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明細書 :自走式移動装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-160049 (P2016-160049A)
公開日 平成28年9月5日(2016.9.5)
発明の名称または考案の名称 自走式移動装置
国際特許分類 B66B   9/02        (2006.01)
B61B   7/06        (2006.01)
FI B66B 9/02 Z
B61B 7/06
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2015-040963 (P2015-040963)
出願日 平成27年3月3日(2015.3.3)
発明者または考案者 【氏名】江上 正
【氏名】梅木 和希
出願人 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100098626、【弁理士】、【氏名又は名称】黒田 壽
【識別番号】100134728、【弁理士】、【氏名又は名称】奥川 勝利
審査請求 未請求
テーマコード 3F301
Fターム 3F301BA06
要約 【課題】略鉛直方向に延びる経路部分を含む経路部材に沿って自走式移動装置を移動させる場合に必要となる駆動トルクや制動力を減らすことを課題とする。
【解決手段】略鉛直方向に延びる経路部分を含む細長い経路部材100の周面に当接する駆動回転体11A,11Bの回転駆動力により該経路部材に沿って移動する自走式移動装置1において、前記経路部材の長手方向を含む仮想面に対して前記駆動回転体の回転軸を投影したときの投影回転軸の軸方向が該経路部材の長手方向に対して傾斜状態であることを特徴とする。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
略鉛直方向に延びる経路部分を含む細長い経路部材の周面に当接する駆動回転体の回転駆動力により該経路部材に沿って移動する自走式移動装置において、
前記経路部材の長手方向を含む仮想面に対して前記駆動回転体の回転軸を投影したときの投影回転軸の軸方向が該経路部材の長手方向に対して傾斜状態であることを特徴とする自走式移動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自走式移動装置において、
前記投影回転軸の軸方向と前記経路部材の長手方向との角度が変化するように前記駆動回転体の回転軸の姿勢を変更する回転軸姿勢変更手段と、
前記回転軸姿勢変更手段を制御する回転軸姿勢制御手段とを有することを特徴とする自走式移動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自走式移動装置において、
前記回転軸姿勢制御手段は、前記経路部材の長手方向へ上方に向けて移動する当該自走式移動装置の移動速度を増速させる所定の増速期間には、前記角度が90°に近づく方向へ変化するように、前記回転軸姿勢変更手段を制御することを特徴とする自走式移動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自走式移動装置において、
前記所定の増速期間は、当該自走式移動装置が停止状態から上方に向かって移動を開始するときの始動期間であることを特徴とする自走式移動装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の自走式移動装置において、
前記回転軸姿勢制御手段は、前記経路部材の長手方向へ下方に向けて移動する当該自走式移動装置の移動速度を減速させる所定の減速期間には、前記角度が90°から離れる方向へ変化するように、前記回転軸姿勢変更手段を制御することを特徴とする自走式移動装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の自走式移動装置において、
前記回転軸姿勢制御手段は、前記経路部材の長手方向へ移動する当該自走式移動装置の移動速度がゼロであるとき、前記角度が、移動中に取り得る角度の中で最も0°に近い角度と同じ角度か又はより0°に近い角度となるように、前記回転軸姿勢変更手段を制御することを特徴とする自走式移動装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自走式移動装置において、
前記駆動回転体との間で前記経路部材を挟持する他の回転体を有し、
前記他の回転体の回転軸を前記仮想面に対して投影したときの投影回転軸と、前記駆動回転体の回転軸を該仮想面に対して投影したときの投影回転軸との関係が、前記経路部材に対して線対称の関係であることを特徴とする自走式移動装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ、ロープ、棒状部材などの細長い経路部材に沿って移動する自走式移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自走式の移動装置としては、例えば、特許文献1に開示されている昇降装置などが挙げられる。自走式移動装置は、例えば、人や物を収容する籠体を鉛直方向に沿って又は鉛直方向に対して傾斜した方向に沿って移動させるエレベータ(昇降装置)、ロープウェイ、ケーブルカー、ゴンドラリフトなどに利用される。
【0003】
一般に、エレベータ等の移動装置としては、籠体には移動用の駆動装置を設けず、籠体を支持するロープやワイヤー等の経路部材を駆動させることで籠体を移動させるトラクション式のものも広く利用されている。トラクション式の移動装置は、経路部材を駆動させる関係で、例えば移動距離が長いケース(例えば、地球上から静止軌道以上まで延びる経路部材に沿って移動する宇宙エレベータあるいは軌道エレベータとして使用するケース)においては、採用が困難である。これに対し、経路部材に沿って籠体を走行させる自走式の移動装置は、籠体に設けられる移動用の駆動装置によって籠体が経路部材に沿って走行するので、経路部材を駆動させる必要がない。そのため、上述したトラクション式の移動装置が不得手とする昇降距離の長いケースでも、採用が比較的容易である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2011-219267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
