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明細書 :吊り天井

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-145614 (P2017-145614A)
公開日 平成29年8月24日(2017.8.24)
発明の名称または考案の名称 吊り天井
国際特許分類 E04B   9/18        (2006.01)
FI E04B 5/58 S
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2016-028045 (P2016-028045)
出願日 平成28年2月17日(2016.2.17)
発明者または考案者 【氏名】吉中 進
出願人 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100124039、【弁理士】、【氏名又は名称】立花 顕治
【識別番号】100156845、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 威一郎
【識別番号】100124431、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 順也
【識別番号】100112896、【弁理士】、【氏名又は名称】松井 宏記
【識別番号】100179213、【弁理士】、【氏名又は名称】山下 未知子
【識別番号】100170542、【弁理士】、【氏名又は名称】桝田 剛
審査請求 未請求
要約 【課題】本発明の一側面に係る目的は、地震時の水平方向の振動を有効に抑えることのできる安価な吊り天井を提供することである。
【解決手段】本発明の一側面に係る吊り天井は、天井部と、上部構造から鉛直方向に対して斜めに延び、前記天井部を吊り下げ支持する複数本のケーブル材と、を備え、前記複数本のケーブル材は、前記各ケーブル材から前記天井部に作用する張力が水平方向につり合うように配置される。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
天井部と、
上部構造から鉛直方向に対して斜めに延び、前記天井部を吊り下げ支持する複数本のケーブル材と、
を備え、
前記複数本のケーブル材は、前記各ケーブル材から前記天井部に作用する張力が水平方向につり合うように配置される、
吊り天井。
【請求項2】
4本以上の偶数本の前記ケーブル材を備え、
前記偶数本のケーブル材は、それぞれ一対のケーブル材を一組として、前記天井部を吊り下げ支持する複数の支持構造部を構成し、
前記各支持構造部を構成する前記一対のケーブル材は、前記天井部に作用する張力が水平方向に互いにつり合うように配置され、
前記複数の支持構造部は、前記一対のケーブル材の張力のつり合いが複数方向で形成されるように配置される、
請求項1に記載の吊り天井。
【請求項3】
前記複数の支持構造部の少なくとも一部において、前記一対のケーブル材は、互いに交差するように配置される、
請求項2に記載の吊り天井。
【請求項4】
前記複数の支持構造部の少なくとも一部において、前記一対のケーブル材は、上端部側又は下端部側で連結するように配置される、
請求項2に記載の吊り天井。
【請求項5】
前記複数方向それぞれに沿って前記一対のケーブル材の張力のつり合いを形成する前記支持構造部の数は同数であり、
前記複数の支持構造部は、前記天井部の中心に対して対称的に配置される、
請求項2から4のいずれか1項に記載の吊り天井。
【請求項6】
前記天井部の上方向への変動を制限する補助ケーブルを更に備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の吊り天井。
【請求項7】
前記補助ケーブルの上端部が前記天井部に連結し、前記補助ケーブルの下端部が、建物の壁又は柱の前記天井部より下方の部分に連結することで、前記補助ケーブルは、前記天井部の上方向への変動を制限する、
請求項6に記載の吊り天井。
【請求項8】
前記補助ケーブルは、前記天井部の上方で前記天井部に接触可能に配置され、前記補助ケーブルに張力を導入するように、前記補助ケーブルの両端部が建物の壁又は柱に連結されることで、前記天井部の上方向への変動を制限する、
請求項6に記載の吊り天井。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り天井の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、体育館施設等で最もよく使われている吊り天井は、建物の上部構造から鉛直方向に吊り下げられる吊りボルト、天井の下地材である野縁及び野縁受け、並びに天井材で構成される。一般的に、吊りボルトと野縁受けとはハンガーで接合され、野縁受けと野縁とはクリップで接合される。高い耐震性が要求される建物には、水平方向の振動を抑えるため、吊りボルト間に斜め方向に延びるブレース材が適宜配置される。例えば、以下の特許文献1~3では、このようなブレース材を備える吊り天井が提案されている。
【0003】
具体的には、特許文献1では、鉛直方向に延びる耐震圧縮支柱の両側に斜め方向に延びる一対のブレースワイヤーを配置した構造が提案されている。特許文献2では、野縁と野縁受けとを格子状に配置し、野縁から上方斜めに延びるブレース材の上端部と野縁受けから上方斜めに延びるブレース材の上端部とを、鉛直方向に延びる吊りボルトの上端部で連結する構造が提案されている。特許文献3では、鉛直方向に延びる吊りボルトに対して、斜め方向に延びる方杖部材を配置する構造が提案されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2004-076433号公報
【特許文献2】特開2015-081496号公報
【特許文献3】特開2015-090001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の吊り天井は、安価で、かつ容易に施工可能である。しかしながら、従来の吊り天井は、吊りボルトが細長い部材であるため、水平方向に振動しやすく、かつ、鉛直方向の振動に対して吊りボルトが座屈すると、振動に対する挙動が不安定になってしまう。そのため、従来の吊り天井は、耐震性が低く、東日本大震災のような大きな地震が起きると、落下してしまう可能性が高いという問題点を有していた。
【0006】
これに対して、上記のようなブレース材を多数配置することで、吊り天井の耐震性を高めることができる。しかしながら、この方法では、上記の問題点の根本的な解決にはならないため、吊り天井の落下を完全に防止することはできない。それにも関わらず、ブレース材を設置する分だけコストが増加してしまうという問題点があった。また、吊り天井は高い場所に設置されているため、既に設置してある吊り天井にブレース材を追加する作業の施工性が悪いという問題点があった。
【0007】
本発明は、一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、地震時の水平方向の振動を有効に抑えることのできる安価な吊り天井を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0009】
すなわち、本発明の一側面に係る吊り天井は、天井部と、上部構造から鉛直方向に対して斜めに延び、前記天井部を吊り下げ支持する複数本のケーブル材と、を備え、前記複数本のケーブル材は、前記各ケーブル材から前記天井部に作用する張力が水平方向につり合うように配置される。
【0010】
