されている場合、反応熱算出部13(反応熱算出ステップ)で算出された反応熱Pが-0.03[W]であれば、充電容量推定部14は、記憶部11に格納されデータに基づいて、リチウムイオン二次電池の充電容量を700~1000[mAh]であると推定する。充電容量推定部14は、推定した充電容量を記憶部11に格納する。

【0056】
また、推定される充電容量に複数の候補がある場合、充電容量推定部14は、直前に推定した充電容量(記憶部11に格納された最新の充電容量)に一番近い値を選択して推定する。例えば、反応熱算出部13(反応熱算出ステップ)で算出された反応熱Pが0[W]の場合、推定される充電容量の候補として約500[mAh]と約1250[mAh]とがあるが、充電容量推定部14が直前に推定した充電容量、すなわち記憶部11に格納された最新の充電容量が約1300[mAh]であれば、充電容量推定部14は、充電容量として約1250[mAh]を選択して推定する。

【0057】
ここで、第2充電率SOCを100%とした場合の充電容量は、劣化(充放電サイクル数)に依存する。具体的には、図18に示すように、劣化が進んでいるほど(充放電サイクル数が大きいほど)、満充電時の充電容量は小さくなる。したがって、充電ステップにおいて、リチウムイオン二次電池が満充電になるまで充電することで、充電容量推定部14は、充電容量推定ステップで推定した充電容量に基づいてリチウムイオン二次電池の劣化を診断することができる。すなわち、充電容量推定アルゴリズム(電池充電容量推定方法)に、劣化診断ステップを含めることができる。なお、第2充電率SOCにおける充電容量は劣化に伴い減少するので、劣化を診断するためには必ずしも第2充電率SOCを100%にする必要はなく、第2充電率SOCにおける充電容量に基づいて劣化を診断することができる。例えば、図18に示す6通りの充放電サイクルのリチウムイオン二次電池を、いずれもSOCが100%よりも小さい固定値まで充電して、反応熱-充電容量特性に関するデータを生成した場合、第2充電率SOCを上記固定値とすることで(上記固定値まで充電することで)、充電容量推定部14は、リチウムイオン二次電池の劣化を診断することができる。しかしながら、容易に劣化を診断するためには、第2充電率SOCを100%とすることが好ましい。

【0058】
さらに、充電容量推定部14は、充放電電流に対する補正を行う機能を有する。(5)式に示すように、反応熱Pは電流Iに比例する。したがって、例えば、充電ステップおよび放電ステップにおける充放電電流が、記憶部11に格納された反応熱-充電容量特性に関するデータ(第1データ)における充放電電流の2倍である場合、充電容量推定部14は、反応熱Pを1/2に補正した上で、第1データから充電容量を推定する。

【0059】
(第2の方法)
第2の方法は、充電完了近傍にて連立方程式を用いて反応熱係数Vを導出する手法である。反応熱係数Vは、図18に示す反応熱-充電容量特性の縦軸を充電電流0.4[C](0.9[A])で除したものである。(5)式より、充電時総発熱をPch[W]、放電時総発熱をPdch[W]、充電電流をIch[A]、放電電流を-Idch[A]とおくと、(23)式に示す連立方程式が導出できる。
【数23】
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内部インピーダンスZを除去するように(23)式を解くと、反応熱係数Vは(24)式のように表される。
【数24】
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(24)式から分かるように、第2の方法は、電流が任意波形においても適応可能であるため幅広い運用が期待できる反面、第1の方法と異なり一点のみによる測定となるため、精度が低下するおそれがある。

【0060】
[反応熱係数の電流特性]
反応熱係数Vは本来電流に依存せず、(5)式に示したように電流に比例して吸発熱する。しかしながら、本実施形態では、副反応熱Pを考慮せずに反応熱Pを導出しており、副反応熱Pが電流に依存している可能性がある。そこで、電流値を変更して熱因子分析を実施することで、副反応熱Pの影響の検討を行う。上述したように、CGR18650CHにおける熱因子分離波形の電流特性である図15とSCiBにおける熱因子分離波形の電流特性である図16とを比較すると、SCiBの反応熱波形は良好に一致しているのに対し、CGR18650CHにおいては若干の差異がみられる。図18との比較のためサイクル特性を踏まえて、1.0[C]の定電流充放電にて導出したCGR18650CHの反応熱波形を図19に示す。ただし、図19では、(5)式に基づき0.4で乗じ正規化している。

【0061】
図18と図19の比較から、どちらもサイクル特性は概ね一致しているが、小電流である図18の波形と大電流である図19の波形では異なる特性を示していることが分かる。すなわち、分離した反応熱Pは電流に依存することが分かる。したがって、本実施形態に係る電池充電容量推定方法において反応熱Pを劣化診断に運用する場合には、電流特性を考慮することで、より正確な診断が可能となる。