略鉛直方向へ延びる経路部分を含む経路部材に沿って自走式移動装置を移動させる場合、当該経路部分では、自走式移動装置の自重に抗して当該自走式移動装置を移動させたり制動したりする必要がある。そのため、例えば自走式移動装置を上昇させる際には、自走式移動装置の全自重に抗して自走式移動装置を上昇させるのに十分な駆動トルクが必要になる。特に、自走式移動装置を停止状態から上方へ増速させる始動の際には、自走式移動装置の慣性が大きいため、通常は、最も大きな駆動トルクが必要になる。このとき、この大きな慣性に加えて自走式移動装置の全自重が加わることになるので、始動時に必要な駆動トルクは非常に大きい。このような大きな駆動トルクを得るためには、重量や寸法が大きい駆動装置が必要になることから、自走式移動装置の軽量化、小型化を図るためには、必要となる駆動トルクを低減することが有効である。
【0006】
また、例えば下降中の自走式移動装置を制動する際には、自走式移動装置の慣性と全自重に抗して自走式移動装置を減速させるのに十分な制動力が必要になる。一般に、大きな制動力を得るためには、重量や寸法が大きい制動装置が必要になるため、自走式移動装置の軽量化、小型化を図るためには、必要となる制動力を低減することも有効である。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、略鉛直方向に延びる経路部分を含む経路部材に沿って移動させる場合に必要となる駆動トルクや制動力を減らすことが可能な自走式移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、略鉛直方向に延びる経路部分を含む細長い経路部材の周面に当接する駆動回転体の回転駆動力により該経路部材に沿って移動する自走式移動装置において、前記経路部材の長手方向を含む仮想面に対して前記駆動回転体の回転軸を投影したときの投影回転軸の軸方向が該経路部材の長手方向に対して傾斜状態であることを特徴とするものである。
従来の自走式移動装置は、通常、駆動回転体の回転軸が経路部材の長手方向に対して直交する方向に延びている。この場合、略鉛直方向に延びる経路部分を移動するとき、駆動回転体と経路部材との当接箇所において駆動回転体の周方向(駆動回転体を回転させる方向)と重力方向とが一致するため、自走式移動装置の全自重がそのまま駆動回転体の周方向に作用することになる。そのため、例えば自走式移動装置を上昇させる際には、自走式移動装置の全自重に抗して自走式移動装置を上昇させることが可能な大きな駆動トルクが必要になる。また、例えば下降中の自走式移動装置を制動する際には、自走式移動装置の慣性と全自重に抗して自走式移動装置を減速させることができる大きな制動力が必要になる。
これに対し、本発明では、経路部材の長手方向を含む仮想面に対して駆動回転体の回転軸を投影したときの投影回転軸の軸方向が経路部材の長手方向に対して傾斜状態であるため、自走式移動装置の移動時には、経路部材の周囲を回転しながら経路部材の長手方向へ移動する。この場合、略鉛直方向に延びる経路部分を移動するとき、駆動回転体と経路部材との当接箇所において駆動回転体の周方向と重力方向とが一致しないので、駆動回転体の周方向には自走式移動装置の自重の一部しか作用しない。したがって、例えば自走式移動装置を上昇させる際には、自走式移動装置の自重分の負荷トルクが減るので、必要な駆動トルクを減らすことができる。また、例えば下降中の自走式移動装置を制動する際には、自走式移動装置の自重によって駆動回転体の回転を加速させようとする力が減るので、必要な制動力を減らすことができる。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の自走式移動装置において、前記投影回転軸の軸方向と前記経路部材の長手方向との角度が変化するように前記駆動回転体の回転軸の姿勢を変更する回転軸姿勢変更手段と、前記回転軸姿勢変更手段を制御する回転軸姿勢制御手段とを有することを特徴とするものである。
これによれば、前記投影回転軸の軸方向と前記経路部材の長手方向との角度を変更して、駆動回転体と経路部材との当接箇所において駆動回転体の周方向(駆動回転体を回転させる方向)と重力方向とのなす角度を変更することができる。したがって、自走式移動装置の自重分の負荷トルクや、自走式移動装置の自重により駆動回転体の回転を加速させようとする力を適宜変更することが可能になる。これによれば、例えば、上昇中の負荷トルク全体(自重、慣性、移動抵抗(空気抵抗等)等により生じる負荷トルク)の大きさ、あるいは、下降中における駆動回転体の制動を妨げる力全体(自重、慣性等により生じる力)の大きさを、一定範囲内に抑えるといった制御が可能となる。具体的には、例えば停止状態から自走式移動装置を上昇させる始動の際や、下降中の自走式移動装置を急減速させる際のように、自走式移動装置に大きな慣性が働く状況では、前記投影回転軸の軸方向と経路部材の長手方向との角度が0°に近づくように駆動回転体の回転軸の姿勢を変更することで、自重分の負荷トルクや加速させようとする力を減少させることができる。
また、前記投影回転軸の軸方向と前記経路部材の長手方向との角度を変更することで、自走式移動装置が経路部材の長手方向へ移動する移動速度(以下、単に「移動速度」という。)が変わる。したがって、例えば、駆動回転体の回転速度を変更することなく、あるいは、制動装置を使用することなく、自走式移動装置の移動速度をコントロールすることも可能になる。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の自走式移動装置において、前記回転軸姿勢制御手段は、前記経路部材の長手方向へ上方に向けて移動する当該自走式移動装置の移動速度を増速させる所定の増速期間には、前記角度が90°に近づく方向へ変化するように、前記回転軸姿勢変更手段を制御することを特徴とするものである。