上記構成では、天井部を吊り下げ支持する複数本のケーブル材が、鉛直方向に対して斜めに延び、かつ、天井部に作用する張力が水平方向につり合うように配置される。すなわち、自重下では、各ケーブル材は、天井部を支えるために常に緊張した状態になり、これによって、天井部は、各ケーブル材から水平方向の張力を受ける状態になる。そのため、天井部が地震等によって水平方向に振動しようとしても、斜め方向に緊張した各ケーブル材のブレース効果よって、当該水平方向の振動を抑制することができる。つまり、自重下において各ケーブル材の張力が消失しない限りは、従来のブレース材と同様の振動抑制効果を期待することができる。
【0011】
また、上記構成では、複数本のケーブル材は、鉛直方向に対して斜めに延び、かつ、天井部に作用する張力が水平方向につり合うように配置されるため、鉛直方向に延びる吊りボルトを複数本配置した従来の構成とは異なり、その全てが同一方向を向くことはない。そのため、各ケーブル材の水平方向の振動は不連続となり、天井部の水平方向の振動を増幅させることはなく、これによっても、天井部の水平方向の振動を抑制することができる。
【0012】
したがって、上記構成によれば、鉛直方向に対して斜めに延びる複数本のケーブル材で天井部を吊り下げるという簡易な構成にも関わらず、天井部の水平方向の振動を十分に抑えることができる。よって、地震時の水平方向の振動を有効に抑えることのできる安価な吊り天井を提供することができる。
【0013】
また、上記一側面に係る吊り天井の別の形態として、上記吊り天井は、4本以上の偶数本の前記ケーブル材を備えてもよく、前記偶数本のケーブル材は、それぞれ一対のケーブル材を一組として、前記天井部を吊り下げ支持する複数の支持構造部を構成してもよい。そして、前記各支持構造部を構成する前記一対のケーブル材は、前記天井部に作用する張力が水平方向に互いにつり合うように配置されてもよく、前記複数の支持構造部は、前記一対のケーブル材の張力のつり合いが複数方向で形成されるように配置されてもよい。当該構成では、支持構造部単位で、ケーブル材の張力のつり合いが形成される。そのため、天井部を適切に支持するのに、支持構造部単位でケーブル材の配置を検討すればよい。すなわち、個々の単位でケーブル材の配置を検討しなくてもよい。したがって、当該構成によれば、ケーブル材の配置の設計が容易になる。また、当該構成では、複数の支持構造部が、一対のケーブル材のつり合いが複数方向で形成されるように配置されるため、天井部は、複数方向に張力の作用を受けた状態で支持される。この各方向に作用する張力によって、天井部の各方向の振動を抑えることができる。よって、当該構成によれば、複数方向の振動を有効に抑えることのできる吊り天井を提供することができる。
【0014】
また、上記一側面に係る吊り天井の別の形態として、前記複数の支持構造部の少なくとも一部において、前記一対のケーブル材は、互いに交差するように配置されてよい。当該構成によれば、施工性の高い吊り天井を提供することができる。
【0015】
また、上記一側面に係る吊り天井の別の形態として、前記複数の支持構造部の少なくとも一部において、前記一対のケーブル材は、上端部側又は下端部側で連結するように配置されてよい。当該構成によれば、施工性の高い吊り天井を提供することができる。
【0016】
また、上記一側面に係る吊り天井の別の形態として、前記複数方向それぞれに沿って前記一対のケーブル材の張力のつり合いを形成する前記支持構造部の数は同数であってよく、前記複数の支持構造部は、前記天井部の中心に対して対称的に配置されてよい。当該構成では、各方向の支持構造部の数が同数であり、その複数の支持構造部は天井部の中心に対して対称的に配置されるため、天井部は、各方向に均等に支持される。これによって、天井部を支持する力が偏ることがなく、各方向への振動を同程度に低減することができるため、各方向に均等に耐震性の高い吊り天井を実現することができる。
【0017】
また、上記一側面に係る吊り天井の別の形態として、上記吊り天井は、前記天井部の上方向への変動を制限する補助ケーブルを更に備えてもよい。上記構成では、各ケーブル材は、鉛直方向に対して斜めに延びるため、鉛直方向に延びる従来の吊りボルトとは異なり、天井部の鉛直方向の振動を有効に抑えることができない可能性がある。これに対して、当該構成では、補助ケーブルによって、天井部の鉛直方向の振動を抑えることができる。よって、当該構成によれば、耐震性の極めて高い吊り天井を提供することができる。
【0018】
また、上記一側面に係る吊り天井の別の形態として、前記補助ケーブルの上端部が前記天井部に連結し、前記補助ケーブルの下端部が、建物の壁又は柱の前記天井部より下方の部分に連結することで、前記補助ケーブルは、前記天井部の上方向への変動を制限してもよい。当該構成によれば、天井部と室内側の壁又は柱とを補助ケーブルで連結するという簡易な施工で、吊り天井の耐震性を高めることができる。
【0019】
また、上記一側面に係る吊り天井の別の形態として、前記補助ケーブルは、前記天井部の上方で前記天井部に接触可能に配置され、前記補助ケーブルに張力を導入するように、前記補助ケーブルの両端部が建物の壁又は柱に連結されることで、前記天井部の上方向への変動を制限してもよい。補助ケーブルが室内側に現れると、吊り天井の見栄えが損なわれてしまう可能性がある。これに対して、当該構成では、室内側からみて、補助ケーブルは、天井部の裏側に配置される。そのため、見栄えを損なうことなく、吊り天井の耐震性を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地震時の水平方向の振動を有効に抑えることのできる安価な吊り天井を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施の形態に係る吊り天井を模式的に例示する。
【図2】図2は、実施の形態に係る吊り天井の支持構造部を模式的に例示する。
【図3】図3は、他の形態に係る吊り天井を模式的に例示する。
【図4A】図4Aは、図3の実線で示された支持構造部(ケーブル材)の配置を模式的に例示する平面図である。
【図4B】図4Bは、図3の点線で示された支持構造部(ケーブル材)の配置を模式的に例示する平面図である。
【図5】図5は、他の形態に係る吊り天井を模式的に例示する。
【図6】図6は、他の形態に係る吊り天井を模式的に例示する。
【図7】図7は、他の形態に係る吊り天井を模式的に例示する。
【図8】図8は、実施例に係る吊り天井の構造を示す。
【図9】図9は、比較例に係る吊り天井の構造を示す。
【図10】図10は、比較例に係る吊り天井の構造を示す。
【図11A】図11Aは、1995年兵庫県南部地震波に対する実施例の水平方向の変位のシミュレーション結果を示す。
【図11B】図11Bは、2011年東北地方太平洋沖地震波に対する実施例の水平方向の変位のシミュレーション結果を示す。
【図12A】図12Aは、1995年兵庫県南部地震波に対する変形例(図9)の水平方向の変位のシミュレーション結果を示す。
【図12B】図12Bは、2011年東北地方太平洋沖地震波に対する変形例(図9)の水平方向の変位のシミュレーション結果を示す。
【図13A】図13Aは、1995年兵庫県南部地震波に対する変形例(図10)の水平方向の変位のシミュレーション結果を示す。
【図13B】図13Bは、2011年東北地方太平洋沖地震波に対する変形例(図10)の水平方向の変位のシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形が行われてもよい。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。

