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明細書 :アポトーシス抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-155778 (P2016-155778A)
公開日 平成28年9月1日(2016.9.1)
発明の名称または考案の名称 アポトーシス抑制剤
国際特許分類 A61K  31/428       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  27/02        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
FI A61K 31/428
A61P 35/00
A61P 43/00 105
A61P 27/02
A61P 25/00
請求項の数または発明の数 1
出願形態 OL
全頁数 6
出願番号 特願2015-034737 (P2015-034737)
出願日 平成27年2月25日(2015.2.25)
発明者または考案者 【氏名】松尾 俊彦
【氏名】内田 哲也
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100113181、【弁理士】、【氏名又は名称】中務 茂樹
【識別番号】100180600、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 俊一郎
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086BC84
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA33
4C086ZB21
4C086ZB26
要約 【課題】安全性が高く、アポトーシスを抑制する効果に優れたアポトーシス抑制剤を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示される化合物を有効成分として含有するアポトーシス抑制剤である。
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[式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基であり、Xはハロゲンイオンである。]
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)で示される化合物を有効成分として含有するアポトーシス抑制剤。
【化1】
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[式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基であり、Xはハロゲンイオンである。]
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アポトーシス抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスは、生体内で予めプログラムされた細胞死であり、個体の発生過程における不要な細胞の除去や、癌化した細胞の除去等に重要な役割を果たしている。しかしながら、様々な疾患にアポトーシスが深く関与していることも知られており、アポトーシスを抑制することができれば、様々な疾患に対する治療薬となり得ることが期待できる。
【0003】
特許文献1には、視神経において、光刺激に応じた受容器電位を誘発する受容器電位誘発剤のための有機色素化合物をスクリーニングする方法が記載されており、前記有機色素化合物の一つとして、下記式(1a)で示される化合物が記載されている。
【0004】
【化1】
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【0005】
特許文献1では、このような有機色素化合物を含む受容器電位誘発剤は、傷病に伴う網膜の障害に起因する視野狭窄、視力低下、夜盲などの視覚障害や、薬物中毒、視覚中枢の神経障害、網膜の疾患、特定の錘体の欠如に起因する色覚異常を緩和したり解消するための人工網膜をはじめとする網膜代替用材において、視覚関連物質を代替する材料として極めて有用であるとされている。しかしながら、アポトーシスを抑制する効果については、これまで全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第5090431号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、安全性が高く、アポトーシスを抑制する効果に優れたアポトーシス抑制剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記式(1)で示される化合物を有効成分として含有するアポトーシス抑制剤を提供することによって解決される。
【0009】
【化2】
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[式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基であり、Xはハロゲンイオンである。]
【発明の効果】
【0010】
本発明のアポトーシス抑制剤は、安全性が高く、アポトーシスを抑制する効果に優れている。網膜の神経細胞に対するアポトーシス抑制剤として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1において、RCSラットの網膜におけるアポトーシス細胞の顕微鏡写真である。
【図2】実施例1において、アポトーシス陽性細胞数を計測して得られた結果を示すグラフである。
【図3】実施例2において、アポトーシス陽性細胞数を計測して得られた結果を示すグラフである。
【図4】実施例3において、アポトーシス陽性細胞数を計測して得られた結果を示すグラフである。
【図5】実施例4において、アポトーシス陽性細胞数を計測して得られた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアポトーシス抑制剤は、下記式(1)で示される化合物を有効成分として含有するものである。

【0013】
【化3】
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[式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基であり、Xはハロゲンイオンである。]

【0014】
上記式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基である。R及びRに用いられる炭素数1~10のアルキル基としては、直鎖や分岐鎖のアルキル基であってもよいし、環状のシクロアルキル基であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の直鎖や分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタニル基、シクロオクタニル基、シクロノナニル基、シクロデカニル基等のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、R及びRとしては、炭素数1~8のアルキル基が好適であり、炭素数1~6のアルキル基がより好適であり、炭素数1~4のアルキル基が更に好適である。R及びRに用いられるアルキル基は、それぞれ同じアルキル基であってもよいし、異なるアルキル基であってもよい。

【0015】
上記式(1)において、Xはハロゲンイオンである。Xに用いられるハロゲンイオンとしては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等があげられる。中でも、Xとしては、塩素イオン、臭素イオン及びヨウ素イオンからなる群から選択される少なくとも1種が好適であり、臭素イオン及びヨウ素イオンからなる群から選択される少なくとも1種がより好適である。