前記投影回転軸の軸方向と経路部材の長手方向との角度が90°に近いほど、上昇時における自重分の負荷トルクが増加する一方、自走式移動装置の移動速度(上昇速度)が速くなる。本発明によれば、駆動回転体の回転速度を上げることなく、自走式移動装置の移動速度(上昇速度)を増速させることができる。なお、本発明は、駆動回転体の回転速度を上げて自走式移動装置の移動速度(上昇速度)を増速させる制御を併用することを排除するものではない。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の自走式移動装置において、前記所定の増速期間は、当該自走式移動装置が停止状態から上方に向かって移動を開始するときの始動期間であることを特徴とするものである。
自走式移動装置が停止状態から上方に向かって移動を開始するときの始動期間は、通常、駆動回転体に働く負荷トルク全体の大きさが最も大きくなる。よって、この始動期間に、前記投影回転軸の軸方向と経路部材の長手方向との角度を、0°に近い状態から90°に近づく方向へ変化させる制御を実施すれば、駆動回転体に必要な最大駆動トルクを減らしつつ、増速させることが可能となる。これにより、より重量や寸法が小さい駆動装置を使用することが可能となるので、自走式移動装置の軽量化、小型化を図ることができる。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の自走式移動装置において、前記回転軸姿勢制御手段は、前記経路部材の長手方向へ下方に向けて移動する当該自走式移動装置の移動速度を減速させる所定の減速期間には、前記角度が90°から離れる方向へ変化するように、前記回転軸姿勢変更手段を制御することを特徴とするものである。
前記投影回転軸の軸方向と経路部材の長手方向との角度が90°から離れるほど(0°に近づくほど)、自重により自走式移動装置を加速させようとする力が減少する一方、自走式移動装置の移動速度が遅くなる。本発明によれば、駆動回転体の回転速度を下げることなく、あるいは、制動装置を使用することなく、若しくは、より小さな制動力で、下方に向かって移動する自走式移動装置を減速させることができる。なお、本発明は、駆動回転体の回転速度を下げたり制動装置を使用したりする制御を併用することを排除するものではない。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の自走式移動装置において、前記回転軸姿勢制御手段は、前記経路部材の長手方向へ移動する当該自走式移動装置の移動速度がゼロであるとき、前記角度が、移動中に取り得る角度の中で最も0°に近い角度と同じ角度か又はより0°に近い角度となるように、前記回転軸姿勢変更手段を制御することを特徴とするものである。
前記投影回転軸の軸方向と経路部材の長手方向との角度が0°から離れているほど(90°に近づいているほど)、自重により自走式移動装置を下方へ移動させようとする力が大きくなる。この力は、自走式移動装置の移動速度がゼロであるときでも作用するので、当該角度が0°から離れているほど、自走式移動装置の移動速度をゼロに維持するために必要な力が大きくなる。本発明によれば、自走式移動装置の移動速度がゼロであるときには、移動中に取り得る角度の中で最も0°に近い角度と同じ角度か又はより0°に近い角度となるため、自走式移動装置の移動速度をゼロに維持するために必要な力を小さく抑えることができる。特に、駆動回転体を停止させ、かつ、当該角度を0°にすれば、ごく僅かなエネルギーで(理想的にはエネルギーを消費することなく)、自走式移動装置の移動速度をゼロに維持できる。また、当該角度を0°にすれば、駆動回転体の回転を停止させなくても、自走式移動装置の移動速度をゼロに維持でき、駆動回転体の回転駆動制御を簡素化できるというメリットもある。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自走式移動装置において、前記駆動回転体との間で前記経路部材を挟持する他の回転体を有し、前記他の回転体の回転軸を前記仮想面に対して投影したときの投影回転軸と、前記駆動回転体の回転軸を該仮想面に対して投影したときの投影回転軸との関係が、前記経路部材に対して線対称の関係であることを特徴とするものである。
駆動回転体と非回転体との間に経路部材を挟持する構成では、駆動回転体の回転駆動時に非回転体が経路部材の周面に沿って摺動することになるため、経路部材が摩耗により劣化しやすい。本発明によれば、駆動回転体の回転駆動時には、経路部材を挟持する駆動回転体と他の回転体とが共に回転して経路部材の周面上を転がり移動するため、経路部材の摩耗を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、略鉛直方向に延びる経路部分を含む経路部材に沿って移動させる場合に必要となる駆動トルクや制動力を減らすことが可能な自走式移動装置を提供できるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る昇降装置の駆動装置を模式的に示した正面図である。
【図2】同昇降装置を模式的に示した側面図である。
【図3】同昇降装置の内部構造を模式的に示した正面図である。
【図4】駆動ローラの投影回転軸の軸方向がワイヤーロープ長手方向に対して傾斜状態であるときの同昇降装置の内部構造を模式的に示した正面図である。
【図5】同駆動装置の移動制御に関わるブロック図である。
【図6】同駆動装置を停止状態から上昇を開始させる始動期間における移動制御例1を示すフローチャートである。
【図7】下降中の同駆動装置を停止させる停止期間における移動制御例2を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る自走式移動装置を、経路部材であるワイヤーロープ上を移動する昇降装置の駆動装置に適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る昇降装置の駆動装置1を模式的に示した正面図である。
図2は、本駆動装置を模式的に示した側面図である。
図3は、本駆動装置の内部構造を模式的に示した正面図である。