【0023】
§1 構成例
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態に係る吊り天井1を説明する。図1は、本実施形態に係る吊り天井1を模式的に例示する。また、図2は、本実施形態に係る吊り天井1の支持構造(後述する支持構造部3)を模式的に例示する。

【0024】
なお、図1では、説明の便宜のため、x軸、y軸、及びz軸を用いて各方向を例示している。ここで、z軸方向が鉛直方向に相当し、z軸方向の正の向きが鉛直上向きに相当する。また、xy平面は地面に対して水平な面に相当し、x軸方向及びy軸方向はそれぞれ地面に対して水平な方向に相当する。以下では、z軸正の方向及び負の方向をそれぞれ「上」及び「下」と称し、x軸正の方向及び負の方向をそれぞれ「前」及び「後」と称し、y軸正の方向及び負の方向をそれぞれ「右」及び「左」と称することとする。

【0025】
図1に例示されるように、本実施形態に係る吊り天井1は、天井面を構成する天井部2と、当該天井部2を吊り下げ支持する24本のケーブル材(31、32)と、天井部2の上方向への変動を制限するための補助ケーブル4と、を備えている。以下、各構成要素について説明する。

【0026】
(天井部)
まず、天井部2について説明する。図1に例示されるように、本実施形態では、天井部2は、10本の野縁21と、4本の野縁受け22と、天井材23と、で構成されている。

【0027】
野縁21及び野縁受け22は、それぞれ細長い部材であり、格子状に直交するように配置される。本実施形態では、野縁21は、前後方向に等間隔に整列しており、左右方向に沿って配置されている。また、野縁受け22は、左右方向に等間隔に整列しており、前後方向に沿って配置されている。野縁21及び野縁受け22は、例えば、公知のクリップ等で接合され、天井の下地を構成する。

【0028】
野縁21の下側には、天井材23が適宜取り付けられる。本実施形態では、天井材23は、矩形の平板状に形成されており、天井材23の下側の面が建物内の天井面になる。この天井材23は、例えば、複数枚の板材で構成される。

【0029】
なお、各構成要素の材料は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、野縁21及び野縁受け22は、プラスチック製、繊維強化プラスチック製、木製であってもよいし、金属製であってもよい。また、天井材23を構成する板材として、グラスウール、発泡スチロール、膜材、石膏ボード、PC(プレキャストコンクリート)板等が用いられてもよい。

【0030】
(ケーブル材)
次に、上記天井部2を吊り下げ支持する各ケーブル材(31、32)について説明する。図1及び図2に例示されるように、各ケーブル材(31、32)は、接合部33において建物の上部構造5に上端部が定着されており、当該上部構造5から鉛直方向(図のz軸方向)に対して斜めに延びている。上部構造5は、例えば、建物の屋根等である。そして、各ケーブル材(31、32)の下端部は、接合部34において、天井部2(例えば、野縁受け22)に定着されている。これによって、本実施形態では、各ケーブル材(31、32)は、鉛直方向に延びる従来の吊りボルトを用いることなく、天井部2を吊り下げ支持している。

【0031】
ケーブル材(31、32)は、各ケーブル材(31、32)から天井部2に作用する張力が水平方向につり合うように配置される。具体的に、本実施形態では、24本のケーブル材(31、32)は、それぞれ隣接する一対(2本)のケーブル材(31、32)を一組として、天井部2を吊り下げ支持する12組の支持構造部3を構成している。各ケーブル材の符号を「31」「32」とで区別しているのは、この支持構造部3の組み合わせを示すためであり、同一のケーブル材を用いることを排除するためではない。