【0016】
本発明のアポトーシス抑制剤は、式(1)で示される化合物を単独で投与する実際態様であってもよいし、式(1)で示される化合物と薬理学的に許容される担体とを含有する製剤を投与する実施態様であってもよい。前記担体としては、蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液等の溶媒;デンプン、デキストリン、ゼラチン等の結合剤;殺菌剤;界面活性剤;pH調整剤;乳化剤;酸化防止剤;増粘剤等が挙げられる。

【0017】
また、当該製剤としては、錠剤、徐放剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、フィルム剤、シロップ剤、懸濁剤、注射剤、点眼剤、外用剤、坐剤、経鼻剤等が挙げられる。中でも、式(1)で示される化合物を生理食塩水等の溶媒に加えて色素溶液を調製し、前記色素溶液を投与する方法が好適に採用される。すなわち、式(1)で示される化合物と薬理学的に許容される溶媒とを含有するアポトーシス抑制剤が本発明の好適な実施態様である。また、式(1)で示される化合物を高分子フィルム等に担持させたアポトーシス抑制剤を徐放剤として好適に用いることもできる。

【0018】
後述する実施例からも分かるように、コントロールとして生理食塩水のみを網膜色素変性ラット(RCSラット)の一方の眼に対して注射した結果と比較して、式(1a)で示される化合物を含む色素溶液を同じラットの他方の眼に注射した場合では、網膜神経細胞のアポトーシスが有意に低下していたことが本発明者らにより確認された。したがって、本発明のアポトーシス抑制剤は、優れたアポトーシス抑制効果を有することが分かる。中でも、網膜の神経細胞に対するアポトーシス抑制剤であることが本発明の好適な実施態様である。また、本発明者らは、式(1a)で示される化合物について生物学的安全性評価を行った結果、毒性を有さなかったことを検証している。このことから、本発明のアポトーシス抑制剤は、安全性の高いものであることが分かる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。実施例中、有機色素化合物は、株式会社林原から「NK-5962」として報告、製造されている下記式(1a)で示されるポリメチン系の有機色素化合物を使用した。
【実施例】
【0020】
【化4】
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【実施例】
【0021】
[アポトーシス抑制試験]
実施例1
式(1a)で示される有機色素化合物(NK-5962)を生理食塩水に濃度8.2μg/mLとなるように添加して色素溶液を調製した。前記色素溶液を4週令の網膜色素変性ラット(RCSラット)の一眼の硝子体内に10μL注射した。反対眼の硝子体内に生理食塩水のみを同量注射してコントロールとした。2週間後にRCSラットから眼球摘出を行い、凍結切片を作成した。Roche Diagnostics社製「In Situ Cell Death Detection Kit, Fluorescein」を用いてTUNEL法によりアポトーシス細胞を染色し、蛍光顕微鏡で観察した。得られた結果を図1に示す。図1で示されるように、生理食塩水のみを注射したコントロール眼(saline注射眼)において、アポトーシス陽性細胞が緑色蛍光として多数観察された。これに対し、前記色素溶液を注射したdye注射眼においては、アポトーシス陽性細胞の数が顕著に抑制されていた。また、網膜100μmあたりのアポトーシス陽性細胞数を計測して得られた結果を図2に示す。生理食塩水のみを注射したコントロール眼と比べて、有機色素化合物を注射した眼では、網膜神経細胞のアポトーシスが有意に低下していた。したがって、アポトーシス抑制剤として非常に有用であることが分かる。
【実施例】
【0022】
実施例2
実施例1において、色素溶液の濃度を10倍に希釈して使用した以外は、実施例1と同様にしてTUNEL法によりアポトーシス細胞を染色し、網膜100μmあたりのアポトーシス陽性細胞数を計測した。得られた結果を図3に示す。
【実施例】
【0023】
実施例3
実施例1において、色素溶液の濃度を100倍に希釈して使用した以外は、実施例1と同様にしてTUNEL法によりアポトーシス細胞を染色し、網膜100μmあたりのアポトーシス陽性細胞数を計測した。得られた結果を図4に示す。
【実施例】
【0024】
実施例4
実施例1において、色素溶液の濃度を1000倍に希釈して使用した以外は、実施例1と同様にしてTUNEL法によりアポトーシス細胞を染色し、網膜100μmあたりのアポトーシス陽性細胞数を計測した。得られた結果を図5に示す。
【実施例】
【0025】
図3~5の結果から分かるように、色素溶液の濃度を変更した実施例2~4においても、生理食塩水のみを注射したコントロール眼と比べて、有機色素化合物を注射した眼では、網膜神経細胞のアポトーシスが有意に低下していた。したがって、アポトーシス抑制剤として非常に有用であることが分かる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4