【0018】
本駆動装置1は、所定の昇降経路に沿って配置される経路部材として、断面が略円形状の部材であるワイヤーロープ100を用い、このワイヤーロープ100に沿って移動して上昇及び下降が可能なものである。本実施形態においては、ワイヤーロープ100が鉛直方向に沿って配置された例であるが、その経路中に、鉛直方向に対して斜め方向に配置される部分や水平方向に配置される部分があってもよい。

【0019】
本駆動装置1は、昇降距離が長いケースを想定したものであり、そのため、ワイヤーロープ100は強いテンションで張られている。このようなケースとしては、昇降装置を用いて高層ビルやタワーなどの清掃、検査等を行うケースや、地上から成層圏まで延びる昇降経路を昇降する成層圏エレベーターや地球上から静止軌道以上まで延びる昇降経路を昇降する宇宙エレベータあるいは軌道エレベータとして昇降装置を使用するケースなど、様々なケースが挙げられる。移動装置1が搭載される昇降装置には、その用途に応じて、昇降装置本体上に、清掃部材、撮像装置、籠体(ゲージ)などの各種部品が取り付けられるが、それらの部品についての説明は省略する。

【0020】
本駆動装置1は、前面フレーム2Aと背面フレーム2Bとの間に、ワイヤーロープ100を挟持する駆動回転体としての2つの駆動ローラ11A,11Bをそれぞれ備えた2つの駆動部10A,10Bが配置されている。2つの駆動部10A,10Bは、ワイヤーロープ100を挟んで互いに反対側に位置するように配置されており、その構成及び動作はほぼ同様である。

【0021】
2つの駆動部10A,10Bの構成及び動作について、駆動部10Bを例に挙げて説明すると、駆動部10Bは、連結フレーム12-3Bで互いに連結された2つの駆動部フレーム12-1B,12-2Bによって、駆動ローラ11Bのローラ軸の各端部をそれぞれ支持している。第1駆動部フレーム12-1Bで支持されている駆動ローラ11Bのローラ軸端部には、被駆動ギヤ13Bが取り付けられている。被駆動ギヤ13Bと、駆動源であるローラ駆動用モータ16Bのモータ軸に取り付けられた駆動ギヤ14Bとの間には、動力伝達ベルト15Bが張架されている。ローラ駆動用モータ16Bは、第1駆動部フレーム12-1B上に取り付けられている。

【0022】
ローラ駆動用モータ16Bが回転駆動すると、駆動ギヤ14Bが回転駆動して、その回転駆動力が動力伝達ベルト15Bを介して被駆動ギヤ13Bに伝達され、被駆動ギヤ13Bが回転し、被駆動ギヤ13Bの回転に連動して駆動ローラ11Bが回転する。2つの駆動部10A,10Bにおける2つのローラ駆動用モータ16A,16Bは互いに同期されているため、ワイヤーロープ100を挟持する2つの駆動ローラ11A,11Bは同期回転する。これにより、2つの駆動ローラ11A,11Bがワイヤーロープ100の周面上を転がり移動し、駆動装置1をワイヤーロープ100に沿って移動させることができる。

【0023】
本実施形態においては、2つの駆動ローラ11A,11Bのほか、前面フレーム2A及び背面フレーム2Bに支持された従動ローラ対17A,17B,17Cによって、ワイヤーロープ100が挟持されている。第1及び第2の従動ローラ対17A,17Bの挟持方向と第3の従動ローラ対17Cの挟持方向とは互いに直交する方向となっており、駆動ローラ11A,11B等がワイヤーロープ100から脱輪することを抑制する構成となっている。

【0024】
2つの駆動部10A,10Bは、連結フレーム12-3A,12-3Bに取り付けられた加圧回動部20A,20Bを介して、前面フレーム2A及び背面フレーム2Bに支持されている。2つの加圧回動部20A,20Bの構成及び動作も、ほぼ同様である。