【0032】
本実施形態では、図2に例示されるように、各支持構造部3において、隣接する一対のケーブル材(31、32)は、互いに交差するように配置されている。これにより、ケーブル材31から天井部2に作用する張力の水平成分H1と、ケーブル材32から天井部2に作用する張力の水平成分H2と、がつり合っている。なお、天井部2は、各ケーブル材(31、32)から天井部2に作用する張力の鉛直成分Vにより吊り下げ支持される。

【0033】
本実施形態では、このような支持構造部3が12組設けられている。そして、これら12組の支持構造部3は、天井部2の周縁部を構成する各端部に沿って3組ずつ等間隔に配置されている。具体的には、図1に示されるように、最右列の野縁受け22、最左列の野縁受け22、最前列の野縁21、及び最後列の野縁21それぞれに沿って、3組の支持構造部3が等間隔に配置されている。これによって、12組の支持構造部3は、天井部2の中心に対して対称的に配置されている。

【0034】
また、このような配置により、支持構造部3における一対のケーブル材(31、32)の張力のつり合いが、前後方向(x軸方向)及び左右方向(y軸方向)の2方向で形成されている。具体的には、最右列及び最左列の野縁受け22に沿って配置された合計6組の支持構造部3が前後方向に沿って張力のつり合いを形成している。同様に、最前列及び最後列の野縁21に沿って配置された合計6組の支持構造部3が左右方向に沿って張力のつり合いを形成している。すなわち、本実施形態では、図2に示される張力のつり合いは、前後方向及び左右方向の2方向のいずれかに沿って形成される。加えて、本実施形態では、当該2方向それぞれに沿って張力のつり合いを形成する支持構造部3の数が6組ずつで同数になっている。

【0035】
なお、接合部33及び34における各ケーブル材(31、32)の定着方式は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、各ケーブル材(31、32)の定着方式として、ソケット止め、圧縮止め、アイ圧縮止め、クリップ止め、くさび止め、摩擦止め等が採用されてよい。

【0036】
また、各ケーブル材(31、32)の材料は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、各ケーブル材(31、32)として、構造用ストランドロープ、構造用スパイラルロープ、構造用ロックドコイルロープ、平行線ストランド、被覆平行線ストランド、PC鋼より線等が用いられてもよい。

【0037】
(補助ケーブル)
次に、補助ケーブル4について説明する。図1に例示されるように、本実施形態では、補助ケーブル4の上端部は、天井部2に連結している。例えば、補助ケーブル4の上端部は、天井材23の下面、側面、上面等の面に定着される。また、補助ケーブル4の下端部は、建物の壁又は柱の天井部2より下方の部分に連結している。例えば、補助ケーブル4の下端部は、建物の壁又は柱の側面6の天井部2より下方の位置に定着される。

【0038】
これによって、補助ケーブル4は、天井部2の上方向への変動を制限することができる。すなわち、補助ケーブル4に初期張力を導入しているか否かに関わらず、天井部2が上方向に変動しようとすると、天井部2と側面6とを連結する補助ケーブル4に張力が導入される。補助ケーブル4は、この張力により、天井部2の上方向への変動を制限することができる。

【0039】
なお、補助ケーブル4の各端部を天井材23及び側面6に定着する方式は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、補助ケーブル4の定着方式として、上記各ケーブル材(31、32)と同様に、ソケット止め、圧縮止め、アイ圧縮止め、クリップ止め、くさび止め、摩擦止め等が採用されてよい。

【0040】
また、補助ケーブル4の材料は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、補助ケーブル4として、上記各ケーブル材(31、32)と同様に、構造用ストランドロープ、構造用スパイラルロープ、構造用ロックドコイルロープ、平行線ストランド、被覆平行線ストランド、PC鋼より線等が用いられてもよい。

【0041】
(作製方法)
次に、本実施形態に係る吊り天井1の作製方法について説明する。上記構成に係る吊り天井1は、適宜、公知の吊り天井の施工方法とほぼ同様の施工方法で作製することができる。例えば、以下の手順により、吊り天井1を作製することができる。

【0042】
まず、各ケーブル材(31、32)の上端部を上部構造5に取り付ける。次に、各ケーブル材(31、32)の下端部側に野縁受け22を取り付ける。このとき、図1及び図2に例示されるように、各ケーブル材(31、32)が鉛直方向に対して所望の角度で傾斜するようにする。そして、公知の吊り天井の施工方法と同様に、野縁受け22に野縁21を取り付け、野縁21に天井材23を取り付ける。これによって、本実施形態に係る吊り天井1を作製することができる。

【0043】
その他の作製方法として、例えば、まず、鉛直方向に延びる複数本の仮設用のケーブル材(以下、「吊りケーブル」と称する)の上端部を上部構造5に取り付ける。次に、各吊りケーブルの下端部側に野縁受け22を取り付ける。次に、公知の吊り天井の施工方法と同様に、野縁受け22に野縁21を取り付け、野縁21に天井材23を取り付ける。そして、図1及び図2に例示されるように、各ケーブル材(31、32)が鉛直方向に対して所望の角度で傾斜するようにして、各ケーブル材(31、32)の上端部を上部構造5に取り付け、各ケーブル材(31、32)の下端部を野縁受け22に取り付ける。最後に、各吊りケーブルを撤去する。これによって、本実施形態に係る吊り天井1を作製することができる。

【0044】
§2 特徴
以上のとおり、本実施形態に係る吊り天井1では、天井部2を吊り下げ支持する24本のケーブル材(31、32)が、鉛直方向に対して斜めに延び、これによって、天井部2に作用する張力が水平方向につり合うように構成される。すなわち、自重下では、各ケーブル材(31、32)は、天井部2を支えるために常に緊張した状態になり、これにより、天井部2は、各ケーブル材(31、32)から水平方向の張力を受ける。そして、この各ケーブル材(31、32)から受ける張力は、前後方向(図1のx軸方向)及び左右方向(図1のy軸方向)でつり合っている。

