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明細書 :高クロム鋼及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-160486 (P2017-160486A)
公開日 平成29年9月14日(2017.9.14)
発明の名称または考案の名称 高クロム鋼及びその製造方法
国際特許分類 C22C  38/00        (2006.01)
C22C  38/18        (2006.01)
C22C  27/06        (2006.01)
C22C   1/02        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
C22C  33/04        (2006.01)
B22F   3/105       (2006.01)
FI C22C 38/00 302Z
C22C 38/18
C22C 27/06
C22C 1/02 503F
B22F 1/00 A
C22C 33/04 L
C22C 33/04 B
B22F 3/105
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2016-045919 (P2016-045919)
出願日 平成28年3月9日(2016.3.9)
新規性喪失の例外の表示 申請有り
発明者または考案者 【氏名】恵良 秀則
出願人 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090697、【弁理士】、【氏名又は名称】中前 富士男
【識別番号】100176142、【弁理士】、【氏名又は名称】清井 洋平
【識別番号】100127155、【弁理士】、【氏名又は名称】来田 義弘
審査請求 未請求
テーマコード 4K018
Fターム 4K018AA24
4K018AA32
4K018AA40
4K018BA14
4K018BA16
4K018BA20
4K018BB04
4K018CA44
4K018DA23
要約 【課題】加工性が確保された耐食性に優れる高クロム鋼及びその製造方法を提供する。
【解決手段】当該高クロム鋼は、Crを25~99質量%、Oを0.0001~1質量%、Oを除く不可避的不純物を0.05質量%以下含有し、残部がFeである。そして、その製造方法は、Crを25~99質量%含み、Oの含有率を1質量%以下、Oを除く不可避的不純物の含有率を0.05質量%以下にそれぞれ抑え、残部がFeである粉体群11を容器10に収容する工程と、粉体群11を、容器10に接触している部分を残して溶解する工程と、粉体群11の溶解した部分を固化して高クロム鋼を得る工程とを有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
Crを25~99質量%、Oを0.0001~1質量%、Oを除く不可避的不純物を0.05質量%以下含有し、残部がFeであることを特徴とする高クロム鋼。
【請求項2】
請求項1記載の高クロム鋼において、Crの含有率が35質量%以上であることを特徴とする高クロム鋼。
【請求項3】
Crを25~99質量%含み、Oの含有率を1質量%以下、Oを除く不可避的不純物の含有率を0.05質量%以下にそれぞれ抑え、残部がFeである粉体群を容器に収容する工程と、
前記粉体群を、前記容器に接触している部分を残して溶解する工程と、
前記粉体群の溶解した部分を固化して高クロム鋼を得る工程とを有することを特徴とする高クロム鋼の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の高クロム鋼の製造方法において、前記粉体群は、Cr粉体及びFe粉体を混合してなることを特徴とする高クロム鋼の製造方法。
【請求項5】
Crを25~99質量%含み、Oの含有率を1質量%以下、Oを除く不可避的不純物の含有率を0.05質量%以下にそれぞれ抑え、残部がFeである固体の原材料を、内側に酸化鉄の層又は酸化クロムの層もしくはFe、Cr及びOからなる酸化物の層が設けられた炉内に収容する工程と、
前記炉内で前記原材料を溶解する工程と、