【0025】
2つの加圧回動部20A,20Bの構成及び動作について、加圧回動部20Bを例に挙げて説明すると、加圧回動部20Bは、コの字状のモータハウジング22B内に、回転軸姿勢変更手段としてのローラ姿勢変更用モータ21Bが設置されている。ローラ姿勢変更用モータ21Bのモータ軸は、モータハウジング22Bの外部に延伸するように設置されており、そのモータ軸端部が連結フレーム12-3Bに取り付けられている。

【0026】
また、モータハウジング22Bと連結フレーム12-3Bとの間には、モータハウジング22Bに対して連結フレーム12-3Bをローラ姿勢変更用モータ21Bのモータ軸回りで回転自在に軸受けする軸受部25Bが配置されている。一方、軸受部25Bが配置されている側とは反対側のモータハウジング22Bには、圧縮スプリング24Bの一端が取り付けられている。この圧縮スプリング24Bは、前面フレーム2A及び背面フレーム2Bに支持されたスライド板23Bに対して、モータハウジング22Bをワイヤーロープ100に近づく方向へ付勢する。よって、圧縮スプリング24Bの付勢力は、モータハウジング22B及び軸受部25Bを介して、駆動部10Bのフレーム12-1B,12-2B,12-3Bをワイヤーロープ100に近づく方向へ付勢する。圧縮スプリング24Bによる付勢力は、調整ネジ26Bにより、前面フレーム2A及び背面フレーム2Bに対するスライド板23Bの支持位置を変更することにより、適宜調整することができる。

【0027】
このような構成により、2つの加圧回動部20A,20Bは、それぞれの圧縮スプリング24A,24Bの付勢力により、それぞれの駆動ローラ11A,11Bをワイヤーロープ100に近づく方向へ付勢する。これにより、2つの駆動ローラ11A,11Bでワイヤーロープ100を挟持し、2つの駆動ローラ11A,11Bを回転駆動させたときにワイヤーロープ100の周面をスリップすることなく転がり移動できるような摩擦力が得られる。

【0028】
また、加圧回動部20Bのローラ姿勢変更用モータ21Bが回転駆動すると、そのモータ軸端部に固定されている連結フレーム12-3Bが、そのモータ軸回りに回転する。これにより、ワイヤーロープ100の長手方向を含む仮想面としての鉛直面(図2の紙面に平行な面)に対して駆動ローラ11Bの回転軸を投影したときの投影回転軸の軸方向がワイヤーロープ100の長手方向に対して傾斜状態になるように、駆動ローラ11Bの姿勢を変更することができる。

【0029】
図4は、駆動ローラ11A,11Bの投影回転軸の軸方向がワイヤーロープ100の長手方向に対して傾斜状態であるときの本駆動装置1の内部構造を模式的に示した正面図である。
図3に示した駆動ローラ11A,11Bの姿勢は、駆動ローラ11A,11Bの投影回転軸の軸方向とワイヤーロープ100の長手方向とが直交した姿勢(以下「直交姿勢」という。)となっている。この直交姿勢から、加圧回動部20A,20Bのローラ姿勢変更用モータ21A,21Bを回転駆動させると、各駆動部10A,10Bがそれぞれローラ姿勢変更用モータ21A,21Bのモータ軸回りに回転する。これにより、駆動ローラ11A,11Bの姿勢は、図4に示すように、駆動ローラ11A,11Bの投影回転軸の軸方向とワイヤーロープ100の長手方向とのなす角度が約45°となる傾斜状態の姿勢(以下「傾斜姿勢」という。)となる。

【0030】
本実施形態において、2つの加圧回動部20A,20Bの各ローラ姿勢変更用モータ21A,21Bは互いに同期している。具体的には、一方の駆動ローラ11Aの投影回転軸と他方の駆動ローラ11Bの投影回転軸との関係が、ワイヤーロープ100に対して線対称の関係となるように、各ローラ姿勢変更用モータ21A,21Bが互いに同期している。駆動ローラ11A,11Bの姿勢が図4に示すような傾斜姿勢である場合、ローラ駆動用モータ16A,16Bを回転駆動させて駆動ローラ11A,11Bがワイヤーロープ100の周面上を転がり移動すると、駆動装置1は、ワイヤーロープ100の周囲を回転しながらワイヤーロープ100の長手方向へ移動することになる。

【0031】
駆動ローラ11A,11Bの姿勢が図4に示すような傾斜姿勢である場合、図3に示すような直交姿勢である場合よりも、次のようなメリットがある。
まず、駆動装置1をワイヤーロープ100に沿って上昇させる際にローラ駆動用モータ16A,16Bに働く負荷トルクを軽減することができる。すなわち、図3に示すような直交姿勢である場合、駆動ローラ11A,11Bとワイヤーロープ100との当接箇所において駆動ローラ11A,11Bの周方向(駆動ローラ回転方向)と重力方向とが一致する。そのため、駆動装置1の自重がそのまま駆動ローラ11A,11Bの周方向に作用し、駆動装置1の上昇時に大きな負荷トルクを生じさせる。これに対し、図4に示すような傾斜姿勢である場合、駆動ローラ11A,11Bとワイヤーロープ100との当接箇所において駆動ローラ11A,11Bの周方向(駆動ローラ回転方向)と重力方向とが一致しない。そのため、駆動装置1の自重の一部しか、駆動ローラ11A,11Bの周方向に作用しない。例えば、駆動ローラ11A,11Bの投影回転軸の軸方向とワイヤーロープ100の長手方向とのなす角度が45°であれば、駆動ローラ11A,11Bの周方向に作用するのは、駆動装置1の自重の約0.7倍程度である。したがって、駆動装置1の上昇時にローラ駆動用モータ16A,16Bに働く負荷トルクを軽減することができる。