【0045】
そのため、天井部2が地震等によって水平方向に振動しようとしても、斜め方向に緊張した各ケーブル材(31、32)の剛性によって、当該天井部2の水平方向の振動を抑制することができる。つまり、自重化において各ケーブル材(31、32)の張力が消失しない限りは、従来のブレース材と同様の振動抑制効果を期待することができる。

【0046】
また、上記構成では、24本のケーブル材(31、32)は、鉛直方向に対して斜めに延び、かつ、天井部2に作用する張力が水平方向につり合うように配置されるため、鉛直方向に延びる吊りボルトを配置した従来の構成とは異なり、その全てが同一方向を向くことはない。例えば、各支持構造部3内で、ケーブル材31とケーブル材32とは異なる方向に延びている。そのため、各ケーブル材(31、32)の水平方向の振動は不連続となり、天井部2の水平方向を増幅させることはない。本実施形態によれば、このような各ケーブル材(31、32)間の傾きの相違によっても、天井部2の水平方向の振動を抑制することができる。

【0047】
したがって、本実施形態によれば、鉛直方向に対して斜めに延びる24本のケーブル材(31、32)で天井部2を吊り下げるという簡易な構成にも関わらず、天井部2の水平方向の振動を十分に抑えることができる。よって、本実施形態に係る吊り天井1は、安価に施行することができ、かつ、地震時の水平方向の振動を有効に抑えることができる。

【0048】
また、本実施形態では、ケーブル材(31、32)の張力のつり合いを支持構造部3単位で形成している。そのため、ケーブル材(31、32)の配置を設計する際に、個々の単位で、各ケーブル材(31、32)の張力のつり合いを考慮しなくてもよく、支持構造部3単位で各ケーブル材(31、32)の配置を決定すればよい.よって、本実施形態に係る吊り天井1は高い施行性を有する。

【0049】
また、本実施形態では、各支持構造部3における一対のケーブル材(31、32)のつり合いが前後方向及び左右方向に沿って形成されている。すなわち、天井部2は、各ケーブル材(31、32)から左右方向及び前後方向に張力の作用を受けた状態で支持される。したがって、本実施形態に係る吊り天井1は、この各ケーブル材(31、32)から前後方向及び左右方向に作用する張力によって、天井部2の前後方向及び左右方向の振動を有効に抑えることができる。

【0050】
また、上記実施形態に係る吊り天井1では、前後方向及び左右方向それぞれに沿って張力のつり合いを形成する支持構造部3が6組ずつで同数である。そして、合計12組の支持構造部3は、天井部2の中心に対して対照的に配置されている。そのため、本実施形態に係る吊り天井1では、各支持構造部3によって、天井部2を前後方向及び左右方向に均等に吊り下げ支持することができる。よって、本実施形態では、天井部2を支持する力が偏ることなく、前後方向及び左右方向それぞれへの振動を同程度に低減することができる。すなわち、本実施形態に係る吊り天井1は、各方向に均等に高い耐震性を有する。

【0051】
また、鉛直方向に対して斜めに延びる各ケーブル材(31、32)で天井部2を吊り下げ支持する構成では、鉛直方向に延びる吊りボトルで支持する従来の構成とは異なり、天井部2の鉛直方向の振動を有効に抑えることができない可能性がある。これに対して、本実施形態では、補助ケーブル4によって、天井部2の鉛直方向の振動を抑えることができる。そのため、本実施形態に係る吊り天井1は、水平方向及び鉛直方向の振動に強い、すなわち、極めて高い耐震性を有する。

【0052】
また、この補助ケーブル4は、天井材23の上方向への変形も低減することができる。すなわち、天井材23を上方向に変形させるような外力が当該天井材23に作用したときには、当該外力とは反対方向の張力が補助ケーブル4から天井部2に作用する。これによって、天井材23は、自身の曲げ剛性だけではなく、補助ケーブル4からの張力によっても、上方向への変形に抵抗することができる。よって、補助ケーブル4を設けることにより、天井材23が上方向に変形するのを抑えることができる。

【0053】
また、本実施形態では、補助ケーブル4は、天井部2と室内側の側面6とを連結しているに過ぎない。特に、天井部2の室内側の面(例えば、天井面を構成する下面)と側面6とを連結するのであれば、天井部2の上方の空間にアクセスすることなく、室内側のみでその作業を行うことができる。そのため、補助ケーブル4の設置は、非常に簡単に施行可能である。したがって、本実施形態によれば、非常に簡単な施行で、耐震性及び耐変形性を高めることができる。

【0054】
§3 変形例
以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。また、上記吊り天井1の各構成要素に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換、及び追加が行われてもよい。上記吊り天井1の各構成要素の形状及び大きさは、実施の形態に応じて、適宜設定されてもよい。例えば、以下の変更が可能である。なお、以下で説明する変形例では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、適宜説明を省略した。

【0055】
<3.1>
例えば、天井部2の構成は、上記実施形態の例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換、及び追加が行われてもよい。一例を挙げると、野縁21及び野縁受け22の本数及び向きは実施の形態に応じて適宜変更されてよい。また、天井材23の形状は、平板状に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて選択されてよい。天井材23は、例えば、ドーム状等のように湾曲していてもよい(後述する図7)。また、上記実施形態では、天井部2は、野縁21、野縁受け22、及び天井材23で構成されている。しかしながら、天井部2の構成は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。更に、上記実施形態では、野縁21及び野縁受け22は、公知のクリップ(不図示)で接合される。しかしながら、野縁21及び野縁受け22を接合する方法は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。