溶解した前記原材料を固化して高クロム鋼を得る工程とを有する高クロム鋼の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、クロム及び鉄を含有する高クロム鋼及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な製品や設備で用いられるステンレス鋼は、クロムの含有量を増加させることにより、耐食性が向上する反面、もろくなって加工性が低下することが知られている。そのため、ステンレス鋼におけるクロムの含有率は、従来、23質量%以下とされており、その具体例が、例えば特許文献1、2に記載されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2003-041351号公報
【特許文献2】特開2013-244492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、製品や設備の使用環境によっては、加工性が確保された上で、従来のステンレス鋼よりも耐食性に優れる合金が望まれていた。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、加工性が確保された耐食性に優れる高クロム鋼及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る高クロム鋼は、Crを25~99質量%、Oを0.0001~1質量%、Oを除く不可避的不純物を0.05質量%以下含有し、残部がFeである。
本願の発明者は、種々の検証を重ね、Oを除く不可避的不純物の含有率を0.05質量%以下に抑えることで、Crを25質量%以上含む高クロム鋼において、耐食性に加えて加工性が確保されることを確認した。また、当該高クロム鋼は、Oを1質量%含んでいても、加工性が確保されることも確認している。
【0006】
第1の発明に係る高クロム鋼において、Crの含有率が35質量%以上であるのが好ましい。
【0007】
前記目的に沿う第2の発明に係る高クロム鋼の製造方法は、Crを25~99質量%含み、Oの含有率を1質量%以下、Oを除く不可避的不純物の含有率を0.05質量%以下にそれぞれ抑え、残部がFeである粉体群を容器に収容する工程と、前記粉体群を、前記容器に接触している部分を残して溶解する工程と、前記粉体群の溶解した部分を固化して高クロム鋼を得る工程とを有する。
【0008】
第2の発明に係る高クロム鋼の製造方法において、前記粉体群は、Cr粉体及びFe粉体を混合してなるのが好ましい。
【0009】
前記目的に沿う第3の発明に係る高クロム鋼の製造方法は、Crを25~99質量%含み、Oの含有率を1質量%以下、Oを除く不可避的不純物の含有率を0.05質量%以下にそれぞれ抑え、残部がFeである固体の原材料を、内側に酸化鉄の層又は酸化クロムの層もしくはFe、Cr及びOからなる酸化物の層が設けられた炉内に収容する工程と、前記炉内で前記原材料を溶解する工程と、溶解した前記原材料を固化して高クロム鋼を得る工程とを有する。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係る高クロム鋼は、Oを除く不可避的不純物の含有率が0.05質量%以下であるので、加工性及び耐食性を確保することができる。また、第2、第3の発明に係る高クロム鋼の製造方法は、加工性及び耐食性を有する高クロム鋼を製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)、(B)は、本発明の第1の実施の形態に係る高クロム鋼の製造方法の説明図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る高クロム鋼の製造方法の説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る高クロム鋼の加工性の実験結果を示す説明図である。
【図4】各試料の加工性の実験結果を示す説明図である。
【図5】各試料の硫酸水溶液に対する耐食性の実験結果を示す説明図である。
【図6】各試料の塩酸水溶液に対する耐食性の実験結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る高クロム鋼の製造方法は、容器10内で粉体群11を溶解して、高クロム鋼を得る方法である。以下、詳細に説明する。