【0032】
また、駆動装置1をワイヤーロープ100に沿って下降させる際に必要な制動力を軽減することができる。すなわち、図3に示すような直交姿勢である場合、駆動装置1の自重がそのまま駆動ローラ11A,11Bの周方向に作用するため、下降中の駆動装置1を制動させる際には、駆動装置1の慣性だけでなく、駆動装置1の全自重にも抗する制動力が必要になる。これに対し、図4に示すような傾斜姿勢である場合、駆動装置1の自重の一部しか、駆動ローラ11A,11Bの周方向に作用しないので、下降中の駆動装置1を制動させる際に必要となる制動力を軽減することができる。

【0033】
また、本実施形態においては、ローラ姿勢変更用モータ21A,21Bの回転角度を回転軸姿勢制御手段としての制御部200によって制御することが可能である。すなわち、ローラ姿勢変更用モータ21A,21Bの回転角度を制御して、駆動ローラ11A,11Bの投影回転軸の軸方向とワイヤーロープ100の長手方向とのなす角度(以下「軸角度」という。)が変わるように、駆動ローラ11A,11Bの姿勢を変更できる。駆動ローラ11A,11Bの軸角度が変わると、駆動装置1がワイヤーロープ100の長手方向へ移動する移動速度(上昇速度や下降速度)が変わる。したがって、ローラ姿勢変更用モータ21A,21Bの回転角度を制御することにより、例えば、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転速度を変えることなく、駆動装置1の上昇速度をコントロールすることができる。また、例えば、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転速度を変えることなく、あるいは、制動装置を使用することなく、若しくは、より小さな制動力で、駆動装置1の下降速度をコントロールすることができる。

【0034】
また、駆動ローラ11A,11Bの姿勢が傾斜姿勢である場合、駆動装置1の上昇時又は下降時には、駆動装置1はワイヤーロープ100の周囲を回転しながらワイヤーロープ100に沿って上昇又は下降することになる。このようにワイヤーロープ100の回りを駆動装置1が回転(自転)することにより、ジャイロ効果によって、ワイヤーロープ100に対する駆動装置1の姿勢が安定するというメリットもある。

【0035】
〔移動制御例1〕
次に、駆動装置1の移動制御の一例(以下「移動制御例1」という。)について説明する。
図5は、駆動装置1の移動制御に関わるブロック図である。
図6は、駆動装置1を停止状態から上昇を開始させる始動期間における移動制御の一例を示すフローチャートである。
本実施形態において、駆動装置1の停止時には、駆動ローラ11A,11Bの姿勢が、駆動ローラ11A,11Bの投影回転軸の軸方向とワイヤーロープ100の長手方向とが平行となる姿勢(以下「平行姿勢」という。)をとる。なお、駆動装置1の停止時における駆動ローラ11A,11Bの姿勢は、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が0°となる平行姿勢に限らず、傾斜姿勢であってもよい。ただし、駆動装置1の自重が駆動ローラ11A,11Bを回転させる力としてできるだけ作用しないようにすれば、停止中に当該力に抗して駆動装置1を静止させておく力が少なくなる。よって、省エネルギー化の観点から、停止時におけるローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度はできるだけ0°に近いのが好ましい。

【0036】
このような停止状態において、制御部200は、上昇命令を受けたら(S1)、まず、ローラ駆動用モータ16A,16Bに回転速度指令を出力して、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転駆動を開始させる(S2)。これにより、平行状態の駆動ローラ11A,11Bが回転駆動し、駆動装置1は、ワイヤーロープ100の長手方向における移動速度がゼロのまま(すなわち上昇も下降もせずに)、ワイヤーロープ100の周囲を回転(自転)し始める。この始動の際、駆動装置1に働く慣性は大きいため、ローラ駆動用モータ16A,16Bにはその慣性に応じた大きな負荷トルクが働くことになるが、駆動ローラ11A,11Bの姿勢が平行姿勢であるため、駆動装置1の自重が負荷トルクとして作用することはない。したがって、図3に示した直交姿勢である場合よりも始動の際の負荷トルクが軽減されており、より少ない駆動トルクで、スムーズな始動が可能となる。