【0056】
<3.2>
また、例えば、上記実施形態では、24本のケーブル材(31、32)が用いられている。しかしながら、ケーブル材の本数は、複数本であれば、このような例に限られなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。

【0057】
また、例えば、上記実施形態では、24本のケーブル材(31、32)が12組の支持構造部3を構成している。しかしながら、このような形態に限られなくてもよく、一対(2本)のケーブル材で支持構造部を構成していなくてもよい。すなわち、3本以上のケーブル材で水平方向の張力のつり合いが形成されていてもよい。

【0058】
一方で、一対のケーブル材で支持構造部を構成する場合には、4本以上の偶数本(2n;nは2以上の整数)のケーブル材を用いるのが好ましい。これにより、複数(n)の支持構造部を構成することができる。また、複数の支持構造部を構成することで、各支持構造部における一対のケーブル材の張力のつり合いを複数方向で形成することができ、これによって、本実施形態と同様に、高い耐震性を有する吊り天井を実現することができる。

【0059】
なお、本実施形態では、一対のケーブル材(31、32)の張力のつり合いが前後方向及び左右方向の2方向に形成されている。しかしながら、一対のケーブル材(31、32)の張力のつり合いが向く方向の数は、2方向に限定されなくてもよく、3方向以上であってもよい。例えば、図3、図4A及び図4Bのような変形が可能である。

【0060】
図3は、本変形例に係る吊り天井1Aを模式的に例示する。図3では、説明の便宜のため、ケーブル材を実線と点線とに分けて表示している。図4Aは、このうち実線で示される支持構造部(ケーブル材)の配置を模式的に例示する平面図である。また、図4Bは、点線で示される支持構造部(ケーブル材)の配置を模式的に例示する平面図である。なお、図4A及び図4Bでは、各ケーブル材(31A~31D、32A~32D)の定着先が分かるように、上部構造5に定着される端部を丸印で表現し、天井部2に定着される端部を三角印で表現している。

【0061】
本変形例では、32本のケーブル材(31A~31D、32A~32D)が、一対のケーブル材(31A~31D、32A~32D)を一組として、16組の支持構造部3A~3Dを構成している。16組の支持構造部3A~3Dは、張力のつり合いを形成する方向の違いにより、4組ずつに分けることができる。なお、支持構造部の符号を3A~3Dに分けているのは、このような張力のつり合いを形成する方向の違いを示すためである。

【0062】
具体的には、4組の支持構造部3Aは、前後方向(x軸方向、図中の方向BA)に沿って一対のケーブル材(31A、32A)の張力のつり合いを形成する。また、4組の支持構造部3Bは、左右方向(y軸方向、図中の方向BB)に沿って一対のケーブル材(31B、32B)の張力のつり合いを形成する。これらの支持構造部(3A、3B)では、一対のケーブル材(31A・31B、32A・32B)は、互いに交差するように配置される。

【0063】
一方、4組の支持構造部3Cは、方向BCに沿って一対のケーブル材(31C、32C)の張力のつり合いを形成する。方向BCは、右前方角から左後方角に延びる斜め方向である。前後方向(x軸方向)が北?南を示す方向であるとすると、方向BCは、北東?南西を示す方向に相当する。

【0064】
また、4組の支持構造部3Dは、方向BDに沿って一対のケーブル材(31D、32D)の張力のつり合いを形成する。方向BDは、右後方角から左前方角に延びる斜め方向である。前後方向(x軸方向)が北?南を示す方向であるとすると、方向BDは、南東?北西を示す方向に相応する。

【0065】
方向BCと方向BDとは、互いに直行している。また、各支持構造部(3C、3D)では、実線で示された一対のケーブル材(31C・31D、32C・32D)は、上端部側で連結するように配置されている。これに対して、点線で示された一対のケーブル材(31C・31D、32C・32D)は、下端部側で連結するように配置されている。

【0066】
このように、複数の支持構造部の少なくとも一部において、一対のケーブル材が互いに交差するように配置されてよい。同様に、複数の支持構造部の少なくとも一部において、一対のケーブル材が上端部側又は下端部側で連結するように配置されてよい。支持構造部における一対のケーブル材の配置は、実施の形態に応じて適宜選択可能である。

【0067】
本変形例では、図4A及び図4Bに示されるとおり、16組の支持構造部3A~3Dが天井部2の中央の周りに等間隔に分割して配置されている。具体的には、4組の支持構造部3Aは、天井部2の四隅に、野縁受け22に沿って配置されている。同様に、4組の支持構造部3Bは、天井部2の四隅に、野縁21に沿って配置されている。一方、それぞれ4組の支持構造部(3C、3D)は、隣接する支持構造部(3A、3B)の間に配置されている。これによって、16組の支持構造部3A~3Dは、天井部2の中心に対して対称的に配置されている。

【0068】
また、本変形例では、一対のケーブル材による張力のつり合いが、4方向BA~BDのいずれかに沿って形成される。加えて、本変形例では、当該4方向BA~BDそれぞれに沿って張力のつり合いを形成する支持構造部の数が4組ずつで同数になっている。更に、各方向BA~BDは、45度間隔で等間隔に傾いている。これによって、本変形例に係る吊り天井1Aは、天井部2の水平方向の振動を十分に抑えることができ、極めて高い耐震性を有することができる。