【0013】
高クロム鋼の原材料として用いられる粉体群11は、Crを25~99質量%含み、Oの含有率を1質量%以下、Oを除く不可避的不純物(即ち、Cr、Fe及びO以外の成分)の含有率を0.05質量%以下に抑え、残部がFeである。本実施の形態において、粉体群11は、高純度のCr粉体(例えば、Crの含有率が99質量%以上)及び高純度のFe粉体(例えば、Feの含有率が99質量%以上)をアルゴン雰囲気で混合して得られたものである。但し、粉体群11の代わりに、個々の粉体がFe及びCrを共に含む粉体群を採用してもよい。

【0014】
第1の実施の形態に係る高クロム鋼の製造方法においては、まず、粉体群11を、図1(A)に示すように、上部が開放された容器10内に収容する。その後、図1(B)に示すように、容器10の上方に配したレーザ照射機12から粉体群11にレーザ光Lを照射して、容器10内の粉体群11を溶解する。レーザ光Lの照射による粉体群11の溶解は、粉体群11において、容器10に接触している部分(以下、「溶解非対象部」とも言う)を残し、溶解非対象部の内側の部分(以下、「溶解対象部」とも言う)のみに対して行われる。

【0015】
そして、溶鋼13(粉体群11の溶解した部分)を、容器10内で自然冷却によって、固化して高クロム鋼を得る。そのため、粉体群11の溶解対象部は、溶解して溶鋼13となり、固化して高クロム鋼となるまで、容器10に接触しない。よって、高クロム鋼には、容器10の成分が混入せず、高クロム鋼は、実質的に、Crを25~99質量%、Oを0.0001~1質量%、Oを除く不可避歴不純物を0.05質量%以下含有し、残りがFeとなる。
ここで、容器内の粉体群に対し、粉体群の容器に接触している溶解非対象部を残し、溶解非対象部の内側の溶解対象部のみを溶解して、溶解物への不純物の混入を抑制することは、高クロム鋼の製造に限定されるものではない。

【0016】
高クロム鋼において、Oの含有率を0.0001質量%以上としているのは、粉体群11を構成する個々の粉体の表面積の合計が、他のタイプの原材料(例えば、それぞれ1cm以上の粒径を有する複数の粒状物からなる原材料)に比べて大きく、空気中のOに接触する機会が多くOを取り込むためと考えられる。また、Oが1質量%を超えると、鋼材としての特性(例えば靭性等)を保てなくなることから、Oの含有率の上限値を1質量%としている。
なお、本実施の形態では、レーザ光Lによって、粉体群11を溶解しているが、これに限定されず、例えば、アーク加熱による溶解であってもよい。

【0017】
ここで、高クロム鋼は、Crを25質量%以上含み、Oを1質量%以下、Oを除く不可避的不純物を0.05質量%以下にそれぞれ抑えることで、クロム鋼の製品として要求される加工性及び耐食性を充足することが種々の検証によって確認されている。
そして、耐食性を向上させる観点においては、Crの含有率が35質量%以上であるのが好ましい。なお、Crの含有率の上限を99質量%としているのは、高クロム鋼が、Cr以外に、FeやOを含有するためである。
そして、高クロム鋼に対して、焼鈍処理や圧延処理を行って、歪を除去することで、加工性を向上させることができる。

【0018】
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る高クロム鋼の製造方法について説明する。
第2の実施の形態に係る高クロム鋼の製造方法は、炉20を用いて固体の原材料21を溶解するもので、炉20は、図2に示すように、主として耐火煉瓦によって形成された上部開口の収容体22を有し、収容体22の内側は、酸化鉄層23(酸化鉄の層)によって覆われている。本実施の形態では、酸化鉄層23が溶射によって形成されているがこれに限定されない。なお、収容体22で用いられる耐火煉瓦には、アルミナ系、マグネシア系等、様々なタイプのものを採用可能である。

【0019】
本実施の形態では、まず、Crを25~99質量%含み、Oの含有率を1質量%以下、Oを除く不可避的不純物の含有率を0.05質量%以下にそれぞれ抑え、残部がFeである固体の原材料21を、内側に酸化鉄層23が設けられた炉20内に収容する。固体の原材料21は、形状や大きさに限定はなく、例えばフレーク状であってもよいし、粒径が1cm程度の粒塊であってもよい。その後、炉20内で原材料21を溶解し、溶解した原材料21を固化して高クロム鋼を得る。原材料21の固化は、炉20内で行ってもよいし、炉20外で行ってもよい。

【0020】
ここで、収容体22の内側を酸化鉄層23で覆っているのは、原材料21を溶解する際に、収容体22を形成している耐火煉瓦等の成分が原材料21に混入するのを抑制するためである。そして、酸化鉄層23の成分であるFe及びOは、仮に酸化鉄層23の一部が原材料21に混入したとしても、高クロム鋼の加工性や耐食性を実質的に低下させることがないことを確認している。