【0037】
負荷トルクが軽減されているとはいえ、駆動装置1の慣性が大きいことから、駆動ローラ11A,11Bがワイヤーロープ100の周面に対してスリップしないように、ローラ駆動用モータ16A,16Bを徐々に加速させる加速プロファイルに従って、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転駆動速度を制御するのが好ましい。そのため、制御部200は、ローラ駆動用モータ16A,16Bのモータ回転情報(モータ回転速度等)を、それぞれのモータ軸に取り付けられたエンコーダセンサ18A,18Bによって検知し、検知したモータ回転情報に基づいて、所定の加速プロファイルに従ってローラ駆動用モータ16A,16Bが徐々に加速するようにフィードバック制御する。

【0038】
制御部200は、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転速度が目標速度に達したら(S3)、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転速度を目標速度に維持する。そして、制御部200は、ローラ姿勢変更用モータ21A,21Bに回転角度指令を出力して、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が90°に近づく方向へ変化するように、ローラ姿勢変更用モータ21A,21Bの駆動を開始する(S4)。これにより、回転駆動中の駆動ローラ11A,11Bの姿勢が平行姿勢から傾斜姿勢となる。その結果、駆動装置1は、ワイヤーロープ100の周囲を回転(自転)しつつ、ワイヤーロープ100に沿って上方への移動を開始する。

【0039】
制御部200は、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が徐々に90°に近づかせる回転プロファイルに従って、ローラ姿勢変更用モータ21A,21Bの回転角度を制御する。具体的には、制御部200は、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度情報を、それぞれエンコーダセンサ27A,27Bによって検知し、検知した軸角度情報に基づいて、所定の回転プロファイルに従ってローラ姿勢変更用モータ21A,21Bの回転角度が徐々に変化するようにフィードバック制御する。

【0040】
ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転速度が目標速度に維持されているため、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が90°に近づくほど、駆動装置1の移動速度(上昇速度)が増加する一方、ワイヤーロープ100の周囲を回転(自転)する回転速度は減少する。したがって、上述したようにローラ姿勢変更用モータ21A,21Bの回転角度を制御することで、駆動装置1の移動速度(上昇速度)を徐々に増加させることができる。そして、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が予め決められた規定角度になったら(S5)、駆動装置1の移動速度(上昇速度)は、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転速度(目標速度)とローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度(規定角度)とによって決まる速度で一定となり、定速期間に移行する。

【0041】
ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が90°に近づくほど、駆動装置1の自重による負荷トルクが増えていくが、駆動装置1はすでにワイヤーロープ100の周囲を高速回転(自転)していることから、駆動装置1の慣性によって駆動装置1の自重による負荷トルクが軽減される。よって、少ない負荷トルクで駆動装置1の移動速度(上昇速度)を増速させることができる。

【0042】
本実施形態では、規定角度を90°に設定しているので、始動期間から定速期間に移行したら、駆動ローラ11A,11Bの姿勢が図3に示したような直交姿勢をとり、駆動装置1は、ワイヤーロープ100の周囲を回転(自転)せずに、真っ直ぐワイヤーロープ100に沿って上昇する。なお、規定角度を90°よりも小さい角度に設定し、定速期間中も、駆動装置1がワイヤーロープ100の周囲を回転(自転)しながらワイヤーロープ100を上昇するようにしてもよい。

【0043】
〔移動制御例2〕
次に、駆動装置1の移動制御の他の例(以下「移動制御例2」という。)について説明する。
図7は、下降中の駆動装置1を停止させる停止期間における移動制御の一例を示すフローチャートである。
本実施形態において、下降中の駆動装置1では、駆動ローラ11A,11Bの姿勢が図3に示したような直交姿勢をとる。制御部200は、駆動装置1が下降しているときに停止命令を受けたら(S11)、まず、ローラ駆動用モータ16A,16Bに回転速度指令を出力して、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転を停止させる(S12)。なお、駆動装置1を下降させる際、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転を停止させたまま、駆動装置1の自重だけで下降させる場合には、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転停止処理(S12)は不要である。

【0044】
また、停止命令を受けた制御部200は、ローラ姿勢変更用モータ21A,21Bに回転角度指令を出力して、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が0°に近づく方向へ変化するように、ローラ姿勢変更用モータ21A,21Bの駆動を開始する(S13)。これにより、回転駆動中の駆動ローラ11A,11Bの姿勢が直交姿勢から傾斜姿勢となる。回転駆動中の駆動ローラ11A,11Bの姿勢が傾斜姿勢になると、駆動装置1は、ワイヤーロープ100の周囲を回転(自転)し始める。また、これに伴い、駆動装置1の移動速度(下降速度)が減少する。

【0045】
制御部200は、エンコーダセンサ27A,27Bの検知結果に基づき、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が徐々に0°に近づかせる回転プロファイルに従ってローラ姿勢変更用モータ21A,21Bの回転角度を制御する。このとき、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転は停止しているため、ローラ駆動用モータ16A,16Bの負荷が駆動ローラ11A,11Bの回転負荷となり、制動力として作用する。ただし、下降中の駆動装置1に働く慣性が大きく、また、駆動装置1の自重により駆動ローラ11A,11Bを加速させようとする力も働く。そのため、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が0°に近づくほど、駆動装置1の移動速度(下降速度)が減少する一方、ワイヤーロープ100の周囲を回転(自転)する回転速度はしばらく増加することになる。