【0062】
[測定器の設計例]
本実施形態に係る電池充電容量推定方法では、充放電電流、表面温度および周囲温度の3つのパラメータが必要である。また、充放電制御には電池端子間電圧が必要である。以下、これらの4つのパラメータを測定するための測定器、具体的には、図1に示す電圧測定手段3、電流測定手段4、表面温度測定手段5および周囲温度測定手段6の設計例について説明する。

【0063】
ホール素子やホトカプラ等を使用せず測定試料と測定器とが絶縁されていない場合、電圧と電流の同時計測を行う際に回路の接地系を意識しなければならない。測定器接続概略図を図20に示す。図20では、入力V-と接地端子が同電位に見えるが、リチウムイオン二次電池(Battery)の負極と接地端子との間には、配線による電圧降下を無視できない程度の大電流が流れる。したがって、入力V-と接地端子には電位差が生じる。電圧測定手段3では、この電位差を打消すために初段にて入力V-と入力V+の差を出力する設計としている。また、測定器側で入力V-と接地端子とを短絡して同電位にした場合も、リチウムイオン二次電池の負極と入力V-の間に電圧降下を無視できない程度の大電流が生じ、測定精度が大幅に低下することが予想される。実際の回路では必要に応じて各所にコンデンサを配置し、ローパスフィルタによるノイズ除去回路を形成している。なお、安全性を重視する場合は、ホール素子やホトカプラ等を使用し、測定試料と測定器を電気的に絶縁することが望ましい。

【0064】
(電圧測定手段)
電圧測定手段3の回路図を図21に示す。電圧測定手段3は、観測電圧の範囲を2.5[V]から4.2[V]とする。図21に示すように、オペアンプの初段は減算回路であり、観測する2点である入力V-と入力V+の電位差を出力する。次段も減算回路であり、入力電圧から2.5[V]の差を出力する。これにより出力電圧は0[V]から2.7[V]の間となる。最後に抵抗による分圧回路で電圧を2分の1に降圧する。よって、最終的な出力は0[V]から1.35[V]となる。2段目のオペアンプでは3.3[V]の電源を使用しているため、理論上最大出力電圧も3.3[V]となる。したがって、それを2分の1に降圧することでマイコンボードに対する最大入力電圧は1.65[V]となり、事故時にマイコンボードのスペックである1.8[V]を超過する可能性を軽減させている。ただし、電流を測定せずに電圧のみを測定する場合、入力V-を接地する必要がある。

【0065】
(電流測定手段)
電流測定手段4の回路図を図22に示す。電流測定手段4は、観測電流の範囲を±4[A]とする。図22に示すように、回路に直列抵抗を設置し、その電圧降下を観測することで電流値を算出する。直列抵抗の片端を入力、もう片端をGNDに接続するものとする。オペアンプ初段は減算回路であり、1.65[V]と入力電圧の差を出力する。次段は、非反転増幅回路であり、1.65[V]を仮想GNDとしている。これにより1.65[V]を中心とした増幅が可能となる。非反転増幅回路の増幅率が40であることを考慮すると出力電圧VOUTは(25)式のようになる。
【数25】
JP2016157565A_000028t.gif
最後に、電圧測定手段3と同様に抵抗による分圧を行い、回路の保護およびマイコンボード入力に対する出力調整を行う。

【0066】
(温度測定手段)
表面温度測定手段5および周囲温度測定手段6として、反応速度が熱電対よりも遅いサーミスタを用いる。サーミスタは、温度により抵抗値が変化する電子素子であり、直列に定抵抗R[Ω]を加え、分圧比の変化により抵抗を測定する。サーミスタの抵抗R[Ω]と温度T[K]の関係式を(26)式に示す。
【数26】
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ここで、R[Ω]、T[K]およびB[K]は、サーミスタ固有の値である。入力電圧をVin、直列定抵抗Rにおける電圧降下をVout、R=Rとすると、温度Tは(27)式のように表される。
【数27】
JP2016157565A_000030t.gif

【0067】
以上、本発明に係る電池充電容量推定方法および電池充電容量推定装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。

【0068】
例えば、上記実施形態では、二次電池としてリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、本発明に係る電池充電容量推定方法および電池充電容量推定装置は、リチウムイオン二次電池以外の二次電池にも適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 電池充電容量推定装置
2 充放電回路
3 電圧測定手段
4 電流測定手段
5 表面温度測定手段
6 周囲温度測定手段
11 記憶部
12 総発熱算出部
13 反応熱算出部
14 充電容量推定部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図20】
3
【図21】
4
【図22】
5
【図4】
6
【図5】
7
【図6】
8
【図7】
9
【図8】
10
【図9】
11
【図10】
12
【図11】
13
【図12】
14
【図13】
15
【図14】
16
【図15】
17
【図16】
18
【図17】
19
【図18】
20
【図19】
21