【0021】
また、酸化鉄の層の代わりに、酸化クロムの層やFe、Cr及びOからなる酸化物の層で、収容体の内側を覆った場合でも、製造される高クロム鋼の加工性及び耐食性は実質的に低下しないことを確認している。よって、酸化クロムの層やFe、Cr及びOからなる酸化物の層を内側に設けた炉を用いて原材料を溶解して高クロム鋼を製造してもよい。
そして、原材料21を溶解して固化した高クロム鋼は、必要に応じて、熱間圧延や冷間圧延がなされる。
【実施例】
【0022】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った引張り実験及び耐食実験について説明する。
各実験で用いた高クロム鋼は、質量比で、Cr、Feを略同じ割合で含み、残りが、C:58ppm、S:1ppm、O:2135ppm、N:19ppm、Al:8ppm、Si:8ppm、P:4ppm、Cu:1ppm、W:66ppmである粉体群を原材料に、上述した第1の実施の形態に係る高クロム鋼の製造方法を適用して製造したものである。
【実施例】
【0023】
引張り実験においては、固化した後に熱処理(1000℃)を行った高クロム鋼を試料1とし、試料1を引張った際の公称歪に対する公称応力及び発生する音を計測した。計測結果を図3に示す。図3において、公称歪に対する公称応力の計測結果はグラフPで示され、試料1を引張った際に発生する音の音圧レベルを計測した結果はグラフQで示されている。グラフPより、公称歪が0~約2.5%の範囲で、公称歪に対し公称応力が比例して増加した後(即ち、弾性変形した後)、公称歪が約2.5~約4%の範囲でセレーションが生じ、同範囲で顕著に音が発生して(即ち、不均一変形が生じて)いたのが確認できる。そして、公称歪が約4~22%の範囲で塑性変形が生じ、公称歪が約22%に達した際に、試料1が切断された。
【実施例】
【0024】
また、試料1、試料1に対し圧延(圧延率50%)した後、更に熱処理(1000℃)した試料2、及び、SUS430である試料3のそれぞれについて、試料を引張り、公称歪に対する公称応力を計測した結果を図4に示す。図4において、試料1、2、3の計測結果はそれぞれグラフP、R、Sで記す。なお、グラフP、R、Sの最も公称歪が大きい値は、その値で、各試料が切断したことを意味する。
【実施例】
【0025】
図4に示す結果より、試料1に比べ試料2は加工性に優れること、試料2には、試料3と同様に、セレーションが生じなかったこと、及び、試料2が試料1、3に比べ剛性(ヤング率)が大きいことが確認できる。なお、剛性については、弾性変形の段階におけるグラフの上昇率が高いほど剛性が高いことを意味する。
試料1は、試料3と比較し、切断時の公称歪が小さかったものの、試料1の値(約22%)は、試料3の値(約25%)の約88%に当たり、加工性の点で大きな遜色はないことが分かった。そして、試料2は、試料3に比べ、切断時の公称歪の値が大きく、この点において、試料3より優れていた。
【実施例】
【0026】
次に、硫酸水溶液(5質量%濃度)に対する耐食性を計測した結果を図5に、塩酸水溶液(1N濃度)に対する耐食性を計測した結果を図6にそれぞれ示す。図5、図6において、縦軸は電流密度(i/μAcm-2)であり、横軸は電位(E/V vs SCE)であり、図5、図6それぞれの左のグラフr、s、tは、溶液中における以下の試料4、5、6それぞれの陽極分極曲線を示し、図5、図6それぞれの右のグラフr’、s’、t’は、試料4、5、6を熱処理した試料4’、5’、6’の溶液中における陽極分極曲線を示す。
試料4:試料1を圧延率80%で圧延した試料
試料5:SUS430を圧延率80%で圧延した試料
試料6:SUS304を圧延率80%で圧延した試料
【実施例】
【0027】
図5の各グラフにおいて、電位の変化に対して電流密度の変化が微量となる不動帯域に着目すると、グラフrの電流密度が、グラフs、tの電流密度より小さく、グラフr’の電流密度が、グラフs’、t’の電流密度より小さいことが確認できる。よって、試料4は試料5、6と比較して、試料4’は試料5’、6’と比較して、それぞれ腐食速度が遅く、耐食性に優れていることが分かる。
そして、図6に示す結果から、試料4が試料5、6と比較して、試料4’が試料5’、6’と比較して、それぞれ耐食性に優れていることが分かる。
【実施例】
【0028】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
【符号の説明】
【0029】
10:容器、11:粉体群、12:レーザ照射機、13:溶鋼、20:炉、21:原材料、22:収容体、23:酸化鉄層、L:レーザ光
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5