【0069】
なお、上記実施形態及び本変形例では、各方向に沿って張力のつり合いを形成する支持構造部3(3A~3D)の数は同数であり、各支持構造部3(3A~3D)は、天井部2の中心に対して対称的に配置されている。しかしながら、各方向に沿って張力のつり合いを形成する支持構造部の数は、実施の形態に応じて適宜選択されてよく、同数でなくてもよい。更に、各支持構造部は、天井部2の中心に対して対称的に配置されていなくてもよい。

【0070】
また、上記実施形態及び本変形例では、天井部2を支持する構成として、鉛直方向に延びる従来の吊りボルトは一切利用されていない。しかしながら、主の構成として用いないのであれば、上部構造5と天井部2とを鉛直方向に連結するケーブル材、ボルト材が部分的に用いられてもよい。

【0071】
<3.3>
また、上記実施形態及び変形例では、天井部2に作用する水平方向の張力のつり合いを考慮した上で、隣接する一対のケーブル材(31、32)(31A~31D、32A~32D)を一組の支持構造部3(3A~3D)として捉えている。しかしながら、支持構造部を構成するケーブル材の組み合わせの捉え方は、このような例に限られなくてもよい。

【0072】
例えば、天井部2の右前方の角近傍に作用するケーブル材31と左前方の角前方に作用するケーブル材32とを一組の支持構造部として捉えてもよい。また、例えば、実線で表示されたケーブル材31C(31D、32C、32D)と点線で表示されたケーブル材31C(31D、32C、32D)とで一組の支持構造部を構成していると捉えてもよい。
すなわち、支持構造部内の一対のケーブル材の配置は、天井部に作用する水平方向の張力がつり合っていれば、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。

【0073】
また、上記実施形態及び変形例では、各ケーブル材(31、32)は別体としている。しかしながら、隣接するケーブル材は、一体形成されていてもよい。このような一体形成のケーブル材を含む場合には、上部構造5から天井部2へ延びる一辺を構成する部分を「1本のケーブル材」とみなす。この場合、ケーブル材の見かけ上の本数と真の本数とは相違するが、上述のケーブル材の本数に関する条件はこのうち見かけ上の本数に対応している。

【0074】
なお、上記実施形態及び変形例のように、各支持構造部において、一対のケーブル材を、互いに交差する又は上端部側若しくは下端部側で連結するように配置することで、次のような効果を期待することができる。すなわち、一対のケーブル材をこのように配置することで、各ケーブル材は互いに近接して配置される。そのため、各ケーブル材の角度を調節する際、及び各ケーブル材の張り方を変更する際に、天井部に与える影響(振動)を低減することができる。また、天井材23の変形を低減することができる。更に、天井部2を吊り下げる際に各ケーブル材に作用する荷重負担を低減することができる。

【0075】
<3.4>
また、上記実施形態では、天井部2の鉛直方向の振動を抑えるため、補助ケーブル4が用いられている。この補助ケーブル4は省略されてもよい。また、補助ケーブル4を用いる場合、天井部2の上方向への変動を制限可能であれば、補助ケーブル4の本数及び配置は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、図5~図7に示す変形が可能である。

【0076】
図5は、複数本の補助ケーブル4を用いる変形例を示す。本変形例に係る吊り天井1Bでは、2本の補助ケーブル4が、左右対称に配置されており、天井部2と建物の側面6とを連結している。このように、2本の補助ケーブル4を対称的に配置することで、天井部2の上方向への変動を左右均等に制限することができる。なお、左右対称に配置する補助ケーブル4の数は、このような例に限定されなくてもよく、4本以上であってもよい。また、複数の補助ケーブル4は、前後方向にも対称的に配置されてもよい。

【0077】
また、図6及び図7は、補助ケーブル4の配置の変形例を示す。図6に示される吊り天井1Cでは、補助ケーブル4Cは、天井部2の上方で当該天井部2に接触可能に配置され、補助ケーブル4Cに初期張力を導入するように、当該補助ケーブル4Cの両端部が建物の壁又は柱の側面6に連結される。これによって、補助ケーブル4Cは、天井部2の上方に張り渡されるため、天井部2の上方向への変動を制限することができる。また、図7に示される吊り天井1Dでは、天井部2Dが湾曲している。このような湾曲した天井部2Dについても、補助ケーブル4Dを、上記補助ケーブル4Cと同様に配置することで、当該天井部2Dの上方向への変動を有効に制限することができる。

【0078】
上記実施形態では、補助ケーブル4が室内側に露出しているため、吊り天井1の見栄えが損なわれてしまう可能性がある。これに対して、本変形例によれば、各補助ケーブル(4C、4D)は、室内側からみて、天井部2(2D)の裏側に配置される。そのため、本変形例に係る吊り天井(1C、1D)は、見栄えを損なうことなく、高い耐震性を有することができる。

【0079】
また、図6の例では、補助ケーブル4Cに水平方向の初期張力を導入することにより、鉛直方向の変形に対する補助ケーブル4Cの剛性を高めることができる。そのため、この補助ケーブル4Cの作用により、天井部2の鉛直方向の変形を低減することができる。更に、図7の例では、各ケーブル材には、天井部2Dの自重に加えて、補助ケーブル4Dの初期張力の分だけ、鉛直方向に張力が導入される。そのため、この例では、天井部2Dが上方向に変形することで、各ケーブル材の張力が消失し、各ケーブル材の振動抑制効果が損なわれてしまうのを防止することができる。