【0046】
ただし、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が更に0°に近づくほど、駆動装置1の自重分の力(駆動ローラ11A,11Bを加速させようとする力)が小さくなるため、ワイヤーロープ100の周囲を回転(自転)する回転速度もいずれ増加から減少に転じる。そして、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が予め決められた規定角度になったら(S14)、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が当該規定角度に維持される。これにより、停止しているローラ駆動用モータ16A,16Bによる駆動ローラ11A,11Bの回転負荷が制動力となって、いずれ、駆動装置1の移動速度(下降速度)はゼロになり、かつ、駆動装置1がワイヤーロープ100の周囲を回転(自転)する回転速度もゼロになり、駆動装置1は静止して停止状態になる。

【0047】
本実施形態によれば、駆動装置1の移動速度(下降速度)を減少させて停止させるまでの期間、駆動ローラ11A,11Bの軸角度が0°に近づくことで、駆動装置1の自重により駆動ローラ11A,11Bを加速させようとする力が少なくなる。よって、駆動ローラ11A,11Bの軸角度が90°のままローラ駆動用モータ16A,16Bの回転を減速させる場合よりも、少ない制動力で駆動装置1を静止させることができる。このように制動力が少なくて済む結果、停止しているローラ駆動用モータ16A,16Bの負荷による制動力だけでも、駆動装置1を静止させることが可能である。

【0048】
なお、本実施形態においては、規定角度が0°に設定されているため、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度が規定角度になった時点で、駆動装置1は、ワイヤーロープ100の長手方向における移動速度(下降速度)はゼロとなる。したがって、駆動装置1の位置をワイヤーロープ100上の長手方向における所定地点に停止させるだけであれば、必ずしもローラ駆動用モータ16A,16Bの回転を停止させる必要はなく、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転を継続したままでもよい。特に、停止後に再び駆動装置1を始動させる際には、停止時にローラ駆動用モータ16A,16Bの回転を継続したままにすれば、再始動時にローラ駆動用モータ16A,16Bの立ち上げ時間が省略でき、迅速な再始動が可能となる。

【0049】
以上の説明では、駆動装置1を停止状態から上昇を開始させる始動期間の移動制御例1と、下降中の駆動装置1を停止させる停止期間の移動制御例2について説明したが、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度を変更することによる駆動装置1の移動制御はこれに限られない。

【0050】
例えば、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度を変更することで、駆動装置1の移動速度(上昇速度や下降速度)を変更することが可能であることから、ローラ駆動用モータ16A,16Bの回転速度を変更することなく、あるいは、制動装置を使用することなく、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度を制御して駆動装置1の移動速度をコントロールすることが可能になる。

【0051】
また、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度を制御して、駆動装置1がワイヤーロープ100の周囲を回転(自転)する速度をコントロールすることができる。よって、例えば、何らかの要因で駆動装置1の姿勢や挙動が不安定になったときに、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度を0°に近づけてワイヤーロープ100の周囲を回転(自転)する駆動装置1の回転速度(自転速度)を高めることにより、ジャイロ効果を高めて、駆動装置1の姿勢を安定化させるといった制御も可能である。

【0052】
なお、本実施形態における駆動装置1を搭載した昇降装置を、人や物を収容して搬送するエレベータ、高層ビル等の外壁面に沿って移動して清掃を行ったり損傷箇所を確認したりするメンテナンス装置、スポーツ競技を撮像する移動式の撮像装置などに利用する場合、駆動装置1がワイヤーロープ100の周囲を回転しても、昇降装置本体はワイヤーロープ100の周囲を回転しないように構成するのが好ましい。

【0053】
また、本実施形態では、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度を可変とする構成であったが、ローラ駆動用モータ16A,16Bの軸角度を不変で、駆動ローラ11A,11Bの姿勢が傾斜姿勢で固定された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 駆動装置
2A 前面フレーム
2B 背面フレーム
10A,10B 駆動部
11A,11B 駆動ローラ
12-1A,12-2A,12-1B,12-2B 駆動部フレーム
12-3A,12-3B 連結フレーム
13A,13B 被駆動ギヤ
14A,14B 駆動ギヤ
15A,15B 動力伝達ベルト
16A,16B ローラ駆動用モータ
17A,17B,17C 従動ローラ対
18A,18B エンコーダセンサ
20A,20B 加圧回動部
21A,21B ローラ姿勢変更用モータ
22A,22B モータハウジング
23A,23B スライド板
24A,24B 圧縮スプリング
25A,25B 軸受部
26A,26B 調整ネジ
27A,27B エンコーダセンサ
100 ワイヤーロープ
200 制御部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6