【0080】
<3.5>
なお、上記実施形態及び変形例では、鉛直方向に対して斜めに延びる複数本のケーブル材によって対象物(天井部)を吊り下げ支持する構成を吊り天井に適用している。しかしながら、この構成を適用可能な構造物は吊り天井に限られず、対象物を吊り下げるあらゆる構造物に本構成を適用可能である。例えば、上記実施形態及び変形例において、天井部を床部に置き換えることで、吊り床を構成することができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定される訳ではない。
【実施例】
【0082】
本発明の吊り天井が地震時の水平方向の振動を有効に抑えることができることを証明するために、図8~図10に示す実施例、比較例1及び比較例2のモデルを作成し、地震応答のシミュレーションを行った。
【実施例】
【0083】
(実施例及び比較例)
まず、図8に例示されるように、実施例の構成は、上記変形例に係る吊り天井1Aと同様とした。各構成要素の条件は、次のとおりである。
・ケーブル材:断面積47.5mm2
・ケーブル材の引張剛性:140,000N/mm2
・ケーブル材の圧縮剛性:上記引張剛性の1/100倍(ケーブル材は、引張に比べて圧縮に対しては有効に作用しにくいため)
・各ケーブル材を天井部に接合する点の間隔:90cm
・上部構造と天井部との間の距離(鉛直方向の長さ):1.5m(これに適合するように、各ケーブル材の長さは適宜調節した)
・天井材:平面寸法;2.7m×2.7m、厚さ;9.5mm、質量;10kg/m2
【実施例】
【0084】
一方、図9に例示されるように、16本の吊りボルトで天井部を吊り下げ支持した吊り天井を比較例1とした。なお、吊りボルトの条件は実施例のケーブル材の条件と同様とし、比較例1の天井部の条件は実施例の天井部の条件と同様とした。各吊りボルトの設置間隔は、上記各ケーブル材を天井部に接合する点の間隔と同様に、90cmに設定した。また、各吊りボルトの長さは、上記上部構造と天井部との間の距離(鉛直方向の長さ)に合わせて1.5mに設定した。
【実施例】
【0085】
また、図10に例示されるように、比較例1の吊り天井において、最前列中央及び最後列中央に配置された2本の吊りボルトの間にそれぞれブレース材を配置し、比較例2とした。ブレース材の断面は一般的なチャンネル材CC-19型と同じとし、その断面積は71.5mm2とした。また、ブレース材の圧縮剛性及び引張剛性は、通常の鋼材と同じく、2.05×1011N/mm2とした。更に、ブレース材の傾斜角度は約59度とし、ブレース材の長さは約1.75mとした。
【実施例】
【0086】
(シミュレーション条件)
汎用の構造解析ソフト(製品名:NX NASTRAN)を利用し、上記作成した実施例及び各比較例(1、2)の吊り元に対して、図8~図10の矢印方向に地震波を入力し、当該地震波に対する実施例及び各比較例(1、2)の地震応答を解析した。入力する地震波として、1995年兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)の神戸海洋気象台で観測された地震波(JMA Kobe 1995 NS波)、及び2011年東北地方太平洋沖地震の岩手県大船渡市で観測された地震波の2種類の地震波を採用した。なお、時刻歴応答解析の手法は直接過渡応答解析とし、解析の時間間隔は0.01秒とした。
【実施例】
【0087】
(結果)
図11A及び図11Bは、各地震波に対する実施例の地震応答のシミュレーション結果を示す。図12A及び図12Bは、各地震波に対する比較例1の地震応答のシミュレーション結果を示す。図13A及び図13Bは、各地震波に対する比較例2の地震応答のシミュレーション結果を示す。各図の縦軸は天井材の水平方向の変位を示し、横軸は経過時間を示す。
【実施例】
【0088】
図12Aに示されるとおり、ブレース材を設けていない比較例1では、1995年兵庫県南部地震の地震波に対して500mm程度の大きな水平方向の変位が生じた。また、図12Bに示されるとおり、2011年東北地方太平洋沖地震の地震波に対して90mm程度の大きな水平方向の変位が生じた。更に、これらの変位は、比較的長い時間継続的に生じた。
【実施例】
【0089】
一方、図13Aに示されるとおり、ブレース材を設けた比較例2では、1995年兵庫県南部地震の地震波に対して0.2~0.3mm程度まで水平方向の変位を抑えることができた。また、2011年東北地方太平洋沖地震の地震波に対しても、0.3mm程度まで水平方向の変位を抑えることができた。しかしながら、比較例2では、これらの変位は、比較例1と同様に、比較的長い時間継続的な振動が生じていた。
【実施例】
【0090】
これに対して、図11A及び図11Bに示されるとおり、本実施例では、それぞれの地震波に対して、水平方向の変位が殆ど生じなかった。特に、図11Bに示されるとおり、本実施例は、2011年東北地方太平洋沖地震の地震波に対して、0.05mm程度の変位が一瞬生じるだけで、ほぼ水平方向に変位しなかった。一方、図11Aに示されるとおり、本実施例は、1995年兵庫県南部地震の地震波に対して、0.9mm及び0.3mm程度の変位が一瞬だけ生じた。しかしながら、1995年兵庫県南部地震の地震波に対しても、それ以外の時間帯では、本実施例は、ほぼ水平方向に変位しなかった。したがって、本発明によれば、地震時の水平方向の振動を有効に抑えることができることが分かった。
【実施例】
【0091】
なお、本実施例において、1995年兵庫県南部地震の地震波に対する一瞬の変位は、各ケーブル材の張力が消失したためと推測される。したがって、この変位は、上記補助ケーブル4を設けることで、有効に抑えることができるものと推測される。
【符号の説明】
【0092】
1…吊り天井、
2…天井部、21…野縁、22…野縁受け、23…天井材、
3…支持構造部、31・32…ケーブル材、33・34…接合部、
4…補助ケーブル、
5…上部構造、6…(柱又は壁の)側面
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4A】
3
【図4B】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11A】
11
【図11B】
12
【図12A】
13
【図12B】
14
【図13A】
15
【図13B】
16